平成8年12月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(長谷川忠久君) 新進・公明の長谷川忠久でございます。
 最初に、地方分権についてでありますが、本件については多くの先輩、同僚議員から議会ごとに質問されていますが、角度を変えて質問させていただきます。
 今、我が国は、グローバルな変化の潮流の真っただ中に身を任せ、押し流されようとしているかのようであります。その変化の潮流は、我が国の政治、経済、社会など、すべてのシステムの変革を求めているのであります。殊にも政治システムの変革は、従来の中央集権的システムが制度疲労を起こし、地方の分権を推進しなければならないことを感じながらも、過渡期ということはあろうかと思いますが、有効な処方せんを見出せないでいるのであります。
 その変化は3つに分類されると言われております。変化の第1は、ボーダーレス化という言葉で象徴される、経済を中心とする国際化であります。ボーダーレス化は、人、物、情報などの国境を超えた動きを規制することを困難にし、結果として政府による国民経済の管理が非常に困難になってきているということであります。第2は、情報、通信を初めとする急速な技術革新は経済のあり方を大きく変え、かつては企業育成が目的であった政府の関与がむしろ企業活動を阻害する要因として指摘され、規制緩和の推進は、政府による規制が必ずしもよい結果を生まず、非能率的であることが多いために、規制を撤廃ないしは緩和し、むしろ企業活動に対する統制を市場にゆだねようとするものであります。第3は、社会の成熟化であり、高齢社会の到来は、人々の社会的ニーズを高度化し、多様化させてきたことであります。そして、社会の成熟化に伴う人々のニーズの高度化、多様化にこたえてきめ細かな公共サービスを政府が供給すること、特に政府が管理し、コントロールすることによってサービスを提供することは現在では極めて困難であり、たとえ可能であったとしても非常にコストがかかるということであります。このような3つの変化は、これまで強力であった政府の社会に対する管理能力を急速に弱め、その司令塔としての機能を縮小しつつあるのであります。
 今や国家システムは、時代の状況に応じて構造の変革を迫られております。その方向は、1つには、EUやWTOのような国際機関への権限の移譲であり、2つには、それぞれにアイデンティティーを持ち、個性あるニーズを有する政治共同体への権限の移譲、すなわち地方分権の推進であると言われているのであります。これらの方向を踏まえ、昨年5月成立した地方分権推進法に基づく地方分権推進委員会の中間報告では、目指すべき分権型社会の姿として、規制緩和と地方分権による地方の自己決定権の拡充、国と地方公共団体の関係を上下、主従の関係から対等、協力の関係へ、国と地方公共団体の間の新しい調整ルールと手続の構築、知事、市町村長が国の機関から地域住民の代表自治体の首長へ、地方公共団体の自己責任等が明記されていることは御案内のとおりでございます。このことは、地方公共団体が国と対等、協力の関係を維持し、地方の政策立案能力や自己決定権の強化を目指し、健全な発展を遂げなければ国家の繁栄、国民福祉の向上はおぼつかなくなっていることを示しているのであります。
 このような状況のとき、国と地方のねじれを危惧する報道がされ、私は目を疑うのであります。殊にも、さきに実施された岡山県知事選挙において、国家行政の最高責任者が国と県のねじれ現象は岡山県の発展を阻害する旨の発言の報道は、選挙期間中という特殊な事情を考慮いたしたとしても、果たしていかがなものかと思ったのであります。先ごろ行われたアメリカ合衆国の選挙においても、大統領は民主党、議会と州知事は共和党が勝利しており、民主主義国家では、いわゆるねじれはつきものなのであります。表面的にねじれがなかったのは旧ソビエト連邦のような全体主義国家だけであり、今まで我が国にも多数の事例が存在したように、民主主義国家においてねじれ現象はあって当たり前、むしろあった方が健全な国家であると言えると思うのであります。また、先般行われました衆議院議員選挙は、新しい選挙制度によって実施されました。その選挙制度を含む政治改革の理念は、55年体制のもと、長きにわたった自由民主党の1党支配が政官業の癒着、族議員の誕生など官僚政治の弊害を生むとともに、政治家や官僚の金銭に関するさまざまな疑惑が明らかになり、国民の不興を買い、政府が政策を誤ったり、間違いを起こした場合に政権交代可能な選挙制度にすること、そして、緊張感を持って政治に臨もうということで発足したものと理解をしているところであります。内閣総理大臣、国務大臣、知事、市町村長の行政の責任者がみずからの裁量で政治に関与し、行政執行することは、地方分権推進委員会が指摘するように、国と地方公共団体が上下、主従の関係から対等、協力の関係へと方向転換を促そうとする時代の潮流にあっては当然のことであり、さらにねじれをもって首長の責任を云々するのは政治改革の理念にももとるものではないでしょうか。ねじれ現象が地方の発展を阻害するというのは時代錯誤であり、また、国に唯々諾々と従うのは、政治、経済の健全な発展を阻害すると言っても過言ではないのであります。権謀術数が渦巻くマキャベリズムが支配するのが政界であると言われているところであり、また、3割自治から7割自治へと言われますが、地方交付税や国庫支出金など、4割の財源調整が政府によって行われるところであり、ねじれを危惧する気持ちもわからないわけではありませんが、新時代を迎え、国際的な政治、経済の秩序を構築する中で国の権限が相対的に縮小し、地方と民間の果たすべき役割が増大し、地方が主体性を発揮し、国土の均衡ある発展をなし遂げることが真の地方分権の前提であることを考えれば、国と地方のねじれ現象は何ら問題はないと思うのであります。
