平成11年9月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇4番(照井昭二君) 花巻選挙区選出、自由民主クラブ照井昭二でございます。
 今議会において一般質問の機会をいただき、深く感謝申し上げます。
 通告に従いまして順次質問させていただきます。
 最初に、農業の振興についてお伺いいたします。
 現在、世界では三つの大きな戦争が行われていると言われております。一つ目がエネルギー資源をめぐる石油戦争であります。二つ目が情報戦争であると言われております。ことしの1月現在で、インターネットに接続されているホストコンピューターの数は、アメリカが世界全体の7割近くを占めていると言われ、断トツの多さとなっております。三つ目の戦争がDNA戦争、遺伝子戦争であります。遺伝子組みかえ技術による農作物種子生産の主導権争い、シェア争いであります。
 大豆、トウモロコシでは、最大の農業国であるアメリカにおける遺伝子組みかえ種子の作付面積は30%、カナダの菜種は40%に近いと推測されております。この割合から見ると、日本への輸入量も相当な割合に上るものと推定されます。我々は、知らない間にそれを食べている、あるいは選択の余地なく食べさせられているわけであります。ドイツなどのヨーロッパ諸国では、こうした種子やこれを材料とした食品を全面輸入禁止、自国内での作付禁止の方向と聞いております。安全性に関しては、まだまだ研究と議論が続くものと思われます。
 厚生省による安全性を確認された遺伝子組みかえ食品は毎年増加しておりますが、これらの食品についても消費者から信頼と安心を得るまでには至っておりません。遺伝子組みかえ食品や、いわゆるクローン牛などに対する消費者の拒否反応は相当根強いものがあります。むしろ食品に対しては、より安全な、より安心なものを求めており、この傾向は今後ますます高まっていくものと思われます。
 農水省では、2001年から遺伝子組みかえ食品30品目に表示の義務づけを決定したと聞いておりますが、生産から加工、流通の段階まですべてを把握することは確かに困難であると思います。しかし、幸いなことに、本県は、我が国の食料生産基地、食料供給基地であります。本県の農畜産物については、遺伝子組みかえ食品であるか否かを特定し、把握することは可能と考えます。そこで、本県の農畜産物は遺伝子組みかえ食品ではないとの逆の積極的な表示を行い、安全性の付加価値を高めて、消費の拡大、生産の拡大を図る施策を推進されてはいかがでしょうか。
 次に、有機栽培農業についてお伺いいたします。
 今、環境保全型農業として有機栽培農業が見直され、再評価されております。農業の価値に、経済的な側面のみではなく、環境保全の側面、社会的、文化的な側面などの多様な機能が認められていくことは、農地を守る農業者にとって大変喜ばしいことと存じます。
 県においては、ことしの2月から有機農産物等認証制度を施行したと伺っておりますが、その普及は進んでおりますでしょうか。また、今年度の全体の作付面積に対する認証制度による作付面積の割合はどの程度となっているのでしょうか、お伺いいたします。
 これまでの農業は、省力化と生産性の向上を図るため、農作業の機械化を進めるとともに、農薬と化学肥料を使用してきました。有機栽培農業は、無農薬、無化学肥料に近づければ近づけるほど手間と暇がかかり、生産コストも高くなります。また、栽培技術としては、高度な技術と地道な研究、長い経験が必要とされます。環境保全型、自然循環型農業を促進するためには、その栽培技術の研究と普及の促進、農業技術者の養成が急務と考えます。新しい岩手県総合計画において、豊かな環境と調和した農業の振興がうたわれておりますが、その具体的推進策についてお示しいただきたいと存じます。
 次に、農業後継者の養成のあり方についてお伺いいたします。
 現在、我が国の食料自給率は41%となっております。10数億の人口を抱える中国では、既に食料輸入国になりました。今後、開発途上国での人口の急増が予想される中、食料自給率をいかに向上させるかは、中長期的には我が国の死命を制する大きな課題になってくるものと考えております。多くの食料を輸入に依存している我が国にとって、アメリカなどの輸出国において一度天候不順などにより生産量が激減した場合には、我が国は食料危機に見舞われることは自明であります。新農業基本法におきましても、我が国の自給率をいかに向上させるかを大きな課題としております。
