平成13年2月定例会 第9回岩手県議会定例会会議録

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〇37番(長谷川忠久君) 政和会の長谷川忠久でございます。
 那須川先生が辞任をされました。那須川先生のこれまでの御活躍に心から拍手を送りますとともに、日ごろの御交誼に感謝を申し上げる次第でございます。また、これからはお元気で、ますます御活躍されんことを願うばかりでございます。
 さて、21世紀初の岩手県議会定例会において、会派を代表し、知事に質問できる機会をいただきましたことを大変光栄なことと存じ、先輩、同僚議員の皆様方の御厚情に心より感謝を申し上げます。
 物理的にはただ時間が経過し、20世紀から21世紀へ移行しただけでありますが、私は、静かに幕を開けた21世紀を迎え、大きな感慨を覚えます。それは、今世紀が人間社会にとって大きな変動を予測させ、人間の力と英知が試される世紀だと感じているからだろうと思います。20世紀前半は熱い戦争の時代であり、後半は冷たい戦争の時代でありました。そして最後の10年間は、日本ではバブルがはじけた時代であり、失われた10年と表現されますが、国際的には冷戦終結時の世界秩序を求めて、また、人類共通の価値観を求めての10年間であり、少なくとも21世紀初頭の性格を決する重要な10年間であったように思えてなりません。この10年間に人類の共通認識となった、人類の生存基盤を脅かす地球温暖化を初めとする環境問題は、環境の世紀として21世紀を貫く大きな課題ですが、ほかにも21世紀初頭に大きくクローズアップされるであろう課題が20世紀最後の10年間に惹起し、私たちに解決を迫っているのであります。すなわち、経済ではIT革命が成長の原動力となるとともに、社会的にも大きな変動を与えることになり、早急にそれへの対応を迫っているように思えてなりません。また、経済のデフレ基調は、財政の拡大均衡になれている私たちに縮小均衡を強要し、デフレからの脱却を一層難しくしているように思えてなりません。社会的にも少年犯罪の多発化や凶暴化を初めとする、命を軽視するかのような今まで余り例を見ない犯罪がたびたび起こり、教育のあり方を初め社会全般が問われています。その結果が、21世紀は心の時代、感性の世紀と言わしめているのではないでしょうか。国政においても、最後の10年間に中央省庁等改革関連法と地方分権一括法の政治改革2法が制定され、21世紀はその精神を現実のものとし、どう生かしていくかという課題も起きています。そして、それらの課題は、国政の課題として地方に住む私たちが等閑視できる課題では決してありません。ましてや、地方分権一括法により国政と地方自治の関係がより明確になり、上下主従の関係から対等協力の関係になったのであればこそであります。
 そこで、21世紀初頭の予想される変化、新たな潮流にどう対応されるかにつき、以下質問をさせていただきます。
 質問の第1は、IT革命についてであります。
 ITの技術進歩が革命と称されるのは、単に株式取引における場立ちの消滅や経済の効率化だけではなく、人々の生活様式や企業の経済活動、さらに、政治や行政にまでも大きな変化をもたらすからであります。国の21世紀の情報通信ビジョンやIT基本戦略において描かれているIT時代の社会像は多岐にわたっております。先日、竹中平蔵先生の講演を聞く機会を得ましたが、既に週に3日出社すればよい会社の出現や、インターネットによる受注生産だけで在庫を必要としない会社もあるそうであります。また、兵庫県三田市のゆりの木台自治会では、地域コミュニティーづくりとしてインターネットを活用し、地域の活性化や豊かなまちづくりを図っているという事例も報告をされております。こうした中で、本県におきましては行政や防災、教育、医療等の分野での県民サービスの向上を目指し、いわて情報ハイウェイの整備に着手しているところであり、先見性のある岩手県政の卓見に敬意を表するものでありますが、しかし、いわて情報ハイウェイはあくまでも現時点では行政分野の利用が中心となっております。ITによって変化するであろう県民生活、企業の経済活動、そして、政治や行政のあり方への県の対応も急を要するのではないでしょうか。行政面の課題としては、パソコンの普及、デジタルデバイドの解消、事務のペーパーレス化などももちろん必要ですが、県庁職員の就労形態や本庁と地方振興局の仕事の進め方等についても、ITは影響を及ぼすのではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 また、県では情報ハイウェイや職員1人1台パソコン体制の整備など、行政情報化のハード面の整備がほぼ完了し、今後は電子県庁の早期構築を目指した取り組みを行うと聞いております。行政分野の情報化も重要でありますが、県民のだれもが、いつでもこのIT革命の恩恵を受けることのできる環境の整備こそ急務ではなかろうかと考えておりますが、いかがでしょうか。
