平成13年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇51番(吉田秀君) 自由党の吉田秀でございます。
 私の隣の議席札が立ち上がりません。那須川健一議員であります。あの豪放らいらくな那須川先生が議員辞職をされたと、まことに残念であります。那須川先生は議長をされ、その他議会活動を活発にされたわけでありますが、なお、議会との野球等の大変なファイトマンでもありました。議員活動はもちろん、県政にも大きく貢献した大人物であります。その人物を失ったと、人材を失ったということはまことに残念でなりません。しかし、彼はあのファイトをもって必ずや再起をして頑張ってくるものと皆さんとともに期待を申し上げたいと思います。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 私は、この新しい世紀、要するに21世紀の初めて迎えた県議会におきまして、会派の自由党を代表いたしまして、知事の県政運営の基本方針並びに当面する県政課題についてお伺いをいたしますが、知事におかれましては、21世紀の輝かしい岩手を切り開く意気込みで、積極的かつ力強い御答弁を期待申し上げるものであります。
 まず、地方分権と21世紀の地方自治のあり方についてお伺いいたします。
 昨年4月に、地方分権一括法が施行され、国と地方自治体は対等、協力という新しい関係に立つこととなりました。税財源の問題を初め、解決していかなければならない課題が多く残されてはおりますが、地方がみずからの責任において、地域の実情に沿った施策を展開していくための土俵が一応整ったものと考えております。知事におかれましては、就任以来、常に県民の声に耳を傾け、県民との情報の共有を心がけるとともに、世界の中の岩手、日本の中の岩手という広い視点から、県境を越えた県同士の連携、情報公開、公共事業の見直し、政策評価の実施、組織の再編整備など、卓越した時代認識と時代を先取りする新鮮な行政感覚のもとに、力強いリーダーシップを発揮し、先例にとらわれることなく、次々と県政に新風を吹き込んでまいりました。特にも、県同士の連携につきましては、知事が主導いたしまして北東北3県知事サミットの開催などにより、さまざまな行政分野で3県連携を推進するほか、最近では道州制など今後の地方自治のあり方にもつながる議論をみずから提起するなど、常に現状に甘んずることなく、地方自治のあるべき姿を念頭に置きながら、まさにみずからが率先して、地域の視点、生活者の視点から地方分権の時代を切り開いていこうとするその姿勢に対して、深く敬意を表するものであります。
 そこでお伺いいたしますが、知事は、現在の国と地方との関係をどのように評価されておられるのでしょうか。また、知事が目指す分権時代の地方自治のあり方というものはどのような姿なのでしょうか。岩手県の最高責任者としてのお考えをお尋ねいたします。
 次に、新年度予算に対してお伺いいたします。
 新年度予算は、景気の本格的な回復が見込まれず、ますます厳しさを増す財政環境の中で、初の9、000億円の大台に乗せる大型予算であり、知事の積極姿勢がうかがわれるものであります。その内容を見ますと、初の施策評価による施策重点化方針を踏まえた環境首都の実現や結の心・子育て環境日本一に向けた取り組み、快適な暮らしを目指す生活基盤整備の実現など、七つの重点化施策が積極的に盛り込まれるなど、いわば事業重視の予算から政策重視の予算への移行を目指すものであり、私は、知事の姿勢を高く評価するものであります。しかしながら、県の財政状況を見ますと、県債の償還金が約1、220億円に上り、約130億円の増、伸び率で12.1%と大きく増大しており、県債の発行額も財源対策債等を除きますと縮減したとはいえ、地方交付税特別会計の不足分を地方が起債で賄うという新たな仕組みを国が制度化することに伴い、交付税の不足分に対応する臨時財政対策債の発行を余儀なくされたことによりまして、前年度と比較して約130億円の増、県債依存度は15%まで上昇するなど、県財政は赤信号が点滅しているといっても過言ではなく、今後の財政運営を深く憂慮するものであります。
 今回の臨時財政対策債の創設は、地方共通の借金であります交付税特別会計における借入金を抑制し、国と地方の責任分担の明確化等を図ることが目的であるとは言われておりますが、この制度は地方交付税制度の根幹を揺るがすものであり、本県のような財政基盤の脆弱な団体にとって、適正な行政水準を維持する上で大きな障害となるものではないでしょうか。知事は、このような制度改正を含む来年度の地方財政対策をどのように評価しておられるのでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、最初の質問に関連いたしますが、地方分権時代に対応した税財政制度のあり方についてお伺いいたします。