 県勢は着実に進展しています。去る11日の平成6年度の県民所得の概要では、県民1人当たりの所得は252万6、000円で、国を100とした所得水準は84・7%と、前年比3・1ポイントの伸びを記録し、過去最高を更新、全国との差は年々縮まっていると報道されています。今、私たちに課せられている最重要の課題は地方の健全な発展であり、知事と県議会は是々非々の立場で協力関係を維持し、岩手県が有するアイデンティティーを活用した県勢の進展に努力することであると確信をいたします。
 そこで知事は、地方分権についてどう認識されておられるのか、また、国と地方のねじれについてどうお考えなのかをお伺いいたします。
 また、地方の政策立案能力、自己決定権の強化のため何をなさなければならないと考えるのか、お伺いいたします。
 さらに、国土の均衡ある発展が進展しなければ真の地方分権は機能しないのではないかと思うのでありますが、そのため県はどのような目標を設定し、県政運営に当たられようとされるのかについてもお伺いいたします。
 次に、来年度の予算編成方針についてであります。
 我が国の経済は、平成3年度をピークにいわゆるバブル景気がはじけ、景気の低迷期に入ったことから、国においてはたび重なる経済対策を講じて景気回復の実現に向けた努力をこれまで行ってきたところであります。しかしながら、政府の懸命な努力にもかかわらず、景気は依然として緩やかな回復基調という言葉であらわされるように、景気の回復というにはほど遠く、回復の足取りはまだ重いものがあります。政府は、平成8年度の経済運営の基本的態度で、景気回復の確実化、経済構造改革の推進、国民生活の充実、行財政改革の推進、国際的役割の遂行を重点に経済運営を行おうとしているところであります。しかしながら、雇用情勢は依然として厳しい状況であり、住宅建設を中心とした一部個人消費に消費税率引き上げ前の駆け込み需要はあるものの、景気回復の確実化はもとより、すべてが先送りされているように思えてなりません。資産デフレは今世紀中続く、経済構造改革は現状では困難などの海外からの論評に接するたびに、景気の足踏み状況は明年度以降も続くと考える方が正しいと思えて仕方がないのであります。さらに、民間の主要な経済調査機関が発表した来年度の経済見通しを見ても同様の見込みが立てられており、財政の窮迫化の進行、所得減税の不明確、消費税率引き上げによる景気の減速などを考慮するとき、経済成長率は来年度は限りなくゼロ%に近づくのではないかと憂慮されるところであります。
 そこで、まずお伺いいたしますけれども、県では、現況の国及び県の経済動向をどのように分析されておられるのか、また、来年度の見込みについてもあわせてお示しいただきたいと思います。
 また、国の財政に目を転じてみると、このような我が国の経済情勢にあって、これまで財源不足を補うために国債を発行して財源を確保し、経済対策を初めとする景気対策などの各種の施策を展開してきたという反動があらわれ、今や公債残高が241兆円、これを国民1人当たりに換算すると192万円という多額の借金を抱えるという極めて厳しい財政事情を招いてしまったのであります。このような厳しい財政構造は地方財政も同様であり、地方については136兆円という多額の借金を抱えており、国、地方を通じて財政の硬直化が確実に進行している状況にあります。このような社会経済、財政状況の中にあって、我が国は国際社会の一員として多くの役割を果たすべきであるとともに、本県においても、全国を上回る速度で進行する高齢化社会への対応や生産、生活両面における社会資本の整備、全国との所得格差の是正、県土の均衡ある発展など、前にはだかる諸課題に果敢に取り組み、21世紀における理想的な岩手県の創造に向けて、3県総後期実施計画に掲げる施策を初めとする各種の施策を展開することが極めて重要であります。
 このような観点から、私ども岩手県議会新進・公明議員団は、3県総の計画目標の達成と、県民の意向を踏まえた今日的課題を解決し、もって県勢の一層の発展と県民福祉のさらなる向上を図るため、平成9年度の予算編成に係る要望書を取りまとめ、知事に提出したところであります。私は、先ほど申し上げましたような、国、地方を通じた極めて厳しい財政事情や目まぐるしく変化する社会経済情勢の中にあっては、限られた財源の効率的な活用を図るために、県民の意向を踏まえるとともに、本県の持つ特性、特色を十分に発揮できるような施策を重点的、効率的に選択して展開すべきであると思うのでありますが、来年度の予算編成に当たって、特にどのような視点に意を用いて作業を行うのかお尋ねいたします。
 次に、旅費の不適正な執行について質問いたします。