 こうした観点から、県民が直接メリットを享受できるよう情報ハイウェイのコンテンツの充実や住民と行政、あるいは地域の住民同士が双方向で情報のやりとりができるような環境の整備などに早急に取り組む必要があるのではないかと思いますが、御所見を賜りたいと存じます。
 ITの進行、情報化社会の進展がもたらすものは、売り手の側から言えばデフレであり、買い手から言えば規制緩和であると言われます。それを裏づけるように、昨年の全国の消費者物価指数は、前年に比べ過去最大の下げ幅で0.7%低下し、2年連続の下落であったと報道されています。その原因は、需要不足と供給過剰の両方とし、安い輸入品の流入等も影響していると言われますが、この傾向は国際的に当分の間続くという見方もございます。湾岸戦争を契機に、世界経済に影響を及ぼすような資源供給国を巻き込む大規模な戦争は起こり得なくなった。大国間の武力紛争も一挙に消滅したという情勢判断が世界に定着した結果、もはやもの不足経済であるインフレ時代は終わり、商品とサービスの供給が過剰になるデフレ時代が始まったという見方であります。この見方が正しいかどうかは私には判断はできませんが、平成9年からの経済成長が実質マイナスであるという事実と、不良債権処理や構造改革に手を焼いている日本の政治経済がその見方を正当化しているように思えてなりません。デフレの功罪は種々言われますが、企業にとっても行政にとっても、デフレは過去の借金の実質負担を相対的に重くします。本県の借金も1兆2、000億円を超し、国と地方自治体の総額も666兆円と言われる今日、デフレスパイラルの回避は行政にとって21世紀の経済、財政を考えるとき、最大の課題になるのではないでしょうか。まして、二千六、七年に日本の人口がピークに達し、人口減少時代の到来を目前にしています。人口減少は高齢社会に拍車をかけ、1、200兆と言われる日本の総預貯金を減少させ、国民負担率を増加させ、経済の活力にさまざまな影を落とすことは明瞭であろうと思います。人口減少時代が始まるのは、遠い将来のことではございません。増田県政3期目の後半に始まるのであります。県は、中期経済見通しの中で、今後の経済情勢や国の財政構造改革への取り組み動向、あるいは地方財政対策への動向を見きわめながら、適時、見直しを図っていく必要があるものと考えているとしていますが、デフレ経済の継続や数年後に控えている人口減少時代を財政見直しの必要条件として加えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。賢明な御当局でありますから、以前から想定されておられるやも知れませんが、そうであればその検討結果をお知らせ願います。
 政治改革2法が成立し、国においては政治改革が緒につきました。475本の法律改正を伴う地方分権一括法については、二度にわたりこの場から質問させていただいておりますので、今回は中央省庁等改革関連法を中心に見解を述べ、知事の見解をただします。
 中央省庁等改革関連法によって、この1月6日、国の省庁は1府22から1府12省庁になりました。省庁の数だけではなく、局長や課長の数も大きく減少するとともに、国家公務員の数も10年間で25%削減するというものであります。国民の価値観の多様化や複雑かつ不透明な社会動向という時代の流れにあわせ、省庁横断的に施策の推進に当たるためだけではなく、制度疲労を起こした官僚主導の政治を廃し、政治家主導の政治を実現するためのものであると言われております。発議権は内閣総理大臣だけという閣議のあり方、経済財政諮問会議で予算の骨格を決定するということは、政治家主導の徹底したトップダウン方式の採用といってもいいのではないでしょうか。ただ、実際には、次官会議の廃止をめぐって、その対応等に自分でつくった法律への戸惑いや自信のなさが見え隠れし、本格始動は大丈夫なのかと心配になりますが、そのうちにこれまでの調整能力だけにたけた大臣は消え、高度な専門知識と問題点の明確な認識を有し、指導力を発揮する大臣があらわれることを心より期待するところでございます。
