平成9年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇16番(佐藤一男君) 新進・公明の佐藤一男でございます。
 このたび、諸先輩、同僚議員の御配慮によりまして、3度目の発言の機会を与えられましたことを心より感謝を申し上げる次第であります。
 今回は、増田知事が組まれた2度目の積極予算でありますが、県勢の均衡ある発展を図るための基本的な視点から、質問、提言をさせていただきたいと存じます。
 先般、八戸まで建設が進む東北新幹線の青森までの着工の方向性が示されるとともに、空の玄関口、花巻空港の滑走路延長も国の5カ年計画に組み入れられ、さらに、この春からは、秋田新幹線の運転開始等々、まさに首都圏から遠い地であった我が岩手県も、北東北の高速交通時代の中心地になりつつあります。これまでの長年にわたる先人の汗と涙の努力が、ようやく実現しようとしております。
 私の選挙区であります遠野、宮守地区にありましても、秋田-釜石間を結ぶ東北横断自動車道が、昨年、国土開発幹線自動車道建設審議会において、花巻ジャンクションから東和インターまで施行命令区間となり、その先宮守インターまでは、整備計画区間へ格上げ、また、釜石ジャンクションまでは、基本計画区間へ格上げと、近い将来の高速交通時代がようやく肌で感じられるようになり、まさに、縦軸と横軸の整備が、夢から現実へのものと変わりつつあります。しかし、私は、ある市民の、便利になるのはよいが、ますます遠野の人たちは盛岡や花巻へ買い物に行くので、遠野ではとても商売ができなくなるなあとの一言にどきっとしたのであります。ますます過疎化が進むというのであります。華々しい骨格づくりだけに目を向け、背骨ができた、肋骨もできた、あとはおまえたちに任せたというのでは、彼の言うような結果しか出ないではないかと思ったのであります。幹はできたし、枝もできつつあります。しかし、どのような花を咲かせ、どのような実をとればよいのか思い悩み、同じような計画をつくっているのが各市町村の現実ではないでしょうか。血沸き、肉躍る社会をつくるには、岩手の目標をつくらなければなりません。その意味において、市町村の調整とリーダーシップをとるべき県の果たす役割は、まことに大きなものがあります。
 私は、かつて、時代の移り変わりは振り子と同じで、大都市中心の時代の次は地方分散の時代が来て、経済中心の時代の次は心の時代だという日本美術館協会会長の河北先生のお話をお伺いいたしたことがあります。河北先生の言われるような心の時代の到来は、すなわち岩手の時代を迎えるということにほかなりません。近年、ある大学の教授を退官された方が、遠野の古い民家を買って住んでおられます。彼は、地方にはまだ心が残っていると言っておられます。私の隣には、2人とも東京外国語大学出身の若夫婦が移り住んでおります。自然との共生が夢であると聞いております。また、東京生まれ、東京育ちの若者が遠野市役所に就職しております。やりがいがほしかったと伺っております。同じような例が、隣の宮守村や東和町においても、新聞、テレビ等で紹介されております。我が県土には人を引きつける大自然があり、心があり、やりがいがあります。岩手県は、21世紀の宝庫と言っても過言でないと思うものであります。こうした時代の潮流の中で、今まさに22世紀のための21世紀を送るために、岩手の22世紀ビジョンづくりが必要ではないでしょうか。
 郷土が生んだ大政治家、後藤新平先生は、車社会の到来を予言し、100メートル幅員の道路構想を含んだ当時の国家予算にも匹敵する大東京都市計画の実施を訴えましたが、大ぶろしきと言われ実現を見なかったのであります。後年、あのとき実現しておればと惜しまれた有名な話であります。増田知事、縦軸、横軸の早急な整備促進とあわせて、後年、平成の大知事と言われるような雄大な構想を盛り込んだ22世紀ビジョンを作成するお考えはありませんか。また、その構想づくりのための夢のプロジェクトチームの設置を求めるものでありますが、いかがでありましょうか、御所見をお伺いいたしたいと存じます。それを指針として、岩手のあるべき姿に向かって、ある地区はハイテク産業の集積地として、ある地区は教育・文化のセンター地区として、また漁業地区、農産地地区として、あるいは住宅地として、各市町村が方向を定め施策を推進することになるのであります。また、必要があったら市町村合併も推進され、地方分権の対策ともなり得ると思うものであります。21世紀に関して言えば、首都機能の移転先については、現在、関東北部から南東北地域が有力とする声がささやかれておりますが、その次の22世紀の時代は北上川流域と言う学者もおります。私は、こうした未来の北上川流域の遷都をも展望しながら、今から均衡ある県土づくりのための人材の育成活用が必要不可欠であると思うものであります。
