平成7年6月定例会 第2回岩手県議会定例会 会議録

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〇48番(佐藤啓二君) 謹んで故片方盛議員の御逝去に対し哀悼の意を表し、心から御冥福をお祈り申し上げます。
 私は、日本社会党を代表して、去る6月21日に行われた演述に対し、知事にお伺いいたします。
 まずもって、さきの選挙において多くの県民の支持をかち取られ、めでたく当選されましたことに対しお祝いを申し上げ、ぜひ県民のあなたに寄せられた期待に思いをはせ、生活と福祉の向上に努められ、厳しい現実の中に常にあすの岩手を見詰め、県勢発展のため御精進くださいますよう心からお願い申し上げる次第であります。
 あなたは、演述の冒頭において、21世紀に向けた県土づくりの重要な時期に県政を担当することになったことを述べられました。しかも岩手を離れて育ったあなたからふるさと岩手の発展のために全力を尽くすとの表明や、県土づくりを通じて、岩手が北海道、東北地域における先導的、中心的な役割を担える県として発展するよう最大限の努力をしてまいりたいとの気概に対しては、あなたのお父さん、岩手の厳しい風土の中で育ち、わらじ履きで県内を歩き、岩手の農林業振興のために尽力されたことを知っている多くの人たちは、あなたに対し、信頼と期待を寄せられたことと信じております。
 さて、今、長引く平成不況の中で、多くの県民は世界がもっと平和であってほしいと願っています。東西冷戦体制の終えんを迎え、これでようやく世界に平和が来ると信じたのに、民族や宗教の違いが噴き出て、それを背景に各地に紛争が多発している現実なのであります。また、高齢化が進む中で、老後を安心して暮らせる社会であってほしい、そして、毎日が生きがいを感じながら働けるような暮らしを心から望んでいます。このように、福祉の充実が求められていることとともに、他方であなたがおっしゃる環境の保全は、国も指摘をしているように、これまでの社会経済活動や生活様式、すなわち大量生産、大量消費、大量廃棄を改め、真剣に自然との共生を追求する努力が求められているところまで来ていると思うのであり、まさに平和、人権、民主主義、社会的経済的公正、そして、環境という5つの価値目標は、21世紀、人類全体が協調していく上での物差しとなっていると思うのであります。そして、政治に求められていること、それは、こうした国民、県民の願いに正しくこたえること、そのためにも、何よりも政治に対する国民、県民の信頼を取り戻すことであり、その根っこにある政治の改革が原点であり、私たちに課せられた責務であることを深く自覚することだと考えます。
 このこととかかわって、平成5年の地方にも及んだゼネコンの構造的汚職事件があります。国や地方自治体の公共投資予算に目をつけたゼネコン主導の事業推進がついに政、官、業による汚職を生んだのでありますが、この先も経済対策として莫大な公債に依存しながら進められる公共工事の流れは依然として続くでありましょう。また、県内においても、その入札に対する談合疑惑は解消されたとは言えない状況にあります。したがって、業界の深い反省を求めながら、公共工事のあり方、進め方に強く透明性が求められるところであり、建設省出身のあなたに期待するものがあると考えます。しかし、さきの統一自治体選挙では、既成政党に対する不信、支持政党なしという状況が生まれました。私たちはこの事実を直視し、政界再編が政治不信を増幅させるものであってはならないと考えながら、1つには、憲法の理念に基づく平和、環境、人権を基本にした国際協力と共生を目指し、2つには、生活者、勤労者、いわゆる社会的弱者の側に立って社会的公正の実現を目指し、3つには、分権と住民参加による自治の確立を目指して全力を尽くす決意を固めているところであります。
 前置きが大変長くなりましたが、以下、質問に入ります。
 まず、あなたの政治姿勢についてであります。