 昨年来、新聞、テレビなどでいわゆる官官接待とかカラ出張、カラ接待などの問題についてほとんど毎日のように報道されており、北は北海道から東北では秋田県、宮城県、関東では群馬県、東京都など、全国の多くの都道府県において問題になっており、県によっては市民団体などを中心に数十万件にも上る食糧費や旅費関係の公文書の開示請求がなされていると仄聞しているところであります。これらの地域においては、内部調査や特別監査という方法で不適正な支出を洗い出し、その額はこれまで判明しただけでも全体で数十億円に上ると言われており、県によっては知事以下の職員に対し減給処分を行ったり、返還といった対応を行っております。このような事態は行政に対する国民の批判を招き、不信感を増幅させ、地方分権が叫ばれている折、まことに残念な現象と言わざるを得ない状況になっているところであります。私は、本県においてはこのような憂慮すべき事態はないものと思っていたところ、本年3月、花巻地方振興局税務部職員が中止した出張旅費を6月以降に返納した事例や、同じく3月に衛生研究所の職員が実際には参加しなかった学会への出張旅費を受け取り、その後、その事実が判明して返納している事実に接し、愕然たる思いをいたしたところであります。本県の場合には、他の都道府県のごとき組織ぐるみの構造的な不正ではなく、一部の公所による不適切な旅費の執行であったことは幸いでございますが、なぜ今年の3月に花巻地方振興局税務部、衛生研究所と相次いで生じたのか、その背景をどのように考えておられるのか、また、それに対しどのように対処されるのかお伺いいたします。
 次に、これに関連いたしまして、情報公開制度について質問いたします。
 本県の情報公開制度は一昨年の10月から発足しているところでありますが、本年10月に奈良県が情報公開制度を施行したことにより47都道府県のすべてで実施されており、また、国においても、行政改革委員会の情報公開部会が情報公開法要綱案を決定し、12月には内閣総理大臣に対して意見具申をする予定であり、新聞報道によれば、政府は平成10年の通常国会にも法案の提出を行う見込みであるとのことであります。このように、時代は国から都道府県まで情報公開制度が行き渡り、行政情報をできるだけ公開し、透明性の向上を図る方向に進んでいるのであります。
 そこでお伺いいたしますが、このような状況のもとで、県民に開かれたわかりやすい行政を積極的に展開するために、今後、本県の情報公開制度をどのように展開されていくお考えなのか、基本的な考え方についてお尋ねいたします。
   〔副議長退席、議長着席〕
 私は、先ほど示した花巻地方振興局税務部、衛生研究所の例はあるにせよ、直ちに公文書公開条例を見直す必要性はないと認識をいたしております。しかし、かかる情勢にかんがみ、県民の信頼感をかち得るため、本県においてもさらなる手段を講ずる必要性があると考えているところであります。具体的には、公文書公開条例の第9条(公文書の開示をしないことができる場合)の第5項以下、合議制機関の議事運営や意思形成に係るものなど、第8項までの非開示事由を必要最小限に抑える必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 また、外部監査制度の導入など、さまざまな論議のある監査制度のあり方を検討することも緊急の課題ではないかと思うのでありますが、この点についてもあわせてお伺いいたします。
 次に、福祉行政についてでありますが、本年4月にひとにやさしいまちづくり条例が始動いたしました。高齢者や障害者などが存在する社会が普通の社会であるというノーマライゼーションの理念を具現化する一歩を踏み出したと理解いたしまして、条例制定に携わった関係各位に心から感謝を申し上げるところであります。国におけるハートビル法や県のひとにやさしいまちづくり条例は、いわゆる弱者と言われる方々の社会参加意欲を高め、生きる喜びを享受できる基盤となるものであり、また、人間開発は目的であり、経済成長は手段であるで始まる国連の経済社会委員会が提唱する人間開発にも貢献し、条例の理念が広く普及し、進捗率が高まることを期待するのは私1人ではないと思うのであります。
 私は、大分県で開催された障害者の大会に参加してまいりました。大分県は、障害者雇用率が2・5%という全国でも断トツの高い雇用率を誇っています。大分県の福祉関係者の話では、大分県の障害者雇用率が高いのは、大分国際車いすマラソン大会の影響ではないかと思うということでありました。車いすマラソンの今年度の優勝者は42・195キロを1時間24分で走破したのであります。大分県民は車いすで走る姿を見て、障害者にも無限の可能性を見出すのではないか、その結果が障害者の雇用率によい影響を与えていると思うと述べておられました。また、車いす障害者は、大分県に来ると私たちの目を見て応対していただける、心が和むと喜んでいたのであります。確かに障害者とすれ違うとき目線をそらし、すれ違った後に後ろを振り向き、障害者の背中を見るという光景に往々にして出会うのであります。ひとにやさしいまちづくりが進展し、だれもが抵抗なく社会に参加できる環境を整えることは障害者に対する社会の理解を増し、ノーマライゼーションの理念の高揚に大きく貢献するものであります。しかし、すべての家庭、すべての施設、すべての移動手段にすべての人々が不自由を感ぜず利用できるようにすることは不可能であり、ある種の障害者にとって便利な施設が別の種の障害者にとってはかえって不便であることもあり得るわけであります。そのような意味において、ひとにやさしいまちづくりとともに、ひとがやさしいまちづくり、よりソフト面を充実させ、人々が互いに支え合う社会づくりを同時に推進していかなければならないと考えるところであります。
 そこで、ひとにやさしいまちづくり条例施行後の現状と課題をどのように認識しておられるのか、また、今後の推進のためにどのような対応を考えておられるのかお伺いいたします。
 最後に、行政機構再編整備案についてお伺いいたします。
