平成8年2月定例会 第5回岩手県議会定例会 会議録

前へ 次へ

〇20番(渡辺幸貫君) 新進・公明の渡辺幸貫であります。
 最初に、首都機能の移転についてお伺いします。
 3年間にわたって首都機能移転問題を審議してきた国会等移転調査会の最終報告が昨年暮れに出され、首都選定基準9項目を打ち出し、中でも福島県阿武隈地域を中心とした南東北が有力であり、昨年11月に福島、宮城、山形の3県知事会議、1月11日には仙台、山形、福島の3市長会談が行われ、また、同月24日には茨城、栃木、宮城、福島の4県議会の議員が誘致運動での連携を目指して懇談を開き、いずれも利根川以北の東日本地域へとし運動を強め、本県ほか東日本全体へ呼びかけようとしております。それに対し、名古屋周辺の東海地方では、関西、九州などの経済団体からの支持を取りつけ、東日本対西日本の構図で一段と熱を帯びているという。おくれがちな東北への目を開き、一極集中の弊害、国土の均衡ある発展と官庁の再構築、東京の閉塞状況は、日本全体の将来発展可能性の阻害要因になっている等、皆様もよく承知のとおりであります。したがって、ブラジリアのような移転がまず思い描かれるのであります。これに対し、移転の必要性は何か。交通網が整備され、移動が速く、安くなり、東京から地方に簡単に日帰りできるようになり、東京への集中は極めて効率的であるという意見もあります。
 そこでお伺いしますが、知事は遷都論をどうとらえ、南東北からの協力の呼びかけにどう呼応していこうとされているのかお示し願います。
 次に、本県の財政運営についてお伺いします。
 96年度予算の大蔵原案について、過去最高の国債発行に追い込まれたり、バブル時代の金融政策の失敗による住専の処理を負って、財政再建の道筋を見出せないまま、景気対策に翻弄された平成お手上げ予算との批評を受け、大蔵省も財政危機宣言をしております。私たち団塊の世代が退職し始める2005年以降、日本の貯蓄率は低下していく。バブル経済の時代のように、大幅な税の自然増収で、国債残高が減らせた右肩上がりの経済も今後は期待できそうにない。国債や地方債発行という打ち出の小づちでさまざまな分野で財政支出を求めた政治家も、大きな反省を強いられるところに来たと言えます。また、最近、効き目の低下が指摘されているケインズ政策をめぐる論議について、つまり、政治に何かものを言うとき、ケインズ的発想はわかりやすい。景気が悪くなれば、財政出動や金利引き下げといったケインズ的政策で助けてもらい、効果は実物経済の何倍も刺激していく。つまり、政府は有効需要の調整役として積極的に経済に介入せよであります。岩手の均衡ある発展の旗のもとに進められたものの中に、少なからずこの効果を期待したものもあると思われます。均衡ある発展とは、農林、水産業、製造業、3次産業を均衡発展させろと言っているのと同じです。産業構造の変化に伴って、地域の人口配分、地域政策が変わるのは、釜石の例を見るまでもなくやむを得ないことです。昨年末、財政審議会は、財政の基本問題に関する報告の中で、真っ向からケインズに異を唱えております。ケインズ的な拡張的財政政策は、当初は一定の効果はあるとしても中長期的な経済成長をもたらすものではなく、むしろ財政赤字の累積を通じ、民間の資金を税として吸収してしまうことにより、経済的にマイナスでしかない。一時的な対策はむしろ既存の産業構造の温存を助長し、長期的に見て経済効率を低下させる。国内自給型産業構造から世界的な広域経済圏内における水平分業への移行、価格形成メカニズムの変換、主権国家による規制の大幅な緩和などがケインズ政策の前提になる国民経済の枠組みを壊し始めてしまったというのであります。ケインズ的需要喚起策は、もう一度バブルを期待している。自治体による箱もの整備の競争になっているのではないかというものです。社会資本のおくれを痛感する岩手にとって、ケインズよ、さようならは早過ぎると言いたいが、なるほどとも思うのであります。
 知事が最近の景気動向に配慮し、また、96年度予算に向け県内をくまなく歩いて危機感にも似た思いで積極的に組んだ予算は高く評価するものであります。しかしながら、財政審議会の報告を受けて、今後、大蔵省の考え方が変わっていくことが予想されるところもあり、自治体の財政運営においても発想の転換が必要ではないかと思いますが、本県の今後の財政運営について知事はどう考えておられるのかお伺いします。
 次に、広域行政への取り組みについてお伺いします。
