平成12年12月定例会 第8回岩手県議会定例会会議録

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〇49番(佐々木俊夫君) 自由民主クラブの佐々木俊夫であります。
 何十年も前から、本県議会のみならず各県でも、議長経験者は本会議での一般質問を遠慮するという慣例、不文律がありました。私も、平成5年から7年までの在任中はもちろん、退任してから今日までそれに従ってきましたが、それは妥当ではないとの意見もあり、会派で了解を得ましたので、本日前例を破り、以下質問させていただきます。
 まず、知事にお伺いいたします。
 岩手県は歴代、大変立派な知事をいただき、県勢発展をしてまいりました。中でも印象深く慕われている一人に、民選初代の国分謙吉知事がおります。国分知事は、みずから農民として蓄積された農業技術をひっ提げて県内くまなくめぐり、みずから農業指導を行い、食料増産時代とは言いながら、農民知事の愛称を捧げられました。
 増田知事は就任以来、まさに席の温まるいとまもなく県内各地をめぐり、各界各層の人々と交流対談し、民情に広く接してこられ、歴代知事に見られない記録的行動力であると評されております。これは、知事の若さとみなぎるエネルギッシュさであると申している方もおりますが、私は、知事の県政に取り組まれる積極性とまじめさのあらわれであり、知事室に腰を据えて施策を思案されるよりも、例え方が失礼かもしれませんが、先駆けしながら戦法、戦略を考えたと言われる織田信長タイプの、いわゆる行動理念型と考えたりいたします。
 今議会に提案された機構再編案も端的にはそのあらわれで、知事自身が総合政策室という参謀集団を引き連れて全軍の先頭を疾駆し、予算権と人事権を持つ総務部は後方から支援するという布陣に見られます。
 そこで、行動的に県内の各界各層に接し、現場に精通された知事は、顧みて、県民に何を思い、何を期待し、みずから何をなさなければならんと考えておられますか。その哲学を御披露していただきたいと思います。
 次に、県行政機構再編についてお伺いいたします。
 国においては、平成13年1月からの省庁再編で、現在の1府22省庁が1府12省庁に改編されます。これは戦後最大の大改革であり、その主たるねらいは内閣、官邸機能を強化し、いわゆる政治主導体制を確立するということであると言われます。このような時代背景があると思いますが、県ではこの議会に、本県の行政組織再編を目指す条例改正案を提案されました。これは、昭和27年以来の大改革というよりも、行政機構としては大きく発想を転換した、全国まれに見るものであると思います。この案を鋭意検討されてきた当局の努力とともに、この議会に提案された知事の英断に敬意を表するものであります。
 これは、昨年2月に策定した岩手県行政改革大綱に基づき、さらに昨年8月に策定した岩手県総合計画の揺るぎない実現を図るために、知事が主導権を持ったスリムで機動性と柔軟性を持った行政を展開し、ひいては、続発した不適切な事務処理の再発防止を図り、県民の県行政への信頼回復を図らんとする決意のあらわれであろうと思います。
 この行政機構再編については、去る11月7日の県政調査会で武居総務部長から概要の説明を受け、去る22日の本会議で提案理由の説明をいただきましたが、今回の機構再編の基本理念について、知事から説明をお願いいたします。
 以下の具体的事項については、その期するところを総務部長から御説明いただきたいと思います。
 第1は、この案を私なりに考えてみますに、今までの企画振興部が総合政策室と地域振興部に分けられ、総合政策室は、県の頭脳として知事の参謀本部的役割を担って先頭に立ち、地域振興部は、本庁と地方振興局や市町村の指導・調整に当たり、総務部は、予算と人事という最大の権能を持ちながら、各部局の後方支援的立場に回るということですが、このように総務部が業務組織の下位にいる事務組織は、私は寡聞ですが、全国の公共団体、各種団体、会社等にもない特殊な体制と思います。私は、率直に申して違和感を覚えますが、これによって事務、業務執行に全く支障が出ないのでしょうか。
 第2に、農政部と林業水産部を統合することは、第1次産業の総合的行政推進策としては理解できますが、部長の下に林業と水産におのおの局長を置くのは、一定の専決権を付与するためと説明されております。しかし、一方で、地方振興局では局長の下に部長がおります。このことを対比して見るとき、職名としては県民にわかりがたく、混同することになりませんか。もっとほかに名称がなかったのでしょうか。
 第3に、地方振興局の見直しについては、本庁機構再編を行った後の状況も勘案しながら、統合または業務の集約化を検討するとしておりますが、具体的に着手するのは何年ごろを目途に考えておられますでしょうか。見通しをお知らせいただきたいと思います。
 次に、過疎対策についてお伺いいたします。
 本年3月、過疎地域自立促進特別措置法が成立しました。これは、昭和45年の特別立法以来4度目の立法で、本県では24の市町村が指定され、ほかに7市町村を準過疎地域として県が指定し、前期5カ年計画をつくり施策を行っております。これらの市町村は九つの広域圏全部にわたっておりますから、まさに重要な県政課題であります。
 そもそも過疎化の要因はいろいろあると思いますが、端的に言えば、その地域の高校卒業後の若者のほとんどが離村し、その結果として幼児の出生数が少なくなるという悪循環に陥っていることだと思います。私は、若い男女に郷土愛がない結果だとは思いません。若者ですから、都会生活にあこがれを持つことは当然ですが、その原因は、地元に生涯を託すに足る職場がないからでありましょう。したがいまして、過疎化防止対策の基本は、地場産業の振興と企業誘致であろうと思います。
 県では、その認識に立ち、今日まで企業誘致に最大の努力を払ってきたのでありますが、残念ながら思うような成果とは言いがたく、最近では、むしろアジア諸国への移転や経営不振による工場閉鎖、あるいはリストラによる解雇の事例がふえて、せっかくUターンしてきた人たちも含めて、失業化に直面しております。企業はコマーシャルベースが当然とは申せ、由々しき事態であります。
 つきましては、昨今の企業誘致の実績と今後の見通し、さらには、工場閉鎖の現状と誘致企業に対する事業支援策について、商工労働観光部長にお伺いいたします。
