平成10年9月定例会 第15回岩手県議会定例会会議録

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〇26番(長谷川忠久君) 政和会の長谷川忠久でございます。
 増田県政の集大成ともいうべき新しい総合計画の策定作業が大詰めを迎え、平成11年8月ころの計画策定を目指し、間もなく審議会の中間答申、そして11月ころには中間報告、計画原案の公表と仄聞しているところでございます。
 私は、昨年、釜石選挙区の先輩県議と地方のマスコミで対談をする機会を得ました。司会者は、増田知事と選挙を争った方でありましたが、心から増田知事を心配され、増田県政の特色は何かという問いの中で、ポツリと、知事にはキラリと光る言葉が欲しいと漏らされたのが、今も脳裏に焼きついています。
 増田知事は、ドリームランドいわてをキャッチフレーズに、環境、情報、ひとづくりなどを前面に出し、積極的に県政の推進を図っていることはだれもが認めるところであり、私もそうでありますが、大方の県民は、心温かく拍手を送っているのであります。しかし、環境、情報、ひとづくりなどは、他の都道府県政より積極的に取り組んでいるとはいえ、また、岩手の特性に立脚した環境対策、ひとづくり対策であったりしたとしても、増田知事独自の施策と言えないのではないか、ドリームランドいわてという言葉もわかるような気はするが、県民には漠然として、なかなか理解を得るのが難しいのではないか、ということでありました。
 御案内のとおり、地方分権時代を先取りし、三重、高知、大分など、巷間、話題になる都道府県は別といたしましても、北海道、東北各県においても、各知事はそれぞれに特色を出すことに懸命に努力をされているのであります。
 まず、北海道の堀知事は、時間がかかり過ぎている施策に、時という客観的な物差しを当て、再評価する仕組みとして時のアセスメントを提唱しています。また、青森県の木村知事は、福祉日本一、赤ちゃん日本一、日本一の橋の三つの日本一を中長期的課題として、県民所得、高卒者県内就職率、平均寿命の向上に努めております。さらに、宮城県の浅野知事は、地方分権のもとに、日本一の福祉先進県づくりを目指していることは、広く流布されているところでございます。また、秋田県の寺田知事は、秋田花まるっキャンペーンとして広域観光の推進を図るとともに、来るべき環日本海交流時代に向けた取り組みを進めております。さらに、山形県の高橋知事は、県庁体験モニターを委嘱し、職員と県民の理解を図っています。また、福島県の佐藤知事は、人づくり、くらしづくり、仕事づくり、基盤づくりなどであります。
 前述した司会者は、知事選でのキャッチフレーズに、県民の平均寿命を国の平均まで伸ばすことを公約にして戦いました。時のアセスメントを初め、各県の施策は、新しい総合計画に盛り込まれるものと思いますし、増田知事は、それらをまとめてドリームランドいわてを構築したいと考えていると理解をするところであり、さらにドリームランドいわては、県民に定着しつつあるとは思いますが、県民は、増田知事自身が策定する新しい総合計画にドリームランドいわてをどう肉づけされるのか、どう新しい息吹を吹き込まれるのか、注視をしているのでございます。県民にわかりやすく、さすが増田知事だと思うような、キラリと光る言葉で語りかけていただきたいのでございます。
 増田知事は、県政運営をよく株式会社に例えられ発言されておりますが、まさに岩手県株式会社のトップ経営者として、知事はどのような県政の経営理念を総合計画の中で表明したいのかを、まずもってお伺いをいたします。
 近年、県内においても超電導その他で顕著な成果をおさめ、世界に情報を発信しているところであります。私は、情報発信機能の強化を、新しい総合計画の中でも大きく取り上げなければならないと考えております。特にも、国際化を視野に入れた国家的、国際的な課題への積極的な取り組みを通じた本県の情報発信機能の強化が重要だと考えております。例えば、本県では今年度を環境創造元年と宣言し、具体的な行動の一つとして、ISO14001の認証の取得を決定したところでありますが、環境への取り組みをさらに発展させ、地球環境問題の解決に積極的に貢献していくため、国連の研究機関の誘致に乗り出すとか、情報系の民間企業との共同研究をコーディネイトするとか、環境関係の大規模な研究プロジェクトを構築し、岩手を環境研究と実践の一大メッカにしていくなどが必要ではなかろうかと考えております。
