平成8年9月定例会 第7回岩手県議会定例会会議録

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〇8番(浅井東兵衛君) 自由民主党の浅井東兵衛でございます。
 6点ほどお伺いいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 第1番目に、まず、地方分権に対する知事の御所見をお伺いいたします。このことにつきましては、前の佐々木議員も取り上げられましたので、私は別の視点よりお伺いをいたします。
 地方分権につきましては、その重要性にかんがみ、さきの2月議会定例会におきまして推進方を決議いたしたところでありますが、今、21世紀まであと残すところ4年余りとなっており、世界の国々は21世紀型国家からの脱皮の道を必死に探っておる状況と言われております。これに基づき、規制緩和や公営企業の民営化、さらには地方分権等がもはや先進工業国のみならず、すべての国々に共通した課題とされておるところであります。我が国におきましても、ここ数年来、規制緩和と並びこの地方分権が重要な課題となっておるわけでありますが、昨年5月には地方分権推進法の成立が見られ、去る3月29日には、地方分権推進委員会より、国と地方の役割分担、事務や権限の移譲等についての中間報告がなされたところでありますが、さらに本年度内には最終答申もなされるものと承っておるところでございます。今、大蔵省、厚生省等々を初めとする中央省庁に対する信頼感が今日ほど失墜しているときはないとさえ言われている状況にありますが、この状況を踏まえ、規制緩和、情報の公開等と並んで、地方分権の実現が改めて重要視されておるところであります。しかしながら、反面、この分権の受け手である地方の側には、従来の指示待ち、上意下達型の中央集権体質が根づいており、なかなか地方分権に対する意識が芽生えていないとも言われており、さらには中央省庁の強い権限欲、官僚意識もまた大きな阻害要因との指摘があるところであります。さきに議会事務局から配布されました小冊子、情報、9月号によりますと、機関委任事務の自治事務化への移行については、各省庁の抵抗感がかなり根強いとされておりますが、一例を挙げれば、建設省は指定区間外国道については、自治事務化した場合、国道としての全国的ネットワークの形成が困難等の理由から、現在と同程度の関与が不可欠としており、また、河川の工事実施基本計画については、1級河川は建設大臣、2級河川については知事が策定をするが建設大臣の認可が必要とするなど、河川管理事務全般にわたって国の認可、承認が必要等々、その他全般にわたり、肝心なところの自治事務化移行はこれを拒否する対応が見られ、また、農水省は、2ヘクタール以上の大規模農地の転用あるいは市街化調整区域の線引き等に対しては、我が国の食糧自給率の低下などのデータを示して、国の責務である食糧の安定供給の確保などの観点が十分反映される仕組みであることが必要であるとして、農地の確保を名目にその権限の維持を主張しているとのことでありますが、農家に対し血のにじむような減反を課しながら何が農地確保かと、実に私はふんまんやる方ない思いであります。総論賛成、各論反対、みずからの権限は絶対に手放したくない、まさに中央省庁官僚の権限欲のすさまじさの一端を見る思いがするのでありますが、同時に、果たして中央から地方へ、官から民へという地方分権が所期の目的を達することができるのか、まことに危惧の念を持つものであります。
 そこで、増田知事にお伺いいたしますが、知事は岩手県知事に就任される前は、いわゆる中央省庁の中でも全国都道府県に対して強い影響力があると言われている建設省の官僚であったわけでありますが、今、知事としての立場から、この地方分権につきましてどのようなお考えを持っておられるのか。さらには、先ごろ結成された地方分権で生活を変える自治体連合には、お隣宮城県を含む10県が加盟しており、岩手県は未加入でありますが、これに対してどのような見解をお持ちであるのか、あわせて知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、公益法人についてお伺いいたします。
