平成13年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇32番(菊池勲君) 自由民主クラブの菊池勲でございます。
 私は、昭和46年8月、町議会議員に初当選以来30年間の議員生活となり、県議会に議席を得て10年の節目を迎えました。この間の先輩、同僚議員の御高配に感謝を申し上げるとともに、このたび、新世紀における最初の県議会定例会という記念すべき場において代表質問の機会をいただき、厚くお礼を申し上げます。
 先ほど先輩議員である那須川健一議員が辞職されました。先生は議長を初め多くの要職につかれ、県議会には多大の御貢献をされた方であり、まことに残念でなりません。先生の御功績に改めて敬意を表しますとともに、御健勝を心からお祈り申し上げます。
 さて、21世紀が現実となった今日、一層新しい時代感覚のもと、新たな時代にふさわしい行政が求められるものと存じます。新世紀冒頭の県議会にあって、新しい岩手の創造に向けて増田知事の意欲的な御答弁を御期待申し上げます。
 まず、21世紀の岩手像についてお伺いをいたします。
 新たな世紀を迎え、この世紀のあるべき姿について世の関心は高まっています。本年1月10日の読売新聞によれば、全国の有権者3、000人を対象に行った21世紀の日本世論調査では、21世紀の日本がどのような国であってほしいかという問いに対し、自然や地域環境を大切にする国がトップで61%、次いで、福祉の充実に力を入れる国が58%、経済的な豊かさを追求する国は第4位の37%であります。環境問題や福祉への取り組みを重要視する国民が多い結果となっております。また、朝日新聞は1月4日に、豊かなゼロ成長の勧めという社説の中で、総量が伸びなくても新しい企業や産業が生まれ、企業の入れかわりが活発に行われれば、経済の活力、若々しさが保たれるはずとして、むだ、無理、浪費で底上げされた経済より、真に豊かで静かな活力のあるゼロ成長社会の方がよいと思いませんかと結んであります。
 このような中で、1月31日開会の今国会冒頭において、政府は21世紀を、希望の世紀、人間の世紀、信頼の世紀、地球の世紀とするべく、経済の新生や教育の新生、政府の新生など積極的に取り組むと明言しております。我々の郷土岩手においても、新世紀にあってさまざまな見識を踏まえながら、今までの仕組みなり考え方を見直し、新たな発想と価値観に基づいた取り組みを行うことが求められており、多くの県民もまたそのことを期待していると私は考えます。
 そこで、知事は、新世紀のスタートに当たり、21世紀の岩手像をどのように御自分の胸に描き、その実現に向けてどう本県をリードされるお考えかお尋ねをいたします。
 次に、平成13年度当初予算の特色と今後の財政運営の基本方針についてお伺いをいたします。
 国は、平成13年度予算においては、我が国の新たな発展基盤の構築に資する施策に一層の重点化を図りつつ、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、我が国経済を自律的回復軌道に確実に乗せるとの観点に立って編成することとし、特に地方財政については、国、地方の財政状況が極めて厳しい中で、国と地方の負担関係の明確化を図りつつ、所要の財政措置を講ずるとしております。この方針のもとに、平成13年度地方財政計画は、歳出面では、限られた財源の重点配分と経費支出の効率化に徹し、経費全般について徹底した節減合理化を推進する一方、当面の重要課題である景気対策への取り組み、IT革命の推進など、21世紀の発展基盤の構築、総合的な地域福祉施策の充実等に対処するとともに、歳入面では、地方税負担の公平、適正化の推進と地方交付税の所要額の確保を図ることを基本として策定されております。
 本県の平成13年度当初予算は、これら国の予算、地方財政計画などを踏まえて編成されたものと理解しますが、私は、この当初予算は21世紀の扉を開く新しい岩手の基盤づくりをなすものとして極めて重要な役割を果たすべきものと考えており、県民の期待も大変大きいと存じます。国、地方を通じる財政の危機的状況のもとで、知事は本予算をどのような点に重点を置いて編成されたのか、言いかえると、いわゆる増田カラーをどう打ち出されたのか、まずお伺いをいたします。
 また、本予算には、並行在来線の運営主体となる第三セクターの設立準備経費等が盛り込まれており、後年度の財政負担を考えた場合、的確な財政運営を考慮していくべきものと考えます。今後、一方では、大規模プロジェクトを推進しながら、他方では、財政運営の健全化を進める必要性もあることから一層の難しさが予想されますが、どのような財政運営を行っていくお考えなのか、その基本方針についてあわせてお伺いをいたします。
 次に、東北各県との広域連携の推進についてお伺いをいたします。
