平成14年12月定例会 第16回岩手県議会定例会会議録

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〇49番(佐々木俊夫君) 佐々木俊夫であります。
 謹んで高円宮殿下の御冥福をお祈りしながら、以下、通告に従いまして質問をいたしてまいります。
 図らずも、前の質問者と大変項目がダブってまいりました。ですけれども、私の視点で質問をさせていただきたいと思います。
 まず、知事の県政運営の基本姿勢についてであります。
 11月7日、増田知事は浅野宮城県知事など6県知事と連名で、政府の地方分権改革推進会議の最終報告書に対し、これは羊頭狗肉であるとして緊急提言を行ったと大きく報道されました。昨今、増田知事を初めとする6県知事の活躍は日々に目覚しく、改革指向知事集団として世の注目を集めております。
 日ごろ知事は、私ども議員の質問、要望に対して、全国知事会を通じて国に申し入れを行いますと答弁しますが、今回のような重要案件で、6県知事とか少数の知事のみで行動する理由は何なのでしょうか。なぜに全国知事会は今日の緊急事態に対処しないのでしょうか。全国知事会の現状と6県知事会等との関係についてお示しください。
 本県と青森、秋田の北東北3県が連携することは、立地条件からして一つのあり方ですが、例えば、一関市が宮城県にまたがって合併構想を立てた例があります。そのように、本県の南部は藩政時代には伊達藩に属しておりましたから、現在でも経済的、文化的に、あるいは地政学的に宮城県との関係が緊密であります。なぜに増田知事は北向きなのか。宮城県との関係を軽視することは、県南の人たちの気持ちにそぐわないのではないかと思われますが、知事の基本的考え方をお示しください。
 増田知事はまた、岩手県がんばらない宣言をされました。この際、その趣旨について御説明ください。
 次に、執行部と議会の関係についてお尋ねします。
 増田知事は、ソフトな語り口と温厚なムードで人気がありますが、最近は相当に厳しい発言と数々の行動があります。例えば、道路4公団民営化推進委員会が仙台で開催した1日委員会について、これは委員会のアリバイづくりに利用されるだけだとして、知事は出席されませんでした。あるいは、高速道路建設はこれまで族議員がなれ合いで進めてきた。今回は族委員というか、その周辺の民営化族が物事を決めていると発言されたと報道されております。
 10月10日開催の県職員研修会で知事は、県議会を議案承認の道具にしてはならない。議場の外で議員に根回しをして事を進めるのではなく、議場で議論をして、その結果、会議時間の延長、議会会期が延びてもよいのではないかと話されたとのことであります。それはまさに議会制民主主義の原則ですから、研修会の講和としては非の打ちどころがありません。しかし、現実には、増田知事の時代になってから、担当者たちが熱心に議会の外で議員に対して案件説明を行っております。私は、このことが議会外でのいわゆる談合だとは思いません。が、改めて知事の御見解をお伺いいたします。
 関連しますのでこの際お聞きいたしますが、議員が本会議での質問案件を、事前に執行部に提出することが今日まで慣例化されております。現に私も、この質問原稿を先日提出いたしましたが、これも執行部と議会との緊張関係を阻害し、結果としてなれ合いになるのでしょうか、御見解をお伺いいたします。
 次に、知事選出馬と政党との関係について伺います。
 平成13年11月28日の本会議で、私はこの場所から増田知事の多選問題についての考え方を質問いたしましたところ、知事は3期、最大でも4期が節目であり、どんな場合でも5期以上はやってはいけないと答弁をされました。これは執行権を持つ知事の多選による行政の硬直化、マンネリ化の弊害に力点を置いた考え方としては通るかと思います。ですが、選挙によって候補者の自律的意思と良識ある選挙民の判断で選ばれるのですから、当選回数のみで決めつけることはいささか多選性悪説に偏っておりませんか。一村一品運動で有名な大分県の平松知事は現在6期目であります。現に来年4月に改選を迎える県内の某市長は、首長は在任期間の長さで是非を論ぜられるべきではないとして7選出馬を表明しております。
 今や増田知事の援軍は山野に満ち、はるか遠くの山陰に抵抗を企む小勢力がちらつくだけで、県民はあなたの出馬の決断を今や遅しと注視しているのであります。知事、あなたは今までの発言から推測して3選出馬は揺るぎないと思いますが、いかがでしょうか。
 知事は、県政運営責任者として政権政党との関係については常に心を痛めておられると思いますが、来春の出馬に当たって、その関係についてどのような姿勢で臨まれるのか、この際、忌憚のない決意を御披瀝いただきたいと思います。
 次に、市町村合併の現状と課題について伺います。
 さきの私の質問に対して知事は、市町村が上下関係で進められた昭和30年代の合併と違い、今回は自治体それぞれが水平関係で取り組むもので、自由な住民意思を尊重し強制すべきでないとの認識を示し、地方振興局を通じて啓蒙、啓発していくと答えられました。今や県下どこに行っても、県民の重大関心事は市町村合併問題であります。しかし、傾向としては、中心になる都市が積極的で周辺の町村が慎重であるようであります。
 私は、合併によって地方分権時代にふさわしい広域的自治体が生まれる一方で、小粒でもその歴史と伝統を生かし、個性とやる気のある町村は残ってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。合併する町はよい子、合併しない村は悪い子であってはなりません。それにしても岩手県下の立ち上がりは鈍いと言われております。県では、合併推進プランを定め促進体制に入っておりますが、県下の状況をどのように把握されておりますか、お知らせください。
 さらに、さまざまな事情があって合併に至らない町村があり得ると思いますが、これらの町村が自治体としての役割、機能を維持するために、どのような支援策を考えなければならないのかお伺いいたします。
 広域圏の市町村合併が実現した暁には、県はその地区の地方振興局を廃止して、地方振興局の権限を新しい市に移譲する考えが考慮されていると聞きますが、合併問題と県の行政機構のあり方についても、この際御説明いただきたいと思います。
 次に、財政問題と予算編成方針について伺います。
 県債残高は年々増加して、平成14年度末の見込みは1兆3、384億円で、県民1人当たり約94万円の借金になり、ここ数年は650億円から700億円ずつ増加しつつあります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 これは、先行投資的に積極的に事業を実施したことや国の景気浮揚事業との関連で発生したものが多いことは承知しております。この県債残高について、本県の財政構造が悪化しているとの批判に対して、当局は、後で国から交付税で補てんされる政策的で良質の県債が多いと説明してまいりました。
 そこでお伺いしますが、年度末県債残高1兆3、384億円のうち、国によって補てんされる金額は幾らあり、本県独自の財源で返済しなければならない額はいかほどになりますか、お伺いいたします。
 また、国は後年交付税で補てんすると言いながら、今の国の財政状況では今後間違いなく補てんするのかと不信感を持っている市町村があるやに聞きますが、県はどのように考えますか、確信のあるところをお示しください。
 次に、来年度の予算編成の仕方についてであります。
 政策評価システムの本格実施に伴い、予算編成過程の透明性を高め、現業部局の自主性と責任を明確化するために、従来の財政課主導型から総合政策室主導型で予算編成をすると伝えられておりますが、県政運営に及ぼす効果をどのように描き、期待されているのでしょうか。
 また、来年度は公共事業など投資的経費を前年対比15%削減し、県債発行については当該年度の県債償還額以下にとどめるなど、今までにない緊縮予算にするとの方針を表明しました。これは、国でも論じられているように、財政健全化に寄与するとしても、おくれている生活基盤の整備と景気浮揚を期待する県民の要望に矛盾することになりますが、いかがでしょうか。
 次に、青森、秋田、本県で共同県債を発行することを検討すると報道されました。前の質問者も触れておりますが、これは3県共同の広域型事業が前提でしょうが、現段階でどのような事業構想があり、それはどのような意味とねらいがあるのかお伺いいたします。
 次に、雇用問題について伺います。まず、緊急雇用対策の成果についてであります。