 急速な高齢化、少子化、さらには経済の停滞あるいは国際化等々、社会経済の変化は実に急速に押し寄せてきておりますが、行政もまたこれに対応すべくその改革が迫られており、それに伴い、諸種の規制緩和が着々と図られておりますことは御承知のとおりであります。そこで、その一環として、隠れた行政機関とも言われる公益法人がクローズアップされその検討が急務とされておりますが、この公益法人の数は、総理府統計によれば、平成7年10月現在において、国と都道府県の所管分は計2万5、927となっており、そのうち都道府県の所管するものは1万9、097の多きを数えており、しかもなおその数は年々ふえる一方とのことであります。その活動内容は、研究や啓発活動、さらには行政に代行しての検査あるいは資格付与を行う検定等多岐にわたっており、国民生活に直接かかわるものが多いとされておりますが、その実態の多くは官と民との間にある巨大なグレーゾーン、すなわち隠れた行政機関とも言われ、しかも公益法人には平成6年度決算ベースで国から業務委託費として1、412億円、補助金として2、478億円が投入され、まさに隠れた行政機関の感があるわけでありますが、さらにはまた、監督官庁の天下り先になっているとのことであり、今、この公益法人の存在が目下の急務となっている規制緩和の大きな妨げとなっているとの指摘がなされているところであります。また、公益法人は御承知のとおり、民法上、公益に関する社団または財団にして営利を目的とせざるものと規定されておりますが、この営利を目的としないというところから、中にはかなりの放漫経営状態やあるいは反対に優遇税制のもと、当然利益と目されてもしかるべき多額の内部留保を抱えて問題となっている公益法人もあるとされております。このたび、建設省は、高速道路における事故、故障等の処理を、これまでの社団法人日本自動車連盟のほぼ独占に近い形を改め、来春より数十キロごとの区間に複数の業者を選定し、ユーザーが業者の選択を可能とする新制度を発足させるよしでありますが、競争の原理によりサービスの向上、料金の透明化、低減等々が期待され大いに歓迎をするものであります。この社団法人日本自動車連盟は、かねてより問題とされておったところでありますが、新聞報道によれば、同連盟は、昨年度末現在におきましてその内部留保が396億円となっております。これは、同連盟の公表となっているところでありますが、実質はさらに大きく、600億円を超えるものではないかとも言われております。同連盟は非課税の公益法人でありますが、この非課税のゆえをもってこのような巨額な留保金を持つことに対し、果たしてこれが公益法人として妥当なのかという疑問が指摘されているものでありますが、しかもその理事はカーメーカー、ディーラーなど、自動車関連業界出身者が多数を占めておりますが、官僚OBもまた少なくないとされております。本県におきましては、県の所管にかかわる公益法人は財団法人173、社団法人190、計363となっており、そのうち県が出資しているものは40余りとなっているようでありますが、行政改革上、ぜひともこれら公益法人の再検討がなされるべきものと考えられる次第であります。
 そこでお伺いいたしますが、県の所管にかかわる公益法人の中に、特に県の行政にかわって検査、資格付与、検定等の業務委託がなされているものがあるのかどうか。もしあるとすれば、その数、さらにはそれに対する補助金、業務委託金等はどうなっているのか、総額で結構でありますからお示しを願いたいと思います。
 また、その存在は必要なものは必要として、でき得る限り最小限が望まれるところでありますが、今後の整理統合、廃止等、どのように考えておられるのかお伺いいたします。 次に、地震、津波等の大規模災害対策についてお伺いいたします。
 9月1日の防災の日、大船渡市における県総合防災訓練は、1万人に近い人の参加を得て真剣に行われたとのことでありますが、当局を初め参加された方々の御労苦に対し深く謝意を表するものであります。御承知のとおり、我が日本列島は、いつ、どこで地震が起きても不思議ではないと言われておるところでありますが、去る8月11日から12日にかけまして、宮城県北を震源とする地震が頻発いたしました。幸いにして、本県におきましては被害らしい被害はなかったのでありますが、阪神・淡路大震災を例に挙げるまでもなく、我が岩手県もまた常に大災害が発生する可能性を秘めておるわけであります。したがいまして、大規模災害に対する対策は、県民の生命、身体、財産を守るため極めて重要な業務であります。幸い、県におきましても、このことを十分認識され防災計画の大幅改正や防災ヘリコプターの導入等、これら対策に真剣に取り組んでおるところであり、県民の期待にこたえるものと評価をしているところであります。危機管理の要諦は、悲観的に準備し、楽観的に実施することにあると言われております。私は、そのような観点から、若干の提言を加味しながら、以下の2点について知事並びに関係部局長の御所見をお伺いいたします。