 いわゆる地方分権一括法が昨年4月から施行され、国と地方の役割分担が明確化されたところであり、地方自治体はこれまで以上に自主性や自律性を確保しながら、地域独自の創意工夫なり、住民の知恵を生かした行政運営を行う必要に迫られております。一方では、地方自治体のアイデアや工夫次第で、活発化する地域とそうでない地域がはっきりしてくることにもなり、まさに地域間競争の時代に入ったと言えるわけであります。このような中で、知事は去る1月4日の記者会見において、各県が利害、得失にこだわらず、地域全体の底上げを図る必要がある。東北各県がより連携を強化し、県民サービスの向上につなげたいと指摘し、道州制にも言及しながら東北各県との連携の必要性を強調しており、その後も同趣旨の発言が報道されております。このような発言はさまざまな波紋を呼んでいるように思われますが、私は、現在の住民生活や経済社会の動きなどを考えあわせると、それぞれの県民の県の枠内だけで行政を完結させることは一定の無理を生ずる分野もあると思っており、むしろ住民や地域の利益につながる分野は積極的に広域的な取り組みを進めるべきと考えております。しかし、一方では、私はかつて北上市、和賀町、江釣子村の3市町村合併に立ち会った経緯もあって、広域行政の難しさもまた実感をしております。また、連携を進めることは、反面、地域の個性や特色が逆に問われることでもあり、まして、複数の県の間の広域的な連携による行政にはさまざまな課題が伴うものと推察するもので、その実現のためには連携の目指すものを明快に示すなど、リーダーの確固たる信念と粘り強い取り組みが求められると思います。
 そこで、知事が進めようとされる東北各県との広域連携についての基本的な考え方と、今後の具体的な方策について御見解をお伺いいたします。
 次に、IT・情報通信技術の活用推進についてお伺いをいたします。
 コンピューターや通信技術の急速な発展とともに、世界規模で進行するIT革命は、社会に一大転換をもたらし、その成否が21世紀の国際競争を決定づけるものとも言われており、我が国もこれからの時代、国民一人一人の充実した生活の実現と経済の競争力強化のために、情報通信技術の積極的な活用が必須であり、政府は、IT基本法を制定し、我が国が5年以内に世界最先端のIT国家になるとの基本戦略のもと、積極的に施策を推進しております。本県では、早くからいわて情報ハイウェイ事業による基盤整備に取り組むとともに、地域企業の産業技術力の強化や農林水産業などの産業分野の高度化、医療、保健、福祉、防災などの県民生活面の情報化も進めていると認識しております。しかしながら、現実には今日のIT進展のスピードが極めて早く、果たして本県が、民間も含めてIT革命の波に乗り切れているのか、全国の中でどのレベルに達しているのか一抹の不安も覚えるものであります。岐阜県では、県のIT推進本部を立ち上げたともお聞きいたしますが、本県はIT国家を目指す国の積極的な取り組みに機敏に呼応し、より一層迅速で重点的な施策展開が期待されます。
 去る1月27日には、盛岡市で中小企業者へのIT活用の普及を図るフォーラムが開催され、増田知事とノーベル賞受賞学者江崎玲於奈・芝浦工業大学学長とのトップ対談も行われたほか、本県の現状と課題等について多方面からの議論がなされたと伺っております。知事は、モバイル立県を目指すとしており、本県の民間分野も含めたIT活用の現状をどのように認識され、また、今後、他県に先駆ける形で本県の各分野のIT活用をどう推進するお考えか御見解をお伺いいたします。
 次に、産業廃棄物対策についてお伺いをいたします。
 県は、環境を新しい岩手を切り開くキーワードの一つととらえ、その保全のため、産業廃棄物対策を重点施策に位置づけていると認識しております。知事は、この分野には特に力を入れ、さまざまな場で意欲的に発言をされており、ある講演の中では、産業廃棄物対策は産業用地の施策としても重要とし、その分野への公共関与の必要性や北東北3県などの広域連携の重要性を強調されております。また、基本的には岩手や北東北地域から余計なものは出さない、よそからも危険なものは持ち込ませない体制づくりの必要性を強調し、クリーンセンターの県北への新たな誘致などにも言及されております。私は、美しい県土を守るため、知事のこの積極姿勢を評価するものであり、特にも、先般、知事が首都圏から本県に搬入される産業廃棄物を規制すると明言されたことが報道されましたが、画期的なことと受けとめております。昨年明らかになった二戸市や一関市における首都圏からの産業廃棄物の不正搬入や不法投棄が、今後に及ぼす影響の大きいことを考えるにつけ、この問題にぜひとも強い姿勢で対処していただきたいと存じます。
