平成15年2月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇48番(菊池雄光君) 社民党の菊池雄光でございます。
 私は、1975年――昭和50年の統一選挙で県議会に初当選し、早速6月県議会で一般質問に立たせていただきました。御承知のとおり、今期を最後に県議会を去りますが、その最後の県議会で一般質問に立たせていただきまして、まことに感無量でございます。何分にも同僚議員の皆さんに心から感謝を申し上げます。私は今回で一般質問、代表質問合わせて21回目の登壇となります。千田知事、中村知事、増田知事と御三人の知事の胸をかりて駄弁を弄してまいりましたが、これに対して知事を初め、当局の真摯な御答弁を賜り心から感謝を申し上げます。
 それでは、通告に従って質問をいたします。
 最初に、平和憲法を守る立場から、今日の国際情勢のもとで平和に対する知事の考えをただしたいと思います。
 小泉内閣は、アメリカが国連の枠組みを超えてイラクに侵攻するのではないか、そういう世界各国国民の懸念をよそに、昨年12月16日、イージス艦きりしまをインド洋に派遣しました。事実上の自衛隊の海外派兵であります。そして、ことし1月14日には総理大臣として、突然靖国神社に参拝を強行いたしました。この時期に中国や韓国の神経を逆なでして、北東アジア、そして日本に何かいいことがあるのでしょうか。そして、総理も政権与党も、昨年末継続審議になっている有事立法を今国会で成立させることを最大の課題としております。20世紀、第二次大戦の侵略者として中国を初め、アジア諸国民に多大な損傷を与えた我が国が、その反省の上に、戦争を放棄し平和国家をつくることを宣言し、平和憲法をつくりました。それが半世紀を越えた今、一挙に崩されようとしております。私は青少年期をあの悲惨な戦争時代に過ごしてきた者として、平和に対する危機感を強く持つものであります。今、県議会を去るに当たって、増田知事の国際情勢の認識と、平和を守る決意の一端をお聞きしたいと思います。
 次に、経済問題について伺います。
 私は、一昨年の2月定例県議会の一般質問で、1990年代はいわゆる失われた10年と言われているとして、それに対する政府の経済対策及び地方財政を含む財政対策について、増田知事の認識をただしましたが、その後約2年を経過しますが、我が国経済の状況、景気の現状は依然として低迷し、回復の兆しがありません。これに対し小泉総理は、構造改革という特効薬で回復をさせることができると国民に訴え、公約をしてきました。小泉総理の言う構造改革とは、市場の論理のようであります。市場の論理は、競争を通じて実践をされます。いかに低いコストで生産し、安い価格で販売できるかをめぐって競争が展開をされる弱肉強食の経済社会であります。この社会では、弱者は切り捨てられ、福祉や社会保障は改悪をされ、後退をすることになるのではないでしょうか。また、小泉総理も経済閣僚も、改革なくして成長なしというキャッチフレーズで、国民の経済社会の先行きの閉塞感の原因を、ひたすら失われた成長率に求めようとしております。
 しかし、2000年の我が国のGDP――国内総生産は4.8兆ドル、同年におけるドイツ、イギリス、フランスの3カ国の合計よりも巨大であります。国民1人当たりのGDPも先進工業国では、ルクセンブルクに次ぐ第2位、同じく第4位のアメリカをしのぐ高さであります。むしろ視点を変えれば、行き詰まっているのは、持続的な成長を前提にした既存の制度や慣習の方であり、成長ではなく分配に軸足を移した上で制度を再構築していけば、成長率が回復しなくとも、人々に安心を提供できる福祉社会を築けると思いますがいかがですか。
 本県においても、この長期不況の中でたくさんの問題がありますが、雇用問題について伺います。