 国際化時代への対応とは、国境を越えて人や物、情報、文化、産業などの交流が深まり、それらに対応するばかりではなく、行政として国際的課題に積極的に役割を果たしていくことも、また真の国際化時代への対応だと私は思います。そして、環境、情報、ひとづくりも、国際化を視野に考えていかなければならないと思います。
 私は、これまでスーパーハブ空港の誘致を提言してまいりました。さきの予算委員会で、企画振興部長から前向きの答弁をいただいたのでありますが、新しい総合計画の基本方向について、中間答申骨子案・修正版を読ませていただき、行政もまた岩手の自然環境の特性をまだまだ理解し切れていないなとの思いを払拭し切れませんでした。岩手の大きな財産であると私は考えるのでありますが、県内の半分を占める北上高地は、日本でも有数の安定した地盤を有しているとの記述がないことでございます。
 スーパーハブ空港については多くを語りませんが、スーパーハブ空港のない国の発展は困難であるとする識者もいるところでございますし、北上高地の安定した地盤を活用すれば、航空機の着陸料が、海の埋立地や大都市に近い空港の10分の1で済むという識者もいるところでございます。
 岩手には、まだまだほかにはない貴重な財産は多いと思います。他の市町村について言及する知識は持ち合わせておりませんが、私の住む釜石だけでも、東京から北の本州では、掘り込み式港湾でない最も水深のある港湾がございます。たばこを吸っても構わない安定した坑道がございます。
 新しい岩手県のデザイン、地域のデザインを考える際には、岩手の特性、財産を誤ることなく正しくとらえ、それらの価値、有効性を最大限に活用しながら、国家的、国際的な課題の解決に向けた国家的プロジェクト、国際的プロジェクトに果敢に挑戦していかなければならないと思いますがいかがお考えでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、国における新しい全国総合開発計画と新しい県総合計画との整合性についてお伺いいたします。
 新しい全国総合開発計画、21世紀の国土のグランドデザインは、地域の自立の促進と美しい国土の創造を副題に、本年3月31日に閣議決定されました。21世紀の国土づくりの考え方については、地域の自立的発展を促すため、3大都市から地方中小都市まで重層的・複合的ネットワークを形成し、水平的なネットワーク構造にすること、四つの国土軸による多軸型の国土構造への転換を柱として策定されています。
 本県においても、北東北3県の連携、特にも観光コースの設定は緒についていますし、民間でも秋田県との横軸連携が動き出しています。しかし、本県は盛岡市を除き地方中小都市及び農山漁村で構成されており、さらに北上山地が参加と連携による広域的交流を阻み、重層的・複合的ネットワーク形成が成り立ちがたい現状にあるのであります。さらに、新しい国土軸についての対応は新しい総合計画でも明確に示されず、本県であれば北東国土軸になるのでありますが、北東国土軸の中でどう連携し、どう自立していくのか、戸惑うばかりではないかと思います。
 県は、21世紀の国土のグランドデザインと新しい県総合計画との整合性をどう図り、市町村にどう指導していくのか、あわせてお伺いをいたします。
 次に、自然環境との共生について伺います。
 県が本年3月に制定した岩手県環境保全及び創造に関する基本条例は、前文の1節で、私たちは、まさに人間が環境の中で生かされているものであり、その環境が人間のみならず、すべての生命の母体であることを深く認識し、環境の保全と創造に向かって、地域からの一歩を力強く踏み出さなければならないとうたっておりますが、人間は、地球に大きな負荷をかけて生きていることもまた厳然とした事実であります。廃棄物問題、環境ホルモン問題や奥地産業道路、大規模林道等の建設事業とのジレンマなど、自然環境と人間との共生は、本県においてもより身近な問題として存在しているところでございます。現実的な問題として、人間が経済活動を営み続ける限り、自然を完全に保全し続けることは不可能なことであります。21世紀、環境の世紀を迎えても、環境と開発は引き続き重要なテーマとなり続けるものと思いますが、新しい総合計画の中で、人間と自然環境との共生についてどのように位置づけようとしておられるのか、まずもってお伺いをいたします。
 次に、自然環境との共生に関連し、いわゆる奥産道問題について伺います。
