平成10年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇11番(水上信宏君) 自由民主党県民クラブの水上でございます。
 ただいま議長のお許しをいただきましたので、過去3回にわたる質問の整理再検討と自分への反省も含め、県政一般についてお伺いしてまいります。
 先にお断りし、お許しをいただきたいと存じますが、先刻まで8人の議員から質問のあった事項等があろうかと存じます。私なりに整理し、伺ってまいりたいと思います。重複部分がありましてもお許しを願います。
 まず、この機会を与えてくださいました所属会派議員に対し感謝申し上げます。
 また、この機会をおかりしまして、一念ひたすら教育に情熱を持ち、数多くの職域にあって永遠の今に生きるを人生の姿勢として、県勢の発展に誠意を持って全力投球された前岩手県知事工藤巌さんの偉大なる御功績をたたえ、謹んで哀悼の誠をささげ、心より御冥福をお祈り申し上げます。
 また、さきの大雨による多大な被害を受けた地域の方々、岩手山を中心とした強い地震による被害に遭われた方々に対しまして心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興を願うものであります。
 さて、今日までの私の3年6カ月間は、1年生議員として、毎日があらゆる場面において勉強、勉強の連続でありました。残された6カ月の任期中もそうであろうと思うのであります。この間、先輩、同僚議員の方々からいただきました御支援、御指導に対しまして心からお礼を申し上げます。
 忘れもしません平成7年4月の選挙で当選をさせていただき、その9月、幸か不幸か一般質問をいたしました際のやじと緊張、そうした中にありながらも、私は、まず、増田知事に対し、県政を担当するに当たっての政治姿勢について、また、県内格差是正について、また、農業対策、特に野菜など園芸部門について、さらに、林業部門としてのシイタケ栽培とテレビ難視聴地域の解消対策、県内経済策としての公共事業について、さらに、八戸久慈自動車道等高速交通網の整備、また、障害者の自立支援や社会参加を進めるための福祉施策、県立種市高校への専攻科設置について等々お伺いしたところであります。
 また、平成8年12月定例会の2度目の質問においては、知事の政治姿勢と県の行政機構について、また、当時、全国的課題でありましたO-157対策と職員のカラ出張、超過勤務手当関係、さらに、行政機構再編整備に伴う保健所のあり方と八戸久慈自動車道の進捗状況と、近年、急速に普及している携帯電話サービス関係等々、さらに、3回目の平成9年11月の質問では、国の財政構造改革の推進と医療保険制度関連についてと、日本一と言えるでありましょう森林自然環境を持つ本県としての施策、さらに、新しい総合計画での県北沿岸地域の振興策、県の新しい農業計画についての考え方、また、米の消費拡大についてと介護保険制度関係について、さらに、少子化対策と臓器移植法のほか、複式学級について等々それぞれ伺いました。また、提言をお願いしてきましたところであります。
 今、なぜ過去をと申しますと、議会は批判と監視の府と言われていることを思うとき、やりっ放しのその場限りのものとしてはいけないと思うからであります。質問、提言、お願いと、いずれであっても当局の積極的な姿勢を期待し、いただきました答弁が仮に依然として実行されていない場合は、県政に反映する努力を願い続けることが我々議員の責務として当然のことであるからであります。よく政治は企業、工場等でベルトを使って物を生産するようにはいかないと言われているように、即決可能なもの、時間をかなり要するもの等々、その事務事業によって異なるからでもあります。
 その意味から、私がこれまでの議会で質問したことについて、県のその後の対応を二、三お伺いしたいと思います。
 まず、第1に、県立種市高校への専攻科の設置についてであります。
 平成7年9月議会において、専攻科を設置すべきとの質問に対し、当時の橋田教育長は、設置の必要性について基礎的な調査をしてまいりたいとの答弁をされたのでありますが、その後の調査実施の状況及び検討状況はどのようになっているのでしょうか。
 また、平成9年12月議会では、米の消費拡大を強力に展開すべきでないかとの質問を行ったのでありますが、これに対し当時の中村農政部長は、教育委員会との連携を進めるとともに、県職員の米飯推進についても愛用運動の一環として消費拡大運動を展開してまいると述べられたのでありました。その後の米消費の動向はどのような状況にあるのでしょうか。仮に停滞、減少傾向にあるとしましたら、どのようなところに原因があって、今後どのような取り組みが必要なのでしょうかお伺いいたします。
 最後に、平成8年の12月議会で質問したものでありますが、八戸久慈自動車道の整備についてであります。
