平成9年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇10番(浅井東兵衛君) 自由民主党の浅井東兵衛であります。よろしくお願いいたします。
 まず、知事にお伺いいたします。知事は県政をあずかる最高責任者の立場から、国の新年度予算に関しどのような所見をお持ちになっているか伺いたいと思います。
 御案内のとおり、国の新年度予算は総額77兆3、900億円とされ、1月20日国会に提出をされ目下審議中であります。県は、国の新年度予算編成に際し、県、県議会、関係国会議員が連携を図り、昨年11月の統一要望や個別の機会を活用し、72項目に絞り込んだ重点事業についてその実現を求めてきたところであります。その過程では、建設大臣に直接折衝を行うなど知事におかれてもフルに活動されたところでありますが、そこで伺いたいことは、県が重点事業として要望したことがどの程度この予算案に反映したと評価しておられますか。また、その予算案は喧伝された報復予算とお考えでしょうか。さらには、県の要望に対し不十分と思われる事項について今後どのように取り組む方針であるのか、おのおの明らかにしていただきたいと思います。
 次に、私は今、主として中央レベルのさまざまな場において、効率主義の名の地方切り捨て論ともいうべき主張がなされており、その推移いかんによっては、県民が等しく願望している地域格差の是正や県民所得の向上も困難になるのではないかと危惧しているものであります。すなわち、国の新年度予算案をめぐる論議の中で、史上最悪のばらまき予算である、株安・円安は市場が内閣に突きつけた不信任である等と主張し、その象徴的事項として、新幹線整備費、米の需給調整特別対策費を計上したことを取り上げております。また、行政改革会議における官民の役割分担に関する17の検討項目の中には、農業政策に関し、弱者対策としての農業保護対策はやめるべきではないか、あるいは地域間格差に基づく再配分は見直すべきではないか等の課題提起がされている例もあります。
 しかし、このような指摘は多くの県民の願っている方向と一致するものではないと考えます。現に、国の新年度予算案について考えれば、昨年12月26日付岩手日報の論説では、面目保った本県配分との見出しで、東北新幹線盛岡以北の整備や農業基盤整備関係を例に挙げ、順調な予算計上がなされた旨論評しており、さらに、同日付解説記事の中では、岩手県商工会議所会頭が、東北新幹線盛岡以北、花巻空港関係などにも、トンネルの先の明かりが見えてきてほっとしている旨を、また岩手県農協五連会長は、生産調整特別対策、圃場整備事業の担い手誘導など、新しい方向も盛り込まれたことに関し、時代の流れに沿ったものであり、日本農業の将来に対する姿勢も読み取れる旨の見解をおのおの表明したと報じられておるところであります。
 また、本年1月1日付の岩手日報に掲載されている県民世論調査によれば、県政の重要課題の中の最重点項目として、産業振興による県民所得の向上が37・9%の高率をもって第1位に挙げられております。すなわち、財政再建もさることながら、県民にとりましては、まず県内景気の浮揚と、それに基づく所得の向上が重要であると認識されているわけであります。現在、さまざまに論議されている公共事業費についても、これは関東、関西等、既に公共事業の整備されている大都市中心の論理であり、社会資本の整備がおくれ気味の本県にとっては、一時たりともゆるがせにできない重要課題であり、また、これに対する本県経済の依存度、すなわち県内総生産の13・6%を占めると言われる建設関係産業に対する影響、また、それに伴う本県経済への波及効果等を考慮するならば、実に重大な問題と言わざるを得ません。確かに、縦割り行政がもたらすむだや、諸外国に比べて2割から3割は高いと言われているコストの是正等は、早急に、しかも徹底して行う必要があることは当然であります。
 そこで知事に伺いたいのは、現在中央において政府が進めようとしている公共事業に対し、対立する政党などが、ばらまき予算である等、強力に批判している公共事業の抑制論をどのように評価されておられるか。また2点目は、そのばらまき予算の典型として指摘されている東北新幹線盛岡以北の整備や、八戸-新青森間の新規着工に関連する予算措置をどのように受けとめておられるのか、あわせて伺いたいと思います。
 次に、県営住宅建設についてお伺いいたします。
