平成8年6月定例会 第6回岩手県議会定例会 会議録

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〇9番(佐々木大和君)緑政会の佐々木大和でございます。
 通告に従いまして順次質問させていただきますので、県当局の御答弁よろしくお願い申し上げます。
 ことしは宮沢賢治生誕100年、そして石川啄木生誕110年の年に当たり、県を挙げての大きなイベントが各地で計画されております。宮沢賢治は、私たちの岩手をイーハトーブと呼び、人々に夢を与え、希望にあふれる郷土を誇りに思った人であります。賢治が100年前に夢見たことは、今どうなっているでしょう。実現されたものもあるでしょうし、100年を経た今でも人々の心を和ませてくれるような夢もたくさんありましょう。 明治34年、西暦でいえば20世紀の最初の年である1901年の1月2日と3日のある新聞に20世紀の予言なる記事が掲載されております。それによりますと、20世紀の世の中の進歩について、無線通信や現在の携帯電話、そして海外との通信手段としての国際電話、ファクシミリの実用化を挙げており、また、遠距離間で写真を送る機械、すなわちテレビ時代の到来を予言しております。交通機関については、鉄道の発達に着目し、1889年当時18時間52分も要していた新橋-神戸間がわずか2時間半になるとしております。現在、東海道新幹線で東京から2時間半で大阪に行けることを考えれば、偶然とはいえ、この符合には驚かされるものがあります。また、自動車の世と称して、馬車は廃せられ、これにかわるに自動車は廉価に買うことを得べく、馬にかわることになるべしと、現在の車社会を既にイメージしております。今や全く馬車を見ることがなくなり、数値的にも馬の頭数が45万2、000頭から1991年には2万4、000頭と20分の1に減少してきたことからも、予言どおり馬車が自動車に取ってかわったことは一目瞭然であります。これから先、交通機関のこれまでの発達の経過を考えますと、超音速飛行機とヘリコプターの時代が近づいていると思います。音速をはるかに超える超高速の大型飛行機が世界じゅうを飛び回る一方で、自動車社会にかわる自家用飛行機、自家用ヘリコプターの実用が一般化する時代となることは想像にかたくありません。また、100年前の1901年の全国の人口は4、435万人、平均寿命は男性が42歳、女性が44歳、大学の数はわずか2校でした。今日の我が国の人口は1億2、556万人、平均寿命は男性が76歳、女性が82歳、そして大学の数は約1、100校となっております。
 このように考えるとき、今から100年後はどのような社会になっているのか夢を描いてみたいような気がしますが、私の乏しい想像力では簡単に予言できるものではありません。いつの時代でも地域が存在する意義は、活力のある地域としてその地域の持てる力を十分発揮することであり、あわせて国全体の中で必要な役割を果たせる地域、願わくは世界の潮流に呼応し、欠くことができない役割を担う岩手県でなければなりません。幸い、我が県土は本州一の面積を有しており、その利点を生かした発展の可能性を探ることにより、希望にあふれ、夢のわく開発が期待できるものと考えるものであります。
 その一例として、金ヶ崎工業団地が四半世紀の歳月をかけて大変な努力を重ね、希望どおり1社で100ヘクタールを使用する大企業の立地を見たように、長期安定的な産業の育成を目指し、今度はその数倍もの広大な用地を1社で使用できるような超大型の工業団地を造成することによる地域おこしが必要ではないかと考えられます。このことにより、多くの市町村が開発整備した工業団地にも関連企業が配置され、中小規模の工業団地の有効活用が可能になると思います。今後、21世紀に向けて超大型の工業団地の整備を構想されることを提言いたしますが、御所見をお伺いいたします。
 これに関連して、次に、商工業の振興についてお伺いいたします。
 バブルが崩壊した以降の深刻な不況と急激な円高傾向のもとで、国民経済の土台を形成する製造業の生産機能の海外移転が急激に進んでいることは御承知のとおりであります。製造業の対外直接投資の推移を大蔵省届け出ベースで見ますと、バブル期以前の80年代の前半は年間平均24億ドル弱であったものがバブル期の円高のもとで急増し、89年度には163億ドルに達したのであります。90年代に入っても直接投資は高水準を維持しており、また、投資の対象が欧米からアジアに移行してきております。特に、中国への投資は90年度の1億ドル弱から93年度の14億ドルへと急増しており、この間の中国への投資が我が国の対外直接投資全体に占める割合は実に1%から12%へと大きく増加しているのであります。このような対外直接投資、すなわち生産機能の海外移転の進展は、本県のような地方圏工業のあり方に大きな影響をもたらしているものと考えられます。その影響の第1は、今日まで大きな実績を上げ、本県工業振興の基盤となってきた企業誘致をめぐる情勢が変化することであります。