 当自動車道は、沿岸北部の低迷する水産業や農林業あるいは地場産業など、地域振興を図る上で極めて重要で、地域の期待も大きい路線であります。当路線の工事の進捗及び今後の見通しはどのような状況にあるのでしょうか。真に厳しい財政事情のもとではありますが、県の一層の御努力を願うものであります。
 次に、知事の政治姿勢についてお伺いしたいと存じます。
 さきに私は、知事は県民党的立場で職務に専念すべきと思う旨の質問をいたしました。このことに対し、知事は、自分の信条、信念に基づき、県政の究極の目標は、県民の皆様の一人一人が心から幸せを感じ、夢を抱き、生きがいを持って暮らすことのできる生活を実現すること、あらゆることにチャレンジ精神を持って取り組むこと、清新で公正な県政を実現すること、困難があっても情熱と信念を持って立ち向かう旨の御答弁をいただき、大変心強いものを感じたところであります。知事就任から今日までの県政運営を拝見するに、知事は、公平公正な県政の実現のため努力なされているものと私個人としては評価したいと存じます。
 そこで、残された任期を含め、今後の県政運営に当たっていかなる姿勢で取り組まれる所存であるか、その心構えについてお伺いしたいと存じます。
 次に、県土の均衡ある発展についてお伺いします。
 県は、平成8年4月、特定地域振興室を新たに設置する等、おくれていると言われる県北沿岸地域等の振興のため努めておりますことに対し、心から敬意を表するものであります。知事におかれては、就任後、県内各地域、各市町村にみずから出向き、そこで県民の各界各層から意見や提言をお聞きになり、県政に反映しているところであり、その姿勢は高く評価されるものであります。しかしながら、この課題解決に向ける取り組みには依然として厳しいものがあるように思われるところであります。
 そこでお伺いします。知事は、みずから県内くまなく回られてみて、県南、県央と県北沿岸地域との地域間の格差をどのように受けとめておられるのか、また、今後、この課題解決のためどのような取り組みをなすべきなのか、その基本的考え方についてお伺いしたいと思います。私は、地域エゴで申しているのではありません。均衡ある発展とは言っても、すべてにおいてできるものではないことは理解しているつもりであります。例えば、国、県の持つ公共施設とか道路網の整備等を見た場合でも、まだまだおくれ、整備を図らなければますます取り残されるのではないかと思うところからお伺いするものであります。
 次に、県内経済対策についてお伺いしたいと存じます。
 9月、県が発表した景気動向指数を見ても、個人消費、建設投資、公共工事着工総工事費、鉱工業生産活動等いずれも低迷と、明るいところのない状況のようでありました。また、農林漁業においても、長雨、日照不足による生育のおくれ、そして、追い打ちをかけるような先刻の大雨による被害と、本県にとってみても史上まれに見る先行きに不安のある経済状況にあるようであります。御案内のとおり、小渕内閣は経済再生内閣と位置づけて、今日における国内外の経済不安への対策対応、すなわち景気の回復に全力を挙げているのでありますが、しかし、今日に至ってもこれといった対策の効果も見えていない状況であります。
 そこでお伺いしたいのは、本県におけることしの経済状況を県はどのように受けとめ、その対策をどのように講じているのか、6月補正や9月補正の状況とあわせて、ねらいとするところについて御答弁を願いたいと存じます。
 次に、職員の人事異動についてお伺いいたします。
 職員の異動は、能力の適正な評価、処遇や役所内労働力の需給調整等々あって定期的に行われているものと存じます。また、それがためにはある程度の基準もあり、全体的にはそうした基準により行われることによって新陳代謝が図られるなど、必要なことと思うところでもあります。しかしながら、そうは申しましても、林業技術センターや農業研究センター、工業技術センターなどの試験研究機関の専門職のような場合は、施設設置の趣旨やその職務の性格等を考えると、一般職の場合とは違ってある程度長い期間その職にとどまり、腰を据えて研究テーマに取り組ませる必要もあると思うのであります。
   〔副議長退席、議長着席〕
 そのことによって施設本来の設置の趣旨に即したハード、ソフトの充実が図られ、高度な研究施設としての機能が発揮されると考えるものであります。一律の基準をもっての異動は、その効果と申しますか、成果に影響があると聞いております。
 そこでお伺いしたいのは、県では、こういう専門職員の能力の発揮、活用を図るために、どのような観点からどのような基準を設けて異動しておられるのかどうか総務部長にお伺いしたいと存じます。
 次に、介護保険制度への対応についてお伺いいたします。