 そこで、次に人材の育成活用に関連して、県職員退職者の再就職についてお伺いをいたします。
 昨今、新聞、テレビ等のマスコミで報じられているとおり、国政をあずかる高級官僚の不祥事が頻繁に発生しているため、国家公務員法の改正等による公団、所属省庁関連の団体、企業への天下りの禁止あるいは期限制限の設置など、厳しい規制を行おうとしております。既に設立目的を達成した団体の財政支出、補助金の不正支出などの国費のむだ遣い、乱用等に対する対策としては論を待たないところでありますが、これは国政レベルの問題なのであります。この問題と地方とはおのずから別の問題であると私は認識をいたしております。なぜならば、地方公務員の職務権限と霞が関の官僚の職務権限とは全く違うものでありますし、天下り先の機構、国政に関与するシステムそのものが異なると思うからであります。地方公務員には、特定の受益者に公費を交付する制度を法律化するような権限はないのであります。国家公務員に言えることが拡大解釈されて地方公務員に及び、定年後の再就職の問題として言及されようとしているのであります。2月1日の岩手日報の1面に、勧奨退職職員の再就職に県が一定の歯どめをかけ、天下りの自粛要請を行うことを検討しているとありましたが、このことは昨年、まことに残念ながら収賄容疑で逮捕された県職員による民間人との癒着問題に端を発していることと思います。しかし、県職員1万数千人の中のごく一部の限られた人間のために規制しようとしている記事を見て、角をためて牛を殺すということわざを思い出し、私はまことに憂慮にたえないものであり、先人の戒めを心して対応すべきであると考えますが、県当局はどのようなお考えにより退職者の再就職に規制を講じられようとしているのか、お伺いをいたしたいと存じます。
 また、高校、大学を卒業し35年から40年もの間熱い思いを抱いて県政に携わった後退職される人は、各方面の専門職として多くの経験によって培った知識と技術、さらには高度な洞察力、判断力を備えた人材であります。人材不足と言われる本県においては、これらの人材を民間において有効に活用できるか否かが県勢発展の重要なキーポイントであると思うものであります。このことに鑑み、県当局は勧奨退職、定年退職される職員の技術、能力に応じ民間で積極的に活用するよう誘導すべきであると思うものであります。受け入れ側も、心して適材適所の人材活用に努めるべきでありますが、県当局においては、長年県政に貢献してきた人材の知識や技術などの活用についてどのようにお考えか、御所見をお伺いいたしたいと存じます。
 次に、保健と医療の問題についてお伺いをいたします。
 好むと好まざるとにかかわらず、高齢化社会の到来は避けて通ることができない問題であります。いかにすばらしい社会を築こうと思っても、健康であってこそ文化的な生活が送られるのであります。我が国は高齢化が進行し、医療費が高騰し続ける中で、介護保険制度の導入など、社会保障制度や医療制度の根本からの見直しに迫られています。一方では、21世紀初頭には医師が飽和状態となるという状況もあります。昨年秋の新聞報道によれば、西暦2000年から医師が供給過剰となり、2025年には必要な医師数28万4、000人に対して実数は31万人に達することが予想されており、医学部の定員の10%削減や保険医の70歳定年の導入も検討していることであります。また、1995年版の厚生白書では、医療もサービス業とし、医療を患者側がみずからのニーズに合わせて選ぶものとしているところであります。全国的にこのような状況が生じている一方、地方の医療の現状は、医師や医療機関の不足、一方的な医療の押しつけ、待ち時間の長さ、患者への対応に対する不満等、まだまだ医療への不満が解消されていないことは、私の耳にもときどき聞こえてくるところであります。