 まず、その第1点は、公民館、体育館、公園、その他の公的施設の整備に当たっては、有事において一定の被災者収容機能を発揮でき得るよう、長期展望に基づき、部局の壁を越えて計画的に取り組むことが極めて肝要であります。この点、大変心強く感じましたことは、本年4月開校した滝沢村の滝沢東小学校の整備のあり方についてであります。同小学校には、震災対応のクラブハウスを設置し、台所、シャワー室、トイレ等を併設し、有事の際には住民の避難場所として利用することのできる設備を整えたほか、この11月完成する予定の同校プールには、飲料水用の濾過装置を備え、有事の際には、プールの水を飲料水として利用するよう図られるとのことであります。このような施設が縦割り行政の壁を超えて地域ごと、施設の種類ごと、そして年次ごとに統一した方針のもとに、計画的に推進されることが特に大事であると考えられます。この点についての基本的考え方及び今後の具体的計画の内容についてお伺いいたします。
 第2点は、県民に対する防災意識等の指導、啓蒙の問題についてであります。
 大規模災害では、消防、警察、県職員自身が被災者になり得るところでありますし、また、県外等からの応援部隊の到着も交通途絶等により大幅におくれる可能性があります。このようなことから、大規模災害発生時においては、県、市町村等の公的機関や団体による救援活動が本格化するまでの2日から3日間程度は、近隣相互の助け合いと被災者自身の自助努力以外に生き延びる方策はないと言っても過言ではありません。具体的には、例えば各家庭において、応急の飲料水、罐詰食料、救急薬品等を準備しておくことや、家族の安否の確認方法の申し合わせ、避難場所の確認等がそれであります。また、有事に際し、町内会、自治会等が被災者の相互支援の仲介役を果たしたり、救援活動に必要な連絡の窓口機能を発揮することが望まれるところであります。しかしながら、県民の防災意識の現状はいまだこのレベルには達しておらないものと考えられ、むしろ核家族化の進行、地域連帯感の低下等により、公的機関や団体の救援活動に対する依存度が一層増大しつつあると認識されるところであります。
 そこでお伺いしたいことは、県民の防災意識の現状を県はどのように評価しておられるのか、また、今後、県民の防災意識の向上のためどのように取り組む方針であるのかお聞かせいただきたいと思います。
 特に、自助努力や地域相互の連帯、協調の重要性等は、義務教育、社会教育の中で系統的に意識づけを行う必要があると考えておるものであり、この点についてもあわせて御所見を賜りたいと思います。
 次に、各種ボランティア活動の助長策についてお伺いいたします。
 知事は、2月議会定例会における演述の中で、安全で安心感のある県民生活の確保、思いやりのある福祉社会づくりの重要性を強調されたところでありますが、私もその基本認識には大いに同感するものであります。ところで、これらの目標達成のためには、国や地方公共団体の行政に依存するだけではなく、県民の自発的活動、換言すれば各種ボランティア活動に期待する面が極めて大きいものがあります。例えば、高齢者、身障者に対する介護、支援、スポーツ振興や青少年の健全育成、さらには防犯、防災、交通安全等に果たしているボランティア等はその代表例であり、その成果と御労苦に対し心からの敬意と感謝の意を表するものであります。ところで、このボランティア活動の推進に際してはさまざまな隘路、問題点が多く、関係者は大変な御苦労をされているところであります。例えば、各種ボランティア等の要員確保の問題、ボランティア活動の過程で発生した災害補償の問題、各種法人の活動資金不足の問題等があると理解しているところであります。
 そこで伺いますが、県は、各種ボランティア活動の状況をどのように評価されているのか、また、第三次県総合発展計画後期計画の中でも触れている、県民だれもがボランティアとして活動しやすい環境の整備のためには、社会教育、各種助成、賞揚措置等、県行政の全般にわたり各種の助長策を講ずる必要があると考えておりますが、今後、どのような施策を展開されようとしているのかを明らかにしていただきたいと思います。
