平成8年2月定例会 第5回岩手県議会定例会 会議録

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〇10番(藤原泰次郎君) 緑政会の藤原泰次郎でございます。
 本定例会におきまして、先輩、同僚議員の皆様の御配慮によりまして一般質問の機会を与えていただき、深く感謝を申し上げる次第でございます。
 バブル経済の崩壊以降、内需の低迷、住専問題等、多くの課題を抱えながら迎えた平成8年は、一部経済専門家の話として、経済は若干上向きつつあると新聞、テレビ等で報道されていますが、暮らしの実感としては、不況の波は一向に衰えを見せない状況であり、さらにガット・ウルグァイ・ラウンド合意による農業の不安、貿易自由化に伴う製造業の不振、雇用の減少など、先行き不透明な年と言わざるを得ない情勢であります。増田知事には就任以来、県民から生の声を聞くために、県政懇談会の開催、また、みずから田植えをされた上、秋にはコンバインに乗って稲の刈り取りをされるなど、現場に直接出られて地域の実情や課題の把握に努められておりますことは、まさに若さと行動力、そして実行力の知事と県民から高く評価されていると私は認識しているところであります。21世紀を目前に、さらなる岩手県の発展のため、今後一層の御努力を期待しながら、県政の諸課題について順次質問させていただきます。
 まず、平成8年度から始まる第三次岩手県総合発展計画後期実施計画についてであります。
 前期5カ年は、だれしも想像されなかったバブル経済の崩壊、冷災害、ガット・ウルグァイ・ラウンドの合意を受けての新食糧法施行など、情勢は大きく変化したと認識しております。知事は、所信表明の中で、来るべき21世紀の岩手のあるべき姿について、人々が生きがいを持ち、かつ安心して暮らせるような、躍動感にあふれ、心豊かな地域社会ととらえ、従来の発想にとらわれず、内外の経済社会情勢の変化に伴う諸課題に対し積極的に取り組むとの決意を示されておりますが、後期実施計画をどのような考え方のもとに策定しようとしておられるのか、知事の御所見をお伺いするものであります。
 次に、平成8年度政府予算統一要望についてお伺いいたします。
 政府予算統一要望は、県政推進上重要な事業等について、国費の導入や制度改正が図られるよう、毎年夏と冬の2回実施されているところでありますが、私は、この統一要望は、国、地方とも厳しい財政状況の中で、県と議会が一体となって政府関係機関に直接赴き、本県の実情を理解していただくというまことに意義深いものであると存じているところであります。平成8年度政府予算統一要望につきましては、昨年の6月と11月に人員の縮小や要望項目の整理統合など、要望方法の簡素合理化が図られた中で実施されたところでありますが、11月要望における108項目についての結果はどのようなものであったのかお示しいただきたいと思います。
 次に、今後の財政運営についてお伺いいたします。
 平成8年度の当初予算は、国、地方を通じて財政事情が一段と厳しさを増している中にあって、一般会計総額で8、071億3、700万円余となり、昨年の知事選後の肉づけ予算と比較し4・4%の伸びを確保したこと、さらには、その内容においても、さきの知事演述にも見られたとおり、地域の連携と交流を重視するなど、いわゆる増田カラーを積極的に示された点については高く評価するものであります。歳出の構造を見ますと、義務的経費を抑制しながら実質的な事業に対して重点的に予算配分をしておりますが、特にも県単独事業の伸び率が7年度6月現計予算に対して16・8%も伸びており、知事の県政担当者としての強いリーダーシップと意欲を感じるものであります。しかし、予算の財源を見ますと、県税収入や地方交付税などの伸びが低く、国庫支出金も多くを期待できない一方で県債は大幅に伸びており、なお不足する分については基金の取り崩しによって対応するという苦しい台所事情も見えるのであります。確かに景気回復の動きが弱い現在、財政の積極的な発動によって県内経済の活性化を図ろうとする姿勢は理解できるものでありますが、このようないわば貯金の取り崩しや借金をいつまでも続けられるわけはないと思うのであります。県では、今後の財政運営をどのように考えておられるのかお伺いいたします。