 昨年、整備等について伺った際の答弁では、平成10年度に介護需要等の調査を実施し、平成11年度に介護保険事業支援計画の策定とあわせ高齢者保健福祉計画の見直しを行い、新しい制度に対応した目標を定めるとともに、介護の基盤の整備を推進してまいるとのことでした。確かに何の事務事業を推進するにもその基礎となる計画が必要であり、よって、調査あるいは時間を要することは理解できます。しかし、介護保険制度の実施を平成12年4月と間近に控え、高齢者の不安も高まり、市町村議会でも熱心な論議がなされている今、平成11年度になってからの計画策定とか見直しではなく、もっと積極的に市町村への指導をし、迅速な対応をすべきと思うのでありますが、県の取り組み状況はいかがでしょうか。
 また、例えば要介護認定審査を行う場合、実際問題として、財政規模等の大きな市町村はともかく、すべての市町村が独自で必要とするスタッフを賄うことは難しいのではないかと思うのであります。厚生省や自治省では、介護保険制度の実施に当たっては、広域連合など広域化が望ましいとの見解を示しておりますが、その辺の検討はなされているのでしょうか。介護保険の広域的展開を積極的に進めるような考えはないのでしょうか。財政的に弱小な町村が、高齢者の方々が安心できるサービスを継続的に実施していくためには広域的対応は避けて通れないものと考えますが、県においては、このことに関し市町村に今後どのような指導や取り組みを行う考えかあわせてお伺いします。
 次に、国営土地改良事業についてお尋ねします。
 現在、国や各地方公共団体においては、公共事業の評価やこれに伴う見直しが叫ばれております。過日の新聞報道によりますと、本県においても公共事業評価委員会が発足し、公共事業の中止等について11月上旬までに県に提言し、これを受けて、県では11年度予算編成に委員会の意見を反映させるとのことであります。加速的に変化している社会状況に対応できず、何らかの原因により長期間停滞している公共事業につきましては中止、休止もやむを得ないものと考えますが、一方、いまだ社会資本整備の進捗がおくれている本県においては、真に県民が必要とする公共事業を積極的に推進し、県民生活の向上を図っていく必要があると存じますので、委員会の適正な事業評価を強く期待するものであります。
 さて、新しい農業基本法のあり方を検討してまいりました国の食料・農業・農村基本問題調査会は、その最終答申で、これまでの生産振興に偏った農政を転換し、国土保全や食糧自給率の向上など、我が国の農業が持つ多面的な機能の発揮を目標として掲げております。
 そこで、我が国の国土保全に重要な役割を果たしております国営土地改良事業について、具体的には、本県軽米町及び青森県八戸市ほか2町村を受益地区として現在事業が展開されております国営八戸平原地区総合農地開発事業の進捗状況についてお尋ねいたします。
 この事業は、農地造成や既耕地の区画整理とあわせ、新井田川に世増ダムを築造し畑地かんがい用水を確保するとともに、用水路網を整備することを目的として昭和51年に着工したものの、諸般の事情から当初計画を見直し、平成8年度に計画変更を行った経緯がございます。そこで、当該事業、とりわけ世増ダムの進捗状況について、まず、お伺いいたします。
 また、国営事業の進捗に合わせて、末端かんがい施設の整備は関連県営事業を導入して行うこととなりますが、畑地かんがいについては農業者の関心が低いのではないかと私は懸念している次第であります。県におかれましては、県北農業研究所を再編整備されるなど、県北農業の振興に尽力されていることは高く評価するところでありますが、地域営農の主体である農業者や農協に対し、畑地かんがい営農の普及、啓発を積極的に推進していく必要があると存じます。現在の県の取り組み状況についてお尋ねいたします。
 次に、新幹線盛岡以北の開業に伴う県北地域の交流基盤の整備についてお伺いいたします。
 県北住民の悲願である新幹線盛岡以北の建設が進み、県北振興をより一層進める絶好の機会を迎えております。私は、これまでも県土の均衡ある発展について機会あるたびに議論してまいりました。人口の社会的流出による減少に歯どめがかからず、1人当たり市町村民所得は依然として県内でも下位にあり、工業出荷額も北上川流域に比較して低い、また、地形の制約あるいは散在する集落に要因があるにせよ下水道普及率も低いなど、県北地域の生活指標はすべての面で内陸部と比較して低くなっているなど、その課題はまだ解消されていないのが現実であります。
 右肩上がりの経済が期待できない今日、地域経済の活性化を図ることがますます困難になっていく状況が進む中で、私は、連携・交流をより一層進めることにより交流人口を拡大し、地域経済の活性化を図っていくことが必要と考えております。