   〔副議長退席、議長着席〕
 次に、精神障害者の社会復帰対策についてであります。
 県は、さきの第三次岩手県保健医療計画の中におきまして、精神障害者の社会復帰について、地域の人々や企業等を含めた社会全体の理解の必要性を訴えるとともに、その自立を図るための生活指導や作業訓練の実施、職場適応訓練の拡充、さらには社会復帰施設の整備等の施設を掲げ、その促進を図ることとしております。また、さらに、新岩手県障害者福祉行動計画の後期計画におきましても、これらの施策の強化がうたわれているところであります。しかしながら、現況はその社会復帰がなかなか困難との声があります。すなわち、入院加療をしておった精神障害者が、治療のかいあってやっと社会復帰が可能な状態になったものの、退院後の住居あるいは職場の確保、さらには家庭での受け入れ事情等の要因からなかなか社会復帰が思うに任せず、そのため、やむなくそのまま入院を続けている患者もいるとのことであります。社会復帰、職場適応は多くの家族の切実な願いであり、また、ぜひとも解決しなければならない社会問題でありますが、さらにはまた、副次的には、そのため常にベッドも満杯に近い状態となり、次の入院希望者もなかなか入れない状態にあると聞いております。
 そこでお伺いいたしますが、まず第1点は住居の問題であります。
 社会復帰の第1条件は、まず住居がなければならないわけでありますが、グループホーム等精神障害者援護寮は現在どのようになっており、また、今後どのような施策がとられていくのか。
 第2点は、自立のためには職場が必要なわけでありますが、その職場の確保についてはどのような施策がとられているのか。また、精神障害者家族が運営する小規模作業所に対する助成措置の現況と今後の拡充の見込み等を含めて、担当部長の御所見をお伺いいたします。
 次に、北上川遊水地内の営農対策についてお伺いいたします。
 御承知のとおり、同遊水地内の農地は優良な米作農地であり、早期にその基盤整備対策、圃場整備事業等の推進が要望されているところであります。幸いにして、本年度は第3遊水地内の圃場整備事業がいよいよ着手されることになりましたことは、当局の御尽力のたまものと深く感謝申し上げるものであります。しかしながら、せっかくの圃場整備事業も、毎年訪れる水害から守るための小堤の建設なくしてはその存在意義が薄れ、ただ農家の負担増となるおそれなきにしもあらずであります。小堤は、本来先に着工されるべきものと思われるものではありますが、仮におくれたといたしましても、少なくとも圃場整備事業と同時進行の形が最低条件と思われますが、聞くところによりますと、小堤の建設はその着工の見通しがいまだ確定してはおらないとのことであります。圃場整備は農水省、小堤建設は建設省と、縦割り行政のもとではいろいろと難しい面もあろうかと思われますが、これの早期着工について特段の御努力をお願いいたしますと同時に、今後の見通しについてお伺いいたします。
 また、圃場整備に対する費用の負担についてでありますが、これは国、県の補助と受益者負担分があるとのことでありますが、御承知のとおり、米作農家の置かれている経営環境は極めて厳しいものがあり、その負担金についてかなりの不安を訴えているところであります。第3遊水地につきましては、小堤用地買収等による相殺が考えられ、その負担軽減が見込めるようでありますが、今後、面積の広大な第1、第2遊水地の圃場整備事業が着手された場合、相当額の農家負担も考えられるわけであります。したがいまして、今回着手される第3遊水地から、その負担の軽減もしくは皆無も図られることが望まれるわけでありますが、その点いかがでしょうか。
 以上、2点につきまして、担当部長より今後の見通し等を含めまして御所見をお伺いいたします。