 県は、02年度から04年度までの3年間で、臨時と常用をあわせて2万1、000人の雇用創出を目指した雇用対策を立てております。この雇用対策、目標には異論がございませんが、雇用実態が短期的、不安定であります。これは代表質問でも指摘をされました。01年度に行った緊急地域雇用創出特別基金事業では、正規雇用に結びついたのはわずか1人であったという県の調査がマスコミで報道されております。せっかくの特別交付金を活用した雇用創出事業ですから、もっと常用雇用を創出する努力が必要であると思います。この制度の雇用期間は6カ月未満でありますが、雇用実績を見ますと実際は40数日しか働いておりませんし、期間満了後の次の仕事の関連については何もなされておりません。もっと常用雇用を創出する努力をすべきではないでしょうか。
 第2に、国の制度として中小企業に対し失業者の増加を防ぐため、かなりの種類の助成金制度があります。しかし、事業者がこれらを知らないために余り恩恵を受けておりません。労働局などの国のセクションはもちろんですが、県や市町村もこの制度の周知徹底を図るための努力をすべきであると思いますがいかがですか。
 次に、財政について伺います。
 国の財政とともに、地方財政は最悪の状態にあります。自治体財政は、本県の今年度予算のように基金の取り崩しとか財源対策債などで黒字に粉飾しているにすぎません。この根源は、少なくとも本県財政については、多くは国の財政運営に起因をしております。しかし、この厳しい本県財政の実態を認識する上で、二、三お伺いいたします。
 第1は、財政指標で経常収支比率が90%を超えると財政危機であると言われております。本県の場合、経常収支比率が平成13年度90.4%と90%を超えました。平成4年から平成7年までは70%台で健全財政を誇ってきた本県が、危険水域に達した理由と健全化対策をどのように考えておられるかお伺いいたします。
 第2に、自治体財政の分析は単純で、一般会計のみの形式的収支ベースでありましたが、本県は2000年度に初めてバランスシートや行政コスト計算を策定し、近代化を図りました。しかし、これによって広範な分野の財政が明確に表現されたということではありません。むしろわかりにくくなったという指摘もあります。連結バランスシートは、当然資産と負債の部に分けられております。資産の部には、道路とかダムとか港湾など公共事業によって建設されたインフラ整備から減価償却を差し引いた累計額が計上されております。この資産は、当然売買のできない形式上の資産です。負債は、県債や企業債残高でいずれも連結バランスシートになったから特別会計の分析が明確になったという要素は余りないのではないでしょうか。例えば、先ほどもお話がありましたように、県有林事業特別会計とか肉牛生産公社のように自力で再建は困難な経営体もあります。つまり問題点が明示されておりません。土地開発公社や港湾整備事業特別会計のように、行政資産の評価が台帳方式や取得原価主義で、バブル崩壊後の地価下落でどうなっているのかということはわかりません。これらの実態と対策はいかがですか。
 第3に、市町村財政でありますが、自治体財政は破産をしない、これは一般の常識でございますが、これは一般会計ベースの話で、外郭団体の破産は全国的に続発をしております。また、外郭団体の破産が一般会計へも影響し、財政破綻に追い詰められている町村もあります。例えば、近くでは青森県大鰐町で、第三セクターのリゾート温泉の経営破綻によって一般会計にも大きい影響を与えております。県内にはそのような市町村はないと思いますが、いわゆる開発に市町村も発展をかける、こういう自治体はなしとはしませんので、適切な財政運営の指導を望むものでありますが、所感をお聞かせ願います。
   〔議長退席、副議長着席〕
 次に、地方分権について伺います。
 私は、平成7年地方分権推進委員会が発足してから、一般質問を通じ毎回地方分権に対する知事の所見をただしてまいりました。一昨年6月、推進委員会の最終報告が出されました。この報告では、地方への税財源の移譲、交付税対応など地方財政の確立が記載されておりましたが、何ら抜本的な対策は示されておりませんでした。2000年4月、地方分権一括法が施行されました。このような大きい変化の中で金の問題で変わったのは次の2点だけであります。
