平成11年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇16番(藤原泰次郎君) 政和会の藤原泰次郎でございます。
 このたび、私は議員各位の御配慮により登壇の機会を与えていただき、また会派内での先輩、同僚議員の御厚情に感謝しながら、政和会を代表しまして、県政の諸課題について順次質問させていただきます。
 我が国経済は、金融機関の不良債権絡みの経営不振や企業の倒産、失業者の増大などによって、先行きに対する不透明感が依然として強く、景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況の中で平成11年を迎えました。本定例会は、知事、我々議員にとりまして任期最後の議会でありますが、私は今日まで、増田知事の県勢発展のために取り組まれる姿勢に深い関心を持ちながら、議会活動をさせていただきました。知事は、平成7年就任後、初の演述で、今後の県政運営について所信を次のように述べられました。
 すなわち、私は全国との格差を是正するとともに、豊かな生活圏の形成による県土の均衡ある発展を図っていくことが、本県にとりましての基本的な課題であり、内外の経済社会情勢に的確に対応しながら、課題の解決に向けて施策を積極的に展開していくことが必要と考えておりますとし、基本姿勢として三つの柱を掲げられ、21世紀の岩手の創造に向けて大胆に挑戦し、柔軟な発想と情熱、信念を持ってあらゆる困難に立ち向かうと、その決意を述べられ、最後には、県民の皆様から県政を負託された4年間は、まさに本県を21世紀に橋渡しする重要な期間であり、県民の先頭に立って渾身の努力をすると結んでおられます。このことは、県政担当者として最も基本とするものであると、深く感銘を受けたのであります。知事は、この4年間、142万県民がひとしく幸せを感じ、未来に夢を抱き、生きがいを享受できる社会を構築してまいらなければならないとの信念のもと、初心を忘れず、今日まで県民から生の声を聞き、それを県政に反映させるため、東奔西走、精力的に県政懇談会を開催されました。4年間で知事への提言は59市町村すべてで実施、知事と特定課題を語る会164回、知事と21世紀の岩手を語る会7回、合計230回開催するなど、若さと行動力は県民から高く評価されていると思っております。知事という職は今さら申し上げるまでもなく、県政運営の最高責任者としての立場と同時に、公選で選ばれたものであることから、政治的な主張を持つものであります。行政責任者として公平、公正な県政を推進しておられることはもちろんでありますが、政治的主張にはおごることなく、その謙虚な姿勢は県民ひとしく認めているのではないかと私は思うのであります。
 そこでお伺いしますが、知事は、この4年間の県政運営をどのように総括され、どのように評価されておられるのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
 次に、本県の課題と発展方向についてお伺いします。
 知事は、さきの演述の中で、平成8年3月に第三次岩手県総合発展計画後期実施計画を策定し、各般の施策の積極的な展開に努めたと述べられているとおり、交通網の整備、防災体制の整備、産業振興、福祉・保健・医療、人づくりなど、多くの課題に取り組まれたのでありますが、21世紀を展望し対応しなければならない課題も多いと思います。このような状況の中で演述では、中間報告において基本目標に掲げた、みんなで創る夢県土いわての実現のためには、21世紀へのかけ橋となるこれからの数年間は、変革と創造の時代とも位置づけられる極めて重要な時期と認識され、将来の方向として新渡戸稲造博士の著書の中の地方(ぢかた)学にも通じるものとして、地方の活力を高めるため、いわて地元学の実践を掲げられました。私は、このような発想や決断と実行の政治姿勢と地元重視を明言されたことはまことに炯眼であり、夢県土いわて実現に向けての強い意欲のあらわれと理解しておりますが、知事は、本県の課題と発展方向についてどのようなお考えを持たれているのかお伺いします。
 次に、平成11年度予算の編成方針についてお伺いします。