 政府においては、このたび国の特殊法人である住宅都市整備公団の住宅分譲並びに賃貸住宅事業からの全面撤退、さらには統廃合などが検討されているとのことであります。このことにつきまして新聞の論説等を要約いたしますと、同公団は現在、売れ残り分譲マンションを1、800戸余り、総額にして890億円程度、また借り手のない賃貸住宅を1万戸以上も抱え込み、これが経営を大きく圧迫しているとのことでありますが、昭和30年から40年代の住宅公団時代には、安くて良質の住宅を全国に数多く建てるという目的に徹し、公団住宅はいわゆるウサギ小屋の象徴のように言われながらも、とにかく戸数を確保するという意味では、社会に大きな貢献を果たしたことは論を待たないとされております。
 しかしながら、現在の住宅事情はどうでありましょう。さきに申し述べましたように、公団の分譲マンション並びに借り手のない賃貸住宅を大量に抱える現状は、もはや公団が頑張らなければ住宅がふえないという時代は過ぎ去り、その役割を終了したものとされ、またさらには、老朽化した賃貸住宅の建てかえについても、公団は初心を忘れていると言われております。すなわち、高層住宅に建てかえたコストをそっくり家賃に転嫁するため、従来からの居住者にとっては家賃がはね上がってしまい、それが払えずに結果的に追い出される格好になる低所得者もおり、庶民のための公団住宅という視点は一体どこに消えたのかと、このように言われ、全面撤退は当然のこととして論評されております。
 さて、本県におきましては、毎年公営住宅が多数建設されておりますが、平成8年度におきましても、新たに県及び市町村が建設または建てかえするものは合計285戸となっており、良質の住宅をできるだけ安く供給するということはまことに結構なことではありますが、一方において、この公営住宅にかなりの空室もあるやに承っており、殊にも、老朽化した住宅には相当数の空室も目立ち、また場所等によっては、新築のものにも入居者が満杯にならず空室のままになっているものもあるやに聞いているところであります。さらにはまた、先ほどの公団の例もあるとおり、老朽化したアパートを取り壊し、そこに中層賃貸住宅を建てかえたものの、建設コストをもとにして家賃を改めて設定するために、賃料が高くなりなかなか入居者がなく、ために新築にもかかわらず空室が目立ち、地域住民からその存在の適否を指摘されている例もあるところであります。つきましては、県営住宅について次の点をお伺いいたします。
 まず第1点目は、入居者に対する所得の制限等は、現在の経済環境下にあって適切なものとなっているのでしょうか。また、その他の入居条件についての緩和についてはどのように考えておられるのでしょうか。次に、低所得者向けの住宅の場合、さらに、家賃の低減を図る等の措置についてはどう考えておられるのでしょうか。3点目は、現在の入居率は新旧に分けてどのようになっているのでしょうか。次に、公営となれば入居者はつい親方日の丸的な感覚を持ち、場合によっては家賃の滞納なども考えられるわけでありますが、現在の滞納状況、またその対策についてはどうなっているでしょうか。最後に、近年民間におけるマンション、アパート、一戸建て等の賃貸住宅の供給がかなり活発であり、中には空室、空き家等もまま見受けられる状況にもあるわけでありますが、果たして特殊な場合、例えば低所得者あるいは老人世帯、身障者向け等の低家賃住宅は別として、これ以上多額の県民、国民の税金を投入して公営住宅を積極的に建設する必要があるのでしょうか。この際、公営住宅の建設について抜本的に見直すべき時期に来ていると思いますが、いかがでしょうか。
 以上の点について、担当部長のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 次に、沿岸部における油流出事故に対する対策についてお伺いいたします。
 このたび、日本海で起きましたロシアタンカーナホトカ号による重油流出事故は、御承知のとおり日本海沿岸9府県に多大な被害をもたらし、重油の防除等に要した地方自治体等の諸経費は約178億円にのぼると報道されており、漁業や観光産業への被害も含めると、今後さらに大幅にふえることも予想されるところであります。この処理に当たり、全国から多数のボランティアが駆けつけ、これに本県からも参加をされ大変な活躍をされましたし、また、江刺東中学校の雑巾、タオルを送る等、善意にあふれる行為に対し、心から敬意を表するものであります。この油流出事故は、去る平成2年丹後半島で起きましたリベリア船籍の貨物船座礁による重油流出事故、あるいはアラスカ湾の米国タンカーによる大規模油汚染事故、さらには、英国シェトランド諸島での大規模流出事故等と内外の教訓があったにもかかわらず、その経験則が全く生かされていないとの指摘もあるところであります。今後の早急な油流出事故対策の確立、わけても四囲が海という我が国にもかかわらずほとんど無防備に等しいとされる外洋油流出事故に対して、改めてその対策が問われているところであります。