 地方分権を推進する上で、残された大きな課題が地方への税財源の移譲であります。これにつきましては、地方分権一括法施行以来さまざまな論議が続けられておりますが、その前進がなければ今回のような地方財政対策を今後とも続けていかざるを得ないものと思われます。私は、この課題の解決に向け、地方が連携して国に対して不断に強力に要請していく必要があると認識しておりますが、知事は、分権時代にふさわしいあるべき税財政制度としてどのような姿をお考えなのでしょうか。
 また、その実現に向けてどのように取り組んでいかれるおつもりなのでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、環境首都の実現に向けた取り組みについてお伺いいたします。
 使い捨て、消費は美徳など、20世紀において人類はかつてない物質的繁栄を謳歌してまいりました。しかしながら、その一方では、物質的な豊かさと経済性を追求する余り、大量生産、大量消費、大量廃棄という経済社会システムをつくり上げ、廃棄物の増大を初め、環境ホルモンなどの化学物質による水系の広範囲な汚染、都市化の進行と身近な自然の消滅などといった身の回りの問題から、地球温暖化やオゾン層の破壊、熱帯雨林などの大規模開発に伴う生物資源の減少などといった地球規模の問題に至るまで、実にさまざまな環境問題が発生し、地球の有限性に直面した時代でもあったわけであります。幸いにして、本県は澄みきった空気や水、緑豊かな森林、多様な海岸など豊かな環境が比較的良好に保たれており、この恵まれた環境を守り、そして育て、次の世代に引き継いでいくことが今の私どもに課せられた大きな責務であると考えております。
 知事は、建設省時代の平成4年に、リオデジャネイロで開催され、リオ宣言などを採択した国連環境開発会議、いわゆる地球サミットに日本側の実務担当者の1人として参加なされた御経験がおありであると伺っております。環境問題の深刻さ、重要性について、当時から深い関心を持ち、知事になられましてからも日本の環境首都を宣言し、環境を価値観の中心に据えた政策を積極的に展開してこられましたことは高く評価されるところであると考えております。今、環境の世紀とも言われる21世紀を迎えたわけでありますが、日本の環境首都宣言を目指し、今後、どのように取り組んでいかれるお考えなのか、その基本的な取り組みについて知事の御所見をお伺いいたします。
 次に、地球温暖化防止に向けた本県のエネルギー対策についてお伺いをいたします。
   〔議長退席、副議長着席〕
 昨年6月に、本県などを会場として世界地熱会議が展開され、クリーンエネルギーに対する県民の関心が高まったものと存じております。私どもの生活は石油を初めとする化石燃料に多く依存しており、ここから排出される二酸化炭素は地球温暖化の大きな要因とされ、最新の報告では、このままの状態が続きますと温暖化が加速され、21世紀末には世界の年間平均気温が5.8度上昇し、これにより海面が80センチ上昇するとの専門家の指摘もございます。海水面の上昇は、長い海岸線を有する本県にとって高波被害の発生などをもたらし、また、気温の上昇は地球規模での気候変動を通じて、農業を初め生態系に大きな影響を及ぼすことが強く懸念されているところであります。平成9年に締結された温暖化防止京都議定書に基づき、国では、エネルギー起源の二酸化炭素排出量をほぼ横ばいに抑制しながら、森林吸収などで6%削減することとしておりますが、本県では国を上回る8%の削減をエネルギー中心で行うというより厳しい目標を掲げ、新エネルギーの導入や省エネルギー対策に鋭意取り組んでいるところであります。
 本県はエネルギー自給という点では、例えば電力についてみましても、水力、地熱などで需要の23%程度を賄っているに過ぎないエネルギー小国であります。しかしながら、本県は有数の森林県であり、再生可能な木質系のバイオマスエネルギーに恵まれ、また、最近では風力発電に対する取り組みも県内各地で行われるなど、多くの可能性を秘めていると考えるものであります。
 そこでお伺いいたしますが、環境首都を目指す本県が、全国に先駆けて地球温暖化防止に向けた新エネルギー、省エネルギー対策にどのように取り組んでいこうとしておられるのか、知事の基本的なお考えをお尋ねいたします。
 次に、ひとづくりについてお伺いいたします。