アジア地域を軸とした生産の海外移転が進む中で、本県における企業誘致はかつてのような多数の立地件数を期待できない時代を迎えていると考えるからであります。影響の第2は、地域中小企業の存立基盤が大きく変化することであります。生産の海外移転に伴ってアジア地域の部品生産や組み立て生産の能力が向上し、この分野を担ってきた日本の中小企業の存立基盤が揺さぶられてきていることは今日の我が国の経済の重大な問題の1つとして指摘されているところであり、本県の中小企業もアジア地域とのコスト競争が激しさを増すなど、厳しい状況に直面しているのであります。このような生産機能の海外移転をめぐる諸情勢の中で、今後の本県の工業振興をどのように進めようとされているのか、その基本方向と、あわせて平成8年度の具体的な施策についてお伺いします。
 第2点目は、中小企業の金融対策についてであります。
 今月14日発表の月例経済報告によりますと、国内景気は一部業種に不透明感があるものの、緩やかながら回復の動きを続けているとの判断が示されております。しかしながら、県内の中小企業は、バブル経済崩壊後の長期不況の影響から脱し切れず、製造業におきましては、円高が若干緩和されたものの、依然親企業の海外移転による受注の減少が進行しており、また、商業におきましては、大店法の規制緩和による出店ラッシュ、価格破壊が進むなど、急激に経営環境が変化する中で一層厳しい状況に置かれております。このような情勢において、県内中小企業が今後成長、発展を遂げていくためには、みずからの体質の改善に努めるとともに、他の企業にはない独創的な技術開発や新規事業の創造に取り組むことが喫緊の課題となっております。申すまでもなく、本県商工業におきましては、中小企業は企業数において99%、従業員数において81%とその大宗を占め、地域の経済や雇用を根底から支えており、地域の活性化に大きく貢献をしております。このことから県におきましては各種の中小企業振興施策を展開されておりますが、殊にも大企業に比べ信用力や取引条件において不利な立場にある中小企業の金融の円滑化を促進することは、中小企業の経営の安定に寄与し、その健全な発展にとって最も有益な施策の1つと考えるものであります。
 そこでお伺いしますが、これら急激に変化する環境のもとにおいて、本県中小企業に対する金融対策をどのように進めていくのか御所見を賜ります。
 次に、林業、木材産業の活性化についてお伺いします。
 本県は北海道に次ぐ森林県であり、私も微力ながら長年にわたって地域林業の活性化に懸命に取り組んでまいりましたが、その努力の積み重ねもむなしく、今や地元岩泉町におきましても、森林所有者や森林組合、製材工場など、林業、木材産業の関係者は全く元気がなく、特に地元材を製材していた工場は、昭和40年代には10工場ありましたものが今では4工場に減少しており、このままでは近い将来林業は全く成り立たなくなってしまうのではないかと憂えているところであります。そこで、林業、木材産業の活性化を図るため、今こそ抜本的な対応を講じていかなければならないとの思いから、さきの2月議会におきまして、木材の安定供給や森林組合の経営基盤強化対策などについて質問したところであります。県当局から大変力強い御答弁をいただき、大いに期待をしているところであります。
 このようなときに、国においては、林業、木材産業が置かれている厳しい状況を何とか打破しようということで、さきの国会に、1、林業経営基盤の強化、2、林業労働者の確保と林業事業者の育成、3、木材の安定供給、これらを推進するためのいわゆる林野3法を提出しておりましたが、5月に成立し、公布されたところであります。この林野3法は、まさに私が待ち望んでいた法律であり、これに基づいて抜本的な対策を講じていけば、必ずや林業の復権は可能であると存じます。また、この機会を逃しては二度と本県林業を復活させる機会はないだろうとも思いますので、ぜひ本県の林業を21世紀に向かって発展させるため、関係業界と手を携えて積極果敢に取り組んでいただきたいと存じますが、県では林野3法の施行に向けて現在どのように準備を進め、かつ対応していこうとしているのか、御所見をお伺いいたします。
 特に、林業労働者の確保を図るための法律についてでありますが、本法は他の2法に先駆けて即日施行されたことからもわかるように、今や林業の担い手確保対策は最も重要で、かつ緊急の課題であると存じます。具体的には、各県に林業労働力確保支援センターを設置し、センターに林業版ハローワークとしての機能を持たせ、林業就業者の募集、あっせん等を行うとともに、林業事業者の経営基盤を強化するための支援を行うこととされており、国では、平成8年度にこのセンターを全国で十数カ所設置する方針であると聞いております。本県の林業労働者数は、最近6年間を見ましても約2、600人も減少し、また、60歳以上の高齢者の占める割合が19%から40%へと急上昇するなど、林業労働力をめぐる状況は極めて深刻な状況にありますので、林業労働力確保支援センターを全国に先駆けて一日でも早く設置するべきであると存じます。センターをいつごろどのような形で設置しようとしているのか、具体的な計画をお伺いいたします。
