平成7年6月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

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〇9番(佐々木大和君) 緑政会の佐々木大和でございます。
 増田知事の施政方針演述をお伺いし、県政課題について質問させていただきます。
 我が郷土岩手は、北緯39度から40度にあって、地球上で最も四季がはっきりしていると言われます。春の美しい花、夏の緑、秋のもみじ、そして冬の雪、ふるさと岩手はまさに人間が考え、行動するのに最適の環境を持った我が郷土であります。同じような緯度にありますニューヨークやワシントン、そして北京は、今日の世界をリードしてまいりました。21世紀をリードする日本、その日本をリードする岩手県に生まれ変わらなければなりません。県民は今、新進気鋭の増田知事にあすの岩手を託しました。持ち前の英知と行動力、そして実行力で十分にリーダーシップを発揮され、活躍されんことを特に御期待申し上げます。
 私は、知事と同様に、さきの統一地方選挙で初めて下閉伊選挙区から選出され、この壇上に立たせていただいております。私は、沿岸、内陸の格差是正、そして基幹産業である農林漁業の再生に向けて努力してまいる所存であります。知事を初め、県当局の皆様、議員の皆様、御指導、御鞭撻、そして御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは、質問に入らせていただきます。まず、知事の県政推進の基本姿勢についてお伺いいたします。
 知事は、このたびの所信表明演述で、県政推進の基本姿勢として、清新で公正な県政、すべての県民のための県政の推進を掲げられております。しかしながら、今次参議院選挙におきまして特定の政党の候補者を支援すると表明されたことはまことに遺憾であります。知事は、無所属で立候補され県民の支持を得られたところであり、また、知事に就任された今、すべての県民のための県政を推進していくためには、厳正中立であるべきと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、今回の6月補正予算に関連して、県債の償還の見通しと今後の県財政に与える影響についてお伺いします。
 今回の6月補正と当初予算をあわせた6月現計予算額は7、732億円余となっており、前年度当初予算と比較しますと、いわゆるNTT債の繰り上げ償還分を除いて5・3%の増となり、地方財政計画を上回る伸びとなっております。これは、財政環境の厳しい中で、ウルグアイ・ラウンド対策や防災対策等の事業に積極的に取り組まれた結果であると評価するものであります。しかし、今回、県債が169億円余追加され、6月現計予算の地方債依存度が13・7%と高くなっており、また、平成7年度末の県債残高も6、679億円と過去最大の額が見込まれております。税収等の一般財源が伸び悩んでいる中で、各般にわたる財政需要を満たすため、財源の確保に苦慮されている一端がうかがえますが、地方債は後年度に償還という義務的な支出を伴うものであり、将来の財政の硬直化を懸念せざるを得ません。この償還に係る負担は膨大なものになると思われますが、その償還の見通しと、これにより将来の財政運営に支障を生ずることがないのか、総務部長にお伺いいたします。
 次に、中山間地域の活性化に対する基本的な考え方についてお伺いします。
 国は、昨年10月に公表したウルグァイ・ラウンド農業合意関連大綱の中で、新規就農者を3倍にふやすこととか、中山間地域の活性化を図るなどの方向を示し、関連対策として、向こう6年間の農林水産総事業費を6兆100億円と、地方事業費として1兆2、000億円の全体枠が示されたところであります。しかしながら、その内容を見ますと、基盤整備を加速するとか、農家の負債対策の拡充が示唆されておりますが、具体的に中山間地域の活性化に結びつくような事業が見当たらないのであります。私も、地域で話をするときに、農家の方々にすぐに理解していただけるような内容となっていないので、大変苦慮しているところであります。本県の中山間地域、特に山間の地域においては、近年とみに人口の減少が目立ってきております。我が管内のある小学校では、入学児童がたったの1人というところもあります。こうした状況が続きますと、本県の中山間地域では、あたかもくしの歯が欠けるように集落や地域社会が解体、崩壊してしまうことが憂慮され、大変大きな問題であると思うのであります。こうした状況下にあって、国は多国間貿易協定移行後の影響を最も受ける中山間地域の対策を打ち出したとしておりますが、残念ながら国レベルの対策に物足りなさを感じるとともに、具体的な展望が見えてこないのであります。中山間地域の活性化を図るに当たっては、これらの地域の実態とあるべき姿を十分に踏まえ、さまざまな視点に立って、地域に合った具体的な対策を打ち出していく必要があると考えるものであります。知事は、公約の中で国際競争に打ちかつ農林水産業の再構築や県土の均衡ある発展を掲げられていると理解しております。中山間地域の活性化に対する基本的な考え方をお伺いします。