 自治省は昨年末、広域行政のあり方を探るための研究会を設置しました。圏域人口がおおむね10万人以上で、全国には341の広域市町村圏があります。情報化、高齢化や高度化、多様化する住民ニーズに適切に対処するため、また、地方分権の受け皿として広域行政の強化を図る必要があります。一方、バブル崩壊、地方財政悪化の危機の中で、自治省の行政改革推進のための指針を受けて、各都道府県では事務事業、組織、人員、給与といった点で見直しに手をつけ始めているが、1年以内に自主的にこたえるためにおのおの大綱を策定、公表していく予定のようであります。増田県政においても、保健医療と福祉との統合、政策形成機能と総合調整機能の充実、地方振興局の機能強化と土木事務所、保健所の振興局への統合を柱とした機構整備を盛り込んでおります。もちろん内部権限委譲も進めるほかに、市町村との協力体制強化のために広域的な連携、地域交流が必要であるとし、民間も含めて情報ネットワーク化も盛り込む見通しであります。日本全体が不況の中にあって自治体のリストラは避けられないことであり、一方、住民の要望にこたえるためには、広域市町村が手をとり合うのは当然であります。これまで広域行政といえば、一部事務組合などではごみ、し尿処理や消防など、一次的な共同処理に取り組んできたところが圧倒的に多い。しかし、今後は高齢者福祉や産業振興、公共施設の域内連携などが重要なテーマになるでしょう。公共施設については、立派なホールなどをつくる自治体が多くなりました。ただ、広域的な観点から見れば、交通網の発展した今日、それぞれ独立し過ぎているとの印象が強い。道路も一方の市町村では主要なものと位置づけ整備されても、境界でうまくつながらなかったり、市街化区域の編入等、互いに排他的ではなく、相まって受け皿を整えていくことが必要でしょう。私の住む花北、胆江地区は、交通、職場、通学、生活の圏域として、また、工業団地、オフィスアルカディアを初めインターハイに至るまで、本当に一体的な展開ができれば岩手の発展の牽引車になれると思うのです。県は、地域活性化事業調整費も倍増し7億円を盛り込むなど、厳しい財政の中で広域圏の重要性を認識し、議論を高めていかなければと痛感されていることと存じますが、市町村合併の促進など、広域行政への取り組みに向けての知事の認識と決意をお聞かせ願います。
 次に、農業問題についてお伺いします。
 私は、これからの時代に向けて、一日も早く新しい農業の体制をつくり上げる必要があると思っており、そのためには今が最も大切な時期であります。しかしながら、最近の動向を見ますと、住専等の大ニュースの陰に隠れているのかもしれませんが、国も農業関係者も6兆100億円という数字で安泰ムードになっていないかということであります。ウルグァイ・ラウンド決着の際にあれだけ危機感を持ち、大騒ぎしたエネルギーがどこかに行ってしまったのでは大変なことであります。ウルグァイ・ラウンド決着までが前九年の役であるとすれば、ラウンド合意期間中の農業再構築が後三年の役であり、今が正念場であります。国の6兆100億円という数字が単に対策予算の枠組みでしかないとすれば、県がさらに知恵を出し、国の予算を積極的に導入しながら具体的な取り組みに結びつけていく必要があると考えるものであります。本当に何を最重点でやっていくのか、農家に何をどうしてもらうのか、農家の合意をどうつくり上げていくのか、目に見える形で示していく必要があると存じます。県はどのように取り組まれようとしているのか、御見解をお伺いします。
 次に、これからの農業戦略について質問させていただきます。
 今日の農業は、総自由化時代に突入し、言うなれば八方ふさがりの中で本県農業の活路をどう見出していくのかということであります。国においては、新政策に見られるように、コスト優位の戦略を掲げ、例えば稲作では10から20ヘクタールの経営を育成することとしており、これまで以上にコスト至上主義を貫いております。しかし私は、これを否定するつもりはありませんが、余りにも短絡的であり、芸がなさ過ぎるということであります。もっと時代の潮流を厳しく見通した戦略こそが必要であると思うのです。このコスト戦略は、我が国の国土条件のもとではおのずと限界があり、労賃や地代の極端に安い海外に太刀打ちできるはずがなく、これが先進国農業の宿命であります。これだけで難局を乗り越えることは到底無理であります。私は、海外農産物との競争で打ち勝つことができる農業戦略をもっと前面に打ち出して展開していくことであると考えます。現在、県は農業計画を策定中と伺っておりますが、その基本的な考え方と具体策についてお伺いします。