 翻って、本県は広大な三陸沿岸を有しており、その沖合には幾多のタンカーが毎日往来をしております。2、000トン、3、000トン級の製品タンカーは無数に航行しており、さらには、原油タンカーの10万トン、20万トン級、あるいはよりもっと大きいものの航行も当然予想されるものでありますが、一朝もし衝突、座礁等の事故が起きるならば、今回の日本海における事故の10倍、20倍もの大流出事故となることも十分考えられるものであります。
 そこで伺いますが、湾内等、内海における小規模の油流出に対する資機材は整備されているところでありますが、現在それが十分と言えるものなのでしょうか。また、外洋における油流出事故に対しては、現在、回収船以外にはいまだこれといった有効な資機材が見当たらず、これらの開発整備は喫緊の課題であると思われますが、これらも含めてどのような対策を立てておられるのでしょうか。2点目は、久慈市に立地されております地下石油備蓄基地についてでありますが、これは、現在その備蓄高は166万キロリットルに及び、ほぼ満タン状態にあるわけでありますが、これはナホトカ号の約100倍近くにわたる膨大な量の原油である。もちろん、事故に対しては、能う限りの対策を施してあるとは思われますが、絶対安全と言われた原子力発電所の最近の故障、事故の頻発等に見られるとおり、安全に絶対の文字はないわけであります。まして本県は三陸沖等、地震の多発地帯で、同石油備蓄基地の事故の発生も皆無とは言えないものと思われます。油流出対策につきまして、当施設は油回収船、回収能力50立方メートルアワー1隻、オイルフェンス2、300メートル、油吸着剤2、300キログラム、油処理剤2、300リットル、油ゲル化剤4、600リットル等の資機材が常備されておるということになっておりますが、当然、消防法あるいは災害防止法等の規定は満たしておるものと思われますが、ちなみに昭和49年に発生しました岡山県倉敷市の三菱石油水島製油所の流出事故の場合、C重油は7、500キロリットルから9、500キロリットルとされており、この処理に要した機材は、オイルフェンス2万5、000メートル、これは久慈地下石油備蓄基地に用意されているものの10倍強、油処理剤1、000キロリットル、これは約500倍弱、ひしゃく1万5、000個、むしろ、これは恐らく油吸着用と思われますけれども、3万7、000枚とされております。これらに照らし久慈市の同基地における防災資機材、わけても油流出に対する備えはこれで万全と言えるものなのかどうか、担当部長の御所見をお伺いいたします。
 次に、高度情報化、特に最近とみに普及の著しい移動電話対策、及びテレビの難視聴地区対策についてお伺いいたします。
 知事は、本議会定例会の演述の中に、高度情報化の推進を取り上げられておられます。すなわち、地理的、地形的なハンディキャップを抱えている本県における高度情報通信社会いわての構築について述べられ、その中で、だれでも、いつでも、どこでも、容易に情報通信を利用でき得るようその基盤整備を促進するとされておられますが、大変に時宜を的確にとらえた施策であるものと評価するものであります。近年、移動電話、わけても携帯電話の普及はまことに目ざましいものがありますが、これは一昨年秋ごろより急速に広がったもので、最近に至り特に顕著な伸びを示し、昨年12月の加入台数は全国で約125万台、本年1月は約100万台と、今後ますます増加の一途をたどるものと考えられております。このことは、文字どおり、いつでも、どこでもという利便性が買われているものであり、次には、だれでもの時代も目前という状況下にあるものと思われます。携帯電話はもはや生活の必需品の1つとなりつつあることはもちろん、情報活動が生命とも言える産業経済社会にとりましては、今や絶対不可欠の戦略機器と言っても差し支えのない存在となっているところであり、またさらには、その通話の可否が観光客の誘致にも影響を及ぼすことが指摘をされております。
 しかしながら、一方、この利用範囲についてでありますが、本県におきましては、通話可能な範囲は現在主に国道4号沿いと一部沿岸地区に限定され、せっかくの文明の利器も、残念ながらその機能の半分も生かせない状態となっております。したがいまして、早急に全県的な通話可能範囲の拡大が求められており、そのために、まず鉄塔等、中継基地の整備が急がれるところであります。中継基地は、民間電話会社が整備設置をしているところでありますが、過疎地などには不採算等の理由からなかなかその設置が困難となっている現況であり、そのためおのずと通話範囲も限定されているものであることから、これらの地域における鉄塔等の中継施設の整備が急がれるところであります。この鉄塔施設整備事業に対しては、国からの補助もあり、本県におきましても、既に衣川村、山形村、室根村などの自治体が、その補助を受け中継施設を設置し利便に供しているところでありますが、今後こうした形での中継網の早急な整備が待たれるところであります。県では、この携帯電話の中継施設の整備促進について、今後どのように取り組まれるのでしょうか。