 次に、中山間地域の経済に大きな比重を占める畜産業の振興についてお伺いします。
 最近の畜産を取り巻く情勢は、牛肉の輸入自由化やガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意、さらに円高進行等により畜産物の国内外価格差が大きく開くなどにより、国内の家畜畜産物市場価格が低迷し、畜産農家の経営環境は多難な局面を迎えております。申すまでもなく本県が畜産主産県として、さらには我が国の食料供給基地として発展していくためには、豊富な草資源と有利な立地条件を生かした肉用牛や酪農の振興は欠かすことのできない部門であると思うのであります。とりわけ、本県の肉用牛振興に当たっては、複合型農業の主要作目として、また、自然環境保全型畜産を推進する上で、公共牧野の持つ機能は極めて重要な役割を果たしております。特に、県北地方では、放牧適応能力にすぐれた日本短角種の飼養頭数が年々減少し、公共牧野の利用率が低下する一方で、放牧施設の老朽化や草地の荒廃が進むなど、公共牧野の維持管理に要する経費が増大し、牧野組合等の運営が憂慮すべき状況にあります。こうした状況に対応していくためには、現在、畜産部門が活用している国有林野の利用料金の減免措置を講じることにより、農家負担の軽減を図り、さらには、生産の効率化のため、公共牧野の再編等による機能強化を図ることが今後の本県肉用牛生産振興上、極めて重要かつ緊急の課題であると思っております。そこで、本県における公共牧野の利用の状況と、県としての今後の公共牧野の対策について御所見をお伺いいたします。
 次に、花卉生産の振興についてお伺いします。
 花卉は精神的豊かさやゆとりを求める現代社会の中で、ますます需要が増大することが見込まれ、今後とも生産を拡大し得る数少ない作目であります。したがって、地域農業の振興という観点から積極的な取り組みが求められるところであり、特に、高い単収が得られることから、耕作面積などに制約のある中山間地域への導入に大きな期待が持てるものであります。本県の花卉につきましては、リンドウの栽培品種の開発等によって着実に生産を拡大してきており、平成5年の粗生産額は約53億円に達していると伺っておりますが、中山間地域を初めとして、作目再編を着実に進めていくためにも、花卉生産の積極的な振興が重要な課題であると考えております。花はもともと生活必需品ではなく、あくまでも嗜好品であります。あわせて商品性が高く、鮮度も非常に大切となる農産物であります。このため、他の作物に比べ生産者は高い技術力とともに、消費者ニーズや市場動向を的確に把握し、これに機動的に対応する実践力が求められます。さらに、産地としては、新たな花卉品目や作型の導入により生産の拡大を図っていくとともに、新たな需要を誘発するなどにより、長期的な消費の拡大と安定に積極的に取り組んでいくことも重要であります。そこで、これからの本県花卉生産の振興に当たり、担い手の育成や産地づくりのための方策について農政部長にお尋ねします。
 次に、食文化発信についてお伺いします。
 近年、県内において、伝統料理を生かした活性化対策に取り組む地域やグループが見られてきておりますが、このように各地の生産物を生かした個性ある食文化を現在の消費者ニーズにアレンジしながら継承していくことは、農山村の大きな活性化につながるものであり、本県産業の1つの柱になるものと考えられます。県では、このほど策定された岩手県ウルグァイ・ラウンド合意関連対策推進方針において、岩手を丸ごと売り込む食の文化発信基地づくりを掲げられたことは、まことに時宜を得たものと思われます。また、来年度本県で開催される全国食文化交流プラザの趣旨が、まさにそのとおりのものであると認識しており、これも時宜を得た誘致イベントであると思っております。こうしたイベントは、開催した場所のイメージアップやPRに奔走しがちでありますが、本県の食文化プラザは開催後にも本県食文化に新しい創造を引き起こす契機とすべきであると強く感じているものであります。過去における京都府、宮城県、広島県、熊本県、今年度の岐阜県での開催にも増した斬新な企画と積極的な取り組みを、開催する機関、団体、民間業者が一丸となって行うべきと考えております。そこで、この食文化プラザの本県開催の意義とその後の効果について、農政部長の御所見をお聞かせ願います。
 次に、大規模林道事業の整備促進についてお伺いします。