 次に、新しい生産調整対策の推進についてお伺いいたします。
 新食糧法のもとでの生産調整推進対策につきましては、昨年12月、国から転作目標面積としてのガイドライン通知があり、県から市町村に配分がなされました。現在、現地では、県から受けた目標面積をもとに市町村と農協が一緒になって集落座談会を開きながらその取り組みを説明し、農家の理解を求めているところであります。本県に示されたこのガイドラインの規模は、既に報じられているように平成7年度に比べて4、390ヘクタール、約2割もの増加となる2万5、650ヘクタールでありますが、内容では、これまで転作として扱われてきた他用途利用米が廃止され、これにかわって新加工用米制度が設けられましたが、数量的には2、410トン減の8、620トンで、減少分の転作換算面積は約500ヘクタールに相当しております。つまり平成8年度転作の目標面積は、実質的にはこれらを加えた約5、000ヘクタールもの大幅増加であり、過去最大の規模と言えるのではないでしょうか。一方、昨年2月に行われた農業センサスの調査結果をまつまでもなく、稲作農家の労働事情については、高齢化の進行など弱体化が明らかでありまして、農家個々の事情、営農志向が分かれる中で、転作推進はかけ声だけでは簡単にはいかないという事情が出てきております。こうしたときにおいて、稲作所得の減少分を転作の実施によっていかに補い、また、これを契機としての農業経営の安定化、地域として転作作物の産地化、定着化を図っていくことが大事だと思うものであります。
 そこでお伺いしますが、県は、平成8年度から始まる新しい生産調整対策をどう進めていくのか、そして推進策はどのように考えておられるのか、ぜひお示しを願いたいと思います。
 次に、昨年末に大蔵大臣の諮問機関である金融制度調査会から金融システム安定化のための諸施策の答申が出されました。この答申は、農林水産省管轄である農協に対しても、銀行等との整合性の意味で同様の影響力を持つことになると考えられます。答申によれば、最近相次いで表面化している大規模な金融機関の経営破綻は、金融機関自身の自己責任意識の不徹底によりリスク管理が十分でなかった。また、従来型の行政手法によるチェックでは不十分で、断固たる処置がためらわれ、問題の先送りになってしまった。今後は金融機関や預金者の自己責任原則の徹底と透明性の高い金融システムを早急に構築していく必要があり、銀行を初め、農協、漁協についても原則として98年3月期までに不良債権の情報開示を完了すべきとしております。さらに行政当局においては、金融機関経営の健全性を確保していくため、新しい監督手法として、自己資本比率等の客観的な指標に基づき、業務改善命令等の措置を適時に講じていく早期是正措置を導入することが適当であり、所要の手当てを行い、必要な周知、準備期間を経た上で、できるだけ早期に実施に移す必要があるとしております。岩手県における農協の実態は、既に実質的に赤字の農協が存在するなど、農協経営は厳しい状況にあると私は考えております。今後、この金融制度調査会の答申を踏まえて、農協に対する県の指導監督の責任は一層重要になり、農協に対する指導監督体制を強化する必要があると考えますが、県の考え方をお伺いします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、福祉対策についてお伺いします。
 1月23日、厚生省は、公的介護保険の導入を運営主体を市町村とする案で全国市町村会の幹部に伝え協力を求めるとともに、3月にも法案を国会に提出したい考えのようであります。財政基盤の弱い市町村の反発も予想されます。県内でもホームヘルパー、デイサービス、ショートステイの在宅介護サービスの利用はふえております。しかし、利用度トップの衣川村と最下位の盛岡市では8倍の開きがあります。介護保険料を払う前から、プランの達成そのものが2005年度60%、2010年80%としても、不安は大きくなります。住みなれた町で安心して年をとれるかどうかは、住民の関心の持ち方や働きかけ次第であります。安くて質のいい福祉とは何か、介護のサービス内容はどうか。厚生省のモデル案では、最重度の場合、ホームヘルパーが深夜を含め週14回訪問、日帰りで入浴に通うデイサービスを週3回、訪問介護を週2回受け、短期宿泊のショートステイを月1回7日間利用できるとされております。こうしたサービスは、高齢者保健福祉推進計画、すなわち新ゴールドプランの達成を前提としておりますが、本県においては、平成5年に策定された高齢者保健福祉計画に掲げられているサービス基盤である施設を確保できる見込みはどうなのか、まずお伺いします。