 次に、今後における本県商工業の振興方向についてお伺いいたします。
 最近の我が国経済は、経済のグローバル化、ボーダーレス化が一層進展しており、加えて昭和60年秋のプラザ合意以降の円高基調やアジア諸国における急速な経済発展もあり、まさに国際的大競争の時代に突入しております。特にも製造業では、成熟産業における量産加工組み立て部門を中心にアジアシフトが進み、産業の空洞化という、いまだかつて経験したことのない大きな構造変化に直面しているところであります。このような中で、国においては、昨年は一連の経済対策を実施するとともに、新経済6カ年計画構造改革のための経済社会計画を策定し、自由で活力ある経済社会の創造のため、経済構造改革に取り組むこととし、規制緩和の推進、高コスト構造の是正、新規事業展開への支援、雇用の創出と労働市場の整備等を柱とした施策の展開を図ることとされたところであります。本県におきましても、円高に伴う地域企業の受注量の減少や価格競争の激化、大店法の規制緩和に伴う大型店の進出、企業倒産やリストラによる雇用不安など、中小企業を取り巻く環境には厳しいものがあり、これらへの対応を迫られているところであります。こうした状況の中、県では本年度内に第三次岩手県総合発展計画の後期実施計画を策定することとしておりますが、これに合わせて各部門別の後期実施計画も策定するとお聞きしております。私は、本県経済がこのような内外の経済構造の変化に的確に対応し、21世紀に向けて発展していくためには、地域経済の重要な担い手である商工業の振興を図ることが極めて重要であると考えているところであります。つきましては、部門別計画である第五次岩手県商工業振興計画の後期実施計画における商工業の振興方向をどのように考えられておられるのかお伺いいたします。
 次に、離職者の状況と雇用対策及び新規学卒者の就職状況についてお伺いいたします。 最近の為替レートは円安傾向にあり、鉱工業生産も回復しつつあるなど、景気の明るい兆しが見えてきていると言われております。その一方で雇用情勢は依然として厳しく、失業者は211万人、失業率は3・4%と、統計をとり始めた昭和28年以降最悪の状況と報道されているところであります。
 さて、本県の労働市場状況を見ますと、平成7年12月の有効求人倍率が0・83倍と、平成5年4月以降1倍を割り込んだ状況で推移しており、県内の雇用情勢も大変厳しい状況となっております。このことは、バブル経済崩壊後の景気後退と、さらには昨年の春から夏にかけての急激な円高のもとで、製造業を中心に経営のあり方が見直され、多くの企業で事業再構築、いわゆるリストラが実施され、その過程で雇用調整が実施された結果であると思うのであります。県内においては、企業集積が比較的多い両磐地域で多数の企業合理化による離職者が出たと伺っておりますが、その数はどの程度になっているのか、また、これら離職した方々の再就職状況はどのようになっているのか、さらには、景気が回復しても産業構造の変革等は進展するため、離職者の発生は今後とも増加するのではないかと懸念されるところでありますが、それに対してどのような対策をお持ちなのかお伺いいたします。
 また、大学、高校等新規学卒者の就職につきましては、積極的な求人開拓や求人面接会の開催など、努力をされていると承知しておりますが、就職状況はどのようになっているのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、農業問題についてお伺いいたします。
 まずもって昨年11月7日から8日にかけて本県中央部を襲った強風、積雪によるリンゴの落果、枝折れ、ブドウ棚等の施設被害につきましては、県当局に迅速な対応をしていただきましたことに対し感謝申し上げる次第であります。
 さて、本県においてはいわて農業確立計画の後期推進計画を策定中と伺っておりますが、本県は広大な土地の中、温暖な県南、沿岸地域、比較的冷涼な中山間地域など、多様な気象条件、地形を有しており、これらを高度に活用した岩手の農業を確立する必要があると思います。産地間競争の激化する中にあって、自然環境に十分配慮した農業、収益性の高い農業をどのように展開していかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、野菜生産拡大の戦略についてお伺いいたします。