 このような中で、我が国の総合食料供給基地を自認する本県にとって、その担い手である後継者の養成をいかに行っていくかは大きな課題であると存じます。新しい岩手県総合計画でも明らかにされておりますように、今後、本県の産業構造は大きな変革が予想されます。少子・高齢社会の中で、農業後継者についても今から中長期的な視点での対策を講じていく必要があると思います。知事は、この点についてどのように認識されておられるのか、御所見を賜りたいと存じます。
 次に、教育問題についてお伺いいたします。
 先月の25日に、県議会の教育問題特別委員会調査で盛岡スコーレ高等学校を訪問する機会がございました。恵まれた施設と校長先生と心を一つにした教職員、専門的な知識を有する数多くの非常勤講師や社会人講師が招かれ、私立高校ならではの個性にあふれたすばらしい教育現場でありました。校長先生のあいさつの中に、現在、いい学校だと言われている高校には二つのタイプがあり、一つは、有名大学に多くの生徒を入れている高校、もう一つは、甲子園とかインターハイで優勝するなど、スポーツに力を入れている高校です。しかし、東京大学などの有名大学に入れる力を持った高校生はほんの一握りです。スポーツで活躍し、優勝できる生徒もごくわずかです。成績やスポーツで1番をとることを目標にするのは、このような特定の力を持つ生徒を対象にした教育になってしまいます。大勢を占めるのは、ごく平凡な能力の生徒たちです。このような生徒に生きる目標と希望を与えられない教育は本当の教育とは言えないと思いますというお話がありました。現在の高校教育の抱える課題に対し、多くの示唆を与えるお話であったと思います。
 今後の本県の私立高校を考えた場合、一番の問題は少子化への対応であり、この問題は、学校経営の根幹にもかかわる重要な課題であります。盛岡スコーレ高等学校のように、その建学の精神にのっとった教育を十分に行っていくためにも、安定した学校経営を確保することが重要であると考えております。
 そこでお伺いしますが、今後の急速な少子化に対応した私立高校の振興にどのように取り組まれるのでしょうか。また、私立高校の振興に当たり、特に少子化という観点から見た場合、公立高校との協調による対応も重要と考えますが、今後、私立と公立の協調について、どのように対応するお考えかあわせてお伺いいたします。
 過日、県教育委員会では県立高校の再編計画案を発表されました。私は、少子化が進展し、生徒数の激減が見込まれる中で、10年後、20年後のことを考えた場合、少なくとも再編は不可避であると考えております。しかし、各論の中では、慎重な検討が必要なものがあるように思えるのであります。私の地元花巻におきましても、宮澤賢治が教壇に立った花巻農業高校、この高校は、教育施設としてだけではなく、地域に開かれたコミュニティーとして、文化施設としての役割も担い、年間2万人もの多くの人たちが全国各地から訪れております。この高校と他校との統合再編が大きな論議を呼んでおります。各地域、各界各層から多くの要望や新たな提案がなされていることは新聞紙上等で御案内のとおりであります。私は、中長期的視点に立った場合、我が国の総合食料供給基地たる本県の中でも、その中枢に位置する岩手中部の花巻地域と北上地域が、今、多様な分野で連携、協調した取り組みが進みつつある状況の中で、花巻農業高校と北上農業高校の統合再編こそが将来に禍根を残さない選択ではないかと考えております。教育長の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
 次に、自然公園の保護、利用についてお伺いいたします。
 本県は、十和田八幡平など二つの国立公園、早池峰など二つの国定公園、花巻温泉郷など七つの県立自然公園を有し、その指定面積はあわせて約7万2、000ヘクタール、県土面積の約4.7%ほどになると承知しております。この面積は、全国順位で29位、県土に占める割合で見ると、何と、京都、広島に次いで下から3番目、全国順位で45位とのことであります。東北6県では、宮城県の県土面積の25%、他の県も軒並み10%以上となっている中で、最低の数字であります。また、これまで幾たびか指定区域の拡大を含む自然公園区域の見直しの動きがあったと聞いておりますが、なかなか目に見えるものにはなっていないように思われます。