 御承知のとおり、大規模林道事業は、森林資源に恵まれた全国の7地域において、林業を機軸とする各種産業の総合的な振興を図るため、昭和48年から実施されております。本県においては、昭和48年に八戸川内線、昭和51年に川井住田線がそれぞれ着工され、以来、国の厳しい財政環境に直面しながらも、知事を先頭に、県当局の御努力により、軽米町、山形村、遠野市の3区間が開通したのを初め、岩泉町等の関係町村においても、着実に進捗しているものと思います。特に先般、全国で本県が初めて100キロメートルの開設を達成し、その記念植樹が遠野市において、多数の地域住民の参加のもとに盛大に行われましたことは、御同慶にたえないところであります。しかしながら、大規模林道は、事業着手以来、既に二十有余年を経過しておりますが、本県においても、いまだ部分的な供用にとどまっており、総合的な効果が十分発揮されないのが現状ではないかと思うのであります。私は、大規模林道が林業振興はもとより、山村地域の生活環境の改善や魅力ある村づくりなど、地域の活性化に大きく貢献するものであり、これを高く評価するものであります。しかし、最近の大規模林道を取り巻く情勢は、自然保護運動の高まりなどから、全国的な反対キャンペーンが展開されるなど、まことに憂慮すべきものがあります。このような中で、北上山系の総合的な開発を推進し、緑あふれる県土の整備を図るためには、大規模林道の全線開通が急務であり、なお一層の整備促進が重要かつ緊急の課題であると考えますが、今後の大規模林道事業への取り組みについて、林業水産部長の御見解をお伺いいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、シイタケの安定生産の推進対策についてであります。
 言うまでもなく、シイタケ生産は、農林家にとって就労機会の乏しい山村における就労の場の確保、現金収入源としての貴重な役割を果たしており、農業や木材業等の他産業と相まって、山村地域経済を支える重要な地域産業として定着しているところであります。本県においては、生産者の長年の努力により、年々生産量が増大し、現在においては全国第3位の生産県に位置づけられるまでになっております。今後、岩手のシイタケとしてさらに全国に広く普及していくためには、生産量に極端な増減がなく、毎年安定的に確実に供給していくことが、シイタケ供給県としての信用度の増大につながるものと思われます。ことしは、幸いにもシイタケの発生時期に適度の雨量にも恵まれ、平年作を上回る生産量を確保できたと聞いております。しかしながら、昨年は、春先の異常乾燥により平年作の半分しか生産されず、多くの生産者に痛手を与えました。特に、生産者の中には、ほだ木を5万本以上保有し、生計の大部分をシイタケ生産で賄っている人もあり、大きな打撃を与えたものであります。県としては、このようなかつてない異常な経験を踏まえ、天候に左右されない生産体制の確立とこれによる安定的な生産の推進に向けて今後どのように取り組んでいかれるのかをお伺いします。
 次に、県土の均衡ある発展を目指すための道路網の整備についてお伺いします。
 県はこれまで、県土づくりの指針となる3県総に基づき、本県の持つ豊かな自然や資源を生かした理想郷岩手の実現に向けて、特に産業基盤の整備に積極的に取り組んでこられたところであり、その結果、近年は新幹線や東北縦貫自動車道などの高速交通体系の整備に伴って、特に内陸部においては多くの企業の立地が進み、雇用の場の拡大や地域の活性化など、本県の産業経済は着実な進展を見せております。しかしながら、県北、沿岸地域を見ますと内陸部との地域格差は依然として解消されておらず、人口の減少にも歯どめがかからないのが実情です。これは県北、沿岸地域における高速交通体系の整備の立ちおくれが大きな要因となっているものと考えるところであります。私は、三陸縦貫自動車道と八戸・久慈自動車道の間が、今まで高速交通体系の空白地域になっていたことを心配しておりましたが、昨年宮古-久慈間の国道45号及び国道106号の全線が地域高規格道路として指定を受けたところであり、この整備促進に大変期待を寄せているところであります。そこで、県北沿岸地域の振興に大きな効果が期待される地域高規格道路の整備にどのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、下閉伊地域は、本県でも観光産業の資源の宝庫となっており、久慈地域とともに全国屈指の観光地域として、今後なお一層の観光開発や誘客の増大が必要であり、あわせて農林水産業の特段の振興が図られなければなりません。これを実現するための道路ネットワークの確立は大変重要な課題と考えるものであり、特に普代から岩泉を経由して盛岡に至る県道田野畑岩泉線及び国道455号線のルートについては、観光周遊道路として、また、地域産業の振興上欠かせない主要なルートとなっております。このうち早坂峠は勾配がきつく急カーブの連続のため観光バスや大型トラックなどの交通ネックとなっており、県はこれまで早坂峠の改良について調査、検討を進めていると伺っておりますが、この峠のトンネルの整備にどのように取り組んでいかれるのかお伺いをいたします。