 今回の行政機構整備案については、さきの私の一般質問で指摘をした、高齢化対策を進める上での環境保健部と生活福祉部の両部にまたがる保健医療、福祉部門の統合が進められたことのほか、地方振興局の整備が図られ、振興局と市町村の政策協議が一元化されたこと、課や室の削減を通じ縦割り行政の弊害を若干でも是正したこと、部や課の名称も従来の官僚的においを払拭し、県民本位に改称されたことなど、評価すべき点が多いと考えているところであります。このことは行政改革の先取りであり、また、地方分権の本県版でもあり、今回の整備案が県民に定着し、一日でも早い機能的運営がなされることを願ってやまないところであります。しかし、多くの県民は今回の機構整備について基本的に賛成していると認識はしていますが、保健所及び土木事務所の地方振興局への統合については、うまく機能するかどうかに若干の疑念を抱かざるを得ない点がございます。この問題についてはただいま山内議員からも同趣旨の質問がありましたが、昭和61年以来の大規模な出先機関の再編整備であり、県政の重要課題でもありますので、重複することをお許しいただきまして質問をさせていただきます。
 その第1点は、保健所の統廃合案と地方振興局との組織的合併案についてであります。今般のO-157の集団発生において、保健所長が医師として医療機関に強力な指導力を発揮したことなどにかんがみ、人間の生命を守る保健所の重要性を考えると、やはり保健所長は医師であることが必要であるが、しかし、地方振興局に統合されることにより、将来的には地方分権の推進と相まって必ずしも保健所長は医師でなくなるのではないか、また、保健所長の指揮監督体制が維持されるのかなどの懸念が持たれており、今後は関係団体の意見も聞いていただきたい旨の声があります。
 第2点は、私も土木事務所の機能の充実強化等に関する請願の紹介議員に名を連ねましたが、今回の土木事務所を統合し、地方振興局に土木部を設置する整備案に対しては、災害の発生などの緊急時には土木事務所の果たす役割は大きく、命令系統の一体化による臨機応変の対応が求められることや、社会資本の整備を積極的に推進するためには、土木事務所長の工事執行権限を大幅に拡大するとともに、広域的な発注体制の確立による入札、契約関係事務の合理化と効率化を図ることなどによって土木関係事務をより強力に推進する体制が必要であるなどの意見があることもまた事実であります。そこで、県といたしましては、これまでの論議の過程で、これら行政機構再編整備案に対する懸念や意見を当然に把握し踏まえながらも、なお、保健所と土木事務所を地方振興局に統合して再編整備を積極的に推進しようとする理由が那辺にあるのか、お示しを願います。また、今後、これらの懸念や意見などにどのように意を用いていかれるのかをお伺いし、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 長谷川忠久議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地方分権の認識についてでございますけれども、地方のことは地方にゆだね、国は本来的に果たすべき役割に専念するという、そういうことができますように、国と地方の役割分担を明確にして、地方の自主性、自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することを基本といたしました地方分権を推進することが必要であると考えているところでございますし、そのことがまさに時代の要請でもあり、県民も望んでいる方向であると、このように考えているところでございます。
 次に、国と地方との関係についてでございますけれども、現在、国において、行政改革の一環として取り組んでおります地方分権は、現行の上下、主従の関係から、対等、協力関係に改めるために、機関委任事務制度を廃止して、国の各省庁が包括的な指揮監督権を背景に、地方公共団体に行使してきた関与を必要最小限度に縮小して、国と地方公共団体との間の調整ルールと手続を公正、透明なものに改めることなどが趣旨でありますことから、このような関係のもとで、多様化する県民のニーズにこたえ、安らぎと豊かさを実感できる地域社会を実現するためにも、私は地方分権の推進に積極的に取り組んでいきたいと、このように考えております。
 次に、地方分権の進展に伴う地方の政策立案能力の強化についてでございますけれども、現在、国で定めました基準や指示などに基づいて実施をしてきた各種事務につきましては、基本的に地方において企画、立案、調整、実施など、一貫して担任していくことになりますので、各地方公共団体はこれまで以上に、行政と住民や民間団体との連携、協力によります地域づくりに努めて、地域住民の期待に誠実にこたえる責任があるということでございます。このためには、県民の信頼と期待にこたえて効率的な行政を推進し、独自の政策形成の担い手となるような人材の育成を図ることが必要となりますので、職員の情報収集能力を一層高めていくことや、政策研究などに重点を置いた研修内容の充実を図っていくことなどが重要になるものと、このように認識をいたしております。
 また、一方、自己決定権の強化のためには、国から地方に対します大幅な権限や財源の再配分とともに、地域住民の行政に対する積極的な参加が一層求められるものと、このように考えられますので、その環境づくりを積極的に推進していくことが肝要となってくるものと、このように考えているところでございます。