 本県においては、平成4年3月に平成12年までを目標とした第3次岩手県保健医療基本計画が策定されました。その計画でも触れられておりますが、本県の医療資源の現状を見ると、人口当たりの病床数は全国平均を上回り、医師数も全国水準に近づいているものの、依然として地域により極端な偏りがあります。平成6年末までは県全体の53%の医師が盛岡保健医療圏に集中しており、改めて驚きを禁じ得ません。このような状況の中で、私の地域でも医師の不足により、待ち時間が長過ぎ、受診に1日がかりということがあったり、専門医がいないため遠方の病院まで行かなければならず地域住民の大きな不安となっておるのであります。地方の医師不足の対応策については、前にも述べた第3次岩手県保健医療計画の中でも、医療従事者の地域的偏りの解消を上げております。既に計画が策定されてから5年が過ぎようとしておりますが、私は、この地域の現状を見ますと、この問題がどのように解消されたのか、その成果に疑問を持つものであります。つまり、これらの問題は、医師を初めとする医療従事者の絶対的な不足、及びさまざまな理由による医師の地域的偏在、さらにはその地域の大きな病院に患者が集中することなどに要約できるのではないかと存じますが、どのように取り組まれるお考えでしょうか。保健医療の根源にかかわる問題と認識いたしておりますので、御所見をお伺いいたしたいと存じます。
 さらに、県内の医療機関にあっては県立病院の果たす役割が重要と思いますが、県立病院としては、この医師の地域的偏りという問題に対してどのように取り組まれ、どのような成果が上がっているのか、お伺いいたしたいと存じます。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、保健、医療、福祉の連携についてでありますが、保健、医療、福祉の連携における総合的なサービスの向上については、保健医療計画にも記載されておりますように、老人保健施設の充実が重要であり、各地でそのような施設が開設されております。しかし、地域によっては老人保健施設がないところもあり、そのような地域には、県として既設の医療機関等に併設するなど、その整備を図ることが必要でないかと考えるのであります。
 また、医療機関と老人保健施設とを併設することにより、急性期の患者は医療機関で治療し、症状が固定し慢性期に移行した場合は老人保健施設に移すというように、患者別に各施設の機能の有機的な連携を図ることで、長期入院となりがちな患者の社会復帰を促進させる。もちろん、在宅医療や在宅福祉の機能も総合的に発揮されることとなれば、患者に総合的な医療サービスを提供できるとともに、各施設の有効利用も図られると思うのであります。私は、高知県のある病院がこのような方式を採用してうまくいっている事例を視察してきましたが、その病院の理事長が、老人保健施設を併設し機能分担を図る以前は、命だけ助ける寝たきり製造病院であったと言われ、また救急から社会復帰までのトータル医療システムの一体感が患者や職員の意欲を高めるとも言われ、私も同感だと思いました。
 本県においても、県立紫波病院や県立東和病院などで、町と連携して特別養護老人ホームや老人保健施設と同様の考え方を取り入れているとは聞いておりますが、まだまだ行政としての強いてこ入れが必要だと考えるのであります。これから高齢化社会を迎えるに当たって、老人保健施設がない地域については、治療からリハビリまでを一層効率的に実施するために、既設の医療機関等に併設して老人保健施設を整備していくような施策がとれないものか、御所見をお伺いいたしたいと存じます。
 次に、県立病院の患者サービスの向上についてお伺いをいたします。
 県立病院は、地域の住民の命と健康にとってかけがえのない施設であり、住民ともども感謝しておりますが、その一方で、病院で診療を受けてきた方のお話を聞きますと、患者の病院志向などもあるため、混雑し、必然的に時間を待たされるなどといった声も聞かれます。県立病院が地域の中核病院として地域住民からなお一層の信頼を得るため、患者サービスの向上にどのように配慮されていくのか、御所見をお伺いいたしたいと存じます。
 次に、特色ある地域づくりの一環として、遠野市では馬の里整備事業を推進しておりますが、本県における馬事振興の推進方策についてお伺いをいたします。……(「頑張れ遠野」と呼ぶ者あり)