 知事は、新しい岩手づくりの基本理念として、自立、参画、創造を掲げ、一人一人がみずから考え、みずから行動することが地域づくりの基本であり、自立した個人個人が主体的、意欲的に地域づくりに参画し、そして新しい地域というものをつくり出していくことが必要であるとしております。県政の主役は県民であり、県内のありとあらゆる地域において、多くの方々がさまざまな分野で御活躍なされ、また、みずからが率先して地域づくりに汗をかいておられることは頭が下がる思いがするものであります。21世紀の本県を支えていく幾多の人材を育てていくことが、我々に課せられた大きな責務であると考えております。ひとづくりは、本県の将来を決定づける最大の要素の一つであると考えるものでありますが、知事は、21世紀の岩手を担う人材の育成にどのように取り組んでいかれるおつもりなのでしょうか、その御所見をお伺いいたします。
 次に、少子化対策についてお伺いいたします。
 高齢化の進行と相まって、少子化が急激に進んでおります。少子化の進行は社会の活力の低下を初め、年金、医療など社会保障制度の国民負担の増加と給付水準の低下、さらには、子供同士の交流機会の減少などによる青少年の健全育成への影響など、社会のあらゆるところに大きな影を投げかける重要な問題であります。特に、県内の過疎地域や中山間地域では、年間の出生数が数十人といった町村もあり、人口の自然減少によって教育、医療などのサービス水準の低下、防災機能の低下はもとより、集落機能の存続すら危惧されるなど、県民生活や地域活動に及ぼす深刻な影響を憂慮するものであります。知事は、ひとづくりを施策の重要な視点の一つに掲げておりますが、そのためには女性が安心して子供を生み、育てることができる環境を整備することが、まずもって重要であると考えるものであります。少子化の原因は、直接的には未婚女性の増加や晩婚化であるとされており、個人の価値観や人生観に深くかかわる問題でもありますことから、行政としてはなかなか有効な手だてを打ち出しがたい分野ではないかとは存じますが、スウェーデンなど先進国の例を見ますように、社会全体で子供を育てるという住民意識の改革が重要なのではないかとも考えるものであります。
 知事は、さきにいわて子どもプランを策定し、少子化対策を総合的に進めることとしておりますが、本県における少子化対策についての基本的な考えと、今後の取り組みの基本方向について御所見をお伺いいたします。
 次に、情報化についてお伺いいたします。
 情報通信技術の飛躍的な発展により、世界は、かつて18世紀の産業革命に匹敵するIT革命ともいうべき劇的な変化に直面しており、インターネットやモバイル通信の爆発的な普及に象徴されるように、国境を越えた情報ネットワークの構築は地球規模で社会経済活動のあり方を根底から変えようとしております。国においては、こうした状況に対応し、関連法律の改正や予算の重点配分を通じて、日本を5年以内に世界最先端のIT国家とすることを目指すこととしております。情報通信技術の進展は、これを活用したさまざまな地域活動を可能とし、今や県民の豊かな暮らしの実現に不可欠な要素となっており、本県の情報化の推進は、21世紀における県勢発展の重要なかぎを握るものであることは改めて申し上げるまでもありません。IT革命の進展により、インターネットを利用して行政情報の入手が容易になるとともに、双方向性という特性を生かして広く住民の声を行政に反映することも可能となるなど、今後、あらゆる行政分野において情報通信技術を生かした高度な行政サービスの提供が進むものと考えられ、県においては情報ハイウェイを活用した行政サービスの提供に鋭意取り組んでいるところであります。
 一方で、知事は、モバイル立県構想を掲げておりますが、これは携帯電話を利用してインターネットに接続することにより、いつでも、どこでも、だれとでも簡単にコミュニケーションができるモバイル通信を利用して、情報ハイウェイの恩恵を受けにくいような地域についても、情報化の進展に対応したさまざまなサービスを可能にしようとするものであるというふうに理解しております。知事が提唱するモバイル立県の考えは、過疎地域を多く抱える本県にとって大きな意義を有するものと考えますが、今後、モバイル立県の実現に向けてどのように取り組んでいかれるお考えなのか、知事の御所見をお伺いいたします。
 また、情報化が進展し、倫理性が高まったといたしましても、これを操作するのは個々の人間であります。インターネットを悪用した犯罪やテレビゲームの影響による青少年の非行などの問題も多く発生しております。知事におかれましては、ITを操る人間自身のモラルの向上という課題につきましても十分検討いただきたいものと提言、御要望を申し上げます。
 次に、並行在来線対策についてお伺いいたします。