 次に、テレビの難視聴地区解消対策についてでありますが、県内には、岩手県側の放送を受信できない花泉町の南部県境地区を初め、多くの難視聴地区がいまだに残されている状況にあります。これらの地区にとりまして現状は、高度情報化以前の状態であり、今後の地域活性化にも大きな影響が生じるものと思われるものであります。高度情報化の推進に際し、まずテレビの難視聴地区の解消が急務と考えられますが、どのような対策を立てておられるのか、あわせてお伺いいたします。
 次に、高齢者福祉問題に関連し、主として寝たきり老人の介護対策に絞って担当部長に3点質問いたします。
 本県の65歳以上の高齢者人口は、平成7年10月1日の国勢調査では25万5、256人であり、その総人口に占める割合は18・0%と、全国平均を上回る高率であると承知しております。この高齢化の進行に伴って、寝たきりや痴呆高齢者の介護対策がますます切実な問題になってきております。現に私どもが受ける住民からの相談事例として、寝たきり高齢者は、病院からは、特に治療の必要がないから入院はできないとか、あるいは、入院しておってもこれ以上はよくならないから早く退院してほしい等と言われるし、家族は核家族、共働きのため介護能力がない。早く特別養護老人ホーム等の施設に入所させたいが、空きがないので困っているとの内容の困り事相談が多くなっております。本格的に少子・高齢化社会に突入し、今後ますます増加すると予想される介護を要する高齢者の福祉対策は、県政のもっとも重要な課題の一つであることは明らかです。
 以上のような観点から、まず、伺いたいことは、県内における寝たきりや痴呆の高齢者で、特別養護老人ホーム等の福祉施設に入所を希望している人数、実際の収容可能人数がどのようになっているか示していただきたいと思います。第2点は、岩手県高齢者保健福祉計画によれば、特別養護老人ホームの定員数を平成11年度には4、230人に拡充する計画であったと理解しておりますが、今までの進捗状況はどのようになっているか、情勢の変化等によりこの計画内容を見直す必要がないのか、その見解をお示しいただきたいと思います。第3点は、埼玉県等で発生したいわゆる彩グループ事件に関連する問題についてであります。この事件は、高級官僚等による福祉を食い物にした、極めて悪質な犯罪であり、国民が憤慨するのは当然であります。私どもはこのことを他山の石として、今後ともその絶無を期さなければならないわけであり、同時に、この事件により、これからの少子・高齢化社会で、ますますその必要性を増す特別養護老人ホーム等の高齢者福祉対策が、いささかでも停滞することがあってはならないと思いますが、この彩グループ事件の本県福祉行政に及ぼす影響の有無と、それに伴う県の対策について伺いたいと思います。
 次に、不妊治療対策についてでありますが、不妊症対策につきましては、昨年2月と9月の定例会におきまして、我が党の工藤篤議員がこれを取り上げ、知事及び担当の環境保健部長から、その検討過程等について御答弁をいただいているところであります。それによりますと、県内には高度の不妊治療を実施している中核的な医療機関がなく、多くの方が県外で治療を受けている実態を踏まえ、平成8年7月に不妊治療対策検討委員会を設置し、この委員会において、本県における中核医療機関に高度不妊治療を導入するための具体的な内容、一般医療機関との連携のあり方、さらには、行政の果たすべき役割や不妊相談体制のあり方などについて検討を行い、年度内には委員会報告としてまとめていただく予定であると述べられております。平均寿命の伸長と相まって少子・高齢化が急速に進む中で、次の世代を担う子供たちを健やかに産み育てるようにすることは、社会活力を維持する上からも極めて重要であると言われておりますが、その支援方法の一つが、不妊相談治療体制の整備・充実であることは、既に御認識をいただいているところであります。報道では委員会報告がなされたとのことでありますが、県ではこの報告書を受けて、不妊相談治療体制をどのように整備していくおつもりなのかお尋ねいたします。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。御答弁、よろしくお願いいたします。