 雇用問題は、今や社会不安の原因で、政治の最大課題であります。私も前に質問いたしましたが、ことし2月議会で我が党の千葉議員の質問に対して、即効的雇用対策と中長期的対策に分けて行うと答弁がありました。即効的対策としては、国から交付された資金による緊急地域雇用創出特別基金と県単独の緊急地域雇用特別基金を活用して緊急に雇用を創設すると決意を述べられましたが、その効果は現在までにどのように上げられましたか、今後どのように展開される見込みでしょうか。
 中長期的対策として、コミュニティービジネスについてお伺いいたします。
 これは、小規模ながらも、福祉、介護、子育て、家事支援、食品加工流通、伝統工芸など、いろいろな分野にわたり、しかも男女ともに格別な技能がなくてもとっつきやすく、地域密着型の雇用創出となり、地域活性化になります。本県は先進地とされておりますが、その現状と問題点について、県の認識と支援策についてお伺いいたします。
 次に、専修学校対策についてであります。
 来春の高校卒業者の就職内定率は10月末で過去最低の45%と報じられ、超氷河期であります。私はかつて県立高校の再編整備計画に当たって、多彩にして魅力ある職業教育学校をつくり、目的意識を持った人間、社会と職場の求める技能を身につけた人材養成が、就職難克服対策としても大事であるとこの場から提案方々質問をいたしたことがあります。
 現在注目されているのにドイツのデュアルシステム方式があります。これは、高校生程度の年齢者を教育訓練機関に在籍させながら、前期はもっぱらそこでの職業教育、後期はそこに在籍したまま、一定時間企業の現場で実習を行い、やがてその企業か他の企業へ技能者として就職させるという制度であります。ドイツでは1999年のデュアルシステム対象者が約170万人いると言われます。
 もちろん、ドイツと日本は学校制度が違いますが、日本には高校卒業後に入学する専修学校制度があり、岩手県には私立が32校あって高校卒業者が約5、000人入学しておりますから、専修学校と企業がデュアルシステム的タイアップをすることは、雇用促進に有効なことと思います。
 東北各県ではすべての専修学校に公的補助を行っておりますが、岩手県だけが学校法人以外の専修学校12校には補助をしておりません。したがって、その運営実態は大変に厳しいと聞いております。本県でも、他県以上の助成策をとり健全な技能者養成をすることが雇用促進のために大変有効だと思いますが、御意見をいただきたいと思います。
 次に、構造改革特区制度についてお伺いいたします。
 特定の地域に限って規制を緩和し、民間活力を引き出し、地域経済の活性化を図ろうとする構造改革特区推進法案が今国会で成立する見込みと言われます。法案作成段階で政府に提案された特区は426件、規制緩和項目は903項目と伝えられたのに、関係省庁が緩和に同意したのは全国で80項目、本県は提案18項目中11項目のみと報じられております。本県提案のどぶろくが外されたことに関連して、この制度のあり方について知事は厳しく批判されております。そもそも本県ではどこが特区に指定され、どのような規制緩和がなされ、どのような社会的、経済的効果が期待されるのでしょうか、お伺いいたします。
 次に、山村対策について2点お伺いいたします。まず、川井村の木の博物館構想支援について伺います。
 恵まれた森林山野を持ちながらも、底なしの木材価格の低迷により山村経済はますます疲弊し、過疎化、高齢化の進行で前途に光明を見出せないのが現状であります。この状況打開のため、木材生産だけの森林でなく、人間生活と森林のかかわりを学び、人間と自然との共生を体験する目的を持つ木の博物館構想が川井村で着手されております。これは、旧来の箱物博物館ではなく、563平方キロメートルという全国屈指の広大な村の面積と変化に富む地形と自然環境の特徴を生かし、村全体を博物館にするもので、既存の村の民俗資料館を本館にするほかは、村内15カ所の森林地域を青空分館とし、例えば、2号館は育林の森、6号館は古代の森、12号館はキノコの森など、それぞれ山の特徴を生かして整備しようとするもので、山村でしかできない雄大な構想であります。
 このユニークな計画は、山林王国岩手県を象徴する大事業と思いますが、現下の村の財政は極めて厳しい状況にありますので、県は直ちに物心両面の支援をしてこの構想を実現させるべきだと思いますが、この事業の評価と支援策についてお示しいただきたいと思います。
 次に、林業公社と県有林事業について伺います。
 私は昨年の議会で、森林王国岩手に大きな役割を果たしてきた森林公社と県有林事業の危機的現状を指摘し、その対策について質問いたしました。それに対して農林水産部長は、外部監査中であるので、その結果を見て今後の対策を立てると答弁されました。その監査結果を見ますに、公社は、現在の立木はすべて成木になっておらないので、全部処分しても539億円の負債返済不能の見込みであり、契約期限の80年後は、木価状況から推定して457億円の返済不能となり、加えて今後20年間の資金不足約200億円を県が負担しなければならない。県有林事業に至っては、平成12年度の立木評価から見て403億円の返済不能になるだろうとしております。
 森林は水資源涵養、保健、文化、生活環境、災害防止など、公益的機能について国民の認識が深まり、今や国家国民の存亡にかかわる国家的資産であります。ましてや本県県政にとって林業振興対策は避けて通れない重大な案件であります。つきましては、外部監査結果を踏まえて、今後県はいかなる対策によって山村、林業振興をされますか、お伺いいたします。
 次に、漁業問題について2点お伺いします。
 まず、アワビ漁獲のあり方についてでありますが、今アワビは漁獲時期に入りました。海のダイヤと言われるアワビは、1960年には本県で1、590トンの漁獲があったのに、90年には172トンと約9分の1になり、懸命の稚貝放流事業によりようやく400トン台に回復しております。アワビ問題は、今日までほとんど密漁対策と稚貝放流による資源増殖問題として論じられてまいりましたが、私は、この貴重な資源の効率的利用、効果的漁獲のあり方についてお伺いいたします。
 本県のアワビは、県漁業調整規則によって11月から翌年2月までの間に数日間、海のなぎぐあいと資源状況を見て漁獲されます。この定めは藩政時代から、アワビの大半が三陸俵物、乾鮑として中国に輸出され、その乾鮑を製造するに適した乾燥した北西風の吹く冬の時期に合わせて漁獲時期を定めたなごりと言われます。
 しかし、今日では、乾鮑としてよりも生鮮アワビの方が、夏に三陸に来訪する観光客の最高嗜好品であり、活魚輸送技術の発達により全国的にも生鮮アワビの需要がふえているのであります。現在の規則では需要のある時期に漁獲できないから、需要のあるところに供給ありの原理が働き、そこに密漁者が横行するすき間があるのではないでしょうか。
 本県と宮城県は3月から10月までの8カ月間禁漁であるのに、青森県は8月から10月までの3カ月間、秋田県は9月から11月までの3カ月間のみの禁漁ですから、仮に本県海域で7月に密漁したアワビが、県境を越えると密漁品と疑われずに流通します。逆に、青森、秋田県産と称すれば、本県の禁漁期間でも堂々と高値で流通することになります。これは漁業者にとって深刻な問題でありますが、この課題のあり方についてお伺いいたします。
 2点目は、まき網、底びき網漁業対策についてであります。
 昨年の議会で私は、まき網漁船と底びき網漁船によるスルメイカ漁獲削減とサケ・マス混獲禁止、さらには操業海域規制についての対応を質問いたしたのに対して、農林水産部長は、ことし8月には農林水産大臣によるこれらの操業許可条件が更新されるので、その際検討するよう国に申し入れを行うとしていることと、本県底びき網漁業と沿岸漁業との話し合いの場を設け調整に努力すると答弁されましたが、その成果と今後の対策をお示しください。
 次に、教育問題について2点お伺いします。まず1点目は、いわて教育の日制定についてであります。
 教育尊重の世論を形成し、教育の振興と充実を図る目的で、全国各県それぞれに教育の日制定運動が盛り上がっております。既に岡山、広島、島根県では県条例を制定し、ほかに、栃木、茨城、大分、埼玉、長野、岡山、山口県と東京都で、さらに東北地方でも、青森、秋田、宮城、福島県でもいろいろの形で進行中と聞きます。
 本県においても、教育諸団体と経済同友会など45団体が結集して県条例によるいわて教育の日制定推進協議会を発足させ、その実現運動の体制に入っております。教育立県を標榜する本県は、昭和40年以来、全県的に推進して多くの成果を上げた教育振興運動の歴史を持っております。教育委員長から、県下に盛り上がりつつあるいわて教育の日制定の意義とその実現見通しについて、御見解を示していただきたいと思います。
