平成11年9月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇33番(黄川田徹君) ただいまの伊藤勢至議員の質問に関連してお伺いいたします。
 高校再編問題についてであります。
 教育委員会から提示された県立高等学校新整備計画案では、今日の社会、経済全般にわたる急速かつ大きな変化の進行に伴い、高校教育を取り巻く環境も大きく変化していること、あるいは青少年の意識や生き方も大きく変容していること。さらには、高校進学率が97%を超える中、子供が希望する学科数と設置数とが乖離していることや、不登校や中途退学者が増加していることなど、少子化の影響とともに、計画策定に至る背景を説明しております。計画ではこうした実情を踏まえ、多様な能力、適性、興味、関心を持つ生徒の個性や能力を最大限に伸ばすために、高校教育をさらに多様で柔軟性に富んだものに改めることを目指し、その具体策として、学校の統廃合や学科再編、総合学科の設置などを掲げております。私もこのような見直しの背景や計画の趣旨を全く理解できないというわけではありませんし、生徒の希望がかなえられないような高校の教育体制を見直していくのは、社会や行政の責任であると思っております。
 しかしながら、私が最も気になっておりますのは、計画の中で、農林水産業関係の高校、学科が再編統合により姿を消していくことであり、農林水産業を志す生徒を教育し育てていく間口が狭められていくことの意味合いであります。私は、岩手県の未来を展望し、岩手には岩手らしい教育があってしかるべきものと考えるからであります。教育委員会の資料では、農林水産関係学科の設置比率9.9%に対し、これを希望する生徒の割合は3.1%にとどまっており、その間にそごが現実に生じている以上、その見直しが必要だということでありますが、あくまでも教育委員会の立場からの教育効率が先行した計画であって、形式的な手順を踏んだだけではないかと思われるわけであります。
 また、一方で県は、全国に誇れる総合食料供基地を標榜するとともに、持続可能な森林経営をうたっており、また農林水産業部門では、就業者の高齢化、兼業化が進む状況で、県も後継者対策を重点課題に掲げて、さまざまな事業を実施している最中の再編統合でありますので、数字では割り切れないものが残るのではないかと思います。希望者が少ないということにはそれなりの理由があるはずであります。思うに、生徒が自分がどういう道を歩むかを考える前提として、将来従事する職業に魅力がなければなりませんし、その前に、その職業、産業についての理解が必要であり、小さいころから農林水産業に対する理解をはぐくむ努力が学校、地域社会、行政に求められていると考えます。また、他の産業に引けをとらない第1次産業の所得の向上と、仕事に自信が持てる環境づくりが大切であると考えます。
 最近では、農協、漁協関係者の方々にも、これまでそうした視点で学校と積極的なかかわりを持ってこなかったのではないかとの反省の弁も聞かれるようになってまいりました。地域にとって実業高校のあり方を相互に考えるよい機会でもあります。農林水産業県として、行政も農林水産業関係者も、学校も、農林水産業に身を託し、生きていこうとする若者を育てるという原点に返って考える必要があると思います。そして、農林水産業行政にも、今後こうした見地からの産業理解促進と魅力ある農林水産業づくりのための、より一層の施策の展開が望まれるところであります。実業高校は、その時代、時代の社会を映す鏡であります。農林水産業が元気になれば、おのずと学校もそれにこたえる姿が要請されてくるものと考えます。
 そこで、農政部長並びに林業水産部長にお伺いいたします。21世紀の県勢指針となる県の新しい総合計画が策定され、これに伴い、関連する部門別計画である農業、林業、水産業の基本計画も策定、あるいはまとめられる現状にありますが、農林水産業行政を所管する立場から、今次の高等学校新整備計画案策定を契機に、今後の産業理解促進と魅力ある農林水産業づくりについてどのように取り組んでいくお考えか、力強い所信をお示しいただきたいと思います。
 以上で私の関連質問を終わります。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) 今後の農業理解の促進、それから魅力ある農業の構築ということについての考え方でありますけれども、21世紀は農業は花形産業であるとおっしゃってくださる方もおられます。そのぐらいに農業・農村の果たしている公益的役割、大事さということについての関心、注目が集まっているところでありますけれども、一言に戦後農政の推移を考えますと、自作農主義のもとで8割ぐらいが兼業農家で、しかもそれを支えてきた食管制度があったということが大きく揺らいでいるわけであります。そういう大転換期に今遭遇しているということで、花形産業と言われながらも、実際に若者がそこの農業に魅力を感じていくための、そういう環境づくりということをいかにするかが大事かと思っております。新しい農業計画におきましては、他産業従事者並みの所得を確保できるような主業型農家1万1、000戸を育てていきたい、これを中心とした地域営農の構築を目指していきたい、こういう目指し方をいたしております。
 それで、主業型農家を育成するためのまず第一歩は、そういう方々に加速度的に農地の利用集積を高め、経営規模を拡大し、新たな就農希望者の受け入れ条件をつくってあげるとか、生産法人化を進めるとか、そういうような新しい営農システムのもとで、若者も希望を持って就農したいというような環境づくりを県、市町村、関係機関ともどもに一緒になってやっていかなければならないという考え方を持っております。そしてまた、先ほど来、御提言のありましたとおり学校ぐるみ、地域ぐるみ、幼少のころから段階ごとにその農業・農村の担い手としての育成をみんなでやっていくというような、そういう運動についても一生懸命やらせていただきたいというふうに思っております。
   〔林業水産部長佐藤克郎君登壇〕
〇林業水産部長(佐藤克郎君) 林業あるいは水産業の理解とそれから魅力づくりということでございますが、本県の林業・水産業は広大な森林あるいは日本有数の漁場を背景といたしました生産活動によりまして、林産物あるいは水産物の供給、そしてまた、就労の場の確保など、本県の基幹産業であるわけでございます。同時にまた、林業あるいは水産業は県土の保全、さらには水源の涵養、また海の環境保全といった多面的な機能を果たしておるということで、今後一層その振興を図っていかなければならないというふうに考えております。
 一方、そういった中で、林業・水産業を取り巻く情勢というものは、御案内のとおり木材価格あるいは魚価の低迷、あるいはまた、労働力の減少とか高齢化、そういった厳しい状況に置かれておるわけでございます。こうした中で現在、林業基本計画あるいは水産業基本計画の策定を進めておるわけでございますが、これの中では林業につきましては間伐の推進とか林道網の整備、さらには木材の高次加工施設の整備による付加価値の高い木材製品の生産、さらに豊富な広葉樹資源を活用したシイタケや木炭の生産拡大、また水産業につきましては、つくり育てる漁業の推進とか新鮮で安全な水産物を提供するためのハセップ方式の導入、あるいはまた、加工体制の整備による水産物の高付加価値化の推進、そういったものに積極的に取り組んできまして、林家あるいは漁家の所得向上に努めるということ、また同時に、生活環境の整備や就労条件の改善によりまして、若い担い手が意欲を持って就業できる魅力ある林業、あるいは水産業の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、林業あるいは水産業に対する理解の促進を図るということについては、何よりも森林とかあるいは海に触れ合う機会を多くするということが大切だと思うわけでございます。そういう観点に立ちまして、これまで以上に学校教育との連携を図りながら、小中学生の学校林を活用した学習体験でありますとか、緑の少年団あるいは海づくり少年団活動の推進に努めるほか、さらにはUターン、Iターン希望者等に対する相談活動の充実、あるいは山村、漁村等、都市との交流の促進などを図ってまいりまして、林業、水産業に対する理解の促進、そしてまた、魅力ある産業づくりに取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。
   