 さて、石原慎太郎東京都知事は、直接対話で住民の声を吸い上げるよりは、都民の愚痴を聞くのは嫌とトップダウン方式で政策の推進を図っていると仄聞をいたしております。一方、増田知事は就任以来、積極的に県内各地に赴き、県民の声をみずから聞き、県行政に生かすべき努力とともに、岩手県総合計画を策定する等、みずからのロマンである夢県土いわてを実現すべく行政運営を行ってまいりました。石原知事と比較してどうすべきだというつもりは毛頭ありませんが、内閣総理大臣は議院内閣制のもとで選ばれるものであり、国民からは総理として選挙されるものではありません。知事は、初めから知事として選挙されます。知事の方が内閣総理大臣よりトップダウン方式を採用し、みずからの哲学やロマンを政治に反映させやすいのではないでしょうか。中央省庁等改革関連法が制定された時代の潮流をどう理解し、岩手県政にどう反映させるおつもりかお伺いをいたします。
 あわせて、本年4月から実施される部設置条例の改正は、中央省庁等改革関連法とどう関連するのかお答えをいただきたいと存じます。
 21世紀初頭に予想される変化、新たな潮流にどう対応するかについての最後として、地域の教育力向上策について質問をいたします。
 この国はどうなってしまったのか、だれもがどこかおかしいと感じていたことが、いよいよ来るところまできたと思ったのが世紀末の昨年ではなかったでしょうか。バスジャックや考えられないような殺人が数多く起き、17歳の少年たちが大きな関心を集めたように、犯罪の低年齢化や凶悪化がたびたびマスコミをにぎわし、私たちを震撼とさせたのが昨年でありました。これらの事件を聞くたびに、私は、犯罪を起こした少年たちが最も悪いのは当然ですが、家庭や学校、そして地域社会にもその原因があると思っていましたし、この国の将来展望、精神的支柱を国民に提示できないでいる政治にも、そして、政治に携わる者もその責任を免れないと考えておりました。
   〔副議長退席、議長着席〕
 しかし、この問題の解決は大変困難であり、どこから手をつければよいのかさえ判断できずにいたのでありますが、盛岡でも講演されるそうでありますが、河上亮一氏の書物を読み、先生が悩み苦しんでいる学校教育を地域が協力して、あいさつや言葉遣い等の生活の形や、他人と一緒に生きる社会性を自然に子供たちに身につけてもらうことから始めなければならないと考えたのでございます。幸いなことに、岩手にはまだ結の心がわずかながらも生きており、行政もゆいづくり事業を推進しています。ゆいづくり事業は保健福祉部が所管し、主に福祉コミュニティーの形成のための事業でありますが、結は昔から地域社会内の相互扶助のシステムとして機能してきましたが、そこに郷土の共助の精神が横たわっています。人と人との交流や触れ合いの中で生きる私たちが失ってはならない岩手の大切な精神ですと解説されるように、狭い意味だけの福祉だけではなく、人々の生活全般に及ぶものでございます。
 河上亮一氏は、十数年前から新しい子供が登場した。その子供は、あいさつや言葉遣いやはしの使い方などの生活の形をほとんど身につけておらず、非常に傷つきやすく、他人とうまく関係を持てない、そして傷つけられたとき、相手が弱いと見ると激しく反撃し、暴力に限界がなくなる。いわゆるキレるという現象であります。さらに、欲望をあくまで通そうとする、ひ弱さと頑固、わがままの両面を持っている子供であり、このような新しい子供がいる中学校は特殊な中学校ではなく、全国どこにでもある一般的な中学校であると述べています。そして、学校と地域との関連では、地域の共同性が崩れ、学校を抑えていく力がなくなり、結果として教師の権威の低下に結びついていること、伝統的な子育てや教育の社会システムが崩れたこと、地域の支えを失い、学校の教育システムも崩れたこと等を指摘いたしております。
 先ほどゆいづくり事業に言及しましたが、我が岩手には結の心に基づく子育て支援コミュニティ(結っこコミュニティ)も提唱されております。この二つの取り組みにPTAや教育委員会にも積極的に参加を求め、自然に社会性や生活の形、教養が身につく、小地域のコミュニティーづくりに努力するとともに、実効あるものにするために早急にモデル地域を選定し取り組むべきではないでしょうか。社会連帯感がわずかでもいまだ残り、ゆいづくり事業、結っこコミュニティに取り組んでいる岩手だけが全国に発信できる事業だと思いますが、所見をいただきたいと存じます。