 2点目は、平成16年3月から導入される高等学校の入学試験の改正について伺います。
 報道によりますと、学力試験で500点、調査書と面接等で500点の合計1、000点とし、学校によってはA、B、Cの3方式を使い分けてそれぞれの特徴を出させると聞きますが、その具体的内容とこれを実施することによって何が期待されるのか、どのように教育が変わっていくのか、教育長の見解をお示しいただきたいと思います。
 最後に、地域課題についてお伺いいたします。道路建設についてであります。
 去る8月2日、待望久しかった三陸自動車道・山田道路が開通いたしました。それは7キロメートル余りですが、10年余りと400億円余の膨大な費用をかけたもので、完成までに努力された関係皆様に、地域民の一人として衷心より感謝申し上げます。
 ある県の知事が、高速道路が計画どおり完成すれば、日本には過疎問題は残ってもへき地問題はなくなると話しております。けだし明言であります。
 まずお伺いいたしますが、既にルートが発表された宮古道路と宮古から盛岡を目指す宮古西道路の進捗状況と今後の見通しはどのようになっておりましょうか。
 次に、簗川ダム建設に絡んで、既に着工されている国道106号簗川道路の進捗状況と、表面化しているダム建設批判問題がこの道路建設にどのように影響するのか、お示しいただきたいと思います。
 さらに、本県沿岸を縦貫する国道45号のうち、山田町内で交通量の多い新田橋についてお伺いします。
 この橋は築後40年で、老朽化のみならず、大型車両の対面交通が困難で、特に冬場は片側通行になり交通渋滞の原因になっております。この道路は国管理でありますが、県としても無視できないと思います。速やかにかけかえすべきと思いますが、県の取り組みについて伺います。
 最後に、県立山田病院新築問題についてお伺いいたします。
 私ども地域民が県立病院に依存する度合いは、盛岡市民が県立病院に期待するものとは違い深刻であります。その病院が老朽化し医師不足から来る不満は、高齢化社会を迎えてますます強く、私たち地元議員は大変厳しい批判を受けております。しかし、幸いにして県は、実態を承知して、平成17年度の新築計画を立て、町に対して建築場所の適地について意見を求め、町は直ちに数カ所の場所を答申しておりますが、その後の進捗が鈍いように感じられてなりません。つきましては、その建築見通し、その場所、規模、設備内容、標榜診療科、医師増員などの計画をお伺いいたしまして、この場での質問を終わります。
 以上でこの場から終わりますが、お答えによりましては再質問をいたします。
 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕
〇知事(増田寛也君) 佐々木俊夫議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、国に対する地方からの提言についてでございますけれども、地方分権改革推進会議から出されました事務・事業の在り方に関する意見というものがございまして、これに対する地方の考え方を明確にすることが必要であると判断いたしまして、去る11月7日に私の方から声をかけまして、宮城県、三重県など6県知事との連名で緊急提言を行ったところでございます。
 これに先立って、実は10月30日には地方6団体の会長談話が出されておりますし、全国知事会としても、各都道府県知事があらゆる機会をとらえて関係方面にこの意見に対する意見の表明を行うということで、北海道・東北地方知事会、それから中部圏知事会、近畿ブロック知事会などからもそれぞれ独自の緊急提言が行われたところであります。大変重大な内容を含んでおりましたので、そのほか、私もそうでございますが、各県知事もこの問題については個別に記者会見などで、内容について大変危惧の念をいろいろな手段で表明したかと思います。したがって、この地方分権推進会議については、大変危惧される内容を含んでいるので、全国知事会、それから北海道・東北知事会では私が提案しましたが、そういう場、それから、各知事個別に、あるいは知事同士が連携してというような形で出されたということでございます。そのほか、実は私も含めまして何人かの知事で、内容に応じてさまざまな提言あるいはアピールを行ったものがございます。
 私は、徹底した地方分権改革を推進していくためには、地方がまずみずからの考えを明確にして、国と地方が同じテーブルについて議論を深めていくことが必要であると考えておりまして、一つには、知事会がまずその核となるべきと考えております。
 しかし、この全国知事会は、当然、47の都道府県で構成されておりますので、利害の対立を伴う事柄について全体の意見集約を図るにはどうしてもある程度の時間を要することがございます。それから、物によっては本当に意見集約が図れるかどうかということもございます。また、一方で定期的な開催ということが原則になっていますので、現在の知事会の運営が、急速なこの環境変化に迅速に対応できないという面もありまして、現在、知事会においてその改革に向けた取り組みもいろいろ進められているところでございます。
 したがって私は、今後も、知事会の場というものは一つありますが、そういう場を活用することと同時に、地域の実情に合った公共事業のあり方や緑の雇用事業の取り組みなど、地域の幾つかのこうした特定課題については、共通する課題を抱える県と連携して取り組んでいくことも有効であると考えておりまして、これら共通の認識を持つ各県との連携を図りながら、両方のルートを使って、地方の自立ある発展に向けて取り組んでいきたい、このように考えております。
 次に、宮城県との連携についてでございますが、歴史的に見れば、岩手県南と宮城県北地域において、早くから日常生活や産業経済の面で交流・連携が行われるなど、宮城県とは地域を主体として活発に結びついてきていると考えています。むしろ、私が知事になりまして感じたのは、青森県や秋田県とは、人口や経済規模、自然環境など多くの共通点があるのですけれども、これまでは比較的県同士の交流・連携が希薄だった面があると思いまして、平成9年から、知事サミットの開催などを通じて、県外事務所の共同設置ですとか、経済的手法の活用による産業廃棄物対策など、幅広い分野で連携の実績を積み上げてきたところでございます。
 一方で、宮城県との連携についても、北みやぎ・南いわて広域交流物産展の開催ですとか、森は海の恋人植樹祭の開催などといった、地域の皆さん方による主体的な交流を支援しておりますほか、今年度からは産業廃棄物不法投棄対策の共同パトロールを実施するなど、県境を越えた地域間の交流を積極的に推進しているところでございます。これは、今後とも青森県、秋田県のほか、宮城県とも相互の理解を深めながら一層の協力を図り、連携の取り組みを着実に進めるということが大事かと思っておりまして、これはやっぱりそれぞれが努力をしなければいけない。宮城県との連携を進めるに当たって、宮城県にも岩手県との連携を進めるということで、相当努力をしてもらわなければいけない。お互いがそれぞれ努力をして、初めてこういったことが行われるのだろうというふうに思います。
 今、北東北3県の連携事業を進めていますが、これは、いずれにしてもその成果というのは東北全体に広げていく、その上でのステップとも考えておりますので、最終的には、そういう大きな目でさらなる連携に結びつけていきたいと考えております。
 次に、がんばらない宣言ということについてお尋ねがございましたが、この言葉ですけれども、これは従来の経済成長一辺倒と、こういう考え方を反省して、一人一人がより人間的に、より自然に素顔のままで生きていけるような取り組みを始めると、こういう意味を込めて述べているものでございます。
 これから21世紀においては、時間ですとか余裕と安らぎ、自然環境など、これまで従来には評価し切れなかったものをまず大事にしていくんだと、こういう価値観のもとで、地域の個性を十分に生かした地域づくりを進めていくことが必要でございまして、これががんばらない宣言の趣旨でございます。
 次に、執行部と議会の関係についてお尋ねがございましたが、地方分権の進展に伴いまして、地方公共団体は自己決定、自己責任の原則にのっとって、独自条例の制定や新税の導入などの自主性や独自性を発揮していくことが可能となるわけでありまして、こうした中で、意思決定機関である議会とそして首長の役割は、一層重要性を増していくものと考えています。こうした時代における議会と執行部の関係というのは、当然、対等なお互い協力関係にありながらも、やはり一定の距離は保って、県民の視点に立って政策議論を深め、相互に牽制し合っていくような形が望ましいと、こういうふうに考えています。こうした観点から、県議会との間で幅広く情報を共有し、そしてそのことを本会議場において活発に議論を展開していただけますように、そういう意味で、さまざまな機会をとらえて当面する重要課題の情報や執行部の考え方などについて説明をさせていただいていると、こういうことでございます。