 先般、県農政審議会から答申されました第三次新いわて農業確立計画後期推進計画でも本県農業の再編の目標としておりますように、本県では農業の振興を図るため、従来からの米、畜産に加え、園芸部門を含めた3本の柱としたいわゆるトライアングル構想のもとに、本県農業関係者は一丸となって収益性の高い農業への再編に邁進してきたところであります。水稲に未曾有の被害をもたらした平成5年は、まれに見る異常気象にもかかわらず、園芸部門のほぼ半分を占める野菜の生産、販売は順調に推移いたしました。そして、426億円という過去最高の販売額を記録し、大冷害の中で農業所得の確保に大きく貢献したことは記憶に新しいところであります。しかしながら、これまで作付面積、生産量ともに順調に拡大してまいりました本県の野菜が、主力品目であるキュウリやレタス、大根などを中心に、近年明らかに停滞ないしは減少の兆しが見えてきておりますことはまことに残念なことであり、農業を取り巻く環境は、ウルグァイ・ラウンド農業合意や新食糧法の施行、それに伴う国内外の産地間競争の激化や米の生産調整の強化など、一段と厳しさを増してきておりますが、こうしたときにこそ全国に先駆けて野菜の主産地としての本県の地位を確固たるものとし、冷災害にも打ちかつことのできる体質の強い農業を一日も早く構築していかなければならないと思うのであります。野菜は、他の作目に比較して多くの人手を要するものであり、近年の農業の担い手、労働力が減少する中においてその生産を維持拡大させていくことは並大抵の努力ではできるものではなく、また、連作障害の回避や病害虫の防除など、栽培面でも高い技術が要求されるものであることは認識しておりますが、今後の本県野菜の生産拡大、産地化の戦略についてどのようにお考えなのか、お伺いいたします。
 次に、農業農村整備事業予算の増加に対する市町村負担の軽減についてでありますが、私は、今般のウルグァイ・ラウンド農業合意等の国際化の進展に対応できる農業の体質強化を図るためには、平場や中山間地域など、地域の特性に合わせて、生産性の向上や高収益農業の展開の前提となる農業生産基盤の整備を総合的、加速的に行い、また、その際、農村の生活環境との一体的整備を図る必要があると考えております。実際、農業農村整備事業の予算については、通常の予算に加えてウルグァイ・ラウンド対策の補正予算等により急激に増加してきており、これにより工期が短縮されるなど、農家にとっても事業効果の早期発現が図られる状況になっております。一方、このような状況の中で、市町村は県営事業及び団体営事業等により大きな負担を求められ、厳しい財政運営となっていると聞いております。しかしながら、本県の生産基盤整備の状況を見ますと、圃場の整備が東北各県と比較して低位にあるなど、整備がおくれている状況にあり、これらの予算を最大限に活用して整備の積極的推進を図る必要があると考えております。
 そこで、事業を推進するためには市町村の負担を軽減することが必要であると考えますが、農業農村整備事業予算が増加する中で、市町村負担の軽減をどのように図っていくのかお伺いいたします。
 次に、個別問題についてお伺いいたします。
 中山間地域の農業用水対策についてであります。
 中山間地域には課題が山積しておりますが、特に溪流等、不安定な水源に頼っている稲作農家にとって水源の確保は重要な課題であります。平たんな大面積の水田地帯では大規模なダム等の建設が行われておりますが、中山間地域にあって水源手当てのおくれている地域では立地条件に応じた小規模な水源対策が必要であります。先行き不透明な農業情勢の中、中山間地域で意欲的に農業経営に取り組み、所得向上を図るためには安定した水源の確保が重要であると思いますが、どのように認識され、取り組まれるのかお伺いいたします。
 次に、道路整備事業についてお伺いいたします。
 県では均衡ある国土の発展を図るため、平成8年度から従来の交流ネットワーク道路整備事業の見直し、新交流ネットワーク道路整備事業として着手するとしており、さらに一層の整備を推進すると伺っております。このような県の積極的な道路整備への取り組み姿勢に対し敬意を表するものであり、ぜひとも計画期間内に所定の目的が達せられますよう強く要望いたすものであります。