 私は、現在の本県の自然公園の指定状況は、全国2番目の広大な県土と、その豊かな自然を誇りとし、環境先進県を標榜する本県としては、いささかお寒い数字ではないかと思っております。もちろん単純に指定面積の多寡で論じるべきではないと存じますが、数多くのすぐれた自然資源を有する本県において、その保護と適正な利用を図るためには、自然公園としての意味合いが薄れた地域の見直しを図る一方、指定の拡大を積極的に進める必要があると考えますが、今後の取り組み方向について知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、具体的にお伺いいたしますが、花巻温泉郷県立自然公園は、花巻温泉周辺の宅地化が進展する一方、景観豊かなブナの原生林などを有する豊沢ダム周辺地域が広大な未指定地域として残っております。この豊沢ダム周辺地域は、現在、主要地方道花巻大曲線の整備が進められており、また、県の野外活動センターが設置されております。この地域に指定を拡大し、自然公園の趣旨であるすぐれた景観の保護と適正な利用を図るべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、主要地方道花巻大曲線の整備についてお伺いいたします。
 花巻市と沢内村間の整備が昭和61年の着工以来進められておりましたが、中山トンネルの完成により平成14年に開通、供用開始の見込みと伺っております。
   〔副議長退席、議長着席〕
 このルートは、盛岡市、雫石町、沢内村、湯田町、北上市、花巻市を結ぶ、いわゆる8の字ルート交通網として、この地域の人的交流の促進はもちろんのこと、経済交流や当地域の自然を利用した観光の促進が一層図られるものと、その早期完成を地域住民は熱い思いで期待しているところであります。
 しかし、この路線のちょうど8の字を結ぶ交差点のところに豊沢ダムがあります。このダムは、5、000ヘクタールの農地の水源として、大変重要な役割を果たしております。また、下流には花巻南温泉峡の温泉群が位置しております。昭和35年のダムの完成以来、このダムの堤体を主要地方道花巻大曲線の道路として供用しております。中山トンネルが開通し、8の字ルートが完成すれば交通量が大幅に増大し、大型車両も利用することになると予測されますが、ダム堤体への構造的な影響、強度的な危険が懸念されるところであります。また、ダム堤体道路部分は片側1車線のすれ違いもままならない状況にあり、今後、この部分が大きな隘路となるものと危惧されます。この8の字ルートの機能を十分に発揮させるためにはこれらのネックの解消がぜひとも必要と考えますが、いかがでしょうか。8の字ルートの全面的な完成時期の見通しとあわせてお考えをお聞かせ願いたいと存じます。
 次に、花巻空港臨空都市構想についてお伺いいたします。
 花巻空港は、昭和39年に開設されて以来、その延べ利用客数は約700万人に達し、観光客の大幅な増加を初め、北上、花巻地域への工業集積が飛躍的に進むなど、本県経済の発展に大きく貢献してまいりました。平成10年度には、輸送力の増強を目指し、大型機の就航を可能とすべく、滑走路の2、500メートル延長工事など拡張整備に着手されたところであり、県民の利便性の向上はもとより、本県の飛躍的発展に大きく貢献するものと期待され、県民ひとしくその早期完成を心待ちにしているものと存じます。
 このような中で、県におきましては、この6月に拡張整備後の空港の機能を最大限に生かすことを目的とした花巻空港臨空都市構想を策定されましたことは、まことに時宜を得たものと存じております。この構想におきましては、花巻空港からの距離に応じて地域を分け、それぞれの地域特性に応じた振興策を進めることとされており、空港機能の波及効果が県下全域に及ぶことを目指しているところであります。花巻空港は県民の空港という観点からも、大いに評価できるものと考えております。この構想の推進によりまして、本県経済の一層の活性化が図られるものと期待しているところであります。
 そこでお伺いいたしますが、空港機能を最大限に活用し、本県の振興に結びつけるためには、観光を初めとして、ビジネス利用の拡大を図る必要があると存じますが、県として花巻空港の利用促進にどのように取り組むこととしているのかお示し願いたいと存じます。
 また、県北・沿岸地域の振興が本県にとって極めて重要な課題であると存じますが、当県北・沿岸地域へ空港機能の波及を促進させるため、どのような施策を展開するお考えなのかあわせてお伺いいたします。
 次に、緊急雇用対策についてお伺いいたします。
 国においては、現下の厳しい雇用失業情勢に対処するため、国や地方自治体においても積極的に雇用・就業機会を創出することが重要であるとの認識のもとに、さきの臨時国会において総額2、000億円に上る緊急地域雇用特別交付金を創設したところであり、これによりまして30万人強の雇用創出を見込んでいると聞いております。この事業は、都道府県や市町村が、それぞれの地域の実情に応じて緊急に対応すべき事業を実施することにより雇用及び就業機会の創出を図ることとされております。地方分権化が進む中で、各自治体の手腕が問われるところであります。