 県は、この問題が発生して以降、工事そのものを一時凍結し、有識者など第三者を構成員とする一般県道雫石八幡平線道路検討委員会を設置し、去る8月20日に同委員会から、今後の奥産道の整備のあり方に関する8項目にわたる提言を受けるとともに、9月11日には、この検討委員会の議事録を公表されたところでございます。この公表された議事録を見ますと、委員会では、建設事業の継続そのものに否定的な意見がある一方で、生活路線としての視点から見るとぜひ必要、あるいは、この地域は観光が唯一、将来展望が残る産業などという事業推進の必要性を述べる意見があるなど、委員会の中にも多様な意見があったことがうかがわれるところでございます。
 いずれ、この問題に対する県としての方針について、知事は昨日の一般質問で、11月までには結論を出したいと答弁されましたが、私は、土木部と並び、この問題についての県としての対応方針の決定に関して、環境を担当する部局として大きなかかわりがあると思われます生活環境部の御見解をお伺いいたしたいと思います。
 次に、介護保険法実施に伴う諸課題についてであります。
 本件につきましては、多くの議員からたびたび質問されていますが、1年半後に発足となる緊急課題でありますので、あえて私からも質問をさせていただきます。
 介護保険の本県の基盤でもあります岩手県高齢者保健福祉計画の進捗状況でありますが、在宅福祉サービスであるホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイは、数年前まで全国でもかなり高い位置にありましたが、他都道府県の頑張りで毎年地位を下げつつあります。そして、今では中程度に位置しているのではないか、介護保険の実施までにさらに地位を下げるのではないかと危惧しているところであります。その他の在宅福祉、在宅介護支援センター、高齢者生活福祉センター、老人訪問看護ステーション等は進捗率50%に達せず、今後の動向が心配されるところであります。また、デイサービスセンターにおいて、施設は充足されたとしてもリハビリなど、内容が設置目的にかなうものになるのか、大いに疑問でもあります。また、進捗率は全体で100%を超えたとしても、ある地域では150%で、ある地域では50%であれば、本当に施設やサービスが整備されたとは言えないのではないかと思うのであります。
 保険料も、サービスの提供のあり方によって地域で差が出てくると聞いています。保険料の70%とか50%とか、徴収できない市町村も出てくるのではないかと思っていますけれども、2000年4月までになさなければならない本県の課題は何なのかについて伺います。
 また、若年障害者の対策については、どのような施策が考えられているかについてもあわせてお伺いをいたします。
 次に、国庫補助金の一般財源化に伴う県の対応等について伺います。
 県の財政が厳しさを増す中、ここ数年、教育、保健・福祉を中心に国庫補助金の一般財源化、すなわち地方交付税交付金に算入されるようになってきています。その額、平成8年から本年までの3年間で、本県への影響額は23事業、4億5、000万円に上っているところであります。この傾向は、地方分権時代を迎え、ますます強まるのではないかと思いますが、この対応はどう考えておられるか伺います。
 一般財源化されるということは、行政の裁量により、今までどおり事業を継続しても廃止してもよいということになると理解するわけでありますが、事業の中には大変重要なものもあります。岩手の特色を出して事業執行をすることがもちろん重要でありますが、堅持しなければならない事業、廃止してもよいと考える事業があると思いますが、そうした選択に当たって基本的な考え方についてもあわせてお示しを願います。
 次に、三陸鉄道についてお伺いいたします。
 私は去る9月18日、八戸市で開催されました三陸沿岸国道並びに鉄道完遂促進協議会に出席してまいりました。この席で、青森県議会の議員は、久慈から仙台まで乗りかえなしでつなぐ三陸鉄道仙台直通乗り入れ列車、いわゆるリアス・シーライナーについて大きな関心を寄せておりました。この夏のリアス・シーライナーの運行結果につきましては、昨年の16日間から1週間延長し23日間で、延べ乗車人員は1万2、500人を超える結果であったと聞いております。
 一方、三陸鉄道区間での延べ乗車人員はほぼ昨年並みでありましたが、1日当たりの乗車人員は昨年度よりやや減少しているようであります。この原因として、天候不順、景気の低迷などの影響があったものと考えられるのでありますが、かつてJR東日本が、昭和63年7月から8月にかけて、仙台-八戸間に直通電車として三陸パノラマ号を延べ16本運行したことがありましたが、このときの乗車率は余り芳しい結果ではなかったと聞いており、その原因として、私は輸送距離に対して所要時間がかかり過ぎていることが最大の要因ではないかと考えているところでございます。
