平成10年12月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇4番(中屋敷十君) 吉田洋治議員の質問に関連いたしまして、一般県道雫石東八幡平線、いわゆる奥産道の工事再開を県が断念したということにつきましてお伺いしたいと存じます。
 報道によりますと、去る11月18日の記者会見において、知事は、奥産道の工事再開を断念した旨を発表されたようでありますが、私は、工事の継続か断念かという問題とあわせ、今回の断念の結論に至るまでの県の手順について、甚だもって議会を軽視したやり方ではなかったかという憤りを感じまして、この奥産道の地元議員という立場から、吉田洋治議員の質問と一部重複する点があるかもしれませんが、関連質問させていただくものであります。
 まず、議会事務局から送付のあった知事の記者会見記録を拝見いたしますと、さきの道路検討委員会からの提言を受けて土木部が検討した三つの対応案のうち、ケース3を前提に検討を加えて、先ほども御答弁あったわけですけれども、投資規模が莫大であること、観光あるいは地域振興の観点で効果が今一つ明確でないこと、また交通安全上も若干の問題が生ずること、そして何よりも自然と共生する新しい暮らし方や、21世紀に通ずる新しい価値観を創出するため、ストップすべきものと判断したということであるようでございますけれども、私には知事の自然保護や環境保全に対する並々ならぬ決意も理解できますし、私とても同じ考えを持つ者でありまして、仮定の話で恐縮でございますけれども、今現在、この奥産道が道路整備計画に初めて持ち上がったということであれば、私も整備には反対の立場という考えをとったかもしれませんけれども、この工事の継続性や進捗状況、さらには何ゆえに平成8年からこの工事を凍結しなければならなかったかということを考えた場合、この道路整備に大きな期待をかけていた地元住民、いろいろ聞きましたけれども、理解に苦しむという声も多いことから、知事が工事再開を断念するという結論に至った経緯や、基本的な考えをもう少し具体的にお示し願いたいと、かように思います。
 また、観光事業者を中心にして、この奥産道の早期整備を望んでいた地元住民には、あれほど積極的に知事、県政懇談会とか特定課題懇談会等に積極的に取り組まれて、地域住民との対話を進められてきておりますけれども、何ゆえ今回の奥産道問題について地域住民の声を直接聞かなかったかという声があり、できれば、直接この問題について知事からお考えを聞きたいという地元地区民の要望もございますものですから、知事はこのことをどのように考えられておりますか、その対処方針をお聞かせ願いたいと思います。
 次に、大変失礼な質問になるかもしれませんが、この奥産道の工事再開の断念について、知事は再考するお考えはあるかどうかということを確認したいと思います。
 恐らく、今後、建設省等国の関係機関や地元雫石町や松尾村と、今後の対応策について具体的な協議、調整に入ると思いますけれども、万が一、先ほども答弁あったんですけれども、国との調整が難航して補助金の返還や、例えば二つの県道としての道路関連が認められないといったようなケースが生じた場合でも、知事は不退転の決意でこういう中止、断念という形で臨まれるのか、その点も御見解をお示し願いたいと存じます。
 それから次に、今回の工事再開の断念という結論に達するまでの県議会への対応についてお伺いしたいと思います。
 この奥産道問題については、過去いろいろ一般質問や決特、予特、さらには常任委員会等で大いに議会側と当局側で議論してきたところでありますけれども、道路検討委員会における提言や公聴会の開催方法、いろいろとそれなりに県当局からは事前、事後の違いはあっても説明があったところですけれども、なぜ今回の工事再開の断念という判断が、12月定例会の招集日ですよ、それにもかかわらず、本会議終了後も一切の説明がされなかったのかということでございます。
 私は、知事が記者会見を予定したその日の朝の新聞で、工事中止という記事を目にしました。事前に当局から説明も何もなかったわけですから、当然、整備に期待をかける地元住民からは、どうなっているんですかという問い合わせもありましたけれども、いやいやと、知事の記者会見前ですから、これは多分推測記事であろうというふうに私は対応いたしました。そういう形の中で、ところが記者会見が終了した時点においても、議会に対して一切の説明、報告がなされなかった。いわんや、本会議が終了した時点においても何の説明もないと、記者の方々から、地元議員としてどう思いますかと言われても、対処する方法がないわけですよ、実際の説明がないということはですね。ただただ、立腹するのみという状況でありました。このことは、議会軽視とは言わないんですか、どうなんですか。県当局は、このように県民世論を二つに、二分するような重大な課題に対して判断を下したとき、議会側はこういうときは報道機関の媒体を通じて知りなさいよということなのか、それとも、直接担当部局に行って聞きなさい、聞きに来なさいということなのか、ちょっと私は情けないような状況でございました。少なくともこういう大きな判断を下したときには、会派代表なり所属常任委員会の委員なり、今、直接課題を抱える地元議員への事前説明はあってしかるべきではないんでしょうか、いかがでしょうか。また、関係する、例えば松尾村、雫石町、どのようにその日速やかに対処されましたか。どのように対処されたか、その辺もお聞かせ願いたいと、かように思います。
