平成10年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇18番(高橋賢輔君) 自由公明県民会議の高橋賢輔でございます。
 質問に入るに先立ちまして、8月26日から断続的に降り続きました大雨・洪水により被災された皆様にまずもってお見舞い申し上げる次第であります。
 また、先月の3日には岩手山南西地震が発生し、その余韻もさめやらぬ16日には関東、東北地方を横断した台風5号と立て続けに災害が本県を襲い、改めて自然の力の巨大さを思い知らされたところであります。これら災害の被害に遭われた皆様に対しても衷心よりお見舞い申し上げるものであります。
 さて、これらの災害による被害についてでありますが、地震被害は80億円を超え、大雨洪水被害も214億円を超える膨大なものとなっており、また、台風5号による被害も約11億円に上り、これらの大部分は土木施設や農林関係であります。県では、早速、被害状況の調査と並行して復旧作業に取り組まれており、その御努力を多とするものであります。
 これら災害復旧に要する予算につきましては、当初で計上している予算の中から執行するとのことでありますが、被害額が近年になく膨大なことから、果たして既定の予算で対応が可能なものかどうか心配されるところであります。また、災害復旧に取り組む職員にあっても、この6月に大幅な公共事業の追加を中心とした経済対策関連の予算を補正したところでもあり、これら追加公共事業の執行に追われているものと推察いたします。こうした状況から、予算面、職員体制面におきまして、これら災害の復旧に支障が生じないか懸念されるところであり、中でも、特に被害が大きかった土木施設について、県は、これらの問題をどのように解決しながら取り組んでいくお考えか、まず、お示し願います。
 このように自然災害が立て続けに本県を襲っている中で、もう一つ気にかかるのが岩手山の火山活動であります。
 岩手山については、本年2月以来火山活動が活発化し、岩手山を震源とする火山性地震や火山性微動、低周波地震の回数がふえ、岩手山西側ではいつ水蒸気爆発が起きてもおかしくない状況であり、全国的に岩手山の動向が注目されているところであります。
 県においては、6月24日の盛岡地方気象台発表の臨時火山情報第2号を受け、岩手県災害警戒本部を設置し、現在も24時間体制で情報収集に当たっており、さらには、8月19日に岩手県の火山活動に関する関係機関連絡会議を設置し、県、関係市町村、防災関係機関が一体となって予防、応急活動の調整を図っているということであり、その対応に対し、まことに心強く感じているところであります。
 現在、岩手県火山災害対策検討委員会においては火山対策の基本となるハザードマップの作成作業中であると聞いておりますので、お伺いいたします。作業はどの程度進んでいるのか、さらには、防災対策にどのように活用しようとしているのかお聞かせ願います。
 また、来る10月18日には、本県で初めて火山噴火を想定した防災訓練を行う予定とのことでありますが、この訓練の目的や内容についてお示し願います。
 次に、農業問題についてお尋ねいたします。
 まず、新しい農業基本法についてであります。
 21世紀の日本農業の姿を明確に示す新農業基本法づくりは、昨年春の食料・農業・農村基本問題調査会での論議をもってスタートしました。しかしながら、テーマの範囲が広いのに加えて、農業団体、経済界、消費者団体などの代表35人から成る委員がそれぞれの立場を背負って参加していることから、議論が難航してきたところであります。特に、株式会社の農地所有の是非や中山間地域の所得補償の方法などをめぐってさまざまに相対立する意見が噴出したと聞いております。
 こうした結果をたどった調査会も先月17日に最終答申を提出したところでありますが、その概要を見ると、新たな農業政策は、国内の食糧自給率の維持向上、国土や環境の保全に果たす農業農村の多面的な機能に重点を置いております。また、農業へ市場原理を導入するに当たっては、農家の収入減を緩和する所得確保対策について触れていることが特徴的と思われるのであります。しかしながら、この答申は、例えば、争点となっていた株式会社の農地所有については、意欲ある多様な担い手を確保する観点から、現行の農業生産法人の一形態としての株式会社への転換を容認しようとするにとどまっています。また、中山間地での所得補償についても、耕作放棄地の増加に伴う多面的機能の低下を防止する策として有効だと認めつつも、国民の理解が得られる対象や財源の検討が必要だと指摘するにとどまるなど、総じて具体策に欠け、多くの課題を残したものと感ずるのであります。
 県では、これまで国に対して、この新しい農業基本法の制定について、知事を先頭に、政策目標の明確化を初め、かなり具体的な提案を含めて要望してきたところであります。私は、今後、国においてこの答申の法律化に向けた細かな検討がなされることから、本県農業の実情を踏まえた、より具体的な要望を強化すべきと思いますが、いかがでしょうか。また、県においては、基本問題調査会の答申を踏まえ、新たな農業施策をいち早く展開すべきと思いますが、知事の基本的な考えをお聞かせ願います。
