平成7年6月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

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〇16番(伊藤勢至君) 新進党の伊藤勢至であります。
 一昨日、片方盛議員が急逝されました。これからいろいろと御指導賜りたく思っておりました矢先、まことに残念でなりません。謹んで哀悼の誠をささげ、心から御冥福をお祈りをいたします。
 私は、去る4月9日投票の統一地方選におきまして、初めて議席をいただいたものでございますので、正副議長初め、各議員の皆様の御指導を賜りながら、この4年間、県勢の発展と県民の福祉の向上のために努力していく覚悟でありますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。
 また、同時に誕生されました増田新知事に、改めて心からお祝いを申し上げます。全国最年少、岩手県政史上初めての43歳の若き知事を擁することは、県民の厳粛なる選択であります。来るべき21世紀、未知の時代へ船出をしていく岩手丸の船長として、若き知事にかじ取り役を託したことでありますので、増田知事におかれましては、どうぞ正々堂々と、かつ、公平に公正にリーダーシップを発揮され、県勢の発展と県民生活の向上のために邁進されますよう願ってやみません。
 所信表明の中で、21世紀の岩手の創造に向けて、大胆に挑戦し、柔軟な発想と情熱、信念を持ってあらゆる困難に立ち向かうと決意を述べておられました。さらには、県政を託されたこの4年間は、本県を21世紀に橋渡しする重要な時期であるとの認識をも示しておられました。まことに真摯な姿勢と同時に、青年知事として進取の意気に富む感銘深い所信の表明であり、満腟の賛意を表すると同時に、大いにエールを送りたいと思います。また、不肖私も、同世代を生きる1人として、多数の同志とともに、五十一分の一の職責を果たすべく努力してまいる所存でありますので、増田知事を初め、執行部の皆様の御指導を賜りますようお願いを申し上げます。
 それでは、通告に従い、私の提言も含めながら順次質問してまいりますので、明確なる御答弁を望みます。
 質問の第1点は、3県総の見直しの中での沿岸振興の考え方についてであります。
 この3県総は、前任の工藤知事のもと、豊かな自然の中に活力と希望にあふれ、心のふれあう岩手の創造を基本目標として、岩手の持つすぐれた自然環境を大切にしながら、地域の個性や特色を十分に生かして、物心ともに豊かな地域社会の形成を目指したものでありました。10カ年計画の前半を経過した現在、その施策の達成についてはおおむね順調に推移してきたものと思いますが、この間、外的条件が変化をしてまいりました。その大きなものは、東北新幹線の盛岡-八戸間がフル規格で着工になったことと、もう1つは、海の新幹線と言われますテクノスーパーライナー──以下、TSLと略します──の実海域模型船飛翔の試験航海が始まり、本年8月28日、宮古港に試験寄港することが決定したことであろうと思います。これは陸上交通、海上交通の違いはあれ、どちらも21世紀の県政を語るときに、巨視的観点から岩手の交通ネットワークの根幹をなすものであると考えます。一方では、新幹線が八戸まで延びることによって、盛岡は通過点になってしまうのではという危惧があるようであります。かつて新幹線が大宮までの暫定開業で、その後上野駅、東京駅と順次延びていったわけですが、横軸を持つ大宮はともかく上野は寂しい限りでありまして、盛岡がそうならないという保証はどこにもありません。では、そうならないためには今から何をするべきか、これが3県総の見直しの根本になるべき点であると考えます。
 一昨年、盛岡の商工会議所のある部会が、県都盛岡を将来50万都市にするためにと題して研究をし取りまとめたレポートの中に、国道106号の先にある三陸リアス海岸が盛岡の海の玄関口であるという文言が初めて出てまいりました。つまり、盛岡を50万都市にしようとするならば、十和田八幡平国立公園という山岳リゾートと陸中海岸国立公園という海のリゾート地帯を、盛岡を通じて一帯のエリアとしてとらえなければならないという提言であります。もっと要約しますと、岩手県の横幅を盛岡を絡めて強調すべきであるということだと思います。第2国土軸という議論の中でとらえますと、新幹線と東北自動車道は文字どおり縦の2本の太い線でありますが、これを補完しそのラインを強いものにするために、当然横軸としての横断道路が必要であります。ネットワークはシングルよりはダブルに、ストレートよりはクロスした方がはるかに強いわけですから、従来から議論のありました宮古から県都盛岡を経て秋田に至る道路というものが、いよいよ現実味を帯びてくるものと思われます。また、この道路こそ、三陸沿岸の振興という問題や沿岸と内陸の格差是正ということに大きな役割を果たす道路でありますし、昨年12月に、宮古盛岡横断道路が地域高規格道として指定になったことも含めて、盛岡-秋田間は先のこととしても、宮古-盛岡間の道路に取り組む知事の考え方をお伺いをいたします。