 三陸鉄道との比較を行うため、日本海沿岸を走る羽越線を例にとりますと、羽越線は秋田-新津間270キロ余りを3時間11分で結んでおります。一方、三陸鉄道は、さきの仙台久慈直通列車で比較しますと、仮に直通であったとしても八戸線を加え、八戸-気仙沼間は270キロ余りを6時間30分ほどでつなぐこととなり、2倍以上の所要時間がかかる計算となります。
 御承知のとおり、これらの路線は、三陸海岸沿線住民の悲願であった三陸縦貫鉄道の一部を形成する路線として、大正11年に施行された鉄道敷設法により予定線として定められて以来、幾多の変遷を越えて、昭和59年4月1日、全国初の第三セクターとして三陸鉄道が開業し、全線がつながったのでございます。沿線は豊富な漁業資源、観光資源に恵まれながらも、交通の不便さにその開発がおくれがちでありましたが、三陸鉄道の全線開通により、点の観光から線の観光、さらには面の観光へと飛躍的に観光客が増加し、地域の観光開発に大きく貢献するとともに、通勤、通学、通院、買い物などの地域住民の生活路線として重要な役割を担い、三陸地方の連携、交流、地域開発に大きく貢献しているのであります。
 高速交通時代を迎え、地域住民の生活路線としての役割に加え、羽越線より沿線人口の多い三陸縦貫鉄道は採算性の向上と沿岸地域の振興のため、三陸鉄道沿線市町村から仙台や八戸への高速交通アクセスを図るとともに、気仙沼線と仙石線か東北本線とを結ぶ短絡線の早期建設を要望する必要があると存じますが、いかがでしょうか。
 次に、三陸鉄道の資産譲渡問題についてでありますが、本問題については、日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律案が、現在、臨時国会で審議中であり流動的でございます。しかし、法律案では、国鉄清算事業団は本日でありますが、平成10年9月30日付で整理され、三陸鉄道等第三セクターへの貸付資産は、平成11年度末までに無償譲渡できること、平成12年度以降に貸し付けが及ぶ場合は、無償から有償に転換されるなど明記されております。譲渡を受け入れた場合、登録免許税や固定資産税等の税負担や、大規模な事故や災害発生時の会社負担が多額になるおそれもあり、三陸鉄道株式会社だけでは対応できなくなる可能性を有しています。
 県は、昭和56年8月21日の当時の中村知事と塩川運輸大臣とのトップ会談での確約事項もあり、現状での維持継続を要望しています。しかし、法律案が通過成立した時点では、結論は待ったなしであります。平成11年度末までに結論を出し、無償譲渡を受け入れざるを得なくなると思うのでございます。また、知事は、沿岸の交通網として、国道45号、三陸縦貫自動車道と三陸鉄道の三つを考えられているようでございますし、新しい総合計画の中間答申でも、循環型社会の創造の中で、県民へのメッセージとして公共交通機関の利用を呼びかけておられます。
 このように、県も三陸鉄道の重要性を認識されているようでありますが、現状の三鉄経営や法律の成立を考えますと、三鉄経営の破綻、そして沿岸部の交通網、循環型社会の創造が大きくつまずくのではないかと危惧されるところでございます。そして、この解決は、三陸鉄道株式会社と沿線自治体だけでは余りにも重荷となるものであり、県が何らかの関与をしなければならないと考えますが、いかがでしょうか。
 あわせて、無償譲渡の受け入れを議決済みの野岩鉄道、阿武隈急行、秋田内陸縦貫鉄道の関連各県はどう対処されようとしているのかもお伺いをいたします。
 次に、港湾の整備についてお伺いいたします。
 本県の沿岸地域は、古くからそれぞれの地域の主力企業と港湾が密接に関連しながら、地域の活力となって発展してまいりました。しかしながら、重厚長大型産業から軽薄短小型への産業構造の変化により、これら主力企業の地域からの撤退、縮小など、地域を取り巻く環境が大きく変化しているところであります。このような中で、地域としては危機感を募らせながらも、地域活性化に向けて民間・自治体一体となり港湾物流の活発化に努力をし、その成果も徐々に各港で出始めているところであります。しかし、抜本的に港湾の利活用を促すためには、内陸部との交通網の整備と、よりマクロの視点で港湾を見ること、そして県内4港の特性を生かした整備が必要であると思います。
