平成10年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇4番(中屋敷十君) 長谷川忠久議員の質問に関連いたしまして、一般県道雫石東八幡平線、いわゆる奥産道問題についてお伺いしたいと思います。
 この問題につきましては、昨日の本会議におきましてもいろいろな視点から質疑が交わされたところでありますが、私としても、地元の大きな課題であり、また検討過程そのものにも若干の疑問を抱いている1人としてあえて質問をさせていただきます。
 先ほど長谷川議員が御指摘のとおり、人間が経済活動を営み続ける限り、自然を完全に保全するということは困難であり、人と自然との共生ということ自体、言葉の響きとは裏腹に現実の対応としてジレンマを感じるわけでありますが、私には、この奥産道問題そのものもジレンマに陥っているような感じがしてなりません。
 当該事業は昭和40年に採択され、その後、自然保護団体等の反対による工事の一時凍結など、紆余曲折を経ながら、平成7年の原生林破壊というまさしく信じられないような事件が起こるまでに約62%の事業の進捗を見ているところであり、私自身は、原生林破壊事件が起きなければ工事は計画どおり進められていたものと思うのであります。
 そこでまずお伺いいたしますが、県当局としては、原生林破壊事件が起きなければこの工事は計画どおり進めるつもりだったのか。それとも、自然保護や環境保全という観点から、随時工事計画を見直して事業を進める考えであったのか、この際明確に見解をお示し願います。
 私の地元である雫石町では、この奥産道問題のみならず、自然保護と開発という大きな課題を投げかけた例として、国見スキー場の開発計画がありました。国見スキー場開発計画の場合も、県のゴルフ場等大規模開発行為指導要綱の対象外であったにもかかわらず、県が単独で自然環境保全特別調査を実施し、非常にすぐれた自然が残されていることからスキー場開発は好ましくないとの結論に達したものでありますが、平成8年の2月定例県議会での自然保護を生かした形での地域の活性化対策についての私の質問に対し、知事は、生活向上の観点からはさらなる地域の開発、振興が期待されるところであるが、先進都市の反省から、自然に配慮し調和のとれた開発による地域づくりが重要であるとし、国見地区の活性化対策につきましては、自然保護を生かした形での地域の活性化を考えていくことが大切であり、地元の町や地域住民の方々の意向も十分尊重しながら、経済的な効果や地域特性も勘案して対応したいと答弁されております。私は、この知事答弁の中に、人と自然との共生の理念が集約されているような感じがしております。恐らく、私が質問した時点での人と自然との共生の理念につきましては、環境担当部局の考えが主体となっており、他の部局では、大変失礼ではありますが、それほど意識はしておらなかったものと考えております。
 国見スキー場開発問題で、県が単独で自然環境保全特別調査を実施し、これほどまでに人と自然との共生という課題が提起されたにもかかわらず、奥産道問題についても道路検討委員会なるものを設置し、対応されたことについていささか疑問を抱いております。
 県民の合意という考え方からすれば、一般県道雫石東八幡平線道路検討委員会の設置は必要であったかもしれませんが、土木部側でもっと人と自然との共生という視点に目を向けて、行政としての指導力を発揮し真剣に取り組んでおれば、あえて道路検討委員会を設置する必要はなかったものと考えますが、いかがでしょうか。
 今後、県民の行政ニーズがますます多様化する状況下にあって、重要な行政判断を下す過程において、すべからく、有識者からなる組織を設置して行政判断を下すことが行政のあるべき姿ではないように感じてならない観点から、あえてお伺いするものであります。
 また、8月20日に道路検討委員会から奥産道の整備のあり方に関する提言を受けたわけであり、その内容を見ますと、動植物や景観さらには地形、地質に関する特記事項を明らかにするとともに、これまでの事業実績の事実も掲げ、自然保護、環境保全、防災砂防、交通規制等の担当部局と連携し、総合行政のモデルケースとして問題点をクリアできるかを検討し、検討すべき課題として8項目を提示して結論として総合的に勘案し、本事業は、一時休止も含め慎重に対処されることが望ましいと結んでおります。
 私は、道路検討委員会の提言はそれなりに評価するものであり、また、委員各位の御努力には敬意を表するものでありますが、県土木部としては、これまで関係部局との連携という観点では、どのように対処されてきたのかお示し願いたいと思いますとともに、提言のあった検討すべき8項目については、技術面も含めて対応可能な事項であると判断されているのか、お聞かせ願いたいと思います。