 次に、畜産の振興についてお伺いいたします。
 まず第1に、安全で良質な畜産物の生産対策についてでありますが、本県は日本の食糧基地を目指し、広大かつ豊かな土地資源を活用して、米、畜産、園芸を柱とした農業の振興に取り組んでおり、着々とその成果を上げていることに対し敬意を表するものであります。特に、畜産は農業粗生産額の約4割を占める本県農業の基幹部門としてその振興が図られ、今や我が国屈指の畜産主産県に位置づけられています。しかしながら、平成3年、牛肉の輸入自由化以降、国内外の産地間競争が次第に高まる中で、市場競争力のある高品質、低コスト生産が強く求められています。一方、消費者は、食品の品質や安全性について強い関心を示すなど、食品に対する意識が高まってきており、商品の表示を確認して購入するという行動様式が定着してまいりました。私は、今後、国内外の産地間競争に打ち勝って、畜産農家の経営の安定を図り、産地として信頼が得られる畜産主産県としてさらに発展していくためには、まず、健康な家畜を生産するとともに、その家畜から得られる良質で安全な畜産物を安定的に供給することが極めて重要であると思うのであります。
 そこでお伺いしますが、家畜の疾病予防対策や診療体制、さらには畜産物の生産段階における動物用医薬品の使用、畜産物への薬物の残留などの安全性の確保対策はどのようになっておられるのでしょうか。また、生乳の品質向上対策と、その指導体制の現状と課題など、良質かつ安全で新鮮な畜産物の生産を推進する方策について、これらの御所見をお伺いいたします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 第2に、酪農の生産振興についてでありますが、国は、ガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意の実施による新たな国境措置に対応しつつ、21世紀を視野に入れた我が国の酪農や肉用牛生産の健全な発展と経営の安定を図るため、先般、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針を公表したところであります。この中で、牛乳と牛肉は需要が増大すると見込まれていることから、引き続き国内生産を拡大していく計画と伺っております。多くの中山間地域を抱える本県の地域活性化を図っていく上で、今後におきましても酪農と肉用牛の振興は重要であり、とりわけ酪農におきましては主業的な経営体が多く、中山間地域では地域経済の主要な地位を占めております。もとより今後の酪農振興に当たりましては、国際化の進展に対応し得る生産、経営基盤の確立が最重要課題となっているところであり、そのための具体的な対策が必要となっております。
 そこでお伺いしますが、県においては、さきの国の基本方針を踏まえ、今後の酪農の生産振興方策についてどのようなお考えをお持ちか、お示しを願いたいと思います。
 次に、新岩手障害者福祉行動計画についてお伺いします。
 この計画はノーマライゼーションを基本理念とし、障害者の完全参加と平等を目標に、幅広い分野において総合的、計画的に障害者施策を推進するため平成4年に策定されたものであります。計画策定後、県ではふれあいランド岩手の完成やひとにやさしいまちづくり条例の施行、さらには法定雇用率を上回る障害者雇用率の達成など、さまざまな分野で成果を上げているところであります。一方、この間の国内の動向に目を向けますと、障害者を取り巻く社会情勢は大きく変化しております。平成5年には障害者基本法が成立し、障害者の自立と社会参加の促進が明文化されており、また、平成6年には高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律、いわゆるハートビル法が制定され、地域社会で障害者、高齢者が安全で快適な生活を送るための方策が示されたところであります。さらに国では、昨年12月に障害者施策の具体的な実施計画として、平成8年度から平成14年度までの7カ年間を計画期間とする障害者プラン、ノーマライゼーション7カ年戦略を策定しております。このプランの策定によって、今後、高齢者施策の新ゴールドプラン、児童家庭対策のエンゼルプランとあわせて、保健福祉施策の強力かつ計画的な推進が図られることが期待されるところであります。このような中で、先般、県では新岩手障害者福祉行動計画の見直しを行い、後期計画を策定したとのことですが、どのような方針に基づいて後期計画を策定したのかお伺いいたします。
 また、後期計画の中にはどのような施策を新たに盛り込んだのか、さらに、国が策定した障害者プランの内容と県の計画内容とどのように整合性を図ったのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、児童生徒の減少に伴う小中学校のあり方についてお伺いいたします。