 先週の2月19日に、平成11年度予算政府案が衆議院を通過し、現在参議院で審議中であります。緊縮財政を目指した財政構造改革法の凍結を受け、一般歳出は平成10年度当初比5・3%増の46兆8、000億円余、国債利払いなどを加えた一般会計規模は5・4%増の81兆8、000億円余と、いずれも過去最大の積極型予算となり、税収不足を補うための赤字国債については、当初としては最大の21兆7、000億円余も発行、国、地方の長期債務残高は、来年度で600兆円に達する見込みとされております。この景気浮揚をねらいとする積極的予算案を反映して、本県では、花巻空港整備や東北新幹線盛岡以北の工事費などとして配分され、一定の成果を収めましたが、これを受けた平成11年度の本県の予算総額は8、697億円余で、4月に統一地方選挙が行われることから、いわゆる骨格予算ではありながら前年度を3・1%上回っております。これはさきにもありましたが、最重要課題である景気対策に配慮されたことや、平成12年度から導入される介護保険制度の円滑な運営のための経費、あるいはハセップ方式の導入に要する経費など、早期に対処しなければならないものを措置したことによるものであり、私は評価されるべきものと思います。しかし、県債残高は最高の1兆1、070億円に達し、県財政の硬直化は一層進んでおります。
 平成10年12月25日に総務庁が発表した労働力調査によりますと、11月の完全失業率は4・4%と最悪を記録するなど、景気低迷のあおりは県税収入にも大きく影響するものと思われます。県は、主要財政指標並びに財政健全化の目標を示し、計画的に財政健全化に向けて努力されておりますが、今回の当初予算はどのような基本的な考え方に基づいて編成されたのかお伺いします。
 また、6月補正予算の規模、財源見通しについてどのように想定されておられるのか、この点についてもあわせてお伺いします。
 次に、行政改革の推進についてお伺いします。
 県では、このほど岩手県行政システム改革大綱を策定し、公表いたしました。この大綱は、その副題にもありますとおり、新しい時代に向けた行政システムの確立を目指したものであり、21世紀に向けた本県行政運営の指針ともいうべきものであります。今回の大綱策定は、昭和59年、平成8年に次いで3回目でありますが、その内容を見ますと、私は従前のものと比較して大きく変わっていると感じております。といいますのは、内容が個別かつ具体的で、記述もわかりやすくなったことはもちろんですが、中間報告が公表された新しい総合計画の方向性とも連動したしっかりとしたビジョンとなっているように感じられるのであります。その一方で、実際の行政システム改革の推進に当たりましては、いかにプランとして立派なものができたとしても、それがどのように推進され、県の行政運営の改善や県民サービスの向上が結果としてどのように実現されたかによって評価されるべきものであります。したがいまして、この大綱が今後どのように実施に移され、大綱に盛り込まれている事項がいかに推進されるかということが大事でありますが、今回の行政システム改革大綱の策定に当たっての基本的な考え方についてお伺いします。
 また、行政改革推進懇談会の意見や県内各地域で開催された行革の集い、県民アンケートの結果などの県民の意向がどのように反映されているのかについてもあわせてお伺いします。
 次に、環境問題についてお伺いします。
 知事は、昨年2月の本会議において、新しい時代に対応したこれからの地域社会を再構築していくためには、特に環境、情報、ひとづくりを座標軸として施策を展開する必要があるとし、平成10年を岩手県の環境創造元年として県政の推進に当たる旨、所信を表明されました。このお考えは新しい総合計画の中間報告にも色濃く反映され、中でも環境については、大変充実した内容になっていると私はとらえております。
 ところで、環境という言葉を広辞苑でひもときますと、その1に、めぐり囲む区域、その2に、四囲の外界、周囲の事物。特に、人間または生物を取り巻き、それと相互作用を及ぼし合うものとして見た外界。自然的環境と社会的環境とがある、とあります。私は、この中で、相互作用を及ぼし合うものという概念が、昨今の環境問題を論じる際に重要なキーワードになるのではないかと考えております。御承知のとおり、環境問題は、どれ一つとっても一朝一夕にいかないところにその問題の複雑かつ難しさがあり、だれかが必死で取り組めば解決できる代物ではないということであります。
 去る1月下旬の新聞によりますと、県は、新年度から現在の環境整備課と環境保全課を統合再編して、新たに環境政策室を設置し、環境政策部門を強化充実して、環境首都構想の中核を担わせると報じられております。さきに申し上げましたとおり、環境問題の取り組みは、1部門を充実させれば何とかなるという性格のものではなく、すべての部門に関係することはもちろんのこと、私ども一人一人の行動姿勢にかかっているといっても過言ではありません。私は、今般報道されました環境政策室が環境政策の充実の足がかりとなることを期待するとともに、さきの知事演述におきましても、知事の環境政策によせる並々ならぬ意欲を感じるものでありますので、この環境政策部門の組織新設の基本的考えについて、その組織体制とあわせてお伺いします。
