平成11年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇48番(佐藤啓二君) 社会民主党の佐藤啓二であります。
 私にとって最後の議会でありますが、代表質問の機会を与えていただきました先輩、同僚の皆さんに対しお礼を申し上げます。
 私たち社会民主党県連合は、昨年12月18日、知事に対し19項目の重点施策を中心とした1999年度県事業及び予算編成に関し申し入れを行いました。明年度予算審議が中心となる今議会においては、県政策審議会長の伊沢昌弘議員が一般質問に、党副代表の久保田晴弘議員が予算特別委員会の総括質疑に立ちます。そして、審議に当たっては、私たち、本県財政を取り巻く環境が一段と厳しさを増す中で、県民すべての参加で明るく豊かなふるさと岩手を築き上げようとの視点に立ち、提言を交えて審議にのぞみますので、よろしくお願いいたします。
 私の愛読書は柳田国男の遠野物語、そして鴨長明の方丈記であります。近ごろは、賢治生誕祭や増田知事に触発され、文庫本を通して賢治の作品を読み、賢治の思想を理解しようと努めているところです。社会の激しい変化とおびただしい情報量に追いつけないみずからを恥じながら、時間をかけて考え、新しい価値を発見することに喜びを感じているところです。ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて久しくとどまりたる例なし。世の中にある人と栖とまたかくのごとし。
 鴨長明は、400年も続いた都を平清盛が急遽福原に移すという大変なことをやり、都移りによって京都の人々が恐慌に陥る一方、福原の新しい都づくりがはかどらない様子を次のように記しています。古京--これは古い都であります--はすでに荒れて、新都はいまだ成らず。ありとしある人は、みな浮雲の思ひをなせりと。現在は、政治、経済、文化を含め、社会構造そのものの転換期だと思います。今までの一方的な価値観が浮遊し、さまよっています。といって、新しい価値観を探しているのだがなかなか見つからない、こうした状況を清貧の思想の著者中野孝次がこのように方丈記の一節を引用して評しています。まことにうがった見方ではないかと感じたところです。
 こうした状況の中で、県が昨年11月に新しい総合計画中間報告--新しい岩手づくりのシナリオを県民に明示したことは、まことに時宜を得たものであり、その意義は極めて大きいものと理解しています。それだけに、このシナリオが県民一人一人に理解され、意欲的行動力の源泉になってほしいものだと心から願っている次第であります。
 また、私は同時に、過ぐる1年を振り返り、県議会が6月定例会において、核兵器廃絶平和岩手県宣言決議を全会一致で採択したことを想起しています。戦争の20世紀を振り返り、21世紀を迎えようとしている今、憲法理念に基づき、世界の恒久平和と核兵器廃絶を強く求めるというこの宣言は、平和、人権、環境という価値観を再確認しようと県民に呼びかけているものだと思っています。現在、国会が日米防衛協力の新たな指針に基づき、対米協力を敷くための周辺事態措置法案などの審議を始めた中で、問題は、1月27日付朝日新聞が指摘するように、憲法判断か政策判断かという極めて大事な選択を求めていると思うのであります。憲法9条が、そして基本的人権が完全に無視されようという状況の中で、今こそ県民一人一人が声を上げるべき時ではないかと考えています。
 私は、以上のような問題意識を持ちながら、去る2月16日に行われた知事演述と新しい総合計画中間報告を中心に、以下、知事に対し質問をいたします。
 第1は、知事の県政推進に当たっての基本姿勢についてであります。
 あなたは、知事に就任された平成7年6月の第2回県議会定例会の知事演述の中で、県政推進の基本姿勢の第1に、清新で公正、県民にわかりやすい県政の実現を明らかにされました。そして、県政はすべての県民のためのものでありますと明快に述べられたのであります。私は、多くの県民があなたの清新で公正な県政というところに絶大な信頼を寄せられたと思っています。分権の時代においては、なおさらのこと清新で公正ということが強く求められると思います。清新で公正、県民にわかりやすい県政の実現というあなたの所信は変わりはないと思いますが、念のため、あなたのお考えを伺いたいと存じます。
 第2は、新しい総合計画中間報告についてお伺いいたします。