 先ごろ、東北横断自動車道釜石秋田線の東和-花巻間がめでたく着工の運びとなりましたし、宮古-盛岡間高規格道路、三陸縦貫道路も整備が進むものと思われます。
 南米、オセアニア、アジアの発展途上国の港湾インフラは急速に整備されつつあり、我が国もエネルギー・穀物等、バラ積みの大型船へ対応するために、従来のパナマックス船対応のマイナス13メートル岸壁より大水深の岸壁整備も必要となってくるのではないでしょうか。フェリー・コンテナ船、バラ積み船等、多様な船舶を対象に県内4港が競合することは得策ではなく、4港の特性を生かした港湾整備が、今必要なのではないでしょうか。
 港湾事業をめぐってはさまざまな意見はありますが、海洋国日本では、将来にわたって港湾の意義は薄れることはないと思います。今緊急の課題は、先見性のある港湾整備、個々の港の特徴を生かした質の高い港湾の整備であると思います。
 そこで知事にお伺いいたしますが、今後の港湾整備についてどのようにお考えなのかお聞かせをいただきたいと思います。
 以上をもちまして私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 長谷川忠久議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新しい総合計画における県政の運営理念についてのお尋ねでございますが、私は、新しい総合計画の策定に当たりまして、岩手は新たな時代のフロントランナーとなり得るという信念のもとに、本県の発展可能性を十分に引き出すことに全力を傾注して、真に豊かな暮らしが実現できるような、世界に通ずる新しい岩手づくりを目指してまいりたいと考えております。
 こうした岩手づくりを進める上で最も重要なことは、県民一人一人が改めて自分たちの暮らしや地域を見つめ直して、いわば岩手地元学とも呼べる取り組みを県内各地域で実践をして、みずからの夢や地域のために誇りを持って何をなし得るかを考え、そしてみずから行動していくことであると、このように考えております。このため私は、民間と行政などのさまざまな垣根や壁を取り払い、岩手に暮らす人々がお互いにしっかりと手を携え、それぞれの目標に向かって着実に前進する夢づくり県政を積極的に推進してまいりたいと考えております。
 特に、これからの行政は、地域経営の視点を強く意識して、人材や財源を最大限に活用しますとともに、経営感覚を持ち、県民が望む質の高い行政サービスを社会情勢や時代の変化に対応し的確に提供していくことが求められてまいります。また、中央や東京の目で見た既成の価値観や物差しにとらわれることなく、岩手を舞台としながらも、世界に通ずる本物の価値観、これを私は岩手スタンダードと呼びたいと思いますけれども、そのような価値観を確立していかなければならないと考えております。そして同時に、地域の人々が時代を越えて変わらぬ地域のよさを再発見し、ありのままの岩手の豊かな環境や人々の心情、風土などを大切に育てる美しい岩手づくりを進めていきたいと考えておりますが、このことは、120年ほど前に東北を訪れましたイギリスの女性旅行家イザベラ・バードが感動した我々の心のふるさとそのものでございまして、新しい次の全国総合開発計画でうたっております庭園の島、いわゆるガーデンアイランズ構想ですが、この庭園の島にも通ずるものであると、このように考えております。
 ただいま申し上げましたことは、私が新しい総合計画に盛り込みたい県政運営理念の一部でございますが、現在、新しい総合計画につきましては、総合計画審議会におきまして審議をいただいているところでございますので、中間答申以降、総合計画の策定作業の中で、以上のような考えを反映させてまいりたいと考えております。
 次に、国家的・国際的プロジェクトへの取り組みについてでございますが、21世紀における岩手の発展可能性を考えました場合に、時代の潮流を踏まえつつ、本県の有しておりますすぐれた地域の特性や資源をしっかりと把握して、それを生かしていくことが必要であると考えております。私は、21世紀の幕開けは、本県の持つこうした潜在可能性を存分に発揮する絶好の機会になるものと認識をしておりまして、新しい総合計画の策定に当たりましても、岩手から全国あるいは世界に向けて岩手のすばらしさを発信してまいりたいと考えております。