 次は、TSLについてであります。
 本年3月に同じ沿岸出身の長谷川議員から、TSLについての取り組みを積極的に行うべきとの提言があったようでありますが、このときの当局の答弁は、TSLの誘致には、大量でしかも高速輸送に適合した貨物の存在が必要となるが、港湾貨物量が十分とは言えない本県の現状において云々と、余り積極的でないように思いました。これももっともな答弁であろうとも思いました。しかし、今回試験寄港する31カ所の港がすべて条件を備えているとは思えませんし、さらには本格運航となる10年ぐらい先に、TSLが目指す寄港地は国内を越えて国外になることも十分に考えられることであります。本州最東端の宮古港は、緯度の関係上、日本で一番アメリカに近いのでありますが、特に北米のタコマ港までは時速100キロで4昼夜、現在の半分の時間距離となります。また、現在日本が外国から受け入れている輸入魚──金額にして1兆6、000億とも言われております──を、タコマに集めて宮古に運ぶことも可能になるかもしれません。また、北洋でとれた漁獲物を鮮魚の状態で関東、関西に運ぶこともできるかもしれません。
 30年前に、県庁を建てるときには冷房が必要だという意見は少数であったと聞きますが、しかしだれか骨っぽい人がいて、県庁は県民のお手本になる建築物であるから、今はともかく冷房は絶対に必要だと、そう頑張ってくれればよかったのになと思いながら、夏場に汗を流して仕事をしている職員もおられることでありましょう。また、花巻空港を最初から3、000メートルにしておけば、今では東北のハブ空港として相当なものだったと残念に思っている方も多いと思います。大風呂敷と言われた後藤新平や、太平洋のかけ橋たらんと胸を張った新渡戸稲造を輩出した我が岩手県において、現在の最高の頭脳集団がほかならぬ県庁であると期待いたします。あらゆる自治体間競争に勝ち抜いていくために、よーいどんで走り出すのではなく、多少のフライングであっても、少々のリスクを負っても、進取の気構えを持って新しいことに取り組んでほしいと思うのですが、TSLへの今後の対応について当局の熱意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
 道路の問題に触れましたので、あわせて当局にお伺いをいたしますが、現在、交流ネットワーク道路整備事業のもと、隣接する広域生活圏相互間をおおむね100分で結ぶことを目標に、現在、国道106号の川井村達曽部地内で橋とトンネルの工事が進捗をしておりますが、この早期完成に向けての当局の重ねての御努力をお願いをいたします。
 前段申し上げましたが、かつて地域高規格道と絡んで将来指定を受けられた場合に、つまり、4車線の道路でいくということになっても、すぐに対応できるようにこの橋もトンネルも4車線の規格で対応するという議論があったやに記憶しておりますが、現在、進行中の橋とトンネルはどう見ても2車線の規格にしか見えないのですが、この点について当局から御説明をいただきたいと思います。
 また、簗川地内にできるダムのために、106号線が水没をするので当然新ルートになるとのことでありますが、その新ルートはどのようなものか、よろしければ教えていただきたいと思います。
 また、釈迦に説法かもしれませんが、その新ルートは冬場の積雪のことを考えれば、当然南向きの斜面を利用すべきものと思いますがいかがでしょうか。あわせて、三陸縦貫道山田-宮古間の進捗状況、そして県立宮古病院への市内からのあと1本の道路、いわゆる北部環状線への今後の取り組みにつきましても教えていただければ幸いであります。
 次に、住民の足としての三陸鉄道とJR在来線について質問いたします。
 沿岸住民の長年の夢が、国内初の第3セクター方式で実現してから早や12年目を迎えようとしております。開業年度は260万人の利用があり、以来、9年間は黒字経営を続けてきましたが、10周年目を迎えた平成5年度に初めての赤字を計上しました。平成6年度には、利用客も200万人台を割り込むまでに減少し、平成6年度も引き続き赤字経営で今後とも厳しい状況にあります。このことは、利用する住民側から、今一度自分たちの鉄道という意識の高揚を図ることや、積極的に利用するための手だてを考えること等も当然必要でありますが、久慈-盛間の一貫経営の実現等県の指導を仰ぎたい面もあります。三陸鉄1道の健全経営の確保と利用促進について伺いたいと思います。また、これに関連して、岩泉線の存続や山田線の利用促進についてお伺いいたします。