 学校統合の問題につきましてはさきに伊沢議員から質問があったところですが、私は、小規模校の増加と学校統合の関連についてお伺いいたします。全国的な傾向とはいえ、出生率の低下に伴い、児童生徒の数は今後減少していくことが予想され、特に過疎地域においては、若年者層の地域からの流出と相まって、その傾向がますます強まっていくものと存じます。私の住む岩泉町の例を見ますと、1年間の岩泉町全体の出生者数は、平成3年が147人、平成4年が127人、平成5年が98人と、その数は年々減少しております。この子らが小学校に入学し、進級するにつれて学校規模が小さくなっていくのは必至の情勢にあります。県内一の面積を有しながら道路交通の条件は決して良好とはいえず、かつ集落も点在している岩泉町においては、現在小学校は本校15校、分校5校あるうちで、各学年とも2けたの児童を有している学校は岩泉、門、小本の3小学校のみであり、その他の小学校はほとんどが各学年とも1けたの児童しかおらないのが現実であります。また、中学校に目を転じてみましても、8校のうち、既に大平、有芸の2つの中学校は3学年とも1けたの生徒しかおりません。児童生徒数の減少に伴う学校の小規模化減少は当岩泉町だけの問題ではなく、児童生徒の増加が見込まれる一部の市町村を除いた本県の小中学校教育全体のあり方にかかわることでもあり、将来の小中学校の存廃につながりかねない課題であると考えるものであります。小規模校が増加することにより、学校規模の適正化を図るとともに、児童生徒の教育向上を目指して、まず学校統合を進めることが考えられるところでありますが、もちろん学校統合に際しては地域住民の理解と合意を得た上で行われるべきものであります。児童生徒1人1人に配慮した教育的指導がなされる小規模校の利点や長所を見据えた場合、一律に学校統合を進めることはいかがなものか。むしろ小規模校であっても学校統合によってもたらされる集団としての活動、社会性の備わった人間性を身につけさせるような教育の充実を小規模校に図ることも重要なことではないかと思われますが、今後予想される児童生徒の減少に伴う小規模校の増加と学校統合との関連について、どのような方針で臨まれるのか、教育長の御見解をお伺いいたします。
 加えて、中学校の場合の小規模校は、教員定数の関係から教科専門教師が充足できない学校となることが想定されるわけですが、この点の現況と対策についてお伺いいたします。
 最後に、国道455号早坂峠の整備についてお伺いいたします。
 かつて沿岸から塩、海産物を城下町盛岡へ運んだ小本街道は、その後県道、国道と昇格し、整備が進められてきてはおりますが、今でも盛岡との距離をひとしお感じさせるのは早坂峠であります。この区間は急勾配、急カーブの連続のため、観光バスや大型トラックなど、大型自動車にとっては難所中の難所として細心の注意を払わなければならない現状にあります。新聞報道によりますと、早坂峠を挾んだ玉山村と岩泉町間の約10キロメートルの区間にはカーブが70カ所連続しており、しかも勾配が7%を超える区間が約800メートルあると報ぜられており、まさに交通の隘路箇所であります。ましてや冬場にあってはその危険性がさらに増すのは御承知のとおりです。この問題につきましては、さきの2月議会の一般質問でもお尋ねしたところでありますが、幸い県の新年度予算でトンネルの実現に向け第一歩が踏み出されましたことはまことに喜ばしく、沿岸地区住民の悲願がようやく達成されることになり、心から感謝を申し上げる次第であります。つきましては、一日も早く工事に着手され、開通されることを強く望むものであります。
 そこでお伺いしますが、県内16ルート24路線を整備する新交流ネットワーク道路整備事業の初年度として、早坂峠に約2億円の事業費が計上されていますが、今年度はどのような事業を行うのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、トンネルの工事着工時期もあわせてお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君)佐々木大和議員の御質問にお答え申し上げます。
 初めに、超大型工業団地の整備についてでございますが、まず、工業団地の整備につきましては、工業導入を計画的に進めることによりまして第2次産業の振興が図られ、多様な就業機会の確保など、県民生活の向上を図る上で大きな効果がありますことから、重要な施策として取り組んでいるところでございます。このため、県といたしましては、できるだけ付加価値生産性の高い企業を大規模な工業団地に集中的に立地させまして、その効果を周辺の地域に波及させることを目的といたしまして、おおむね20ヘクタール以上の面積を有する工業団地を拠点工業団地として位置づけまして、市町村などと連携を図りながら先行的に従来から整備を進めてきたところでございます。