 次に、水産業の振興に関連し、2点をお伺いいたします。
 漁業は、再生産可能な資源を有効に利用する産業であり、環境や生態系を良好な状態に保全していくことが、漁業の健全かつ持続的な発展を図り、安全な水産物の生産と供給を図っていく上で極めて重要な課題となっております。近年、世界的な産業活動の活発化、人口増加等に伴い、地球温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少等が深刻化しており、これらの解決に向け国際的な論議が活発に行われております。海洋には自浄能力があると言われておりますが、さまざまな汚染は自浄能力を超えて進行しているような気がしてなりません。また、オゾン層の破壊による紫外線照射量の増大や地球温暖化による海水温や海面の上昇などは、漁業にも直接影響を及ぼす問題であり、本県における水産業の振興を考える場合でも、こうした問題もしっかりと視野に入れて取り組む必要があります。特にも、環境首都宣言をしている岩手県では、エネルギーや資源がむだなく有効に活用され、環境負荷の少ない、いわゆる資源循環型社会の実現が重要な課題となっていることから、海洋の汚染防止や物質循環など、海洋に関する多角的な研究を行うべきであると思いますが、知事はどうお考えでしょうかお伺いをいたします。
 本県は、世界有数の三陸漁場と豊かな自然の特性を最大限に活用して、サケ、アワビ、ウニ、ワカメ、ホタテなどのつくり育てる漁業を積極的に推進し、我が国を代表する水産物の供給基地として重要な役割を果たしてまいりました。しかし、近年、地球レベルでの環境問題や我が国の経済が成熟化、低成長化へと移行したことに伴い、これまでの大量生産、大量供給の体制が見直され、国民の生活スタイルも限りある資源の持続的、有効的利用へと価値観が変化し、消費者のニーズも多様化してきている一方で、ワカメ、イカなどの中国等からの安価な海外加工品の輸入の増大により、本県の水産業においてもこれまでにない厳しい状況下に置かれております。このような中で、県においてはこれまで農林産物も含め、どちらかというと生産基盤の整備に主眼を置いた振興を図ってきたように感じておりますが、今後はこれと並行して、多様化する消費者ニーズへ対応するための前浜資源活用商品の開発、水産物流通コストの低減等水産関係者が一丸となって、漁業生産から加工・流通、物流まで見据えた、真に消費者ニーズに対応した総合的な水産物の供給体制の確立を図っていくことが殊にも重要と思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
 最後に、地域課題のような気もして代表質問にはなじまないようにも思えますが、あえて新日鉄釜石ラグビー部のクラブチーム化についてお伺いをいたします。
 御案内のとおり、新日鉄釜石ラグビー部は、7連覇を含む8度の日本一という輝かしい伝統を築いた名門チームでございます。思い起こしてみますと、釜石の7連覇が始まる前の社会人ラグビーは、慶応、早稲田、明治等の学生ラグビーの人気に遠く及ばない地味な存在でありましたが、釜石のひたむきですばらしい活躍が今日の社会人ラグビーの隆盛をつくり上げたものとだれもが認めるところでございます。今にして思えば、人口数万の東北の小都市である釜石から、東北の無名の高卒者主体のチームが大学の花形プレーヤーが主体の中央のチームを次々に撃破し、7年連続で日本一をかち取ったチームが生まれたこと自体がほとんど奇跡に近いことでありました。同じ新日鉄の中でも名古屋や北九州でもなく、釜石がなし遂げた偉業に対し、釜石市民はもとより、多くの岩手県民、そして全国のラグビーファンが熱いエールを送ったのでございます。しかしながら、残念なことに釜石ラグビー部は、今シーズンの東日本社会人チャレンジリーグにおいて3位という結果に終わり、来シーズンからは東日本リーグへの復活に捲土重来を期すことになったのでございます。私も1人のファンとして、再び国立競技場に大漁旗が舞うことを心から願っているものでございます。