 そもそも、山田線の幕開けに、国会の中で、総理はそんな山奥に鉄道を敷いて山猿でも乗せる気ですかという質問が出され、よく調べてもらえればわかることですが、日本の国有鉄道法では山猿は乗せないことになっていますと、原敬総理大臣が応じたことは余りにも有名でありますが、現在のJR山田線は、利用客が著しく減少し空気を乗せて走っている状況です。これは、乗客がバス利用に変わっているためと受け取られがちですが、地元住民から言わせれば、利用しにくいダイヤなのでついついということになってしまいます。宮古市では、地方拠点都市の指定を受けた中で、駅前の再開発や南口の再開発等を盛り込んだ新たなまちづくりを指向しておりますが、駅とは、汽車、バス、タクシーや多数の人々が出入りしてこそ、その機能が発揮されるものと思います。現在のJR山田線の乗車率を統計にとって、それをベースとして採算という点から責められますと、近い将来、重大な局面が来るのではないかと危惧を覚えるものであります。知事は所信表明の中で、東北新幹線盛岡以北の建設促進に関連して、盛岡-八戸間の並行在来線については、沿線地域住民の利便性を損なうことが決してないように最大の努力をする、と決心を述べておられました。あくまでも住民サイドに立ったお考えに敬意を表するものであります。同じような観点から、沿岸と下閉伊振興のためにも、JR山田線と岩泉線の利用促進と機能充実に取り組んでいただきたいと思いますが、あわせて知事にお伺いをいたします。
 次に、宮古地域における救急医療体制の充実強化についてお伺いいたします。
 先日、医療局をお訪ねした際に、東北各県の県立病院の数を聞いてびっくりいたしました。秋田県1カ所、青森県2カ所、宮城県3カ所、山形県5カ所、福島県9カ所、新潟県15カ所、そして我が岩手県は28病院があるということで、昭和25年に発足した県営医療がいかに県民に対して医療サービスの実を上げてきたかがよくわかり、大変頼もしく思っております。
 宮古広域圏をカバーしている県立宮古病院についてでありますが、平成4年6月に宮古地域住民の熱い期待を受けて、沿岸中央部における中核的な病院として整備されたところであり、県の対応には深く謝意を表するものであります。しかしながら、宮古地域における救急医療体制を考えた場合に、仮に宮古病院で対応できない高次救急医療となれば、盛岡の中央病院か高次救急センターへ救急車にて搬送ということになろうかと思います。この場合、救急車の中から親センターに電話回線を使っての指示、あるいはデータのやりとりがあるのかもしれませんが、宮古-盛岡間のほとんどの区間が自動車電話の通じない区間で、カーラジオさえ入りにくい区間でありますから、緊急患者を乗せて盛岡に向かう1時間半という時間は、情報から全く隔離された世界となるわけであります。以上のことから宮古広域圏内で発生した救急患者に対する医療は、一たん宮古病院である程度の処置をしてからということになろうと思いますが、そのためにも救急施設の充実とスタッフの拡充強化をすべきと思うのですが、これについて当局の考え方をお伺いいたします。
 次に、観光資源の新たな開発について提言を含めて質問をいたします。
 観光というものは地域経済に直接影響のある、言ってみれば外貨を稼ぐには最も手近な手段であると思います。その効果は必ず県民税となってあらわれるものと考えれば、道路や橋、下水道等のインフラの整備とは違った意味でやりがいのある投資であろうと思います。本州最東端重茂半島に位置します月山は、標高456メートル、晴れた日にはアメリカが見えるような気がする、まことに眺望絶佳の隠れた観光資源であります。頂上に立つと360度のパノラマが開けますが、その半分が太平洋、特にこれからの夜景は殊さらすばらしいものがあります。イカ釣り船のいさり火で太平洋が光の海となり、水平線から満月が静かに上り、目を転ずれば閉伊川の上流に秀峰早池峰山が富士山よりも富士山らしく見える。その間にきらめく宮古市街地の街の明かり、大変ロマンチックでありますが、私は現在でも秋田県の寒風山をはるかに凌駕しているものと思いますし、函館山からの夜景が100万ドルというのであれば、宮古の月山からの夜景は101万ドルあるとさえ思っております。そこで、マルチ時代を迎えてこれに対する基本的な考え方と、あわせて月山の頂上にマルチタワーを建設するような考え方はないか、お伺いをいたします。