 今議会に提案されております議案によりますと、本県にはこの交付金が22億4、100万円交付され、これを財源として緊急地域雇用特別基金を設置することとされております。
 そこでお伺いいたしますが、県は、この基金を本年度は8億6、400万円余を取り崩して事業を行うこととしておりますが、雇用創出に向けて、どのような点に重点を置いて事業決定されたのかお伺いいたします。また、この交付金による事業は本年度から平成13年度までの3カ年事業と伺っておりますが、来年度以降の見通しについてもあわせてお伺いいたします。
 次に、新事業の創出についてお伺いいたします。
 本県経済を一層活性化させ、雇用の確保を図るためには工業の振興を欠かすことはできないと存じます。私の地元花巻市におきましても、企業誘致を積極的に進めるほか、花巻市起業化支援センターにおいて貸し工場や研究室を設置し、新たに事業を起こす人や新たな分野へ進出しようとする企業を積極的に支援し、新事業の創出に取り組んでいるところであります。
 このような中で、国におきましては、近年の厳しい経済情勢に対応して、新事業の創出を促進することにより経済の活性化や雇用の確保を図るため、昨年末の臨時国会においてテクノポリス法や頭脳立地法を包含した新事業創出促進法を制定したことは御案内のとおりであります。本県におきましては、テクノポリス計画や頭脳立地計画等に基づく積極的な施策展開により、北上川流域を中心として高度技術産業集積が形成されるとともに、各種の産業支援機関が設立されるなど、技術、人材、その他の産業資源が蓄積されてきているところであります。今後一層地域経済の自立的発展を図るためには、これらの地域産業資源を有効に活用して、新規創業や新製品、新技術の開発など、新事業創出を促進することが極めて重要であると考えるところであります。
 そこでお伺いしますが、県におきましては、これまでのテクノポリス計画や頭脳立地計画等の成果を踏まえて、今後どのような施策展開を図ろうとしているのかお示し願います。
 次に、医療体制の整備についてお伺いいたします。
 県立病院などの医療設備や診療科目の充実は、県民の命を守り、保健福祉の向上を図る上で極めて重要な課題であると存じます。地域医療としては、民間の医療施設も充実してきており、医学の進歩に伴い、県立病院に対しては、より高度な高次の医療を求める声が強まっております。また、交通量の増大に伴う交通事故などの災害時における救急医療体制の充実も重要であります。広い県土を有する本県の場合、高次・救急医療機能を持った施設は数カ所必要と考えます。中長期的な視点に立った場合、県立病院に対して地域医療の機能を果たすことはもとよりとして、さらに高次・救急医療機能をも強く持たせる方がよいと考えますが、いかがでしょうか。
 高次医療について、具体的に一つお伺いいたします。
 一番身近な歯科医療ですが、一般の治療はいわゆるかかりつけ歯科医で十分なのですが、医学の進歩により、より高度な治療と設備が必要な口腔外科があります。例えば、全身麻酔を伴うあごの骨までも含む外科手術を行う場合、入院が必要とされる治療や心臓病患者の治療、肝炎などの危険な感染が伴う場合などです。現在、このような高次医療が必要な患者の場合、一般の歯科医は盛岡か仙台の病院を紹介せざるを得ません。地域の中核的な県立病院に、このような口腔外科の設置など高次な医療機能の整備が必要と考えますが、県のお考えをお聞かせ願いたいと存じます。
 以上をもちまして私の質問を終了させていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 照井昭二議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、農業後継者の養成・確保対策についてでございますが、先般、21世紀初頭の本県農業の指針として策定いたしました岩手県農業・農村基本計画におきましても、まずもって意欲ある担い手の確保を重要な柱として位置づけまして、他産業従事者と遜色のない所得を確保し得る主業型農家を重点的に育成することとしてございます。このため、主業型農家への農地の利用集積を高めるなど農業構造の再編を進めて、農家の子弟はもとより、他産業からの就農希望者が意欲を持って就農できる受け皿づくりを積極的に展開をする考えでございます。もとより、後継者の育成に当たりましては、国民の暮らしと命を支えている農業の持つ多面的、公益的な役割についても、子供世代から農業体験などを通じて理解を醸成するとともに、農業高校や農業大学校における実践的な教育の充実など、体系的、総合的な取り組みが肝要であると認識をしております。私も現地に出向いて、生産活動や地域づくりに生き生きと躍動している若者に接して意を強くしているところでございますが、こうした動きをさらに加速をするために、本県の持つ多彩な立地条件のもとで、市町村、関係機関と連携を密にしながら、一層の条件整備を進めて、次代の農業を担うにふさわしい気概を持った青年の育成に努めていく考えでございます。