 次に、農業後継者対策についてお尋ねいたします。
 中山間地における諸課題につきましては昨年の本会議でも質問したところでありますが、その後、県では部局横断的な重点課題として取り組まれており、その成果の上がるのを期待しているものであります。この対策に関連するのでありますが、東北農政局が行った中山間農家就業構造等調査によりますと、本県の高齢農業世帯では、収入の問題よりも労働力不足や後継者不足によって農業経営を縮小、廃止したいと考えていることが明らかとなっております。
 県では、こうした農業後継者対策については、農業担い手基金を中心としてそれなりの手だてが講じられていると理解しておりますが、新しい農政の方向が見えてきた機会でもあります。この際、これまでの対策を振り返り、新たな対策を講ずるときにあるのではないでしょうか。
 近年、定年を機会に農業を楽しむ定年帰農が静かなブームを呼んでいると言われております。私は、若者に対する就農対策とあわせて、中高年も積極的に受け入れるべきと思うのであります。とにかく人を呼び込むことで中山間地域を活性化すべきであります。いささか乱暴な言い方ではありますが、最近の不況のもと、雇用調整を余儀なくされている企業が増加しております。こうした雇用対策の一つとしての視点も取り入れた思い切った施策を実施してはいかがかとも思うのであります。
 県は、これまでの農業後継者対策をどのように評価し、今後どのように取り組んでいくのかお答え願います。
 農業問題の最後に、水稲の作柄についてお尋ねいたします。
 先日発表された9月15日現在の県平均作況指数は、低温、日照不足などの影響によって、95のやや不良であります。8月の調査時点では97であったものが、その後の大雨・洪水による冠水被害などによりさらに2ポイント下回り、大凶作だった平成5年以来5年ぶりに平年作を下回る見込みとなっております。景気が低迷している中、米も不作であっては、不景気による沈滞ムードが一層深まってまいります。既に刈り取りも始まってはおりますが、刈り取りに向けて、県では農家に対してどのような指導を行っているのでしょうか。また、その後の作柄についてどのように把握しているのかお答え願います。
 次に、北本内ダムについてお尋ねいたします。
 知事は、8月24日の記者会見において、北本内ダムについて、来年度の事業を休止することを明らかにいたしました。御承知のとおり、北本内ダムは北上市の和賀川支流の北本内川に建設する多目的ダムであり、和賀川の治水対策と北上、花巻、石鳥谷、紫波の4市町で構成する岩手中部広域水道企業団の水道水源の確保が主目的で、平成19年の完成を目指しているものであります。
 休止の理由としては、新たな地すべりや地盤強化対策の必要によって事業費が5割増しの約600億円に膨らむこと、水道水の需要の伸びが当初計画より鈍くなっていること、洪水対策は河川の堤防改修で対応できることなどを挙げております。しかしながら、今、地元では、水道水については、北上市の人口増加や近年著しく住宅地建設の進む紫波町の将来方向、さらに、空港を核とした流通拠点の形成による花巻市や石鳥谷町の発展方向などを十分に取り込んだものなのかという疑問の声が上がっております。特に、不足分は入畑ダムの工業用水分を転用しようとの考えもあるようですが、こうしたことそのものが将来の不足を予期しているのではないかとも思われるのであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 さらに、このたびの大雨や台風による北上川下流の洪水状況から、その対策としての重要性を指摘する声もあります。また、長年建設に協力してきた北上市長も、将来は人口の増加によって水源不足になり、遠からず建設が再開されることを願う旨述べております。
 私は、公共事業の見直しを決して否定するものではありません。むしろ税金のむだ遣いを防ぐ意味から極めて大事なことだと認識するものであります。しかし、今回の事業休止の決定の理由の説明では、その具体的な数値や代替策などが必ずしもつまびらかではありません。また、来年度は事業費を予算化せず、休止することと言っておりますが、それでは再開があり得るのかどうかも明らかではありません。報道では事実上の中止とされておりますが、私の聞いたところによりますと、その辺が必ずしも明確ではありませんでした。この際、改めて来年度の事業休止の決定に至った過程、その理由を具体的に説明願います。
 また、この休止は、将来にわたって事業を取りやめる中止を意味するのかどうかについても再度明確にするとともに、中止について、広域水道企業団初め、4市町の同意を得ているのかどうかについてもお答え願います。
 また、この事業にはこれまで約50億円が投じられ、その半分は国の補助金であります。この補助金の返還問題についてはどうなるのでしょうか。国の十分な理解は得られているのでしょうか。返還の要否についても明らかにしてください。