 そこで、今回新たな首都圏の産業廃棄物を規制しようとするその基本的な方針と、今後の取り組みの内容について知事の力強い見解をお聞かせ願います。
 次に、介護保険制度についてお伺いをいたします。 本県の65歳以上の高齢者の割合は、20.7%と全国の16.7%を大きく上回り、将来予測では平成22年には本県の高齢者率が25%前後が見込まれ、まさに超高齢社会が目前に迫っております。本県市町村の中には、既にこの状況に立ち至っているところもありますが、当該地域では、高齢者の長年の経験や知恵が生かされる温かさや豊かさが感じられる一方で、やはり若者が少ないことにより活力の減退や将来への不安、寂しさは避けがたいものがあります。私は、本県の超高齢化社会を避けられないとすれば、不安やマイナス面をカバーしながら、そのよさを十分に生かすことこそ大切と考えております。幸い、高齢者の大きな不安要素であった介護については、平成9年に介護保険法が誕生し、昨年4月から制度がスタートしております。この制度は紆余曲折もあったわけでありますが、間もなく1年が経過しようとしており、さまざまな検討や努力が積み重ねられた結果、高齢社会にはなくてはならない制度として定着しつつあると存じます。しかし、一方では、介護事業者の経営が厳しい、介護報酬が安い、利用時の1割負担から来るサービス利用の手控えがある、施設のベッドが不足であるなどさまざま切実な声も聞かれ、この制度が将来とも県民の信頼を得て高齢者の福祉に長く貢献するためには、なお、国、県として取り組むべき課題も多いと考えます。
 そこで、知事は、新たな社会保障としての介護保険制度のこの1年をどのように評価され、また、この制度が県民から将来にわたって信頼が得られる確固たるものとするために、今後どのような取り組みを行うお考えなのかお尋ねをいたします。
 次に、医療機関の運営の適正化についてお伺いをいたします。
 最近、全国の医療機関において、管理体制の不備や医療ミスにより患者が健康被害を受けるなどの事件・事故が発生し、その報道が頻繁になされます。つい先ごろは、宮城県内の医療法人の経営する医療機関において、事もあろうか患者の生命、健康を守るべき立場の准看護士が、みずから携わる医療行為の過程で多くの患者の生命を奪ったなどの疑いで逮捕されております。改めて申すまでもなく、患者は疾病の回復を願い、その治療のために医療機関やそこに勤務する医療従事者に全幅の信頼を置いてその身をゆだねます。しかるに、こうした思いとは裏腹に、治療上のミスやごく一部ではあると思いますが悪意やずさんな管理体制などにより、いとも簡単に患者の生命や健康が脅かされる事態は、御本人や家族の方々にとって無念さはいかばかりかはかり知れません。また、多くの医療従事者にとっても長年の努力を水泡に帰すもので、このショックは大変なものと推察いたします。患者の立場としては、これらの報道に接すると、医療事故が我々にとって決して他人事ではあり得ず、いつ自分の身に降りかからないとは限らないといった疑念や恐怖感が生じてくるのも当然であります。本県においても、県内医療機関の運営の適正化や医療事故防止、医療従事者の知識、技能、モラルの向上について、一層身を引き締めて取り組みを行うべきと思いますが、県はどのような取り組みを行っているのか、また、今後どう対応されるのかお考えをお示し願います。
 次に、青少年の現状と健全育成についてお伺いをいたします。
 昨年5月に発生した17歳の少年によるバスジャック事件を初め、全国で少年の凶悪な犯罪が多発しております。本県でも例外ではなく、少年の放火による高齢者御夫婦の痛ましい死亡事件など、まことに憂慮すべき事件が発生しております。また、ことしの成人式では、全国的に非常識な行動がさまざまな議論を呼んだところでもあり、青少年の自己中心的で自分の欲望や衝動を抑えることができない傾向がますます顕著になっているように思えてなりません。しかし、一方では、青少年の多くは自分の夢や希望の実現に向けて精いっぱい努力するなど、それぞれの人生に真剣に向き合っているのも現実であります。このような姿を目の当たりにするにつけ、人生の先輩としてさまざまな形で応援する必要性と責任を痛感するものであります。国は、青少年対策は国政上の重要課題と位置づけており、昨年11月には少年犯罪の抑止などを目的に少年法を改正し、この4月から施行するほか、今般の中央省庁等の改革についてはこの問題の重要性にかんがみ、青少年対策には内閣府が省庁の枠を越えて総合的に取り組むこととしております。増田知事は、ひとづくりを県政の最重要課題の一つに位置づけ、また、県政懇談会などのさまざまな場で若い人たちとも積極的に交流をされておりますが、本県青少年の現状をどうとらえておられるのか率直な感想をお聞かせ願います。
 また、本県の次代を力強く担う青少年の健全育成にどのように取り組むお考えかお尋ねをいたします。