 現在、整備済みの拠点工業団地は岩手中部の工業団地など8団地、また、整備中の拠点工業団地は久慈地区拠点工業団地など3団地、あわせて11団地がございまして、総面積は約1、300ヘクタールとなっているところでございます。これらの拠点工業団地には、大手半導体の工場や自動車組み立て工場など、多数の大手企業が立地をしておりまして、活発な生産活動を行いますとともに、関連企業の集積や雇用の場の創出など、周辺への波及効果も拡大をしてきておりまして、県民所得も向上するなど、県勢の発展に大きく寄与しているところでございます。
 県といたしましては、今後とも企業立地の動向や既存の団地の分譲状況などを勘案しながら、こうした拠点工業団地の整備を推進すべきものと考えているところでございます。一方、我が国の経済成長の中核でございました電気機械、自動車などの加工組み立て産業も含めました幅広い産業分野で急速に生産機能の海外移転が進んでおりまして、今後、国内では高度技術あるいは高付加価値産業などへ特化をしていくものと、このように考えられているところでございます。こうしたことから、特にも広大な用地を必要とする、いわゆる装置型産業などの大型の設備投資は非常に期待しにくい状況にあると、こういうふうに考えておりまして、ただいま御提言のございました数百ヘクタールの広大な用地を1社で使用するような、この超大型の工業団地の整備につきましては難しいものと、このように考えているところでございます。
 次に、本県の工業振興の基本方向と平成8年度の具体的施策についてでございますが、企業活動の国際化の進展や東アジア地域の急速な経済発展、これに伴います海外生産の増大などによりまして、我が国の産業に構造的な変化が生じてきておりますことは御承知のとおりでございます。
 本県におきましても、工業出荷額や企業立地件数の伸び悩みなど、工業を取り巻きます環境は厳しさを増してきているところでございまして、こうした国の内外で進行しております状況の変化に的確に対応しながら、県経済の発展を図っていく必要があるものと、このように考えております。したがいまして、これまで主として取り組んでまいりました企業誘致や地場産業の振興といったものに加えまして、地域の技術資源を活用いたしました研究開発の推進、技術開発力を持った企業や意欲的な新規創業者の育成などによります内発型の工業振興を図っていくことが特にも重要であると、このように考えております。
 このため、平成8年度におきましては、岩手大学の研究成果を企業化するための研究や、本県の有力な地場産業でございます鋳物製造業が新分野へ進出するための研究を産学官共同で行いますほか、工業技術センターの技術指導や試験研究機能の充実を図りますなど、地域の特性を生かした独創的、先端的な研究開発を積極的に推進することといたしているところでございます。
 また、企業がみずから行う新製品や新技術の研究開発に対する助成制度を大幅に強化をいたしまして、技術開発力を持った企業の育成を図ることとしましたほか、ベンチャービジネスの支援を強化するために、新たな融資制度も設けたところでございますし、財団法人の岩手県高度技術振興協会を通じまして、新規創業者などへの投資制度も今年度新たに創設をしたところでございます。
 さらに、新分野に挑戦をしていきます意欲的な新規創業者などの発掘や起業家を輩出する機運の醸成を図りますなど、経済社会情勢の変化に的確に対応しながら、内発的な工業振興に向けた施策を積極的に展開をしていく考えでございます。
 次に、本県における酪農の生産振興方策についてでございますが、我が国の畜産は、牛肉の輸入自由化やガット・ウルグァイ・ラウンド農業合意に基づきます新たな国境措置の実施など、急速に進むこの国際化の影響を次第に強く受けるようになってきているところでございます。国におきましては、これらの動向に適切に対応するために、良質、安全、そして新鮮な生産物を求める消費者のニーズに即応いたしまして、今後とも比較的高い伸びが見込まれます牛乳、乳製品及び牛肉の国内生産の拡大を図ることによる、この食糧自給率の確保を基本といたしまして、酪農及び肉用牛の生産を振興すると、こういうこととしておりまして、特に生乳生産量につきましては、今後10年間で2割弱の伸びを見込んでいるところでございます。
 本県におきましても、畜産の粗生産額の2割を占めております酪農の生産振興は、県土のこの有効利用に大きな役割を果たしますとともに、特に、中山間地域などの条件不利地域を含めました農山村地域の活性化や、地力維持増進を図る上でも極めて重要であると、このように考えております。このため、第三次の新いわて農業確立計画の後期推進計画におきまして、豊富な草資源など、本県の立地特性を最大限有効に活用いたしまして、土地基盤に立脚をいたしました酪農の形成に取り組み、積極的に生乳の生産量の拡大を推進することとしているところでございます。