 いずれにいたしましても、知事が苦渋の選択の結果、工事再開を断念したということでありますけれども、詳しい、より具体的なことにつきましては、決算特別委員会や常任委員会で議論を交わすということで、今回この関連質問を終わらせてもらいたいと思います。
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 一般県道雫石東八幡平線、いわゆる奥産道の工事再開断念に至る経緯についてでございますが、先ほどの吉田洋治議員への御答弁につけ加えて申し上げますと、土木部におきましては、道路検討委員会よりの提言に対しましての対策や県民からの意見などを踏まえまして、この間種々検討を行ってまいりました。その結果、3種類の比較案を出したわけでございますが、自然環境を考慮いたしますと、この検討委員会の提言を満足する可能性があるものは、ケース3の長大トンネルしかないと、このように判断をしたところでございます。
 しかしながら、この案によりますと、交通安全上も若干問題が生じるのではないかとの懸念--これはカーブの問題ですとか勾配の問題等もございます。また、工事費で67億円と、現計画に比較をいたしまして倍以上になりますことから、こうした投資に見合う観光を主体とする地域振興上の効果を定量的に示す方法が現在確立されていないことなど、県民の御理解をいただくことが困難であると考えまして、この工事の再開を断念したものでございます。さらに、この結論に至りました背景には、近年の環境問題に対する県民の皆様の考え方や意識の変化が確実にあると考えまして、そのような時代の流れを意識したところでございます。今後は、岩手県としてこうしたすぐれた自然環境を積極的に保全していくことを行政の施策として打ち出していくべきであると考えまして、最終的な判断に至ったものでございます。
 次に、地域住民の方々の声の把握のあり方についてでございます。
 これまで道路検討委員会を開催した中で、地元の行政や観光に携わる方、住民の方から2回にわたりましていただきました御意見、また検討結果の公表に伴いまして、地元を含めた三つの会場でいただいた御意見、さらに整備促進を期待する同盟会の方々の要望などのほかに、反対の立場の方々からの御意見も含め承知をしているところでございます。また、今後この問題につきましては、私の判断、考え方を直接地域の皆様にお聞きをいただく場を設けたいと、このように考えております。
 次に、今回の判断につきまして再考する考えの有無についてでございますが、行政の判断につきまして、絶対的な永遠の真理ということは断言できないところではございますが、私の判断としては、時代の潮流の趨勢からはこの私自身が再考することはないと、こういうふうに考えております。
 また、国等との調整に難航した場合の取扱いについてでございますが、まだ決断をいたしましてから日も浅く、具体の協議はこれからでございまして、大変いろいろと難しい問題を抱えているわけでございますが、この結論に至りました経緯を関係機関に十分意を尽くして御理解をいただきまして、解決に向けて最大限の努力をいたす所存でございます。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 今回の工事再開の断念に関する県議会への対応についてでございますが、土木部といたしましては、奥産道問題の事態発生の特殊な経緯や長年にわたる事業経緯などから種々課題を抱えておりまして、この道路整備の方向性につきまして、県議会の皆様初め多くの方々に、その都度御意見や御指導をいただきながら、その解決に努めてきたところでございます。この間、意思形成に至るまでは、極力皆様に県の考えや課題等を明らかにすることが土木行政の信頼回復には最も大切であると考え、慎重に検討しつつ、約2年半を費やしてまいりました。最終判断の時期に至っても極めて難しい課題が山積し、土木部としては、17日まで知事との方針の決定について、いろいろと協議を重ねてまいりました。その過程で取りまとめは当日深夜まで及んだことから、18日早朝に関係する議会の方々へ、県としての道路工事の再開を断念する見込み等について、部として御報告をいたしたところでございます。しかし、既に当日朝、一部新聞に予期せぬ報道がなされるなど、結果としては御指摘のとおり、御連絡がおくれたことはまことに申しわけございませんでした。また、知事の記者会見後にその要旨をまとめ、県議会の皆様には改めて御報告することとしておりましたが、取りまとめに手間取り、またその際、御不在の方々もおられましたことから、十分な処置ができなかったものであります。これら一連の不適切な対応につきまして、深くおわび申し上げる次第でございます。
 また、関係市町村に対しましては、当日その経緯を報告するとともに、翌19日、土木部で町村役場を訪れ、再度説明を行ったところであります。なお、先ほど申し上げましたとおり、いろいろと立て込んだ事情もございましたが、何とぞ御理解を賜りますとともに、今後ともよろしく御指導いただきますよう改めてお願い申し上げます。
〇議長(那須川健一君) 次に、樋下正光君。
   〔44番樋下正光君登壇〕(拍手)

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