 また、田野畑岩泉線は北部陸中海岸から岩泉の国道455号線を最短距離で結ぶ道路でありますが、一部1車線のところもあり大型バスが通れない状況にあります。ついては、この田野畑岩泉線の整備にどのように取り組んでいかれるのかお尋ねをいたします。
 さらに、地域内道路となっている県道大川松草線は、旧大川村を縦断する地域の唯一の生活道路であり、これまでも改良が進められておりますが、まだまだ未改良区間が残っており、幅員が狭く隘路となっているため、早期の整備が必要と考えるものでありますが、県はどのように取り組まれるのかお伺いをいたします。
 次に、三陸沿岸の観光振興についてお尋ねいたします。
 平成6年の観光客の入り込み状況を見ますと、夏に好天に恵まれたことや新しい観光施設の開設も相まって、県全体としても対前年比7・6%の増加となり、特に沿岸部においては15から30%の大幅な増加を見たところであります。しかし、観光客の入り込み数を地域別に見ますと、盛岡・八幡平地域と北上川流域で約66%を占め、陸中海岸沿岸部全体と県北地域をあわせても34%にとどまっている状況であります。本年、平成7年は陸中海岸国立公園が国立公園の指定を受けて40周年を迎える記念すべき年に当たっています。この機会をとらえて大いに観光宣伝を行い、積極的な観光客誘致を図るための取り組みが必要ではないかと考えます。県北を含めた三陸沿岸地域の今後の観光振興について、県としてどのようにお考えなのかお伺いをいたします。
 次に、保健所の再編整備についてお伺いします。
 我が国における地域保健を取り巻く状況は、急速な高齢化の進展、慢性疾病の増加等による疾病構造の変化、保健サービスに対する国民ニーズの高度化、多様化により著しく変化しております。このような状況を踏まえ、国において平成6年6月、保健所法を地域保健法に改正したところであります。この地域保健法によれば、住民に身近で頻度の高い母子保健サービスなどについて、主たる実施主体を市町村とし、保健所は地域保健の広域的、専門的、技術的拠点として機能を図るとされております。こうした役割の見直しに伴い、保健所を医療圏にあわせて統廃合する方向が示されております。これを本県にそのまま当てはめますと、本県において現在15ある保健所が9保健所に統廃合されることとなります。私は、社会経済情勢の変化に対応して、行政機構を再編する必要性について否定するものではありませんが、出先機関の統廃合については、地域の中心部においては大きな問題はないものの、周辺の住民にとってはサービス水準が低下するおそれが多分にあると思われます。保健所の統廃合に当たってこうした住民へのサービスへの低下があってはならないと思いますが、環境保健部長のお考えをお聞かせ願います。
 最後に、複式学級と学力の維持向上についてお伺いいたします。
 私は、学校において教育活動を進めるに当たり、学力の水準の維持向上に学級の編制が重要なウエートを占めるものと考えておりますが、現在、少子化傾向に加え、過疎地域においては人口流出による児童生徒の減少が著しく、学級編制のあり方が大きな問題となっております。そこで、本県における複式学級の状況について、地域の過疎化が進んできていることと相まって、その数がどのようになっているか、特に、地域によって複式学級はふえてきているところがあるかお伺いをいたします。
 また、複式学級における学力の維持向上についてでありますが、一般的には、例えば1人の先生が2つの学年の児童生徒の指導をするわけですから、1時間における学習内容とか方法について、どうしても単式の学級とは違ってくると思うのであります。そこで、複式学級における学力の維持向上に向けてどのような工夫をしているのか、お聞かせを願いたいと思います。
 私は、児童生徒数が減少傾向にある今日、基準から見れば複式学級を持つことになるような学校においても、複式学級を解消し、少人数であっても単式学級を置くべきであると考えます。特に、中学校に進学する前の小学五、六年については学力の維持向上のためにぜひ必要なことと思っております。つきましては、今後、複式学級の解消に向けて積極的に取り組まれるよう要望いたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきますが、一、二の質問につきましては、代表質問、そしてさきの一般質問と重なったものもございますが、重要な課題と考えておりますので、御理解の上、誠意ある御答弁をお願い申し上げまして質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐々木大和議員の御質問にお答えいたします。