 具体的には、良質な粗飼料の安定生産や公共牧場の活用によりまして、飼料自給率の向上に努めますとともに、フリーストールやミルキングパーラーなど、これはいずれも省力化の施設でございますが、こうした省力化施設の普及拡大などによりまして飼養規模の拡大を進めますほか、昨年度から実施をいたしております高能力輸入受精卵の導入など、乳牛改良の促進や牛群検定の拡充などによりまして、産乳能力の向上と高品質乳の生産拡大に努める考えでございます。さらに、県営の畜産経営環境整備事業などの活用によりまして、地域社会や自然環境と調和をいたしました酪農の推進を図りますとともに、ゆとりある酪農経営の実現のために、いわゆる酪農ヘルパーなどの経営支援組織、この育成を図りまして、その利用推進に努めていきたいと、こういうふうに考えております。
 これらの対策を通じまして、国際競争にも耐え得る意欲と経営感覚にすぐれた効率的、安定的な経営体の育成を図ることを基本といたしまして、活力あふれる酪農の推進に向け積極的に取り組んでまいる考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承お願いいたします。
   〔商工労働部長佐藤孝司君登壇〕
〇商工労働部長(佐藤孝司君)中小企業の金融対策についてでありますが、その主な施策は、県が直接融資を行う設備近代化資金や高度化資金等の融資制度に加え、金融機関と協調して間接的な融資を行う県単融資制度及び中小企業の信用力を補完する信用保証制度であります。
 具体的には、高度化資金は規制緩和や構造調整に対応し、共同店舗を建設する資金や物流効率化を図るための施設建設資金を融資するものであり、県単融資制度は県の資金を金融機関に低利預託することにより、金融機関の融資を量的、質的な面から補完し、中小企業の金融の円滑化を図ろうとするもので、資金使途や施策目的により各種の資金制度を設けております。
 また、信用保証制度は、担保力や信用力の不足する中小企業が金融機関から事業資金を借り入れる際、その債務を保証するものであり、県では信用保証協会の経営基盤の強化等について支援を行っているところであります。特に、今年度の県単融資制度につきましては、県内中小企業及び金融機関を対象として実施した調査と検討の結果を踏まえ、長期不況下で体力が低下している中小企業の資金状況を緩和するため、貸付限度額の引き上げ、貸付期間及び据置期間の延長など、貸付条件の改善を図ったところでありますが、この結果、5月までの利用状況は大幅な伸びを示している状況にあります。
 また、ベンチャー企業を支援するため、新たに無担保の融資制度として創造的中小企業支援資金を創設し、あわせて信用保証協会に対し損失補償を行うことにより、創業期の企業の融資を促進することとしております。
 以上の金融対策の運用に当たりましては、融資の窓口となる県内の各金融機関、信用保証協会、市町村及び商工団体と密接な連携を図り、金融相談等の経営指導を強化するなど、中小企業金融の円滑な推進のため機動的に対応していく必要がありますので、今後におきましても、中小企業の置かれている厳しい経営状況を勘案し、適切な融資枠の確保に努めるとともに、金融懇談会などの場を通じて企業のニーズを把握し、中小企業にとって利用しやすい制度となるよう、施策の充実強化に向けて努力してまいりたいと考えております。
   〔林業水産部長田尾秀夫君登壇〕
〇林業水産部長(田尾秀夫君)林業・木材産業の活性化についてお答えをいたします。
 まず、林野3法への対応についてでありますが、議員御指摘のとおり、林業・木材産業を取り巻く環境は一段と厳しくなっておりますことから、何とかこの厳しい現状を打開し、21世紀の国産材時代に向かって展望を切り開いていくことが喫緊の課題となっております。このため、国では法律に基づいて抜本的な対策を総合的に講ずるため、いわゆる林野3法をさきの国会に提出していたところでありますが、全会一致で可決され、去る5月24日に公布されたところであります。
 具体的には、緊急に解決しなければならない課題であります林業経営基盤の強化や林業労働力の確保、木材の安定供給体制の確立を図るため、これら3つの課題を密接に関連づけながら、一体となった対策を講ずることとされたところでありますが、まことに時宜を得たものであり、林業関係団体等から大きな期待がかけられているところであります。
 県といたしましては、議員御指摘のとおり、全国に先駆けて林野3法に対応するとともに、関係事業等をいち早く導入いたしまして、本県の林業・木材産業の明るい未来を切り開いていかなければならないと存じております。このため、既に森林組合連合会や木材協同組合連合会を初めとする関係団体と協議会を設置いたしまして、今後、どのように取り組んでいくかを協議するなど、着々と準備を進めているところでありますが、まだ、具体的に取り組み方法等を詰めるまでには至っておりませんので、今後、精力的に協議を重ねまして、準備に遺漏なきを期してまいりたいと存じます。
 次に、林業労働力確保支援センターについてでありますが、支援センターは林業労働者の著しい減少、高齢化に対処するため、林野3法の1つであります林業労働力の確保の促進に関する法律に基づきまして、今般、各都道府県に設置することとされたところであります。