 新幹線盛岡以北の整備は、過疎地域を多く抱える県北地域の産業経済の発展に大きな効果をもたらすものであり、県土の均衡ある発展を図るという観点からもその開業が待たれるところであります。一方、新幹線盛岡以北の開業と同時に経営分離される並行在来線につきましては、沿線の人口集積など経営上の課題はありますが、地域主導による運営が確保されることにより、沿線住民にとって利用しやすいダイヤの編成や新駅設置による沿線開発の促進など、創意と工夫に基づく柔軟な経営戦略が可能となり、地域交通の確保はもとより、県北地域の発展につながることが期待されております。並行在来線につきましては、昨年10月に経営計画概要が策定され、先月には新たに設立する第三セクターへの盛岡以南を含めた関係市町村からの出資が固まるとともに、懸案となっておりました鉄道貨物問題が県の頑張りにより決着するなど、平成14年12月と伺っております開業に向けて県御当局を中心とした取り組みが着実に進んでいるものと考えております。
 しかしながら、銀行への協力要請が思うように任せないなど、民間からの出資が必ずしも順調ではないとの報道もなされております。また、全国的に第三セクター鉄道の厳しい経営状況が指摘される中で、並行在来線経営分離の先発事例であります長野県のしなの鉄道が赤字を理由に運賃値上げに踏み切るなど、決して楽観できる状況ではないこともまた現実であります。県、関係市町村、民間を含めた全県的な取り組みが望まれるものでありますが、知事は、本年5月に予定されている会社設立についてどのような見通しを持っておられるのでしょうか。
 また、知事としてどのように会社経営に関与していくお考えなのでしょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、工業振興の基本的方向についてお伺いいたします。
 我が国経済は、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続しているものの、景気改善のテンポはより緩やかになってきており、失業率も高水準で推移するなど、厳しい状況を脱しておりません。また、最近の株価低迷やアメリカ経済の減速などにより、きのうなどは日銀が金利引き下げを発表するなど、景気の先行きも不透明さを増しております。本県におきましても改善が続いているとはいえ、景気の本格的な回復に向けた足取りは弱く、地場企業の倒産や生産拠点の海外移転などによる誘致企業の工場撤退が多く発生するなど、依然として厳しい状況に置かれております。こうした中、地域の雇用を確保し、地域経済の活力を維持していくためには、高い競争力を持った先端企業の誘致はもとより、県内中小企業におきましても、独自技術の開発や今後成長が見込まれる分野への積極的な事業展開を図ることがますます重要になると思われます。
 そこでお伺いいたしますが、県内企業の技術力や研究開発力の向上、新分野への企業展開、さらには、新産業の創出など本県工業の一層の振興について、知事は今後どのように取り組んでいかれるのか、基本的なお考えについてお尋ねいたします。
 最後になりましたが、本県の基幹産業であります農林水産業相互の連携に基づく総合的な振興についてお伺いいたします。
 世界の人口は20世紀末には60億人を突破したと推定されており、今世紀半ばには90億人に達するという予測もなされております。この増大する世界人口をだれが養っていくのかというのが、21世紀の地球的課題の一つであることは当然であります。そういう意味で、農林水産業の重要性は今後とも変わるものではなく、総合的な食料供給基地としての本県の果たす役割は引き続き重要性を増していくものと考えるものであります。しかしながら、現実は海外との価格競争による農林水産物価格の低迷や担い手の高齢化、後継者の不足などにより、本県農林水産業は引き続き厳しい状況に置かれており、時代や環境の変化に対応しながらその振興策を講じていくことが重要な課題となっております。県では、平成13年度から農政部と林業水産部を統合し、新たに農林水産部を設置することにより、1次産業に共通する課題に総合的に立ち向かうこととしております。農林水産業のよって立つ基盤は農地であり、林地であり、そして海、河川とそれぞれに条件が異なり、それぞれが専門性を高めながらその振興を図ってきたことも事実であります。一口に連携と言っても簡単にはいかない部分もあるかとは存じますが、農・林・水それぞれの分野を越えた連携が図られ、より効果的、一体的な振興施策が講じられることが1次産業全体としての振興につながるものと確信するものであります。
 そこでお伺いいたしますが、知事は1次産業の各分野相互の連携をどのように図りながら、本県農林水産業の総合的な振興を図っていこうとなされるのでしょうか、その基本的なお考えをお聞かせ願います。