 県北沿岸地域には、特色ある食文化、伝統文化、恵まれた海洋資源など都市間交流を進める上での素地が備わっており、この素地を有機的に連結させることによって1次産業を基盤とした産業おこしを進めていく必要があります。このことが2次、3次産業への振興にもつながり、産業循環による事業の進展が図られるものと考えております。
 このように、地域資源を組み合わせ、さらに連結していくためには、新幹線二戸、八戸駅を起点とする道路網の整備や情報ネットワーク整備がより一層必要になるものと考えられます。昨年度の北東北知事サミットにおいても、青森、秋田との連携のため、社会基盤の整備として主要地方道八戸大野線の整備が話題に上っているとも聞いておりますが、新幹線盛岡以北の開業にあわせ、県北地域における二戸、八戸を起点とする道路整備をどのように進めていくお考えなのか知事にお伺いいたします。
 次に、森林整備の推進についてお伺いします。
 本年は北陸、関東、東北地方など各地において大雨洪水災害が発生し、本県でも8月26日から9月にかけての大雨洪水災害により甚大な被害が発生しております。この災害の原因の第1はもちろん記録的な豪雨にあるわけですが、私は、森林整備の停滞も原因の一つではないかと考えているところであります。
 御案内のとおり、森林は、木材の供給はもとより、良質な水の供給や洪水調整などの水源涵養機能、土砂の流出や山崩れなどを防ぐ山地災害防止機能など多くの機能を有しており、その果たしている役割は極めて大きいものがあります。また、近年は、地球温暖化防止に係る二酸化炭素の固定、保健、教育、文化的な森林の利用などの面からも森林の重要性が認識されるようになり、県民生活の安定と向上を図る上で森林整備の推進がますます重要となってきております。我が国においては、戦後、国土緑化運動が全国的に展開され、本県においても、県、市町村、森林所有者等県民が一体となり積極的に植林運動に取り組んできた結果、本県の森林は、杉、アカマツ、カラマツなどの針葉樹を主体に森林の造成が行われてきたところであり、やがて迎えるであろう国産材時代に備えて木材供給基地としての基盤が確立されつつあります。
 しかしながら、近年、全国的な傾向でありますが、林業生産活動の低迷、担い手の減少、高齢化の進展などから手入れが十分に行われない森林が増加するなど、森林整備が停滞しております。このような状況が今後も続くとすれば、森林が持つ多面的な機能が低下し、山村住民のみならず、県民生活にも重大な影響を及ぼすことが懸念されます。本県の森林、林業の永続的な発展と、緑豊かな県土を築くためには、森林整備を計画的に進めることが重要であると考えますが、県では今後、民有林の森林整備についてどのように取り組まれるのか、お伺いします。
 また、このような低迷する林業生産活動に追い打ちをかけるように、去る4月、軽米町向川原地区において山林火災が発生したのでありましたが、県においては、直ちに現地を視察し、適切なる支援を行っていただいているところであり、その対応に心から感謝申し上げる次第であります。
 なお、今後とも、林業経営者の意欲を奮い立たせるべく、県の一層の支援並びに軽米町の特別な財政需要に考慮した特別交付税などの措置につきましても、一層の御配慮をお願いする次第であります。
 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございます。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 水上信宏議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、知事としての政治姿勢についてのお尋ねでございますが、私は、すべての県民に開かれたわかりやすい県政の実現を目指し、県民の皆様が県政を真に身近なものとしてとらえていただくために、また、県民の皆様からも直接選挙で選ばれた者の責務としても、あらゆる機会を通じて現地に足を運びまして、県政に対する御意見、御提言をお聞きし、県政の各分野に反映させるよう努めているところでございます。今後におきましても、住民に身近な行政は地方が担い、地方のことは地方で責任を持ちながら考える、いわゆる地域主権社会の創造に向けまして、岩手・新時代を担う主役は県民であるとの認識に立って、公正、公平を旨として積極果敢に県政を推進してまいりたいと考えております。
 次に、県土の均衡ある発展についてでございますが、私自身、県政懇談会などで県北沿岸の各地域に数多く足を運びまして、地域の方々と直接対話するよう努めているところでございますが、各地で地域づくりや生産活動などに真摯に取り組む皆様方に接しまして、まさしくこれからの岩手・新時代を切り開く主役は、地域に暮らし日々努力を重ねておられる県民の皆様そのものであると、思いを強くいたしているところでございます。