 さて、このような中で、新日鉄釜石ラグビー部は企業チームからクラブチームへと衣がえする方向が打ち出されており、過日、地元釜石では、第1回検討準備委員会が開催されたところでございます。この委員会において、新日鉄の国峰ラグビー部長は、釜石市民、岩手県民、全国のファンの熱い思いを結集すれば、必ずクラブチームの設立、運営ができると確信している。釜石から全国に発信する先駆的な挑戦の第一歩でもあると述べたと聞いております。私は、釜石ラグビー部の7連覇という輝かしい実績は、釜石市民にとってはもちろん、岩手県民にとっても誇るべき財産であると考えております。釜石のみならず岩手の知名度を上げ、さらには情報発信という観点で、はかり知れない役割を果たしてきた新日鉄釜石ラグビー部の実績は、これからもスポーツはもとより、地域開発、教育等あらゆる分野で活用されるものと思い、今後の新たな展開についても、県民の1人として大きな関心を寄せているところでございます。ヨーロッパでは、スポーツは学校や企業ではなく、地域単位のクラブチームが主体になっていると聞いております。釜石のクラブチーム化の具体的中身は今後の検討を待たなければなりませんが、このような方向性について知事の立場としてどのような認識を持っておられるのか、また、どのような期待を持っておられるのかをお伺いいたします。
 地域におけるクラブチーム化は、釜石市民の熱き思いだけでは成功は難しいものと考えます。釜石に岩手県の支援は不可欠でございます。岩手県は釜石にどのような支援策を念頭に置いておられるのかあわせてお伺いいたしまして、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 長谷川忠久議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、IT・情報通信技術の県職員の就労形態等への影響についてでございます。
 地方分権、少子・高齢化など行政を取り巻く環境が大きく変化をする中にございまして、スピード、柔軟性、そして独創性を備えた行政の対応が求められております。このため、これまで職員1人1台パソコン環境の整備による情報の共有化や本庁と地方振興局とのテレビ会議システムの導入などによりまして、事務処理の効率化・スピードアップに努め、ITの本格的な活用に向けた基盤づくりに取り組んできたところでございます。こうした取り組みによりまして、職員みずからが従来の業務の進め方を見直す、あるいは事務を改善するなど、これまで以上に積極的な動きが見られるようになってきておりまして、職員の意識改革に着実につながっているものと、私自身も職員提案の機会などを通じて感じているところでございます。
 今後は、ITの活用をさらに進めて、予算編成、政策評価、さらには公共調達等のシステム化やこれらシステムのデータの連結・統合を図り、政策形成機能の強化による新たな施策の展開を図るとともに、県民からの申請、届け出などをネットワークで行う電子県庁の構築など、県民サービスの向上につながるシステム開発を進めて、県民満足度の高い行政運営を進めてまいりたいと考えておりますが、本庁、地方振興局を通じて、仕事の進め方や勤務のあり方に大きな影響を与えることも十分に想定されますので、これらの点にも配意しながら積極的な取り組みを進めてまいります。
 次に、県民が直接IT革命のメリットを享受できるような環境の整備についてでございますが、いわて情報ハイウェイにつきましては、昨年12月から防災情報ネットワークやテレビ会議システムの運用が始まったところでございまして、今後、医療情報ネットワーク、教育情報ネットワークなどの整備を進めていくこととしてございます。
 また、県民情報ネットワークについても、岩手山の防災情報と岩手山周辺地域の観光・文化などの多彩な情報を盛り込んだコンテンツを制作して、情報ハイウェイを活用して情報発信しているところでございますが、県民向けのコンテンツ、いわゆる県民に提供する情報の内容の充実については、議員御指摘のとおり、これからの課題となっているところでございます。民間企業や住民が相互に情報ハイウェイを利用できる環境づくりにつきましては、来年度、県民サービスの向上や産業振興の観点から、NPO活動や産業の研究開発などに利用できるモデル事業を実施することとしてございます。
 一方、何よりも県民がIT革命のメリットを受けるためには、県民が情報通信技術を利活用できる機会を拡大して、かつ県民一人一人がその恩恵を日常生活において実感できることが重要であると考えております。そのため、本年1月から、東和町を皮切りに県内約6万2、000人を対象に、インターネットを使うために必要なパソコン操作やEメールの送受信などの基礎技能の習得を目的とするIT講習会を県内各地域で開催しておりまして、こうした講習会や中高年の情報ボランティアでございますシニアネットなどの活動を通じて、インターネットの利用者の拡大を目指してまいりたいと考えております。
