平成13年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇36番(小原宣良君) 社会民主党の小原宣良でございます。
 ただいま上程されました米国における同時多発テロ事件に関連しての有事法制の推進反対についての提案理由を申し述べます。議員各位の御賛同を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。
 初めに、9月11日に発生しました米国における同時多発テロは、いかなる理由によっても許されない、残虐非道な行為であり断じて許されるものではなく、このテロ事件によって亡くなられ傷ついた多数の犠牲者と家族の方々に、心から哀悼の意を表明するとともに、心からお見舞いを申し上げます。
 さて、このテロ行為を実行した組織に対する制裁は、国際条約、並びに国際法に基づき、国際法廷において、法と正義のもとに厳正に裁かれなければならないものであります。しかるに、我が国の対応は、アメリカ合衆国がとろうとしている軍事行動に、いかに参加、協力するかといった極めて軍事色の強い方向に傾いていることに、私は深い憂慮の念を禁じ得ないのであります。チェイニー米国副大統領は、卑劣な連中と同じ土俵に上らなければならないと述べたと伝えられております。このことは、米国の軍事報復が、さらなるテロを生み、果てしない武力の応酬に発展する危険性をはらむものであります。
 今、大切なことは、こうした危険な報復の連鎖を断ち切り、かつまた卑劣な国際テロ集団の存在を許さない国際的協調体制をいかに築くかに全世界の英知を結集することであります。国際刑事裁判のあり方など国連の役割が強く求められているのも、そのためであります。しかしながら、政府・自民党内の議論は異常であります。自民党政調会長の麻生氏は、武器対等は当然と述べております。つまり、相手の武器と同等の武器を持つことは当然だというわけであります。これは自衛隊の武器使用の枠を限りなく拡大させるものであり、認められません。自衛隊は、危険なところに出しちゃいかんでは、話にならない。危険が伴うかもしれない。これは小泉首相の発言であります。この発言の背景に、もし湾岸戦争時において、金は出したが血は出さない日本は卑怯だとの一部の批判があったことを受けて、今度という今度は、血をも流す覚悟だとの思いにとらわれているとしたなら、これは大きな間違いであります。
 意見書でも述べているとおり、我々は、米国の報復がさらなるテロを生み、果てしない武力の応酬となることを恐れる。今後の対応について、米国、関係諸国、関係者が冷静かつ理性的な対応をとることを求めるとしているのは、とりわけ日本国憲法が、国際紛争の解決のために、武力を行使しないと世界に宣言し、世界各国もまた、日本の立場を理解しているからこそ主張できるものであります。しかし、小泉首相は、国際紛争を解決する手段として武力を行使しないことに、後ろめたさを感じているように思われてなりません。紛争を武力で解決した歴史はないのであります。必ずそこには恨みが残り、戦争の原因をつくり出すだけとなります。
 太平洋戦争が終わって56年が過ぎた今日、今回のテロ事件を米国は、パールハーバー以来の襲撃と表現しております。私的なことに及んで大変恐縮でありますが、私の父親は海軍軍人として真珠湾攻撃に加わりました。その後、戦艦榛名とともにマリアナ海戦で海の藻くずと消えました。対日講和50周年記念式典がサンフランシスコで行われたのは、テロ事件の3日前のことであります。戦争というあの大きな犠牲と代償の上に誕生した日本国憲法が世界に冠たる平和憲法であることに、自信と誇りを持ち紛争の解決のために武力を行使しないことを、今こそ強く主張し行動すべきであります。
 今、政府は、同時多発テロへの報復作戦に向かう米軍を自衛隊が支援するための新たな法律へひた走っています。今こそ、冷静かつ理性的な対応を、県民とともに政府に求めるべきであります。また、自衛隊法を変えて、国内の米軍基地などに自衛隊が警備に当たるとすることなどは、国民に直接銃口を向けることであり、容認できないものであります。本来治安は、警察の任務であります。9月30日付朝日新聞の報道によれば、野中広務自民党元幹事長は、自衛隊が日本の重要施設を警備すると言う。恐ろしいことだ。警察はそれほど軟弱ではないと述べたとのことであります。
 最後に、米軍は核兵器の使用をも辞せずと伝えられており、この際、平成10年6月定例議会において議決した、核兵器廃絶岩手県宣言決議について触れたいと思います。
 同決議は、私たちは、世界で唯一の被爆国として、世界の人々に核兵器の廃絶を強く訴え続けてきた。
 被爆から半世紀余の年月を経ても広島・長崎の惨禍は決して忘れることはできない。
 それは、核兵器は人類の生存を危うくしただけでなく、地球環境にも大きな影響を与えることがさらに明らかになってきたからである。
 国際社会も、東西冷戦構造の崩壊を契機に、核軍縮・廃絶に向けて努力している一方で、核実験禁止、核不拡散体制に背く新たな事態の発生など、その道はまことに峻しいといわざるを得ない。
 いまこそ、人類の英知を結集して核兵器廃絶の体制を築き上げねばならない。
 岩手県議会は、ここに憲法理念に基づき、世界の恒久平和と核兵器廃絶を強く求めることを宣言する。といたしました。
 以上のとおり、今後もあらゆる武力や暴力を許さず、自由と平和、民主主義、社会正義を求めて日本政府が邁進することを強く求め、提案理由といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)

〇議長(谷藤裕明君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております発議案第9号米国における同時多発テロ事件に関連しての有事法制の推進反対については、会議規則第34条第2項の規定により、委員会の付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

〇議長(谷藤裕明君) 御異議なしと認めます。よって、発議案第9号米国における同時多発テロ事件に関連しての有事法制の推進反対については、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより討論に入ります。
 討論の通告がありますので、発言を許します。佐々木順一君。
   〔10番佐々木順一君登壇〕


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