 一方で、この県北沿岸地域の現状を見ますと、この地域は、雄大な自然空間や豊かな農林水産資源に恵まれておりますけれども、気象条件が厳しく、北上山地が内陸部との交流を妨げるなど地理的、社会的条件が不利な状況にございまして、若者流出や高齢化が進行するなど、一層の活性化が求められる状況にあると、このように認識しております。今後の県北沿岸地域の振興を考えますときに、私は、地域が持つ発展可能性を最大限に引き出して、地域の個性や特色を生かした活力に満ちた地域づくりを進めることが極めて重要でございまして、このため、それぞれの地域に必要となるサービスを提供するための生活基盤や、地域や県民の自助努力による発展を可能とする産業基盤などについて、計画的に整備を進めていかなければならないと、このように考えております。
 また、県土全体の視点で考えますと、特にこれからは、高速交通体系を軸とした広域的交通ネットワーク、そして高度情報通信ネットワークの整備促進によりまして、県北沿岸地域におきましても、人・物・情報の交流が地理的、地形的なハンディキャップを乗り越えて活発に展開されることになり、さらに、これまで県央部や県都盛岡から遠く離れた周辺地域としてイメージされてきましたこの県北沿岸地域が、県境という垣根を取り払うことによって、県内外の交流の結節点として大きな役割を担うことになるわけでございます。このことは、観光、産業、地域づくり活動などのさまざまな分野において新たな可能性を切り開くことを意味するものでございまして、新しい総合計画におきましてもこのような考え方を反映させてまいりたいと、このように考えております。
 次に、新幹線盛岡以北の開業に伴います県北地域の道路整備についてでございますが、今年度から始まる国の新しい道路整備5カ年計画におきまして、日常生活の基盤としての市町村道から国土構造の骨格を形成する高規格幹線道路に至る道路網は、これを計画的に整備することによりまして、参加と連携による地域づくりに寄与すべきものと、このようにされております。本県におきましても、道路整備の将来ビジョンの基本方針を活力と魅力ある自立した地域づくりを支える岩手の道づくりなどと定めまして、活発な連携と交流を支える道づくりを進めることとしております。この中では高規格幹線道路を補完する交流促進型の広域道路の整備を重点的に進めるほかに、交通拠点、物流拠点を結ぶ道路などの整備を進めることとしているところでございます。
 二戸を起点とする当地域の道路整備についてでございますが、新幹線による高速交通の効果を県北地域に波及させ、地域の活性化や産業、経済の振興を図るために、国道395号の軽米町猿越地区や主要地方道軽米種市線の種市町ノソウケ地区の登坂車線などの整備を図る種市ルートなど4ルートを新幹線関連道路として定めまして、新幹線の供用にあわせた整備の促進に努めているところでございます。
 また、八戸を起点とする道路整備についてでございますが、県北地域は、従来より中核都市でございます八戸市と県境を越えた交流がなされているところでございます。新幹線駅の設置に伴いまして、今後、より一層多様な連携と交流が見込まれ、県際道路は重要な役割を果たすことが期待されますことから、その機能強化を適切に図ってまいりたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承をお願いいたします。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) まず、米の消費拡大についてでありますが、本年9月に公表されました食糧庁の米の消費動向等調査によりますと、消費量は残念ながらやや減少しております。その要因としては、食生活の洋風化、それから中食、外食機会の増大、さらには、若者を中心とした朝食の欠食などによるものと考えております。
 一方、米飯を中心とする日本型食生活は、生活習慣病の予防にも有効な栄養バランスにすぐれたものと高く評価されており、米の消費拡大はもとより、国民の健康保持のためにも極めて大事なことと考えております。県といたしましては、昨年度から8月18日を米の日に設定し、この日をメーンとして、米に親しんでいただくさまざまな活動を行うとともに、今年度は、いわてお米ギャラリーを開催し、健康や食文化などの多彩な角度から米の大切さをアピールし、消費拡大にも取り組んでいるところであります。今後におきましても、さまざまな手だてを講じながら、次世代を担う子供たちや若者への啓発普及を図り、米離れ、米の消費減少に歯どめをかけて、消費需要の維持拡大に努めてまいる考えであります。
 次に、国営総合農地開発事業八戸平原地区についてでありますが、本地区は岩手、青森両県にまたがる北上山系の丘陵台地において、畑作と畜産を主体とした農業が営まれ、一層の生産性の高い畑作営農の展開が求められている地域であります。しかしながら、生産基盤が未整備の状況にあり、かつ年間降水量が約1、000ミリメートルと県内でも少ない地域であることから、ダム等のかんがい施設や農地の開発、整備などの生産基盤を総合的に整備するため、昭和51年に着工されたものであります。