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 浅井東兵衛議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、県の重点要望事項の国の予算への反映についてのお尋ねでございますが、県におきましては、平成9年度政府予算編成に際しまして、県政を推進する上で、重要な事業の導入や制度の創設・改善が図られますように、統一要望という形で、県議会と一体となりまして昨年の7月及び11月の2回、関係省庁及び関係機関などに対しまして要望活動を実施いたしますとともに、そのほか、執行部としてはあらゆる機会を通じまして、そうした事項の実現に向けて積極的かつきめ細かく要望活動を展開してきたところでございます。本県の要望項目につきましては、国の財政が例年にも増して厳しく、特に地方にとりましては逆風下の状況であるという中にございまして、県選出の国会議員、県議会議員の皆様方のお力添えもいただきまして所期の成果をあげることができたものと、このように考えております。
 その主なものについて申し上げますと、花巻空港の滑走路2、500メートル化や、東北横断自動車道釜石秋田線、このうちの宮守-東和間の整備計画区間格上げなどが認められましたほか、東北新幹線盛岡以北の事業費の大幅な増額や、先端的な科学技術振興施設に対する補助事業などが、平成9年度政府予算案に計上されたところでございますし、また、全国枠ではございますけれども、松くい虫を含む総合的な病害虫対策ですとか、秋サケの消費拡大につながる事業の創設、漁港、漁村の生活環境整備の充実など、この予算に盛り込まれたところでございます。国におきましても、本県の実情や政策目的に照らしたその必要性を勘案して対応していただいているものと、このように考えております。今後におきましても、引き続き、関係者の方々の御支援をいただきながら、全国枠事業の本県への箇所づけ、配分額の確保に努めますとともに、花巻空港の早期事業化や東北新幹線盛岡以北の早期完成など、本県の重点施策の着実な推進に向けまして、全力を挙げて取り組んでいく考えでございます。
 次に、公共事業の抑制論についてでございますが、政府において、極めて厳しい現下の財政状況のもとで、重点的かつ効果的な公共投資をどのように進めていくか、さまざまな議論が現在重ねられていますことは承知をいたしておりまして、少子・高齢化が一層進展する21世紀を展望いたしますとき、健全な財政構造を再構築するためには、種々の事業の見直しを絶えず行いまして、施策の優先順位を厳しく選択をし、機動的かつ効率的な財政運営を図っていく必要があるものと考えております。
 一方、マスコミ報道を初めといたしました各方面におきまして、公共事業を中心に、平成9年度政府予算案についてさまざまな論議がなされているわけでございますが、特にその中で整備新幹線や農村整備などのあり方につきまして取り上げられていることも承知をいたしております。今後の公共投資を考えていく上で、特に留意すべき事柄は、限られた財源を国において配分する際には、単に画一的な基準による事業の費用対効果のみを優先するのではなくて、21世紀の望ましい国土構造を構築していくための先行投資と、このような観点で、地域の発展にとって必要となる社会資本の整備が現在まだ十分でない、これはまさしく本県のようなこうしたところであると思っておりますが、まさしく本県のようなこうした地方の実情を十分に踏まえて、公共投資が行われるべきであると、このように考えております。
 このような考え方のもとに、今後におきましても、本県に必要な社会資本の整備充実を図りますために、あらゆる機会に国に働きかけますとともに、国の支援を得やすい条件整備に努めまして、公共事業費の確保を図っていく考えでございます。
 また、東北新幹線盛岡以北に関する予算措置についてでございますが、現在審議中のこの予算案におきましては、既に着工されております盛岡-八戸間の建設事業費といたしまして、8年度のおおよそ2・2倍に当たります523億円が事業費として計上されたところでございます。県では、今後の国土構造の構築に不可欠である重要な区間といたしまして、この盛岡-八戸間の早期完成の必要性が改めて理解をされたものと受けとめておりまして、引き続き工事が円滑に進められますように、今後とも事業費の確保に万全を期してまいりたいと考えておりますし、さらに、関係道県とともに長年にわたり要望してまいりましたその先の八戸-新青森間でございますが、この本格着工につきまして、その方向性が明確に示されたわけであり、広く東北、北海道の発展のみならず、北東北における広域交流圏の形成の観点からも意義深いものと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔土木部長藤本保君登壇〕