 第1に、自治体が借金をする場合は、これまでは国の許可が必要でありましたが、それが協議制に変わったことです。協議が調わなければ、民間の銀行から借り入れることはできますが、公的資金の借り入れは国の同意が必要で許可制と変わりません。第2に、自治体が法定内の目的税や普通税を新設したり変更する場合も国の許可が必要であったのが協議制に変わりました。しかし、総務大臣の同意を得なければなりません。許可を同意と言葉を変えただけで、実際には何も変わっておりません。また、従来からあった地方財政計画も地方債計画も現存し、地方財政は国の予算や財政計画とリンクして地方分権どこ吹く風と運営をされているこの状況を、どのように認識されておられるのか伺います。
 あわせて、昨年、第27次地方制度調査会において、今後の基礎的自治体の規模、能力は、現在の市が担っている事務を処理できる程度とし、基準となる人口規模は明示されませんでしたが、それ以下の小規模自治体については、権能の縮小、あるいは他団体への編入を想定した西尾副会長の私案が提示されたことから、特に小規模市町村はパニック状態に陥っております。西尾私案のポイントは、2005年4月以降も合併推進の期間を設け、小規模自治体の解消を目指していること、それでも残った小規模自治体については、現状のまま基礎的自治体として位置づけることは困難とし、新たな自治制度を提案していることなどの特徴があります。地方分権の受け皿としての基礎的自治体のあり方について多くの問題提起をしており、重要な地方自治権を否定した私案であると思いますがいかがですか。
 次に、道州制に対する考えについて知事に伺います。
 増田知事は、早い時期から道州制を視野に入れた広域連携に積極的なようであります。平成13年1月19日に広域連携のあり方を考える県の担当者会議後の記者会見録を見ますと、その考えを伺うことができます。我が国の地方自治体は、都道府県、市町村という二層制のまま、今、府県は、国とともに、今もお話しありましたようにかなり強硬に市町村合併を推進しております。――岩手県のことではありませんよ――府県は中二階自治だとか国の出先機関であるという性格は、地方分権以降においても余り変わっていないようであります。また、都道府県は、今や制度疲労のきわみに達しているとも言われております。現在の地方自治法は、市町村を基礎自治体として、都道府県を広域にわたる事務を処理する広域自治体と位置づけております。そして、法制的には、都道府県の市町村に対する監督権は原則として認めておりません。国と都道府県の場合も、これは同じであります。しかし、現実は分権後も余り変わっておらないのではないか。思い切った制度の改革によって道州制を目指すということは、府県の広域化というより、地方分権、地方主権の確立のために必要なことではないかと思いますがいかがですか。
 昭和32年に第4次地方制度調査会が地方制度案を提案しました。これは全国を7ないし8ブロックに分け、長官は官選とし、議員は公選とする中間団体と位置づけましたが、実質的に国の出先機関であります。その後、財界などから道州制案が出されますが、取り上げられませんでした。平成になって学者グループやマスコミなどがそれぞれ州府制構想を提起しておりますが、その中に連邦制構想があります。これは、州政府は、社会資本整備や環境政策、産業、雇用、医療、文教政策などを行い、州に裁判所を置く。そして、この州政府が連邦政府をつくる。市町村は、教育福祉など住民に身近な業務のほとんどを実施する、こういうものであります。この制度は、国家権力が分散され、何よりも市町村や住民の地方分権、地方主権が確立される最も理想的な制度ではないかと思いますが、知事の考えを伺います。
 次に、バイオテクノロジーと遺伝子組換えについて伺います。
 国は、ITの次に到来するのはバイオ革命であるとして、バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針を、平成11年1月、関係閣僚会議で申し合わせをしました。岩手県は平成12年11月、新岩手県科学技術振興指針を策定し、バイオテクノロジー分野の研究開発の推進研究開発プロジェクトの充実強化を推進しようとしております。そして、農業においては、遺伝子組換え、細胞融合、細胞培養などのバイオテクノロジーを駆使した作物の研究開発を推進しようとしております。しかし、遺伝子組換え食品に対しては、県民、国民の中に不安や問題点がいろいろと出されております。推進派は、それは非科学的だと言っているようですが、今、環境への影響、食品の安全性などで論争が広がっております。