 あなたは、県政推進の基本姿勢の第1に、清新で公正、県民にわかりやすい県政の実現を挙げられました。全く異論のないところであります。そこで、あなたにお伺いいたしますが、参議院選挙を目前にして、なぜ特定候補の推薦に踏み切られたのかということであります。あなたは無所属で立候補され、激戦を勝ち抜かれました。もっとも、特定の政党や団体の推薦や協力もいただき、それが勝利の要因であったでありましょう。あなたが選挙前も選挙中も、そして選挙後もおやじが大変お世話になりましたと言って頭を低くしてあいさつをされる謙虚さと若さに好感を持たれた多くの県民がおられたことをお忘れになってはならないと思います。特定候補の支持を公表し、知事の名前で推薦文を書き、励ます会に出席をしてあいさつをするなど、謙虚で慎重なあなたからおよそとても考えられもしなかったことであります。また、私たちは、新しい知事が誕生し、新しい議員のもとで新しい議会が発足したこの機会に、地方の時代にふさわしい議会の任務を自覚し、公正で透明度の高い議会の運営を目指し、努力したのに、残念ながら数の論理で押しつぶされるという事実がありました。あなたの今回の行動は、こうした議会内の対立にまで油を注ぐことになりかねないとさえ思われるのであります。政界再編をめぐって混砦としているときに、なぜあなたは無所属の立場を鮮明にし、毅然として清新さを貫き通し得なかったのか、そして、あなたがこの壇上から県政はすべての県民のものであることを呼びかけられたことを思い、重ねて県民の前に真情を吐露していただきたいと存じます。
 またもう1点、あなたは、知事就任後間もなく専任の秘書を庁外から起用、特別職として指定されました。このこと自体、地方公務員法上も県の条例上も違背するものではありません。しかし、小沢一郎盛岡事務所の秘書であった方を秘書課勤務の一般職の職員とは別に特別職として指定し、しかもその給与等は県費で支弁するというものであります。あなたがおっしゃる県民に開かれた県政、その窓口である秘書課で、一体その方はどんな任務を帯び、どんな仕事をされ、なぜその人でなければならないのか、明快に説明していただきたいと存じます。
 次に、副知事2人制についてお伺いいたします。
 私たちは、副知事2人制の創設のときから財政窮乏を理由にこれに反対してまいりました。昭和45年国体の開催準備がその理由でありましたが、国体が終了しても制度がそのまま現在に至っているという経緯であります。このたび成立しました地方分権推進法は、地方公共団体の責務について、行政の簡素化及び効率化の推進を定め、地方税財源の充実確保とかかわって行政及び財政の改革の推進とともに、行政の公正の確保と透明性の向上及び住民参加の充実のための措置などを講ずることを定めております。こうした状況を踏まえ、現行の制度改善の機会と考えますが、副知事2人制についてあなたの御所見をお聞かせいただきたいと存じます。
 次に、憲法を守り、憲法理念を県政に生かしていくことの決意についてお伺いいたしたいと存じます。
 国民主権、民主主義、基本的人権の尊重、そして、平和主義を基調とする我が国の憲法は、この先、人類と地球を守っていく上で一向に光を失っていないことは申し上げたとおりであります。憲法を県政の中に積極的に生かしていく努力を強く求める次第であります。
 次に、地方分権の具体化をどう進められるかについてお伺いいたします。
 御承知のように、地方分権推進法は、現在の県及び市町村の2層制を前提とした地方自治を構想しています。今春、県内自治体の連合組織も分権推進の特別決議を議決しており、また、県もこれまで地方分権推進研究会を設置して検討を進めておられると理解しております。今後、国の動向を見ながら、市町村との意見交換、共同研究を進めるお考えはないかお伺いいたします。
 次に、自然環境保全指針の早期策定についてお伺いいたします。
 先日、連合岩手が主催する環境フォーラムに出席し、村井宏元岩大教授の豊かな自然を享受する道という講演を伺いました。その中で教授は、岩手の自然環境の現状について、環境庁が実施した自然環境保全基礎調査の結果を紹介し、自然性の高い植生地域が多いとは言えないこと、また、ブナ天然林のような原生的自然地域についても全国で16位と、それほど高くないことを明らかにしました。そして、土地開発や森林伐採、樹種の更改等による植生の変化は、単に自然環境の変化のみでなく、国土の保全や水源涵養などの機能を低下させ、潤いと安らぎを与えてくれるかけがえのない資源の価値を低下させ、水系をも次第に荒廃させるとともに、野生生物の生息環境を悪化させていることを述べられました。