 具体的には、林業版ハローワークとして林業就業者の募集を行うとともに、林業事業者の経営基盤を強化するため、指導や研修、資金や高性能林業機械の貸し付け等を行うこととされておりますが、議員御指摘のとおり、本県の林業労働者は昭和63年には6、400人でありましたが、平成6年には3、800人と4割も減少するなど、極めて厳しい状況にありますので、一日も早く設置する必要があると存じております。このため、現在、鋭意検討を重ねているところでありますが、その業務内容から見て、財団法人岩手県林業労働対策基金に設置することが最もふさわしいと考えているところであります。
 また、設置時期等につきましては、今後、関係部局や関係者と詰めていく必要がありますが、10月を目途に業務が開始できるよう準備を進めてまいりたいと考えております。いずれにいたしましても、林業労働力確保支援センターにかける期待はまことに大きいものがありますので、できるだけ早く設置するとともに、所期の目的を十分に果たすことができるよう準備を進めてまいりたいと存じます。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕
〇農政部長(中村盛一君)安全で良質な畜産物の生産対策についてのお尋ねでございますが、本県の畜産は、他県に比べ各畜種とも上位にありまして、粗生産額で見ますと全国第4位に位置しております。しかしながら、今後とも本県が畜産主産県としての地位を維持するためには、御指摘のとおり、健康な家畜から良質で安全な畜産物を生産することが肝要であると考えております。
 そこで、本県における畜産の疾病予防対策と診療対策についてでありますが、県内8カ所の家畜保健衛生所が地域の家畜衛生センターとしての役割を担いながら、農業団体等の176カ所の診療所、これに所属いたします232名の獣医師と連携をとり、家畜伝染病や乳房炎等の、いわゆる生産阻害疾病の診断、治療及び飼養改善指導に取り組んでいるところであります。
 また、自衛防疫組織としての岩手県家畜畜産物衛生指導協会による牛のアカバネ病など各種予防注射事業を実施するなど、防疫体制の強化にも努めているところであります。
 次に、生産段階におきます畜産物の安全性の確保対策についてでありますが、医薬品の使用につきましては、薬事法及び飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律により、それぞれの取り扱いが定められておりますので、家畜保健衛生所が巡回などにより、家畜の飼養者や獣医師に対し、医薬品の適正使用につきまして指導を行っているところであります。
 次に、生乳の品質向上対策についてでありますが、乳脂肪等の乳成分につきましては全国水準を維持しておりますが、なお衛生的乳質については、今後さらに改善の必要があります。このため、県経済連等関係団体と連携し、乳質改善協議会を設置して指導しているところでありますが、品質低下の主たる原因が搾乳機器の不適正な使用によるものでありますことから、これを改善するため、平成7年度からミルキングシステム診断事業を展開し、乳質改善の成果を着実に上げているところであります。
 また、乳量や乳たんぱく質等の乳成分のさらなる向上を図るため、乳用牛群検定などにより牛群の改良に取り組んでいるところであります。今後におきましても、安全で良質な畜産物の生産振興を図るため、獣医師の適正配置等防疫指導体制の強化に努めてまいる考えであります。
   〔生活福祉部長佐々木孝太郎君登壇〕
〇生活福祉部長(佐々木孝太郎君)まず、新岩手県障害者福祉行動計画後期計画の策定方針についてでありますが、新岩手県障害者福祉行動計画は、平成4年度に障害者施策を総合的かつ計画的に推進することを目的といたしまして、平成12年度までの9カ年間を計画期間として策定したものであります。
 計画策定後、啓発広報、福祉などの8部門で計画しました246事業のうち、平成7年度までの4年間に235の事業に着手し、事業着手率は95・5%となっており、順調に障害者施策を推進してきたところであります。しかしながら、本県では障害者の高齢化、重度化が急速に進んでおり、また、国が障害者プラン等を策定するなど、障害者を取り巻く最近の社会情勢は大きく変化してきております。さらに、県では本年度から第三次岩手県総合発展計画及び各部門別計画の後期実施計画が実施されているところであります。
 これらの情勢を踏まえ、後期5カ年に重点的に実施すべき施策の方向とその内容を明らかにし、障害のある人も家庭や地域で通常の生活ができるようにするという、いわゆるノーマライゼーションの基本理念のもとに、障害者の完全参加と平等の実現を図ることを基本として、本年4月に新岩手県障害者行動計画後期計画を策定したものであります。
 次に、後期計画に新たに盛り込んだ主な施策についてでありますが、ひとにやさしいまちづくり条例が本年4月に施行されたことに伴い、障害者等が地域において積極的に社会参加できるようなまちづくりを促進するための事業の推進と、県民の理解と協力を得るための啓発活動の実施を行うこととしております。