 また、その際特に留意したいのは、グローバリゼーションやボーダレス化が進展をしてそれぞれの地域の個性の発揮がますます重要となる中にありまして、この岩手が、地球社会や我が国の一員としていかに貢献していくかということでございまして、このことによって、岩手自身がさらに磨かれていくことにもつながることになるわけでございます。
 新しい総合計画におきましては、このような視点を踏まえ、今後各種のプロジェクトを検討していくこととなるわけですが、いずれのプロジェクトにつきましても、岩手というこのフィールドにおいて、広大な県土、豊かな環境、多彩な産業の展開や技術の蓄積などを生かしながら、これらを内外の人、物、情報と結びつけることによりまして、国全体や国際的な視点に立ったプロジェクトとして大きく花開かせることができるように果敢に挑戦してまいりたいと考えております。
 次に、新しい総合計画における人間と自然環境との共生の位置づけについてでございますが、21世紀は、いわば環境の世紀でございまして、人々の暮らしから産業の仕組みに至るまで、経済社会のシステムのあり方そのものが環境を価値観の中心に据える方向に転換しつつありまして、新しい総合計画におきましても、環境を最も重要な視点の一つとして位置づけてまいりたいと考えております。
 もとより、人はその営みを通じて、古来より自然の環境の中ではぐくまれ、自然とともに生きてきたわけでございます。一方では、地域社会の人と人とのさまざまなつながりは、基本的に意思や感情の伝達によって成立し、これらを取り巻いて社会的な環境をつくり上げております。このように、人と環境はそれぞれ相互に働きかけ、生かし生かされる関係、すなわち共生の関係にございまして、このような関係が過去から現在へ、そして現在から未来へと引き継がれていくものと考えられるわけでございます。したがいまして、新しい総合計画におきましては、時代の流れを意識する中で、自然と共生し循環を基調とする社会を目標とする社会の一つに掲げ、その中で、参加と協働による環境に優しい地域社会の実現や、人と自然がともにある環境の保全、循環型社会の創造についての具体的な取り組み方向を明らかにしてまいりたいと考えております。
 次に、三陸鉄道の借受資産の譲渡問題についてでございますが、昭和59年に県と関係市町村が中心となりまして、全国初の第三セクター方式により、沿岸地域住民の長年の悲願でございました三陸鉄道が開業されましたことは御案内のとおりでございます。その後、沿線住民の方々の日常の足として御利用いただきまして14年を経過いたしたわけでございますが、最近におきます三陸鉄道の利用状況を見ますと、マイカー利用の増大や少子化などにより乗車人員の減少が続いておりまして、経常損益では、平成6年度から4年連続して赤字決算となるなど、厳しい経営環境に置かれているところでございます。
 このような状況の中で、旧国鉄の長期債務処理策の一環といたしまして、国鉄清算事業団から鉄道資産の譲渡を強く要請されているわけでございますが、仮にこの譲渡を受け入れた場合には、固定資産税や、また災害発生時の復旧費用の負担が新たに発生するわけでありまして、会社経営に深刻な影響を与えることとなるわけでございます。このため県では、国への統一要望などにおきまして、無償貸し付けの継続を粘り強く訴えているところでございますが、運輸省、そして国鉄清算事業団の回答は非常に厳しいものと、このようになっております。現在、国会で審議中の日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律案につきましては、残された審議日程との関係から、今会期内での成立はいまだ不確定な状況にあると、このように伺っておりますが、今後法律が成立した場合には、鉄道資産の無償貸し付けまたは無償譲渡を受けることができる期間が平成11年度末までとなることから、関係法案の動向を踏まえまして、沿線市町村、会社とともに、今後の対応について話し合いを進める考えでございます。
 次に、港湾の整備についてでございますが、港湾は、海域と陸域の結節点にございまして、人的・物的交流の場として、県民生活の向上はもとより、産業活動を支える重要な社会資本でございます。本県の交通体系の状況を見ますと、東北横断自動車道や三陸縦貫自動車道などの高速交通網の整備によりまして、沿岸地域、そして内陸部からの港湾へのアクセスの飛躍的な向上が見込まれるところでございます。また、宮古港におきましてコンテナ航路の定期化などに見られますように、それぞれの港におきまして港湾物流の新たな展開が進んでいることなど、港湾を取り巻く状況が変化してきております。