 南部曲がり屋の、同じ屋根の下で馬と人が暮らすという生活がすべてを言いあらわしているように、本県においては馬と人とのかかわりは古く深いものがありますが、時代の移り変わりとともに馬は姿を消し、現在ではほんの一部の馬好きの人たちが採算を度外視して飼育しているにすぎません。しかし、形は変わりましたが、最近の若者や女性ファン層の競馬ブームに見られるように、新しい形の馬と人とのかかわりが生まれています。競馬は、今や単なる一過性のブームじゃなく、国民レジャーの目玉にさえなったと言っても過言ではありません。平成8年度の中央競馬会の総売り上げは3兆8、359億円に達し、有馬記念1レースだけでも900億円に達しておるのであります。岩手競馬にあっても572億円の売り上げにとどまったとは言え、オーロパークのオープン効果もあり、入場者数は過去最高の164万人を記録しているのであります。特に女性客の伸びが顕著で、前年度比31%の増と言われており、この現象はこれからも続くものと思われるのであります。数年前になりますか、私が所有していた日本ダービー4着馬のアカネジローマルに会いたいと首都圏の若い女性がわざわざ水沢の馬房を訪れ、バッグから砂糖を取り出し与えてくれました。そのとき私は、遠野物語のおしらさま伝説を思い出したことを記憶しております。先人たちが馬を愛し、馬とのかかわりを大切にした心が私たちの血の中に脈々と受け継がれているのだと強く感じたのであります。
 本県の馬産の歴史は古いのでありますが、明治9年に県営外山牧場が開設され優良馬の生産と払い下げが開始されたことにより、近代の馬産振興が始まったと言えます。明治29年には農務省が岩手種馬所を創設し、種雄馬派遣種つけ事業等、馬の改良増殖事業を行ったのであります。当時の本県の飼育頭数は11万頭余りと名実ともに馬産県岩手を誇っていたのであります。一方、小岩井農場においては、明治41年にイギリスからサラブレッドの種雄馬1頭と雌馬20頭を輸入し、この牧場で生産されたセントライト号が日本競馬史上初の3冠馬になるなど数々の名馬を生産し、我が国の競争馬生産と競馬振興の先駆的役割を果たしたのであります。本県の農林業は、馬とともに牧野を開き、農地を起こし、有畜農業を定着させることにより多様な伝統文化を築いてきたのであります。
 そこでお伺いいたしますが、本県の馬の飼育状況はどうなっているのでありましょうか。また、今後本県の馬産地振興を図る上で、農用馬さらには乗用馬の生産と活路の見通しはどうでしょうか、御所見をお伺いいたしたいと存じます。
 さらに、遠野市ではさきにも述べたように特色ある郷土づくりを進めるために、県の指導のもとに木工団地整備や曲がり屋集落ふるさと村等の整備とあわせ、競争馬及び乗用馬の育成調教、馬の技術者の養成を目的とする馬の里整備を進めております。この事業では、975メートルの追い馬場、685メートルの北海道以外では初の屋根つきウッドチップ坂路馬場等の育成調教施設のほか、30頭用の種牝馬厩舎等の増殖改良施設、20頭用の乗用馬厩舎、さらには18名宿泊可能なクラブハウス等から成るホースパーク施設等の平成10年度の完成を目指し着々と工事が進められております。馬の里は、まさに我が国の真の多面的機能を有する馬事総合センターになり得るものと思うものであります。幸いにして、我が国を代表する馬術家、乗馬の指導者であり、日本中央競馬会馬事公苑苑長を歴任された本県前沢町出身の千葉幹夫先生が着任され、一部施設を活用し、全国から20名の若者を集め、馬の生理学を初めとして馬に関するあらゆる面での指導を行っておるのであります。このように馬産県岩手の再構築に努めているところであり、県としても優良馬の生産、改良について積極的な支援策を講じるべきであると考えますが、御所見をお伺いいたしたいと存じます。
 最後に、この馬の里の育成調教施設においては、競争馬140頭の預託を計画しております。私は、施設は立派でも調教師等の競争馬の専門家の確保がなければ預託はままならないと考えております。また、岩手県のさらなる発展のためには、遠野馬の里の事業の成功が不可欠であると考えるのであります。そこで、馬の里関係者から信頼される施設運営を図るために、中央競馬会及び岩手県競馬組合からの指導者の派遣等、運営面での支援措置が講じられますよう、岩手県競馬組合の管理者でもあります増田知事に特に要請しておきたいと存じます。