 私は、この中間報告は、あなたが審議会や現場で多くの県民の声を聞かれるというフィールドワークを通じて得られた尊い結晶であり哲学だと思っています。私は、この哲学を職員が共有することが大変重要だと思っています。つまり、この哲学の実践に当たっては、知事と職員との間に乖離があってはならないと思っています。そのため、お互いが努力し合うことはもちろんとは思いますが、この点についてあなたのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
   〔副議長退席、議長着席〕
 第3は、中間報告にいう地域とは何かということであります。そして地域づくりについて、そのマニュアルを県民に示す必要があると考えますが、これらについて明らかにしてほしいと思います。
 例えば、中間報告の冒頭部分には次のような記載があります。すなわち、総合計画は、みんなで岩手づくりを進める上での指針とするものであって、これからは行政だけではなく、県民や各種団体、民間企業などを含めた私たちが、一体となって地域づくりをすることが特に重要であると説明しています。それならば地域づくりを推進する組織をどう考え、つくっていくのか、この辺が中間報告の中では余り明確になっていないように思うのであります。そして、地域というものをどう考え、どうとらえるべきなのかということであります。生活の場としての身近な集落を地域と考えるものか、あるいは行政区としての市町村を地域として考えるものか、さらに運動の発展として、地域というものは空間的に広がっていくものと理解すべきなのか、一体グローバル時代になぜ今地域なのか、こういった点について県民に地域づくりの具体を示すことが必要ではないかと考える次第です。
 私は、宮本憲一、横田茂、中村剛治郎編による有斐閣ブックス地域経済学で勉強をしました。この本は1990年の出版でありますが、その中に、現代は国際化時代と言われるが、国際化のみが一面的に進展しているわけではない。国際化時代にたえる独自性の源泉は地域であり、独自の地域的基盤を持つことによって産業の国際的競争力は形成される。国際化と地域化は現代経済という車の両輪であり、国際化時代だからこそ地域のあり方が問われていると述べています。そして、地域とは何かというところで、七つの視点を挙げています。参考にすべきことではないかと考え、紹介いたします。
 第1に、地域とは、人間が協同して自然に働きかけ、社会的、主体的に、かつ自然の一員として、人間らしく生きる場所、生活の基本的圏域であり、人間発達の場であり、自己実現の場であり、文化を継承していく場である。
 第2に、地域は、総合性を持つものである。人間は定住の形態として都市と農村という二つがあるが、両者のつながりの中で地域を考えるのが基本である。
 第3に、地域は、独自性を持つ個性的な存在である。
 第4に、地域は、住民を主人公とする自治の単位である。
 第5に、地域は、開かれた存在であり、地域間の交流と連携を不可欠とする。それによって、地域がより豊かになれる。
 第6に、地域は、広さでとらえるのでなく、自然、経済、文化の複合体としてとらえるべきである。
 第7に、地球規模で考え、地域から行動を起こそう。
 以上であります。
 私は、中間報告には、これらの視点を踏まえて地域づくりを構想しているものと理解をしているところであります。
 第4は、環境基本計画の策定についてであります。
 県は、平成10年3月に、岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例を制定しました。そして現在、環境基本計画や自然環境保全指針の策定に向け、鋭意努力されていることに対し敬意を表します。また、平成11年度においては、ISO14001の認証取得を明らかにしております。私自身、自然保護ということについて、木を切る人は悪玉、木を植える人は善玉という単純な考え方ではなく、改めて人と自然とのかかわり方を深く考え、人と自然との共生に向けて整理する必要があるのではと考えているところです。このような中、国においては、家電製品のリサイクルを目指す特定家庭用機器再商品化法や二酸化炭素など、温室効果ガスの排出削減を目指す地球温暖化対策の推進に関する法律などの立法措置を講ずるとともに、環境教育や環境学習の推進などを通じて環境問題の意識啓発を図っています。こうした環境問題への取り組みは、やはり住民に身近な地方公共団体が中心になるべきものであると考えます。豊かな自然に恵まれた本県こそ、国や他県に先駆け、環境保全に向けた行動を展開し、環境先進県としての姿勢を明確に打ち出す必要があると考えます。
 このようなことから私は、新しい総合計画の策定作業と平行して作業が進められている環境基本計画にどのような理念や施策が盛り込まれるのか、大きな関心を持っているところであります。現時点での環境基本計画の策定状況と基本的な考え方についてお伺いいたします。
 第5は、岩手短角牛の振興についてであります。