昨今、港湾を含めまして公共事業に対しましてのいろいろな議論があるわけでございますが、港湾の整備・振興は、岩手県にとって、特にも本県の沿岸地域にとりまして大変重要な課題であると、このように認識をしております。大船渡港にありましては、平成4年度の計画改訂におきまして、工業集積度の高い内陸部を背後圏とした県南の物流拠点港湾として位置づけまして、昨年度からその整備に着手をしているところでございます。また、釜石港におきましては、湾口防波堤の完成や仙人峠道路の整備に伴いまして、マイナス11メートル岸壁の整備を促進するとともに、不足しているウォーターフロントの整備などを盛り込んだ計画改訂を本年度予定しているところでございます。
 他の港湾につきましても順次、社会経済の状況の変化に伴う将来像を見きわめながら計画改訂の検討を行いまして、それぞれの港湾の特色を計画に反映しながら、今後とも一層効率的そして効果的な事業実施に努めていく必要があると、このように考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔企画振興部長武居丈二君登壇〕
〇企画振興部長(武居丈二君) まず、21世紀の国土のグランドデザインと新しい総合計画についてでありますが、今回の全国総合開発計画は、従来までとは趣を異にし、計画の中に将来のビジョンやそれを実現する政策を明確に位置づけ、地方もそれに歩調を合わせ行動していくものではなく、それぞれの地域が将来目指す方向の投影が国のビジョンとしてまとめられたものと考えているところであります。
 本県におきましては、既に全国総合開発計画を先取りする形で、地域主権社会の実現に向けた民間と行政の協働のシステムづくりや、北東国土軸の形成の展望に立った北東北3県連携など、県の枠を越えたさまざまな連携・交流に取り組んできたところであり、こうした取り組みは、策定中の新しい総合計画の中に位置づけてまいりたいと考えております。
 また、全国総合開発計画との整合性に配意しつつ、県内外のさまざまな圏域間の交流・連携を一層活発化し、それぞれの地域の発展可能性を切り開くため、北東国土軸や地域連携軸などに包含され、人や物の大きな流れを生み出す、いわゆる県土軸の形成や、分野や地域・地形の壁を越えて情報が流れる多層型の地域間ネットワークの構築などにつきましても、総合計画の中に位置づけてまいりたいと考えております。
 なお、こうした施策の推進に当たりましては、地域の先端行政を担う市町村に期待するところが極めて大きいことから、その自主性を尊重し、各市町村との連携の強化を図りながら、効果的な施策が展開できるよう努めてまいりたいと考えております。
 次に、三陸鉄道についてでありますが、まず、三陸鉄道沿線市町村から仙台及び八戸への高速交通アクセス及び気仙沼線と東北本線を結ぶ短絡線の建設要望につきましては、青森、宮城、岩手3県の県議会議長、知事等によって構成される三陸沿岸国道並びに鉄道完遂促進協議会を通じて、いわゆる三陸縦貫鉄道を形成するJR八戸線、山田線及び大船渡線の軌道強化とスピードアップ、気仙沼-仙台間の増発並びに気仙沼線と東北本線を結ぶ新線、いわゆる短絡線の建設について、運輸省初め国の機関並びにJRに要望しているところであり、青森、宮城両県と連携を図りながら、実現に向けた要望活動を継続してまいりたいと考えております。
 次に、資産譲渡に係る関係各県の対応についてでありますが、全国に37社ある第三セクター鉄道のうち、現在でも鉄道資産の無償貸し付けを受けている会社は4社のみであり、三陸鉄道以外の野岩鉄道、阿武隈急行及び秋田内陸縦貫鉄道の3社は、いずれも6月の株主総会で無償譲渡の受け入れを決めております。
 また、資産譲渡受け入れ後の関係各県の対応についてでありますが、福島、栃木両県を運行している野岩鉄道におきましては、譲渡による影響にも増して、現状での会社運営を健全な状態に維持するための支援策を会社、県、沿線市町村で検討を行っている状況であります。また、阿武隈急行、秋田内陸縦貫鉄道におきましては、会社と沿線市町村で支援策を含めた協議を行っている状況であると承知しております。
 なお、本県におきましては、他の3社と比べ三陸鉄道は鉄道施設が比較的新しく、またトンネル、橋梁が多いため、固定資産税が多額になるという事情があることから、国等に対して無償貸し付けの要望を継続してきているところであります。
   〔生活環境部長村上勝治君登壇〕