 次に、地産地消の推進についてお伺いをいたします。
 知事は、年頭記者会見において、県民へのメッセージとして、物質的な豊かさのみならず、心の豊かさ、精神的な充実感を合わせ持った豊かな社会をつくり上げる必要性を訴え、その中で食料供給県として本県の1次産業の持つ意味合いを原点に戻って見直す必要性に触れながら、県産食材を食べる食料供給県の重要性を強調されております。私は、農業にかかわる者として、この知事のメッセージは1次産業に従事する県民を大変勇気づけるものであったと歓迎して受けとめております。農産物を見た場合、幸い本県は自然豊かですぐれた生産環境を有し、消費者に満足してもらえる品質や食味のすぐれた産品をふんだんに生産する全国有数の産地であります。しかし、本県農産物は首都圏の出荷が多く、大産地にもかかわらず県内の量販店などでは、本県の出荷時期でも他産地の農産物が多く販売される現状であり、関係者として非常に残念でなりません。知事のお話のとおり、大産地岩手で生活し、身近な消費者である県民が岩手ものを購入できる機会をふやすことが生産者のみならず消費者にとっても期待されますが、改めて県産農産物の県内消費拡大策についての知事の御見解と今後の具体的な取り組み方策についてお示しを願います。
 中でも、米は全国的に余剰の中で厳しい減反が繰り返され、農家は悲鳴を通り越している現状であります。一方、本県でも、米の消費はこの10年で15%も減っているという調査もあります。米の消費拡大策は、私たちの段階で取り組める施策であります。私は、例えば子供たちへの学校給食の拡大を初め、米を味わい、米を食べてもらう対策の重要性を常々考えますが、本県の米消費拡大の取り組みについてあわせて御見解をお示し願います。
 次に、花巻空港の整備促進についてお伺いをいたします。
 花巻空港は、昭和58年のジェット化以来、本県と主要都市の時間と距離の大幅な短縮を図り、地域間交流の活発や経済活動の拡大に貢献するなど、本県のまさに空の玄関として極めて重要な役割を果たしてまいりました。20世紀最後の年である昨年は、台湾からのチャーター便で3、000人を超える人々が花巻空港に降り立ち、県内を初め東北の観光を堪能しました。これは花巻空港始まって以来の出来事で、これまでの出かけていくだけの国際チャーター便が、今や海外からも来ていただける時代となったのであります。まさに、21世紀の岩手県の未来を予感させる出来事だったのではないでしょうか。新潟便がことしの3月に打ち切りになることはまことに残念でありますが、花巻空港は本県国際化の玄関口であるとともに、産業全般に極めて重要な位置を占めており、年々その重要性が増していることをしっかりと再認識すべきであり、現在、滑走路延長やターミナルビルなどの整備に向けて精力的な取り組みがなされており、新年度予算も重点的に配分されるものと存じていますが、その整備方針と今後の見通しについてお伺いをいたします。
 また、空港整備事業の推進には、地域の理解と協力が不可欠であります。一部用地交渉が難航しているともお聞きしますが、県勢全体の発展を見据えて空港整備を図るとの観点に立てば、県としては、当該地域の振興や周辺の住民の方々の生活環境保全には万全の対策が必要と存じます。この点についての御見解をあわせてお示しを願います。
 最後に、職員倫理の確立についてお伺いをいたします。
 県においては、ここ数年、職員による公金をめぐる不祥事が相次いでおり、県民の不信は極まっている感があります。県議会においても、その都度、原因や防止策、職員倫理の確立などについて多くの議論が交わされてまいりました。県当局もこの事態を危機感を持って深刻に受けとめ、さまざまな取り組みを行っているものと認識しております。
 加えて、今議会には職員が贈与等を受けた場合の報告義務等を定めた、職員の職務に係る倫理の保持に関する条例も提案されており、条例制定後は、さらに具体的な面を詰める予定と伺っております。ぜひ細部を十分検討し、現実的で実効性のある制度にしてほしいと念願いたします。
 国においては、既に昨年4月から国家公務員倫理法が施行されており、今回の条例の整備等により、国、県を通じた制度が整備されることになりますが、ぜひこれを機に、県職員の職務に係る倫理が一層厳格に保持されることを切に期待したいと存じます。
 しかし一方、倫理は行動の規範としての道徳観や善悪の基準であると言われ、職員個々の心の中の問題であります。条例などの制度の整備は一つの始まりにすぎず、今後は職員一人一人の倫理意識を高めることが大事で、このためには組織の十分な働きや職員間の信頼と適度な緊張感の維持など、地道で細やかな取り組みが求められると考えます。
 また私は、何よりも職員個々が公務員としての自覚と使命感を持って日々緊張して業務に当たることが重要で、このためには、県職員全体のなお一層の士気の高揚が極めて重要と考えます。