 お尋ねの本事業の進捗状況についてでありますが、面整備については、農地造成383ヘクタールのうち、本県分45ヘクタール、畑地の区画整理234ヘクタールのうち、本県分37ヘクタールについてほぼ完了し、今後はかんがい施設の整備に重点を移すこととし、現時点での全体事業の進捗率は64%となっております。世増ダムにつきましては、種市町などの水道事業、青森県の治水事業との共同事業で実施しておりますが、ダム建設に必要な用地買収補償や家屋移転等は既に完了し、ダム工事に附帯したつけかえ道路や仮排水トンネル工事を現在進めており、平成14年度の本体完成を目指し、平成10年度から本格的にダム本体工事に着手したところであります。この工事着手を契機として、本事業で造成する畑地、かんがい施設を活用することにより、新規作物の導入や高品質、安定生産の営農展開、これが可能になりますので、これを目指して二戸農業改良普及センターや県北農業研究所、地元町、農協が一体となって営農推進懇談会、あるいは先進地研修等を開催するなど、新たな取り組みを展開しているところであります。今後におきましても、国に対し事業の早期完成を強く要望するとともに、県北畑作営農の新たな展開に向けて、関係団体と一体となって進めてまいりたいと考えております。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 八戸・久慈自動車道の整備についてでありますが、本路線は久慈市と八戸市を結ぶ延長約50キロメートルの自動車専用道路で、21世紀へ向けての多極分散型国土の形成を図るための全国1万4、000キロメートルの高速交通網に組み込まれているところであり、さらに、県北地方の自立的な地域社会を形成するための重要な路線と考えております。このうち、岩手県側が大部分を占める約29キロメートルについては、平成9年度に予定路線から基本計画区間に組み込まれたところであり、現在、国において整備計画区間への格上げを目指して、ルートの比較検討など各種の調査を継続して行っていると伺っております。また、青森県側では事業化が進められており、このうち八戸環状道路として延長約8・6キロメートルについては、用地買収がおおむね50%を超えた進捗状況であり、さらに八戸南道路として延長約9キロメートルの区間については、都市計画決定に向けた準備を進めており、そのための各種調査を実施中と伺っております。
 昨今の経済情勢から公共事業を取り巻く環境には厳しいものがあり、全線開通には、なお相当の時間を要すると思われますが、本県といたしましても、北部沿岸地域の振興のため、久慈市から種市町を経て、青森県階上町に至る基本計画区間の整備計画区間への早期格上げを図り、事業着手がなされることが極めて重要であると考えており、引き続き国に強く働きかけてまいりたいと考えております
   〔総務部長吉田敏彦君登壇〕
〇総務部長(吉田敏彦君) まず、県内経済の状況についてでありますが、大型小売店販売は一進一退となっており、住宅建設は前年を上回っているものの、依然として低い水準となっております。また、乗用車販売や鉱工業生産も前年水準を下回って推移しており、さらには、有効求人倍率も一層低下するなど、県内景気は低迷し、引き続き厳しい状況にあると認識いたしているところでございます。
 このような中で、本県としては、低迷している県内経済の活性化を図る観点から、国の総合経済対策に呼応し、公共事業の上半期の契約率を83%に設定し早期発注に努めているほか、厳しい経営を強いられている中小企業の事業活動を積極的に支援するため、経営相談体制の拡充や、一部制度資金の保証制度要件の緩和を図るなどの対策を講じたところであります。また、6月と今議会の補正予算におきましては、公共事業の追加や、福祉、医療、教育施設の整備に加え、情報通信高度化対策などによりまして社会資本の整備を推進することとしたほか、中小企業に対する資金供給を円滑にするための新たな融資制度を創設したところであります。これら対策を講ずることによりまして、県内の生活、生産両面の基盤の整備が促進されますとともに、県内生産が誘発されることによって県内経済の活性化が図られ、また、中小企業対策の面では、中小企業の資金調達を容易にすることなどにより、事業活動の円滑化を期待しているところであります。