〇生活環境部長(村上勝治君) 奥地産業開発道路、いわゆる奥産道についてでありますが、十和田八幡平国立公園の網張温泉と松川温泉とを結ぶ奥産道は、昭和40年10月に、国において自然公園法に基づく公園計画及び公園事業の決定がなされ、自然公園の利用や地域振興を図るべく、県によって建設が進められてきたところでございます。その後、奥産道工事に関連した植生破壊の発生を契機といたしまして当該道路についての議論が高まったため、平成9年5月から、一般県道雫石東八幡平線道路検討委員会において、今後の道路整備のあり方について検討が行われ、この8月に提言が出されたところであります。
 自然公園法では、すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることを目的として掲げておりまして、生活環境部といたしましては、十和田八幡平国立公園の特別地域内である当該地域のすぐれた自然環境を適正に保全しつつ、利用の増進を図ることができるかどうか、十分に検討されることが必要と考えております。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) 介護保険制度の実施に伴う課題についてでありますが、この制度は、できる限り居宅において高齢者等の希望を尊重した総合的な介護サービスが安心して受けられる仕組みを目指しており、制度の施行に向けて、県民の理解や認定審査体制の確保、地域の介護ニーズに適切に対応した介護サービス基盤整備、市町村における安定的な保険財政運営の確保などが主要な課題と考えております。
 このため県におきましては、市町村と連携しながら、住民説明会や各種シンポジウムの開催などにより、県民の制度への理解に努めるとともに、市町村における公正かつ公平な認定審査体制を確保するため、認定審査員の研修等を実施しながら、本年度全市町村において実施されております試行的な介護認定の支援を行っているところであります。
 また、介護サービス基盤の整備につきましては、県高齢者保健福祉計画の目標達成に向けて、ホームヘルパーの確保や老人保健施設、デイサービスセンターなどの整備を進めているところであり、今後におきましても、民間サービスの導入や整備のおくれている地域への重点的な支援を図りながら、適切な介護サービスの確保に努めてまいりたいと考えております。
 さらに、市町村に対し、保険料率の算定の基礎となる介護保険事業計画の策定や保険料率の設定等について、適切な助言等をしていくこととしております。
 いずれにつきましても、介護保険事業の準備に当たっては、市町村と一体となって進めてまいりたいと考えております。
 一方、介護給付の対象とならない、いわゆる若年障害者の方々につきましては、現行の新岩手県障害者福祉行動計画に基づき、現在対策を講じておるところでございますが、これを見直し、介護給付と遜色のないサービスとなるよう、現在検討しているところであります。
   〔総務部長吉田敏彦君登壇〕
〇総務部長(吉田敏彦君) 国庫補助金の一般財源化についてでありますが、本年5月に閣議決定された地方分権推進計画によりますと、国と地方公共団体を対等・協力の関係に移行させていくために、相互の役割を見直し、機関委任事務制度の廃止を初め、地方への権限委譲や必置規制の整理合理化等を進めるとともに、国と地方の財政関係についても基本的な見直しを行うこととされております。
 お尋ねの国庫補助負担金につきましても、事務事業の内容等を勘案し、地方公共団体の事務として同化・定着・定型化しているものや人件費等に係る補助金、交付金等については一般財源化を進めることとされております。これらの内容は、行財政運営の簡素化、効率化に資するとともに、地方公共団体の自主性、自立性を高めるものであり、基本的には評価できるものと考えております。
 しかしながら、国庫補助負担金が一般財源化された場合にありましても、引き続きその事務事業の実施が必要な場合には、地方財政計画の策定等を通じ、財源を明確にし、所要の一般財源が確保されることが極めて重要であると考えております。したがいまして、当該一般財源化が、単に地方への負担の転嫁となることのないよう、国に対して強く要望してまいる必要があると考えております。
 また、一般財源化された事業の実施に当たりましては、それぞれの事業についてその必要性を十分検討するとともに、不断に評価を行いつつも、県民福祉の維持・向上を基本としながら、最小の経費で最大の効果を上げるよう努力してまいる考えであります。

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