 以上で私の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 吉田秀議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、現在の国と地方との関係をどのように評価しているかということについてのお尋ねでございますが、地方分権一括法が昨年の4月に施行されて、この1月には、一日地方分権委員会が本県の盛岡市で開催されるなど、分権改革はまさに緒についたばかりでございますが、全国各地を見渡してみますと、それぞれのところで課税自主権の活用による独自税制の検討が活発化したり、地方の側から国に積極的に政策提言を行ったりすることなどに見られますように、地方みずからが主体的に行動を起こし、また、自分たちの考えを国に主張していこうという動きが従来以上に見られるようになりまして、国と地方は対等・協力の関係という意識が芽生えつつあるように感じております。
 今後、地方において少子・高齢化、環境などの政策課題に取り組んでいくためには、地方公共団体において、国の施策に頼ることなく、引き続きみずからの判断と責任に基づく積極的な取り組み姿勢──自己決定、自己責任ということでございますが、こうした積極的な取り組み姿勢が求められるところでございますが、一方におきまして、歳出に見合った国と地方との税財源配分の見直し、国庫補助・負担金の整理・合理化や事務権限のさらなる移譲などの課題は、ぜひとも解決しなければならないものでございまして、地方が一丸となってその実現に努めてまいりたいと考えております。
 次に、地方分権時代の地方自治のあり方についてでございますが、私は、地方分権の先にあるものが生活者主権や地域主権の社会であると考えております。地方分権時代を通じて、このような社会を実現していくためには、政策実行の過程において、行政と住民が対話を重ねながら、私たちがどのような方向を目指しているのかを共通の意識としてお互いに共有し合う。その中で信頼関係がより強固なものとなり、ともに手を携えて地域づくりを担う協働の関係が築かれる。そして、県内各地で個性的な地域づくりが展開されていく、このような創造的な行政運営が求められてくるものと考えております。
 これは一方において、現行の地方自治制度を変容させていこうとする動きでもございまして、当分の間は、新しい時代に向けて地方自治のあり方は大きく揺れ動いていくのではないかと考えておりまして、私も岩手の地において、こうした新しいうねりを巻き起こしてまいりたいと考えております。
 次に、来年度の地方財政対策の評価についてでございますが、地方財政については、本年度に引き続き、地方交付税や地方特例交付金などにより補てんされるなど、地方財政の運営に支障が生ずることのないよう所要の財源確保が図られたことにつきましては、一定の評価をすべきものと考えております。
 しかしながら、地方財政のいわゆる通常収支不足の補てんにおいては、地方交付税の増額による対応はあるものの、引き続き多額の財源対策債の発行や地方交付税の一部振りかえ分として、新たに国が創設した臨時財政対策債の発行を余儀なくされることとなりました。これらの発行に伴い、県債残高がさらに増加するとともに、この償還には交付税措置があるとはいいながらも、今後一層の公債費の増嵩が見込まれることから、財政指標を悪化させる要因となる地方債の増発による財源補てんについては、当面の財政運営上やむを得ない面があるものの、これまで以上に十分な注意を払う必要があるものと認識しております。
 今後の分権時代にふさわしい税財政制度のあり方とその実現に向けての取り組みとしては、基本的には、さきに述べたような借入金依存の地方財政対策を回避するため、地方税・地方交付税などの地方一般財源の一層の充実を図る必要がございますが、特に、国、地方の税収と歳出の割合の乖離を是正して、歳入面における自主性・自立性をより高めていくことが不可欠でございますので、地方税について、国と地方の役割分担を踏まえてその税源配分の見直しを行い、消費税や所得税などの税源を国から地方へ早急に移譲すべきものと認識しております。
 一方、地域間の税源にも大きな偏在がございますので、その財源保障に支障が生じないよう地方交付税総額についても適正な水準を確保すべきものと考えておりますので、これらの点につきましては、県としても、また全国知事会等の地方団体としても、強く要望してまいりたいと考えております。
 次に、環境首都の実現に向けた取り組みについてでございますが、物質的な豊かさを求め環境に大きな負荷を与えてきた20世紀が終わりまして、環境とともに生きる世紀、21世紀を迎え、私たちの日常の暮らしや産業の仕組みを大きく転換し、環境を価値観の中心に据えて、循環を基調とする持続可能な社会を構築していくことが強く求められております。
 このため、公害防止条例の大幅な見直しや希少野性動植物の種の保護に関する条例の制定に取り組むなど、生活環境や自然環境等の新たな問題に適切に対処してまいります。