 次に、試験研究機関の専門職員の人事異動についてでありますが、職員の人事異動に当たりましては、県の諸施策の積極的な展開を図るという観点から、職員の勤務意欲の高揚と公務能率の向上を期するということから、適材適所の人事配置を基本としながら、原則として、同一の職場で一定の年数を経過した職員を対象として配置がえを行っているところであります。試験研究機関に勤務する職員につきましては、各種専門研修等を通じまして、より専門性の高い能力を兼ね備えた職員の養成に努めるとともに、一方においては、施策の企画立案部門や普及指導部門などのさまざまな職場における幅広い経験を通しまして視野の広い職員の養成を図り、もって、よりすぐれた試験研究の成果が得られるように、他の部門への配置がえを行っているところであります。また、試験研究業務は、内容が高度かつ専門的であるため、研究成果が出るまで相当の期間がかかるものが多いことや、職員が試験研究に必要な知識、技術を習得するまでにある程度の年数を要することなどから、配置がえを行う場合には、他の部門の職員と比較いたしまして、より長い年数を経過した後に行っております。
 今後におきましても、多様化、高度化する試験研究課題に的確に対応できるように、試験研究の進捗度合いや、その成果の確認に要する年数など、現在取り組んでいる業務に係る個別の事情や、現場の意向を十分にしんしゃくしながら、職員の配置がえを行ってまいる考えであります。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) 介護保険制度への対応についてでありますが、この制度において、市町村介護保険事業計画は、制度施行後の向こう5年間の介護サービス体制の目標量を設定するとともに、保険料の算定根拠ともなる重要な計画として位置づけられております。したがいまして、この計画の策定に当たって、要介護高齢者等の心身の状況や日常生活の状態、サービスの利用意向などを的確に把握するための実態調査が必要となっております。
 このため、県といたしましては、市町村の計画策定を支援するため、この実態調査に当たっては、実際に保健、医療、福祉に携わっている市町村職員や施設職員など、調査員約1、000人を対象に2日間にわたる研修を行い、本年8月から市町村と一体となって、県内の要介護高齢者等約2万5、000人を対象に調査を実施しているところであります。今後、市町村におきましては、介護保険事業計画を作成するに当たって、必要となる介護サービスの基準が平成11年3月ごろに国から示されることを受け、実態調査結果に基づき、さらに介護保険事業計画の内容を取りまとめ、平成12年3月を予定とし、計画を決定することとなっております。これに伴い保険料についても決定することになっております。県といたしましては、今後とも、市町村における介護保険事業計画の策定が迅速かつ的確に行われるとともに、これに対応したサービスの確保方策などについて適切な助言を行いながら、介護保険制度の円滑な導入に向けて、市町村に対し、きめ細やかな支援をしてまいりたいと考えております。
 なお、高齢者保健福祉計画につきましては、高齢者に対する介護サービスとともに、健康事業や生きがい対策などを含む地域における保健福祉事業全般にわたる計画であることから、介護保険事業計画と整合を持って、今回、改定することにしております。
 次に、介護保険事業の広域化についてでありますが、市町村が介護認定審査や財政運営などの介護保険事業を、広域連合や一部事務組合、審査会の共同設置などの制度を活用して広域的に運営していくことは、認定審査の客観性と効率性の確保、保険財政の安定化、保険事務の効率化などの観点から有効な方策と考えております。このため、現在、介護保険事業の健全かつ円滑な運営を確保する観点から、地方振興局の調整のもと、管内の市町村において、広域化を含め、介護保険制度の施行に向けた体制整備について検討を進めているところであります。県民の方々が地域において必要な介護サービスを、いつでも、どこでも利用できるよう、これを目指し、市町村の介護保険事業の開始に向けた取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えております。
   〔林業水産部長渡辺勲君登壇〕
〇林業水産部長(渡辺勲君) 森林整備の推進についてでございます。
 森林の有する洪水や山崩れの防止、良質な水の安定供給などの公益的機能の高度発揮に対する要請は年々高まりを見せてきており、とりわけ最近、地球温暖化対策における森林の二酸化炭素吸収、固定機能が高く評価されてございます。これらの機能を永続的に発揮していくためには、的確な造林、保育、間伐などの一連の林業生産活動により森林資源の質的充実と循環利用を図り、持続可能な森林経営を実現していくことが重要でございます。