 また、県民が気軽にインターネットに触れ、生活に必要な情報が得られるよう公共情報端末の整備を進めるとともに、インターネットを利用して地域の生活情報を発信したり、住民同士が情報交換を行う情報ボランティア団体などを中心としたコミュニティー・ネットワークづくりなどの地域情報活動を支援していくことによりまして、すべての県民がITの恩恵を十分に得られるような環境の整備を進めてまいります。
 次に、中期財政見通しの見直しについてでございますが、中期財政見通しは、総合計画の着実な推進を可能とする財政運営の道筋を示すものとして策定したものでございまして、その前提条件は総合計画に求めたところでございますが、この総合計画の中では、人口の見通しについては総人口が緩やかな減少傾向をたどるものと予測して、その上で経済の見通しを行っているところでございまして、中期財政見通しにおいては、こうした人口減を前提とした総合計画を踏まえ、平成17年度までの実質経済成長率を年率1.1%と見込んだところでございます。
 また、中期財政見通しでは、今後の経済情勢の動向などを見きわめて、適時必要な見直しを行っていくこととしてございますが、本年1月末に閣議で決定されました平成13年度の経済見通しと経済運営の基本的態度や、本年2月に財務省から公表されました財政の中期展望においても、経済成長率をプラスとしてその見通しを行っているところでございまして、中期財政見通しの見直しは現時点では考えてございませんが、議員御指摘のような要因も含め、さまざまな要因により、実体経済の推移とこの見通しが、総合計画及び中期財政見通しの前提との間に看過できない乖離を生じた場合には、見直しを行うこととしております。
 次に、中央省庁等改革関連法が制定された時代の潮流と県政への反映についてでございますが、中央省庁再編を含む一連のこの国の行政改革は、私自身、単に行政システムの再構築ということにとどまらず、右肩上がりの経済成長の終えん、少子・高齢化の進展、社会の成熟化に伴う国民の価値観の多様化などの社会経済情勢の大きな変化の中で、制度疲労を来している戦後型の行政システムを根本的に改め、自由かつ公正な社会の形成を目指すものであり、経済構造改革などとあわせて、いわば21世紀の新たな社会経済システムを構築するためのさまざまな取り組みの一つとしてとらえております。
 地方公共団体も、これらの時代潮流の大きなうねりの中にあるわけでございますが、一方で、日々住民に接しながら行政を運営している私ども地方行政に携わる者が特に留意しなければならないことは、このような時代潮流を地域の視点で見つめ直したとき、地域地域の姿の中から、中央、あるいは国からは見えなかった地域の課題が浮かび上がってくるということでございます。そして、このような課題を的確にとらえ、それらの課題を一つ一つ地道に解決していくことが期待されていることでございます。
 これは、とりもなおさず生活者主権、地域主権の社会の実現を目指すことであると考えてございますが、行政運営上は、まさに、本県の行政システム改革大綱で取り上げた生活者や地域の視点に立った新たな行政運営の仕組みへの再構築でございまして、情報公開の徹底や住民参画などの、よりわかりやすく開かれた県政の推進、地方振興局への権限委譲などによる機能強化や本庁機構の再編整備などの行政機構の簡素・効率化と現場重視へのシフトなど、八つの視点に立った改革を強力に推進していくことであると考えております。
 改革の推進に当たりましては、職員一人一人が新しい時代を切り開いていくという気概を持って、これを県民の皆様と共有するための努力を重ねていく必要がございますが、私自身、現場での対話を大切にしながら、県民の皆様の先頭に立って、ともにさまざまな行政課題に果敢に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、部設置条例の改正と中央省庁等改革関連法の関連についてでございますが、今回の県の組織再編においては、先ほど申し上げた時代の潮流や行政システム改革大綱で示す行財政改革の方向を踏まえて、政策の企画立案、調整、評価などを推進する総合政策室を新たに設置するとともに、各部にも統一的に企画室を置くこととしたほか、環境施策の効率的な推進や農林水産業振興の総合的な推進など、総合計画を着実に推進できる体制を整備するものでございます。