 次に、中小企業対策に関連してお尋ねいたします。
 国内の景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にあるとされております。県内の経済情勢も、新車登録台数が17カ月連続前年を下回るなど、個人消費が引き続き低迷でありますし、県内の主力製品である電気機械の生産が落ち込むなど、生産活動も総じて低調であり、また、雇用情勢は、新規求人数が10カ月連続前年を下回る一方で、新規求職者数が8カ月連続前年を上回るなど、一段と厳しさが増しているところであります。私が把握しているところでも、特に県南部の電気メーカーや窯業などでは契約社員の圧縮や正社員の採用抑制、建設業での現場作業員を中心とした人員削減の動きが見られますし、地元メーカーでも雇用の圧縮の動きが目立ってきており、あすは我が身かと生活不安におびえる県民が増してきているものと思われるのであります。また、来年春に県内の高校を卒業する若者たちも就職問題に悩んでいるものと察せられるのであります。
 県では、こうした雇用情勢についてどのように把握しているのでしょうか。まず、雇用調整助成金の件数はどうでしょうか。業種についての最近の特徴などについてもお知らせください。高校卒業予定者の求人状況はどうなっているのでしょうか。また、雇用の問題に県としてどのように対処しているのでしょうか。
 このように県内経済が低迷し、厳しい状況下で、企業の倒産件数も、負債総額1、000万円以上のもので昨年1年間に72件あったものが今年は8月までで既に94件に達しているのであります。私も、多くの経営者が資金繰りにあえいでいる実態を見ております。県は、緊急経済対策資金貸付金を用意して中小企業の経営対策に備えているところでありますが、既に100億円の融資枠が満杯となり、さらに200億円を追加することにして今議会に予算案を提出しております。県の中小企業の状況に応じた対処には心強いものを感ずるのでありますが、こうした融資は、これまではすべてとは申しませんが地元金融機関の大きな役割ではなかったでしょうか。私は、多くの経営者から、金融機関の融資条件が経営内容に大きな変化がないにもかかわらず厳しくなったとの嘆きの声を耳にいたします。すなわち地元金融機関の貸し渋りが行われ、この貸付金に頼らざるを得ない状況にあるのではないかとも感ずるのであります。この貸付金の利用増大についての県の所感をお聞かせ願います。
 県内製造業や卸小売業の低迷に加え、ホテル、旅館業も、不景気による出張者や観光客の減少によって経営者は苦労している状況にあります。加えて、岩手山の火山活動の一連の報道は、秋の観光シーズンを迎えてはかり知れない影響を与えるものと、八幡平、網張温泉周辺の経営者の皆さんの心中は察するに余るのであります。
 このような中、私の住む北上市では大きなホテルの建設計画が進められ、既存の経営者は頭を抱えている状況にあります。県内には、こうした民間のホテルや旅館のほかに、国民宿舎などのように市町村が公営企業として経営しているものもあります。こうした市町村の公共の宿の経営も不況の影響をかなり受けているのではないかと思われますが、民間経営者が苦労している中、もし安易な税金の投入による経営がなされているようなことがあるとすれば問題であります。
 県としては、このような公営企業として経営されている宿泊事業について、その存在意義や経営の状況をどのように認識されているのでしょうか。また、どのような指導を行っているのでしょうか、お答え願います。
 次に、高齢者対策についてお尋ねいたします。
 本県の65歳以上の人口は昨年27万人を超え19・4%の比率であり、全国の15・7%を上回って高齢化が進んでおります。これに伴って、寝たきりや痴呆性老人など介護の問題が生じておりますが、県民だれもがいずれは高齢者となるのであり、その対策には真剣に取り組まなければなりません。老人介護という文字を見るたびに私が身につまされるのは、今年1月に県南地方で起きた、63歳の娘が89歳の寝たきり状態の母親に手をかけた母子2人暮らしの家庭の悲劇であります。看病疲れと生活苦が動機と言われておりますが、母親の痴呆症の進行に悩んでいたとも聞いております。
 県内の寝たきりや痴呆、虚弱等の援護を要する在宅高齢者は約1万5、000人、そのうち、ひとり暮らしや高齢者の世帯も約3割を占めていると言われております。このような中、高齢者が高齢者を介護する老老介護の問題は深刻であります。県では、老老介護世帯の実態をどのように把握しているのでしょうか、具体的な対策とあわせてお答え願います。
 私は、県南地方の事件について感ずるのは、福祉を担当する職員が、こうした世帯に日ごろから親しく接触することや、地域からの情報を小まめに集めることの重要さであります。県は、市町村に対して、こうした観点からの指導はどのように行っているのでしょうか。また、相手の意思やプライバシーの問題もあることではありますが、今後の体制の整備などについてお答えをお聞かせ願います。
 次に、県道花巻大曲線の整備についてお尋ねいたします。