 また、地場産業たる農業は、効率的でない中山間地農業で、昨今諸施策が行われておりますが、農政部長は、今実施されている施策をどのように認識し、過疎地域振興策としていかなる成果を上げているとお考えですか。この地域は、すべて林業地帯と申せますが、今後、除間伐等の施業を行っても、残念ながら林業が産業として成り立つ見通しは極めて厳しいものがあります。環境保全型森林が要請される昨今、営々として今日まで投資してきた針葉樹林化政策は重大な局面に逢着していると思いますが、林業水産部長の現状認識と今後のこの地域の林業対策についてお伺いいたします。
 次に、教育問題についてお伺いいたします。
 すばらしい才能を発揮し、すくすくと育ちつつある子供がいる陰に、凶悪な少年犯罪の続発や不登校、学級崩壊など、いまや病める子供たちが増加し、先鋭化しております。これは、少年個々や保護者等の問題ではなく、民族・国家の将来に重大な禍根となるものであります。
 したがいまして、21世紀の日本を支える子供たちの教育のあり方は、歴代政府の重要な課題になってきたのは当然であります。特にも現政府は、総理大臣の私的諮問機関である教育改革国民会議に対して、21世紀の日本を担う創造性の高い人材育成を目指し、教育の基本にさかのぼって、幅広く今後の教育のあり方について諮問したのであります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 先般公表された中間報告には、道徳教育、奉仕活動、教育の一律主義の改善、教師の評価制導入、教育振興基本計画策定など、注目すべき具体策を提案し、その見直しについては、幅広い国民的議論を経て、年末の最終報告書にさらに踏み込んだ提案を行うと見られております。
 いずれにしろ政府は、来年の通常国会を教育改革国会と位置づけ、相当の意気込みで臨もうとしております。したがいまして、いまや本県の教育行政推進も歴史的局面にあると思うとき、教育に造詣が深く、人格者として評判の高い前岩手大学学長船越昭治氏を県教育委員会の委員長にお迎えしたことは、大変意義があると思います。
 さて、日本人はそもそも教育熱心で、1億人が総教育者とも言われ、また百人百様の教育論があります。
 さる11月7日に、私たち総務常任委員会で県立大学を訪問した際、西澤学長さんが、昨今、IT時代を迎えて、日本の子供たちはスイッチ一つで何でもできると思い込み、基礎勉強をおろそかにしているのではないか、IT先進国インドでは、初等教育で暗算教育を重んじているとのお話をされました。私は、かつて日本の学校で重視したそろばん教育を思い出し、基礎教育重視論にくみする私は意を強くしました。
 御茶の水女子大の藤原教授は大変ユニークな意見を出しております。すなわち、日本の社会がおかしくなっているのは、人を育てる教育がおかしくなってきたからだ。日本の教育がおかしくなってきたのは、間違った教育理論で育てるからだ。間違った教育理論がまかり通るのは、それを支持する国民が正しい教育を受けてこなかったからだ。正しい教育とは、国のことを真剣に考える日本人の形を教えることである。日本人の形とは、日本的には武士道であり、ヨーロッパ的にはナイト道、いわゆる紳士道であり、恥やひきょうを最も卑しむことである。だから、今必要なのは、一に国語、二に国語、三、四がなくて五が算数、あとは十以下でよいというのであります。なぜなら、生活も、理論的思考も、日本の文化や伝統も、さらには人間の情緒も、道徳心にも、国語がすべての出発点だというのであります。このような教育論を出している藤原教授は、数学者であります。
 ここで私は、船越教育委員会委員長に、うんちくのある岩手の教育論について、教育改革国民会議で議論されている教育基本法の見直しや昨今の教育改革への取り組みを踏まえて、御見解を賜りたいと思います。
 以下、具体的教育課題については、教育長にお伺いいたします。
 第1は、教員採用のあり方についてであります。
 先般、私たちが訪問した北朝鮮の義務教育学校では、師範大学の卒業生は全員採用されるとのことでした。師範大学では、徹底した教師養成教育がなされているとのことで、日本の旧制師範学校をほうふつさせる感じであります。現在、日本の教育免許制は、多くの大学で免許が取得でき、そのときどきの経済状況に関係しながら学生が自由に教職を選べることになっており、一時、デモ、シカ先生と酷評された時代もありましたが、昨今では、本県の小中学校教員志望者は、平成12年度は27倍、13年度は21倍の厳しい競争率になっております。
 学校における教育成果は、教師の識見に待つことは論を待ちません。教育改革国民会議の提案により、文部省は、不適格教員を教職以外に配置転換する制度の導入を検討していると言われます。
 東京都は全国に先駆けて、本年から人事考課制度を導入したと言われ、大阪府の教育委員会では、府立校1万1、000人の教員のうち約420人、つまり約4%に問題ありとして検討委員会に公表したと報ぜられておりますが、このような事例が本県にもあると見ておりますか。
 教育委員会として、教員採用のあり方についての再検討、さらには、教員評価制度についてどのように考えておられますか、お伺いいたします。
 第2は、県立高校新整備計画についてであります。
 本年1月、県教育委員会は、いわゆる高校再編計画を示し、目下、実現に努力中であり、一定の成果を上げつつあると思います。2005年以降にはさらに後半の整備計画も考えていると仄聞いたします。
 この整備計画の問題点の一つに、農業、水産高校等、いわゆる専門高校の取り扱いがあります。この背景は、第1次産業たる農林漁業の産業構造上の比重低下によるものと思います。いまや高校進学率は97%にもなり、3年間人文、社会、自然科学の広範な知識、中でも、数学、理科、英語等では高度な授業が全生徒に行われ、ついていけない生徒が多くあり、勉学に興味を失い、その結果、高校離れを起こし3年間を無為に過ごす例が多いとも言われます。
 私は、独断的ですが、人間は何者にもなれる存在であるわけではなく、あるものにしかなれない存在であると思うとき、貴重な高校の3年間、漠然と何かを求めて迷うことなく、敢然としてあるものに向かってはっきりとした標準を定めさせ、その道の徹底した教育・指導を行うことは、その生徒の人生にとって大変大事であると思います。率直に言えば、徹底した職業教育であります。職業教育の場としては、各種専修学校もありますが、そのほとんどは高校を卒業しなければ入学できません。私は、できるだけ早く目標を定めさせ、意欲を持たせ、早期に職業教育を行う必要があると考えております。
 このような観点から、このたびの高校新整備計画の推進に当たっては、多彩にして魅力ある職業教育学校を整備し、目的意識を持った人材育成が行われるべきだと思いますが、いかがでありましょうか。