 本県の民有林におきましては、人工林の大部分がなお育成途上にありますので、こうした観点から、一層保育、間伐を徹底しつつ、必要に応じて複層林や長伐期林分への誘導等を図るとともに、天然林につきましても、高齢木を抜き切りし、後継木を成長させる育成天然林施業を進めることなどにより、健全で多様な森林整備の計画的な推進に努めているところでございます。特に、間伐につきましては、本年6月に国において決定されました地球温暖化対策推進大綱において、森林整備が二酸化炭素吸収源対策の一つとして位置づけられたことなどを踏まえ、その新たな運動を強力に展開するため、このたび岩手県間伐推進行動計画を策定いたしまして、この10月を間伐推進月間と定めたところでございまして、今後、間伐の推進、間伐材の利用促進、そして、それらのための具体的な普及活動等につきまして、県、市町村、林業関係団体などが一体となって、一層積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕
〇教育長(大隅英喜君) 県立種市高校への専攻科の設置についてでありますが、種市高校海洋開発科は、在学中に取得可能な資格も多く、ほとんどの生徒が学んだ専門的な知識や技術を生かした職場に進むなど、その使命を十分果たしております。お尋ねの同校への専攻科の設置につきましては、専攻科修了後の資格取得の見込みや海洋開発科卒業生の進路動向等について調査し、その可能性について検討してまいったところでありますが、海洋開発科卒業後に取得可能な資格は数多くあるものの、専攻科修了を取得要件とするものが見当たらず、そのほとんどが実務経験を必要としている状況であり、海洋開発科の生徒の多くは卒業後直ちに就職する道を選択していることなどから、専攻科の設置につきましては、社会状況の変化を見ながら、慎重に対処してまいりたいと考えているところでございます。
   
〇議長(那須川健一君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
〇11番(水上信宏君) 誠意ある御答弁、大変ありがとうございました。再質問を一つと要望を申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。
 再質問の一つは、介護保険制度に関してお伺いします。
 関係者の試験とはいえ、今回の支援専門員の試験の受験者数を見るとき、いかにこの介護保険制度への関心が高いかは一目瞭然であります。私はさきにも申し上げましたが、この制度が始まれば、好むと好まざるにかかわりなく保険料の負担があるわけであり、当然にしてこうしたことから県民も関心を持っていることと思うのであります。しかも、この制度は各市町村の実施ということもありますことから、同じ保険料を負担しながら審査認定等によって受ける介護サービスが市町村に差のあるものであってはならないと思うことから、この一連の関係事務事業への取り組み状況が各市町村同じ体制で取り組むことができる見込みなのか、いま1度お伺いします。
 次に、要望を申し上げさせていただきます。
 昨日の一般質問の中で、我が会派の大変尊敬する谷藤議員が来年の知事選出馬についてお尋ねしたところ、知事は全く白紙というお言葉であったことは御案内のとおりでありますが、同世代のやりとりとして大変興味を持って拝聴させていただきましたが、私には、全く白紙という白い紙を透かして見ますと、必ず出馬、そして、90%ぐらい当選というところまで私のつたない経験と見通しで映されております。
 そこで、知事は、昨日の長谷川議員への答弁の中で、東京から見た視点でなく、地方から岩手を見た視点で中央、そして都会の人に理解してもらうよう頑張っていくという趣旨の力強いありがたいお話をしてくださいました。私は、県北の九戸から見た視点でこれからお願いしてまいりますので、知事のいつも言っておられる県土の均衡ある発展、格差是正についてより一層のお力を切にお願いし、再質問と要望を終わらせていただきます。
 大変ありがとうございます。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) この制度において、保険料は市町村における介護サービス提供の水準が反映されるものであるため、市町村における介護給付サービスの提供水準が異なることによって保険料も変わり得るものであります。
 県といたしましては、県民に対し、適切な介護サービスが提供されるよう、市町村において必要となる介護サービス提供体制の整備など、積極的に支援してまいりたいと考えております。あわせて、利用者個々人に対し介護給付を決定する認定審査に当たっては、公平性かつ公正性を保つよう、市町村に対し指導してまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、介護保険制度の円滑な導入に向け、市町村と一体となって進めてまいりたいと考えております。

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