 また、環境に配慮した家庭での暮らし方、エコライフ活動の促進を図るために、本年6月の環境月間にあわせて、5月末までには環境家計簿とごみの減量化とリサイクルの入門書を県内の全世帯に配布するとともに、新エネルギーの利活用や環境共生住宅の建設を進めるほか、10月上旬には、県民、企業、行政などさまざまな主体の参加のもとに環境展を開催するなど、地球環境に優しい暮らしの普及を図ってまいります。
 さらに、循環型のモデルとして、資源リサイクルや廃棄物発電などの機能を備えた公共関与方式による廃棄物処理施設の設置について検討を進めていくほか、産学官連携による環境関連技術の研究開発、リサイクル産業の拠点形成に向けた調査検討、製造過程におけるゼロエミッションの推進など、ものの生産から廃棄物の処理、再資源化に至る総合的な生産システムの再構築に取り組んでまいります。
 また、エコファーマー等による環境に優しい栽培技術の普及や自然循環機能を活用した持続的農業の取り組み、水源涵養等公益的機能の高度発揮が求められる森林の造成や木質バイオマス利用の調査検討を進めるなど、自然環境と調和した産業の育成などに努めてまいります。
 このような先進的な取り組みから日常的な取り組みまでを県民や事業者、NPOの皆さんと一体となって推進し、県民一人一人が高い環境意識を持ち、岩手の地で暮らしていることを誇りに思えるような環境首都いわての実現を目指して、積極的に取り組んでいく考えでございます。
 次に、地球温暖化防止に向けたエネルギー対策についてでございますが、本県での新エネルギーの導入は、太陽光発電、風力発電が順調に立ち上がりつつあり、地熱発電、水力発電も計画どおりに進んでおります。
 今後は、地中熱を利用したヒートポンプや木質バイオマスなど地域資源を活用した熱利用のほか、廃棄物エネルギーの新たな利用技術でございますごみ焼却や畜産バイオマスによって電気と熱を同時につくり出して利用する、いわゆるコージェネレーションなどにも積極的に取り組んでまいります。
 また、技術の進展に伴い、マイクロガスタービンや燃料電池など、効率の高い分散型コージェネレーションの実用化が期待されているところでもございます。
 省エネルギー対策については、平成13年度から全国に先駆けて岩手県省エネルギービジョンの策定に着手して、県、市町村、事業者、県民が連携して取り組む体制を整備してまいりたいと考えております。
 また、市町村や民間企業におけるISO14001の認証取得を促進するとともに、事業者などに対して二酸化炭素の削減計画の策定や実績報告を義務づけるなど、県独自の制度の導入を目指した県条例の制定を検討中でございますが、こうした施策によりまして、省エネルギー設備の積極的導入やエネルギー管理の合理化など、総合的な省エネルギー対策を進めてまいります。
 次に、21世紀の岩手を担う人材の育成についてでございますが、私は、新しい岩手づくりに向けて何よりも重要なことは、21世紀の岩手づくりの主役は自分たち自身である、このような意識を持って行動する、そのようなひとを社会全体として育てていくことであると考えております。個性に支えられた、自律性、若々しい創造力、社会に貢献する参加の精神、人間味あふれるコミュニケーション能力、多彩な文化性、そして地球市民としての国際性を身につけた人材、これからの時代を担うこのような人材を岩手の大地から育てていかなければなりません。
 そのため、21世紀を担う青少年について、地域の自然や文化などを教材とする体験学習を展開するとともに、夢に向かってチャレンジする子供たちへの支援や国際理解教育、情報教育の推進など、創造性にあふれ、豊かな心をはぐくむ教育に積極的に取り組む必要があると考えております。
 また、農林水産業における担い手の育成確保のほか、次代の産業を担う意欲と創造性にあふれた起業家の発掘・育成も極めて重要な課題となっております。
 さらに、これからの地域づくりの担い手として期待されるNPOやボランティア活動に対しては、さまざまな側面から支援を行うなど、県民の新しい岩手づくりへの参画の中で、豊かな創造性と強い実行力を持った人材をはぐくんでまいりたいと考えております。
 次に、少子化対策の基本的考え方についてでございますが、出生率低下の原因には、子育てに係る経済的負担の問題もございますが、子育てと仕事の両立支援の不備、晩婚化・非婚化の進行等の問題が考えられ、これらの課題に対応するためには、出産や子育てを地域社会全体で支援していくことが重要であると認識しております。
 これらを踏まえまして、男女がともに家庭や子育てに夢を持ち、次代を担う子どもたちが健やかに育つ環境づくりをいわて子どもプランの基本方針に掲げて、社会、親、子供の三つの視点に立って、子育てしやすい環境づくりを総合的に推進することとしております。