 また、この奥産道に限らず、既存の整備された道路でも自然保護に配慮しなければならない道路が県内には存在するわけでありますが、今回の提言も踏まえて、今後の道路管理をいかに行おうとしているのか、お考えをお示し願います。
 いずれにいたしましても、道路を通すか中止するかの議論もさることながら、県民がひとしく自然保護、環境保全というものに留意するという基本的な意識が醸成されれば、多少のリスクは伴っても、人と自然の共生は図られるものとの考えから質問した次第でありますので、誠意ある回答を御期待申し上げ、関連質問を終わります。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 一般県道雫石東八幡平線、いわゆる奥産道についてお答えいたします。
 まず、原生林の破壊の事態が仮に起きなかった場合の工事の執行についてでありますが、これまで事業実施に当たっては、各年度ごとに自然公園法に基づき整備区間について協議し、自然環境保全対策を講じながら事業を実施してきたものであり、かかる事態がなければ、計画に基づき工事を執行してまいったものと考えられます。
 なお、本事業は、このたびの道路検討委員会における検討がなされなければ工事が長期間に及んでいることから、今年度から実施している岩手県事業評価制度の中で再評価の対象とされたものであります。
 次に、特別に委員会を設けず主体的に取り組むべきではなかったのかということでございますが、この奥産道については、過去において整備の是非をめぐり議論がなされ、自然環境との調和を図るため、整備計画の見直しを含め関係機関との協議調整のもとに事業執行を図ってきたところであります。しかし、極めて遺憾な事態を招いたことから、土木部として、再発防止のために全力を傾注して業務改善などに取り組んでいるところであります。
 なお、人と自然との共生については、個別のケースにより状況が異なり大変難しい問題でありますが、開発と自然保護を対立するものと考えるのではなく、両者がどのような形で両立することができるかを客観的、学術的な評価を得て、適時適切に判断すべきものと考えております。その意味で、各界の有識者の専門的見地からの自然環境などについての適正な評価は不可欠であると考え、さらに総合的な議論をいただくことが重要であり、委員会を設けたものであります。
 また、今後の事業の進め方については、事業の効率性、透明性などを確保する観点から、学識経験者などによる第三者の立場からの客観的な御意見をいただき、公正な事業の展開を図っていく必要があると考えております。
 次に、関係部局との連携についてでありますが、これまで奥産道の整備に当たっては、国立公園内の自然環境を把握し、建設計画に反映させるための調査検討を自然保護担当部局とともに行ってきたほか、事態発生後、復旧のための技術検討委員会や道路検討委員会においても連携を図ってまいったところであります。さらに、検討委員会の提言を受けて、今後、交通管理や観光、地域振興、さらには自然保護に係る担当部局と一体となって対応方針を検討していくこととしております。
 次に、提言のあった8項目についてでありますが、提言は、自然環境への影響を最小限とするようルートの変更を求めるなど、建設する場合の課題が述べられております。現在、ルートなどについては技術的には可能と考えておりますが、まだ調査検討の段階であり、早期に取りまとめたいと考えております。
 次に、この提言を受けて今後の道路管理のあり方についてでありますが、国立公園、国定公園、県立自然公園、さらには鳥獣保護区の特別地域を通過する県管理の国県道の延長は約180キロメートルと、全体の4・3%になっており、このほかにも、本県の道路の沿線には数多くの豊かな自然や歴史文化にはぐくまれた環境を有しております。これらの道路が、地域の生活や産業に密着したものとなっている状況から、安全で円滑な交通の確保とともに、それぞれの地域が有する自然環境等の特性を踏まえた適切な管理が重要と考えております。このため、そのような箇所においては、今後、道路ののり面の緑化や景観に配慮するなど、自然との共生を図った対策を検討してまいりたいと考えております。
〇議長(那須川健一君) 次に、谷藤裕明君。
   〔23番谷藤裕明君登壇〕(拍手)

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