 環境問題に関連して、下水道等の整備促進についてお伺いします。
 私は、真に豊かな夢県土いわてを築くためには、特に水環境の保全・整備が重要であり、生活排水を適正に処理し、トイレの水洗化を促進することによって、清流北上川を初めとする県内各河川の水質を保全するとともに、県民の住みよい生活環境の確保と環境衛生の向上を図ることが必要不可欠であると考えております。しかしながら、本県の下水道等の汚水処理施設の整備率を見ますと、平成9年度末で39%と全国平均の64%を大幅に下回っており、今後その整備促進に相当の努力が必要であります。一方、汚水処理施設の事業主体である県内市町村の状況を見ますと、財政的にも組織的にも大変厳しい状況にあり、このままでは本当に夢県土いわての実現が可能なものか、いささか心配しております。
 そこでお伺いしたいのでありますが、知事は、新しい総合計画の中で、下水道等の汚水処理施設の整備をどのように進めようとお考えでしょうか。また、その整備促進のため、事業主体であります市町村への支援策についてどのようにお考えでありましょうか、お伺いします。
 次に、救急医療情報システムについてお伺いします。
 県では、本年度これまでの救急医療情報システムを大幅に見直し、来年度から新システムを稼働させると伺っております。救急医療は、住民の生命に直結するものでありますことから、その体制の整備充実は県民が大いに念願している課題であります。さらにまた、毒物などによる事件や岩手山の火山活動など、こうした不測の事態に際して医療体制がどのように確保され、かつ機能するのか、これまた県民の重大な関心事であろうと思うのであります。こうした救急医療は、病院のみならず、消防機関等も含めた施設、設備はもとより、医師、看護婦等の専門スタッフの確保・充実が必要であることは言うまでもないことでありますが、もっと重要なことは、このような人的、物的資源を十二分に生かす上で、関連情報の正確かつ迅速な伝達と共有化を軸とした関係機関の連携が不可欠だということであります。このような意味合いから、私は、このたびの新システムのスタートに大きな期待を寄せるものでありますが、従来のシステムと比べ、どのような違いがあるのか、災害時を含む救急時の医療にあってどのような機能を持っているのか、システムの内容と運用に当たっての基本的な考え方をお伺いします。
 次に、農業問題についてお伺いします。
 昨年12月、農林水産省では、農政改革大綱と農政改革プログラムを公表し、農政の改革は検討の段階から推進の段階に移ったと大臣談話が出されたところであり、昭和36年から続いた現行の農業基本法に基づく農政を全面的に見直した新たな基本法案が、今国会で審議される予定と伺っております。私は、あすに迫った21世紀が、文字どおり農業が花形産業となることを念願するものの一人として、この農政改革大綱に沿った新たな農業基本法の制定、そして個別の施策の具体化などによって農業の将来展望が開けるような、抜本的で実効性のある農政改革となることを期待しているところであります。折しも本県におきましても、先般、県農政審議会から新しい農業計画の基本的方向について中間答申がなされております。私は、県農政審議会の答申を受けて、今後策定される新しい農業計画では、国の動向や時代の変化を的確に把握した上で、岩手ならではの独自性を発揮した、全国に誇り得る農業・農村を築いていくことを目指すような内容となる計画を期待しておりますが、新たに制定される新しい農業基本法とどのように整合を図ろうとしているのかお伺いします。また、新しい農業計画の理念や特色をどのように考えておられるのかについても、あわせてお伺いします。
 農業問題の2点目として、米の関税化についてお伺いします。