 西和賀地方は、先月3日に山伏峠が開通し、冬場の難所として、冬期間厳しい峠越えを強いられてきた沢内村民にとって、長年の悲願が実ったところであります。この3年間、集中的に事業を進めてきた県に対して、私からもお礼を申し上げるものであります。このトンネルの開通により、通行時間の短縮や安全性の向上はもとより、経済面、観光面などの振興に多くの期待が寄せられるところであります。西和賀地方は、昨年7月に東北横断道北上線が開通し、横軸の連携基盤が強化されたところであり、このたびトンネル開通によって雫石町を通じて県都盛岡とこれまで以上に密接に結ばれたのであります。残るは沢内村と花巻市を結ぶ県道花巻大曲線の整備であります。この路線も手をかけていただいておりますが、中山トンネルの建設などその整備の歩みは、必ずしも早いとは言えない状況にあります。この路線が整備されれば、西和賀地方に8の字の形の交通網が整うことになり、今、岩手中部地域の共通の重点課題としてその促進を望んでいるものであります。日の沈む山の陰、交通網が未整備な豪雪地帯というイメージの強かった西和賀地方には、この8の字のルートによって、まさに21世紀の新しい光が差し込むのであります。この花巻大曲線の集中的な整備を望むものでありますが、県のお考えや計画についてお答え願います。
 最後に、新しい運動公園の建設に関してお尋ねいたします。
 新しい総合運動公園建設の構想は、昭和45年の岩手国体の主会場となった盛岡市みたけの県営運動公園が手狭になり、また、老朽化してきたことから、平成28年にも見込まれる二巡目の岩手国体の開催に向けて持ち上がったものだと聞いております。この施設建設をめぐっては、既に盛岡広域圏の5市町村が誘致への名乗りを上げている模様であります。私は、もし将来の国体開催を主目的とするのであれば、そもそも国体開催のあり方について考える必要があると思うのであります。今、大きな経済成長が望めない時代となっており、巨大な建設費を要する公共事業については、慎重な姿勢が必要となっております。国体開催についても、来年のインターハイに向けて整備された北上市の総合運動公園を初め、各地の施設を効果的に活用するなどした構想を練るのも、時代に合った推移ではないでしょうか。
 御所見をお伺いして私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 高橋賢輔議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新たな農業基本法に関連した取り組みについてでございますが、食料・農業・農村基本問題調査会の先日の答申でございますが、この中では、我が国全体としても重要なこの中山間地域への公的支援につきまして、もっと踏み込んだ内容を期待しておりましたので、この部分については物足りない面を感じているわけでございますが、本県が要望してまいりました趣旨がこの答申の中には反映をされているものと、このように認識をいたしております。国におきましては、現在この答申を受けて法制化に向けた具体的な検討が進められているわけでございますが、県では、農業者が意欲を持って営農にいそしむことができ、将来に展望が持てる基本法が制定されますように期待をしているところでございます。
 県では、現在、新しい農業計画を策定中でございますが、私としては、答申に盛られた視点を踏まえながら、広大な農地、変化に富む気象条件など本県農業が持つほかの県にはないすぐれた資源、特性を最大限に発揮することにより、我が国枢要の総合食糧供給基地としての地位を一層強固なものにしたいと、このように考えております。
 具体的には、全国的にも評価が高いいわて純情米、いわて牛、さらには、責任産地として期待をされておりますリンドウ、キャベツなどを戦略作物とした作目再編を進めまして、米、園芸、畜産のバランスがとれた岩手農業を展開していく考えでございます。そのため、意欲ある担い手の育成と効率の高い営農システムの確立、多様な消費者ニーズに対応した個性ある産地の形成、環境に配慮した農業生産、生産者の顔が見えるような販売戦略の展開、グリーン・ツーリズムなどによる農村と都市の交流などの諸施策を展開して、農業農村の一層の活性化を図ってまいりたいと考えております。
 次に、農業後継者対策についてでございますが、農業が大きな変革期を迎えている情勢の中で、担い手育成が極めて重要な課題であると認識をいたしておりまして、農業青年の集いや現地での懇談会におきまして、直接要望を聞いたり、激励をしてきたところでございます。大変心強く思っておりますことは、就農した青年が若者らしい柔軟な発想で、消費者ニーズを先取りした新たな経営展開を行っている事例や、中山間地域におきましても、他産業からの新規参入者が花や野菜の栽培に生き生きと取り組んで、これらの活動が地域の活性化に結びついている事例など、次代の担い手にふさわしい気概を持った青年が育ってきていることでございます。こうした明るい兆しを確かなものとするため、本県農業が環境と調和し活力に満ちた産業となるように、水田営農の確立に向けた生産構造の再編や、立地条件を生かした高収益作目の導入、生産、生活基盤の整備などを進め、多くの若者を引きつけるような魅力ある農業、農村を築いていく考えでございます。