豊かさとは何かについても、社会経済の発展と成熟化に伴ってその価値観も多様化し、高度化もしているが、真に豊かな自然とは、やはり自然の清らかな水の流れ、汚れの少ない大気、種類も豊富な野生生物に恵まれていること、落葉広葉樹を主とする自然林と景観に象徴されると明らかにされました。その上で、本県では幸いそうした自然林やそれに近い2次林がまだかなり残されていること、しかし、地域の活性化という住民生活を重視した大義名分の立つ開発のもとにこうした環境が姿を消しつつあること、特にも、こうした場所がいわゆる中山間地帯であるとしました。したがって、自然環境を守ることと開発行為を調整していくためには、統一した判断基準で評価する物差しをつくること、すなわち3県総に盛り込まれた自然環境保全指針を早期に策定し、実行に移してほしいということでありました。この点については私たちがこれまでも強く県に求めてきたところでありますが、改めてあなたの率直なお考えを伺いたいと存じます。
 最後に、県立大学の大学づくりとPRの取り組みについて伺います。
 このことについては、平成10年4月の開学に向けて着々準備が進められており、今年度においては大学の施設設備の整備、入学者の選抜方法、教育課程の編成や大学運営のあり方、そして教員の確保など、いよいよ中核部分の審議に入るようであります。また、施設配置計画も固まり、平成8、9年度、建設工事を進めると理解しております。県並びに開発準備委員会の各位の御労苦に心から敬意を表したいと存じます。
 ところで、4学部定員440人の規模は、近年整備された全国公立大学の中でも最大規模と聞いております。東北各県がそれぞれ県立大学を設置し、また、設置しようとしている中で、いかにして特色ある大学づくりを進めるのか、また、いかにして学生を確保するのか、関係者の最大限の御努力を願いたいところであります。
 私は、さきの2月定例会において、検討委員会の審議と並行して県民の声が反映されるような大学づくりを進められるよう要望いたしました。過日、県立大学基本構想という資料をいただきました。特に、その中の建学の理念中、大学の基本的方向や教育、研究の特色の中で、地域に開かれた大学としての教育研究活動の推進については多くの県民が関心を持ち、願いを持っているところではないかと考えます。今、県内では、地域づくり、地域振興の目玉として大学の設置を打ち出したり、検討中のところもあります。また、高校と大学との交流を図ろうとする運動が岩手高教組を中心に進められております。県は、こうした動向に留意し、県立大学がどう切り結ぶのか、積極的にPRに努め、学生の確保を目指すべきではないかと考えます。
 そこでお伺いいたします。県は、資料、県立大学基本構想をどんな目的で県内外のどんなところに送付されたのか、構想に寄せられた意見をどう集約されておられるのか、今後において準備委員会の検討結果を明らかにしながら、県民、関係者の声を大学づくりに生かすお考えはないのかお伺いいたします。
 以上で質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐藤啓二議員の御質問にお答えいたします。
 まず、今回の参議院議員選挙についてでありますが、知事という職が公選によって選ばれたものであることから、行政の責任者という立場を持ちながらも、同時に政治的な主張を持つものであり、私の公約でもあるわかりやすい県政を推進するためにも、私なりの政治的な考えを県民の皆様にお示しすることが必要であると考えたものであります。もとより、公正な県政の実現は私の基本姿勢であり、透明性の高いわかりやすい県政を推進するため、県議会や県民の皆様の率直な御意見に謙虚に耳を傾けながら、私自身その実現に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 次に、専任秘書の庁外からの起用についてでありますが、この職は、地方公務員法上、特別の信任に基づいて任用することが適当な職であることから特別職とされているものであります。知事の職務は、地方公共団体の長として行政事務をつかさどることはもとよりのことではありますが、一般職の職員とは異なり公選による職でありますので、政治的な活動を行う場合がございます。私は、このような政治的な活動に係る秘書業務や行政事務と政務との調整など、一般職の秘書に対応させることが適当ではない業務もあるとの考えから、先輩知事の例なども踏まえつつ、特別職の秘書の任用を行ったところであります。