 また、お話がございました本会議での質問案件の事前提出についてでございますが、これは、私どもも事前に議員各位の質問の本旨や内容を十分に確認させていただくと、そういうことによりまして質問に対する我々執行部としての考え方、判断をでき得る限り明確にした責任ある答弁を行うことが可能となるというふうに考えています。また、このことによって、県政の意思決定の場である県議会において、県政課題や政策の核心を明らかにしながら活発な議論が展開され、その内容を一層深めることができて、さらにはこのオープンな議会を通じて、県民に対して県の行財政運営の現状や今後の方向を明確に示すことができるものと、このような考え方で、今、こういうふうにしているものでございます。
 私は、議会と執行部が県政推進の車の両輪としてお互いに切磋磨しながら、ともに21世紀の新しい岩手をつくり上げていくことが地方分権の時代にふさわしいと、こういうふうに信じておりますので、ぜひこうしたことが本当に実のある形でなければならない。これには、私ども執行部も相当努力をしなければいけないというふうに思います。それから、多少口幅ったい言い方ですが、議会の方でもいろいろな御努力を今まで積み重ねてこられてきているわけですが、議場の場での運営についてでございますので、議会もこれからもさらに努力を重ねられるものと、こういうふうに思っております。
 長野県議会でのいろんな一連の動きなどを見ておりますし、それだけではないんですが、やはり議会制民主主義ということについてはいろんなあり方、議論があって、これを絶対に後退させることがあってはならぬというふうに思っておりますので、そのためには、やはり車の両輪とすると、執行部も、従来の考え方にとらわれるのではなくて努力しなければいけないということで、私もあえて議会のことにかかわる話でありますが、県の職員研修の場でそういうことを題材として取り上げて、意識改革の一つの例として取り上げたわけでございますが、先ほど申し上げましたような、この本来のこうした趣旨というものが本当に生かされるように、私どももなお一層努力をしていきたいというふうに思っております。
 次に、知事選挙への対応についてでございます。これにつきましては、我が国の地方自治をめぐる現在の状況が大きな節目の時期を迎えておりますので、こうした中で、地方分権を確立するためには国と地方のあり方、とりわけ国から地方への税源移譲と、これを前提とした国庫補助負担金の廃止や地方交付税制度の改革などの大きな問題に対して、改革を強力に推進していかなければならない時期にあると、こういうふうに考えておりますので、こうした中で私自身、これまでの私が行ってまいりました県政運営を十分に振り返りながら、さらに今議会での議論もいろいろございますが、そうしたものも踏まえて、この時期、知事選挙への対応について熟慮した上で決断をして年内に明らかにしたいと、このように考えております。
 なお、このことで出馬が前提となってのお尋ねでございますが、政権政党との関係についてお尋ねがあるわけでございますが、今この時期、選挙の対応は先ほど言ったようなことであるわけですので、この点についてはお答えができないわけですが、一般論ということであれば、車の両輪とも例えられる執行機関の長である知事、それから議決機関にあってチェック機能を持つ議員、あるいはそうした議員の方々を主たる構成員として、広く国民の人たちの参画を募った政党と、こういうものがそれぞれあるわけで、それぞれ立場とか役割がお互いに大きな議会制民主主義の中で役割が違うわけですけれども、ともに向いている方向は県で言えば県民福祉の向上のため、県民に対してそれぞれの役割の違いを踏まえながら責任を負うという関係だというふうに思いますので、そこにあえて言えば、私、選挙で選ばれた立場の知事ですので、そうした中で政治判断というものを加えて、そしてこうした政権政党あるいは各政党・会派と関係を築き上げていくものと、こういうふうに考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部局長から答弁をさせますので御了承をお願いします。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕
〇地域振興部長(飛澤重嘉君) 市町村合併問題の現状と課題についてでございますが、市町村合併は全県一律に進めるべきものではなく、住民合意を前提としながら自主的に選択されるべきものであると考えておりますが、人口減少、高齢化の進行や厳しい財政状況等を勘案いたしますと、小規模自治体の中には、これまでのような行政サービスの水準を維持し、あるいは新たな行政ニーズに十分こたえることが困難になるところもあると見込まれますので、住民の皆さんにそのような行財政の見通しや地域の将来像を十分に説明し理解をいただいた上で、単独で存続するのかあるいは合併するのかの結論を出していただきたいと、そういうふうに考えております。
 最近の状況につきましては、宮古、新里、田老の3市町村や湯田、沢内の2町村による合併に関する勉強会が動き出しておりますけれども、合併特例法の期限を考慮いたしますと、市町村長がみずからの考えを地域の皆さんに示して結論を見出すべき時期というふうに思われますので、年内にその御意向を把握して、市町村から住民の皆さんへの積極的な情報提供と議論の一層の活発化を促してまいりたいと、そのように考えております。
 また、合併の意思がありながらも、地理的条件等から小規模町村としての存続を余儀なくされ、必要な行政サービスが担えなくなると、そういう場合につきましては、何らかの補完を行うようなことが想定されますので、県としてもこのような町村へのかかわり方について検討してまいりたいと、そのように考えております。
   〔総務部長小原富彦君登壇〕
〇総務部長(小原富彦君) まず、合併問題と県の行政機構のあり方についてでありますが、地方分権時代にあっては、住民に最も身近な自治体である市町村中心の行政システムに転換していく必要があり、そのため、本県では市町村に対し事務・事業、財源、人的資源を一括して委譲することを施行してきているところであります。
 今後、市町村合併により、市町村の行財政基盤と機能の強化が図られ、権限の受け皿としての体制がより強固なものとなった場合においては、県からの委譲はさらに加速化されることとなり、これに伴って地方振興局に求められるのは、所管区域の見直しも経た上で、市町村への支援やより広域的な調整に適切に対応できるような体制であり、県としてもこのような体制を目指していくべきものと考えております。
 次に、県債残高についてでありますが、地方交付税で措置される県債残高につきましては、現在の試算では、平成14年度末見込みの総額1兆3、384億円のうち、約60%に当たる8、160億円余が後年度に地方交付税で措置されることとされているものであり、これを除いた約40%に当たる5、200億円余が、一般財源によって償還しなければならない額であると見込んでおります。
 また、この8、160億円余が今後交付税で確実に補てんされるかについてでありますが、交付税算入を見込んでいる県債については、地方交付税法において、元利償還金を普通交付税の基準財政需要額に算入する旨規定されており、また、これらの元利償還金の算入に必要な財源についても、地方交付税法の附則において、国の一般会計から地方交付税特別会計に繰り入れる額に加算する額や年度が明示されているものであります。したがいまして、将来的に発行する地方債に対する地方交付税制度改革での措置のあり方、議論は別といたしまして、これまで発行された県債につきましては、確実に算入されていくものと考えております。
 県といたしましては、市町村に不安感が生じないよう、適時に交付税補てんに関する情報提供などに努めてまいりたいと考えております。
 次に、平成15年度当初予算編成についてでありますが、本県の財政は多額の県債残高を抱える厳しい状況にありますことから、将来を見据えた適切な財政運営を行っていくためには、県債残高をこれ以上ふやさない努力が不可欠であり、このため、県債の発行額が償還額を下回るよう、いわゆるプライマリーバランスの均衡を早期に実現していくことを最優先させる必要があると考えております。このような観点から、平成15年度の予算編成に当たりましては、投資的経費の15%削減などにより県債の発行を大幅に抑制することとし、歳出については、歳入の見積もりに見合ったものとなるよう、抑制を図ることとしたところであります。