 昨年12月17日、国ではガット・ウルグァイ・ラウンド農業交渉において、米の関税化の特例措置であるミニマムアクセスを、ことしの4月から関税措置に切りかえることを決定し、WTOに通知したところであります。決定までの経過を見てみますと、昨年11月中旬に、国と全国農業協同組合中央会が米の関税化措置を前倒しに実施することの検討に入っているとの報道があり、私自身には突然の出来事と映ったわけでありますが、さらにWTOへの通報の時期から12月上旬までに農協の組織討議を経ることなどは、余りにも時間のない中での決定ではなかったのかと思っているところであります。米の関税化の決定は、米の需給緩和の中で、これ以上の輸入をふやしたくないとする国の選択であったと思いますが、米は国民の主食であり、稲作は農業の基幹でありますので、将来の農業・農村の発展と国民の暮らしを守る上から万全を期す必要があるものと思っております。しかしながら、稲作農家の現状は、生産調整を過去最高の33・7%実施しながら、果たしてこれから米の価格は将来どうなっていくのか、非常に不安を持っているところでありますし、担い手確保がさらに難しくなるのではないかと危惧しているところであります。県として、米の関税化をどのように考えておられるのかお伺いします。
 最後に、県産材の需要拡大についてお伺いします。
 既に、繰り返し言われてきているように、本県の森林資源はようやく成熟期を迎えつつあり、間伐などの適切な森林の整備と、確実に木材を供給できる体制を築いていけば、将来必ずや我が国有数の木材供給基地となり、山村の振興にも大きな貢献をなすものと、私もそのように思っております。しかしながら、外材輸入の増加に加えて、山村地域の過疎化の進行によって担い手が減少し、かつ高齢化しつつあり、地域経済の一翼を担ってきた林業・木材産業は、一層厳しい状況にさらされております。
 ここ10年間の本県の木材需要量の推移を見てみますと、平成元年には246万立方メートルの需要量がありましたが、平成8年度には228万立方メートルと、約7%減少しております。あわせて、製材品の出荷量も70万立方メートルから58万立方メートルと18%も落ち込んでいる状況の中で、山村地域の基幹産業である木材産業は、昨年来の新設住宅着工戸数の大幅な減少によって木材需要がさらに落ち込むとともに、製材品価格が急激に下落するなど、経営環境はいまだかつてないほど厳しさを増しております。こうした中で、木材産業の活性化を図るには、消費者ニーズに即応した県産材製品を安定的に供給する必要があることはもちろんでありますが、とりわけ、公共施設や公共土木工事を初め、一般の木造住宅などに県産材を利用するなど、県産材の需要拡大を積極的に進めることがまずもって重要なことと考えられます。
 県では、昨年10月に木材産業の振興を図るため、岩手県木材利用推進方針、もっと・WOOD・県産材をを作成し、県産材の需要拡大に取り組んでおられますが、これまでの状況と今後の取り組み方向についてお伺いします。
 以上をもって私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 藤原泰次郎議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県政を担当しての4年間の総括についてでございますが、今改めてこの4年間を振り返ってみますと、時代の大きな転換期にあって、県政を担当する者としてその責任の重さを常に自覚し、県民の期待の大きさを日々実感しながら、全力で駆け抜けてきた思いがいたしております。私は、知事就任以来、県行政と県民一人一人との距離を縮めて、県民に開かれたわかりやすい県政を推進するためには、率先垂範の行動が必要と考え、あらゆる機会をとらえて現地に足を運び、県民の皆様との直接の対話に努めてまいりました。そして、このような日々の取り組みを通じて、地方分権のさきに生活者主権、地域主権社会が来るものと確信をしたところでございます。私がこれまでに取り組んでまいりました、情報公開の徹底など県民と行政の情報の共有化や、地域の視点から地域課題に総合的かつ迅速に対応する現場重視の地域経営、地方振興局の機能強化を図る県行政の分社化なども生活者主権、地域主権社会への道筋に位置づけられるものと、このように考えております。
 また、県政運営につきましては、国、県の行財政を取り巻く環境が厳しさを増す中で、国と地方の関係もこれまでの中央主権型から地域主権型へと変わりつつございまして、県職員一人一人が県民へのサービスの提供者としての一層の自覚を持ち、前例にとらわれない柔軟な発想で行政を進めるよう意識を改革することが強く求められております。このため県におきましては、行政システム改革大綱を策定して、行財政の一層の健全化、効率化に努めるとともに、生活者や地域から始まる行政システムの確立を目指すこととしたところでございますが、これまでの取り組みはいずれも緒についたばかりでありまして、県政においては今後一層の努力が必要になるものと、このように考えております。