 第3は、高校の入試制度改革についてであります。
 平成10年に、入学者選抜のあり方に関する研究会を設置し、生徒や保護者に対する意識調査などを行い、基本的な方向について提言し、本年10月には、これを受けて、岩手県県立高校入学者選抜方策検討委員会が具体的改革草案を出しております。それによりますと、入学者選抜のほか、永年の懸案であった学区制度の再検討も含まれております。入学者選抜方法で面接が重視されますと、面接する先生の人生観も作用することで難しい問題がありましょう。現在、県内各地で説明会と意見聴取がなされており、平成15年から実施すると承っておりますが、その理念と展望についてお伺いいたします。
 次に、公安委員会情報の公開等、警察関係についてお伺いいたします。
 情報公開法が来年4月に施行されるに当たり、国家公安委員会及び警察庁も対象とされることになりますが、公共の安全に関する情報の開示・非開示については、公安委員会の第一次判断権が尊重されることで、国及び相当の都府県で実現しているものと承知いたしております。
 特例的なのが宮城県であり、去る9月議会で、知事と公安委員会が不一致のまま条例改正案が提案され、結果として、いわゆる知事の拒否権発動となり、原案、修正案ともに廃案という異常な事態になったことは御承知のとおりであります。
 本県におきましては、平成10年9月の情報公開審査会の意見書では、情報の開示・非開示については、刑事法の執行を中心としたものに限定して、実施機関の第一次判断権の尊重規定を盛り込むべきとの答申が出されたと承知しております。
 しかるところ、増田知事は去る9月議会で我が党の樋下、佐藤議員の質問に答えていわく、平成10年当時と比べて警察の情報公開をめぐる状況が大きく変わってきているので、改めて情報公開審査会の意見を聞き、来年2月の定例議会に条例改正案を提案したいと答えられました。
 また、定例の記者会見でも知事は、この2年間に警察の不祥事案もあり、国の警察刷新会議での積極的な情報公開の意向や、宮城県の動きもこれありと、含みのある話をされております。
 しかし、この9月議会本会議で、県警本部長は、警察の情報公開には積極的に取り組んでいくが、人権や捜査の実効上、秘密の保持が求められるという警察業務の特殊性から、全国的に斉一性を図る必要があり、情報公開制度が治安の維持という警察活動に支障を生じるようなことがあってはならないので、知事並びに県議会議員の理解と支援を欲しいと明言されたのであります。ここには、知事と県警本部長との間にいささかスタンスの違いがうかがわれます。
 その後、宮城県では両者の合意が成立し、12月議会に、刑事訴訟法に基づく警察活動に関する情報や捜査協力者、犯罪捜査等の文書公開には県警の裁量権を尊重するが、行政警察情報や旅費、食糧費の公開には裁量権を制限する、いわゆる全国で最も公開度の高い改正案を提案することになったと報ぜられております。
 このような情勢に関連して、本県の基本的な考え方について知事からお示しいただきたいと思います。
 また、県警本部長からは、9月議会と去る24日の県情報公開審査会での意見発表との関連で、今回の宮城県の新たな改正案についての御見解をいただきたいと思います。
 次に、ストーカー対策についてお伺いいたします。
 本県においては、ストーカー行為や嫌がらせ電話などの迷惑行為を規制するため、4月1日に公衆に著しく迷惑をかける行為の防止に関する条例が施行され、平穏な県民生活を脅かす迷惑行為の防止対策を図っているのであります。この制度をとっているのは全国で10県のみで、本県は先進県であります。
 国では、今月24日、ストーカー規制法を施行しました。県の条例でもストーカー行為を禁止行為と定めておりますが、国の法律と県条例との関係はどうなっているのでしょうか。
 また、県条例が施行されて半年が経過いたしておりますが、その取り締まり状況とその内容はどのようになっておりますか、お伺いいたします。
 最後に、国家公安委員会に出された警察に関する緊急提言に関連してお伺いいたします。
 これは、昨年来の警察をめぐる不祥事が続発し、国民の警察不信に対処して警察刷新会議が発足しいろいろ提案されている中に、警察職員の不適切な職務執行に対する苦情申し出制度があります。開かれた警察、民主警察は、常に県民、市民との間に意思の疎通と相互理解が必要でありますから、この制度は理解できます。しかし、現場における警察業務は、春夏秋冬、昼夜を問わず多岐多端にわたるのみならず、それは突発性、緊急性、さらには瞬時にして人命が危険にさらされることが多々あると考えます。現場に携わる警察官は、これら異常な事態に直面して、あるときには心の準備のいとまもなく積極果敢に挑まなければならないのであります。その結果、あってはならないことですが、多少の行き過ぎがあり得ることは考えられます。また、事案、事件の当事者が、自分の行為、行動を正当化し、自己防衛するために一方的に警察官の行為を批判し、安易に苦情を申し立てられることになれば、職務に携わった警察官がその都度審査対象になることになり、職務に忠実で積極的な警察官の意欲を失わせることになる憂いがありませんか。つまり、角を矯めて牛を殺すの例えを恐れるのであります。
 この制度について、元警察庁長官山田秀雄氏は、文芸春秋9月号で、私が危惧するのは、苦情申し出制度を誤ると警察全体に士気の低下が起こり、怯懦な警官がふえるのではないか。いざというときに、迅速果敢な行動をして、犯人追跡にしても、勇気を奮って一歩踏み込み、事件の解決ができるものだ。警察では、向こう傷は勲章だと言われ称賛されてきたはずだ。積極的にやっても、いずれ損をするのは自分だということになれば、警察官の中に最も恐ろしい事なかれ主義が蔓延するおそれがあると書かれております。私は、大変示唆に富んだ卓見であると思います。
 出原県警本部長は、本県警察の最高責任者として本県の警察官像をどのように描き、教育し、指導をされ、県民の期待にこたえていかれますか、お伺いいたします。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐々木俊夫議員の御質問にお答えを申し上げます。