 一方、こうした抑制型の予算編成にありましても、県の総合計画の着実な推進に加え、県政懇談会を通じた県民の声や市町村の要望等にも的確にこたえていくことが求められております。このため、新たな産業創出に向けた地域産業の振興に積極的に取り組むとともに、県民の生活に身近な下水道や道路等を初めとする生活基盤の整備については、生活評価システムの制度をさらに高めることによって、施策・事業や事業施工箇所について、優先度を客観的に判断しながら重点化を進めることとしており、さらには、これまで整備してきた道路、河川等の社会資本ストックを適正に維持管理していくことに財源を振り向けるなど、県財政の健全化を図りながらも、県民の要望や市町村の要請にこたえていくよう努力してまいる考えであります。
 次に、北東北3県による地方債の共同発行についてでありますが、今般の県債の共同発行につきましては、地方の自立のあり方の先導的な実践モデルとして、北東北3県による広域的な連携を財政的な分野にまで広げるための政策研究の一環として取り組むこととしたものであり、去る11月20日、3県の実務者レベルによる研究部会を設置したところであります。この部会では、共同発行の手法として考えられる銀行等引受債やミニ市場公募債等について、それぞれの課題等の整理や検討を行うところから始めることとしており、これらの研究を通じて、資金調達手法の拡大や調達コストの縮減に向けたノウハウの習得などの成果が期待できるものというふうに考えております。
 今後、こうした観点から、研究を進める中で、共同発行にふさわしい事業の構築に向けて、3県で協議を進めてまいりたいと考えております。
 次に、学校法人立以外の専修学校に対する助成についてでありますが、専修学校の安定性、継続性、公共性などの確保という観点から、本県専修学校32校中、準学校法人立を含む学校法人立12校のうち、大学受験等のいわゆる進学予備校を除く11校に対して運営費補助を行っているものであります。また、学校法人立以外の専修学校では、看護師等養成所に指定されている8校に対して、看護師及び准看護師の養成を目的として運営費補助を行っているところであります。これ以外の専修学校として、本県においては財団法人、社会福祉法人、宗教法人及び個人が設置した12校があります。これらの専修学校につきましては、本県独自の施策である私立専修学校設備整備費補助の対象としているほか、県が原資を融資しております岩手県私学教育振興会の貸付事業の対象としているところであります。
 県といたしましては、学校法人立以外の専修学校に対しても、今後とも引き続き県の財政状況あるいは国の動向等を考慮しながら、可能な範囲で助成措置を講じるとともに、議員御提言のデュアルシステム的な企業とのタイアップ、これにつきましても研究をさせていただき、本県の職業教育の向上に努めてまいりたいと考えております。
   〔総合政策室長佐藤勝君登壇〕
〇総合政策室長(佐藤勝君) まず、政策形成・予算編成システムが県政運営に及ぼす効果についてでありますが、このシステムは政策評価に基づき、各部局みずからが既存事業の徹底的な見直しを行うとともに、総合計画の推進や重要課題の解決に向けたより効果的、効率的な新たなプロジェクトを主体的に立案、推進していくことにより、各部局の政策形成能力の向上と一層の責任体制の明確化を図ることなど、これをねらいとするものであります。
 政策形成の過程では、各部局の企画室と総合政策室が密接な連携、調整を図りながら、部局横断的なプロジェクトの検討、立案を進めるものでありますが、これらのプロジェクトについては、総合計画推進に対する貢献度や効率性などの観点で政策評価・推進会議で採否を検討し、人件費などの義務的な経費、公共事業などの投資的経費を除いた、いわゆる政策的な経費について重点的に採択することといたしております。
 採択されたプロジェクトにつきましては、そのまま予算化されることにより重点施策への的確な予算化が図られるとともに、予算編成事務も簡素化されるものと考えております。この新たなシステムの導入により、政策評価の結果を政策形成から予算編成まで確実に反映させる一連の政策評価システムの構築がなされるとともに、政策形成及び施策の推進における部局の自己決定、自己責任の徹底が図られ、結果として、厳しい財政運営の状況におきましても、政策評価を基本とする透明性、効率性が高く、成果重視の県政が実現されるものと考えているところであります。
 次に、構造改革特区についてでありますが、県におきましては、国の提案募集に応じ、去る8月末に日本のふるさと再生特区など三つの提案をまとめ、国に提出したところであります。
 提案に当たりましては、本県の持つ恵まれた自然環境や地域資源、産業の特性など、これを十分に生かして地域の活性化を図るという観点から、実情に合わないと考えられる規制事項や、従来から地域や関係団体からの要望が強い事項などを整理して構想として組み立てたものであり、したがいまして、具体的な市町村や地域のエリアを特定して立案したものではないわけであります。
 また、本県が提案した3構想18項目、これはそれぞれグリーンツーリズムや農地再生等の推進、小規模な自然エネルギー利用の促進、産学官連携による起業の促進など、いずれも今日の本県における地域振興上の重要な課題をとらえ、その具体的内容は、例えば自家製造酒の解禁や農家民泊に係る面積要件の撤廃、電力供給に係る諸要件の緩和、国立大学教員の兼業禁止の緩和などであります。これらの改革により、都市と農村との交流の活発化による地域の活性化や農地再生利用による農業の振興、環境首都実現にも資する木質バイオマス等の新たなエネルギー利用の拡大、あるいは研究開発の活発化を通じての内発型企業の育成による産業活性化など、大きな効果が期待できるものと考えていたところであります。しかしながら、国におけるこれまでの検討過程や現在国会で審議されている法案の内容などを見ますと、当初、ワンパッケージとして提案した特区としての姿がうまく実現できるかどうかについてはまだ不透明でありますので、今後さらに国の動きを注視するとともに、必要に応じて再提案するなどの対応を進めていく考えであります。
   〔商工労働観光部長照井崇君登壇〕
〇商工労働観光部長(照井崇君) まず、国の交付金による緊急地域雇用創出特別基金と県単独の緊急地域雇用特別基金を活用した事業の成果についてでありますが、この二つの基金事業は、平成14年1月から実施されており、平成13年度におきましては、両事業あわせて99事業、新規に雇用された人員は589人となっております。また、平成14年度におきましては376事業、2、989人の新規雇用を見込んでいるところであり、その10月末現在の実績は1、720人となっております。国の交付金事業については、より地域に密着した事業の展開が図られるよう、市町村への事業費の配分を厚くし、離職者等を主な対象とした臨時応急的な雇用の場を創出することとしており、一方、県単独の基金事業は、離職者等の雇用を伴う設備投資に対する助成や技術開発支援による産業おこし等により常用雇用を創出するとともに、国の交付金事業を補完することとしております。
 今後とも、この二つの基金事業の機能分担によって即効性のある雇用機会の確保を図るとともに、将来の新たな常用雇用の場の創出につながるよう、努めてまいりたいと考えております。
 次に、コミュニティ・ビジネスについてでありますが、コミュニティ・ビジネスは地域と生活者の視点から、住民みずからが取り組む地域密着型のビジネス活動であり、県内でおよそ100以上の団体が取り組んでおります。
 平成12年に行った県内のコミュニティー団体を対象としたアンケート調査によると、これらの団体は総じてビジネスに対する意欲が高い一方で、団体間のネットワークの不足や経営ノウハウの欠如、資金調達の難しさなどの課題が挙げられております。このため、県といたしましては、平成13年6月、岩手コミュニティ・ビジネス協議会を設立し、インターネットを活用した団体間のネットワークづくりに取り組むとともに、コミュニティ・ビジネス活動事例集の作成や県内各地におけるフォーラム開催などの普及・啓発を行っているほか、昨年度から県内のモデルとなる団体の活動費を助成し、これまで7団体の創業、経営支援を行っております。また、今年度からは、一部の団体に対して経営面での課題を解決するため中小企業診断士を派遣するなど、支援体制の強化にも取り組んでおります。