〇土木部長(藤本保君) まず、県営住宅に係る入居者の所得の制限についてでありますが、現行の入居収入基準は、公営住宅法において、月額所得が第1種公営住宅で11万5、000円を超え19万8、000円以下、第2種公営住宅で11万5、000円以下と定められておりますが、社会経済情勢の変化に対応するため、昨年、公営住宅法が改正され、第1種、第2種の種別区分及びこの所得の下限が廃止されますとともに、一般の入居者の所得の上限が20万円と改められたところであります。
 さらに、高齢者、身体障害者等の住宅需要に配慮し、これらの方々につきましては、事業主体の裁量により、一般の方より高い所得でも入居することができるものとされたところであります。また、その他の入居条件としては、これまで入居するに当たって、高齢者、身体障害者等を除き、同居する親族のいることが必要でありましたが、今回、若年単身者等の入居も認められることとされたところであります。県といたしましては、このたびの法改正を受け、高齢者等の入居収入基準を裁量範囲の限度まで引き上げるなど、需要に応じた的確な対応を図ってまいりたいと考えております。
 次に、県営住宅の家賃の低減についてでありますが、現行の家賃は建設費をもとに設定しておりますが、今般の法改正により、毎年度、入居者の収入等に応じて家賃を定めることとなりますので、負担能力に見合った適正な家賃体系になるものと考えております。
 さらに、種別区分が廃止されることを考慮し、所得の低い方などに対しては家賃の減免制度の充実を図ってまいりたいと考えております。
 次に、県営住宅の新旧別の入居状況でありますが、県営住宅の建てかえを始めた昭和61年度以降に建設されました住宅にありましては89%、それ以前のものにあっては90%の入居率となっております。
 なお、住宅の立地条件等により入居率の低い団地もありますことから、その解消に努めてまいりたいと考えております。
 次に、県営住宅家賃の滞納状況及びその対策でありますが、平成7年度決算における収入未済額は、現年度分、過年度分合わせて6、200万円余となっております。滞納対策といたしましては、督促状の送付、職員等による戸別訪問や連帯保証人に対する納入の協力依頼等を実施するとともに、滞納の原因を究明し、悪質なものについては住宅の明け渡し請求や、民事訴訟法に基づく法的措置をとるなど鋭意滞納の解消に努めているところであります。
 次に、県営住宅の建設についてでありますが、現在、県営住宅の整備につきましては、老朽化した住宅の建てかえや、狭小あるいは設備の劣る住宅の改善に重点を置いて事業を進めているところでありますが、今般の法改正により、入居資格の拡大、種別区分の廃止、さらには、収入に応じた家賃制度の導入が図られたことから、所得の低い方や高齢者などにとりましては、これまでより入居しやすくなるため、県営住宅への入居希望が高まるものと考えております。
 今後におきましては、住宅に困窮する所得の低い方等の居住の安定と居住水準の向上を図るという公営住宅法の目的を踏まえ、県営住宅に対する需要の動向や社会経済情勢の変化に対応し、良好な居住環境を備えた県営住宅の整備に努めてまいりたいと考えております。
   〔総務部長大隅英喜君登壇〕
〇総務部長(大隅英喜君) まず、沿岸部における油流出事故に対する対策についてでありますが、御案内のとおり、去る1月2日、日本海の公海上で発生したロシア船籍ナホトカ号による重油流出事故により、福井県を初めとする府県では多大の被害をこうむり、住民生活にもさまざまな影響が及ぼされているところであります。
 本県では、沿岸海域で油流出事故が発生した場合に備え、平成6年、釜石海上保安部が中心となって、県、市町村、関係機関による岩手県沿岸流出油災害対策協議会が設置され、初期活動の展開はもとより、オイルフェンス等、流出油対策用資機材を保有するなどの体制がとられているところであり、沿岸海域での事故という限定された範囲では、対応が可能と考えております。しかしながら、このたびの重油流出事故でも明らかになったとおり、事故の規模によっては、従前の備えでは十分な対応ができないことも懸念されることから、今般見直しを行った新しい県地域防災計画においては、広域的な油流出事故に備え、情報連絡体制の整備、保有資機材の情報交換等による北海道、東北各県との連携の強化など、海上流出油対策として、予防、応急対策の両面から、防災関係機関の連携の必要性を具体的に明記したところであり、必要な場合には、直ちに各種応援協定に基づき、資機材の円滑な調達、確保を図ってまいりたいと考えているところであります。