 また、昨年1月の阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、緊急時に障害者が必要とする機器や物資などの円滑な供給体制の整備など、障害者の安全な暮らしを確保するための各種施策を推進することとしております。
 さらに、障害者に最も身近な自治体である市町村が地域に根差しました施策の計画的推進を図るために、市町村障害者計画策定の促進に努めるなどの新たな施策の方向を示しますとともに、身体障害者地域リハビリテーション推進事業など、13の新規事業を盛り込み、継続事業とあわせて259事業を関係部局との連携を密にしながら、積極的に推進することとしたところであります。
 さらに、国の障害者プランの内容と県の後期計画の内容との整合性についてでありますが、国の障害者プランでは、保健福祉分野における整備項目や数値目標を具体的に掲げております。県の計画におきましても、地域において障害者の日常生活を支援するグループホーム、福祉ホームの整備や、重度の障害者に対して常時介護しながら治療を行う身体障害者療護施設の整備などに関する数値目標につきまして、国の計画を上回る水準としたところであります。県といたしましては、今般策定いたしました新岩手県障害者福祉行動計画後期計画に基づき、今後、障害者施策をより一層計画的かつ総合的に推進していく考えであります。
   〔土木部長藤本保君登壇〕
〇土木部長(藤本保君)一般国道455号早坂峠の整備についてでありますが、この道路は県都盛岡と沿岸北部地域を結び
、産業経済を支える広域的な幹線道路であるとともに、地域の生活に欠くことのできない道路でありますことから、これまでもその整備に鋭意取り組んできたところであります。しかしながら、早坂峠につきましては御指摘のように、急勾配、急カーブが連続しており、特に冬期の交通安全の確保が需要な課題とされておりましたが、地形的条件から2、000メートルを優に超える長大トンネルとならざるを得ず、整備に膨大な事業費を要することなどから、これまで事業化が図られなかったところであります。
 県といたしましては、交流を促進し地域間の連携を強化するなど、さらなる県土の均衡ある発展を期して創設いたしました新交流ネットワーク道路整備事業の中に、その重要性にかんがみ早坂峠を組み入れ、平成8年度より改良整備に着手したところであります。
 今年度の取り組みにつきましては、技術的、経済的にも合理性のあるルートとするための地形測量であるとか、あるいはトンネル坑口付近の地質調査などを行い、これらを踏まえ、建設省など関係機関との協議を予定しております。
 来年度は、トンネルを含む道路の詳細設計と用地測量等を行いたいと考えており、トンネル工事につきましては、これら関係機関との協議が整い次第、できるだけ早期に着手できるよう努力してまいりたいと考えております。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕
〇教育長(細屋正勝君)まず、小規模校の増加と学校統合の関連についてでありますが、御案内のように、児童生徒の減少により、今後、小規模校が増加していく傾向にありますが、公立小中学校の統合は、学校の設置者である市町村が子供たちの健やかな成長を促し、豊かな人間性をはぐくむ上で必要な教育環境の整備や教育効果の向上等を目指して行うものであります。
 その場合、御指摘のように、小規模校としての教育上の利点にも十分留意し、総合的に判断していくことが必要であると考えております。県教育委員会といたしましては、学校統合を計画する場合には、学校の持つ地域的意義等をも考慮しながら、十分に地域住民の理解と協力を得て行うよう指導してまいりたいと考えております。
 次に、中学校の小規模校における教科専門教員の配置についてでありますが、小規模校の多い本県の現状から、中学校においてはどうしても1つの学校に全教科を担当する教員をそろえることが難しく、免許外教科を担当する教員が生ずる状況になっております。もとより、正規の免許状を有する教科担任が授業に当たることが望ましいことから、人事配置の際には複数の免許を持つ教員を配置したり、免許法の認定講習を開設して複数の免許状を取得できるよう努めているところであります。さらに、免許外教科担当を解消するため、小規模校に非常勤講師の配置を進めているところであり、今後もその拡充に努めてまいりたいと考えております。
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   日程第2 議案第1号平成7年度岩手県一般会計補正予算(第6号)の専決処分に関し承認を求めることについてから日程第15 議案第14号国土利用計画岩手県計画の全部を変更することに関し議決を求めることについてまで
〇議長(堀口治五右衛門君) この際、日程第2、議案第1号から日程第15、議案第14号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

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