 まず、県民への私の期待とそして県政推進の哲学についてお尋ねがございましたが、私は知事就任以来、新しい岩手づくりの主役は、これは県民一人一人であると。行政が上から押しつけるものではなくて、県民一人一人が主役でございまして、また、それぞれの地域がまた一方の主役であるという、このような考え方のもとに生活者や地域の視点に立って、暮らしや地域を見詰め直して、地域の文化や資源などを大切にしながら、県民すべてが力をあわせて新しい岩手の創造に取り組んでいくことが重要であると、このように考えているところでございます。
 昨年8月に策定をいたしました総合計画におきましては、みんなでつくりみんなで進めるということを基本に、自立、参画、創造による持続的な地域づくりを新しい岩手づくりの理念と、このように掲げまして、行政、県民、民間企業などが、それぞれに果たすべき役割について計画の中に掲げたところでございます。
 この自立、参画、創造ということをもっと具体的に述べますと、私は今後の県土づくりに当たって、行政においては、県民満足度の向上、成果重視の行政運営を念頭に置きながら施策を展開するとともに、また、地域においては、県民一人一人がみずからの判断と責任で、これが自立ということでございますが、みずからの判断と責任で主体的に地域社会に参画をして、お互いに役割分担をしながら積極的に地域づくりに取り組んでいただくと、これが地域を創造するということだと思います。地域づくりに取り組んでいただくことによって、新しい時代に対応した個性的で魅力あふれる地域の創造が継続的に展開されていくものと、このように確信をしているところでございます。
 これが自立、参画、創造ということだと考えているわけでございますが、このためには、私は今後とも、県内各地に足を運んで県民の皆様方との対話を深めながら、それぞれの地域の実情をしっかりと把握するとともに、地域の抱えておりますさまざまな課題について、生活者の視点、そして地域の視点に立って、県民の皆さんとともに考え、また、既成概念にとらわれることなく、率先垂範で県民の先頭に立って県政の推進に取り組んでいく考えでございます。
 次のお尋ねは機構再編の基本理念についてでございますが、21世紀を目前に控えて、時代は今まさに大きな転換期にあるわけでございまして、右肩上がりの経済成長が見込めない状況のもとで、一方では少子・高齢化の進行などによりまして、多様な行政ニーズに対応した県民サービスの一層の充実や地方分権の進展により、これまで以上に地域の主体性、そして創造性の発揮が求められているところでございます。
 私は、このような時代における施策の展開に当たっては、とりわけ施策の成果、効果やその一つ一つの質を重視するとともに、地域や県民のニーズに迅速かつ的確に対応しながら、限られております行政資源というものを県民の満足度の高い施策に重点的、効果的に投入することが可能となるよう政策立案機能を重視して、地域の視点に立った行政運営を行うことが必要であると考えております。
 このため、今回の組織再編に当たりましては、特に今申し上げました政策の立案機能、政策の企画立案、そして調査、調整、評価などを所掌する総合政策部門の整備、これは具体的には総合政策室というものをつくることにしておりますが、こうした総合政策部門の整備や各部局における政策立案機能の強化が図られるように、また、各部局横断的、共通的な地域課題や特定の地域に係る重要課題に対応しながら、地方振興局と市町村を総合的に支援する地域振興部門の充実が図られるよう、これを具体化したのが地域振興部でございますが、こうした地域振興部門の充実が図られるよう配意をしたところでございます。
 さらに、環境関連業務の集約化による環境施策の効率的な推進、これは環境生活部ということにしてございますが、このことや農林水産業振興の総合的な推進、これを農林水産部としたわけでございます。こうしたことなど、県総合計画に掲げた岩手の将来像を構成する五つの社会というものがございますが、この五つの社会を実現するための施策をわかりやすく、かつ、効果的に推進できる体制を整備しようとするものでございまして、こうした組織機能の整備とあわせて、さらに県民との情報の共有化など、開かれた県政に向けた行政システム改革の推進や、確固たる公務意識を有する多様な人材の育成など、組織の運用面での充実にも努めながら、夢県土いわての創造に向けた新たな県政運営の基盤を構築しようとするものでございます。
 次に、公安委員会情報の公開についてでございますが、情報公開については、県民の知る権利を十分に尊重して、県の保有する情報は原則として広く公開をする考えで臨んでいるところでございます。
 一方、公共の安全と秩序を維持することは、県民全体の基本的利益を擁護するため県に課せられた重要な責務でございまして、こうした県民の利益は、情報公開制度にあって十分に保護する必要があるものと認識をしているところでございます。このため、公安委員会そして警察本部を実施機関に加える情報公開条例の改正に当たりましては、情報公開の要請と公共の安全と秩序の維持との調和が十分に図られるよう、最近の警察の情報公開をめぐる情勢を踏まえながら、情報公開審査会に再度意見を伺うこととしたところでございます。
 今月24日に開催をされました情報公開審査会におきましては、警察本部から、情報公開に対する基本的な考え方や公安委員会及び警察本部を実施機関に加える場合の犯罪の予防、鎮圧または捜査などに関する情報、いわゆる公共安全等情報に係る第1次判断権の尊重規定の必要性などについて、具体的な事例を交えながら意見聴取がなされたところでございます。
 審査会におきましては、公安委員会などにおいても情報公開の積極的な推進は必要であるとする一方で、公共安全等情報については専門的、技術的判断の必要性などから、実施機関の第1次判断権を尊重する規定を盛り込むことが望ましいとする方向が示されまして、その場合の対象範囲や具体的な内容などについて次回の審査会で審議することとされたと、このように報告を受けているところでございます。
 県では、12月12日、来月の12日でございますが、その日に開催を予定しております次回の審査会において意見を取りまとめていただくよう、今お願いをしているところでございまして、そこに示された審査会の考え方を踏まえて条例改正を行いまして、情報公開の一層の推進に努めてまいりたいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁をさせますので御了承をお願いします。
   〔総務部長武居丈二君登壇〕
