平成11年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(小原宣良君) 社会民主党の小原宣良でございます。
 私は、「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案の慎重審議と国民的論議を広く求めることについての発議案の提出に当たり、その理由を述べ、ぜひとも議員各位の御賛同を賜りたいと願うものであります。
 今、国会で審議中の新しい日米防衛協力のための指針関連3法案、すなわち、周辺事態措置法案、自衛隊法改正案、日米物品役務相互提供協定改定法案は、その議論の中で、我が国の専守防衛という範囲にとどまらず、有事を想定した米国の武力介入に日本が協力するための法的整備ではないかとの指摘を受けているものであります。このことは、例えば極東の範囲を周辺事態というあいまいな規定に改め、自衛隊の事実上の海外派兵と武器使用などが行われ、そのことによって、これまで我が国が禁じてきた海外における集団的自衛権の行使に道を開くことになるのではないか。安保条約さえも逸脱し、ひいては憲法に抵触する危険性をはらんでいるのではないか。また、事前の国会承認を避けて事後報告で済ませようとするなら、政府がこれまでとってきた専守防衛、シビリアンコントロールなど、防衛政策の基本を大きく変えることになるのではないかといった指摘に端的にあらわれているのであります。
 さらに問題なのは、周辺事態措置法案第9条で、地方公共団体の長と民間に対して、必要な協力を求めることができるとされている点であります。政府は去る2月3日以降、基地のある自治体に配布した周辺事態における協力検討項目の例によりますと、地方公共団体に対しての協力例としては、港湾、空港施設の使用、建物・設備等の許認可、人員及び物資の輸送に関する協力、給水、公立病院への患者の受け入れなどを挙げております。申し上げるまでもなく、地方公共団体は住民の生活と安全を確保する重要な役割を担っており、周辺事態というものが、何がどのような形で起こり、さらに、何の協力を求められるかも明確でないまま自治体に協力を要請されることは、いたずらに県民の不安をあおることになりかねないものであります。民間への協力においても同様であります。
 そこで、私どもが懸念している具体的事項について申し上げます。1、地域住民の安全と福祉を重視し、日米安保条約と関連取り決めに定めた以上の義務を地方自治体が負うことがないこと。2、民間空港・港湾の米軍使用の確保に関して、地域住民の利便や地域経済に十分配慮するとともに、米軍による強制的あるいは優先的使用が行われないこと。3、日本国内における米軍関係傷病者の治療に際しては、地方自治体の管理下にある病院等の施設の入院患者の強制退・転院などの米軍による収用や、医師、看護婦などの徴用が行われないこと。4、憲法第18条を尊重し、地方自治体職員、住民を含め、何人も意思に反した業務に従事せず、地方自治体職員がそうした業務を住民に強いることがないことなどであります。
 さきの一般質問において我が党の伊沢昌弘議員が、この点にも触れて知事の見解を求めております。要約しますと、いわゆる新ガイドライン関連法案に対し、知事はどのような認識をお持ちか、また、周辺事態法案により、地方自治体への協力要請に法案審議の過程で義務を負わないよう要請する必要があると考えるがどうかとの趣旨でありました。これに対して知事は、要約しますと、新ガイドライン関連法案については、その実効性を確保するため、日米安全保障条約の目的の枠内で制定を目指している法案と認識している。その中で、周辺事態に際し、国は法令及び基本計画に従い地方公共団体の長または国以外の者に対し、その有する権限について必要な協力を求めるなどのことができるとされている。国においては、この規定は地方公共団体に対する一般的協力義務または協力依頼について定めるものであり、地方公共団体に対して強制するものではなく、協力要請または依頼にこたえ得なかったことに対して制裁的な措置をとることはない旨の見解を示しているところであり、仮に国からの協力要請または協力依頼があった場合でも、県民生活に重大な支障が生ずる恐れがある場合には協力要請に応ずることは困難であると考える。なお、全国知事会においても、指針の具体化に向けた取り組みに当たっては、地方公共団体からの意見の聴取及び意向を十分尊重されたい旨の決議をし、国に対し要請したところであり、先般、県としてさらに全国知事会に対しこの決議の実効性の確保について善処されるよう要望したところであると答えております。
 こうした本県を含む全国の地方自治体の懸念に対し、きょう現在、国からの具体的説明はないとのことであります。こうした一連の経過からもおわかりのとおり、いわゆる新ガイドライン関連法案に対する地方自治体を初めとする国民の懸念に対し、政府と国会は十分にこたえていく最善の努力が求められるものであります。
 よって、「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案の慎重審議と国民的論議を広く求めることについての本発議案は、慎重審議と情報公開を旨とする我が岩手県議会の良識にかけて採択すべきものと考えるものであります。改めて、議員各位の御賛同を賜りますよう、伏してお願いを申し上げまして、私の提案理由の説明といたします。
 御清聴ありがとうございました。
〇議長(那須川健一君) これより質疑に入るのでありますが、ただいまのところ通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております発議案第8号「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案の慎重審議と国民的論議を広く求めることについては、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(那須川健一君) 御異議なしと認めます。よって、発議案第8号「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案の慎重審議と国民的論議を広く求めることについては、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより討論に入るのでありますが、ただいまのところ通告がありませんので、討論なしと認め、討論を終結いたします。
 これより、発議案第8号「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案の慎重審議と国民的論議を広く求めることについてを採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
〇議長(那須川健一君) 起立少数であります。よって、発議案第8号「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案の慎重審議と国民的論議を広く求めることについては、否決されました。
 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
   

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