 2月5日付、岩手日報は、県肉牛生産公社のリストラ策を報じています。それによれば、不採算部門の短角牛については、飼養頭数を半減するとしています。私は、いよいよ厳しさを増す環境の中で、耐え忍んで岩手短角を守り続けてきた生産農家の方々の心中を思い、大きなショックを受けました。新聞報道が農家の意欲を著しく減退させ、また行政に対する不信を増大させるのではないかと心配した次第であります。岩手短角は、岩手の自然と風土、歴史が生んだ岩手の文化であると思います。この際、岩手短角牛の振興について、県の決意のほどをお示し願いたいと思います。
 第6は、林業問題について2点お伺いいたします。
 その一つは、流域林業の活性化についてであります。
 去る2月4日、一関市を会場に開催された森林交付税フォーラムにおいて、菊池遠野市長さんが、森林資源の生産から販売まで、その強化を図る意味からも、縦割り行政を改める必要を指摘しながら、国--営林署であります--県--地方振興局であります--市町村、民間が一緒になって、企画の段階から事業を展開する必要があると申しておられました。私は、県が中心になって流域管理システムのあり方について検討すべきだと思いますが、見解をお伺いいたします。
 二つ目は、イヌワシの保護とかかわって、生息地域の間伐の仕方についてであります。野生生物の生態系に配慮した施業の展開が必要と思いますので、有識者の意見を聞くなどの方途を構ずるべきだと思いますが、県の対応についてお伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。私は、長い間、議員として仕事をさせていただきました。この間、多くの先輩議員、同僚議員の御交誼をいただきました。振り返って、まことに感無量のものがあります。御指導いただきました議員の皆さん、知事を初め執行部の皆さん、議会事務局の皆さんに衷心からお礼を申し上げます。議員の皆さん、そして知事さんにおかれましては、この後選挙という関門を控えておられます。どうか御健勝で御健闘の上、ぜひ勝利されますよう祈念を申し上げ、お礼のあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐藤啓二議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県政推進に当たっての基本姿勢についてでございますが、私は知事就任以来、清新で公正を旨とし、県民にわかりやすい県政の実現を目指して、可能な限り県民の皆様の活動の場に出向いて、また、さまざまな機会を通じて県政に対する御意見、御提言を直接お聞きしながら、県民と行政が相互に信頼を深め、手を携え地域づくりを進めていくよう努めてまいりました。この4年間、県政運営を担当し、率先垂範に心がけながら、さまざまな県政課題に全力を傾注してまいりましたが、この間県政はすべての県民のものであり、岩手・新時代を担う主役は県民であるとの思いを一層強くしているところであり、清新で公正、県民にわかりやすい県政の実現を私自身しっかりと肝に銘じて、今後も常に透明性の高い、わかりやすい県政の推進に取り組んでいく考えでございます。
 次に、新しい総合計画中間報告の哲学の実践についてでございますが、この中間報告は、できるだけ多くの県民の声を計画に反映させるよう心がけて取りまとめてきたものでありますが、計画策定に当たりましては、全庁一丸となって取り組み、例えば地方振興局においても、みずからが中心となって地域計画の策定を進めるなど、従来以上に多くの職員が直接計画策定に参画をしてまいりました。今回の計画では、新たな可能性の扉を開くキーワードとして、環境・ひと・情報の三つの視点を提示して、夢県土いわてを実現するための新たな仕組みづくりとして、いわて地元学の実践や岩手スタンダードづくりなどを提唱し、また夢をつくり、夢をつなぐ県政や新しい時代に対応した県行政の基本姿勢を掲げるなど、これまでの計画にはなかった新しい考えを盛り込んでいるところでございます。そして、これらの根底に流れる、私たち行政に携わるものがしっかりと受けとめなければならない精神は、生活者の視点、地域の視点に立って県民とともに歩む、県民の信頼にこたえ得る行政の推進でありまして、こうしたことを県職員一人一人が心に刻み、今後の施策の立案や実行に反映させていくことが重要だと考えております。
 したがいまして、これからの県政の推進に当たりましては、私自身職員との意識の共有化に努めるとともに、職員もみずから直接現場で県民の声を聞き、地域の実情をしっかりと把握しながら、県民への行政サービスの提供者として、また地域づくりをともに進めるパートナーとしての自覚を持ち、柔軟な発想とチャレンジ精神をもって、県民の信頼と期待にこたえられるよう全力を傾注していくべきものと考えております。