 次に、治療が終わっている高齢者が家庭の事情などで入院を続けるいわゆる社会的入院についてでありますが、これは社会問題とされております。病院の中には、経営のために社会的入院の高齢者にも薬を出したり検査をしたりして収入を稼ごうとしているところもあります。社会的入院の高齢者に施設に移ってもらい、また、在宅で暮らせるように手助けすれば、高齢者は薬漬け、検査漬けから開放される。医療費が抑えられて社会的な経済負担も少なくなります。こうした判断が介護保険導入の1つのねらいであると伺っております。仮に介護保険料または拠出金が将来上昇しても、それを上回るペースで医療保険の保険料上昇が抑えられれば国民の負担は軽くなります。この点についての厚生省の見通しはありません。しかし、県立病院が県全体の医療の大宗をなしている本県において、より積極的な対応が迫られると思います。介護保険導入が議論されている中で、要介護者の実態を把握するとともに、要介護対象者の判定をどうするのか、今から研究していく必要があると思いますが、いかがでしょうか。家庭内で特に女性が介護地獄に苦しめられている実態も見逃すわけにはいかないのであります。
 次に、先ほど申し上げた厚生省モデル案の深夜までのホームヘルプサービスを提供する体制についてでありますが、日本の65歳以上の人口比率が今後20年余りで14%から25%にはね上がり、世界史上例のない速さで高齢化が進む中で、厚生省の目標である1999年度に17万人でということではとても足りません。また、人数だけふやしても、介護技術が伴わないヘルパーでも困ります。県は何人を目標に、どういう方策で企業や家庭の理解を得て、どうやって養成して資格を与え、地域福祉を形づくっていくおつもりなのかお尋ねします。
 また、公的介護保険運営の実施主体は基本的には市町村というが、それぞれ人口規模、財政力など大きな格差があります。しかし、人間としての根源的な尊厳を支えるこの事業が地域間で大きな差があってはなりません。県も早めの是正への誘導策を具体化する必要に迫られていると思うのですが、どう考えておられるのかお伺いします。
 次に、ベンチャー企業の育成についてお伺いします。
 県は、8年度からベンチャー企業の育成に取り組み、企業立地の鈍化の中で新たな地域産業の創出を図るそうであります。産業構造が変わる中で、製造業依存型で地域経済の低迷から脱却できない地方共通の悩み、事情があります。活性化の起爆剤として昨年4月スタートした中小企業創造活動促進法によるベンチャー企業は、昨年10月1日現在29都道府県で285件の認定応募があり、うち240件が決まったとのことであります。本県は、東北地方では最多の8社あり、7年度末には30社にふえる見込みと聞いております。しかし、新技術開発、経営には成功するかどうかの危険度が伴います。このため、投資と低利融資で後押しするとのことですが、当然、法で設備投資減税などの特別支援は受けられるのだろうが、支援の際の問題点は、企業の発掘、技術の将来性の評価、公的資金へのリスク導入の是非と一般の理解、産学官の協力をどうするか、つまりベンチャー風土の育成などであるが、県はこれらのハードルをどういう体制、考え方で乗り切っていくおつもりでしょうか、お伺いします。
 官による育成は技術評価や経営のアドバイス面などで外部の手をかりざるを得ず、一定の限界があると言われております。しかし、きめ細かな総合的な支援システムを確立して、PR標語の起業家ベンチャー企業の創業を岩手でといきたいものであります。この成否が本県工業を取り巻く厳しい経済環境の中で、北上川流域テクノポリス、オフィスアルカディア構想の推進など、本県工業振興の将来をも大きく左右するのではないでしょうか。私はそういう観点からも、ベンチャー企業の育成のための総合的な支援システムの確立に向けた県当局の明快な答弁を期待するものであります。