 次に、副知事2人制についてでありますが、この制度は、昭和45年の国民体育大会の岩手開催を契機として、県勢の飛躍的発展を期するため、行政執行体制の強化を図る趣旨で昭和42年に採用したものであります。また、国民体育大会終了後におきましても、東北新幹線、東北縦貫自動車道を初めとする高速交通幹線の整備など、重要な課題に取り組むため、引き続き副知事2人制を維持し、現在に至っているものと存じます。
 本県は、今、21世紀に向けた県土づくりにとって重要な時期を迎え、県政課題が山積しておりますが、私は、まさにこの時期に、県民1人1人が安全で豊かさを実感できる生活の実現に向けて積極的な取り組みを進めていく必要があるものと存じております。このため、今後とも厳しい状況が続くと予想される行財政環境の中ではありますが、経済活動や県民生活の基礎となる社会資本の整備、農林水産業を初めとする活力ある産業の発展、少子・高齢社会に対応した保健医療、福祉の充実、さらには、生涯学習社会の構築に向けた教育、文化、スポーツの振興などの施策を強力に展開してまいりたいと存じております。このような現状にかんがみまして、対応する執行体制につきましても副知事2人という体制を整備し、各般にわたる施策を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 次に、憲法を守ることについてでありますが、私は、日本国憲法は我が国の最高法規であり、また、憲法に掲げられている国民主権主義、平和主義、基本的人権の尊重という崇高な理念が我が国の今日の発展の礎になったものと考えております。その意味からも私は日本国憲法を高く評価するものでありますし、今後におきましても最大限に尊重、遵守されるべきものであると考えております。
 次に、地方分権の推進についてでありますが、御案内のとおり、国民がゆとりと豊かさを実感できる個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現が求められている今日、地方公共団体が自主性、自立性を高め、地域の実情に沿った個性あふれる行政を展開できるようにするためには、国が持っている権限や財源などを地方公共団体に委譲する地方分権の推進が不可欠の状況にあると存じます。このような状況を背景といたしまして、これまで地方6団体等が久しく要望しておりました地方分権推進法が今国会において成立したことは、地方分権の推進を早期に、かつ実効あるものとする上で大きく前進したものであり、喜ばしいことであると存じております。
 この法律は、地方分権を総合的かつ計画的に推進するため、地方分権の推進に関する基本理念並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにし、地方分権の推進に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、その推進のための地方分権推進計画の策定を政府に義務づけ、及びその監視機関として地方分権推進委員会を設置すること等、我が国の地方分権推進に関する総論部分について定めております。地方分権推進の各論部分につきましては、今後政府が策定する地方分権推進計画と、近く発足する予定の地方分権推進委員会の勧告、助言が極めて重要であると存じております。したがいまして、真の地方分権の推進は緒についたばかりであります。
 私は、地方分権の推進に当たっては、県民の皆様1人1人が心から幸せを感じ、生きがいを持って暮らすことを保障されるとともに、それぞれの地方公共団体が自主性、自立性を発揮し、活力に満ちた個性豊かな地域づくりに取り組むことができるような条件整備が最も大切であると考えております。これまで地方分権を進める上での障害の1つとして、地方公共団体の分権の受け皿としての能力の問題が挙げられているところでありますが、これに対しては、私は今後、21世紀に向けた県の新しい役割に対応した組織機構の整備、職員の政策立案能力の向上など、受け皿の整備に精いっぱい取り組んでまいりたいと存じているところであり、国においても、このような地方の対応に応じて十分な財源的保障を伴った権限の委譲等を進められるよう、今後とも強く要望してまいりたいと存じます。