 マルチメディアタワーとは、地域において電波利用の増大にこたえ、電波を利用した電気通信システムの普及促進のための拠点となる施設であり、地域社会の活性化を支援するため大きな役割を果たすものであり、昭和63年、郵政省よりマルチメディアタワーが民活法の特定施設の1つに加えられ、さまざまな政策的支援措置が受けられることとなっております。アンテナ設置によるユーザーの対象は、まず自動車電話、無線呼び出し、ポケットベル、各種業務用無線、MCAシステム、テレターミナルシステム、各種公共無線などの移動体通信、また、送信アンテナが必要な放送局やCATVにおけるスペースケーブルネットの受信アンテナ、VSATにおける衛星通信の送受信アンテナ等のほか、拠点間通信に使われているマイクロウエーブの送受信パラボラアンテナが適しているということであります。三陸沿岸の中心に位置し、三陸漁場の中心でもある宮古市は当然漁業無線の中心になり、より確実に、より遠くへ電波の目を届けることができます。また、前段触れました医療の面において、例えば、東北大学医学部や岩手医大と28カ所の県立病院をオンラインで結ぶことによって、それぞれのオーソリティーの医師の所見を1カ所で受けられることになり、患者と家族にとって最大の朗報となることと思います。県土の広さを念頭に置けば、物体の移動については物理的にある程度の時間はやむを得ませんが、だからこそ電波を有効に活用することで、そのハンディキャップを補って余りあるものと思います。東京のように過密なところでは、極論すれば回覧板でも情報の伝達はできますが、岩手の広さではそうはいきません。ちなみに世界のマルチアンテナを見ますと、一番高いのがカナダはトロントにあるCNタワー549メートル、2番目が東京タワーの333メートルでありますから、標高456メートルの月山の上に94メートルのタワーを建てれば、トロントのタワーを1メートル上回って550メートルとなり、先端の高さ世界一となります。岩手県に世界一を持てるいい機会であります。また、この中間に展望台等を設置できれば、十分に三陸沿岸観光の目玉となり得るものと信じます。啄ケ崎の灯台、月山のマルチタワー、将来的には宮古湾をまたぐベイブリッジ、そして浄土ケ浜と結ぶことで、県が目指す滞在型の海の観光地として、大いなる展望が開けるものと確信をいたします。宮古市では今年度、月山を含む重茂半島の開発はいかにあるべきかの調査事業に着手しております。本州最東端の重茂半島は三陸宮古の宝であると同時に岩手県の宝でもあります。
 以上、マルチメディアに対する基本的な姿勢とタワーの建設については知事より、重茂半島の観光開発については関係部長よりそれぞれ答弁をいただきたいと思います。
 次に、宮古市の未利用の資源として、サーモンの母なる川津軽石川の河川敷利用について伺います。
 宮古市の閉伊川と長沢川の整備につきましては、関係者の皆様に御礼と感謝を申し上げる次第であります。もう一つ残っている津軽石川は本州一のサケの川であり、白鳥の来る川としても有名であります。その河川敷は稲荷橋から山田町豊間根まで4キロメートルあり、南から宮古に入ってくる人たちのウエルカムロードになるものと思います。しかも、津軽石地区には老人や子供たちがゆっくりと過ごせる公園がほとんどない状態で、地域の人たちから、河川敷を利用した、例えばサーモンパークというような、川や水に親しむ公園が望まれております。内陸の北上川等で秋の風物詩として芋のこ会や芋のこなべがあるのなら、当然津軽石はサケなべやサケ汁でいいと思いますが、いかがなものか、担当部局の考え方を伺いたいと思います。
 最後に、三陸沿岸振興について1つの提言を申し上げたいと思います。
 北は種市町から南は陸前高田市までの704・5キロメートルの海岸線を有する三陸沿岸の各地域が、今日まで連携すること、あるいは連帯をしようとしたことは余りなかったような気がいたします。同じ海に面するとはいえ、暖流と寒流と違うように、同じ条件に見えながら実態は少々違っていたのであります。やませによる北部海岸の飢餓の状況、それを原因とする三閉伊一揆あるいは津波による被害等々、同じ沿岸と言ってもそれぞれの来し方はすべて違うといっても過言ではありませんでした。そういう中で三陸鉄道の開通時、沿岸県民は熱く燃えたのですが、これも宮古-釜石間が抜けていることもあり、連帯しているという意識が今は低調であります。三陸博も成功のうちに終了したことは認めますが、これも沿岸が1つにとまではいきませんでした。今度はまた三陸縦貫自動車道が北上してきますが、これも宮古でとまります。このように三陸沿岸の住民が何か1つを中心として連帯をし、連携をして行動したことはなかったのではないかと思います。