 一方、我々県民の日常生活に密接にかかわりを持つ生活関連道路については、通勤や通学、買い物などに利用されてはおりますが、車社会ということもあり、交通量の増加とも相まって、安全で快適とはなかなかいかないのが実情であると思うわけであります。市街地内では、道路の幅員が狭い、交差点の見通しが悪い、歩道がないなど、地域によっては危険が背中合わせの箇所もあります。このようなことから、地域住民が要望しているものの中で最も多いのが歩道の設置であり、車の通行に支障なく安心して歩ける歩道、そして、間もなく到来する高齢化社会に向けて、高齢者や障害者等を重視した幅の広い歩道の整備が必要と考えるところであります。また、地域にとっては、隣接する市町村間の交流を支える道路の整備や、雪や災害等に強い道路等はもちろんのこと、道路空間の多様な機能を利用するといったことや、さらにゆとりといった機能も備えた、生活に直接関連した道路の整備に大いに期待を寄せております。
 そこでお伺いいたしますが、このような地域ニーズに対応した生活道路の整備について、県ではどのような取り組みをなされているのかお伺いいたします。
 また、2月10日、北海道積丹半島豊浜トンネルで発生した崩落事故は、無事であってほしいという家族の願いもむなしく、2月17日には全員の死亡が確認され、中高校生を含む20人もの犠牲者を出す痛ましい結果となりました。事故で亡くなられた方々に対し、衷心より哀悼の意を表する次第であります。事故の原因については、今後、関係機関の調査により明らかにされることとは思いますが、多くの山間部や海岸線を有する本県にとりましても、今回の事故は他人ごとでは済まされない問題であると考えます。道路整備については、ともすれば円滑な交通の流れ、いわゆるスピードの確保や定時性の確保が重視されてきたように思われますが、私たち道路を利用する者にとっても、安心して通れる道路の確保こそが最優先されるべきだということを今回の事故は改めて教えてくれたような気がいたします。
 そこでお伺いいたしますが、県におかれましては、この教訓を今後のトンネルの整備計画にどのように生かしていくお考えなのかお伺いいたします。
 最後に、警察本部長にお伺いいたします。
 第1は、平成7年中の県内の犯罪等の諸情勢をかんがみますと、重要窃盗犯の検挙率、交通死亡事故の減少率で全国トップになるなど、各分野で実績を上げておられますが、一方では、良好と言われた本県の治安が、犯罪発生率で見る限り、10年前の全国一から昨年は20位まで転落しております。これは一言で申し上げますと、警察本部が昼夜を分かたず努力しているにもかかわらず、それをしのぐ勢いで犯罪が発生しているという憂慮すべき現状にあるわけであります。警察本部として、現状に歯どめをかけ、あるいは好転させる方途としてどんな施策をお考えなのか。
また、過般の報道によれば、警察本部の警察官が17名増員される予定とのことでありますが、これを良好な治安確保のためにどう有効利用していくお考えなのでしょうか。
 第2は、本会議でもたびたび取り上げられております盛岡南地区の治安対策とも連動するわけでありますが、将来的に同地区の警察活動基盤と、近年人口増加の著しい矢巾町、紫波町の警察活動基盤についてどのように整理し、相互関係についてどう位置づけていく構想なのかお伺いいたします。
 以上をもちまして私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 藤原泰次郎議員の御質問にお答えいたします。
 まず、いわゆる3県総の後期実施計画の策定の考え方についてのお尋ねでございますが、これまで3県総の積極的な推進が図られてまいりました結果、前期の実施計画に掲げております重点事業の着手率は約98%となっておりまして、これによりまして、県勢は着実に発展してきているものと、このように考えております。しかしながら、国際化、少子・高齢化、高度情報化、さらには、環境保全への要請の高まりなど、最近におきます本県を取り巻く経済社会情勢の変化に加えまして、阪神・淡路大震災を契機といたしました安全な県土づくり、あるいは産業の空洞化やウルグァイ・ラウンド合意に基づきます新たな国境措置の実施に伴う地域経済への影響の懸念など、新しい課題が多々生じてきている現状でございます。