平成13年12月定例会 第12回岩手県議会定例会会議録

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〇24番(伊沢昌弘君) 社会民主党の伊沢昌弘でございます。
 議案第6号県民の健康で快適な生活を確保するための環境の保全に関する条例について、原案に賛成し、環境福祉常任委員長から報告のありました修正案に反対の立場で討論を行います。
 本条例案は、昭和46年に制定された岩手県公害防止条例の全面改正の形で提案されたものであります。現行の公害防止条例は、制定当時の産業型公害に対処するため、事業場等に対して大気、水質等の排出規制を中心にしたものであり、大気汚染防止法、水質汚濁防止法等の公害関係法令を県内の状況に合わせて補完する役割を果たしてきたものであり、清流を守り、大気汚染のない自然に恵まれた本県の状態を保持する上で重要な役割を果たしてきたものであります。
 しかし、近年、フロンによるオゾン層の破壊、多量の二酸化炭素等の排出による地球温暖化問題等の地球的規模での環境問題や、ダイオキシンや環境ホルモンなどの化学物質による環境汚染が進行し、企業活動のみならず、国民一人一人の日常生活に深くかかわっていることが明らかとなってまいりました。
 地球規模での環境対策は、1992年──平成4年でありますが──6月にリオデジャネイロで地球サミット──環境と開発に関する国連会議──が開催され、環境と開発に関するリオ宣言、森林に関する原則声明、そして、アジェンダ21の三つの文書が合意されたことから、各国において具体的な施策の展開に向けた取り組みが進められてまいりました。特に、アジェンダ21では、国別の行動計画──これはナショナル・アジェンダというわけですけれども──の策定が求められるとともに、地方自治体の行動計画、すなわちローカル・アジェンダの策定をも促し、すべての企業、団体、そして個人などの主体が参加することが必要であるとしているわけであります。
 このことを受け、日本においては、平成5年12月に地球環境保全に関する関係閣僚会議を開催し、アジェンダ21行動計画を決定するとともに、環境基本法を平成5年11月に公布し、翌年の12月には環境基本計画を決定するなど環境施策の強化を図ってきました。
 岩手県においても、このような国の動向に対応して、平成10年4月に岩手県環境の保全及び創造に関する基本条例を公布し、平成11年9月には岩手県環境基本計画を策定し、その基本目標を、恵み豊かな環境と共生し未来につなぐイーハトーブの大地・みんなで目指そう環境首都いわてとしました。さらに、平成12年3月には、岩手県地球温暖化防止等実行計画を策定してきたところであり、環境施策の充実を目指してきたことを私は高く評価するものであります。
 これらの計画に盛り込まれた幾つかの数値目標を見れば、二酸化炭素の削減目標については、平成22年の排出量を平成2年のレベルから国の削減目標である6%を上回る8%削減すること、ダイオキシン類の発生総量については、平成9年度に県内のごみ焼却施設から排出された16.9グラムを、目標年である平成22年度において削減率99.4%、年間排出量0.147グラムまで引き下げること、さらには、県民1人1日当たりの一般廃棄物排出量をリサイクル率向上などにより平成9年度中の836グラムを800グラムまで引き下げるなどとなっております。自治体を初め、企業、県民一人一人の協力がなければこれは成り立たないものであります。現時点でも、廃棄物の減量に向け、各市町村は分別収集や資源リサイクルに積極的に取り組んでおり、県においても、本年3月に策定したいわて資源循環型廃棄物処理構想に基づき、その推進を図っているところであります。
 さて、今回の条例案は、第1条の目的に、環境基本条例の基本理念にのっとり、公害の防止並びに日常生活及び事業活動における環境への負荷の低減を図るための措置、その他必要な事項を定めることにより、県民の生活環境の保全のための施策を推進し、もって現在及び将来の県民の健康で快適な生活の確保に寄与することをうたっています。これまでの公害防止条例には含まれていなかったダイオキシンの発生抑制を目的にした廃棄物の焼却行為の禁止──いわゆる野外焼却の禁止条項──地球環境の保全を図るための環境への負荷の低減策として、自動車等の駐車時の原動機の停止義務や二酸化炭素の排出抑制策に向けた事業者の責務の明示、さらには、事業者が工場や事業場を設置する際の地域住民との合意形成に向けた努力義務等を盛り込んだことは、環境基本計画の実効を上げるために必要な条件と言えるわけであります。
 残念ながら、常任委員会での審査では、小型焼却炉の原則使用禁止に伴う一般廃棄物の収集量の増加による自治体への財政負担増への対応や県民への周知のためとして、原案では平成15年10月1日とした施行月日を6カ月間延長しました。しかし、国のダイオキシン対策は、既に平成11年3月、ダイオキシン対策関係閣僚会議において、今後4年以内に全国のダイオキシン類の排出総量を平成9年に比べ90%削減することを決定し、平成11年7月にはダイオキシン類対策特別措置法が成立し、平成14年12月1日からは厳しい濃度規制が適用されることになっています。また、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正で、本年4月から原則として野外焼却は禁止となっているところであり、本条例での禁止部分は、法律で規制していない日常生活ごみが対象となっていることは総量規制上当然のことであります。
 かつて県内に埋設された2.4.5T系除草剤に含まれるダイオキシンが大きな問題となり、恒久対策を求めた経緯がありました。この除草剤に含まれるダイオキシンの総量は約0.24グラムと推計されており、この除草剤の完全処理とあわせて、ダイオキシン類対策の不十分な野外焼却による排出量をいかに抑えるかが大きな課題と言えます。
 さきに述べたとおり、県内市町村にあっては、家庭から排出される廃棄物の処理に当たって、焼却処分量の減量化と再利用化のため分別収集に全力で取り組んでいる最中であり、本条例案の施行の延期は、こうした県民の前向きな努力に水を差すものであります。
 以上の理由から、焼却行為に関する規制についても原案どおり平成15年10月1日とし、改めて県内市町村とともにダイオキシン総量規制に向けた施策を展開されるよう強く求め、討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)

〇議長(谷藤裕明君) 次に、斉藤信君。
   〔23番斉藤信君登壇〕


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