 次に、自然公園の保護、利用についてでございますが、本県は、豊かな緑と清らかな水に恵まれた雄大な自然を有しておりまして、はるか昔より先人の方々の努力によって守り育てられてきましたこうしたすぐれた自然は、本県特有の文化や風土の源であるとともに、今を生きております私たちや私たちの子孫が、将来にわたって健康で潤いのある生活を営む上で欠くことのできない基盤であると考えております。中でも本県の11の自然公園は、県民のみならず国民が自然のすばらしさに触れる保健休養の場、あるいは自然をより正しく理解する場として重要な機能を果たしております。
 また、これらの自然公園は、厳正に自然を保護する地域である県内に15ございます自然環境保全地域とともに、本県のすぐれた自然を保護し、将来の世代に継承していく上で、極めて大きな役割を担っております。このように自然公園は、人と自然との共生の立場から、自然の保護と適正な利用のために重要なものでございまして、制度の適切な運用が必要であると考えております。したがいまして、今後、市町村や土地所有者あるいは地域住民の方々などの意向を尊重しながら、規制の内容が自然の状況にそぐわなくなった地域があれば、指定地域の見直しや、あるいは特別地域や普通地域の区分の見直しを行ってまいりますとともに、自然公園にふさわしい地域につきましては、でき得る限り指定を拡大する方向で取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、新事業の創出についてでございますが、県におきましては、これまでのいわゆるテクノポリス計画や頭脳立地計画などの推進により蓄積をされた技術、人材などの地域産業資源を有効に活用しながら、新製品の開発など新たな事業の創出を促進して、地域経済の自立的発展と雇用の確保を図るため、本年の5月になりますが新事業創出促進法に基づいて基本構想を策定したところでございます。この基本構想におきましては、意欲的な創業者や中小企業者に対し、研究開発から事業化までの一貫したサービスを提供する総合的な支援体制を整備することが新事業の創出にとって極めて重要であることから、財団法人岩手県高度技術振興協会を中核的な支援機関として位置づけをして、花巻市起業化支援センターなどのいわゆる産業支援機関、さらには岩手大学、県立大学などの高等教育機関などとの有機的なネットワークを構築することとしております。このため、これらの産業支援機関などが一堂に会して情報交換や連絡調整を行う協議会を設立いたしますとともに、企業などのニーズに応じて適切な支援制度などを紹介、あっせんをする総合的な窓口機能の強化を図るために、中核的支援機関にコーディネーターを配置するほか、マーケティング等の専門的な相談に応じるアドバイザーの登録派遣制度を創設するなど、きめ細やかな支援策を展開して、もってベンチャー企業の育成や創造的な企業の新分野への進出などを一層促進していきたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので、御了承お願いいたします。
   〔農政部長佐藤徳兵衛君登壇〕
〇農政部長(佐藤徳兵衛君) まず、県産農産物は遺伝子組みかえ食品ではないことを表示することについてでありますが、現在、国内に流通している遺伝子組みかえ食品は、大豆やトウモロコシ、菜種など厚生省が安全性を確認した特定の輸入農産物及びその加工商品に限られているところであり、国内で生産される農産物については、遺伝子組みかえ食品ではないかとの疑念を生じる余地はないものと考えております。県産農産物の有利販売を図るためには、生産地や栽培方法等を明らかにし、消費者の県産農産物に対する信頼性を高めていくことが重要でありますので、県といたしましては、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律、いわゆるJAS法の改正によって県名表示が義務づけられます原産地表示制度、これを活用するとともに、いわて純情米、いわて純情りんご、いわて牛などの統一ブランドのもとに、純情産地いわてを強調した販売戦略を展開してまいりたいと考えております。
