平成13年9月定例会 第11回岩手県議会定例会会議録

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〇23番(斉藤信君) 日本共産党の斉藤信でございます。
 議案第17号気仙郡三陸町を大船渡市に編入することに関し議決を求めることに対し、反対の討論を行います。
 今回の合併の最大の問題点は、住民不在で、全国に例を見ない異常なスピードで強行されたことであります。
 三陸町の住民は、町民不在、暴走特急の合併だった、なぜ町長選直前の期限を決めて合併を強行するのかと、怒りの声を上げています。実際に、住民への説明と情報公開、慎重な議論と住民合意を求める町民の声は、二重三重に踏みにじられました。三陸町長は、住民の賛否はとらない、三陸町議会は住民投票を求める町民の声、直接請求を2度にわたって否決し、選挙をすれば合併が進まなくなるとして、みずから町議会議員選挙前の合併を求める態度を明らかにしたのであります。三陸町長も11月17日に、4年の任期が切れるにもかかわらず、町民の選択と審判の機会を奪って、11月15日の合併を強行したのであります。
 本来、合併問題とは地方自治体のあり方にかかわる問題であります。住民の生活と福祉、教育などに密接にかかわるものであり、住民への説明と合意形成、住民の意思を尊重して決められるべき問題であります。この一番大事な問題が軽視をされて、異常なスピードで合併が首長主導で進められたことは、住民の間にわだかまりをつくり、将来に禍根を残すものと言わなければなりません。
 8月31日の合併調印後のマスコミ各紙の報道は、異例のスピード調印、行政主導に不信も──岩手日報、迅速、始動9カ月で──朝日新聞、住民の対話尽くせ──読売新聞、不安残すスピード婚約、市民ら未来図描き切れず──河北新報と、一様に合併劇の異常さ、問題点を指摘しています。
 第2の問題は、異常とも言える合併劇に対して、岩手県が果たした役割、責任の問題であります。
 増田知事は、大船渡市と三陸町の合併の動きに対し、両市町は地域の将来のビジョン等について住民に説明し、さらに議論を深め、合意形成を図っていく必要があると答弁をしていました。しかしながら、その後の経過は、住民に対する十分な説明も住民の合意形成もなく、両市町の合併合同検討会が設置されてから、わずか3カ月余で合併が決められていったのであります。重要なことは、任意の合併協議会にも法定の合併協議会にも県の幹部職員が参加し、こうした動きを結果的に容認してきたことであります。増田知事には、三陸町民の人口の35%、有権者の43%に達する町民の署名が寄せられ、住民合意の確保・確認を求める陳情がなされましたが、結果的にはこうした町民の願いに背を向けたと言うべきではないでしょうか。増田知事の言明に基づいて、住民が主人公、住民の意思に基づく選択を貫くよう、助言すべきではなかったでしょうか。
 町議会議員選挙が行われても、その前に合併は決められたのであります。
 第3の問題は、急ぎ過ぎた合併劇だったために、合併の協定書も建設計画書も不十分なものにとどまり、大事な多くの問題は先送りされたことであります。
 三陸町では、合併を進める最大の理由が財政危機にあり、このままではこれまでの医療や福祉の事業ができないと説明されました。しかし、なぜ財政危機に陥ったのか、その改善策はないのか、全く説明も議論もありませんでした。住民に対しては、合併によって引き起こされるデメリットもメリットも、具体的には示されませんでした。三陸町に支所、出張所を置くとしていますが、どの程度の規模なのか。三陸町がますます寂れていくことにならないのか。職員は約70人削減する計画と言われていますが、どの部門をどう削減するのか。住民サービスの低下にならないのか。三陸町民が一番心配している診療所は、本当に将来的にも維持されるのか。公立の保育所、幼稚園も維持されるのか。こうした疑問について、先送りしたのが今回のスピード合併ではなかったでしょうか。
 第4の問題は、今、政府が進めている市町村合併は、自主的合併とは言いがたい、国からの県を巻き込んだ押しつけ合併の様相をいよいよ強めていることであります。そのねらいは、合併を口実にした建設計画、建設事業の推進によって、既に破綻した大型開発、公共事業を進めることであります。同時に、深刻な地方財政危機のもとで、一層の借金を押しつけ、財政危機をさらに深刻なものとすることであります。合併特例債によって借金は認めるが、措置される地方交付税の見通しはあいまいです。一方ではっきりしていることは、合併によって、10年後には地方交付税が大幅に削減されることであります。大船渡市と三陸町の合併では、年間約6億円の地方交付税の削減が見込まれます。10年間では600億円の削減となるのであります。これは従来の地方交付税額の1割にも当たるものであります。合併建設計画の事業費は632億円余でありますが、その財源の63%、399億円は起債の発行、いわば借金で賄うものであります。合併によるあめとむちの実態は、借金して公共事業を拡大し、長期的には地方交付税を削減し、その財政基盤を悪化させることにしかなりません。
 今、必要なことは、地方自治体の本旨である住民の生命と健康、安全を守るという原点に立ち返って、住民の声と要望を何よりも大切にして、住民が主人公と言える地方自治を築いていくことではないでしょうか。
 以上を申し述べまして、私の反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。

〇議長(谷藤裕明君) 以上で通告による討論は終わりました。これをもって討論を終結いたします。
 これより議案第17号気仙郡三陸町を大船渡市に編入することに関し議決を求めることについてを採決いたします。
 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕

〇議長(谷藤裕明君) 起立多数であります。よって、議案第17号気仙郡三陸町を大船渡市に編入することに関し議決を求めることについては、原案のとおり可決されました。
 この際、ただいま議決されました気仙郡三陸町を大船渡市に編入することについて藤原良信君から発言を求められておりますので、これを許します。藤原良信君。
   〔46番藤原良信君登壇〕


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