 一方、中央省庁の再編は、主要な行政課題に的確かつ柔軟に対応するための改革を柱とするもので、国政全体の総合的な政策判断と機動的な意思決定を行い、内閣がその本来の任務を十分に果たし得るよう支援する体制を整備することを目的の一つとしておりまして、政策立案機能の強化という点では、本県の組織再編と共通するものがあると考えております。
 しかしながら、本県においては、生活者主権、地域主権の社会を見据え、地域や県民のニーズに迅速かつ的確に対応するため、地域の重要課題に対応しながら、地方振興局と市町村を総合的に支援する地域振興部を設置するなど、地方振興局や市町村との連携・協調のもと、現場重視の施策を展開し、生活者、地域の視点に立った行政運営を推進する体制もあわせて強化するものでございまして、このような目的遂行型の組織整備を行ったところに、本県組織再編の大きな特色があるものと考えております。
 次に、地域の教育力向上策についてでございますが、子供たちが一人一人の多様な個性を伸ばしながら、思いやりを持ち、たくましく生活できる生きる力をはぐくむためには、家庭におけるしつけはもとより、地域の異世代間交流や地域における社会参加を一層推進することが肝要であると考えます。
 岩手には結の精神が受け継がれており、総合計画においても、新しい結づくりを提唱しているところでございます。この結づくりの形成に向けて、平成11年度に地域福祉のゆいづくり事業を創設して、各小地域におけるボランティア活動などを通じて、子供たちや高齢者などとのかかわりを持ちながら、地域福祉づくりの担い手となるゆいづくりリーダーの養成に取り組んできたところでございます。
 また、本年1月に策定したいわて子どもプランの中で、結の心・子育て支援コミュニティの形成を掲げ、各市町村において、教育関係機関を含む総合的な子育て支援ネットワークづくりを進めるとともに、地域のボランティアによる子育てのための相互支援事業の実施を図ることとしてございます。
 このような結の心を生かし、教育関係機関を初め各種団体と地域が一体となって、福祉だけではなくて、広く子育てにかかわるあらゆる領域において、次代を担う子供たちが健やかに育っていける環境づくりに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、水産業振興のための海洋に関する多角的な研究についてでございますが、沿岸域はもとより、広く海洋とその健全な環境の活用について多面的に研究し、水産資源を積極的に育成・管理することは、本県水産業の振興を図る上で極めて重要であると考えております。このため、これまでも暖流と寒流の合流により形成される豊かな沿岸漁場において、魚族資源の評価と管理に関する研究や、水質環境に適した増殖技術の解明などを行ってきたところでございます。
 特にも本県では、国連大学と東京大学海洋研究所とともに、海洋環境の保全と水産業の持続的な発展を目的として、平成11年度から3カ年計画で、魚介類のえさとなるプランクトンの基礎生産力や海洋生態系における栄養物質の循環に関する研究を初め、サケ・マス類の回遊生態に関する研究、化学物質による海洋生態系の汚染機構の解明などの共同研究に取り組んでおります。
 今後さらに、三陸沿岸域における海洋及び水産生物資源の有効利用を促進するため、県の水産技術センターにおいて、海洋深層水の含有成分の特性の解明、北東北3県知事サミットで合意したタラ資源の現存量調査などの研究に取り組んでおり、引き続き関係機関との協力を図りながら、本県水産業の振興のため、海洋に関する多角的な研究を積極的に推進する考えであります。
 次に、消費者ニーズに対応した水産物の供給体制の確立についてでございますが、最近の食品に対する消費者ニーズは、おいしく、低カロリーで、栄養価が高く、安全かつ安価であること、こうした観点から、多様化・高度化しております。DHA、EPA、タウリン等の微量栄養素を多く含んでおります水産物──このDHAというのはドコサヘキサエン酸、EPAというのはエイコサペンタエン酸で、いずれもイワシやマグロなどに多く含まれておりまして、血栓を防ぎ、血中のコレステロール値を低下させるような機能があると言われておりますし、タウリンは、イカ、タコ、貝類などに含まれて、生活習慣病の予防物質と言われているわけですが、こうした微量栄養素を多く含む水産物は、こうした消費者の嗜好に適合する潜在的な特性を持っていると思います。