 高齢化の進展、生活様式や価値観の多用化などに伴い、コミュニティ・ビジネスに対する地域の期待がますます高まりを見せていることから、今後におきましても、県民生活のさまざまな分野でコミュニティ・ビジネスの拡充・展開が図られ、新たな雇用創出につながるよう、積極的に支援してまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕
〇農林水産部長(佐々木正勝君) 川井村の木の博物館構想への支援についてでありますが、この構想は、豊富な広葉樹や天然性の針葉樹など、多種多様な森林を有する特色を生かし、村全体を博物館と設定して既存の民俗資料館を本館に位置づけながら、育林の森や水源の森など15の分館を整備し、森林での体験学習の場を提供することにより、都市住民と地域住民の交流の促進や活力ある地域林業の展開を目指そうとするものであります。こうした川井村の取り組みは、人と森林が共生する循環型社会の構築を図ろうとするものであり、まことに時宜を得たものだと思っております。
 このため、県といたしましては本年度から、機能や目的に応じた展示林や間伐材を利用した案内看板の整備、森林環境教育プログラムの作成などに対して助成しているところであります。
 今後におきましても、この構想が早期に実現し、県民の森林・林業に対する理解の場となるよう、ハード、ソフトの両面から積極的に支援してまいりたいと考えております。
 次に、林業公社及び県有林事業についてでありますが、本年2月の平成13年度包括外部監査の結果報告において、現状では林業公社に対する県の貸付金の回収及び県有林事業の借入金の返済が困難であるとの指摘を受けたところであります。こうしたことを踏まえて、これら事業の財務改善や林業公社に対する支援方策などについて検討するため、本年5月に、外部の有識者から成る森林整備のあり方に関する検討委員会を設置したところであります。この委員会におきましては、現地の状況を十分把握した上で検討していただくため、現地において林業公社事業等の実態調査を行うとともに、現状における問題点や必要な施策等について、森林組合及び林業従事者などから意見をいただいたところであります。
 また、林業公社の社員である関係市町村から経営改善に係る意見聴取を行ったところであり、これらをもとに、現在改善方策等について幅広い観点から検討をいただいており、来月に中間報告をいただきたいと思っております。
 なお、現在同様の課題を抱える関係県とも連携し、国等への支援を要請するための準備もあわせて進めているところであります。
 次に、アワビの漁獲時期のあり方についてでありますが、本県のアワビは、種苗放流や漁場造成など関係者の努力によりまして、平成9年には17年ぶりに全国一の漁獲量となるなど資源が増加傾向にあります。
 こうした中で、県の漁業調整規則では操業を認めていない夏場等において、アワビを採捕することができるよう漁業者から強く要望があったところであります。このため、県ではこうした時期の採捕が資源の再生産に与える影響等を明らかにするため、平成9年からは、従来未利用でありました深い漁場において3漁協に対し、また、平成12年度からは漁場を設定せず16漁協に特別採捕を許可し、調査を実施するとともに、漁協、県漁連、県による検討会を開催してきたところであります。
 今後は、これまでの6年間の調査結果を踏まえ、アワビの資源や季節ごとの需要の動向、さらには北東北3県の採捕期間や密漁対策等を考慮しながら、アワビ漁獲時期のあり方について漁業関係者と協議、検討してまいりたいと思っております。
 次に、まき網、底びき網漁業対策についてでありますが、イカ釣りなどの沿岸漁業と農林水産大臣が許可するまき網漁業、底びき網漁業との間には漁場が競合するなどの問題が生じており、県は、操業禁止区域の拡大などの調整を国において行うよう申し入れてきたところであります。本年8月に行われました農林水産大臣許可の一斉更新では、その変更は行われませんでしたが、沿岸漁業と沖合漁業との調整を促進するため、これまで原則として5年に1度の許可の一斉更新時に限り実施していた操業規制内容の変更について、当事者間で協議が整った場合には、一斉更新時に限らず随時認めることとされたところであります。
 こうしたことから、現在、底びき網漁業については、沿岸漁船漁業組合と底びき網漁業協会間で話し合いが進められておりますので、県といたしましても早い時期に調整を図ってまいりたいと考えております。
 また、本県の漁業者に対し、本県沖で操業する他県のまき網漁業者との話し合いを行うよう働きかけてまいりたいと考えております。
   〔県土整備部長猪股純君登壇〕
〇県土整備部長(猪股純君) まず、宮古道路と宮古西道路の進捗状況と今後の見通しについてでありますが、宮古道路は、平成11年4月に国の事業として新規着工準備箇所の採択を受け、また、宮古西道路は、平成12年4月に県の新規事業として採択されたものであります。これら二つの道路は、宮古市松山地点で連結しており、一体的に整備を行うことによって効果が発現するものでありますことから、現在、工事着手に向けた環境影響評価と都市計画決定の手続を国と一体となって進めているところであります。
 このうち、環境影響評価については平成12年から調査を実施し、現在、環境影響評価書を取りまとめ中であり、今年度内に環境影響評価の手続を終える予定としております。
 また、都市計画決定については、本年4月、地域の方々へ計画案の説明を行っておりまして、今後、岩手県都市計画審議会の審議を経て、今年度内に都市計画決定を行う予定としております。
 県といたしましては、これらの手続を鋭意取り進め、早期に工事着手できるよう積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、国道106号簗川道路の進捗状況などについてでございますが、簗川道路は宮古と盛岡を結ぶ地域高規格道路の一部をなす道路でありますが、簗川ダム建設を契機として、平成10年度に約7キロメートルの現道つけかえ工事に着工して、これまでトンネル1カ所、橋梁3カ所の整備を行い、本年度末までに事業費ベースで約45%の進捗率となる見込みであります。
 簗川ダムにつきましては、昨年8月、公共事業評価委員会に諮った上で事業の継続を決定しております。ダム事業の推進に当たりましては、同委員会の附帯意見を踏まえ、周辺環境の保全に最大限の努力を払うとともに、地域住民の御意見や御提言を広くいただきながら進めることとしておりまして、道路の整備においても、その推進に今後とも努めてまいりたいと考えております。
 次に、一般国道45号の山田町内新田橋の整備についてでありますが、新田橋は昭和37年に架設された長さ105メートルのコンクリート橋で、道路幅員が6メートルと狭いことから、大型車のすれ違いが困難な状況であります。
 国道45号には、この新田橋を初めとする隘路箇所が数多く残されていると伺っておりますが、県といたしましては、国道と並行する三陸縦貫自動車道の整備がこれらの課題を解決することにもつながるという考えから、これまで国に対して三陸縦貫自動車道の整備促進を優先して要望してきたところであります。
 しかしながら、当該箇所について、現地の実情も踏まえ、地元山田町と連携を図りながら、道路管理者である国と、整備につきまして、その必要性も含めて協議してまいりたいと考えております。
   〔医療局長千葉弘君登壇〕
〇医療局長(千葉弘君) 県立山田病院の整備についてでありますが、県立山田病院は、昭和40年に全面改築されて以来37年を経過し、施設の老朽化が著しい状況にありますことから、岩手県立病院等長期経営計画で、平成17年度に新築整備することとしております。
 建設場所につきましては、敷地が狭く、現在地での建てかえが困難な状況にありますことから、移転新築することとし、平成12年9月に地元山田町に対し病院用地の情報提供を依頼しておりましたが、本年6月に町内5カ所の情報を提供いただいたところであります。この選定に当たりましては、交通アクセス等、患者さんの利便性、地質、地盤、津波対策等の安全性、用地取得経費等の経済性などを勘案するとともに、地域の保健・福祉との連携についても地元山田町と協議を行いながら、今年度内できるだけ早い時期に決定したいと考えております。
 また、病院の規模、設備、標榜診療科、医師数等につきましては、宮古医療圏における広域中核病院である県立宮古病院との機能分担と連携に配慮するとともに、今後の医療需要の動向なども勘案しながら、今後の基本構想策定の際に、その中で具体に検討してまいりたいと考えております。
   〔教育委員会委員長船越昭治君登壇〕