 また、外洋における油流出事故についての基本的な考え方についてでありますが、まずもって肝要なことは、海上保安庁を初めとする国の関係機関における迅速かつ的確な初動活動と、被害を最小限度にとどめるための洋上での回収作業の展開であろうと考えております。そのため、過日、国に対し全国知事会を通じまして、事故災害の再発に備え、外洋対応型油回収船等の配備を初めとする施設設備等を早急に整備するとともに、回収、漂着防止等の諸活動を的確に行うための体制を確立するよう緊急要望をしたところであり、引き続きこれらの実現に向け、関係機関と連携を図りながら、国に対し要請してまいりたいと考えております。
 次に、久慈市に立地している地下石油備蓄基地における防災対策についてでありますが、この施設は強固で安定した岩盤と地下水を活用した極めて安全性の高い方式とされております。しかしながら、本基地は原油を大量に貯蔵する施設であることから、議員御案内のとおり、石油コンビナート等災害防止法等に基づく油回収船やオイルフェンス等の資機材を常備するなど、原油の搬出入等に伴う事故の発生及びその拡大の未然防止に万全を期しているところであります。
 また、当該基地周辺は、国で定める石油コンビナート等特別防災区域の指定を受けまして、防災計画の作成や定期的な防災訓練が義務づけられており、これまでも関係機関ともども、毎年、陸上及び海上での訓練を実施し、防災体制の向上に努めているところであります。
 今後におきましても、地元久慈市を初めとする防災関係機関と十分連携を図り、資機材の点検整備はもちろんのこと、防災訓練の実施と事故の防止に万全を期してまいりたいと考えております。
   〔企画調整部長武居丈二君登壇〕
〇企画調整部長(武居丈二君) 携帯電話の中継施設の整備促進についてでありますが、広大な県土を有する本県において、地域間の情報格差を是正し、住民福祉の向上と地域の活性化を図るためには、議員御指摘ございました高度情報通信社会岩手を構築することが県政の最重要課題の1つであります。このような中で、情報通信の果たす役割は急速に高まってきており、とりわけ携帯電話等の移動通信システムの利用が増加している状況にあります。本県における加入契約数は、平成9年1月末現在で約13万件でありまして、平成8年3月末に比較しまして約2・5倍と急激な伸びを示しておりますけれども、特にこの3カ月間で4万3、000台と大幅な新規加入が行われておりまして、今後、さらに加速するものではないかというふうに予想されるところであります。
 一方におきまして、議員御指摘のとおり、その利用可能な範囲は、県央部、それから沿岸の都市部、内陸部の一部となっておりまして、利用範囲の拡大が求められるところであります。もとより、この携帯電話等の通信網の整備は、民間事業者が設置する中継施設に大きく依存しているところでありますが、国におきましては、民間事業者による基盤の整備が見込めない過疎、辺地等を対象としまして、電気通信格差是正事業費補助金交付制度によりまして、情報通信基盤の整備を進めてきているところでありまして、平成9年度には、国の予算等におきましても一層の拡充が行われているところであります。
 県といたしましては、今後におきましても、市町村との連携を図りながら、本県の地理的、地形的なハンディキャップを抱える本県の実情について理解を求めまして、国及び事業者に対し移動通信基盤の整備について一層の促進を要請するとともに、国庫補助制度等の活用も含めまして、積極的に対応してまいりたいと考えております。
 次に、テレビ難視聴解消対策についてでありますが、御案内のとおりテレビ放送は、県民生活の向上のために欠かすことのできないものでありますし、また、情報の地域格差是正や、さらには、防災対策の観点からも、テレビ難視聴地域の解消に積極的に取り組む必要があるものと認識しております。テレビの放送エリアの拡大は、基本的には放送事業者の責務でありますが、本県は広大な面積を有しておりますし、また、地形的な特徴からテレビ電波が届きにくい地域が広く散在しているため、国庫補助制度の活用のほか、他県に先駆けまして、御案内のように昭和46年に県単独の補助制度を創設し、市町村からの要望を最大限に尊重しながら支援してきているところであります。
 さらに、平成8年度からは、最近の難視聴地域の対象世帯数が小規模化していると、こういうことに伴いまして難視聴世帯の負担が増加することも懸念されたところから、そういった難視聴世帯の負担が増高しないように、県単独補助制度の充実を図ったところでありまして、その結果、今年度の末までに11万8、000世帯の--これは制度発足以来でございますが--難視聴解消が図られる見込みであります。
 今後におきましても、引き続き放送事業者に改善努力を要請する一方で、これらの補助制度を積極的に活用しまして、地元市町村と連携を図りながら難視聴地帯の解消に努めてまいりたいというふうに考えております。