 次に、本県の課題と今後の発展方向についてでございますが、私は、今後の発展の方向として、岩手という県土を舞台にして、一人一人の生活者、それぞれの地域が個性的に光り輝き、世代や地域をつなぎハーモニーを奏でることにより一つの大きな輝きとなり、総体として夢県土いわての実現を目指していくことが重要であると考えております。このためには、何よりも地域の個性や住民の意欲が生かされ、みずからの選択と責任で魅力的な地域づくりを進めることができるような、地域や生活者から始まる新しい社会の仕組みをつくる必要がございまして、地方分権への国の取り組みを待つのではなくて、県みずからも行政システム改革などに積極的に取り組んでいく必要があるものと考えております。
 また、地域間の交流・連携を促進することによって、それぞれの地域がお互いの個性を磨き合い、それぞれの地域が一層発展していくことが極めて重要でございまして、このための基盤整備として、県土軸やいわて情報ハイウェイなど、人・物・情報の大きな流れを生み出すネットワークを構築していく必要があるものと考えております。
 さらに、私たちの可能性を阻害するさまざまな壁、すなわち、本県特有の地理的、地形的条件から来る制約や産業の成長を妨げる技術開発力などさまざまな要因、性別や年齢、障害の有無などにより社会参加を阻む固定観念などの壁を乗り越えるための取り組みを積極的に進めていくことも重要でありまして、これらについては、新しい総合計画の中間報告に、いずれもその考え方を盛り込んだところでございます。
 次に、予算編成の基本的な考え方についてでございますが、御案内のとおり、平成11年度当初予算は、骨格的予算とする方針のもとに編成したところでございますが、依然として厳しい現下の経済情勢を踏まえ、県内経済の活性化を図るため、景気回復に向け全力を尽くすとの観点で編成されました国のいわゆる15カ月予算に呼応して、公共事業や老人福祉施設の整備などの投資的予算を10年度の補正予算と一体のものとして重点的に計上しましたほか、中小企業の資金調達の円滑化を図るため、中小企業向けの融資枠を大幅に拡大するなど、景気対策に最大限の配慮をしたところでございます。
 また、平成12年度から開始される介護保険制度の関連事業や岩手山火山活動対策事業など、早期に取り組むべきものにつきましては、前倒しで措置いたしたところでございます。
 次に、6月以降の補正予算の財源の見通しでございますが、現時点における一般財源留保額は、地方交付税など130億円程度見込んでいるところでございます。また、6月補正予算につきましては、新規政策的な事業を中心に編成されることになりますが、その規模につきましては、今後検討してまいりたいと考えております。
 次に、行政システム改革大綱策定に当たっての基本的考え方についてでございますが、大綱の策定に当たりましては、行政運営の透明性の向上を求める要請の高まりや現下の厳しい財政状況、分権型地域社会の到来など、県行政を取り巻く諸情勢の変化を展望し、また、新しい総合計画の基本的方向も踏まえながら、現在の行政運営の仕組みを総点検したところでございます。その結果、従前の大綱が行政機構の整備などに重点が置かれていたのに対しまして、今回は、これらに加えて、県民とともにつくる県政が確立され、また、時代や環境の変化に即応した機動的で柔軟な施策の展開が図られ、先見性を持った県政が運営されるよう、その仕組みを再構築することとしたものでございます。さらに、大綱の構成につきましても、できるだけ具体的でわかりやすいものとなるよう努めるとともに、この改革を着実に推進するため、実施計画をあわせて策定いたしたところでもございます。
 具体的には、県と県民との関係を行政サービスの提供という一方向からだけではなく、県民一人一人が主体的に地域づくりに参画できるよう、生活者や地域からはじまる新しい行政システムの確立を基本理念として、よりわかりやすく開かれた県政の推進、市町村との連携強化、財政運営の健全化、県民の期待にこたえられる職員の育成など、八つの視点に立って、従来の考え方や方法にとらわれない柔軟な発想と創意工夫で改革に取り組んでいくことといたしたものでございます。