 次に、有機農産物等認証制度の普及状況についてであります。本県の認証制度は本年2月からスタートしたところでありますが、化学合成農薬や化学肥料を全く使用しない有機農産物のほか、農薬の使用をこれまでの慣行の半分以下に抑える減農薬栽培農産物等も対象としております。認証機関としては、岩手県経済農業協同組合連合会、環境保全型農産物生産・加工・流通認証協議会、日本オーガニック農産物協会岩手県支部及び全国MOA自然農法産地支部連合会岩手県連合会の4団体を認定しております。これまでに各認証機関が生産を承認した面積は1万1、768ヘクタールとなっており、作目別では水稲がほとんどで、県内における水稲作付全体の18.5%に相当する1万1、744ヘクタールとなっております。その他の主な品目は、ソバが作付全体の1%、雑穀が3%、野菜は18品目が承認されておりますが、合わせて作付面積全体の0.1%弱となっております。
 次に、環境と調和した農業の具体的な推進策についてでありますが、これからの農産物生産は、これまでの生産性重視の観点に加え、消費者が求める安全性や環境に配慮した持続的農業の推進が不可欠となっております。本県は、夏期冷涼な気候で害虫の種類や発生回数が少ないため、農薬の使用が少なくて済むという有利性がありますが、新しい農業計画におきましても、豊富な有機質資源を活用した健康な土づくりを基本に、天敵や有用微生物を利用した病害虫の防除技術など、化学肥料や化学合成農薬の使用量を一層節減する技術の開発を農業研究センターにおいて総合的に行うこととしております。また、その普及に当たりましては、人と環境にやさしいいわて型農業確立運動を積極的に展開し、モデル地区での実証や実践事例を積み重ねるとともに、技術講習会の開催等を通じて指導者や先導的農業者の育成を図りながら、安全・安心な食料供給基地としての評価を高めるよう努めてまいりたいと考えております。
   〔総務部長武居丈二君登壇〕
〇総務部長(武居丈二君) 私立高校の振興についてでありますが、本県の私立高校は、それぞれの建学の精神に基づき、個性豊かで特色ある教育を実践し、本県学校教育の振興に大きな役割を果たしているところであります。しかし一方では、少子化に伴う教育対象人口の減少による厳しい経営環境の中で、経営基盤の強化や生徒一人一人の能力・適性に応じた教育への取り組みが求められているところであります。このことから、平成9年3月に各私立高校等が構成員となっている社団法人岩手県私学協会が岩手県私立高等学校中長期計画を策定したところであり、各学校はこの計画により主体的に経営分析や生徒募集活動の強化など経営の安定化や特色ある教育の実践、40人学級への対応、学科・コースの新設など教育内容の充実に取り組んできたところであります。この計画は平成13年度で終了することから、同協会では、今後の少子化による生徒減少などの諸課題に適切に対応するため、本県私立高校教育の振興指針となる新しい計画を策定することとしているところであります。
 県といたしましては、公教育の一翼を担っている私立高校の自主性を尊重しながら経営改善事業や特色ある学校づくり推進事業、施設整備事業、教員の研修事業など、各般にわたり積極的な助成措置を講じてきたところであり、今後におきましても、私立高校が個性的で魅力ある教育の場となるよう、助成の充実に努めてまいりたいと考えております。
 また、私立高校と公立高校との協調につきましては、本県の高校教育の進展が、公立と私立が相競い互いに両立してこそ達成され得るとの認識のもとに、これまでも少子化に伴う生徒減少などの課題について、私立高校関係者と県教育委員会が意見交換をする場を設け、相互に連絡調整をしながら対応してきたところであり、今後におきましても本県高校教育の充実のため、さまざまな教育課題について、公私間の協調が図られるよう努めてまいりたいと考えております。
   〔生活環境部長村上勝治君登壇〕
〇生活環境部長(村上勝治君) 花巻温泉郷県立自然公園の指定の拡大についてでありますが、花巻温泉郷県立自然公園は、昭和36年に花巻温泉を中心に1、587ヘクタールが指定され、現在に至っているところでございます。御指摘の地域はこの温泉郷県立自然公園の西側に位置しておりまして、中山峠から毒ヶ森を経て駒頭山に至る豊沢ダム周辺地域でありまして、昭和53年の環境庁の自然環境保全基礎調査において特定植物群落に選定されましたブナ林を有するなど、すぐれた自然が残されていることは御案内のとおりであります。この地域の保護を図るため、平成7年には花巻市から県に対して、厳正に保全を図ることを目的といたします自然環境保全地域に指定するよう要望があったところでありますが、その後、当時の営林署が伐採をしない方針を打ち出したことを受け、花巻市において現状でも保護を図れるとしてきたところであります。また、この地域につきましては大ヘンジョウの滝、大空の滝などのすぐれた景観に着目いたしまして、自然環境保全地域ではなくて、保護と適正な利用を目的といたします自然公園の方がふさわしいのではとの意見もあると聞いております。