そういう中で、何をやるにもまず気持ちを1つにすることからと考え、私はこの際、自動車の三陸ナンバーを提唱したいと思います。種市町から陸前高田市までの海に接する自治体が保有する車両の台数は、平成6年3月現在15万7、969台で、県全体の19・8%、約20%に上ります。四国4県に相当する岩手なら車両ナンバーが4つあってもおかしくないと思います。また、ついこの間は神奈川県で湘南ナンバーが誕生したことは耳新しいニュースとして記憶に新しいことと思います。問題は住民の気持ちの盛り上がりであり、何らお金のかかることではありません。沿岸は連帯をして、連携をしてむしろ精神的には岩手から独立するぞくらいの気構えを持って内陸に物申すべきだと考えるものであります。
 この4年間、時間をかけて運動を展開していきたいと思いますので、御理解と御支援をお願いをいたしまして、今議会の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 伊藤勢至議員の御質問にお答えいたします。
 まず、宮古-盛岡間の道路整備の取り組みについてでありますが、一般国道106号は、三陸沿岸地域の社会経済活動の活性化に大きく寄与する重要な道路であることから、平成3年度に創設した交流ネットワーク道路整備事業においても宮古ルートとして、その整備に取り組んでいるところであります。また、昨年の12月には、全線が地域高規格道路の宮古盛岡横断道路として国から指定を受けたところであります。私は、この道路が北東北の主要な地域連携軸を形成するための重要な社会基盤であるとの認識のもとに、本県の高速交通体系の一環として整備を推進し、県土の均衡ある発展に資するよう、鋭意努めてまいりたいと考えております。
 次に、三陸鉄道の健全経営の確保と利用促進についてでありますが、三陸鉄道は、議員御指摘のとおり、昭和59年の開業以来、黒字経営を続けてまいりましたが、沿線人口の減少やマイカーの普及による利用客の減少、さらには、脱線事故の影響などによりまして、平成5年度には赤字に転落をし、平成6年度も約4、300万の赤字を計上するなど、極めて厳しい経営状況にございます。
 申すまでもなく、三陸鉄道の健全経営を確保するためには、会社としても、将来にわたる経営を見通し、より一層の経営努力を払わなければならないことはもちろんでありますが、沿線市町村及び住民の方々が、三陸鉄道は自分たちの鉄道であるという三陸鉄道の設立当初の原点に立ち戻り、利用促進に取り組むなど、積極的に行動していただくことが肝要であります。そして、県といたしましても、関係市町村とともに組織する三陸鉄道強化促進協議会を通じて、イベント列車の運行等住民参加の行催事の実施、沿線地域における各種情報の収集及び市町村への提供などによりまして利用促進を図り、可能な限り三陸鉄道を支援してまいりたいと考えております。
 なお、久慈-盛間の一貫経営につきましては、かねてからJR東日本との間で協議を続けてきておりますが、運行形態、施設使用料の積算などの問題について意見に大きな隔たりがあり、合意に達していないところでありますので、引き続き三陸鉄道の健全経営の確保を前提とした一貫経営に向けての条件整備がなされるよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、JR山田線と岩泉線の利用促進と機能充実への取り組みについてでありますが、山田線及び岩泉線は、通勤、通学、通院など沿線地域住民の日常生活の足として重要な役割を担っておりますが、近年、沿線人口の減少やマイカーの普及などにより、その利用者は減少傾向を示しております。
 申すまでもなく、鉄道のダイヤは、利用者の利便性を基本として編成されるべきものでありますが、沿線市町村や住民の方々にあっても、創意工夫を凝らし、需要を喚起する努力を重ね、積極的に鉄道利用の促進を図っていくことが必要であると考えております。県といたしましては、地域住民の意向が反映されたダイヤ編成によって一層利便性が高まり、利用の増大につながるよう、かねてから、毎年市町村からの要望をお伺いしながら、山田線及び岩泉線の接続の改善、あるいは列車の増発など具体的な事項について、JR東日本に対して要望を行ってきているところであり、また、先般の平成8年度政府予算要望におきましても、軌道強化、スピードアップ、接続ダイヤの改善を内容とするJR在来線の整備強化について、国及びJR東日本に対して強く要望したところであります。今後とも沿線市町村及び住民の方々が利用促進に努められることを期待しながら、県としても地域住民の立場に立って、国及びJR東日本に対して、引き続き強力に要請してまいりたいと考えております。