 以上をもちまして私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐藤一男議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、22世紀ビジョンについてでございますけれども、これから未来に向かっての100年は、これまでの100年にも増して経済社会情勢が地球規模で大きく変化をし、将来を見通すことが困難な時代に突入するものというふうに思われますけれども、一方で、本県の豊かな自然や歴史、文化、進取の気性を持った幾多の人材を育んできた風土などは、いつの時代、どのような時代にあっても大切にすべき貴重な財産でございまして、私たちはこれらをしっかりと受け継ぎ発展をさせて後世に引き継いでいく必要があると、このように考えております。このため、このような自然、歴史、文化などを生かした地域づくりが各地で繰り広げられる、躍動感あふれる心豊かな地域社会、すなわちドリームランド岩手の創造を目指して、一人一人が将来の夢や人生の目標を抱き、すべての県民が手を携えてそれにチャレンジ、達成できるような、そうした環境をつくり上げていくことに全力を傾注していく考えでございます。
 このようなことから、そこに向かう一里塚といたしまして、21世紀初頭、即ち2010年ごろまでを展望した新しい総合計画の策定に取りかかることとしたわけでございますけれども、その策定過程におきましては、ただいま申し上げましたような観点も踏まえまして、22世紀までは私も確たる自信はございませんけれども、そのような気概を持って、当然2010年以降、その先をも見通しながら、本県が進むべき方向について検討していく考えでございます。また、計画策定に当たりましては、多くの県民の方々から御意見・御提言をいただくこととしておりますが、その際には、次代を担う若者や子供たちから将来の夢やビジョンを語っていただく機会も積極的に設けてまいりたい、このように考えております。
 次に、医師不足への取り組みについてでございますけれども、県民が等しく良質な保健医療サービスを受けることが極めて重要であることは、ただいまの議員御指摘のとおりでございます。まず、医師の確保と地域的な偏在についてでございますけれども、近年、医師数は県全体としては少しずつ増加している状況にございますが、一方、地域的にはその格差は若干縮小しておりますものの、依然として偏在がございまして、地域によっては確保しがたい状況にございます。この理由といたしましては、休日、緊急時などにおきます代診医師の確保が困難であること、医学的専門知識の習得のための研修機会に恵まれないことなどによりまして、医師の定着が阻害されていることによるものと考えられるところでございます。したがいまして、従前から進めてきております自治医科大学や各種の奨学制度がございますが、こうした制度によります医師の養成のほか、県外からの医師の招聘に努めますとともに、僻地における医師の定着を促進するために、本県唯一の医師養成機関でございます岩手医科大学の協力のもとに、休日などにおきます医師の派遣の支援体制をさらに充実していくこととしております。
 次に、地域の大規模な病院に患者が集中することにつきましては、住民の側の大病院志向や地域の医療資源の状況などによるものでございまして、こうした結果として、長時間待たされて、診療時間が短いなどの実態が生じてきているものと、このように考えられます。このような状況を改善するためには、一般的な風邪などのいわゆる軽症患者につきましては、まず地域のかかりつけ医に受診することによって、相談を含めきめ細かな診療が受けられるようにすること。また、一方で重症な患者や専門的な医療を受けなければならない患者は、大規模または専門的な病院で受診をするなど、限りある医療資源を有効に活用して、患者がそれぞれの症状に応じて適切な医療施設でサービスが受けられるようにすることが望ましいものと考えられるところでございます。このような医療機関の相互の役割分担を実効あるものとするために、積極的な情報の提供によりまして、県民の方々の理解を深めていただきますとともに、病院とかかりつけ医との連携による患者の紹介や医療機器の共同利用、医師の生涯にわたる知識と技術の研さんなどにつきまして、地域の医療機関の支援に鋭意取り組むこととしているところでございます。
 次に、優良馬の生産と改良の積極的な支援策についてのお尋ねでございますが、第三次の新いわて農業確立計画の後期推進計画におきまして、馬産振興を図るために、地域特産としての農用馬や余暇ニーズなどに対応した乗用馬の生産を推進することとしております。
 まず、初めの優良農用馬の生産のためには、体格と繁殖能力にすぐれた優良繁殖馬の確保が最も重要でございまして、優良種馬改良増殖推進事業などを積極的に導入をいたしまして、県、そして関係団体一体となりまして、現在、改良増殖を進めているところでございます。