 そこでお伺いしますが、知事は、県職員の倫理の確立と士気の高揚についてどう考えておられるのか、また、今後どう取り組む決意か、お示し願います。
 御案内のとおり、中央においてはKSDをめぐる問題や外務省の汚職事件など、政治や国家公務員のモラルの低下を示す事件が相次いでおり、これらが世の中に与える影響ははかり知れないものがあります。特に、国、地方を通じて政治に携わる者の責任は重大であり、きちんと襟を正し、国民、県民の期待にこたえなければならないものと考えます。私も政治にかかわる者の一人として、自戒の意味を込めながら、倫理のあり方について増田知事の御見解を伺った次第であります。
 以上で私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 菊池勲議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、21世紀の岩手像とその実現に向けての考え方についてでございますが、地球時代を迎えた今日、地球規模での食料問題や資源・エネルギー問題、さらには温暖化を初めとする地球環境問題など、人類すべてが力を合わせて取り組んでいかなければならない課題が山積しております。
 このような中にあって、我が岩手は、美しく、恵まれた自然環境とともに、我が国の枢要な総合食料供給基地としての立地条件や環境に優しい新エネルギーへの取り組み、自然と共生してきた多彩な地域文化、そして先人が守りはぐくんできた豊かな人間性などを有しておりまして、さきに述べました課題を解決して、21世紀のフロントランナーとして取り組んでいくことのできる大きな可能性を持っていると考えております。
 したがいまして私は、このような近年見直されてまいりました岩手の持つ価値、言葉を言いかえますと、やっと国民の多くが気がついてきたこうした岩手の持っているすばらしい価値、そして岩手の発展可能性を最大限に生かしながら、この岩手の地に、持続可能な循環型の社会を構築するとともに、情報通信技術、いわゆるITの積極的な活用によりまして、新たな知識創発型社会を実現し、第1次産業を初めとする地域経済の活性化や医療・福祉などの県民サービスの質的向上を図り、まさに活力と躍動感あふれる地域社会をつくってまいりたいと考えております。
 そのため、新しい岩手を切り開くキーワードとして、環境、ひと、情報の三つを据えて、環境につきましては、ものの生産から廃棄物の処理、再資源化に至る総合的な生産システムの再構築など、そして、ひとについては、地域社会に参画し社会を支える人づくり、また、情報につきましては、いわて情報ハイウェイの具体的な活用や移動体通信技術、いわゆるモバイル技術の活用などに積極的に取り組んでいく考えでございます。
 また、これらの推進に当たりましては、NPOや県民、事業者など、あらゆる主体の参画を得ながら、多くの人々の創造力と地域力を結集して、県民一人一人が生きる喜びを実感することのできる社会が実現されるよう努力する考えでございます。
 次に、平成13年度当初予算の特色についてでございますが、今回の予算編成におきましては、21世紀の新たな発展基盤を構築するために、総合計画の着実な推進に向けて、中期的な財政見通しのもと、政策評価結果による施策重点化方針に配慮しながら、限られた財源を重点的かつ効果的に配分するということを基本として編成したところでございます。
 まず、今回策定した施策重点化方針でございますが、これは環境首都実現に向けた取り組みなど七つの項目でございますが、これらに基づくものとして110の施策・事業、約646億円を措置したところでございまして、例えばNPO活動、また無認可保育施設などへの新たな支援や汚水処理の連携モデル調査、廃プラスチック適正処理の促進など、資源循環型社会構築の推進、モバイル技術の活用など、生活者や地域の視点でさまざまな課題に正面から取り組んだ、いわば現場型の予算編成ができたものと、このように考えております。
 また、公共事業につきましては、効果の早期発現を目指して継続事業を大幅に進捗させることといたしておりまして、その結果、新規着工箇所につきましては、費用対効果分析などによる優先度を踏まえて厳選するなど、重点化・効率化を図るとともに、その採択基準、採択、不採択の結果の公表を行いまして、説明責任を果たすよう努めたところでございます。
 さらに、北東北3県を中心として各県との連携の取り組みを積極的に盛り込むなど、県境を超えた広域連携の推進にも努めたところでございます。