このため、後期実施計画につきましては、こうした経済社会情勢の変化や新たな課題に適切に対応するとともに、特に留意すべきものといたしまして、個性や多様性を生かした地域づくりを進めながら、従来の行政単位の枠を超えまして、産業、福祉、教育・文化など、県内外にわたってさまざまな地域連携、交流を促進し、地域それぞれが自立した社会の形成を目指すことといたしましたほか、安全で安心感のある県民生活の確保、人と自然との望ましい共生の実現、国際的視野に立った地域経済の構築、豊かな長寿社会、思いやりのある福祉社会づくり、そして創造性と国際感覚に富み社会の変化に柔軟に対応できる人材の育成、さらには男女共同参画社会の形成のあわせて以上の7つの視点を掲げたところでございまして、これらに十分留意をし、後期計画について、現在、鋭意、策定作業を進めているところでございます。
 次に、自然環境に配慮した収益性の高い農業の展開方策についてでございますが、国際化の進展によりまして、国内外の産地間競争が激しさを増している中にありまして、本県農業を永続的に発展をさせていくためには、農業の持っております物質循環機能というものを生かしながら、本県の多彩な気象条件や恵まれた土地、きれいな水などを最大限に生かしまして、消費者の求めております新鮮さ、安全性といったものを重視した特色のある農産物の生産を行い、これらを有利販売に結びつけるようなそうした農業を展開していくことが肝要であると、このように考えております。このため、畜産県としての本県の特性を生かしまして、畜産部門と稲作、畑作部門とが相互に連携をした土づくりを進めるですとか、あるいは夏場の涼しい気象条件を利用した低農薬栽培、天敵生物を活用した害虫防除など、環境への負荷を軽減する栽培技術の開発と普及を図りながら、環境に優しい、自然環境に配慮した持続的な農業を推進してまいりたいと、このように考えております。また、品種の適正配置や農地の利用集積などによりますおいしいお米を低コストで生産するやり方を推進するとともに、平場から山間地までの標高差を利用いたしまして、野菜の生産・出荷時期を調整をいたしますいわゆるリレー出荷やリンドウを核とした花卉複合産地の形成、さらには豊富な草資源を活用いたしました酪農や肉用牛の低コスト、高品質生産や農畜産物の加工によります付加価値の高い地域特産品づくりなどを推進いたしまして、総体的に収益性が高く、地域地域ごとに特色のある農業の振興を図ってまいりたいと、このように考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔企画調整部長小野寺英二君登壇〕
〇企画調整部長(小野寺英二君) 平成8年度政府予算統一要望の結果についてでありますが、平成8年度政府予算編成に際しましては、昨年の夏に続きまして、11月17日に国等の事業の本県への導入あるいは制度の創設、改善等について、これが強力に図られますように県政推進上重要な事業など108項目を掲げ、その実現に向けて県議会と一体となりまして、政府及び関係機関に対して強く要望したところでございます。その結果、関係省庁におきましては、本県の実情をよく御理解していただきまして、苦しい財政環境の中にありながらも、東北新幹線盛岡-八戸間の事業費として前年度に比べて2・4倍の243億円が計上されたのを初めといたしまして、岩手大学の大学院工学研究科博士課程の設置、大規模林道支線葛巻田子線の葛巻-浄法寺区間の着工、大船渡港への海域環境創造事業の採択、地域高規格道路宮古盛岡横断道の簗川道路の事業採択、花巻地区流通業務団地造成事業の基本調査採択などが新たに認められましたが、また、そのほかに山王海2期地区や胆沢平野地区などの国営土地改良事業、農用地整備事業北上猿ケ石地域、胆沢ダム建設事業についてはほぼ要望どおり配分されるなど、全体を通じておおむね所期の目的を達成したものと考えております。
 今後におきましても、あらゆる機会をとらえまして、全国枠の本県への配分を要望するなど、国費の導入と財源の確保等について積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
   〔総務部長上田紘士君登壇〕