 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。御答弁、よろしくお願いいたします。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 浅井東兵衛議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、地方分権についてのお尋ねでございますけれども、私は、地方分権の推進は、当面する県政の課題の中でも最も重要なものの1つであると考えているところでございまして、国と地方の役割分担を明確にして、地方の自主性、自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することを基本といたしました地方分権を推進することが時代の要請でもあると、このように考えております。国の地方分権推進委員会では、勧告に向けまして中央省庁や地方6団体などとのヒアリングを精力的に実施しているということのようでございますけれども、今議員の方から御指摘ございましたとおり、依然といたしまして、従前と同様に国が関与する必要があるということで、特定の事務について反対の立場を表明している省庁もあると、このように伺っております。私は、本年度内に予想されますこの委員会からの勧告につきましては、ぜひ地方分権の推進が実効性あるものとなるように、権限移譲や機関委任事務、必置規制の廃止などが明確に盛り込まれる形で取りまとめられるとともに、政府におきましては、この勧告を受けて速やかに地方分権推進計画を作成いたしまして実施に移すように念願をいたしておるところでございます。また、地方分権の推進のためには、地方税財源が十分確保されることが不可欠であると考えておりますので、今後とも、全国知事会や政府予算統一要望の場を通じまして国に対して強く働きかけてまいりたいと考えております。
 また、地方分権で生活を変える自治体連合についてでございますが、この自治体連合は、地方分権について、生活の現場からの論議を深めまして世論の盛り上げを図ることによってこれを推進することを目的といたしまして、去る7月に岐阜県の提唱で、宮城県を含めた10県で発足したものでございます。私は、全国知事会の地方分権推進特別委員会の構成メンバーとしてその中でいろいろな意見を述べているところでございますが、この自治体連合の発足は、地方分権を推進する地方自治体の機運の醸成や地方の取り組み姿勢を国に示す上で意義あるものと、このように考えております。
 次に、県民の防災意識の現状に対します評価とそして今後の取り組みについてのお尋ねでございますけれども、昨年の阪神・淡路大震災を契機にいたしまして、県民の防災に対します関心、安全で安心感のある生活への要請は非常に高まってきているものと、このように認識をいたしております。去る9月1日に大船渡市で実施をいたしました総合防災訓練におきましては、町内会などを中心としたこの自主防災組織を初めといたしまして、予想を上回る多くの住民の方々の参加を見たところでありまして、その真剣な訓練ぶりを拝見いたしまして、防災意識が着実に高まってきていることに意を強くした次第でございます。私は、県民一人一人が防災に関する正しい知識を持ち、自分たちの地域は自分たちで守るという心構え、備えをしっかり持つことがいざというときに、そして、その当初の場合に大きな力になるものと、こういうふうに考えているところでございます。このため、家庭における災害時の心構えのポイントなどをまとめた防災パンフレットを県内の全世帯に配布をいたしましたほか、県立の総合防災センターを地震や火災の体験型に全面改修をするとともに、県内各地域での震災体験を可能とする防災指導車、いわゆる起振車と呼ばれるものでございますが、防災指導車の導入あるいは災害時に地域住民が身近に使用できる救助、救護などの資機材の整備など、県民の防災意識の高揚につながる施策を現在進めているところでございます。
 さらに、本年は、我が国の災害史上に残る甚大な被害をもたらしました明治の三陸大津波あるいは陸羽地震から100年という節目の年でございますので、来る10月7日には、過去の災害を振り返りまして、防災を身近な課題として考え直すために、地震、津波災害について考える県民の集い、これを開催するなど、今後とも市町村や関係機関ともども地域における自主防災組織の育成強化と県民の防災意識の高揚に積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) まず、公益法人についてでありますが、県の所管にかかわる公益法人の中で、県から検査、資格付与等の業務が委託されておりますのは、消防法に基づく危険物の取扱作業の保安に関する講習が委託されている財団法人岩手県消防協会、道路交通法に基づく免許証の更新を受けようとする者に対する講習が委託されている社団法人岩手県交通安全協会などがあり、その数及び業務委託金の総額は、平成8年度において8法人、1億5、500万円余となっております。