 次に、マルチメディアに対する基本的姿勢についてでありますが、近年における情報通信技術の急速な進展により、近い将来のマルチメディア時代に向けた取り組みが官民問わず進められているところであります。国においては、郵政省、通商産業省などが相次いで高度情報化関連施策を打ち出し、また、情報関連産業界においてもマルチメディア時代に向けてさまざまな実験、研究を行っております。文字、データ、音声、画像等を一体的に活用するマルチメディアによって、医療、福祉、教育や産業構造などに大きな変革をもたらす可能性が指摘されており、広大な県土を有する本県にとってもマルチメディアの幅広い活用は極めて重要な課題であると考えております。このため、県といたしましても、マルチメディア技術の活用方法について実験、研究を行うため、世界規模のコンピューター通信ネットワークであるインターネットに接続し、その活用を図るとともに、地域の情報化の推進に資するためパソコン通信活用モデル事業を実施するなど、最新技術の導入に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、月山にマルチメディアタワーをつくってはとの御提言をいただきましたが、地理的特性に合致するかどうかを含め、勉強させていただきたいと存じます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔土木部長帷子幸彦君登壇〕
〇土木部長(帷子幸彦君) まず、テクノスーパーライナー、いわゆるTSLに対する取り組みについてでありますが、今回、宮古港に試験寄港いたします飛翔は、TSLの実用化に向けた研究開発の一環として建造されたもので、2分の1のサイズの実海域模型船であり、TSLの安全運行、運送システム及び事業運営に関する研究を行うものであります。県では、これまでTSLに関しまして幅広い情報収集に取り組んできたところでありますが、この実用化に当たっては、船体構造や港湾施設といったハード面の課題のほか、事業運営の方法、輸送コストの軽減、年間片道30万トンと言われる高速輸送に適合した貨物の確保など、ソフト面においてもなお多くの課題があるとされており、国では、今回の実験結果等を勘案し、引き続き実用化に向けた調査検討を行うと聞いているところであります。県といたしましては、今回の試験寄港を契機に、従前にも増して情報収集活動を展開し、TSLに関する調査研究の迅速かつ的確な把握に努めるとともに、条件整備のためのポートセールスにも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、一般国道106号の道路計画についてでありますが、現在、工事に着手している達曽部地内は、交流ネットワーク道路整備事業の中で実施しておりますが、先般、地域高規格道路の指定を受けたことから、その設計速度を時速80キロメートルとして整備しているところであります。この地域高規格道路は、原則として4車線とされておりますが、本区間につきましては、交通量を勘案し、さらには、早期に整備効果を上げるためにトンネル、橋梁を含め、当面2車線の暫定型で整備を進めているものであります。したがいまして、将来、交通需要の増大や沿線地域の開発計画等により、4車線整備が必要となった場合でも、不整合にならない計画としておるところでございます。
 次に、簗川地内の新ルートについてでありますが、この区間は、県営簗川ダムの建設により約7キロメートルにわたり新たにつけかえるものであります。この計画に当たっては、この路線が地域高規格道路として指定されていることから、規格の高い道路としてルートの検討を進めたものであります。埋蔵文化財や大規模な採石場の有無、長大トンネル等の技術的な難易度、さらに、主要地方道盛岡大迫東和線との接続の関係等から簗川の左岸側ルートとして計画しているところであります。しかしながら、このルートは現道より標高が高く、また、地形が急峻な場所はトンネルを計画していることから、冬期の路面条件としては、比較的良好なものになると考えておるところであります。
 次に、三陸縦貫自動車道の山田-宮古間の進捗状況についてでありますが、本区間は、平成5年7月に基本計画区間に組み込まれたもので、現在、国においてルートを確定するための基礎的調査や一般国道106号との接続などについて検討中であると聞いております。県といたしましても、本区間が早期に事業着手されるよう積極的に国に働きかけているところであります。