 次に、行政システム改革大綱における県民意向の反映についてでございますが、大綱の策定に当たりましては、県民の皆さんの意向を的確に把握し、これを十分に反映させていくことが従前にも増して重要であると認識いたしたところであります。このため、県内九つの広域生活圏ごとの行政改革を考える集いの開催、1、200人を超える県民や県政モニターを対象としたアンケート調査の実施などにより県民の皆さんの意向の把握に努めてまいりましたけれども、これらの調査結果や意見・要望につきましては、県内の民間有識者などで構成される行政改革推進懇談会で御審議をいただき、この1月に意見書として取りまとめ提出いただいたところでございます。この意見書では、大綱策定の基本として、県が県民の皆さんにお示ししました今後の行政運営の方向について、おおむね時代の要請に適合しているとお認めいただき、その実行に際して留意すべき事項等についての具体的かつ詳細な意見が掲げられておりますことから、これを最大限尊重し、情報公開の徹底、地方振興局の強化、審議会運営や出資法人の見直し、職員の意識改革など、大綱全般にわたって反映させたところでございます。
 次に、環境問題についてでございますが、21世紀は、人々の暮らしから産業の仕組みまで、社会のあり方そのものが、環境を価値観の中心に据え、大きく転換していくことが予想される環境の世紀とも言われております。私は、環境の世紀を目前に控え、新しい時代に対応し、これからの地域社会を再構築していくための三つの視点の一つとして環境を掲げ、真に豊かな暮らしを創設する環境共生・循環型社会の実現に向け、平成10年を岩手の環境創造元年と位置づけ、環境の保全及び創造に関する基本条例及び環境影響評価条例の制定、環境基本計画の策定など、環境施策の推進に積極的に取り組んでまいりました。これら環境施策は、広範かつ多様な分野にわたることから、従来の枠を越えて、より総合的かつ効果的に推進できる組織として、次長級を室長とし、生活環境部の部内室として新たに環境政策室の設置を検討しているところでございます。環境政策室は、環境部門の企画・立案はもとより、部局横断的な調整、先進的な取り組みができる機能を有する組織体制として考えているところでございます。
 次に、下水道などの整備促進についてお答え申し上げます。
 まず、新しい総合計画における取り組みについてでございますが、水質を保全し、住みよい生活環境の確保と環境衛生の向上を図るためには、下水道を初めとする汚水処理施設の整備促進が緊急の課題でございます。このため、昨年5月に策定した新・全県域汚水適正処理構想に基づいて、平成22年度の目標整備率を80%とし、今後整備される多数の処理場を市町村が共同で管理することなどによるコスト縮減を指導しながら、一層の整備促進に努める所存でございます。
 次に、市町村への支援についてでございますが、県による財政的・技術的な支援の充実が必要と認識しております。このため、まず財政支援につきましては、市町村が実施する下水道、農業集落排水、漁業集落排水の各事業を対象として、事業費の主要な財源となる起債の償還額に対して従来から県費補助を行っておりますが、市町村から下水道事業の補助対象枠の拡大について強い要望がありますので、検討してまいりたいと考えております。
 また、技術支援につきましては、岩手県下水道公社による市町村下水道事業への技術支援を今年度から開始し、6市町村に支援いたしましたところ、さらに多くの市町村から要請をいただいていることから、下水道公社の体制を充実するなどしてこれにこたえてまいりたいと考えております。県の財政状況も大変厳しい状況にございますが、市町村と連携して、良質な水環境の保全・整備に積極的に努めていく考えでございます。
 次に、救急医療情報システムについてでございますが、これまでのシステムは、救急患者の円滑な搬送のために必要な情報を医療機関や消防機関などに提供することを目的として、昭和56年度に整備し、そして運用してきたところでございます。その後、阪神・淡路大震災を契機に災害時の対応が指摘されるなど、さらに医療現場の状況に即した情報システムへの見直しが課題となっていたものでございます。
 このようなことから、県といたしましては、これまで医療及び消防関係者を中心に検討を行った結果を踏まえまして、情報システム全体を見直して、平成10年度中に機器等の整備を完了し、11年度から新情報システムを稼働させることとしているものでございます。その内容は、従来の救急医療情報に加え、新たに災害医療や毒劇物、感染症等の情報を追加するとともに、県民向けに、インターネットにより在宅当番医など、身近な医療情報を提供しようとするものでございます。
 なお、災害医療情報については、被災地からの患者の受け入れ、医療スタッフの派遣に関すること、医薬品の備蓄の状況等を提供するものでございます。
 また、この新情報システムが円滑に運用されるためには、医療機関の積極的な参画と連携が不可欠であることから、岩手県医師会にこの新情報システムにおけるセンター機能を担っていただくこととしております。