 まず、知事の県政推進の基本姿勢についてでありますが、知事という職は、行政の責任者という立場を持つものである以上、県政の執行は、当然、厳正中立でかつ公正に行われなければならないものと考えます。一方、知事という職が公選によって選ばれたものであることから、行政の責任者という立場を持ちながらも、同時に政治的な主張を持つものであり、私なりの政治的な考え方を県民の皆様にお示しすることが適当であると考えたところでございます。
 いずれにいたしましても、公正な県政の実現は私の基本姿勢であり、県議会や県民の皆様の率直な御意見に謙虚に耳を傾けながら、透明性の高い、わかりやすい県政を推進するため全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 次に、中山間地域の活性化に対する基本的な考え方についてでありますが、中山間地域、とりわけ山間地域は傾斜地が多く、農地が分散していることなどから農業の生産性が他の地域に比べて低く、一部においては耕作放棄地も出ており、また、若者の流出などにより過疎化が進み、集落機能の維持が難しくなってきている地域も見られております。したがいまして、中山間地域の振興に当たりましては、殊にもこうした山間地域の実態を十分踏まえながら、それぞれの地域が置かれている条件に応じ、基幹産業である農業については、特色ある資源を積極的に生かした集約作物の導入拡大や、農産物加工などにより付加価値の高い農業を展開していくことが重要であると考えております。既に地域によっては野菜や花卉などの全国に誇れる優良産地も形成されてきておりますので、こうした先進事例を各地域に波及してまいりたいと考えております。
 また、林業や観光、商工業などの振興による就業機会の拡大を図るとともに、若者も魅力を持って定住できるような、緑豊かで快適な生活環境の整備を図ることが肝要であると考えております。こうした考えのもとに、今後におきましても住民みずからの内発的な取り組みを助長しながら、地域産業の振興、集落機能の強化など、幅広い観点から総合的な対策を講ずることにより、活力に満ちた地域社会を形成し、21世紀へ引き継いでまいらなければならないものと考えております。
 次に、地域高規格道路の整備についてでありますが、国の第11次道路整備5カ年計画における新たな施策として、高規格幹線道路と一体的に機能し、地域集積圏相互の交流を促進して強い地方圏を形成するための地域高規格道路の構想が打ち出されたところであります。今回指定を受けた本県の路線は、国道45号の宮古-久慈間、国道106号の宮古-盛岡間及び国道46号の盛岡-秋田間でありますが、この地域高規格道路は、自動車専用道路、またはそれに準ずる規格の道路でありまして、三陸縦貫自動車道などと一体的に機能する、まさに本県の高速交通体系の一翼を担うものでございます。このうち、国道45号の普代地区及び国道106号の達曽部地区が本年4月整備区間に指定され、現在、事業を進めているところでございます。私は、この地域高規格道路を含む高速交通体系の整備は、県北・沿岸地域の産業経済の発展はもとより、県土の均衡ある発展を促す上で重要な社会基盤であると認識しておりまして、先般の政府予算統一要望におきましても最重点項目として掲げ、県議会ともども国等、関係機関に強く要望してまいったところでございます。したがいまして、今後とも地域高規格道路の整備促進に努めるとともに、これら高速交通体系の効果を県内全域に波及させるため、これを補完する国県道等の道路網についても積極的にその整備に取り組んでまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔総務部長上田紘士君登壇〕
〇総務部長(上田紘士君) 県債の償還の見通しと今後の県財政に与える影響についてでありますが、御指摘のとおり、平成7年度末の一般会計地方債の現在高は6、679億円程度になる見込みであります。一方、これらの県債の今後の償還額の推移を見てみますと、平成11年度が償還のピークとなり、その償還額は約843億円程度になるものと見込まれるところであります。ただ、この償還額の中には、地方財政の収支不足対策としての臨時公共事業債や住民税減税等に伴う減税補てん債あるいはふるさとづくり事業等の財源となっている地域総合整備事業債などのように、将来の償還費に地方交付税措置のあるものが含まれておりますので、これらを控除した、いわば純県負担額という考え方でとらえてみますと、同年度の償還額はさきの総額のおおむね半分程度になるものと推計されるところであります。
 今後におきましても、償還費に対しまして交付税措置のある優良な地方債の導入に努めるなどの工夫によりまして、公債費の増高が直ちに県の財政運営に支障を来すことのないように最善の努力を重ねてまいるほか、国に対しましても、地方財政の健全性を確保するため、できる限り地方一般財源の充実確保が図られるように要望してまいりたいと考えております。
   〔農政部長高橋洋介君登壇〕