 また、本年3月、21世紀に向けた担い手育成の指針として、岩手県農業担い手育成中長期ビジョンを策定をいたしたところでございまして、市町村におきましても実行計画づくりを進めるなど、担い手育成に取り組む機運が高まっておりますことから、農家子弟はもちろんのこと他産業従事者も含めて、希望者が意欲を持って就農できるように、関係機関、団体が役割分担しながら、きめ細かな支援策を講じていく考えでございます。
 次に、北本内ダムの休止についてでございますが、県では来年度予算の概算要求前に現在実施中の八つのダムの治水、利水計画について総点検を行ったところでございます。この結果、北本内ダムについては、和賀川の治水対策の面で、ダム建設よりも河川改修を行う方が経済的に有利となる可能性があり、詳細な見直し検討が必要となったところでございます。さらに、利水対策の面で、最近の水道用水の供給実績の伸びが鈍くなっているために、地区内の水道用水が不足するのは、当初計画では平成12年度というふうに見込んでいたわけですが、これが平成19年度にずれ込む見込みとなったこと、また、ダム建設費が5割程度増額することに伴いまして、水道企業団の負担金が割高となることから、今後の水需要の詳細な予測を行って、北本内ダムにかわる、より経済的な水源について検討することが必要となったところでございます。このため、県では、治水、利水対策の両面で、よりすぐれた代替案の検討のため、来年度は休止と、このように決断をしたものでございます。
 次に、この休止という考え方についてでございますが、この休止は、中止の前段として考えておりまして、休止期間中に利水者と協議を行いまして、代替策の結論が出た段階で、再度関係機関の同意を得たいと、このように考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承お願いいたします。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 災害復旧の取り組みについてのお尋ねですが、まず、平成10年度災害復旧事業の予算につきましては、過去の災害実績から10年災の災害復旧費を想定し、総額98億8、600万円余を計上しているところであります。一方、本年の災害報告額は、これまで115億円余となっておりますが、災害査定を経て、本年度の実施額はおおよそ87億円程度と見込んでおります。したがいまして、現時点では、予算的には確保されている状態でございます。
 次に、災害復旧に当たる職員体制についてでありますが、設計、積算業務の外部委託の積極的な活用を図るとともに、地方振興局に対する業務支援の必要なところにつきましては、本庁等の技術職員の派遣を行うなど、早期復旧に向けた取り組みを土木部全体として対応しているところでございます。
 次に、岩手山火山防災マップ作成の進捗状況についてでありますが、御指摘のとおり、本年2月ごろから岩手山の火山活動が活発化したため、火山学者等で構成する岩手山火山災害対策検討委員会を設置して、観測結果や過去の噴火歴等をもとに、火山活動が活発になっている西側について、岩手山火山防災マップを作成し、7月22日に公表したところであります。また、東側については、西側ほどの地震の回数は多くはないものの、松川観測点で火山性微動が継続的に観測されること、人工衛星による測量により山体が南北に広がっている傾向があることなどにより、山体の深部で規模の大きい地殻変動が指摘されております。このようなことから、引き続き東側についても防災マップを作成することとし、技術的検討を重ねた結果、素案がまとまり、9月26日の第4回岩手山火山災害対策検討委員会に諮ったところであります。その結果、委員の方々から大筋の了解が得られましたので、所要の修正を加えた上で、10月9日に公表すべく作業を進めているところであります。
 次に、北本内ダムの補助金の返還についてでありますが、宮城県の新月ダムの前例もあることから、休止期間中は補助金の返還は求められないと考えておりますが、県といたしましては、中止という事態を想定し、休止期間中に補助金の取り扱いについて国と協議を行うとともに、返還が生じないよう、国へ強く働きかけてまいりたいと考えております。
 次に、主要地方道花巻大曲線の整備についてでありますが、この路線は、花巻市を起点とし沢内村を経て秋田県大曲市に至る道路であり、このうち花巻市桂沢地区から沢内村川舟地区間については、一般車両の通行ができない状況にあり、地域関係者から強く整備が望まれていたところであります。このため県としては、まず交通不能区間の解消が緊急課題であると考え、花巻市側については中山工区約2・1キロメートルを昭和61年度から、沢内村側については小倉・川舟工区約2・1キロメートルを平成7年度からそれぞれ工事に着手し、整備を進めてきたところであります。