〇総務部長(上田紘士君) 今後の財政運営についてでありますけれども、平成8年度の予算編成に当たりましては、現下の経済動向から県税収入や地方交付税、国庫支出金の伸びに多くを期待できない状況にありますことから、従前にも増して歳出の徹底した洗い直しに努める一方で、社会経済情勢の変化に適切に対応した諸施策を展開するなど、景気の足取りを確実にする上からも積極的な予算編成に努めたところであります。その過程におきまして、基金あるいは県債の有効活用も図ることといたしたところでありますけれども、中でも県債の発行につきましては、近年、一定の条件のもとに、後年度の財政負担が軽減される措置が講ぜられるなどの制度の充実が図られておりますので、このような優良な起債をできる限り活用しながら、本県社会資本の整備を初めとする種々の事業を着実に推進していくことが必要ではないかと考えているところであります。もとより、県財政にとりましては、地方一般財源の安定的な確保が極めて重要な課題でありますので、今後とも国に対してこの点について強く要望いたしますとともに、県といたしましても、より一層経費の徹底した節減合理化に取り組むなど行政改革の推進に努めるほか、引き続き税源の涵養に努め、国庫補助事業の効果的な導入あるいは交付税措置のある起債の活用、こういった工夫をいたしまして、将来の財政運営に支障の来すことのないよう、最大限の努力を傾注してまいる考えでございます。
   〔商工労働部長古館敏男君登壇〕
〇商工労働部長(古館敏男君) まず、今後における商工業の振興方向についてでございますが、本県の商工業は、円高の進展や大店法の規制緩和などの構造変化に伴うさまざまな課題に直面しております。工業におきましては、企業立地件数や工業出荷額の伸び悩み、商業においては、価格競争の激化や中心商店街の低迷など、その環境は厳しいものがございます。このため、商工業振興計画の後期計画におきましては、これらの変化に的確に対応するため、新たな視点に立った施策を展開することとしております。すなわち、工業におきましては、従来の企業誘致と地場産業の振興を柱とした施策に加えまして、今後は地域に蓄積された技術や人材等を活用した内発型の工業振興施策を推進していくこととしております。具体的には、独創的、先端的な研究開発を推進していくとともに、研究開発力を有する企業やベンチャー企業などの新規創業を支援していくほか、県産品のブラント化を推進し新商品開発や販路の拡大に努めることとしております。また、商業におきましては、単に個店や商店街の振興施策にとどまらず、今後は中小小売商業者が大型店と共存共栄が図られるよう、商店街の情報化や共同店舗化に加え、公共施設などの一体的な整備によります総合的なまちづくりを支援するとともに、物流の効率化に対応した拠点の整備を促進してまいることとしております。さらに、サービス業においては、情報サービス業など立地基盤の整備を促進するとともに、インターネットの利用環境を整備し、高度情報化に対応した経済活動を支援してまいりたいと考えております。
 次に、離職者の状況についてでありますが、平成7年度は1月末までの累計で企業合理化離職者は県全体では1、531人となっておりまして、このうち1、213人が再就職を希望し664人が就職しております。県内で最も離職者が多い両磐地区では339人が離職しまして、このうち171人が再就職をしております。県といたしましては、このような厳しい雇用状況を踏まえまして、各公共職業安定所管内に円高等雇用対策連絡協議会を設置しまして、市町村及び商工団体などと緊密な連絡をとりながら雇用の維持に努めているところであります。また、合理化が実施され離職者の発生が見込まれる場合には、失業を経ないで再就職ができるよう努めてまいったところでありますが、やむなく離職者が発生した場合は、一日も早く再就職できるよう、求人開拓や職業紹介に鋭意取り組んでいるところであります。さらに、昨年11月に中小企業が新分野に事業展開する際、新たに雇用を拡大する場合は賃金を助成するなどの新しい制度もできてまいっておりますので、今後はこの制度を活用して、産業構造の変化に対応した雇用の拡大に努めてまいりたいと考えております。