 次に、大規模プロジェクトの推進と財政運営の基本方針についてでございますが、今後予定される並行在来線、空港、道路などの交通ネットワークの整備や、盛岡駅西口の複合施設の整備などのプロジェクトの推進を図るために、平成13年度から政策評価を本格的に実施して、施策の重点化・厳選を行うなど、中期的な財政見通しのもとで、歳出の抑制、財源確保対策を進めることにより、種々の財政需要に適切に対処して、総合計画の着実な推進を可能とする県財政の運営に努めてまいりたいと考えております。
 次に、東北各県との広域連携の推進についてでございますが、私は、今後、住民の視点に立って責任ある行政を進めていくためには、住民に最も身近な存在である市町村が行政の中心となることが望ましい姿でございまして、そのためには、市町村が主体的に取り組むことができるような地方税財源の確保や行政体制の整備が不可欠であると、このように考えております。
 一方、都道府県の役割といたしましては、市町村を越えたより広域的な地域づくりへの支援や社会資本の整備などとともに、県という枠を越えた連携によりまして、それぞれの県が機能分担しながら、右肩上がり時代のフルセット主義の発想から脱却して、限られた資源の有効活用や、より効率的で質の高い行政サービスを提供していくことが、今後一層求められてくるものと考えております。
 したがいまして、このような認識のもとに、北東北3県の特色を生かし合いながら、3県が共同し福岡県での合同事務所の設置、あるいは環境分野における子ども環境サミットの開催、広域的な産業廃棄物処理への対応などについて取り組んできたところでございます。
 今後におきましては、このような広域連携の具体的な成果を東北全体に広げていきまして、こうした一つ一つの積み重ねにより、東北6県の機能強化が図られるよう、具体的な広域連携推進のためのテーマを設定しながら各県知事に呼びかけを行いまして、積極的に取り組む考えであります。
 次に、IT・情報通信技術の活用推進についてでございますが、近年の情報通信技術、いわゆるITの飛躍的な進展によりまして、それぞれの地域が有する資源や文化を最大限に生かし、新しい産業や価値を創造することが可能となってきております。そのため、情報をいかに生かしていくかがこれからの岩手県の発展を大きく左右するものと考えております。
 民間研究所の調査結果によりますと、本県の現状は、インターネットに接続しておりますパソコンの所有率は全国で41番目となっている──これは平成12年6月現在の調査でございますが、残念ながら全国で41番目となっているなど厳しい状況にあるわけでございますが、一方、県内各地での情報ネットワークづくりやIT講習会の積極的開催などを通じて、ITへの関心、意識が急速に高まりつつございます。
 このような現状を踏まえて、行政を中心とした取り組みとして、当面できるだけ多くの県民がインターネットに触れて利活用できる環境づくり、そして、学校にインターネットを接続して、授業等に活用できる環境づくり、さらには医療分野や災害時に対応した高度情報システムの整備を重点的に進めたいと考えております。
 また、産業分野におきましては、商工業の情報化の促進や総合観光情報システムの構築を進めるとともに、高等教育機関の有する高度な研究開発ポテンシャルを活用した産学官連携による情報産業の育成を図ってまいりたいと考えております。
 次に、首都圏などの産業廃棄物の規制の基本方針と今後の取り組み内容についてでございますが、私は、青森県境での大規模な廃棄物不法投棄事件を教訓といたしまして、よそからの産業廃棄物の不正な持ち込みを規制する仕組みをつくる一方で、県内の処理体制の整備充実が不可欠であると強く認識したところでございます。
 このことから、現在、不適正な処理を未然に防止するため、事前協議制の見直しや課徴金、保証金、あるいは環境税等の経済的な手法による不適正処理の抑止策について、学識経験者等専門家の意見を伺いながら検討を進めておりまして、さらに、いわゆる産廃Gメンの増員や関係団体等との不適正処理情報ネットワークの充実など、監視体制の強化を図ることとしております。
 また、県内で発生した廃棄物をできるだけ県内で処理する体制を整備することが必要でございまして、いわゆる原則自県(圏)内処理の考え方を、今年度内に策定いたします廃棄物処理構想の中での中心的な考え方として掲げることとしております。
 今後は、本県と同じ状況下にございます青森県、秋田県と県境地域における合同パトロールの実施や不法投棄情報ネットワークの構築、不法投棄事件に関与する隣接県の業者、施設への立入調査、指導取り締まりなどを広域的に進めていくこととしておりまして、経済的な手法など、新たな制度の導入についても北東北3県で研究を進め、首都圏などからの廃棄物の持ち込みを共同で阻止するよう取り組んでまいります。
 次に、介護保険制度についてでございますが、この制度は、老後の最大の不安要因でございます介護を、国民の共同連帯の理念に基づき、社会全体で支える新たな仕組みとして創設されたものでございますが、市町村を初め、関係の皆様方の御尽力に支えられまして、大きな混乱もなく、制度としてはおおむね順調に実施されていると認識しております。