 また、今後の業務委託の整理統合等についてでありますが、国におきましては、公益法人に対する適正な指導監督等を強力に推進するとともに、公益法人が行っている行政代行的行為等の透明化を図るため、去る9月20日に公益法人の設立許可及び指導監督基準及び公益法人に対する検査等の委託等に関する基準を閣議決定したところであります。
 この公益法人に対する検査等の委託等に関する基準によれば、各官庁が不特定または多数の者に対する検査、認定、資格付与等の事務を公益法人に委託等を行う場合は、委託等を行う事務の基本的内容及び事務の委託等を行うことができる公益法人の基準が法律で定められていること、検査等の基準が客観的に明確であり、委託等を受ける公益法人の裁量の余地がないこと、委託等を行う官庁の出身者と委託等された検査等にかかわる業界の関係者の合計が理事現在数の2分の1を上回らないこと、検査料、認定料、資格登録料等の料金については、委託等を行う官庁が決定することなど、一定の要件が整っていることが必要とされ、各官庁はこのことについての必要な措置を平成12年度末までに行うこととされたところであります。県といたしましては、知事の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則などに基づき公益法人に対する適正な指導監督に努めてきたところでありますが、今後、国からこの基準の実施に当たって示される具体的な運用指針等に基づき、公益法人に対する検査等の委託について所要の検討を行い、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
 次に、地震、津波等の大規模災害対策に関して、被災者の収容機能を備えた公民館、体育館等の公的施設の整備を計画的に推進すべきではないかというお尋ねでありますが、災害時に住民の速やかな避難を促し、人的被害を最小限にとどめるためには、一定の施設設備を備えた収容能力のある避難所の整備が大きな課題であると存じております。その意味におきまして、地域住民が日常的にさまざまな形で利用される公民館などの公的施設は、特に大規模災害時において住民の避難にとって重要な役割を担い得るものと存じているところであり、実際、市町村の避難施設の状況を見ますと、その8割以上が学校、公民館、集会所、体育館などの公的施設となっているところであります。したがいまして、昨年度修正いたしました県の地域防災計画におきましては、避難所となる施設がその機能を十分発揮し得るよう、指定に当たっての留意事項や必要な施設設備の整備、物資等の調達など、その設置運営に関しての基本的な考え方を定めたところであります。現在、市町村におきましては、この県計画を踏まえ、それぞれの地域防災計画の修正作業を進めているところでありますが、各地域の実情に応じた避難場所等の計画的な整備に当たっては、関係機関との間での十分な協議、調整が肝要であると存じておりますので、この点に留意しながら指導してまいりたいと考えております。
 なお、県といたしましては、昨年制定された地震防災対策特別措置法に基づき、消防用施設、緊急輸送道路、海外保全や砂防施設等を初めとして、公園、広場など、避難所となる施設の整備や学校、保育所等の耐震補強などを今後5年間で行うため、今般、地域防災緊急事業5カ年計画を取りまとめたところでありますので、この計画に基づき、積極的に国費の導入を図るなど、これら施設の整備について支援してまいりたいと考えております。
   〔企画調整部長武居丈二君登壇〕
〇企画調整部長(武居丈二君) 各種ボランティア活動の現状評価と今後の施策展開についてでありますが、ボランティアにつきましては、活動分野が幅広いことなどから、その活動実態を正確に把握することは困難でありますが、例えば、岩手県社会福祉協議会がボランティア団体について調査した資料によりますと、県内には平成6年において、団体ボランティアとしては977団体、8万896人が活動しており、また、個人ボランティアとしては6、766人が活動しているとされておりまして、総数では県人口の約6%に当たる8万7、662人にも上りまして、これをその2年前と比較しますと約1・5倍と、大幅に増加しているところであります。