 県といたしましては、今後、地元から花巻温泉郷県立自然公園区域の拡大、あるいは自然環境保全地域の指定について意向が示された場合には、それを尊重しながら検討してまいりたいと考えております。
   〔土木部長大石幸君登壇〕
〇土木部長(大石幸君) 主要地方道花巻大曲線の整備についてでありますが、西和賀地方は地形的、気象的な制約から、これまで道路整備がおくれていることは御案内のとおりでございます。このため、近年この地区を結ぶ8の字ルートの道路網につきましては、重点的に整備を進めているところでございます。特に、主要地方道花巻大曲線の整備につきましては、まず交通不能区間の解消を図り、次に冬季間も含めた通年通行を確保し、さらに1車線区間の抜本改良と段階的な整備を行うことが必要であると考えております。現在、交通不能区間の解消と通年通行を確保するため、中山峠のトンネル化と川舟工区の整備を重点的に進め、平成14年度には8の字ルートの暫定供用に向け、全力を挙げて工事を進めているところであります。また、沢内側の約2.4キロメートルの未改良区間につきましては平成14年度から工事に着手する予定であり、この整備によって、通年通行を確保することとしております。
 なお、豊沢ダムの隘路区間の解消につきましては、ダム堤体を迂回する大規模な事業となることが予想されることなどから、その工事着手は沢内側の整備後になるものと考えております。8の字ルートの全面的な完成時期の見通しにつきましては、山伏トンネルの完成供用や国道107号の杉名畑トンネルの貫通など、全体としてはおおむね順調に進んでいると考えておりますが、県道花巻大曲線や国道107号などにはまだまだ隘路区間を抱えており、県全体の道路整備プログラムに基づき順次整備されることになっておりますので、その時期については明確にお示しすることは難しいものと考えておりますが、西和賀地域の振興を図る上でも、早期整備に向けて鋭意努力してまいりたいと考えております。
   〔企画振興部長渡辺勲君登壇〕
〇企画振興部長(渡辺勲君) 花巻空港臨空都市構想についてでございます。
 まず、花巻空港の利用促進の取り組みにつきましては、航空会社の経営合理化に伴う路線の再編など地方空港を取り巻く環境がますます厳しくなっている中で、今後の航空需要の増大、国際化や地域間交流の活発化に対応して、花巻空港の利便性を一層高めていくためには、岩手県空港利用促進協議会と一体となって、全県的な利用促進運動をさらに強力に展開していくことが極めて重要であると考えてございます。こうしたことから、これまでも花巻空港からの新たな路線の開設、既存路線の増便やダイヤの改善など、航空輸送サービスの充実について航空会社に要望するとともに、国内路線の利用促進キャンペーンの実施、国際チャーター便の運航拡大のための支援などに取り組んでまいってきたところでございます。今後、これら取り組みの一層の充実強化を図るとともに、地域の特性を生かした観光資源の発掘・活用や新しい観光ルートの開発、ビジネスを通じた県内外との交流拡大に努めるほか、さまざまな空港関連情報の発信など、この臨空都市構想で掲げた利用促進策について積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、県北・沿岸地域への空港機能の波及についてでございますが、花巻空港は本県の空の玄関であり、県民の貴重な財産でありますことから、滑走路の延長整備など空港機能強化の効果を県下全域に、とりわけ県北・沿岸地域に波及させていくことが重要でございます。こうしたことから、東北新幹線盛岡-八戸間の整備のほか、東北横断自動車道釜石秋田線、三陸縦貫自動車道を初めとした高規格幹線道路の整備など高速交通網の整備により、県北・沿岸地域から空港までの交通アクセスの改善を図るとともに、インターネットを初めとする各種情報媒体の活用により、県北・沿岸地域を対象とした広域観光ルートの紹介や県内各地とのネットワークの形成による地域情報の提供を図ることなど、この臨空都市構想で明確に位置づけたところでございまして、今後ともハード・ソフト両面にわたる施策を積極的に展開してまいりたいと考えてございます。
   
〇議長(山内隆文君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。
   
   〔商工労働観光部長合田武君登壇〕