 次に、国土の均衡ある発展に向けての県の対応についてでございますけれども、私は、この国土の均衡ある発展を図るためには、東京圏への一極集中など、国土構造上のひずみを是正することとあわせて、各地域の個性や独自性を伸ばして、多様性のある国土を形成していく方向で施策が展開されることが必要であるというふうに考えております。そのため、地方分権の推進とそれを支えることとなります行財政制度の見直しなどとともに、居住地域のいかんにかかわらず、生活に必要なさまざまなサービスが享受をでき、また、地域の自助努力による発展が可能となる社会資本の整備など、地域の自立を促進していくための基礎的なこの条件整備ということが極めて重要であると、このように考えております。したがいまして、県といたしましては、3県総の後期実施計画におきまして、県民生活の充実を図っていく上での目標値を一つ一つ掲げまして、道路、公園、下水道などの整備、福祉・医療の充実、産業基盤や教育環境の整備など、地域全体としての住みやすさ、暮らしやすさを高めるための施策に取り組んでいるところでございます。今後、これらの目標を達成して国土の均衡ある発展を実現するためには、県におきます取り組みとあわせまして、国においても高規格幹線道路などのこの社会資本の整備を引き続き促進することが重要でありますので、現在検討されております新しい全国総合開発計画や東北開発促進計画の中に、社会資本の整備に当たっては、採算性、効率性のみを優先するということではなくて、望ましい国土構造の構築に向けた先行投資と、このような観点がその中で重視されるように要望しているところでございます。
 次に、来年度の予算編成方針についてでございますけれども、国の厳しい財政事情や現下の経済動向などを考慮しますと、歳入面では、自主財源の大宗をなす県税や地方交付税、それから国庫支出金に伸びを期待できない一方、歳出面では、公債費の一層の増高に加えまして、県立大学や県立美術館の整備、東北新幹線盛岡以北の整備促進などを初めといたします3県総の後期実施計画に掲げております大規模な事業の計画的な実施など、取り組むべき施策が数多く控えておりまして、本県の来年度の予算編成は一段と厳しいものになると、このように認識をしているところでございます。したがいまして、来年度の予算編成に当たりましては、まずもって、限られた財源の効果的な活用を図ることを基本としながら、この緊急度と優先度の高い施策については、重点的かつ効率的に推進していくことが肝要であると、このように考えております。このため、従前にも増しまして、事務事業の徹底した見直しによる経費の節減合理化や事業のスクラップ・アンド・ビルドを進める一方、特に来年度の予算編成上の重点的な課題といたしまして、高度情報化の推進と情報発信機能の充実強化、地域の連携、交流の促進、国際的視野に立った地域経済の振興という、この3つの柱を掲げまして全庁を挙げて取り組むこととしているところでございまして、現在のこうした時代の変化にも十分に対応できるとともに、個性豊かで活力にあふれる地域づくりを進めていくことが可能な予算となるように、これからの作業の中で最大限の努力を傾けていく考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承をお願いいたします。
   〔企画調整部長武居丈二君登壇〕
〇企画調整部長(武居丈二君) 最近の経済動向及び来年度の見込みについてでありますが、まず、国の動向につきましては、経済企画庁が11月12日に公表した直近の主要経済指標等に基づく月例経済報告によりますと、設備投資、住宅建設、個人消費、輸出入等の需要動向を背景に、生産は緩やかに増加し、景気は回復の動きを続けている。そのテンポは緩やかであるものの、民間需要は堅調さを増している。ただし、雇用情勢は改善しつつあるものの、なお厳しい状況が続いているとしているところであります。このような中で、去る11月21日に県が公表いたしました最近の景況に基づく県内の動向について申し上げますと、まず、個人消費につきましては、大型小売店販売額は一進一退となっておりますが、乗用車の新車登録台数は前年水準を上回って推移しております。建設投資につきましては、公共工事はこのところ前年を下回っておりますが、新築住宅着工戸数は前年水準を上回って推移しているところであります。また、生産活動については、鉱工業生産について見ますと電気機械などが好調なことから、全体としては前年水準を上回って推移しておりますが、業種によっては前年水準を下回っているものがあるなど、ばらつきが見られるところであります。さらに、雇用情勢については、有効求人倍率は全国より高い水準にあるものの、0・8倍台の水準で推移しているところであります。
 以上のことから、最近の景況における総合判断といたしましては、県内景気は一部に弱い動きが見られるものの明るい動きが続いており、基調としては緩やかながら回復の方向に向かっているものと判断いたしたところであります。しかしながら、一方で、県の中小企業振興公社が県内の中小企業を対象に、この9月の下旬に実施いたしました商工業経営動向調査によりますと、業況判断指数--これは業況が前年同期と比べまして、好転するとした企業の割合から悪化するとした企業の割合を差し引いた指数がありますが--この指数は9月の実績でマイナス28・9、それから10月から12月期の見通しにつきましては、やはりマイナスの24・3となっておりまして、昨年8月から9月を底として緩やかながら回復の動きは見られますけれども、依然としてマイナスで推移しているところであります。したがいまして、来年度も含めまして今後における経済動向につきましては、これから出されますあるいは公表されます国や県の主要経済指標等の推移を注意深く見きわめていく必要があると考えているところであります。