 次に、新しい総合計画中間報告における地域と地域づくりについてでございますが、議員御指摘のように、地域という言葉にはさまざまな内容が包含されているため、これを一つの定義で表現することは難しいものと考えております。字句そのものの意味は、区切られた土地、土地の区域をあらわしますが、総合計画で用いる地域には、日本という国土を構成する、その一部の区域としての意味合い以上に、地域の担い手である生活者としての私たち自身の視点を特に重視したいと考えております。すなわち、私たちの地域は、私たちが生まれ育ち、暮らしている生活環境そのものでございまして、この中で土と水、風、そして光に抱かれ、すべての命がはぐくまれているものと考えております。そして、このような私たちの地域は、過去から現在、そして未来に継承されていくものでありまして、地域づくりは、私たちがこの私たちの地域に主体的にかかわりを持ち、みずからの生きる場、生きたあかしとしての地域を創造していくことであると考えたいと思っております。新しい総合計画の中間報告では、21世紀を通じて私たちが大切にしていかなければならない理念として、自立・参画・創造による持続的な地域づくりを掲げたところでございますが、こうした取り組みが県内各地に展開されることによりまして、地域の集合した総体であるふるさと岩手が輝きを増していくものと考えております。そして、これらはいわて地元学の実践や岩手スタンダードづくりと共通の理念で結びつけられるものでございまして、岩手の先人のたゆまぬ地域づくりへの取り組みの中で現在まで実践されてきたものですが、今後それぞれの地域において、地道な地域づくりへの取り組みが行われていく中で、地域や世代、性別、障害などを越えた新しい結づくりと一体になることにより、私たちの目指す夢県土いわてにつながっていくものと考えております。
 議員御指摘のマニュアル的なものは今まで特に意識をしてはおりませんでしたが、県政のさまざまな分野の政策推進を通じて、積極的にこのような考え方、理念を反映させるとともに、このような考え方を実践している地域づくりの先進事例や具体例をお互いに学び、意識を高め合うことは大変重要であると考えておりますので、さまざまな工夫を凝らしながら県内各地域における地域住民の実践活動に生かされるよう、精いっぱい努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、環境基本計画についてでありますが、環境基本計画は、環境をめぐる新たな課題に対応するため、環境の保全及び創造に関する基本条例に基づき策定を進めているものであり、去る1月、中間報告を取りまとめたところでございます。この中間報告では計画の基本目標として、恵み豊かな環境と共生し、未来につなぐイーハトーブの大地を掲げておりますが、これは環境の世紀と言われる21世紀においては、澄み切った空気や水、森林などの多様で豊かな環境が新しい産業や文化、地域づくりの可能性を高め、魅力ある地域の発展につながるという基本的認識のもとに、環境と共生した持続的な発展が可能な地域社会を築き、良好な環境を将来の世代に継承していくことを目指したものでございます。この基本目標を実現するため、新しい総合計画の中間報告における自立・参画・創造という理念を踏まえまして、一人一人が高い環境意識を持ち、環境に配慮した行動を実践できる環境市民の育成、対等なパートナーシップのもとに、さまざまな主体が地域において環境問題に自主的に取り組む地域環境コミュニティーの形成、岩手の豊かな環境を今後の地域発展に生かす環境を軸とした地域づくりの推進、以上の三つを21世紀における環境づくりの基本的視点として位置づけたところでございまして、私はこのような視点に立って、多様な環境施策を総合的に推進することにより、日本の環境首都を目指して、積極果敢に環境の時代を切り開いていきたいと考えております。
 今後は、この中間報告に寄せられた多くの県民の皆さんの御意見を生かしながら、さらに環境審議会の御審議をいただいて具体のプロジェクトなどについて検討を進め、ことしの夏ごろを目途に策定してまいりたいと考えております。
 次に、岩手短角牛の振興についてでございますが、短角牛は、先人の努力によってはぐくまれてきた本県の特産牛でございまして、とりわけ県北の山間地域では農業所得を補完しながら、放牧による美しい自然景観の保持にも貢献するなど、極めて重要な役割を担ってきております。一方、年々増大する輸入牛肉と肉質的に競合することから、子牛・枝肉価格とも依然として低落傾向にございます。放牧適性にすぐれた短角牛は、食料自給率の維持向上を図る上からも改めて注目されているところでございます。したがいまして、今後の振興に当たりましては、肉質向上のための育種改良とあわせまして、黒毛和種との交雑種の生産拡大による有利販売にも努めてまいる考えでございます。