 増田知事の大きな体躯と率直で細かい配慮のお人柄に触れた多くの県民は、心通う、将来への夢を感じたことと思います。きのう折居議員が触れた住みよい都市は、金沢を初め、自然に恵まれ、啄木、賢治を生んだ人情の里岩手は、21世紀には1周おくれのトップランナーとして高い評価になるかもしれない。何が人間としての幸せにつながるのかを基本に、知事の御活躍を期待して質問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 渡辺幸貫議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、首都機能移転についてでございますけれども、1つには、現在、東京圏におきまして、政治、経済、文化などの中枢的な機能が過度に集中をいたしておりまして、こうした過度の集中による弊害がいろいろな方面から指摘されております。また2つ目には、地震などの大規模災害に対する脆弱性が懸念されております。現在、こうした2つの点で、国において首都機能の移転が議論をされているところでございます。私は、この首都機能の移転先の選定につきましては、最終的には国が国民の合意のもとに国家的見地から進めるべきものであると考えておりますが、その前提としては、この国と地方の関係を変えること。まず国は、外交ですとか防衛ですとか、そうした国が本来果たすべき役割に専念をしてもらう。地方は、地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うことのできるよう、国と地方の関係を変えて地方分権を強力に推進し、現在のこうした中央集権構造を変えていくことが特にも重要である。いわば小さな首都機能を目指してもらう、このことが重要であると、このように考えております。したがって、そういう新しい国と地方の関係ができ上がる、そういう前提のもとでこの首都機能の移転先ということを考えてみますと、北海道東北地域につきましては、大変広大な土地を有し、地震、その他の自然災害に対する危険性が少ない、水の安定的な供給が確保できる、さきに国会等移転調査会が示した移転先の選定基準に照らしても、こうした新しい首都機能の移転先として望ましい地域であると、このように考えているところでございます。したがいまして、今後におきましても、各道県との連携のもとに、この地域への首都機能の移転に積極的に取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。
 次に、本県の財政運営についてでございますが、私は現下のような厳しい財政環境の中にありましても、21世紀に向けて岩手県を理想的な地域社会に築き上げていくために、最大限に県民の皆様方の御意向などを踏まえまして、産業基盤、生活基盤の両面にわたります社会資本の整備など、必要な施策についてはこれを着実に推進することこそ今の岩手県にとりまして最も肝要なことであり、また、県民の皆様方の望んでもいることである、このように考えているところでございます。このため、平成8年度の予算編成に当たりましては、今後、施策を推進する上で留意すべき7つの視点を今議会の冒頭に申し上げましたけれども、この視点を基本に据えながら、事業の優先度、緊急度による選択を厳しく行いまして、3県総の後期実施計画に盛り込む予定の事業を中心といたしまして積極的な取り組みを行ったところでございます。このような考え方のもとに、県政を推進していくに当たりましては、国の財政政策ですとか地方の財政対策の動向を見定めながら、国に対しては地方一般財源の安定的な確保を要望するなど、財源の確保に努めるとともに、県といたしましても、行政改革大綱に基づきまして、行政が果たすべきその責任分野や範囲、そして、そうした場合の経費負担のあり方、さらには行政効率といったような観点から、行財政運営の徹底した見直しを行い、財政の健全性の確保に努めていきたい、このように考えているところでございます。
 次に、市町村合併の促進など、広域行政への取り組みについてでございますが、高齢化、国際化、情報化など、社会経済情勢の変化に対応して、市町村においても新たな行政課題や、多様化、複雑化しております住民の方々のニーズへの対応が必要となってくると、このように考えられるわけでございます。また、交通、通信などの著しい発展によりまして、日常の生活圏も拡大しております。こうしたことに伴いまして、市町村の区域を越える広域的な行政需要というものが増大するとともに、地域住民の日常生活圏とこれまでの行政区域が必ずしも一致しない、こういうような状況もございまして、今後、個々の市町村の区域を越えて行うべき広域的な行政の展開というものが私はますます重要性を帯びてくる、このように考えているところでございます。