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) まず、不適切な旅費の執行が生じた理由についてのお尋ねでありますが、御指摘の件はいずれも年度末に発生いたしておりまして、その原因としましては、各公所とも年度末と新年度への準備等の事務が錯綜したことから職員が多忙をきわめ、実際の出張が不可能となってしまったことと、命令取り消しや返納手続がおろそかになってしまったことなどによるものと把握いたしております。これは、いずれも管理監督の不行き届き及び公務意識の欠如に起因するものと考えられ、まことに遺憾に存じております。今後、このようなことが生ずることのないよう、適時適切な事務処理の執行を図るとともに、行政管理委員会による内部考査の徹底、職員研修による公務意識の高揚等に努めてまいりたいと存じております。
 次に、情報公開制度の展開についての基本的な考え方についてでありますが、本県の公文書公開制度は発足以来2年を経過し、この間、公文書の開示請求や窓口における行政資料の提供、相談の実績が増加しており、全体として着実に定着してきているものと考えているところであります。この制度は、公文書公開条例にも定められているとおり、県民の県政に対する理解と参加を促進するとともに、県政の公正な運営の確保を図り、もって開かれた県政の推進に寄与することを目的としているところから、県政の運営上、極めて重要な制度であると認識いたしております。したがいまして、今後におきましても、公文書の原則公開等、条例の適正な運用に努めるとともに、本制度の県民への普及、定着を一層促進するなど、よりわかりやすく利用しやすい制度の充実を図ってまいりたいと考えております。
 次に、公文書公開条例第9条第5号から第8号に定める非開示事項についてでありますが、もとより、県が保有する公文書の中には、開示することによってプライバシーや法人等の正当な事業活動及び県民全体の福祉や利益を損ない、また、損なう恐れのあるものなど、開示することが適当でない情報も含まれており、これらの公文書の開示請求をしようとする者の権利と、請求された公文書に情報が記載されている個人、または法人等の権利利益及び公益との調和が図られなければならないものであります。このため、条例第9条において非開示事項を定めているところであり、御案内のとおり、第5号から第8号までに定める非開示事項は、主として行政機関側の事由に立ったものでありますが、例えば、国との協力関係または信頼関係が損なわれることのないようにすること、あるいは合議制機関等の公正、円滑な議事運営を確保すること等のため、開示しないことができる旨を定めているものであります。もともと、公文書公開条例第9条に規定する非開示事項は、原則公開というこの条例の基本理念にのっとり、公文書を開示しないことについて合理的な理由のある必要最小限度の情報を可能な限り限定的、かつ、明確に類型化したものであります。したがいまして、条例第9条第5号から第8号までの非開示事項の取り扱いに当たりましても、これまで合理的な範囲で適用してきたところでありますが、今後におきましても、必要最小限度の情報に限定した運用に努めてまいりたいと考えております。
 次に、監査制度のあり方についてでありますが、監査委員制度につきましては、県行政の公正で効率的な運営を確保するための内部検査機関として重要な役割を担っているところであり、公費の適切な執行を確保し、不正を防止し、県民の地方自治に対する信頼性を維持する観点から、本制度に期待するところはまことに大きいものと認識しております。外部監査制度につきましては、その独立性や専門性を一層高めるため、本年4月の地方制度調査会の中間報告において、公認会計士など専門家による監査や、地方公共団体が共同で設置する外部監査機構による監査の導入などに関し報告がなされておりますが、いずれも法改正を伴う事柄でありますので、今後の国の検討状況を注意深く見守ってまいりたいと考えております。
 次に、保健所と土木事務所の地方振興局への統合についてでありますが、地方振興局は、地域における総合出先機関として定着してきているところであり、地域振興の拠点として総合性を高める観点から、一層の充実強化を図る必要があると考えているところであります。
 保健医療と福祉部門の連携につきましては、高齢化、少子化等に対応いたしまして、国においても組織の統合が進められており、また、市町村においても窓口の一本化が進められているところであります。今般の機構整備におきまして、本庁機構につきましては保健医療、福祉の両部門を統合いたしまして新たに保健福祉部を設置することとしており、出先機関につきましても、総合的な保健医療、福祉の施策を推進していく観点から、保健所及び地方振興局の福祉部門との機能的な統合を図るものであります。こうした整備により、保健医療、福祉施策の市町村に対する一元的な支援が可能となり、また、高齢者等の保健医療、福祉にまたがる窓口の総合化による県民の利便性の向上など、保健医療、福祉の総合的なサービスを提供できるものと考えております。また、土木行政におきましては、近年、道路、河川等のハードウエアの整備におきましても環境の保全、人に優しいまちづくり、あるいは農業や商工業との適切な連携など、他の行政部門との連携の必要性が増大してきているところであり、また、個性豊かな地域づくりへの取り組みに対しまして、地方振興局は市町村を積極的に支援していく必要がありますが、土木事務所の統合はこれらの要請に的確にこたえ得るものと考えております。各地域の生活基盤及び産業基盤の整備など、地域振興において重要な役割を担っている土木事務所を地方振興局に統合することによりまして、地域住民の皆さんに対してよりバランスのとれたサービスを提供することができ、また、地域振興施策の大きな力になるものと考えております。