 今後の取り組みの基本方向につきましては、子育て中の家庭への支援、親と子の健康の保持・増進、子供が伸び伸びと成長できる教育の推進など、多岐にわたる少子化対策を家庭、地域、学校、行政など、県民がそれぞれの立場から一体となって取り組みを推進することとしております。
 このため特に、地域で生じた問題はできるだけ地域で解決できるよう、出産前から思春期などにわたる少子化対策に関する総合的な体制づくりを市町村ごとに進める結の心・子育て支援コミュニティの形成を掲げ、結の心・子育て環境日本一を目指して積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、情報化についてでございますが、県では、いわて情報ハイウェイを県内の情報化推進の基幹ネットワークとして整備を進めてまいりましたが、すべての県民があまねく高度情報化の恩恵を享受できる環境にはまだ至っておりません。この課題を解消するためには、光ファイバー敷設エリアのさらなる拡大とともに、県民がいつでも、どこでもインターネットによるサービスを受けることができる移動体通信技術、いわゆるモバイル技術の活用を促進しなければならないと考えております。
 モバイル立県を推進するためには、移動体通信のための鉄塔を整備して不感地帯を解消していくことはもとより、モバイル技術の特性を生かした行政と住民、あるいは住民同士の双方向コミュニケーションシステム、さらには、モバイル技術を利用したビジネスの展開など、多様な観点から県民生活の向上のための活用方法を検討していく必要があると考えておりまして、来年度はこのための実証実験事業に取り組む予定でございます。
 また、ことし5月からは、これまでの40倍の高速大容量の通信ができる次世代型携帯電話サービスが全世界に先駆けて首都圏で提供され、岩手県においても平成14年中には一部の地域でサービスが提供される予定となっております。
 IT分野の技術革新は非常に速いものがございまして、これら次世代技術にも注視しながら、モバイル立県に向けた取り組みを進めたいと考えておりますし、議員がただいま御提言されましたITを操る人間自身のモラルの向上につきましても、この際には十分留意したいと考えております。
 次に、並行在来線対策についてでございますが、まず、運営会社の設立の見通しにつきましては、平成14年12月の開業に向け、本年5月には、鉄道資産を保有し、施設管理や車両運行を一体的に行う第1種鉄道事業者として並行在来線を運営する会社を設立すべく、現在、鋭意その準備を進めているところでございます。
 このための資金計画につきましては、まず、JR東日本から譲り受ける線路や駅等の鉄道資産約94億円は、全額県において対応したいと考えておりまして、車両購入や施設整備等の開業準備に要する経費約40億円については、県からの開業準備費補助金20億円と会社の資本金20億円で賄いたいと考えております。このうち資本金については、県及び市町村で17億円の出資を見込んでございますが、市町村からは要請額7億円全額について出資の内諾をいただいているところであり、民間からの3億円につきましては、現時点で半分程度が確保できる見通しとなっております。したがって、資本金と県からの補助金20億円と合わせまして38億円余りを確保できる見通しでございますので、本年5月予定の会社設立並びに当面の開業準備に必要な資金手当てには支障はないものの、平成14年の開業までには、さらに民間からの出資額を確保できるよう一層努力してまいりたいと考えております。
 一方、会社の経営計画につきましては、国土交通省による鉄道貨物線路使用料に関する調整措置及びJR旅客会社による寝台特急直通乗り入れ措置を踏まえ、現在、詳細経営計画の策定を行うなど、より具体的に詰めの作業を進めているところでございます。
 また、知事としての会社経営の関与についてでございますが、この会社は、県民鉄道である並行在来線を運営していく会社として、将来にわたり健全な経営を行っていくことが重要でございまして、県が中心となって対処していくという姿勢を明らかにし、開業準備に万全を期すため、私自身、会社のしかるべき役職に就任して、会社経営に取り組んでいく考えでございます。
 次に、工業振興についてでございますが、本県におきましては、テクノポリス計画などの着実な推進により、北上川流域を中心として先端技術産業や基盤的技術産業の集積が進むとともに、工業技術センターや岩手大学地域共同研究センターなどの産業支援機関の整備が進められてきたところでございます。