 また、乗用馬につきましては、レジャーや馬術競技のほか、情操教育、自然教育のための乗馬、心身の治療に応用される乗馬療法に適する優美性、軽快性、強健性にすぐれ、かつ性質温順な乗用馬の需要が高まっております。このようなことから、優良乗用馬の生産に当たりましては、これに最も適するセルフランセ種、これを我が国唯一の乗用馬生産地でございます遠野地方に導入をいたしまして、計画交配を行って当面は種馬の改良増殖を促進しているところでございますけれども、今お話のございました遠野市の馬の里構想では、生産から調教まで一貫体制を整備することとしてございまして、将来遠野種と呼ばれるような乗用馬の産地形成が大いに期待をされるところでございますので、優良種馬を提供しております日本馬事協会に対しまして、今後とも強力な支援が得られるように要請をしていく考えでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長に答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) 退職者の再就職についてでありますが、国におきましては、職員の在職中の服務の公正を確保するという趣旨で、国家公務員法第103条により、在職中の職務と密接に関連する営利企業に離職後2年以内に就職することは原則として禁止されているところでありますが、地方公務員には、法律上、そのような制限は特に設けられていないものであります。しかし、県におきましては、県職員は県民に奉仕する者として県民の負託と信頼にこたえる必要があることから、国の動向等を勘案しながら、課長以上の職位にある職員が退職する場合、退職前に在職していた職と密接な関係にある営利企業に再就職することについては、原則として、退職後おおむね2年間、自粛を求めることとするものであります。
 また、本人の強い希望により、密接な関係にある営利企業に再就職する場合においても、県の公共事業等に係る営業活動におおむね2年間従事しないよう、当該退職職員及び再就職先企業に対して要請するなど、再就職に関し一定の制限を設けることとするものであります。
 なお、退職者の知識や技術などの活用についてでありますが、民間企業から人材の紹介についての要請があるということは、職員が長年培った専門的な技術や知識が評価されてのことと考えられますことから、退職前に在職していた職と密接な関係にある民間企業以外に再就職することについては、この制限の対象としないこととするものであります。
   〔医療局長吉田敏彦君登壇〕
〇医療局長(吉田敏彦君) まず、県立病院における医師の地理的偏在とその対策についてでありますが、御指摘のとおり、県内における医師の偏在が見られますので、医療局といたしましては、特に県北、沿岸地区及び医師体制の充実が課題となっている県立病院について重点的に取り組んでまいったところでありますが、その方策として関係大学への要望はもとより、自治医科大学出身の医師の優先配置のほか、特殊勤務手当などの給与面の優遇措置、医師住宅の優先整備、あるいは学会や大学での研修に参加する場合、その診療応援体制をとるなどの配慮や勤務環境の整備に取り組んでまいりました。
 また、医師不足の病院及び市町村診療所等への診療応援等を行うため、中央病院に地域医療部、広域中核病院に地域医療科を設置し、それらの病院が核となって、診療応援、研修等に当たっており、診療応援については、平成7年度においては、中央病院を初め10病院で約3、400回に及んでおります。さらに、地域病院間または地域病院と地域総合病院間の診療連携を積極的に行っているところであります。
 県立病院における今後の医師確保の見通しを考えた場合、全国的には医師過剰時代と言われておりますが、東北地方においては、本県のみならず、医師不足が解消されていない状態が続いており、当分の間は、各診療科全般に医師不足の状態が続くものと思われます。
 こうした状況の中で、以前に実施しておりました医療局の奨学資金を利用し現在勤務している医師は89名おりますが、そのうちの40%に当たる36名の医師が県北、沿岸等の病院に勤務しており、奨学資金制度がこれらの地域の医師確保に大きく寄与している実情にかんがみ、平成9年度から、貸付限度額の増額と、大学院に加えて医学部にまで貸付範囲の拡大を予定しており、この制度の効果的運用を図り、今後、長期的に安定した医師体制の充実に努め、県民の皆様の期待と信頼にこたえることができるような医療環境づくりに努力してまいる考えであります。