 お尋ねのありました地方分権の推進に当たっての県と市町村との連携等につきましては、私は、住民に最も身近なところで行政を担っている市町村の果たす機能が極めて重要であると考えております。このため、県は市町村と一体となって、広域的、総合的な行政を行う立場から、各市町村が個性と能力を十分に発揮し、特色ある地域づくりが展開できるよう、その活動を後押ししてまいるべきものと考えております。したがいまして、県と市町村はいわば車の両輪のように、来るべき地方分権の時代のパートナーとして、県は市町村の意向を十分に踏まえながら、連携を図ることはもとより、本県にとって最も好ましい形で地方分権が実現されるよう、市町村とともに取り組みを進めていくことがますます肝要になってくるものと認識しております。
 県といたしましては、このような基本的認識に立ちまして、近く国の地方分権推進委員会の発足に合わせて庁内に地方分権に関する推進組織を設置し、地方分権推進に関する行財政運営の調査研究、連絡調整などを行うこととしております。さらに、今後、機会あるごとに各市町村の皆様の地方分権推進に対する御意見や御要望を承りますとともに、昨年度より庁内において調査研究してまいりました成果を踏まえ、積極的に地方分権に関する情報等を提供し、県と市町村との協議を継続的に実施してまいりたいと存じます。
 また、地方分権に関する意識の普及啓発のため、市町村はもとより、広く県民を対象とした地方分権セミナーを開催するなど、市町村との連携について積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、自然環境保全指針の早期策定についてでありますが、本県のすぐれた自然環境を次の世代にいかに継承していくかということが現代に生きる我々に課せられた重要な課題であり、かつまた使命でもあると認識をしております。過去、開発の名のもとに全国で多くのすぐれた自然が損なわれたという事実があった中、本県においてはおおむね良好な自然環境を保全していることについては大変うれしく思っているところでありますが、一方、植生自然度については、全国的に見て特に傑出した高い数値を示しているわけではないという事実もございます。それだけに、我々はこのかけがえのない本県の自然環境を一層大切にし、県民共有の財産として保全していく必要があると考えているところであります。
 村井宏先生は講演の中で真に豊かな自然が大切であると指摘されたとのお話でありますが、全くそのとおりだと思うわけであります。自然は一たん改変、破壊をしてしまうとなかなかその復元が難しく、場合によっては回復不可能な事態に陥ることもあり、本県の自然環境をより確実に保全していくことが何よりも大切であります。
 一方、県民所得の向上、格差是正のためには産業の活性化等が必要であり、自然環境の保全に配慮した開発が必要となってまいります。また、最近の生活水準の向上や余暇時間の増加を背景に、精神的な安らぎの場やレクリエーションの場として自然との触れ合いを求める傾向が強くなってきており、良好な自然環境を利用した自然との触れ合いの場を県民に提供することもまた必要であると考えております。したがいまして、私は、自然環境の保全と開発あるいは利用というどちらか一方の選択肢しかとれないというのではなく、保全すべき環境はしっかり保全し、開発が必要な場合には自然環境にも十分配慮しながら計画的に進めていくという、いわば両者間の調和を求めていくという姿勢が必要であると考えております。このような考え方に立って、私はまず、本県の自然環境の実態を明らかにし、保全のためのガイドラインを具体的に示すため、自然環境保全指針を策定することが必要であると考えております。