 次に、新規学卒者の就職内定状況についてでございますが、1月末現在で高等学校卒業予定者の就職内定率は91%とほぼ前年並みでありますが、大学卒業予定者は72%、それから短期大学卒業予定者は65・6%となっておりまして、大学卒業者では2・3ポイント、短大では14・8ポイント前年度を下回っている状況でございます。
   〔農政部長佐藤昭美君登壇〕
〇農政部長(佐藤昭美君) まず、野菜生産拡大の戦略についてお答えします。
 野菜につきましては、本県農業を収益性の高い農業へ再編を推進する戦略作物として位置づけ、これまで簡易ビニールハウスの導入、優良苗の広域供給施設や真空予冷施設等、集出荷施設の整備など諸対策を講じまして、その生産振興に努めてきたところであります。しかしながら、近年、労働力不足や他の作目に比べて機械化が進みがたい等により、生産が伸び悩み傾向にありますことは御指摘のとおりであります。したがいまして、今後はこれまでの対策に加えて、殊にも労働力不足への対応としまして大根やキャベツなど、土地利用型野菜の機械化栽培体系を早期に確立するため、開発された機械の現地適用試験、果菜類の省力栽培技術の実証展示や自動制御装置を備えたモデル施設団地の整備などを行い、その迅速な普及を図ってまいる考えであります。
 また、有機質の導入によります健康な土づくりを進めまして連作障害の回避に努めてまいりますほか、低利用農地の野菜畑への転換、転作田の活用などによりまして産地の拡大に向け、生産者を初め関係機関、団体一丸となって取り組んでまいる考えであります。
 次に、農業農村整備事業の市町村負担についてでありますが、国のウルグァイ・ラウンド農業合意関連対策や経済対策等により、平成5年度以降、本県の農業農村整備事業予算は大幅に増加し、圃場の大区画などの生産基盤整備や農業集落排水施設などの生活環境整備が急速に進展しているところであります。現在、県営農業農村整備事業等の市町村負担につきましては、国で定めた土地改良事業における地方公共団体の負担割合の指針に沿って行われているところでありますが、来年度の地区別の事業費規模は県と関係市町村で負担協議をした上で決められておりまして、市町村に過重な負担とならないよう配慮しながら事業が実施されているところであります。また、市町村負担分につきましては、地方財政措置として公共事業債によってその大部分が充当されまして、起債に係る元利償還分についても所要の交付税措置が講じられているところであります。今後におきましても、こうした地方財政措置の一層の拡充を国に対して要請してまいりますとともに、事業の効率的な実施や工期の短縮による事業費の抑制を図るなどにより、市町村負担の軽減に努めてまいりますとともに、ウルグァイ・ラウンド対策期間を好機としてとらえまして、農業農村整備を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 次に、中山間地域の農業用水対策についてでありますが、中山間地域における水の確保は、農業生産の安定を図る上で極めて重要でありますことから、その立地条件に応じた小規模なダムの建設や老朽ため池の整備による水源の確保対策、水の効率的利用を図るパイプライン化など、用水路の整備を積極的に進めているところであります。しかしながら、本県におきましては、北上川の東側、東岸等の中山間地域を中心としまして、その一部に用水手当てのおくれているところがありますことから、今後、こうした地域において地元の意向を踏まえつつ、中山間地域総合整備事業等を活用しまして用水の確保を図り、安定した水の利用の実現に資するよう努めてまいりたいと考えております。
   〔土木部長帷子幸彦君登壇〕
〇土木部長(帷子幸彦君) まず、生活関連道路の整備についてでありますが、県民の日常生活に最もかかわりを持つ地域道路につきましては、これまでも地域の方々の意見や要望を取り入れながら、緊急地方道路整備事業など各種の事業を活用しながらその整備を進めてきたところであり、都市部や人家連担部については、バイパス整備を推進して沿道環境の改善に努めているほか、交通事故防止のための交通安全施設の整備あるいは高齢者や障害者等に配慮した幅の広い歩道の整備に取り組んでいるところであります。また、市街地やその周辺部の交通混雑の緩和を図るため、交差点の改良を進めているほか、洪水時にしばしば交通どめになる箇所の解消を図るため冠水対策に取り組んでいるところであります。