   〔生活福祉部長佐々木孝太郎君登壇〕
〇生活福祉部長(佐々木孝太郎君) まず、特別養護老人ホーム等の福祉施設への入所希望者数と入所可能人数についてでありますが、平成8年12月末現在における入所希望者数は、特別養護老人ホームが830人、養護老人ホームが144人の計974人となっております。そのうち、7割近くの方が、病院や老人保健施設などで看護を受けており、3割の方はショートステイなどのサービスを受けながら在宅で生活している状況であります。
 また、これら老人福祉施設の入所定員についてでありますが、平成9年2月1日現在、特別養護老人ホームは、68施設で4、080人、養護老人ホームは17施設で967人となっております。
 なお、現在3カ所で特別養護老人ホームの整備を進めており、その定員は120人となっております。
 このほか、高齢者と施設が直接契約により入所するケアハウス等の軽費老人ホームは8施設、320人分が整備されており、2月1日現在、250人が利用しております。
 次に、岩手県高齢者保健福祉計画における特別養護老人ホームの進捗状況についてでありますが、これまで整備が順調に進み、平成8年度末には、69施設で定員が4、130人となり、進捗率は約98%となる見込みであります。この整備目標に対する進捗率は全国でも上位に位置しております。
 また、岩手県高齢者保健福祉計画の見直しについてのお尋ねにつきましては、当面、計画を見直すことは考えておりませんが、平成5年度計画策定時以降において、入所を希望する方の増加や要介護高齢者の増大、さらには、家庭介護力の脆弱化などの情勢変化に対応し、本県の実態を国に説明し理解を求めた上で、今後とも積極的に整備の拡充に努めてまいりたいと考えております。
 次に、彩福祉グループ事件の本県福祉行政に及ぼす影響とそれに伴う県の対策についてでありますが、本県におきましては、これまでの調査等においても、施設整備は適正に行われていると認識しており、本県の福祉行政に及ぼす影響はないものと理解しております。しかし、国においては、今回の事件に関連して、施設整備補助金の選定手続の見直し、社会福祉法人の認可や運営に関する業務の適正化が求められていることから、施設整備業務等の再点検のための調査委員会を設定し、具体的な改善事項の検討が行われていると聞いているところであります。
 県といたしましては、従来から、市町村保健福祉計画に基づき、市町村の支援体制等の意思決定がなされ、市町村を経由して提出された施設整備計画を採択しており、また、工事等の契約手続については、法人の経理規程に沿って行うなど、適切に事業が推進されるよう指導してきたところでありますが、さらに、国の検討結果を踏まえながら、より一層の適正化が図られるよう指導してまいりたいと考えております。
   〔環境保健部長緒方剛君登壇〕
〇環境保健部長(緒方剛君) 不妊相談治療対策についてでありますが、不妊に悩む御夫婦が、身近な医療機関において、安心して適切な相談や治療を受けられる環境を整えるため、検討委員会において、4回にわたり本県における不妊相談治療のあるべき姿について調査検討いただき、平成9年1月に報告が取りまとめられたところであります。この委員会報告では、本県においても研究、教育機能を備えた中核的医療機関において、体外受精、胚移植等の高度の不妊治療を実施する必要があること。この中核医療機関とその他の不妊治療を行う医療機関とのネットワーク化を図り、一貫した治療体制を整備する必要があること。高度不妊治療の実施に際しては、倫理上の問題に対応するため、日本産科婦人科学会の示した見解を踏まえるとともに、具体的な倫理上の問題に対応するため、当該医療機関に設置される倫理委員会において検討する必要があること。高度不妊治療を実施する中核医療機関と、身近な医療機関、保健所において、不妊についての相談体制の整備を図ること等が提言されております。
 県といたしましては、この検討委員会の報告に示された中核医療機関については、岩手医科大学附属病院がその要件を満たしており、また、対応が可能であることから、同病院に対して、体外受精、胚移植等の高度不妊治療を実施するために必要な設備整備について補助する経費を、平成9年度予算案に計上して御審議いただいているところであります。
 今後、さらに、中核医療機関と他の関係医療機関とのネットワーク化を図り、不妊についての治療体制や気軽に相談できる体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
〇議長(堀口治五右衛門君) 次に、佐藤一男君。
   〔16番佐藤一男君登壇〕(拍手)

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