 なお、今後におきましても、行政改革推進懇談会などの御意見等を伺い、これに適切に対処しながら円滑な事務執行に努めてまいりたいと考えております。
   〔生活福祉部長佐々木孝太郎君登壇〕
〇生活福祉部長(佐々木孝太郎君) ひとにやさしいまちづくりの推進についてでありますが、条例施行後、すべての県民が高齢者や障害者に理解を深め、人に優しいまちづくりに積極的に取り組むよう、県民意識の高揚を図るため、ひとにやさしいまちづくりシンポジウムなどの実施や、ひとにやさしいまちづくり推進指針を策定し広く普及啓発するとともに、障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業、高齢者及び障害者にやさしい住まいづくり推進事業、ひとにやさしいまちづくり推進資金の貸し付け等を実施するなど、人に優しいまちづくりのための各種施策を推進してきたところであります。また、特定公共的施設の新築等につきましては、この条例に基づき、届け出を義務づけているところであります。
 次に、課題についてでありますが、ひとにやさしいまちづくり推進資金低利融資制度につきましては、市中銀行の貸付金利が低く推移していることもあって、現在までに2件の貸付実績にとどまっております。
 また、特定公共的施設の新築等の届け出についてでありますが、事業主は、整備基準に適合させるよう努めなければならないという努力規定であることから、適合状況は4分の1程度となっているところであります。このため、県といたしましては、ひとにやさしいまちづくり賞の表彰制度の実施等を通じまして、条例の広報啓発活動や低利融資制度の利用促進、既存県立施設の改善に努めるほか、特定公共的施設の新築等を行う事業者の理解を得て整備基準に適合した建築物等の比率を高めるなど、ノーマライゼーションを基本理念とした各般にわたる施策の充実強化を図りながら、県はもちろんのこと、市町村、事業者及び県民が一体となって互いに連携を図りながら、ひとにやさしいまちづくりを総合的、かつ、計画的に推進してまいりたいと考えております。
〇26番(長谷川忠久君) 再質問をさせていただきます。
 まず第1に、組織の活性化についてであります。
 今般、花巻地方振興局税務部、衛生研究所の旅費執行の問題や、さらには盛岡土木事務所職員の収賄容疑による逮捕など、不祥事件が相次いだわけでございます。このような事態が発生した場合には、往々にいたしまして事実を隠ぺいし、組織を防衛する方向に走りがちであるわけでございまして、さらに職員が萎縮してしまうということも往々にしてあるわけでございます。しかし、一部の職員の不祥事によって、日夜一生懸命、県勢発展のために精励しているほかのほとんどの県職員の士気を低下させ、組織の活性化を損なうような事態を招くことこそ、県政推進上、極めてマイナスであると思うのでございます。組織の活性化に当たっては、行政機構の再編整備ももちろん大切でございますけれども、減点主義を排して職員が事なかれ主義に陥ることのないよう、職員の意識の高揚を図ることが肝要であると存じます。この点について、今後どのような手だてを講じられるおつもりなのかお伺いをいたします。
 第2は、ひとにやさしいまちづくりの問題でございますけれども、その推進資金貸付事業でございます。はかばかしくない進捗率という御答弁をいただいたわけでございますけれども、この推進のために、いかがでしょうか、無利子の融資制度を創設する、そういう思い切った対応をなさるおつもりがあるのかどうかということについて、第2点の質問といたします。
 第3点は、地方分権についてでございますけれども、御要望申し上げたいと思うわけでございますが、その前に、私の見解について申し上げるわけでございますけれども、先ほどの一般質問におきまして、知事がいかにも公職選挙法第136条の2に抵触するような--御存じのとおり、公職選挙法136条の2は、公務員の地位利用についてであります。--そういう発言があったように思われるわけでございます。しかし、知事も特別地方公務員であります。我々50人の県議会議員も特別地方公務員でございまして、136条の2に該当するのは、この席に座っております県議会議員全員であるわけでございます。地位を利用しなければ、何人も選挙運動を制限されることはないわけであります。知事もそのようなことをぜひ勘案しながら、萎縮することのないよう、これからも政治活動を行っていただきたいと、そのように思うわけでございます。
 ある岩手県の業界紙に、ノーサイドという論評が掲載されておりました。ラグビーの試合で、ノーサイドの笛が鳴りますと試合は終了いたしまして、敗者は勝者の勝利をたたえ、勝者は敗者の健闘を称賛し、互いにジャージーを交換するなど、次の試合にもいい試合ができるように、そう誓い合うものでございます。その論評を若干引用させていただきます。
 岩手県知事の姿勢云々、新進党王国岩手云々、大臣の面会拒否云々、岩手の予算削減必至という話がかまびすしく飛び交っている。中には、面会した自民党の要人が名刺を投げ捨てたなどの話もあり、緊張の度が、いや増しているとかである。確かに、選挙は生きるか死ぬかの激烈な戦いであり、当事者あるいは周囲の人々にとって命がけの現代の戦いである。しかし、封建時代ではあるまいし、終わればそれまでである。敗者は次回を目指すか転身するかだし、勝者はおごり高ぶることなく、敗者の分も含めて地域のため国のため真剣に政治に取り組む、これが近代民主主義の姿でありルールである。