さらには、道の駅、ポケットパークなどの整備や自然との調和を目指したゆとりと潤いのある道路の整備にも力を入れるとともに、市街地中心部の電線類の地中化による良好な道路環境の形成など、道路の質的な充実に努めているところであります。しかしながら、これら市街地の道路は人家が連担しているため、多額の事業費と地域の方々の御理解が不可欠なため、その整備に時間を要しているのが実情でありますが、今後ともゆとり社会の実現に向けて、地域のニーズに対応した生活関連道路の整備に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、トンネル崩落事故の教訓についてでありますが、先般の北海道豊浜トンネルの崩落事故を受け、県内のトンネルについて緊急点検を実施したところであります。この点検は国から示された点検要領に基づき、のり面の状況やトンネル坑口部の状況、あるいはロックシェッドの状況等について、目視、踏査等で行ったもので、結果としては特に異常は認められなかったところでありますが、雪解けを待ってさらに再調査を実施する予定であります。また、現在建設中のトンネルにつきましても、今回の点検要領に基づき調査を行ったところであり、実際に工事を行っている現場の代理人の意見も参考にしながら、岩盤の亀裂の状況あるいは落石の状況、地形、湧水さらに地表における沢の状況等を確認したところ、特に異常は認められなかったところであります。
 今後のトンネル計画に当たりましては、今回の事故を教訓として国からの情報を的確に把握しながら、従来より行ってきた地形調査を初め、地質、気象、環境などの事前調査についてさらに多方面から検討を加えるとともに、より安全性の高い計画となるよう十分な配慮を行ってまいりたいと考えております。
   〔警察本部長石川正君登壇〕
〇警察本部長(石川正君) 初めに、犯罪情勢の対応等についてでありますが、御案内のとおり、本県においては犯罪の発生率が上昇するとともに、けん銃、覚せい剤の拡散、外国人犯罪や少年非行の増加など、質的にも変化してきており、警察活動の困難性が高まってきております。このような情勢に対し、県警察といたしましては、組織、人員の効率的運用、職員の質の向上等を図りながら、現場第一主義に基づく活動を展開しているところでありますが、厳しい情勢を打開するためには、警察、行政、県民の連携による総合的な対策が必要であります。具体的には、平成8年度新規事業として本議会において御審議いただくこととしております地域安全対策として、地域住民と警察が当該地域の特性を踏まえた安全を語るフォーラム等を開催して、住民のより身近な問題、例えばわいせつ文書の販売機が街角にあり少年の健全育成を阻害しているという問題、あるいは通学路等が暗くて危険であるという問題などを警察と住民が一体となって1つ1つ解決し、犯罪の発生しにくい環境と防犯意識を形成していきたいと考えております。
また、今回増員される警察官は地域安全の核となる交番、駐在所体制の充実を図るほか、暴力団を中心とする銃器取り締まりや科学捜査力の強化という、緊急の課題にも対応してまいりたいと考えております。
 次に、盛岡南地区と紫波町、矢巾町の警察活動基盤についてでありますが、御案内のとおり、近年、都南地区は都市化の進展に伴い、事件、事故の増加が著しく、一方、紫波町、矢巾町においても年々人口増加等が進んでおり、治安対策上、これらの地域における警察基盤整備につきましては、総合的に検討しなければならない重要な課題であると認識しております。このような状況のもと、限られた警察力を効果的に運用して良好な治安を確保していくためには、中長期的な観点から治安情勢の推移を十分見きわめる必要があり、現在、望ましい警察体制について鋭意検討を進めており、できるだけ早い時期に一定の結論を導き出したいと考えております。
 今後とも、関係地域の御理解を得ながら適切な治安基盤整備を図ってまいりたいと考えておりますので、御理解をお願いいたします。
 以上であります。
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時13分 散 会

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