〇副議長(吉田洋治君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時47分 休 憩
   
出席議員(48名)
1番 及川敦 君
2番 飯沢匡 君
3番 樋下正信 君
4番 照井昭二 君
5番 柳村岩見 君
6番 小野寺研一 君
7番 工藤大輔 君
8番 川村農夫 君
9番 佐々木順一 君
10番 佐藤力男 君
11番 及川幸子 君
12番 阿部静子 君
13番 阿部富雄 君
14番 田村誠 君
15番 岩城明 君
16番 中 屋 敷十 君
17番 千葉伝 君
18番 佐々木大和 君
19番 水上信宏 君
20番 阿部敏雄 君
21番 川口民一 君
22番 小野寺好 君
23番 斉藤信 君
24番 伊沢昌弘 君
25番 田村正彦 君
26番 上澤義主 君
27番 瀬川滋 君
28番 藤原泰次郎 君
29番 船越賢太郎 君
30番 谷藤裕明 君
31番 菊池勲 君
32番 佐々木一榮 君
33番 黄川田徹 君
35番 高橋賢輔 君
36番 小原宣良 君
37番 長谷川忠久 君
38番 千葉浩 君
39番 吉田洋治 君
40番 工藤篤 君
41番 菅原温士 君
43番 山内隆文 君
44番 折居明広 君
46番 藤原良信 君
47番 及川幸郎 君
48番 菊池雄光 君
49番 佐々木俊夫 君
50番 那須川健一 君
51番 吉田秀 君
欠席議員(3名)
34番 伊藤勢至 君
42番 佐藤正春 君
45番 村上惠三 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時5分 再 開
〇副議長(吉田洋治君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第2、一般質問を継続いたします。照井昭二君。
   〔4番照井昭二君登壇〕(拍手)

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