このためには、市町村が自主的、自立的に行政改革などに取り組まれて、政策形成機能、総合調整機能などの充実を図ることが必要でございますし、高齢化社会における福祉、保健、医療あるいは地域情報化など、市町村が単独で対応するよりも、もっと広域的な取り組みがふさわしい問題も数多くあるわけでございます。また、地方分権の進行に伴います都市計画や土地利用の問題など、市町村の区域を越える広域的な課題に対しまして、市町村がより一層連携して対応する必要があるものと、このように考えているところでございます。こうした今後増大する広域行政需要に適切に対処していくためには、市町村の合併や広域連合制度の活用など、広域行政の推進が特にも重要になってくるものと、このように考えているところでございまして、当然のことながら、市町村の御意向ですとか取り組み状況に応じながらも、こうした問題に積極的に対応してまいりたいと、このように考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願い申し上げます。
   (農政部長佐藤昭美君登壇〕
〇農政部長(佐藤昭美君) まず、ウルグァイ・ラウンド合意関連対策の取り組みについてお答えします。
 新たな国際環境のもとでも、いささかも揺るぐことのない足腰の強い農業を構築するため、昨年の6月に岩手県ウルグァイ・ラウンド合意関連対策推進方針を策定し、対策の実施期間のうちに盤石な生産体制を築き上げてまいりたいと考えているところであります。この方策としまして、まずもって、地域農業中心となって担う農業者の経営確立に向けた取り組みを重点的に支援し、体質の強い農業構造を確立するとともに、大区画圃場や用排水施設など、農業生産基盤の加速的な整備により、生産条件の改善を図りながら、品質のすぐれたものの低コスト生産による競争力のあるたくましい産地を早急に形成していく考えであります。さらに、集落排水や集落道などの都市に比べて立ちおくれの見られる生活環境基盤の整備を進めるとともに、特に中山間地域につきましては、県単独事業であります生き生き農山村づくり促進対策事業や、活力ある村づくり促進対策事業等を活用しまして特産品の加工や地域づくり活動への支援を行うなどにより、地域の一層の活性化を図ってまいりたいと考えております。
 次に、第3次新いわて農業確立計画の後期推進計画の基本的な考え方と具体策についてでありますが、近年の農業、農村を取り巻く急速な情勢の変化に対応して、21世紀に引き継ぐ足腰の強い本県農業、農村を構築していくため、その指針としまして第3次新いわて農業確立計画後期推進計画の策定を進めているところであります。その基本方向としましては、経営感覚にすぐれた農業者の育成や効率の高い営農システムを確立するとともに、本県の持つ豊富な農業資源を高度に活用し、地域ごとに個性のある収益性の高い農業を展開していくことが肝要であると考えております。また、最近の安全、健康、本物志向など、消費者ニーズに対応して有機質資源の投入による土づくりを進めるなどにより、味がよく品質にすぐれた安全性の高い農産物の生産を進め、国内外の農産物との徹底した差別化を図るとともに、付加価値を高める産地処理加工や、地域特産品づくりなどによる新たな需要を創造する農業を展開することが重要であると存じております。さらに、販売に当たりましては、県産農産物のイメージアップを図りながらブランド化を推進するなど、多様な販売戦略を展開するとともに、食にまつわる岩手の風土や文化、歴史などを丸ごと発信するいわゆる食の文化発信基地の形成に取り組み、県産農産物の有利販売に結びつけてまいりたいと考えております。一方、中長期的には、世界の食糧需給が逼迫すると予測される中で、農業、農村が持つ多面的な役割や機能について、国民の理解と合意を得ながら農業施策を推進していくことが極めて大事であり、このような認識のもとに計画の策定を進めているところであります。
 次に、新しい生産調整対策の推進についてでありますが、平成8年度から取り組まれる新対策の実施に当たりましては、地域での話し合いによる合意形成を図りながら生産者の方々の稲作、畑作など、その経営志向に応じた営農の展開を誘導するとともに、収益性の高い転作作物の導入、拡大による複合経営の定着化を図ることとしまして、市町村、農業団体等と一体となって推進しているところであります。特に、国のとも補償事業との取り組みを誘導するとともに、稲作志向農家の転作分を畑作志向農家が引き受ける受け手対策としまして、新たに県単独のとも補償定着化推進事業を実施してまいりたいと考えております。