〇教育委員会委員長(船越昭治君) いわて教育の日制定についてでございますが、議員御指摘のように、岩手教育の日制定推進協議会が設立されておりまして、いわての教育の振興を期する日を制定するよう提唱されているところでございます。このことは、家庭や地域における教育の取り組みを推進する機運を高めてまいりたいというものであると認識しているところでございます。
 全国的にも教育の日の制定の動きがあります。条例を制定している県、あるいは条例の制定によらないで制定している県、また、県は制定していないが市町村が制定して実施している県、幾つかのケースがございますけれども、共通しておりますのは、教育週間でありますとか教育月間であるとか、そういうものを設けることによって、学校行事や地域の教育行事を集中的に実施するというものがその大半であると認識しております。
 本県では、既に40年にわたって営々として積み上げてきた教育振興運動があります。地域の教育力の向上を目指してこれまで積み上げてきた地域の取り組みがございますが、教育の日の制定に当たっても、こうした本県の財産とも言える教育振興運動の関係、成果を踏まえながら、多くの県民の参画と協力によりまして、本県教育の向上、発展につながるような取り組みのあり方として、各界各層の御意見などを伺いながら、幅広く具体に検討してまいる必要があると考えております。
   〔教育長五十嵐正君登壇〕
〇教育長(五十嵐正君) 高等学校の入学試験の改正についてでありますが、平成16年3月から導入される改正後の入学試験の配点は、応答試験を実施する英語など5教科の学力検査を500点とし、調査書の評定を330点に換算し、面接などを170点として、合計1、000点としております。
 各学校での選考は、学力検査と調査書・面接等とを同じ比率とするA選考、調査書・面接等の比率を高くするB選考、学力検査の比率を高めるC選考の3段階に行うこととしております。この段階ごとの定員割合や学力検査と調査書・面接等との評価の比率は各高等学校においてその特色を生かすように定めることとしております。
 この選抜方法は、中学校における各教科の基礎基本の着実な定着や英語力の向上が期待されるものであり、また、自己アピールカードなどにより、生徒の中学校でのさまざまな活動、個性・能力や、これらの学習意欲などを適切に、多面的に評価できるものであります。各高等学校においては、生徒の多様な適性や進路希望に的確に対応し、一人一人の個性や能力を伸長させる教育を進めるとともに、一層の特色ある教育活動が展開されるものと考えております。
〇49番(佐々木俊夫君) 再質問をさせていただきます。
 ただいまは、知事初め各部長それぞれ御答弁をいただきましたが、何分にも私の質問要領が悪いということと、限られた時間にたくさん質問するということから、御理解いただくことがなかなか困難ではないかと思ったのですが、それぞれ適切な御回答をいただきました。ありがとうございます。
 今県民が非常に関心を持っている、先ほど吉田議員からも再三出ましたが、来春の出馬について知事がどう答えられるのだろうかという関心を皆さん持っているわけですけれども、何か年末まではいろいろ検討する、こういう御意見のようであります。中には、出ないというやじが一つ出ましたが、議場ムードは、出るだろうというムードであります。
 やっぱり先ほども触れられたようですが、改革派の知事グループのリーダー、北川三重県知事が出馬されないと、これは非常に大きな衝撃だった。しかし、知事は、私は関係ありません、こういうお話でございます。もうちょっとお聞きしたい点はあるのですが、時間も時間ですのでこれは飛ばします。
 私がどうしてもお聞きしたいのは、岩手のがんばらない宣言、これはこだわるようですけれども、私は非常にこだわっております。だれが考え出したのか知りませんけれども、岩手県では早くから使われていた標語に、ゆっくり走ろう岩手県、そんなに急いでどこに行く、こういうような標語がありまして、これは、急げば事故を起こすからゆっくり行きましょうやということで、急がば回れということでありましょう。これは非常にユーモアがあるものですから、非常に微笑ましいし一般受けもしたスローガンだろうと思うのであります。
 ところが、先般知事が提唱した岩手のがんばらない宣言は、私は最初、ユーモア的なことかな、あるいはまた文学的な感覚でと考えたのでありますけれども、どうも気にかかる。先ほども御説明がございましたが、今までの追いつけ追い越せとやってきた日本人はもう疲れ切っているんだ。経済的な利益をあくせくして追求した我々は、今後は今までのような無理な頑張りはやめて、ゆっくりと自然体で生きていきましょうや、こういうことだと御説明がございました。
 知事が大好きなんでしょう椎名誠さん、モンゴルとかブラジルの自然生活を大変称賛しておられる有名な作家でありますが、あの方と対談するときにも、何かこういうことが話題になるとか、あるいは全国紙にも、岩手は頑張りませんという宣言の広告を3回も出して、大変な費用をおかけだと思います。
 ところが、これに対して、特に都会の女性から大きな反響があった。それはさまざまあるようでありますけれども、一部に私が最も警戒し恐れている内容の投書があったということで、私は一つのショックを受けたのであります。その内容いわく、私は今、子育てで疲れておりますが、子供が少し大きくなったら岩手に行って心と体を治したいです。余り岩手の人は頑張らないで、きれいな空気や水を守っておいてください、こういう投書ですね。
 私から言わせますと、都会の便利な生活にどっぷりとつかって、疲れたとか、飽きたとか、将来私が行きたいですから、山田――ではない、岩手を、山田には失礼しました。まあ、山田もその一つです。岩手をそのまま保存しておいてくださいということで、私に言わせますと、ぜいたくでわがままだなと。岩手は生活基盤がおくれているから、不便でも我慢してください、こういう気持ちがない、何か都会人のエゴイズムがむき出しになっているなと。これを誘発したのがこのがんばらない宣言ではないか。
 そしてまた、そういう方々でしょうか、もうこれから地方の公共投資は要らない、社会基盤の整備ももう要らないというような意見が相当あるというのがそういう背景から出てくるということになると、私どもは極めて情けないな、こう感じます。いずれ、岩手は自然を守りながら、地方でも生活基盤を整備して快適な生活ができますように、私たち都会の者も応援しますから頑張ってください、こういう励ましの心が私は欲しいわけであります。
 岩手に生まれて、岩手に嫁ぎ、岩手に住み、厳しい生活と闘いながら、朝は暗いうちに起きて、夕べは月影を踏んでうちにたどり着く、これが岩手の農山漁村に住む労働の実態であります。何とかして子供の教育費を稼ぎ出して、社会に迷惑をかけない健全な子供に育て上げたいと頑張る親の意地。その親の気持ちにこたえようとして頑張る子供たちのいじらしさ。牛のように物も言わないで頑張ってきた先輩たちが、今の岩手の人間と風土をつくってきたのではなかったのか。私はそれが岩手の誇りであり、また日本人の誇りだと思います。でありますから、がんばらない宣言というのは、生活が裕福で、ゆとりがあって、将来に余り悩みのない、非常に恵まれた一部の方々のみに通用する発想ではないのかと思いますが、いかがでしょうか。
 この岩手のがんばらない宣言を、岩手県を代表し、しかも岩手県で最も影響力のある県知事の県政運営の考え方にすることは、余りにもロマンチシズム的ではないのかと思われます。県政推進、行政推進の指針となる提言としては事は極めて重大だと思いますが、私の思い過ごしかどうか、あるいは私の理解力がないのか、ゆがんだ考え方でありましょうか。改めてこの宣言をした増田知事の発想とこの宣言に至るまでの経緯について、この議場で説明をしていただきたいと思います。
 そして、短絡的と思われるかもしれませんが、頑張るか頑張らないかという心のあり方の問題は、大人の問題だけではなくて、特に私は、発育盛りの子供教育の基本に物すごく関係があると思います。このがんばらない宣言とゆとり教育とは次元が違いますという発想もあるかもしれませんが、県政推進の問題として考えた場合、この両者の関係について基本的考え方をお示しいただきたいと思います。
〇知事(増田寛也君) ただいまの佐々木議員の御質問にお答えいたします。
 がんばらない宣言についてのお尋ねでございますが、私の方でも少し整理してお答え申し上げたいと思います。