〇総務部長(武居丈二君) 組織再編についてでありますが、まず、部設置条例における部の順序において総務部を後位に配置していることにつきましてですが、今回の組織再編は政策部門や地域振興部門とあわせまして、環境、保健福祉、産業振興、県土整備など、県民生活とかかわりの深い部門を前面に立て、これを内部管理を担当する総務、出納部門が支援していく、全体としましてはこのようなイメージの行政機構を目指すものでありまして、このような部の配置によって、県の総合計画の五つの社会を実現するための施策を推進する部門の主体性と重要性を、これまで以上に明確にしたところであります。もとより、総務部は全庁的な総合性、統一性を保ちながら各部を支援するものであり、あわせて危機管理、法務等の他部にない機能を担うこととしておりまして、配置を変更することによって業務執行上支障を生じる懸念はないものと考えており、また、その役割は厳しい行財政環境のもと、これまでにも増して重要になるものと考えております。
 次に、農林水産部における局長についてでありますが、農政部と林業水産部の統合の大きな目的は、総合的な食料供給基地の形成を目指した産業活動の支援体制を充実強化するため、第1次産業を総合的に振興する部門に再編し、部長のもとで全体を推進していくものであります。しかしながら、本県におけるこれまでの第1次産業に係る施策の経緯も踏まえ、専門性を有する分野につきましては一定の権限の付与に基づき、課題に対して迅速かつ的確に対応できるよう、また、第1次産業に共通する課題につきましては、部内のより円滑な調整、連携が図られるよう局長の職を設置することとしたものでありまして、名称につきましては種々検討いたしましたが、対外的にもわかりやすく、他県におきましても同様に、部に置く職として使用している例がある職名としようとするものであります。
 次に、地方振興局の見直しについてでありますが、今回の本庁の組織再編の定着状況をも勘案する一方で、地域政策を効果的に推進する上で、本庁に対応した組織整備の必要性の観点から組織再編後の喫緊の課題であると考えておりまして、速やかに検討に着手してまいる考えであります。
   〔商工労働観光部長鈴木清紀君登壇〕
〇商工労働観光部長(鈴木清紀君) 企業誘致についてでありますが、誘致企業件数につきましては、昨今の厳しい経済情勢から低迷を続けてきたところでありますが、昨年度3年ぶりに2桁の立地件数となり、今年度もこれまでに10社の立地が決定しているところであります。
 経済環境はなお厳しい状況にあるものの、IT関連産業など、業種によりましては企業の設備投資意欲が上向いてきておりますことから、首都圏での企業を対象とする企業ネットワークいわての開催やインターネットの活用などによりまして、本県の立地環境に関する情報を発信いたしまして、また、これら成長産業に重点を置きながら企業訪問活動を展開しているところでございます。
 また、誘致企業の工場閉鎖につきましては、本年度において閉鎖もしくは閉鎖の意思表示が行われました工場がこれまで9工場となっており、そのほとんどは生産拠点の海外へのシフトや国内工場の再編に伴うものとなっております。
 立地企業への事業支援に当たりましてはその動向の把握が重要ですので、企業との意見交換あるいは市町村との連携による企業訪問などを通じまして、誘致企業へのフォローアップに取り組んでいるところであります。すなわち、支援が必要な状況にある企業に対しましては、本社訪問による情報収集や工場存続などの働きかけ、それから地元工場における遊休資産の処分のあっせん、あるいは中小企業経営安定資金等の制度資金の利用など、企業の状況に応じた支援策につきまして関係機関と連携して実施しているところであります。
 今後とも、立地企業の動向把握に努めまして、地元定着に向けて、できる限りのフォローアップに努力してまいりたいと考えております。
    〔農政部長佐藤克郎君登壇〕
〇農政部長(佐藤克郎君) 過疎地域における農業振興についてでありますが、中山間地域は平場と異なり傾斜地が多い上、農地も分散しているなど生産条件は不利でありますが、夏期冷涼な気象や標高差、湧水など多彩な地域資源を有しており、これらの資源を生かした特色ある農業の振興が重要であります。このため、ソフト面では中山間地域夢づくり総合支援事業を実施し、地域資源を生かした特産品の開発など多様な取り組みに対しまして支援するとともに、また、ハード面では、中山間地域総合整備事業やあるいはいきいき農山村づくり支援事業などによりまして、ホウレンソウ、小菊などの園芸作物導入のための施設や、あるいは高付加価値化のための加工施設等の整備に対して支援するほか、地域住民の創意工夫により、特色ある活動を行っている集団をいきいき中山間賞として表彰しているところであります。
 こうした施策によりまして、地域特性を生かした生産振興や農産物の高付加価値化、生活環境の整備、都市との交流が促進されるなど、地域の活性化に大きな役割を果たしていると認識をしております。
 例えば、岩手宮古農協管内におけるピーマンの生産拡大や川井村における山菜、雑穀を中心とした産直活動、葛巻町や東和町における農家レストランの開業など、それぞれの立地条件を生かした特色ある農業が展開されております。
 今後とも、地域資源を生かした多様な取り組みに対しまして積極的に支援するとともに、本年度から導入された中山間地域等直接支払制度の活用を図りながら、中山間地域農業の振興を図ってまいりたいと考えております。
   〔林業水産部長本山芳裕君登壇〕
〇林業水産部長(本山芳裕君) 過疎地域における林業の振興についてでありますが、本県の過疎地域において森林はその区域の約8割を占めており、このように、広大な森林を対象として昭和30年代以降推進されてきたいわゆる拡大造林は、成長の早い針葉樹の植林、保育などの作業を通じて地域における就労の場を創出し、過疎化の歯どめの一つとして相当の役割を果たしてきたものと考えております。今日、これら人工林は着実に生育しつつあり、今後の林業振興はもとより、県土の保全、県民生活環境の維持向上を図る上でますます重要な社会的基盤として、多面的な機能を高度に発揮する、より期待されているものと認識しております。しかしながら、外材主導による木材価格の長期低迷など非常に厳しい状況の中で、針葉樹資源を活用した木材産業の振興を図るには高次加工体制の整備が不可欠であることから、これまでも住田町における杉建築材のプレカットや川井村におけるカラマツの集成材の工場等を整備してきており、過疎地域における林業の活性化はもとより、地域経済の発展に大きく貢献していると考えております。