 また、この区間の最大の難所となっている峠部の小倉山工区については、中山3号トンネル延長約1、800メートルについて平成9年度から着手したところであります。
 工事の進捗状況といたしましては、花巻市側の中山工区が今年度概成するほか、今後、小倉山工区や小倉・川舟工区について集中的な投資を行うこととしております。特に中山3号トンネルについては、国の重点施策である交流ふれあいトンネル・橋梁整備事業の認定を受け重点的な整備を行っているところであります。花巻-沢内間の交通は、一部1車線の現道を利用することになりますが、平成13年度には供用できるよう鋭意整備に取り組んでまいる考えであります。
 さらに、現道の未整備区間につきましても、西和賀地方や花巻市などとの交流や連携を促進し、地域振興に資する道路整備を引き続き進めてまいりたいと考えております。
   〔総務部長吉田敏彦君登壇〕
〇総務部長(吉田敏彦君) まず、岩手山火山防災マップを防災対策にどのように活用するかについてでありますが、県、市町村等の防災関係機関は、このマップに基づき、避難路や避難場所の確保、避難の指示や警戒区域の設定など、減災のための対策を講ずるとともに、地域の方々には、避難の方法、手段などをあらかじめ確認し、災害に対する心構えを持っていただこうとするものであります。
 次に、岩手山噴火対策防災訓練の目的と内容についてでありますが、県、岩手山周辺の6市町村と防災関係機関が一体となり、地域住民の参加協力のもとに、総合的かつ実践的な訓練を実施し、万一の際に、迅速な応急対策活動ができるよう、防災関係機関相互の協力体制の確立に資するとともに、地域住民等の防災意識の高揚を図ることであり、現在、その内容を詰めているところであります。
 なお、主な訓練項目としては、本部運営訓練として、通信情報連絡や職員非常召集、主会場となる松尾村では、火山灰、障害物の除去、土石流の流れを変えさせる堤防設置、交通関係訓練、住民への避難広報や誘導、さらには、避難所開設、運営訓練、また、人工衛星を活用したサテライトホーン、災害用伝言ダイヤルの運用訓練、防災ヘリコプターひめかみによる救出救助、ライフラインの復旧など、多岐にわたる訓練を検討しており、地域住民の参加をいただきながら、防災意識の啓発に努めてまいりたいと考えております。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) 水稲の刈り取り適期の指導と作柄についてでありますが、本年は、水稲にとって特に重要な7月中旬から8月にかけて低温と日照不足が続き、穂の数やもみ数が少なくなったほか、出穂期間が例年より倍もかかったことから、良品質米の確保のためには、刈り取り適期の判定が極めて大事になっております。このため、生産者が容易に圃場で判断できるよう、写真で示した刈り取り適期判定シート、これを作成し、配布したところであります。また、県内3地区で技術対策会議を開催し、地域別の刈り取り適期の確認、品質向上のための技術指導の徹底を図ったところであります。
 なお、8月27日から31日にかけての大雨・洪水により冠水被害を受けた水沢、一関、千厩地域につきましては、ヘリコプターによる穂いもち病の緊急防除を指導するとともに、農業改良普及センターを中心に、定期的な登熟調査に基づく、きめ細かな農家指導を行っているところであります。現在、刈り取り適期に入り、順次収穫作業が始まっておりますが、本年のような不順な天候の中で、圃場によっては品質の低下も懸念されますので、今後は、適正な乾燥調製や、粒ぞろいをよくするためのふるい目の使用などについて、関係機関、団体と連携し、指導してまいりたいと考えております。
 なお、今後の作柄につきましては、10月15日の調査結果を踏まえ再度公表される予定となっておりますけれども、現時点では作況指数が大幅に変動することはないものと見込んでおります。
   〔商工労働観光部長小野寺修君登壇〕
〇商工労働観光部長(小野寺修君) まず、雇用情勢についてでありますが、本県の7月における有効求人倍率は0・52倍と、全国平均よりも0・02ポイント上回ってはいるものの、14カ月連続して低下をしており、新規求職者が約6、000人と、前年同月比で20・9%増となっているのに対し、新規求人数は製造業を筆頭に、建設業、卸小売業の減少が著しく、前年同月比18・7%減となるなど、極めて厳しい状況となっております。
 また、来年3月の高校卒業予定者の求人状況につきましては、8月末現在、就職希望者6、027人に対し求人は9、310人で、求人倍率は1・54倍とはなっておりますが、県内就職について見ますと、希望者4、210人に対しての求人は3、448人で、倍率は0・82倍と、昨年同期の1・27倍と比較いたしましても大変厳しい状況になっております。
 さらに、雇用調整助成金につきましては、本年9月1日現在、指定業種が168と、前年同期に比べまして55業種増加となっております。本県におきましては、雇用調整を行おうとする事業主から提出されます実施計画の受理状況は、昨年度が年間で12件でありましたが、本年度に入り、業種的には鉄鋼業、木材・木製品製造業、衣服・繊維製品製造業と変わりないものの、件数では8月末現在39件と大幅な増加になっております。