 しかしながら、県民の皆様や市町村からも、要介護認定や低所得者の利用料負担の問題などさまざまな課題があることを伺っておりまして、これを踏まえて、県におきましては、国に対して低所得者対策の拡充やショートステイの利用拡大など、制度上の課題への対応を制度施行当初から求め、その解決に当たってきたところでございます。
 今後におきましても、制度の実施状況を随時検証するとともに、課題につきましては、国、市町村等関係者の連携のもと、順次改善しながら、この制度が県民生活の中により定着できるよう、柔軟な姿勢で対応していくことが必要であると考えております。
 県におきましては、このような対応をとりつつ、昨年策定いたしましたいわていきいきプラン2005に基づき、市町村等を支援するとともに、制度の趣旨を県民の皆様に改めて御理解いただけますように、市町村と一体となって制度の円滑な実施と周知に努めてまいりたいと考えております。
 次に、医療機関の運営の適正化についてでございますが、最近報道されております医療事故につきましては、その多くが初歩的なミスに起因しているとされておりまして、すべての医療関係者がこれを真摯に受けとめ、信頼の回復などに取り組んでいく必要があると思っております。
 このためには、まず、医療従事者一人一人が患者の生命を預かっているという意識を常に忘れずに業務に従事していただくことが肝要でございます。また、高度化・複雑化した現代の医療におきましては、個人の努力による取り組みだけでは限界がございまして、医療機関において組織的に取り組むことも重要でございます。
 こうした観点から、県としては、病院に対する医療監視の重点事項として、本年度は、特にも安全対策委員会の設置や危機管理マニュアルの策定などに組織的に取り組むよう指導いたしてきておりまして、この安全対策委員会はおよそ8割近く、それから危機管理マニュアルは6割近くが既に策定してございますが、こうした指導を行いますとともに、各医療機関、そして関係団体に対して医療事故防止に関する通知を発出するなど、その周知徹底を図っているところでございます。
 また、医師・看護婦などを対象とした各種専門研修会などを開催して、知識、技術の向上に加えまして、医療従事者として求められるモラルの保持、向上にも努めてございます。
 今後におきましても、このような対応に加えまして、平成13年度には、看護職員の資質向上方策を検討するなど、医療事故防止対策の充実、強化を図ることとしてございます。
 次に、青少年の現状と健全育成についてでございますが、本県の青少年の多くは、みずからの目標に向かって真摯に取り組んでいる一方で、今御指摘のように、少年非行が多発し、質的にも凶悪・粗暴化する傾向にございまして、まことに憂慮すべき状況にあることもまた事実でございます。
 このような問題の背景としては、家庭のしつけのあり方や兄弟姉妹の減少、地域のつながりの希薄化などによる多様な人間関係を学ぶ機会の減少など、さまざまな要因が考えられるわけでございます。
 私は、青少年が他人への思いやりと自立心に富んだ人間に成長していくためには、まず、家庭におきまして親がその責務を自覚して、基本的なしつけを行うことが必要であり、その上で、青少年は地域社会からはぐくむという観点に立ち、家庭、学校、地域などがそれぞれの役割を再認識して、一体となって地域社会の教育力を高めていくことが重要であると考えております。
 このため県としては、世代間の交流などを通じて社会性を学ぶことができる郷土芸能の伝承活動等の支援や、地域の指導者のもとさまざまな体験活動を行う小・中学校教室開放推進事業を行うとともに、地域と一体となった小中学生の夢への挑戦を支援する岩手っ子の夢チャレンジ事業の実施、青年海外派遣事業等によるリーダーの養成、青少年育成市町村民会議や教育振興運動組織などの取り組みを支援するなど、地域社会の教育力の向上に積極的に取り組んでいく考えでございます。
 次に、県産農産物の県内消費拡大についてでございますが、県産農産物の多くは首都圏を中心とした大消費地へ出荷され、純情産地として高い評価を得ているところでございます。この新鮮で豊かな恵みを身近な消費者である県民が地元で消費する、いわゆる地産地消を推進し、本県農業の振興に積極的に結びつけていくことが重要であると考えております。
 県内での県産農産物の流通割合は、例えば、野菜で見ると4割程度と推定されるわけでございますが、最近の食料に対する安全・安心への高まりから、地元産のものを志向する県民が多くなってきておりますので、こうした要請にこたえた供給に努めながら、県民一人一人が県産農産物を愛好するような取り組みを一層進めていくことが必要でございます。