 また、新生産調整対策を農業再編の契機としてとらえ、野菜、花卉など園芸部門を積極的に拡大してまいりたいと考えておりまして、先般、生産調整の合意形成の手順や転作作物の選定、転作の条件整備に係る補助事業等を内容とする新生産調整推進対策実施の手引きを作成し参考に供したところであります。本県におきましては、既に転作田を活用したリンドウ、雨よけホウレンソウなど、全国的にも評価の高い産地が各地に形成されておりまして、こうした産地における取り組みの経緯を模範とするとともに、地域地域の立地条件や農家の労働力などにも配慮しながら、高収益作目の団地的、集団的転作を推進し農業所得の確保を図ってまいりたいと存じております。
 次に、農協に対する指導監督体制の強化についてでありますが、最近の農協を取り巻く状況は、農業の国際化や金融の自由化に加え、金融制度調査会の答申を踏まえて農協法を含む金融システム安定化の関係法の改正が予定されるなど、大きく変化してきております。県としましては、これまで農業協同組合指導指針を策定し、これに基づいて営農指導の充実、経営基盤の強化、財務の健全化等の指導や検査を実施してきたところでありますが、このような情勢の変化に的確に対応し、組合員の負託にこたえられる農協の育成強化を図るため農協中央会との連携を一層強化するほか、新たに本庁農政部と地方振興局に農協経営強化指導班を設置し、経営改善を要する農協に対し重点的な指導や広域合併の支援、指導を従来以上に強めてまいりたいと考えております。また、あわせて理事、監事の資質の向上や学識経験者、青年・婦人層の役員登用を積極的に推進する環境づくりを行うなど、組織の活性化や経営管理機能の充実に向けて指導していく考えであります。
 なお、国において農政審議会等で信用事業や農協の組織のあり方等を検討していると伺っておりますので、これらの動向を見きわめながら、県としても所要の対応策を検討してまいりたいと考えております。
   〔生活福祉部長細屋正勝君登壇〕
〇生活福祉部長(細屋正勝君) まず、高齢者保健福祉サービスの基盤整備についてでありますが、県高齢者保健福祉計画の目標に対し、中間年次であります今年度末の達成見込みは、在宅介護支援センターが23%、訪問看護ステーション14%と、制度の比較的新しい施設については若干のおくれが見られるものの、特別養護老人ホームは既に96%、老人保健施設は61%、ホームヘルパー57%となっておりまして、本県の場合は全体としておおむね順調に進捗しているものと考えております。今後は、特に整備のおくれがちな在宅介護支援センターなどの整備を積極的に進め、国における公的介護保険制度の検討状況を見きわめながら、3県総の後期実施計画の策定を通して在宅福祉サービスの拡充とともに、特別養護老人ホームなどの施設福祉サービスについてもさらに整備充実を図り、市町村計画の目標が着実に達成されるよう支援してまいりたいというふうに考えております。
 次に、要介護者の実態把握についてでありますが、平成8年度において要介護者の実態把握を初め、保健福祉サービスを利用する県民の側から見たサービス提供などの実態を把握する高齢者保健福祉実態調査を実施したいというふうに考えております。また、御指摘のありました要介護者の判定については、国の老人保健福祉審議会において、高齢者の介護度合いの判定等を行う高齢者介護調整機関の創設が提言されておりますが、全国一律に適用されることとなる判定基準の設定やその判定を行う専門家の養成確保が必要になると考えられます。県といたしましては、ただいま申し上げました高齢者保健福祉実態調査の結果を踏まえて介護の判定について研究するとともに、審議会の結論が出た場合には迅速に対応してまいりたいというふうに考えております。
 次に、ホームヘルパーの養成についてでありますが、県高齢者保健福祉計画では、平成11年度までにホームヘルパーを常勤換算で1、200人とする計画となっておりますが、地域の介護基盤整備の充実強化を図る観点から、さらに拡充することを検討しているところであります。また、平成8年度にはホームヘルパー養成の研修体系の見直しを行い研修時間を大幅にふやすことや、各種段階や地域におけるホームヘルパー養成の機会を拡大するとともに、高度な介護能力の習得を目的とした特別研修制度を創設するほか、新たに導入することとしております介護機器展示車を活用して地域介護教室を充実し、増大する介護需要に対してヘルパーの量と質の両面から充実を図ってまいりたいと考えております。