〇農政部長(高橋洋介君) まず、公共牧場の利用状況と今後の対策についてのお尋ねでございますが、議員御指摘のとおり、公共牧場の利用率は年々下がってきておりまして、今、約3分の1の牧場が管理運営に支障を来している状況にあるわけでございます。このため、今後の対策といたしましては、地方振興局を単位として、広域的な視点に立ちまして放牧牛を畜種や能力別に集約することや、採草や放牧等の利用目的別に牧場機能を再編成することによりまして経営の安定を図る必要があると、そのように考えております。
 また、新たに飼料生産の請負組織、いわゆるコントラクターと言っておりますが、これの育成なり、また、滞在型触れ合い施設の整備などによりまして効率的な利用を推進するほか、林業、また、野菜等との連携なども取り入れながら、地元の合意が得られた地域から順次全県的に再編整備してまいりたいと考えております。
 次に、花卉生産の振興についてでございますが、県といたしましては、日本一のリンドウに加えまして、今後、小菊やトルコキキョウなどの品目の導入拡大も図りまして、平成10年を目途に生産額を現在の約2倍の100億円にまで拡大をし、全国有数の花卉複合産地を目指してまいりたいと考えております。そのためには、花卉部門を経営の柱とする農業者の育成確保が最も重要でありますことから、今年度花きセンターに高度な栽培技術や多様な品目、品種を実証展示するための温室、また、長期研修が可能な宿泊施設を整備するなどいたしまして生産者や指導者の研修機能を強化いたしますとともに、広く県民に花との触れ合いの場や多彩な花卉情報なども提供してまいる考えであります。
 また、産地づくりの支援のため、オリジナル品種の開発や広域的な育苗施設の整備、パイプハウスなどによる施設化、さらには花卉専用の予冷・保冷施設の導入など、生産から流通に至る積極的な対策を講ずることとしているところでございます。
 次に、全国食文化交流プラザについてでございますが、来年10月に本県で開催されます食文化プラザは、本県の豊かな風土に培われた多彩な食文化を国内はもとより世界に向けて丸ごと売り込み、岩手のイメージアップと県産品の評価向上を図る絶好の機会であり、食にまつわる広範な部門を一堂に集め、総合的に紹介する、本県では初のイベントでございます。その運営に万全を期するために、去る6月13日には54団体で構成いたします準備委員会を設立し、現在、専門家による企画委員会におきまして、岩手らしく、かつ独創的な催しとするにはどうあればいいのかということにつきまして鋭意検討を進めているところでございます。
 また、この食文化プラザの開催を契機といたしまして、本県のすばらしい食文化を再発見するとともに、多様化する消費者ニーズに向けた新しい食文化の創造や地場産業興しにまで発展させることが期待されておりまして、食文化プラザの開催は、食の文化発信基地いわての形成に向けた大きな起爆剤になるものと考えております。
   〔林業水産部長田尾秀夫君登壇〕
〇林業水産部長(田尾秀夫君) まず、大規模林道事業の今後の取り組みについてでありますが、御案内のとおり、本県における大規模林道は、国道や県道などを利用しながら、北は軽米町から北上山地中央部を縦断いたしまして大東町に至る路線が計画されており、いわば北上山系の大動脈とも言える林道であります。
 県といたしましては、北上山系地域の林業の振興のみならず、活力と潤いに満ちた地域社会を形成する上で極めて重要な路線でありますことから、常に政府予算要望の最重点項目に掲げ、大規模林道事業の促進に努めてまいったところであります。この結果、全国で初めて100キロメートルを超える区間が完成し、進捗率も平成7年度末に76%になる見込みでありまして、全国平均の41%を大幅に上回る高い進捗となっております。しかしながら、議員御指摘のとおり、大規模林道は全面開通して初めて所期の効果が十分に発揮されるものであり、関係市町村の期待も極めて大きいと認識しております。このため、1日も早く全線が開通いたしまして北上山系地域の発展が図られますよう、関係市町村ともども渾身の努力を傾注してまいりたいと存じます。
 次に、シイタケの安定生産の推進対策についてでありますが、本県では昭和40年代の初めから干しシイタケの生産に鋭意取り組んでまいりました結果、現在では生産量が約900トンに達しておりまして、大分、宮崎県に次いで全国第3位の生産県に発展したところでございます。また、本県の干しシイタケの品質は、農林水産祭で天皇杯を受賞するなど、日本一の折り紙がつけられているところであります。しかしながら、議員御指摘のとおり、昨年の生産量は、春先の降水量が極端に少なかったため、平年に比較して、高い地域でも6割、低い地域では3割程度に減少いたしまして、生産者は大きな打撃を受けたところであります。このような中にありましても、スプリンクラーなどの散水施設が整備されていたため平年作に近い生産量を確保した生産者がおられましたので、今後さらに本県のシイタケ生産を振興していくためには、散水施設の整備をより一層進めるとともに、人工的にシイタケの発生環境をコントロールできるハウス施設などを整備いたしまして、天候に左右されずに安定的に生産できる体制を確立することが喫緊の課題であると存じております。このため、今定例議会に補正予算をお願いしているところでありますが、当面3カ年間で散水施設や人工ほだ場、ビニールハウスなどの整備を緊急に促進いたしまして、本県のシイタケ産業のさらなる発展を図ってまいりたいと存じます。