 こうしたことから、地産地消を県民運動として幅広く展開するため、県内の関係機関・団体、生産者、消費者、食品産業などが一体となって参画する推進体制を整備して、県産農産物の利用拡大に向けた啓発を進めたいと考えております。
 具体的には、毎月1回、県産食料の日──これは仮称でございますが、これからまたネーミングなどを考えたいと思いますが──を設けて、家庭などで県産食材を取り入れる運動を展開するとともに、学校給食での地場食材の利用拡大、量販店における県産農産物コーナーの設置、レストランでの郷土食メニューの提供、食品産業による地元の食材を使った特色ある加工品の販売など、各分野にわたる取り組みの拡大を図ってまいります。
 また、米の消費拡大につきましては、米需給バランスの回復に寄与するばかりでなくて、本県農業の基幹作目としての稲作振興を図る上でも大変重要であると考えております。このため、関係機関・団体と連携し、8月18日の米の日イベントを初め、米に親しむためのさまざまな啓発活動を展開しているほか、子供のころから正しい食習慣を身につけることが大切でございますので、学校給食につきましては、純情米学校給食安定供給事業というものを実施して、県産米の供給を行っているところでございます。
 今後は、こうした取り組みに加えて、米を中心とした食生活などを提唱した食生活指針の普及定着を進めるなど、県産米の消費拡大に一層努めてまいりたいと考えております。
 次に、花巻空港の整備促進についてでございますが、花巻空港は、県内外の交流やますます活発化する国際交流を促進するための重要な社会資本でございます。今回の拡張整備は、航空機の離着陸時の安全性の向上、冬季就航率の改善、国際チャーター便の運航拡大、大型機による修学旅行や団体観光の利用の増大などを図るため、平成17年3月の供用開始を目指して、滑走路の延長やターミナル地域の移転などを行うものでございます。
 この整備に必要な用地については、一部地権者との用地交渉が難航しているものの、既に96%を取得しておりまして、現在、盛り土工事や地下道の整備などを鋭意進めているところでございます。
 空港整備事業は周辺地域に与える影響が大きいことから、県では、土砂運搬路への歩道の設置や交差点の改良、また、通学児童生徒のためのスクールバスの運行、交通安全指導の徹底など、地域住民の生活環境の保全に最大限の配慮をしながら、事業の推進に努めているところでございます。
 また、地域振興策として、花巻市や国などと連携しながら、関連する道路の整備や広域流通の核となる流通業務団地を整備中でございまして、空港及び東北縦貫自動車道、横断道など、高速交通網の結節点という優位性を生かした物流拠点の形成を目指しているところでございます。
 今後とも、各種関連事業の推進にあわせて、当初の供用開始目標に向け、その整備に全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 最後に、県職員の倫理の確立と士気の高揚についてでございますが、もとより公務員には、全体の奉仕者としての公正な職務の遂行が求められております。公務に対する県民の信頼を回復するためには、ただいまの議員御指摘のとおり、職員一人一人が公務員としての自覚と使命感を持って日々の業務に当たることが何よりもまず肝要でございます。
 また私は、現場重視の県政を推進する上からも、県職員には、地域のニーズに応じたきめ細かな業務運営や、市町村はもとより、地域のさまざまな団体との一体的な活動や交流が、今後より一層必要であると考えております。
 こうした日々の業務や活動を行うに際しては、当然のことながら、全体の奉仕者として公正に職務を遂行すべきものであり、また、これまでもそのように努めてきているところでございますが、今後、業務を遂行していく上では、職員がより現場に入っていく必要があると考えております。このように職員がより現場に入っていくためには、地方公共団体を取り巻く昨今の情勢にかんがみて、職員の行動規範としての明確なルールを確立すべきものと考えたところでございます。
 このようなことから、いわゆる職員倫理条例を今議会に提案しているところでございますが、今後は、この条例に基づく倫理行動基準を定めますとともに、職員研修や職場での管理監督者による指導などを通じて、職員倫理の確立に努めていく考えでございます。
 また一方で、職員の士気の高揚も大変重要でございますので、私自身もさまざまな機会をとらえて、意欲的に業務に取り組むよう職員を激励してまいりたいと考えております。
〇議長(山内隆文君) 次に、吉田秀君。
   〔51番吉田秀君登壇〕(拍手)

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