 ボランティア活動は、在宅福祉サービスを初めとしまして、スポーツ、教育、文化あるいは地域活動、環境美化、さらには国際交流など多岐にわたっておりまして、とりわけさきの阪神・淡路大震災に際しましては、延べ8、356人もの県人ボランティアが募金活動や救援物資の搬送などに献身的な奉仕活動を行ったところでありまして、このような活動を通じてボランティア活動の意義、さらには必要性に対する県民の意識は急速に高まってきているものと考えております。また、国におきましても、このような動きを踏まえまして、市民活動促進法案の制定に向けた議論がなされているものと承知いたしております。
 県民みずからの主体的な行動としてのボランティア活動は、例えば93年に雫石町で開催されましたアルペンスキー世界選手権大会を成功に導く原動力になりましたように、個性豊かで、活力に富んだ地域社会の形成を図る上での基礎をなすものでありまして、今後、高齢社会の一層の進展等に伴い、その役割はますます重要になっていくものと考えております。このため、県といたしましても、ボランティア活動の自立性を尊重しながら、活発な活動が展開されるよう、さまざまな分野においてボランティア情報の提供、リーダー養成研修の開催、ボランティア活動のPR等によりまして、ボランティアに携わる人材、組織の育成や県民意識の高揚を図るなど、その環境整備に努めているところであります。今後におきましても、市民活動促進法案等の国の動向にも十分留意しながら、ボランティア活動の輪が一層広がるよう、その環境づくりを進めてまいりたいと考えております。
   〔環境保健部長緒方剛君登壇〕
〇環境保健部長(緒方剛君) 精神障害者の社会復帰対策についてでありますが、議員御案内のとおり、精神保健福祉法の改正、障害者プランの策定など、障害者を取り巻く状況が大きく変化し、社会復帰、自立支援の充実が図られようとしております。県では、昨年に実施した実態調査等を踏まえ、今年度中に家族会、ボランティア、精神医療機関、保健福祉関係者等で構成する岩手県精神障害者社会復帰促進計画推進会議において障害者の社会復帰計画を検討していただき、これを踏まえて住居や職場など、具体的な施策の展開を図ることとしております。
 このうち、住居の確保の問題についてでありますが、法制度上、共同生活を通じ生活訓練等を行う援護寮、一定程度自立可能な者を対象とする福祉ホーム、共同生活を営む障害者対し日常生活の援助を行うグループホームが地域における生活居住の場として位置づけられております。平成8年度における県内の状況は、援護寮、福祉ホームがそれぞれ1施設整備され、約26名の方が利用されており、グループホームは2カ所が指定され、11名の方が生活しておられます。今後、障害者の住居の確保のためには、地域においてその理解が促進されることが重要な課題だと考えております。
 また、援護寮などの社会復帰施設については、整備を計画的に進め、グループホームについては、家族会、ボランティア、医療機関、保健所、市町村等の協力のもと、一般アパートや公営住宅等の活用などを含め、その普及が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、職場の確保についてでありますが、現在、障害者に働く機会を与える場や作業訓練の場としては、小規模作業所、通所授産施設及び通常の就職が困難な障害者が一定の訓練を行う、いわゆる職親制度があります。通所授産施設は、現在、県内に2カ所設置され、約60名の方が利用されており、また、職親制度は、登録事業所が93カ所、訓練者数73名となっております。これらの制度は、職業安定所が実施する職場適用訓練などの雇用促進の制度とあわせ、障害者の職場参加の促進を図り、今後の社会復帰に有効であることから、今後も通所授産施設等の整備を促進するとともに、保健所などを通じて職親の協力事業所や訓練対象者の拡大を図ることとしております。
 また、小規模作業所は、障害者の地域生活に密着して社会復帰の足がかりとなる資源として重要であり、現在、県内で10カ所が設置され、約130名の方が訓練を受けておられます。作業所の安定的な運営を確保するために、県単独事業として運営費を助成しておりますが、今後ともその充実に努めたいと考えております。
 また、家族会、ボランティア、市町村や医療機関等との連携のもと、小規模作業所の運営の整備の促進を図ってまいりたいと考えております。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕
〇農政部長(中村盛一君) 一関遊水地内の営農対策についてのお尋ねでございますが、農業を取り巻きます環境が急速に変化し、産地間競争が一層激化する中で、低コスト水田農業の確立と地域農業を担うすぐれた農業者の育成に向けまして、圃場整備事業はその基礎となるものでありますことから、県内各地で本事業の推進に努めているところであります。県南の穀倉地帯であります一関市や平泉町の北上川沿いの水田地帯では、建設省によって一関遊水地事業が進められておりますが、これは、市街地を洪水から守るための周囲堤と中小洪水から農地を守るための小堤を築造し、第1から第3までの遊水地に洪水を一時貯留して北上川の洪水を調節しようとするものであります。この3つの遊水地は約1、400ヘクタールに及ぶ平たんで肥沃な水田地帯であり、一関地域の主要な米生産地として将来とも効率的な水田農業を担っていく優良な農業地帯であります。このため、受益農家から遊水地事業とあわせて安定的な低コスト水田農業の実現に向けた圃場整備への要望が高まり、本年度から第3遊水地の124ヘクタールにつきまして、1ヘクタール規模の大区画圃場に整備すべく、県営担い手育成基盤整備事業に着手したところであります。本地区の圃場整備の実施に当たりましては、遊水地計画との調整が必要不可欠でありますので、建設省、県、一関市及び農業関係団体で構成する協議会におきまして、平成9年度からの工事着工に向け、小堤や排水路、統合ポンプ場などの関連施設の位置や規模、施工時期などにつきまして、圃場整備事業と一体的施工が図られますよう協議を重ねているところであります。特に小堤につきましては、遊水地内農地への洪水被害を防止し、圃場整備事業の効果を十分に発揮させる重要な施設でありますことから、県といたしましても、建設省に対し小堤の早期着工を強く要望してきているところでありますが、その着工時期につきましては明らかにされていないため、今後とも関係機関と一体となって早期着工を要望してまいりたいと考えております。
 次に、圃場整備事業に対します農家負担についてでありますが、本地区で実施しております担い手育成基盤整備事業は、国、県の補助及び一関からの助成も加えますと、農家負担は従来の事業に比べ事業費の10%と低くなっておりますし、さらに無利子融資が受けられる制度となっております。また、本地区では、換地の手法により、小堤や排水路などの遊水地施設用地を受益農家が共同で生み出し、建設省が取得する計画であり、その代金を充当することにより、大幅に農家負担の軽減が図られる見通しになっております。
 なお、今後予定されております第1、第2遊水地内の圃場整備事業につきましても、第3遊水地と同様、建設省などの関係機関と調整を進めながら、農家負担の軽減を図り、事業の推進に努めてまいりたいと考えております。
   〔教育長細屋正勝君登壇〕
〇教育長(細屋正勝君) 県民の防災意識の向上についてでありますが、学校教育におきましては、学習指導要領や消防法に基づいて、教科の中で安全指導を行うとともに、地震や火災等を想定した避難訓練を定期的に実施し、緊急災害時における安全な避難の仕方について具体的に指導しているところであります。加えて、初期消火の基本や負傷者の救護の指導を通して、防災意識の育成や弱い立場の人々への思いやりの大切さについても指導しているところであります。
 また、地域におきましても、各種の活動を通して連帯性の向上や協調性の育成を図ることに努めておりますし、市町村でも、成人を対象とした学習等の中で、地震や津波を中心とした防災に関する講座を開設しているところもあります。今後におきましても、阪神・淡路大震災等の教訓を生かし、防災意識の高揚を図るべく、市町村の主体的な取り組みを支援してまいりたいと考えております。
〇議長(堀口治五右衛門君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
   
〇議長(堀口治五右衛門君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
日程第3 認定第1号平成7年度岩手県立病院等事業会計決算から日程第43 議案第38号県道路線の認定及び変更に関し議決を求めることについてまで
〇議長(堀口治五右衛門君) この際、日程第3、認定第1号から日程第43、議案第38号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

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