 県といたしましては、このような厳しい雇用失業情勢に対処するため、国の総合経済対策の一環として盛り込まれた緊急雇用開発プログラムに基づき、特に厳しい雇用失業情勢にあります中小企業、中高年齢者、若年者に配慮するなど、積極的な雇用対策に努めているところであり、今後につきましても全力を挙げて雇用の開拓に努めてまいる考えであります。
 次に、いわて緊急経済対策資金の需要増大に対する所感についてでありますが、この制度資金は、変動する経済環境のもとで、中小企業がその円滑な経営活動をなし得るよう、資金調達の円滑化を図ることによって金融面から支援しようとするものであります。この資金が当初の予想を上回って利用されている背景といたしましては、御案内のとおり、本県における企業倒産の状況が昨年10月以降高水準で推移しており、本年9月までの状況を見ましても、負債総額では前年とほぼ同額であるものの、件数で2・4倍となっている状況にあること、また、個人消費や住宅建設などいずれの指標を見ましても県内経済が深刻な状況にあること、さらに、県が毎月実施している商工業経営動向調査におきましても、生産、売り上げが、昭和49年に本調査を開始して以来最低の水準にあることなど、県内中小企業はまことに厳しい環境に置かれていることが挙げられると考えております。特に中小企業の資金繰りにつきましては、長期にわたって厳しい状況にありましたが、平成9年5月から一層下降傾向となり、とりわけ本年2月から急激に悪化している状況にあります。したがいまして、長引く不況で、さらに資金を必要とする中小企業にとりましては、担保余力が低下していることもあり、無担保であるこの融資制度が借りやすい資金として利用され、その増加につながっているものと考えるところであります。今後におきましても、この制度の適切な運用に努めてまいる考えであります。
   〔企画振興部長武居丈二君登壇〕
〇企画振興部長(武居丈二君) 公営企業による宿泊施設事業の経営状況等についてであります。
 公営企業による宿泊施設事業は、住民に対する低廉で快適な保健、休養の場や、他地域から訪れる人々と住民との交流の場等の提供を行うことにより、住民福祉の向上を図るとともに、観光振興を初め、地域の活性化にも寄与する重要な役割を担うものとして、地域の実情と必要性に応じて設置されているものであり、基本的には公共の福祉の増進を目指しながらも、関係法令に基づき、会計独立の原則に沿って運営されているものと認識しております。
 本県において公営企業により宿泊施設事業を行っている団体は6市村1事務組合であり、7事業、10施設が経営されております。その経営状況を見ると、各事業とも利用客拡大のため営業活動などの経営努力を行っておりますが、住民ニーズの多様化や景気の低迷等もあって宿泊人員は減少傾向にあり、平成9年度の決算では、7事業のうち3事業が黒字、4事業が赤字の見込みであります。また、黒字が見込まれる事業についても一般会計から繰り入れがなされている状況にあり、総じて各事業とも厳しい経営状況にあるものと受けとめております。
 県におきましては、県内市町村の財政状況が厳しい中にあって、公営企業も市町村の行政改革等にあわせて、経営の健全化に一層努める必要があることから、経営状況ヒアリングや財務事務視察等を通じ、地域の実情に応じて、民間企業との役割分担も考慮しつつ、中長期的観点から経営の総点検を行い、その健全化や効率化を推進し、経営基盤の一層の強化を図るよう助言、指導しているところであります。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) 高齢者対策についてでありますが、県南地方の事例につきましては、ホームヘルパーの派遣や保健婦、民生委員の訪問、相談等が行われているにもかかわらず発生したものであり、まことに心の痛む、不幸な事件であっと存じております。
 お尋ねの老老介護の実態につきましては、平成8年度の県の実態調査によりますと、御家庭で介護を行っている方々の年齢構成の区分別割合は、65歳から74歳で約30%、75歳以上で約13%を占め、その多くは女性となっております。県といたしましては、家族介護者の負担の軽減を図るため、従来の在宅福祉サービスに加え、24時間対応のホームヘルプサービスや毎日通所型のデイサービス、特別養護老人ホームなどで夜間預かるナイトケアやショートステイの弾力的な運用による利用期間の延長など、きめ細やかな介護サービスの充実についても努めているところであります。このほか、家族介護者が介護知識や技術の習得などを図れるよう、特別養護老人ホームで実施されるホームケアの拡充や地域介護実習・普及センターの整備を行っているところであります。