 これまで我が国は、例えば開発、それから大規模、集中、こういった言葉であらわされるような、いわば20世紀型の生き方として、やっぱり社会全体が経済的な利益や効率性のみを追求して、言ってみれば中央集権の東京を中心とした尺度ですべての価値を判断してきたのではないか、これが余りにも行き過ぎてしまったのではないか。さらには、経済のグローバル化とかいろいろ言われていますが、そういう中でグローバルスタンダードが必要だという言葉があるんですが、実は、どうもよく見てみるとアメリカンスタンダード的なもので、それは市場がすべてを決めるといったようなこと、すなわちすべての尺度が、とにかく経済的な利益が上がればいいというようなことに余りにも偏り過ぎてしまったのではないか。
 地方分権が進展する中にあって、岩手も含めた今後の地方のあるべき姿というものを考えるときには、やっぱりそれぞれの地域には、もちろん経済的に言えば、現実には格差がいろいろ存在するわけですけれども、それではなくて、それぞれの尺度や物差しをもって見れば、やはりいろいろな宝があるわけですし、それぞれの尺度や物差しというものを持つ必要があるのではないか、そこに我々も気づく必要があるのではないか、こういうふうに常々考えていたわけでございます。
 そこで私は、言葉として、フレーズとしては非常に刺激的でありますが、あえてこうした「がんばらない」という言葉を宣言という形で提唱して、今言ったようなことをぜひ問題提起をする、考えていきたい。これは、したがってもう一度言いますと、従来の経済成長一辺倒を反省して、やはり一人一人がより人間的に、自然に、素顔のままで生きていけるような取り組みを始めましょうという、すべての国民に対する問題提起の意味を込めているものでございます。
 言うまでもなく価値観というのは多様性があってしかるべきものでございますので、こう言ったところで、そのがんばらない宣言自体も一つの見方、そして考え方にすぎないという言い方も一方であるわけです。しかし、やはりこれからは、むしろ先ほど申し上げましたような時間とか、余裕と安らぎ、自然環境など、今までの尺度では評価し切れなかったものをまず大事にするという価値観で地域づくりを進めていく、そうしたみずからの発想によって、そういった地域の宝のようなものを十分に活用していくことが必要だと私は思っております。
 あとは、こうしたものをやはり実践に結びつけていく必要がある。例えば、今県の工業技術センターなどでやっております、間もなくでき上がりますが、南部鉄器の鋳鉄技術を活用したペレットストーブの開発、これは間伐材の利用ということなんですが、例えば今までの経済的な観点から言えば、ああいったものはほとんど見捨てられていた。それをどうやって価値を見出すかということ、それでそれが、例えば地球温暖化などにどうやって役立つか、これは今までの尺度ですとなかなか価値としてはかれなかったものなわけですが、そういったものを見つめ直すということにムーブメントとしてつながっていけないかどうか。
 あるいは、今県内各地で展開されている地産地消運動がありますし、久慈市の山根六郷に見られるような、あれは我々、いわて地元学の実践と呼んでいますけれども、ああいうような運動がございます。そういう地域づくりのいろいろな活動がありますけれども、そういう運動の理念として、今言ったような新しい物の見方の一つの問題提起としてこうしたものを考えてもらえないかと思って提言しているものでございます。
 少し長くなりましたけれども、先般、静岡県の掛川市の市長さんとお会いしていろいろ意見交換をしたのですが、あそこでは11月をスローライフ月間ということで、今いろいろな運動をしております。そういったスローライフといったようなことも、私はいろいろ議論していて、こうしたがんばらない宣言にある意味通ずるところがあるのかな、こういうことも思ったところであります。スローライフ運動そのものについては、またいろいろなあれがありますのでここでは省略しますけれども、やっぱりそういうことで、今まではファーストが、非常に速くて価値があると思われたことに対して、いろいろな物の見方の一つとしてそういった運動が一方で起こってきている。それだけ多様な見方で、そしてまた新しい尺度でこれからの21世紀等を考えていかなければいけない。
 そういう意味での問題提起でありますので、最初、ああいったことを新聞広告に出したりいろいろなところで言っているのですが、余り反応もなかったんですが、さすがに少し言い続けていますといろいろな反応、もちろん、賛成だという方もあるし、いろいろ疑問に思っている意見もありますし、さまざまな意見があります。議論が集約するということはないと思いますが、そういうことによって、いろいろな多様性、そして、そういったことをあえて問題提起した意味合いというものは、これからもさらに出てくるのではないかと思っているところでございます。
〇教育長(五十嵐正君) がんばらない宣言とゆとり教育の関係についてでございますけれども、いわゆるゆとり教育については、完全学校週5日制のもとで、各学校では教育内容の厳選から生ずる時間的、精神的なゆとりを活用して、一人一人の子供たちの理解や習熟度に応じた繰り返し指導や、また発展的な指導を行うことができ、さらには、観察実験や調査研究などの体験的、問題解決的な学習などに時間をかけて、子供たちがじっくりと学習に取り組み、基礎的・基本的な内容を確実に身につけさせることを基本的なねらいとしているものであるととらえております。
 したがいまして、がんばらない宣言における時間、余裕と安らぎなどを大事にするという価値観のもと、地域の個性を十分に生かした地域づくりを進めていくという視点は、各学校がゆとりの中で特色ある教育活動を展開するというゆとり教育の考え方と通ずるものがあり、重なるものと認識しております。
〇49番(佐々木俊夫君) いろいろ御答弁ありがとうございました。どうもかみ合わない、ゆとりの中で頑張らなけりゃいかんのですよ、私はそう思うんです。
 くどくなるんですけれども、先ほど知事は、これは一つの見方を提案したんだとおっしゃるのですが、知事は評論家ではないんです。岩手県を代表する県知事なので、その県知事の言というのは、やっぱり非常に影響力も大きいし、権威もあるもの、私はそう思っております。経済的な側面から頑張らないようにしようという立場の方もあれば、経済的な側面があるから頑張らなきゃいかんのだ、我々が頑張らなけりゃ生きていけないのだ、こういう立場の方もあるわけでございますので、両面あると思うのであります。
 いずれにしろ、私は極めて雑駁、常識的なことを申し上げますけれども、この議場におられる方はどなたでも、学校の運動会に行きますと、頑張れ、頑張れと言いますよね。だれだって、相手に負けるな、勝て、全力を尽くせ、努力せよ、こう言って声をからして叫ぶはずであります。そんな意味じゃないよと知事は思われるかもしれませんけれども、いずれにしろ、だれだって我が子に頑張るな、頑張らないで相手に負けて譲れ、こんなことを言う親はないはずであります。
 また、まだ知事は態度を表明しませんが、我々も来年の選挙になりますと、選挙区の方々は頑張れ、頑張れと言ってくれる。頑張りません、頑張るなと言う人はないのであります。私どもはそういう励ましに乗って、自分の信念を貫こうとして努力をして、できるだけ当選したい、こう思うわけであります。
 よく知事は農村に行かれます。新聞、テレビによく出まして、大きな機械に乗って田植えをされるんです。ところが、あれは一部であって、あそこに至るまで、農民の方々は朝早く、暗いうちから起きて、苗代をつくったりいろいろな作業を積み重ねておってあそこに来るわけであります。農民の方々も裏の方では大変頑張っている。そしてまた、できるだけ頑張っていい米をつくりたい、量をたくさんつくりたい、こういう大きな背景があるわけであります。これはすべて私は頑張りだと思っております。
 また、この間は宮古の方に行かれワカメの加工作業をされたということでありますが、これも、やっぱりワカメを生産するためには、漁民は、朝3時ごろです、もっと暗いうちから起きていって数カ月、あの荒波の中でつくり上げたものが市場に上がって、あそこで加工する、あれは一部なわけであります。これを支えているものは漁民の頑張りである、私はこういうことを思うわけでありまして、やっぱりこのがんばらない宣言というのはどうも問題があって、私はしっくりしない。
 もちろん、教育界、教育問題においてしかりであります。ただ、これはもう哲学論争的になりますのでここでやめまして、あとの決算特別委員会とか予算特別委員会でじっくりとひとつ教育長の御見解をいただくことになるわけでありますが、いずれ、私は大変大きなこと、これを一つの論点として出したではちょっといかがなものかという疑問を申し上げておきまして、私の再質問を終わります。

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