 次に、患者さんへのサービスの向上についてでありますが、医療局といたしましては、病診連携を念頭に置きつつ、県民の皆様の期待と信頼にこたえるため、職員の接遇はもとより、待ち時間の短縮につきましても、まず医師体制の充実、さらに業務全般にわたる見直しのほか、診療予約制、自動入金機、自動再来受付機、自動薬袋作成機、さらには診察順番表示機など各種オーダリングシステムを導入し、逐次、OA化を進めているところであります。
 今後におきましても、医師体制の充実を初め、このようなシステムを、順次、計画的に各病院に取り入れるとともに、接遇研修はもとより、各種会議等を通じ、指導を行い、患者さんの御不便等の解消に努めてまいる考えであります。
 さらに、患者さんへのサービスの向上のためには、より基本に根差した姿勢が必要であると考えているところであります。すなわち、医学、医術の進歩や、環境の変化する中で、昔から変わらないもの、あるいは変わってはならないものとして、医療の心があると考えております。それは、単に医療施設や設備を整備するだけではなく、病める人や家族の方々の気持ちに思いをいたし、その人たちに温かい心のこもった手を差し伸べ、その人たちの切なる願いにこたえていこうとする県立病院創業の精神でもあります。
 私は、この医療の心を原点とし、病院職員一丸となった連携のもとに、常に患者さんに何かをしてやるのではなく、患者さんと同じ目線に心を置きつつ、痛み、苦しみ、悩みなどを有する患者さんや御家族の気持ちをよく理解し、思いやりの心を持って医療に当たるほか、各病院運営協議会等で御意見を承り、より一層患者さんへのサービスに努め、県民の皆様の期待と信頼にこたえてまいる考えであります。
   〔環境保健部長緒方剛君登壇〕
〇環境保健部長(緒方剛君) 老人保健施設の整備についてでありますが、県におきましては、高齢者保健福祉計画や地域医療計画に基づいて、圏域ごとに目標を掲げ、平成11年度までに計4、400床を整備することといたしております。目標に対する整備状況は、県域により高低は見られるものの、県全体としてはおおむね順調に推移しておりまして、現在、整備率約70%となっております。
 老人保健施設は、入院治療を終えた高齢者に対して、医師の管理のもとに軽易な治療や機能訓練を行うとともに、日常生活上の介護を行うことにより、高齢者の家庭への復帰を促す施設として設けられたものであります。この老人保健施設が、地域の高齢者ケアシステムの一翼を担い、住みなれた地域で在宅療養生活を送るための支援機能を十分に発揮していくためには、地元市町村はもとより、医療機関、訪問看護ステーション、保健所、在宅介護支援センターなどの保健医療福祉サービス提供機関と連携を図っていくことが重要であります。特にも、病院との連携は、入院患者の円滑な退院を促し、入所者の専門的治療や疾病の急変への対応などの適切なサービスを実施するため、必要な基本的な要件であると認識しております。
 病院と老人保健施設との位置関係についていいますと、病院と同一敷地内や渡り廊下で接続した形での設置、公道を挾んで隣接した設置など、位置的に併設型の形態をとっているものが、開設済みの老人保健施設の約半数を占めており、このような場合には、御指摘のとおり、当該病院との連携が図りやすいものと考えられます。
 他方、併設以外の老人保健施設におきましても、地域の医療機関との協力体制の整備などにより、連携の確保に努めているところであり、また、このような場合さまざまな病院からの退院患者を、より受け入れやすい可能性があるものと考えられます。今後におきましても、老人保健施設の整備を促進するに当たり、病院と関係機関との連携に十分留意しながら、高齢者に対して、効果的、効率的な保健医療福祉サービスが提供されるよう努めてまいりたいと考えております。
   〔農政部長中村盛一君登壇〕
〇農政部長(中村盛一君) まず、本県の馬の飼育状況についてのお尋ねでございますが、馬の飼育頭数は、戦後、農林水産業の機械化や交通機関の発達等によりまして著しく減少してきております。今日の馬の用途は、競馬、乗馬、観光、食用などとなっております。このような状況にありまして平成8年7月現在の本県の馬の飼育頭数は2、626頭で、北海道に次いで飼育されております。その内訳は競争馬が1、219頭、農用馬が873頭、乗用馬が291頭、ポニーが243頭であります。近年、農用馬の飼育頭数は市場価格の低迷等によりまして減少しておりますが、乗用馬とポニーは前年対比で134%に増加しております。