 また、過般、私も出席してバックアップをお願いしてまいりましたが、首都圏にお住まいの文化人、著名人には短角牛の根強いファンも数多く、今後とも消費者の求めている自然、安全、健康志向にマッチした短角牛のすぐれた特性を最大限に生かして、生産から流通消費にわたる総合的な対策を引き続き推進するとともに、短角牛を核とした地域複合経営を支援するため、新たに公共牧場の管理運営に対する助成措置を講ずることといたしております。なお、岩手県肉牛生産公社の短角牛の飼養頭数の縮小は、公社が行ってきた産直の大口取引の停止と、経営改善の一環として実施することとしたものでございますが、県としての短角牛振興の取り組みは、前段申し上げたとおりでございまして、新しい農業計画におきましても、現在の飼養頭数規模を堅持する考えでございます。
 次に、林業問題についてお答えを申し上げます。
 まず、流域林業の活性化についてでございますが、森林は木材の供給のみならず、流域における土砂流出の防止、水源の涵養等の多様な機能を果たしておりまして、県民共有の財産として適切に整備・利用されることが極めて重要であると認識をしているところでございます。こうしたことから、県におきましては、これまでも森林管理の合理的広がりである流域を単位として、営林署、県、市町村、関係団体の連携のもと、流域林業活性化センターを設置して、国有林、民有林を通じ、川上から川下までの森林・林業・木材産業関係者の理解を得ながら、計画的な森林の整備や木材産業の振興など、流域林業の活性化に取り組んでまいりました。
 しかしながら、各流域における森林所有者の林業経営に対する考え方が多様であることや、最近における林業を取り巻く厳しい環境などから、流域林業への取り組み・連携が必ずしも十分でない面も指摘されておりまして、今後この流域を単位とした森林管理のシステムをより実効性のあるものにしていくことが必要となっております。このような中で、県といたしましては、地域に根差した林政を推進し、もって流域管理システムの充実にも資する等の観点から、地方振興局に林業振興主査を配置し、その機能強化を図ることとしておりまして、一方、国有林におきましては、流域を基本とした森林管理署の設置が進められているところでございます。
 今後とも森林の多様な機能の高度発揮を目指し、適切な森林の整備・利用を一層推進するために、県が林業振興に果たす役割を十分認識し、森林管理署、市町村とより緊密な連携を図りつつ、関係団体、森林所有者などとともに、伐採量や造林事業面積など森林情報の総合的な把握・提供に努めるなど、流域管理システムの確立に向けて、さらに努力してまいりたいと考えております。
 次に、イヌワシ生息地域の間伐などについてでございますが、森林は木材資源の供給はもとより、安全で快適な県民生活の基盤の形成等の多面的な役割を果たしておりますが、近年、イヌワシを初めとする希少な野生生物の保護・保全に対する県民の関心の高まりなどを踏まえ、その生息の場ともなるよう適切に保全・整備することが重要となっております。このため県では、従来から野生鳥獣共存の森整備事業、広葉樹林整備特別対策事業等により、除間伐、複層林整備、実のなる樹木の植栽などについて補助し、野生鳥獣との共存を目指した森林整備にも努めているところでございます。
 また、最近、健全な森林の育成や良質な木材の生産に不可欠な間伐は、森林に適当な空間や光を与えることから、イヌワシなど野生鳥獣のえさ場の形成への寄与が期待できるとの有識者の意見が示されております。しかしながら、これら森林整備の効果については、野生生物と森林環境との関係の多様性などから、必ずしも明らかにされていない面がありまして、野生生物の生態系の維持向上に配慮したより適切な森林施業の方法について、さらに研究する必要もあると考えられます。このため、今後地域の森林資源や、野生生物の生息の状況などに応じた森林施業のあり方について、有識者の提言や意見を踏まえるとともに、大学や国の試験研究機関との連携などによりまして、幅広く検討してまいりたいと考えております。
   
〇議長(那須川健一君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時39分 散 会

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