 今後におきましても、なお生育途上にある人工林について間伐を適切に実施し、その質的な充実を図るとともに、育成天然林施業の導入などにより、広葉樹も生かした健全で多様な森林の整備を推進しつつ、木材加工施設の整備や地域材の需要拡大など、木材の加工流通面の施策の展開とも相まって、過疎地域の林業振興に引き続き努めてまいりたいと考えております。
   〔教育委員会委員長船越昭治君登壇〕
〇教育委員会委員長(船越昭治君) 岩手の教育論やいかんということでございますが、御承知のとおり、今日、世界は21世紀に向けて教育改革が世界的な課題になってきております。
 その基調はどうかと申しますと、私の理解では、欧米諸国が過度の自由化、多様化の反省にあるというのに対して、日本の場合は、言ってみれば過度の縛りあるいは過度の規格化ということにあったのではないかと理解しております。
 学力という点から見てまいりますと、日本は世界でも学力のトップ水準にある国と言われております。国際教育の国際比較で見てまいりますと、小中の場合、例えば算数・数学、理科を取り上げますと、ともに小学校、中学校、世界で2位、3位というトップレベルにございます。しかし、その中身を詳しく見てまいりますと、数学があるいは理科が好きだ、もっと勉強したい、できればそれを生かせる分野に将来進みたいと、こういった学ぶ心というものがなかなか成熟をしていない。言ってみますと、問題の発見能力でございますとかあるいはなぜと問う心、いわばWhyと問い、それからWhyと問うことの意味、それからWhyと問うてくる相手の立場を十分理解できる、そういう学びのスタンスというのがどうも成熟をしていないのではないかと。そうした学びの中身というものが、今日問題になっております不登校であるとか非行の根と全く関係なしとは言えないと、こういう理解を持っております。
 岩手県におきましても、新しい教育制度のもとで、特に本県の場合は、昭和40年以降の教育振興運動という画期的な取り組みの中で学力も向上してまいりましたし、高校進学率も97%、大学進学率は全国の水準よりも13ポイントほどまだ低い水準にありますけれども、急速に伸びてきております。
 そうした中で、今何が問われるかと申しますと、今までの段階で、先人の努力によって、この広大な岩手の中で教育の機会均等という悲願は一応達成されたと。その上で求められているのは、基礎・基本の教育力をさらに高めることはもちろんでございますけれども、地域や家庭の協力のもとに、心を込めた岩手らしい教育の仕組みをつくっていくこと、それから学校や社会のルールになかなかなじみにくいような子供たちに目線を注いでいくと、そういったいわば教育の質の点検の段階に入っていると、このように理解をしております。
 学力につきましては、新しい学力観というものが提出されまして、学ぶ心それからみずから主体的に学ぶという考え方の学力観で、しかも、地域や学校が主体的に工夫や改善を凝らす取り組みができる大幅な方法が可能になってまいりました。そうであればあるほど、これからの教育というのは、主体的に取り組んでいく地域や学校とそうでないところの格差が拡大するという懸念を抱かざるを得ません。
 これから岩手で私ども重視しなければならないことは、地域及び家庭の持っている教育力を引き出し、かつ高める、その関係の中で、学校との協力関係の中で新しい教育のシステムを、子育てのシステムをどうしてつくっていけるかということだろうと思いますが、その中の原点にあるもの、地域が持っている核になる教育力は、私は、やっぱり昔から岩手にはあったと思っております。
 日本の教育制度の中で、教育の担い手は国と私というものに分かれてしまった。国と言ったらよろしいのか、公と私と言ったらよろしいと思いますが、実は、その中間に持っていた日本の教育力というものがあった。それは、地域社会の小さなまとまりの、いわば共生の言葉で申しますと共という言葉でありますが、ハイカラな言葉で申し上げますとコモンズだろうと思います。そういうコモンズというものがあって、子供はその中で、地域社会に生きていくいろいろな知恵というようなものを学びとって育ってきたと思います。農村にはそれがあり、漁村にもそれがあったと思います。そういう古くて新しいコモンズの教育力というものをもう一回見直して、それを新しい教育のシステムにつくり変えていけないものかと、このような考え方を持っているわけでございます。
 そういう点で、御意見のございました教育改革国民会議の意見の中で、道徳教育でございますとか、社会奉仕でございますとかといった問題提起も、そういう中で、やっぱり具体の中で解決していかなければならないことかと、このようにとらえているわけでございます。
 最後に、教育基本法のお話でございますけれども、岩手県教育委員長の立場としては、現在、この法律の中で執行しているわけでございますので、広く国民、県民の活発な議論を期待するということしか申し上げられないわけでございますが、若干敷衍して申しますと、この法律が昭和22年に制定されましたときに、教育の目標というものを公の論理でとらえるか、私の論理でとらえるかという随分と大きな論争がありまして、結局のところは、私としての成長、発達というものがあって、その結果として公の人としての成熟があるんだということで合意を得て、この法律が出たように私は理解しております。
 したがって、教育基本法第1条の目的の中にも明確に、第1条、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し……心身ともに健康な国民の育成を期して……ということでございまして、この中で、国家及び社会の形成者として人格の完成を目指すという脈略でこれは読み取れると私自身は理解しております。そのように、公としての成長もこの中で、教育としては対処していると理解しております。
   〔教育長合田武君登壇〕
〇教育長(合田武君) まず、教員採用のあり方と教員評価制度についてでありますが、教員には、教育に対する情熱と使命感や豊かな人間性と思いやりなどを基盤とした実践的指導力が求められております。
 このため、教員採用に当たっては、人物評価重視の観点から、これまでも学科試験を課さないスポーツ・芸術特別選考試験の実施、受験年齢枠の拡大、2次試験における模擬授業やグループ討論の実施などの工夫、改善に努めてきたところであります。
 今後におきましても、例えば、特別な資格を有する社会人の特別選考枠の導入など、選考方法の多様化についてさらに検討を続けてまいりたいと考えております。
 また、教員評価制度については、現在、国において、教育改革国民会議の中間報告を受け、教員の評価についてさまざまな議論がなされているところでありますが、教員の評価につきましては重要な課題と認識しており、本県におきましても、国の動向を注視しながら、適切に対処してまいりたいと考えております。