 次に、今後の生産と活路の見通しについてでありますが、まず、農用馬につきましては、主に食用向きとなっておりますが、他の食肉と比べまして高たんぱく質、低カロリーで、鉄分やミネラルが豊富に含まれておりますことから、健康食品として、また、馬の油--馬油も高級化粧品として注目されていることなどから、今後ともその需要は大いに見込まれるものと考えております。
 また、ポニーを含めました乗用馬につきましては、乗馬ブームが根強く、レジャーとしての乗馬のほか、野外騎乗を楽しむホーストレッキングや、さらには愛玩用などに着目されておりまして、これらに供用される馬は性質温順で、かつ優美であることが求められておりますことから、今後これらの需要は高まるものと考えております。
 さらに、平成7年現在、全国683の乗馬クラブ等で1万800頭の競技用馬が飼養されておりますが、このほとんどが競争馬を転用したものでありまして、これらは過度に鋭敏で調教が困難でありますことのほか、足腰の故障が多いことから、乗用馬専用として生産調教された馬が求められているところであります。このような状況のもとで、遠野市の馬の里構想に対しましては大きな期待が寄せられているところであります。
 県といたしましては馬産振興を図るため、関係団体と一体となりましてこれらの用途に合った馬の改良増殖を推進いたしますとともに、育成技術向上のための飼養管理技術者の養成や、公共牧場の整備等によりまして放牧を促進し、低コスト生産の推進に努めてまいる考えであります。
   
〇副議長(及川幸郎君) この際、暫時休憩をいたします。
   午後2時54分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番 斉  藤     信 君
2  番 佐 々 木  大  和 君
3  番 須  藤  敏  昭 君
4  番 佐 々 木  一  榮 君
5  番 黄 川 田     徹 君
6  番 小 野 寺     好 君
7  番 佐 々 木     博 君
8  番 中 屋 敷     十 君
9  番 大 久 保     豊 君
10  番 浅  井  東 兵 衛 君
11  番 千  葉     伝 君
12  番 伊  沢  昌  弘 君
13  番 藤  原  泰 次 郎 君
14  番 田  村  正  彦 君
15  番 伊  藤  勢  至 君
16  番 佐  藤  一  男 君
17  番 高  橋  賢  輔 君
18  番 瀬  川     滋 君
19  番 渡  辺  幸  貫 君
20  番 長 谷 川  忠  久 君
21  番 谷  藤  裕  明 君
22  番 水  上  信  宏 君
23  番 船  越  賢 太 郎 君
24  番 久 保 田  晴  弘 君
25  番 千  葉     浩 君
26  番 折  居  明  広 君
27  番 三  河  喜 美 男 君
28  番 村  上  恵  三 君
29  番 村  田  柴  太 君
30  番 藤  原  良  信 君
31  番 吉  田  洋  治 君
33  番 工  藤     篤 君
34  番 菅  原  温  士 君
35  番 菊  池     勲 君
36  番 小  原  宣  良 君
37  番 樋  下  正  光 君
38  番 及  川  幸  郎 君
39  番 那 須 川  健  一 君
40  番 伊  藤     孝 君
41  番 藤  倉  正  巳 君
42  番 山  内  隆  文 君
45  番 佐 々 木  俊  夫 君
46  番 山  崎  門 一 郎 君
47  番 菊  池  雄  光 君
48  番 佐  藤  啓  二 君
49  番 堀  口 治五右衛門 君
50  番 吉  田     秀 君
51  番 藤  原  哲  夫 君
欠席議員(1名)
43  番 佐  藤  正  春 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後3時14分 再 開
〇副議長(及川幸郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。伊藤勢至君。
   〔15番伊藤勢至君登壇〕(拍手)

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