 次に、県の市町村への対応でありますが、高齢者やその御家族が抱える各種の心配事や悩み事などについて、保健、福祉面から適切に対応するためには、福祉担当者が日ごろから住民の方々と接し、その方々の生活実態を把握することが極めて重要であると考えております。このため、市町村に対しましては、保健センターや24時間相談可能な在宅介護支援センターを中心として、民生委員や老人クラブ、ボランティアなどと密接な連携のもと、積極的な相談活動や訪問活動を行い、その住民の方々の実情の把握に努めるよう、市町村老人保健福祉担当課長会議などを通じ、機会あるごとに要請しているところでございます。
 今後におきましては、既に53市町村で導入されている高齢者世帯の安否確認、緊急時の対応のための緊急通報システムの普及拡大を図るほか、県民の方々にとって、より身近な場で介護に関してきめ細やかに対応できる相談体制を確保するため、今年度新たに制度化されました、職員1人でも設置可能な単独型の在宅介護支援センターの設置を推進するとともに、本県独自の施策として設置しておりますまちかど相談所529カ所が一層活用されますよう、その周知を図るなど、在宅介護支援体制の整備を促進してまいりたいと考えております。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕
〇教育長(大隅英喜君) 総合的なスポーツ施設整備についてでありますが、スポーツは、人間の心と体の健全な発達を促すとともに、健康で明るく、活力のある充実した生活を営む上で極めて重要な役割を果たしており、日常的なスポーツ活動から、レベルの高い競技会にも対応できる施設の整備など、年齢と体力に応じてスポーツに親しむことができる環境づくりを推進する必要があると考えております。インターハイ開催を契機として整備されている施設などは、単に当該市町村のスポーツ振興にとどまらず、本県の競技力向上や生涯スポーツの振興に大きく寄与してきているところであります。また、国体やインターハイを含め各種イベントは、これまで既存施設の有効活用や当該市町村におけるスポーツの振興と活性化を図る意味から、県内各地域のスポーツ施設で計画的に開催してきているところであります。一方、近年の著しい競技水準の向上に対応し、さらには、すぐれたトップアスリートの高度な競技レベルに触れることができる、より機能の充実した質の高い施設が望まれているところでもあります。こうしたことから、教育委員会といたしましては、施設整備の計画に当たっては、中長期的な観点に立った段階的な対応が必要であると考えており、県及び市町村、あるいは地域生活圏の役割分担、機能分担等を考慮しながら、豊かで潤いのある県民のスポーツライフを実現できるような環境づくりに取り組みたいと考えております。
   
〇副議長(吉田秀君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時42分 休 憩
   
出席議員(45名)
1番 斉  藤     信 君
2番 上  澤  義  主 君
3番 佐 々 木     博 君
4番 中 屋 敷     十 君
5番 佐 々 木  一  榮 君
6番 黄 川 田     徹 君
7番 小 野 寺     好 君
9番 千  葉     伝 君
10番 佐 々 木  大  和 君
11番 水  上  信  宏 君
12番 伊  沢  昌  弘 君
13番 大 久 保     豊 君
14番 田  村  正  彦 君
15番 須  藤  敏  昭 君
16番 藤  原  泰 次 郎 君
17番 伊  藤  勢  至 君
18番 高  橋  賢  輔 君
19番 渡  辺  幸  貫 君
20番 折  居  明  広 君
21番 船  越  賢 太 郎 君
22番 浅  井  東 兵 衛 君
23番 谷  藤  裕  明 君
24番 久 保 田  晴  弘 君
25番 瀬  川     滋 君
26番 長 谷 川  忠  久 君
27番 千  葉     浩 君
29番 三  河  喜 美 男 君
30番 村  上  恵  三 君
31番 村  田  柴  太 君
33番 菊  池     勲 君
34番 工  藤     篤 君
35番 菅  原  温  士 君
36番 小  原  宣  良 君
37番 吉  田  洋  治 君
38番 藤  原  良  信 君
39番 及  川  幸  郎 君
40番 那 須 川  健  一 君
42番 山  内  隆  文 君
44番 樋  下  正  光 君
45番 佐 々 木  俊  夫 君
46番 山  崎  門 一 郎 君
47番 菊  池  雄  光 君
48番 佐  藤  啓  二 君
49番 堀  口 治五右衛門 君
50番 吉  田     秀 君
欠席議員(2名)
43番 佐  藤  正  春 君
51番 藤  原  哲  夫 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後3時59分 再 開
〇副議長(吉田秀君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。水上信宏君。
   〔11番水上信宏君登壇〕(拍手)

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