 なお、指導力不足等、適格性が危惧される一部の教員に対しましては、従来から研修や個人指導等を通じて資質の向上に努めてきたところでありますが、現在、教員の適格性を確保する観点から、関係各課による協議会を設け調査研究しているところであり、今後、適切な人事管理のあり方について、国の動向を見きわめながら、さらに研究・検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、職業教育の充実でありますが、本県にあっては、これまでも社会の変化や産業界の動向に適切に対処する観点から、バイオテクロノジーや製造技術のシステム化等に応じた学科の改編や指導内容の改善を行うとともに、ものづくりなど、実際的・体験的な学習を通じ感性と創造性を醸成するなど、専門的な知識・技術と豊かな人間性を有した人材の育成に努めてきたところであります。
 県立高等学校新整備計画の推進に当たりましても、専門性の基礎・基本の重視、社会の変化や産業の動向などに適切に対応する教育の展開の観点から、地域の実態に即した専門学科を配置するとともに、学科の枠を越えて幅広い専門分野の知識・技術を身につけることができる総合的な専門学校を設置することとしているところであります。
 今後におきましても、各種資格取得のための学習やインターンシップなどを通じ、目的意識の向上を図りながら、専門学校に学ぶ生徒一人一人がそれぞれの個性を伸ばし、おのおのの分野で技術や技能をしっかりと身につけ、誇りを持って社会で活躍できるような教育の充実に努めてまいりたいと考えております。
 次に、県立高等学校の入学者選抜制度の改善についてでありますが、本年3月の岩手県公立高等学校入学者選抜の在り方に関する調査研究委員会の報告を踏まえ、現在、具体的改善案について、岩手県立高等学校入学者選抜方策検討委員会において検討を行っております。今般の入学者選抜制度の見直しの基本理念は、生徒の多様な能力、適性などを多面的に評価するとともに、一層各高等学校の特色を生かした選抜に向けた改善などを目指しているものであります。
 具体的に申しますと、生徒の個性や能力の一層の伸長を図るために、基礎学力の確認を重視すること、中学校教育に十分配慮し、生徒の個性、意欲・関心、適性等を重視すること、学校裁量の範囲を拡大し、各高等学校・学科の特色化を図ることなどであります。
 また、通学区域につきましては、交通機関の発達等により、生活圏の拡大等、社会環境の変化の状況を踏まえて、学校選択の幅を確保するなどの観点から、適正化を図ることとしております。
 このような理念に基づいて、方策検討委員会においては、具体的な選抜方法について、志願者全員に対して面接等を実施し、次に、全員に学力検査を行い、合否の判定に当たっては、異なる三つの視点から評価する内容の改善草案を取りまとめたところであります。
 改善草案に対する県民の意見を伺うため、県内6カ所におきまして10月から11月にかけて説明会を開催したところであり、説明会におきましては、基本的に賛成であるという御意見が多い中にあって、合否判定の複雑性、導入時期、面接の客観性の確保等に関しましては、さまざまな御意見をいただいております。
 今後、説明会等における御意見を踏まえ、新しい選抜制度について方策検討委員会においてさらに検討を深めることとしており、県教育委員会といたしましては、その審議結果を尊重しながら、見直しを図ってまいりたいと考えております。
   〔警察本部長出原健三君登壇〕
〇警察本部長(出原健三君) まず、警察の情報公開についてお答えいたします。
 公安委員会及び警察の情報公開につきましては、これまでの県議会一般質問等におきましても答弁いたしておりますとおり、警察活動に対する県民の皆様の理解と協力を得るとともに、警察行政の透明性の一層の確保等を図るため、適切かつ積極的に取り組んでまいる方針でございます。
 具体的には、警察業務に支障を生じさせない制度を確保した上で、情報公開条例の実施機関となることや非開示情報を含まない警察の施策を示す訓令及び通達につきましては、開示請求を待たずに公表することなどであります。
 一方、情報公開の仕組み等につきましては、警察業務の特殊性から、保有する情報の秘密性や最近の治安情勢に的確に対応するために、全国的斉一性を図るなど、十分な検討が必要であると考えているところであります。
 こうしたことから、先日の県情報公開審査会におきましても、公安委員会及び警察が、適切かつ積極的に情報公開に取り組んでいくことはもちろんのことでありますが、警察は、犯罪の予防、捜査に関する情報、捜査対象となる団体や個人の情報、犯罪捜査や困りごと相談などの警察活動の過程で得られました個人のプライバシーに関する情報や、さらには、保有していること自体を明らかにできない、例えば暴力団事件や覚せい剤事件の内偵捜査中の情報等、秘密の保持を強く求められている情報を多数保有していることなど、他の実施機関と異なる警察業務の特殊性につきまして御説明させていただいたところであります。
 こうした警察業務の特殊性につきまして、審査会委員の方々に御理解いただいた上で、警察業務に支障の生じない制度を確保する必要がありますので、公共安全情報の第一次判断権の尊重規定の必要性などについて、県警察の意見を述べ、十分御説明させていただいたと考えているところであります。
 また、宮城県の情報公開条例改正案につきましては、詳細承知しておりませんが、宮城県には宮城県の事情があるものと受けとめております。
 県警察といたしましては、県警のホームページをことしの4月から開設し、チャイルドシート着用義務等の改正道路交通法や迷惑防止条例の内容等を情報提供しておりますほか、各種広報媒体を活用しながら、警察活動に対する県民の皆様の理解と協力をお願いしているところでありますが、今後とも、開示できる情報につきましてはより一層積極的に提供いたしますとともに、本質的に開示できない情報につきましては、確実に保護するという基本姿勢を貫きまして、治安の維持に努めてまいりたいと考えております。
 次に、ストーカー対策についてお答えいたします。
 このたび施行されました、いわゆるストーカー規制法は、規制の対象を恋愛感情等を充足させる目的で行われる行為に限定していること、行為者に対しまして、直罰規定と警告・禁止命令など行政処分の二本立ての措置を講じることができること、さらに、直罰規定には告訴がなければ控訴できない親告罪としていること等が大きな特徴であります。