 とりわけ、本県は世界有数の三陸漁場に恵まれ、秋サケ、サンマ、イカなどの魚介類とともに、ワカメ、昆布等が四季折々に水揚げされる全国有数の漁業生産地が形成されておりまして、これら前浜資源を基盤として、合理的な生産・流通・加工の一貫した体制を整備するため、これまでもつくり育てる漁業や、各段階におけるハセップ対応などを推進しているところでございます。
 しかしながら、近年所得が伸び悩む中で、安価な輸入加工品の増大などから、消費者の低価格志向の強まりも生じておりまして、本県の水産物の供給・消費を促進するためには、これまでの取り組みに加えまして、さらなる生産・流通コストの削減、商品の開発、販路の拡大等が重要であると考えてございます。
 このため、規模拡大や情報化による価格競争力の向上、消費者ニーズの的確な把握による新商品の開発などが必要とされることから、県においては、漁業生産者と産地加工業者との間における漁獲物の取引規模の拡大や安定的な供給・加工に向けた取り組みとともに、加工・流通業における商品の管理や決済に関するシステムのIT化、販売動向を迅速に反映した商品開発体制の整備などを促進することとして、関係者に対する研修会やコンサルティングを実施しているところでございます。
 さらには、産地においてこれら取り組みの基盤となる流通加工機能の集積やサプライチェーン(供給連鎖)の構築を促進する等によりまして、今後とも消費者ニーズに即した総合的な水産物供給体制の確立に努めてまいりたいと考えております。
 最後に、新日鉄釜石ラグビー部のクラブチーム化についてでございますが、同部は、昨年11月に新日鉄釜石の単独運営から、同社を母体として、市民や地元企業等の支援・協力によって運営するクラブチーム方式に切りかえることを明らかにしたところでございます。
 クラブチーム化に当たりましては、現在の新日鉄釜石ラグビー部を母体としながら、他の地元企業などからの選手と合同でチームを結成し、従来どおり全国大会へ向けての強化を図るとともに、青少年を対象としたラグビー教室や大会開催などの事業も展開し、地域に密着したクラブチームの色彩を強めていこうとするものでございます。
 新日鉄釜石ラグビー部は、御承知のとおり、かつて北の鉄人の異名をとりまして、高校卒業生主体のチームが、ひたむきな練習を積み重ね、ラグビー日本選手権において昭和52年に初優勝、昭和54年から前人未到の7連覇を達成し、計8回も優勝するなどすばらしい活躍で、県民はもとより、全国のラグビーファンを魅了してきたところでございます。
 岩手県民が誇りとしてきたこの新日鉄釜石ラグビー部の名を失うことはまことに残念ではありますが、私は、全国的に実績のある企業のスポーツクラブが休部や廃部に追い込まれている昨今の厳しい状況の中にあって、同部がクラブチームに衣がえし新たなスタートを切ることは、多くの県民が望むところであると、このように考えております。
 さらに、新日鉄釜石ラグビー部がクラブチームとなり、地域の住民や企業が一体となって自主的に運営されることにより、地元釜石市民や県民に一層愛され、早期に東日本社会人リーグに復帰し、再び全国制覇を目指してほしいものと大いに期待しているところでございます。
 また、新日鉄釜石ラグビー部のクラブチーム化に対する支援につきましては、現在、新日鉄釜石や釜石市を中心に、県ラグビー協会や市民団体・県などで構成する新日鉄釜石ラグビー部クラブチーム化検討準備委員会が設けられて、クラブの名称、運営方法や活動内容等について協議が進められているところでございますが、県では、このクラブの活躍が地域の活性化に資するほか、競技力の向上や生涯スポーツの振興に果たす役割も大きなものと見られますので、この委員会での協議を踏まえ、地元釜石市とも十分に連携を図りながら、国が進めております地域住民の主体的運営によって、初心者からトップアスリートまで、地域のだれもが個々のスポーツニーズに応じて、さまざまなスポーツ活動を行うことができる総合型地域スポーツクラブ制度の導入を図ることなど、その支援方策について、今後さらに具体的に検討してまいりたいと考えております。
   
〇議長(山内隆文君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時13分 散 会

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