 次に、高齢者保健福祉サービスの地域間格差の是正誘導についてでありますが、市町村における老人保健福祉計画の目標達成に向けた積極的な取り組みにより、地域間格差は漸次縮小する方向にはあります。今後、さらに県及び市町村が一体となって計画の推進に積極的に取り組むことにより、地域間格差の改善を図ってまいりたいと考えております。
 また、地域間格差の是正に向けて、各種在宅福祉サービスを自主的に点検、評価する事業の実施などを通じて均衡ある保健福祉サービスの提供体制を確立し、県全体の実施水準をさらに向上させてまいる考えであります。
   〔商工労働部長古館敏男君登壇〕
〇商工労働部長(古館敏男君) ベンチャー企業の育成についてでありますが、本県の工業振興は、従来の企業誘致と地場産業の育成を柱とした施策に加えまして、事業意欲の高いベンチャー企業の育成、集積、内発型の新たな地域産業の振興を図っていくことが極めて重要であると認識しているところでございます。このため、県におきましては、岩手大学や工業技術センターを中心とした産学官協同研究を強化するとともに、中小企業創造活動促進法に基づきまして、意欲ある企業の技術開発への支援を大幅に拡充してきているほか、全国でも初めての実務型研修でありますいわて起業家大学の開設や米国のベンチャー企業の経営者等を招聘した日米起業家フォーラムの開催など、起業家風土の醸成に力を入れているところであります。また、平成8年度予算におきましては、ベンチャー企業の資金調達を支援するため、財団法人岩手高度技術振興協会を活用した投資制度であるいわて新産業創造支援事業とともに、創造的な中小企業に対する無担保、長期低利の貸付金制度を創設することとしているところでございます。さらに、企業経営上の各分野の専門家からなる起業家支援体制の確立や地域の実情に応じた多様なタイプの貸し工場、貸しオフィス、いわゆるインキュベータ施設の整備を促進するなど、産学官の緊密な連携のもと、ベンチャー企業の発掘、育成から本格的創業までを支援する総合的な施策の展開を図ってまいることとしてございます。
〇副議長(及川幸郎君) この際、暫時休憩をいたします。
   午後2時54分 休 憩
出席議員(48名)
1番  斉藤 信  君
2番  黄川田   徹  君
3番  佐々木 一 榮  君
4番  小野寺   好  君
5番  佐々木   博  君
6番  中屋敷   十  君
7番  大久保   豊  君
8番  浅 井 東兵衛  君
9番  佐々木 大 和  君
10番  藤 原 泰次郎  君
11番  千葉 伝  君
12番  伊沢昌弘  君
13番  須藤敏昭  君
14番  折居明広  君
15番  田村正彦  君
16番  伊藤勢至  君
17番  佐藤一男  君
18番  高橋賢輔  君
19番  瀬川 滋  君
20番  渡辺幸貫  君
21番  谷藤裕明  君
22番  水上信宏  君
23番  船 越 賢太郎  君
24番  久保田 晴 弘  君
25番  千葉 浩  君
26番  長谷川 忠 久  君
27番  三 河 喜美男  君
28番  村上恵三  君
30番  藤原良信  君
31番  吉田洋治  君
32番  飯澤忠雄  君
33番  工藤 篤  君
34番  菅原温士  君
35番  菊池 勲  君
36番  小原宣良  君
37番  樋下正光  君
38番  及川幸郎  君
39番  那須川 健 一  君
40番  伊藤 孝  君
41番  藤倉正巳  君
42番  山内隆文  君
45番  佐々木 俊 夫  君
46番  山 崎 門一郎  君
47番  菊池雄光  君
48番  佐藤啓二  君
49番  堀口 治五右衛門 君
50番  吉田 秀  君
51番  藤原哲夫  君
欠席議員(3名)
29番  村田柴太  君
43番  佐藤正春  君
44番  千葉英三  君
説明のため出席した者
休憩前に同じ
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後3時16分 再 開
〇副議長(及川幸郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。藤原泰次郎君。
   〔10番藤原泰次郎君登壇〕(拍手)

前へ 次へ