 一方、県条例につきましては、御案内のとおり、恋愛感情以外の、例えば職場内での人間関係に伴いますトラブルとか、近隣同士のトラブル等によるストーカー行為や嫌がらせ電話等についても、規制の対象としているところであります。
 ストーカー規制法と条例が競合する場合には法律が優先し、すなわち恋愛感情等の目的以外の行為については、条例で対応することが可能であるという法務省・警察庁の見解であり、本県でも同様の解釈で対応することとしておりますので、その運用に当たっては、事案ごとに精査してまいる所存であります。
 また、本年4月1日の迷惑行為防止条例施行後、現在までの取り締まり状況について申し上げますと、暴力団組員によるいわゆるダフ屋行為を現行犯逮捕して検挙したのを初め、卑わいな行為4件、嫌がらせ電話1件の計6件を検挙しているほか、25件の警告・指導を行っているところであります。
 つきまとい事案などのいわゆるストーカー行為は、被害者を不安に陥れ生活の平穏を害する行為であるばかりでなく、次第にエスカレートして凶悪事件に発展するおそれのある行為でありますので、被害者の立場に立った適正な法律の運用により、迅速かつ適切に対応してまいる所存であります。
 ちなみに、県警察といたしましては、個々の事案に適正に対処するため、警察本部にストーカー対策室、各警察署にストーカー対策班を設置し、総勢102名体制でその対応に当たっておりますので、御理解いただきたいと思います。
 最後に、警察官の指導方針等についてお答えいたします。
 御案内のとおり、本年7月、警察刷新会議から警察刷新に関する緊急提言が提出されたところであり、これを受けて、本年8月に警察庁におきましては警察改革要綱が取りまとめられたところであります。県警におきましても、この実現に向けて全力で取り組んでいるところであります。
 私は本県に着任以来、常に県民の要望等を的確に把握し、県民の立場に立った警察活動を展開するなど、県民とともにある警察活動、県民のための警察であれと指導してまいりました。そのためには、高い職務倫理観を持ち、自己を厳しく律しつつ、県民の安全な生活を侵害する犯罪等に対しては毅然たる姿勢で臨むなど、強い執行力を発揮し、治安の維持に万全を期すことが必要であると考えております。
 さらに、県民のための警察であるためには、警察官として必要な専門的知識、技能の修得に努めるとともに、常に県民と同じ目線でものを見ることができること、すなわち一社会人としての見識を高めていくことが極めて重要なことだと考えております。
 また、私の警察官としての信条でもありますが、県民のための警察であるためには、警察職員全員が誠意と熱意を持って仕事に取り組むことが何よりも必要であると考えております。そのためには、寛厳よろしきを得るの言葉どおり、私を含め、幹部みずからが部下職員に対する思いやりと優しさ、さらには厳しさを持って組織運営に当たることが肝要であると常々思いをいたしているところであります。これが、ひいては県民の皆様の理解と信頼を得ることになるものと確信しているものであります。
 今後とも、引き続き県民のための警察活動、県民とともにある警察を念頭に置き、各種警察業務に全力を傾注するとともに、部下職員に対する指導を徹底してまいる所存でありますので、御理解と御支援をよろしくお願いいたします。
   
〇副議長(吉田洋治君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時56分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番     及 川   敦 君
2  番     飯 沢   匡 君
3  番     樋 下 正 信 君
4  番     照 井 昭 二 君
5  番     柳 村 岩 見 君
6  番     小野寺 研 一 君
7  番     吉 田 昭 彦 君
8  番     工 藤 大 輔 君
9  番     川 村 農 夫 君
10  番     佐々木 順 一 君
11  番     佐 藤 力 男 君
12  番     阿 部 静 子 君
13  番     阿 部 富 雄 君
14  番     田 村   誠 君
15  番     岩 城   明 君
16  番     中屋敷   十 君
17  番     千 葉   伝 君
18  番     佐々木 大 和 君
19  番     及 川 幸 子 君
20  番     阿 部 敏 雄 君
21  番     川 口 民 一 君
22  番     小野寺   好 君
23  番     斉 藤   信 君
24  番     伊 沢 昌 弘 君
25  番     田 村 正 彦 君
26  番     上 澤 義 主 君
27  番     瀬 川   滋 君
28  番     水 上 信 宏 君
29  番     藤 原 泰次郎 君
30  番     船 越 賢太郎 君
31  番     谷 藤 裕 明 君
32  番     菊 池   勲 君
33  番     佐々木 一 榮 君
34  番     伊 藤 勢 至 君
35  番     高 橋 賢 輔 君
36  番     小 原 宣 良 君
37  番     長谷川 忠 久 君
38  番     千 葉   浩 君
39  番     吉 田 洋 治 君
40  番     工 藤   篤 君
41  番     菅 原 温 士 君
 
43  番     山 内 隆 文 君
44  番     折 居 明 広 君
46  番     藤 原 良 信 君
47  番     及 川 幸 郎 君
48  番     菊 池 雄 光 君
49  番     佐々木 俊 夫 君
51  番     吉 田   秀 君
欠席議員(3名)
42  番     佐 藤 正 春 君
45  番     村 上 惠 三 君
50  番     那須川 健 一 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時15分 再 開
〇副議長(吉田洋治君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。佐々木一榮君。
   〔33番佐々木一榮君登壇〕(拍手)

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