〇商工労働観光部長(合田武君) 緊急雇用対策についてでありますが、本年7月における国内の雇用失業情勢を見ますと、完全失業率は4.9%、有効求人倍率は0.46倍と依然として厳しい状況にあります。このようなことから、国においては、臨時応急の措置として緊急地域雇用特別交付金制度を創設し、雇用・就業機会を創出することとしたところでありますが、本県におきましても、7月の有効求人倍率が0.48倍と厳しい状況にありますことから、国からの交付金を活用して、雇用創出のための事業を実施することとしたものであります。この事業の平成11年度分の決定に当たりましては、雇用創出効果及び緊急性の高い事業を最優先とするとともに、県事業につきましては、新しい岩手県総合計画との整合性を図りながら、教育、福祉、環境などに関連する事業を、市町村事業については、それぞれの創意と工夫による事業で、市町村の要望等を勘案しながら決定したところであります。とりわけ、国により雇用機会増大促進地域に指定されております久慈、宮古、釜石の各地域や、岩手山の火山活動により大きな影響を受けている地域については、特に配慮したところであります。
 また、平成12年度以降の見通しについてでありますが、県内における雇用創出の緊急性にかんがみ、早期に事業着手できるよう努めるとともに、できる限り前倒しして執行するほか、関係機関及び関係市町村と密接な連携を図りながら、雇用・就業機会の創出が図れるよう努めてまいる考えであります。
   〔保健福祉部長関山昌人君登壇〕
〇保健福祉部長(関山昌人君) 医療提供体制の整備についてでありますが、まず県立病院における高次救急医療機能につきましては、各保健医療圏において、その拠点となる県立病院等による病院群輪番制を実施するなど2次救急医療体制を整備するとともに、各保健医療圏内で対応できない重篤救急患者の医療を確保するために、基本的には100万人に1カ所とされている救命救急センターについて、広い県土であるなどの事情を勘案の上、岩手県高次救急センターのほか、県立久慈病院救命救急センター及び県立大船渡病院救命救急センターを整備し、県内全域をカバーする3次救急医療体制の整備を図ったところであります。今後におきましても、各保健医療圏における2次救急医療体制の救命救急医療機能の水準をより一層高めるため、現在策定を進めております新しい保健医療計画において、県民が安心して暮らせるよう救急医療に24時間対応できる体制を明確にするなど、県立病院等における救命救急医療機能を充実していく必要があると考えております。
 次に、歯科口腔外科の県立病院への整備についてでありますが、県内では2カ所の病院と62カ所の歯科診療所におきまして歯科口腔外科の標榜が行われているところであります。県といたしましては、これら64の医療機関が、かかりつけ歯科医と相互に連携し十分に機能を発揮することにより、地域住民の歯科医療ニーズにこたえていくことが望ましいと考えており、これとあわせて県立病院の機能につきましても、地域の実情等を勘案しながら関係機関等の意見を踏まえつつ、検討を進めてまいりたいと考えております。
   〔教育長大隅英喜君登壇〕
〇教育長(大隅英喜君) 県高等学校の新整備計画案についてでありますが、この計画につきましては、県立高等学校長期構想検討委員会からの報告を尊重しながら、各地域の実態等をも総合的に勘案して、本年2月に中間まとめを発表し、5月にはこれからの県立高等学校について具体的な学校名を挙げた新整備計画案をお示ししたところであり、現在は、地域の方々へ説明を行い、御意見をいただいているところであります。新整備計画案における総合的な専門高校は、複数の専門学科を併設することにより、他の学科の専門領域も学ぶことが可能となることから、これからの産業構造の変化に適切に対応することができ、農業など専門教育の充実にも資することができるものであります。
 御指摘のとおり、岩手中部地域は本県農業の中枢となる地域であり、地域における農業教育の重要性についても十分に認識しているところでありますが、一方において、進路希望の多様化、急激な生徒減少などにより、農業教育の環境をどう整えるかが大きな課題となっております。また、当地域は空港を有し、臨空地区として今後、工業や商業の面においてもさらに発展が見込まれるところでもあります。こうした状況を踏まえ、当概地域に生徒の多様なニーズにこたえた専門的な教育が可能となる総合的な専門高校を計画したものでありますが、教育は地域の皆様に支えられて充実していくものでもあることから、これまでいただいた御意見をも参考とし、十分な検証を加え、成案を得たいと考えております。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後5時6分 散 会 

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