 先日行われたアメリカの大統領選挙を見るとき、やはりアメリカは大国だし、底が深く広いし、民主主義が徹底して浸透していることを感じる。政権交代となれば、ホワイトハウス並びに各省庁の人事の総入れかえが通常化しているほどの民主・共和両党の戦いであり、おまけに選挙のシステム自体が各州を奪い合うという典型的な陣取り合戦である。しかし、幾ら激しく戦っても、幾らネガティブキャンペーンを繰り広げても、終わればそれまでである。特定州が冷遇されたなどという話は、金輪際聞いたことがない。国家の一員たる州を粗末にするなど、そういう話は土台あり得ない。絶対多数ではない自民党のチェックのためにも、第一野党である新進党に頑張ってもらわなくてはならないし、岩手が新進王国と言われるのであれば、それは県民の意思なのであるから、知事も堂々と所信を述べ行動すべきと思う。特定政党の応援を受けて当選しておきながら、当選後に、一党一派に偏しませんなどと記者会見することこそ、政治家としての変節であって、政治家としての人格に問題があると思う。
 こういう内容であるわけでございます。
 予算獲得に向けた県の統一要望が先日行われましたが、増田知事に対し自民党の風当たりは強く、大臣に面会することができなかったという記事がありました。表向き、大臣の時間調整がつかなかったためと言われておりますが、背景には、知事が国政選挙のたびに新進党候補を支援したことから、政権与党の自民党が意志的に面会を避けたものと報道をされております。
 そもそも本県の国に対する重要課題は、思想、信条、党派を超えた142万すべての県民が、その実現を一日千秋の思いで待ち望んでいるものであります。したがって、増田知事は、岩手県行政をあずかる責任者の立場で政府に要望活動を行ったものであり、位置づけは県対国の問題、すなわち行政レベルの問題であります。確かに、一般社会では会う会わないは個人の自由でありますが、国の行政をあずかる高い見識を持ったはずの大臣が、選挙の敵対行為を理由に、地方の行政レベルで積み上げた切実な声を意図的に聞かないということは、行政上の絶対的視点である公平、公正を逸脱した行為であると言わざるを得ないのであります。現象面的には増田知事に対する報復のように見えるわけでありますが、冷静に見ますと、不利益をこうむったのは岩手県であり、本質的最終被害者は県民であるのであります。
 一方、今日の国と地方の関係は、国が強く地方が弱い上下、主従の関係にあるわけでございます。しかも、現在、地方分権の確立に向け、国、地方を問わず、さまざまなレベルで鋭意検討が行われている最中に、政府・与党が党利党略のため、この現在の仕組みを悪用したことは、国民的政治テーマである地方分権の政治課題を著しく軽視していることになるのではないか、そう思うのであります。
   
〇議長(堀口治五右衛門君) 発言中でございますが、本日の会議時間は議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
〇26番(長谷川忠久君)(続) 過般の選挙で政府・与党の関係者から国と地方のねじれを危惧する発言がありましたが、これを私なりに解釈すると、行政を預かる全国の首長は国政選挙に関与するな、関与する場合は自民党の候補者のみ、これ以外は予算面などで報復措置をとるということになるわけであります。申すまでもなく民主主義の要諦は、さまざまな民意と意見の対立があることを前提に、議論を踏まえて利害の調整を行うことにあると思います。さらに、意見の対立があっても批判勢力の言論を保障すること、すなわち聞く耳を持つことは大事な民主主義のルールでもあります。政治と行政の望ましい姿、変革期にある現下の諸情勢にかんがみても、何ゆえすべての地方の行政が政権与党の傘下にくみしなければならないのか大いに疑問がありますし、常に公平、公正が義務づけられている行政が、いかに議院内閣制とはいえ、政府が不当に近視眼的な党利党略に走ることは政治の自殺行為のみならず、不必要な行政不信をさらに引き起こすことになり、ひいては民主主義を否定することにもなるわけであります。翻って県と市町村の関係を見るときに、知事選挙において敵対行為をとった市町村長に知事は会わなかったことがあるのでしょうか。増田知事は現在までそのような行為をなしたことはないと私は確信をしているのであります。また、我々県議会議員が仲立ちをしなければ会えないということも聞いたことはないのでございます。
 行財政改革を生む地方主権の確立が政治の最重要課題になりつつある今日、知事におかれましては、地方振興局の機能強化を含む行政機構の再編整備に着手しようとしております。これは、来るべき地方分権の時代に備えての体制づくりであると理解しており、知事の先見性と英断に心から敬意を表します。
 そこで、増田知事に申し上げます。
 至誠天に通ずる、4年間の負託を県民から受けたのであり、政治的いじめに屈することなく、地方主権の先駆けとして、自主、自立の精神に基づく真の地方自治づくり、存在感のある岩手づくりに向け、行政と政治を峻別しながら初心を貫徹するよう全力を傾注していただきたい旨、要望をいたします。
   〔「議長、議事進行について」と呼ぶ者あり〕

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