 今後とも、新しい情報システムの充実に努めるとともに、遠隔医療システムなどの構築を図り、本県における総合的な医療情報システムの確立に努めてまいりたいと考えております。
 次に、新しい農業計画と新農業基本法との整合についてでございますが、新しい農業基本法案の内容はまだ明らかになっておりませんが、昨年12月に公表された農政改革大綱が基本になるものと理解しております。この大綱におきましては、経営感覚にすぐれた担い手の確保を通じ、我が国農業の有する力が最大限に発揮され、安全で合理的な価格での食料の安定的供給が可能となり、また、農業・農村の多面的機能が十分に発揮できるよう、今後の我が国の農業・農村の再構築に向けた方向づけが示されております。
 県におきましては、こうした国の方向を踏まえながら、本県の広大で豊かな資源を積極的に生かして、岩手ならではの個性を十分に発揮し、我が国有数の総合食料供給基地としての地位を確立するとともに、意欲ある農業者や地域の人々が、夢を持って生き生きと農業生産や地域活動に取り組める農村の形成を図るため、新しい農業計画の基本目標を岩手の大地に個性きらめく農業・農村の創造といたしたいと考えております。
 また、農業者一人一人の主体的な取り組みを基本としつつ、農業と環境との共生、生産者と消費者との連携、農村と都市との交流にも十分意を用い、農業者のみならず、広く県民の期待にこたえ得る特色のある農業計画としてまいりたいと考えております。今後、最終的な取りまとめに当たりましては、特にも中山間地域の活性化に向けた、いわゆる直接支払制度や持続的農業の促進などについての国の動向を踏まえながら、本県の農業・農村が将来にわたって発展していくための基礎づくりとなるよう、計画策定に取り組んでまいる考えでございます。
 次に、米の関税化についてでございますが、今回の米の関税措置への切りかえは、2000年からのWTO次期農業交渉を控え、ミニマム・アクセス米の状況や国内の米の需給状況などを総合的に勘案した結果、我が国が選択し得る最善策として導入を決定したものと受けとめております。米をめぐる情勢は、今後とも国内外の産地間競争がますます激化するものと見込まれることから、いわゆる売れる米づくりを強力に進めることが必要不可欠でございまして、生産から販売に至る総合的な取り組みを一層強化し、本県が米の主産地としてその地位を確固たるものにしてまいらなければならないものと考えております。このため、低コスト生産の促進はもとより、新たなオリジナル品種の開発や適地適品種の配置と栽培管理の徹底による品質・食味の向上を加速させ、さらには、農業団体などと連携して、大口需要者のニーズに的確に対応できる産地づくりや、新たに開発した酒米の生産など、多様な品ぞろえをした産地づくりを進め、本県産の米の有利販売に向けて最大限の努力をしてまいる考えでございます。
 次に、県産材の需要拡大についてでございますが、木材は、地域の環境に順応する天然素材であるという特徴を有し、森林の適正な利用と育成を通じた持続的な管理は、地球温暖化対策の推進や公益的機能の高度発揮などに重要であり、また、林業・木材産業の振興は山村の活性化にも資することから、一層の県産材の需要拡大を推進するため、昨年10月に岩手県木材利用推進方針を策定し、県民一体の運動として取り組んでいるところでございます。
 その内容といたしましては、これまでに、庁内各部局・地方振興局で構成するもっと・WOOD・県産材推進連絡会議を設置して、公共施設や庁用物品、土木資材などへの木材利用について、部局間の緊密な連携を図りながら進めるとともに、林業関係団体との連携による安定供給体制の整備を促進し、例えば、県立美術館の内装の一部木質化や学校施設の木造化、公共土木工事での木材利用などに着実に成果があらわれ始めているところでございます。また、住宅への木材利用をこれまで以上に促進するため、県民に対する普及啓発や岩手県住宅供給公社との連携強化などを進めているところでございます。
 今後におきましては、こうした取り組みを一層推進いたしますとともに、特に、県産材需要拡大のPRの強化や、経済性や耐久性など消費者の理解が得られる木材製品の開発、木造住宅建設に対する支援の強化に努めるほか、各地域で整備が進んでいる加工・供給体制に対応する需要の拡大に努めてまいりたいと考えております。
〇副議長(吉田秀君) 次に、佐藤啓二君。
   〔48番佐藤啓二君登壇〕(拍手)

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