 次に、宮古市内から県立宮古病院に至る北部環状線の整備についてでありますが、この道路は、市道整備事業として平成5年度から事業に着手されているものでありますが、県といたしましても、宮古の交通対策上、その重要性が高いという認識をしており、今後ともこの事業の推進について積極的に支援してまいりたいというふうに考えております。
 次に、津軽石川の河川敷の利用についてでありますが、近年、河川敷は、散策、自然観察、ゲートボールなど、さまざまなスポーツやレクリエーション活動の場として有効に活用したいとする要望が高まってきているところであります。したがいまして、県といたしましても、地元市町村を初め、地域住民の意向や動植物の生態系、周辺の景観にも配慮しながら、多目的広場や親水護岸などの環境整備を進めてきたところであります。さらに、良好な河川環境の整備、促進を図るため、国及び県では各河川ごとに河川環境管理基本計画を定め、河川空間の計画的な利用を進めることとしております。津軽石川につきましても、早期にこの基本計画を策定したいと考えているところであり、策定計画に当たっては、地域の代表者や有識者からなる協議会を設け、地域特性を生かした河川敷の利用がなされるよう、検討してまいりたいと考えております。
   〔環境保健部長松本義幸君登壇〕
〇環境保健部長(松本義幸君) 宮古地域における救急医療体制の充実、強化についてでございますが、本県の救急医療体制のあり方につきましては、現在、岩手県救急医療検討会におきまして、3次救急医療施設の整備はもちろんのこと、これらを支える初期及び2次救急医療体制の整備、あるいは道路整備を含む患者搬送体制の整備、救急医療に対する県民の理解と協力など、総合的に検討を行っているところであります。同検討会は本年3月に、当面、早急に取り組むべき事項として、3次救急医療体制の整備及び患者搬送体制等の充実についての中間報告を取りまとめたところでございます。この報告では、心電図電送装置についての計画的な整備や救急救命士の養成配置、高規格救急自動車の配備促進などによる搬送途上における医療の確保、さらには、医療施設へのアクセス道路や医療施設相互を連絡する道路など、高規格幹線道路から市町村道に至る道路の整備を体系的、計画的に推進するとともに、道路管理の充実を図る必要があることなどについても提言がなされているところであります。この検討会は、本年7月をめどに救急医療体制のあり方全般についての最終的な報告を行うこととしております。宮古地域の救急医療体制の充実につきましては、これらの提言を踏まえ、対応を検討してまいりたいと考えております。
   〔商工労働部長古館敏男君登壇〕
〇商工労働部長(古館敏男君) 重茂半島の観光開発についてでございますが、重茂半島には本州最東端の啄ケ崎灯台がありまして、映画の喜びも悲しみも幾年月の舞台として知られておるところでございます。また、浄土ケ浜や宮古湾が一望できる月山があるなど、情緒あふれる美しい景勝地であることから、これまでも岩手県観光連盟や岩手県観光推進実行委員会の事業を通じまして、積極的に宣伝を展開してきたところでございます。
 重茂半島は、自然条件に恵まれた地域でありますが、国立公園の区域を含んでいる地域でありますことから、自然環境との調和に配慮した観光開発を推進することが求められております。したがいまして、今後におきましては、自然公園法等の規制などを総合的に勘案いたしまして、地元宮古市を初めとする関係機関と協議しながら、滞在型観光地の形成に向けた観光振興策を検討してまいりたいと思います。
〇16番(伊藤勢至君) どうもいろいろと御答弁を賜りましてありがとうございました。
 1点だけ知事にひとつ再質問をお許しをいただきたいと思います。
 私が仕入れました最も新しい情報によりますと、今回試験寄港いたしますTSLの各寄港先のそれぞれの知事がお集まりをいただきながら、これからの対応、対策の審議会等を進めていくやに伺っておりますが、もしそういう部分があるいはお聞き及びでしょうか、あるいはお聞き及びでございましたら、どういう部分に積極的に御参加になるお考えでしょうか、この1点だけお伺いをしたいと思います。
〇知事(増田寛也君) TSLの寄港地の整備等につきまして、今お尋ねの審議会などが設置されるという動きに関しましては、現在のところ承知をいたしておらないわけでございますが、仮に設置をされるということになった場合におきましては、前向きに検討してまいりたいと考えているところでございます。
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、千葉伝君。
   〔11番千葉伝君登壇〕(拍手)

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