 自然環境保全指針については、自然環境に関する基礎データの集積及び評価、解析を行って、広く県民の方々に自然環境の実態及び保全の重要性を理解していただき、今後、本県において自然環境の保全と開発の調和を図っていくための指標として利用するものとなるよう考えております。これまで特定植物群落調査、動植物分布調査、河川・湖沼・湿地調査及び種の多様性調査を内容とする自然環境保全基礎調査や、イヌワシ、クマタカ等特殊鳥類生息実態調査、小型ワシタカ類生息実態調査等、各種調査を実施し、自然環境資源の情報の集積に努めてまいりました。平成7年度においては、指針の内容等について検討するための学識経験者による検討委員会を開催することとしており、現在、委員の人選を具体的に進めているところであります。自然環境の保全と開発とをどのように調和させていくのか、そのための手段の1つとしてこの指針の策定は極めて有効であると考えておりますが、今後長期にわたって本県の自然環境保全のあり方を示すものとなることから、綿密な調査を行い、学識経験者や関係機関からの御意見を聞き、すぐれた指針を構築できるよう着実に検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、県立大学基本構想に寄せられた意見をどう集約しているかということについてでありますが、私は、本県が長期的視点に立って着実に発展していく上で、高等教育機関の果たす役割が極めて重要なものと認識しているところであります。昨年度策定した県立大学基本構想は、国際的な視野を持ちつつ、地域に立脚し、地域に誇りを持って真に豊かな地域社会を形成する人材の養成等を建学の理念といたしております。また、各部の構成は、生命を慈しみ、生命に対する深い畏敬の念を持ち、1人1人がかけがえのない存在であることを認識できる人間を育成する看護学部、長寿社会の課題を解決するため、地域福祉の分野において主体的に地域社会に貢献できる人材を育成する社会福祉学部、子供からお年寄りまで、すべての人に対して思いやりの行き届いた、人に優しい情報化社会の実現に寄与できる人材を育成するソフトウエア情報学部、地域に根差しながらも国際的な視点から問題をとらえ、その解決策を企画立案し、地域社会の創造に貢献できる人材を育成する総合政策学部の4学部となっており、あすの岩手を託すべき人材を育成するための大学構想であると存じているところであります。県立大学基本構想は、今後、大学を整備する上でのよるべき基本方針であり、カリキュラムの編成、教員の確保あるいは施設設備の設計など、現在、その具現化に向け鋭意取り組んでいるところでありますが、今後、平成10年の開学に向け、基本的には国の大学設置基準等に合わせつつ、先人によりはぐくまれてきた歴史や文化、広大で豊かな自然などの本県の特性を生かしながら、県民の期待に沿う、全国に誇り得る大学とするよう努力してまいりたいと考えております。
 お尋ねのありました基本構想のパンフレットにつきましては、広く県民の御理解を得ること、学生確保、教員確保等の観点から作成したもので、これまで県内の各高等学校、市町村、さらには国の関係機関など、広く県内外の各方面にお配りしているところであります。
 県立大学の設置につきましては、県民の方々からさまざまな御意見をいただいておりますが、基本的な方向性については、大方の御賛同をいただいているものと受けとめております。
 次に、県民の声を大学づくりにどのように反映するかについてでありますが、県立大学は、その設置の趣旨から、県民に広く開かれた本県の学術文化活動の拠点として地域への貢献も要請されていることから、社会人の受け入れ、公開講座の実施、産業界との研究交流の推進など、地域社会との連携に積極的に取り組むこととしているほか、入学者選抜のあり方についても、推薦入学制度や短期大学等からの編入学制度など、多様な潜在能力に配慮した選抜方法を検討することとしているところであります。これらの検討を進めるに当たりましては、開設準備委員会の審議内容なども可能な限り明らかにするとともに、県民の皆様の御意向も十分に拝聴し幅広く関係機関等と協議を行うなど、県民の英知を結集していくことが必要であると考えております。私は、若者の知性と感性を伸びやかにはぐくむ場として、この県立大学を大きく開花させたいと強く願っているところであります。
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、山崎門一郎君。
   〔46番山崎門一郎君登壇〕(拍手)

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