   〔土木部長帷子幸彦君登壇〕
〇土木部長(帷子幸彦君) 道路の整備についてでありますが、広大な県土を有します本県にとって、均衡ある発展を図るためには、県土を横断する主要幹線道路の整備が大きな課題となっております。中でも国道455号は県都盛岡市と北部陸中海岸地域とを結ぶ重要な幹線道路であることから、交流ネットワーク道路整備事業の小本ルートとして位置づけ、整備を進めてきたところであり、お尋ねの早坂峠についても現在調査に取り組んでいるところであります。しかし、早坂峠は盛岡側の標高が高く、岩泉側が低いというような地形条件が厳しいため、これまでの調査では3、000メートル級の長大なトンネルが予想されております。したがいまして、高度な技術と膨大な事業費を要することから、さらに経済的なルートや地質調査など、なお一層の検討が必要となっているところであります。したがいまして、他の大規模な道路事業の進捗状況を勘案しながら、今後とも事業化に向けた調査を進めてまいりたいと考えております。
 次に、一般県道田野畑岩泉線の整備についてでありますが、この路線の一部は本年4月県道に昇格したばかりで、御指摘のとおり、1車線の区間も残っております。しかしながら、この路線は、普代村など、北部陸中海岸地域から岩泉町、さらに早坂峠を経由して盛岡市に連絡する最短のルートを構成している重要なルートでありますことから、今後の交通量の推移や地域開発の動向を勘案しながらその整備に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、一般県道大川松草線の整備についてでありますが、この路線は国道106号と340号を連絡する沿線住民の唯一の生活路線であることから、これまで櫃取-松草間について鋭意整備を進めてまいりましたが、昨年ようやく全線の舗装が完了しまして、交通の条件が著しく改善されたところであります。さらに、今年度は大川-櫃取間のうち沢口地区の整備に着手することとしており、その他の未改良区間についても今後の交通量の推移等を勘案しながら順次整備を進めてまいる考えであります。
   〔商工労働部長古館敏男君登壇〕
〇商工労働部長(古館敏男君) 県北を含めた三陸沿岸地域の観光振興についてでございますが、当地域は、すぐれた観光美や豊かな海の幸、透明度日本一の龍泉洞など、全国に誇り得る観光資源を有しており、内陸部と結ぶ道路網の整備や宿泊施設などの整備が着々と進んでいるところであります。また、県北地域におきましても、折爪馬仙峡県立自然公園を初め、奥中山高原、金田一温泉等、多くの観光資源に恵まれ、東北自動車道八戸線の全線開通などによりまして開発の諸条件が一段と整備されてきております。
 県といたしましては、これまで平成4年に策定いたしました第7次観光振興計画、ゆっとり岩手観光プランにおきまして地域別に施策の方向を検討し、観光客を受け入れるための基盤整備として広域観光ルートの設定や案内標識の整備、さらには、さわやか岩手イメージアップ大作戦による観光地のトイレの整備などを行ってきたところであります。御案内のとおり、本年──平成7年──は陸中海岸が国立公園の指定を受けて40周年を迎えた記念すべき年でもありますので、この機会をとらえまして、観光客の誘致拡大のため、関係機関、団体とともに首都圏を中心とした各種キャンペーンやイベント等を積極的に展開しているところでございます。今後におきましても、四季を通じた観光の誘致に努力してまいるとともに、関係市町村及び関係団体との連携を密にしながら、県北・沿岸地域の特性に応じた観光振興が促進されるよう努めてまいりたいと思っております。
   〔環境保健部長松本義幸君登壇〕
〇環境保健部長(松本義幸君) 保健所の再編整備についてでありますが、昨年、保健所法が改正されて地域保健法と改められまして、サービスの受け手である生活者の視点に立って、母子保健などの身近な保健サービスが市町村に移譲され、既に市町村で実施しております老人保健と一体となった、生涯を通じた健康づくり体制を整備することとされたところであります。