 今後におきましては、本県に蓄積されてきた技術や人材、大学等の知的資源など、発展ポテンシャルを最大限に生かしながら、本県工業が新たな時代環境に的確に対応し、自立的に発展していけるよう、高度な知識・技術を基盤とした付加価値の高い産業を育成・創造していくことが重要と考えております。
 このような観点から、新たなニーズに対応した産業を創造するため、いわて産業振興センターを中心とする産業支援ネットワーク、いわゆる地域プラットホームにより、創業や新分野への事業展開を目指すベンチャー企業などに対し、ビジネスプランの作成から技術開発、マーケティングまでの一貫した支援を行ってまいります。
 また、本県では、岩手ネットワークシステム(通称INS)を中心としてさまざまな交流が活発に展開されておりますけれども、このような交流を契機とした産学官の共同研究開発を積極的に支援するとともに、大学などのすぐれた研究成果の県内企業への技術移転を促進してまいります。
 さらに、本県工業の技術力の向上や競争力のある独自技術の確立を図っていくために、今後成長が見込まれる環境、情報などの産業分野やものづくりの基本となる鋳造、金型などの基盤的技術を重点に、独創的な技術開発に意欲的に取り組む企業を積極的に支援してまいります。
 また、産業界と一体となって環境産業の育成や本県産業のゼロエミッション化を推進し、環境への負荷の少ない持続可能な経済社会の構築に努めてまいります。
 最後に、本県農林水産業の総合的な振興についてでございますが、本県の農林水産業は、地域経済の基盤をなして、食品など関連産業への波及性の高い基幹産業でございます。また、県土の保全等の多面的機能を有するなど、極めて重要な役割を担っているものと認識しております。
 私は、こうした農林水産業の役割を踏まえて、このたびの機構改革におきまして、農政部と林業水産部を統合して、総合的な食料供給基地の形成を目指した第1次産業振興の充実強化を図ることとしたところでございます。
 具体的には、効果的なマーケティング手法を活用した農林水産物の流通・販売対策、農山漁村における汚水処理施設等の相互調整、家畜排せつ物と樹皮とを合わせた堆肥化の推進、農山漁村の魅力を十分に満喫できる体験・滞在型のグリーン・ツーリズム等の推進などについて、一体的に取り組むこととしております。
 さらには、2次、3次産業との結びつきによる特色のある複合産業の形成などを積極的に推進し、より付加価値の高い農林水産業の構築を図ることとしてございます。
 こうした共通する課題について一丸となって取り組みながら、自然と調和した農林水産業の持続的な展開を図り、県民の暮らしといのちを支える産業として振興してまいりたいと考えております。
   
〇副議長(吉田洋治君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時1分 休 憩
   
出席議員(48名)
1番 及川 敦  君
2番 飯沢 匡  君
3番 樋下正信  君
4番 照井昭二  君
5番 柳村岩見  君
6番 小野寺 研 一  君
7番 吉田昭彦  君
8番 工藤大輔  君
9番 川村農夫  君
10番 佐々木 順 一  君
11番 佐藤力男  君
12番 阿部静子  君
13番 阿部富雄  君
14番 田村 誠  君
15番 岩城 明  君
16番 中 屋 敷十  君
17番 千葉 伝  君
18番 佐々木 大 和  君
19番 及川幸子  君
20番 阿部敏雄  君
21番 川口民一  君
22番 小 野 寺好  君
23番 斉藤 信  君
24番 伊沢昌弘  君
25番 田村正彦  君
26番 上澤義主  君
27番 瀬川 滋  君
28番 水上信宏  君
29番 藤 原 泰次郎  君
31番 谷藤裕明  君
32番 菊池 勲  君
33番 佐々木 一 榮  君
34番 伊藤勢至  君
35番 高橋賢輔  君
36番 小原宣良  君
37番 長谷川 忠 久  君
38番 千葉 浩  君
39番 吉田洋治  君
40番 工藤 篤  君
41番 菅原温士  君
43番 山内隆文  君
44番 折居明広  君
45番 村上惠三  君
46番 藤原良信  君
47番 及川幸郎  君
48番 菊池雄光  君
49番 佐々木 俊 夫  君
51番 吉田 秀  君
欠席議員(2名)
30番 船 越 賢太郎  君
42番 佐藤正春  君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後3時21分 再 開
〇副議長(吉田洋治君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第2、一般質問を継続いたします。長谷川忠久君。
   〔37番長谷川忠久君登壇〕(拍手)

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