 一方、保健所につきましては、このような市町村の身近な保健サービスを支援する立場から、サービス施設の有機的連携を目指すなど企画調整機能が付与されるとともに、精神保健、難病対策、エイズ対策あるいは食品衛生の監視指導などの専門的、技術的、広域的機能を強化することとされたところでございます。このため、従来の保健所体制につきましては、ある程度の集約化を図ることで全体としての機能を強化することとなっております。
 なお、保健所の集約化に際しましては、引き続き保健所が担うこととされております要援護者に対するサービスなどにつきましては、市町村とも連携をとりながら、きめ細かな訪問サービスを行うなどして、保健所サービスの低下を来さないように努めてまいりたいと考えております。
   〔教育長橋田純一君登壇〕
〇教育長(橋田純一君) 複式学級と学力の維持向上についてお答えいたします。
 まず、複式学級の状況についてでありますが、公立小中学校の学級編制の基準は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づいて定められているものであります。お尋ねのありました複式学級の編制はこの法律に基づいているものであり、平成7年度における本県の複式学級数は小学校307学級、中学校11学級となっております。ちなみに、これを10年前の昭和60年度と比べてみますと、小中学校合わせて68学級の減少となっております。また、これを地域別に見てみると、県北では減少傾向にあります。その他の地域ではほぼ横ばいの状況となっております。複式学級数の変化の要因は、児童生徒数の減少によるもののほか、教職員配置の改善措置が逐次進められていることなどによるものと考えております。
 次に、複式学級における学力の維持向上についてでありますが、県教育委員会といたしましては、児童生徒が学校規模の大小や地域の別を問わず、ひとしく学習することができるよう、これまでも諸条件の整備に努めてきているところであります。
 お尋ねのありました学力の維持向上につきましては、複式学級の特性上、2つの学年の児童生徒の発達段階に応じた教科内容の再編成や、各教科の内容構成を考慮し、いわゆる異学年同教材方式を導入するなど、指導の充実に努めているところであります。
 申し上げるまでもなく、複式学級は少人数の編成となっていることから、個々の児童生徒の理解度の把握が容易であるという利点があります。しかし、少人数であるがゆえに、学校教育に求められている集団としての活動が不足がちになることなどの課題もあります。したがいまして、複式指導の充実のためには、その特性を十分に理解し、熱意と情熱を持って指導に当たる教員の力に負うところが大きいものであると考えており、県教育委員会といたしましては、市町村教育委員会との連携のもとに、各種交流事業の開催を初めとして、複式担当教員研修の実施、複式指導資料集の発行、配布など、指導体制の充実を図り、今後とも学力の維持向上に努めてまいりたいと考えております。
〇副議長(及川幸郎君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時3分 休 憩
出席議員(47名)
1番 斉藤 信  君
2番 黄川田徹  君
3番 佐々木一榮  君
4番 小野寺好  君
5番 佐々木博  君
6番 中屋敷十  君
7番 大久保豊  君
8番 浅井東兵衛  君
9番 佐々木大和  君
10番 藤原泰次郎  君
11番 千葉 伝  君
12番 伊沢昌弘  君
13番 須藤敏昭  君
14番 折居明広  君
15番 田村正彦  君
16番 伊藤勢至  君
17番 佐藤一男  君
18番 瀬川 滋  君
19番 渡辺幸貫  君
20番 谷藤裕明  君
21番 三河喜美男  君
22番 水上信宏  君
23番 船越賢太郎  君
24番 久保田晴弘  君
25番 千葉 浩  君
26番 長谷川忠久  君
27番 村上恵三  君
28番 村田柴太  君
29番 藤原良信  君
30番 吉田洋治  君
33番 工藤 篤  君
34番 菅原温士  君
35番 菊池 勲  君
37番 樋下正光  君
38番 藤倉正巳  君
39番 及川幸郎  君
40番 那須川健一  君
41番 伊藤 孝  君
42番 山内隆文  君
43番 佐藤正春  君
45番 佐々木俊夫  君
46番 山門一郎  君
47番 菊池雄光  君
48番 佐藤啓二  君
49番 堀口治五右衛門  君
50番 吉田 秀  君
51番 藤原哲夫  君
欠席議員(3名)
31番 飯澤忠雄  君
36番 小原宣良  君
44番 千葉英三  君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時20分 再 開
〇副議長(及川幸郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。斉藤信君。
   〔1番斉藤信君登壇〕(拍手)

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