 注目されるのは、遺伝子組換えによってどういう性格を植物に与えたかという点でありますが、一番多いのが除草剤耐性の性格であります。2位が耐病性、3位が殺虫性、4位が貯蔵性、5位が栄養となっておりますが、上位3位でほとんどを占めております。なぜこれが多いかと言いますと、その省力化によるコストダウン効果の大きさにあります。そして、この種苗を開発生産している企業が除草剤もつくってセットとして売り莫大な利益を上げています。
 遺伝子組換えの問題はいろいろとありますが、まず環境に与える影響であります。例えば、花粉が飛んだりして組換え遺伝子が在来種や雑草などに広がってしまうと遺伝子汚染が出てきます。また、除草剤耐性の花粉が飛んで野生種と交雑し、除草剤が効かないスーパー雑草が出現をしています。また、遺伝子汚染によって、生物の多様性が失われる可能性も指摘されております。多様性が失われると自然そのものが脆弱になってしまいます。食べ物としての安全性は一番難しい問題です。安全なら食べてもよく危険なら食べなければいいわけですが、安全か危険かの状態をどう評価するかという問題です。外国ではいろいろな実験結果が出て、組換え食品の安全性評価全体を考え直すべきだという指摘がされております。2001年4月から遺伝子組換え食品の表示が始まりました。表示義務のある食品でも使用表示は見当たりません。これは、遺伝子組換え作物が大量に使われている油やしょうゆが表示の対象から外されたこと、5%未満の遺伝子組換え農作物は使用表示をしなくてもよいことになったということで、表示制度に問題があるからです。BSEの問題や雪印の問題で食と農政に対する国民の厳しい批判がある今、消費者の知る権利に行政は十分こたえる必要があると思います。遺伝子組換え農作物の表示制度についてどうお考えですかお伺いします。
 遺伝子組換え食品の開発が進められる中で、この種苗を生産販売する企業は莫大な利益を上げ、企業の寡占化、独占化が進行し、関連企業に莫大な利益をもたらしております。このまま遺伝子組換えによる農業が進行しますと、開発途上国や我が国の農業は壊滅的な打撃を受けることになると思います。岩手県ももちろんそのとおりであります。WTOでは、遺伝子組換え食品の生産国は、遺伝子組換えをした植物は新種として知的所有権があるという考え方に立っています。それに反発して発展途上国側は、多くの食物の原種が発展途上国にあるため原種の権利があるとの立場で対立しております。
 21世紀の食料問題の解決を目指して始まった農業における遺伝子組換え研究、バイオテクノロジーですが、裏を見れば新種開発にしのぎを削る種子戦争で、これに勝って途方もない利益を上げる一部先進国と独占企業が世界の農業を支配するという結果になるのではないでしょうか。私は、県の科学技術振興指針における農業分野のバイオテクノロジーの推進については、慎重な検討、見直しを望むものでありますが、同時に、農業分野における遺伝子組換え研究に対する県の認識をお伺いいたします。
 これをもって私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 菊池雄光議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、国際情勢と私の平和に対する認識について申し上げます。
 平和というものは人類普遍の願いでございまして、特に、さきの大戦で唯一の被爆国として、平和がいかに大切か、戦争というものがいかに人類を悲惨な状況に追い込むかということを痛切に体験して、二度と子供たちを戦場に送らないという誓いのもとに再出発をした我が国でありますので、我が国は国際貢献というものを基本として、今後とも積極的に異文化理解や、そして国際協力に努めるべきものと考えるわけでございます。最近の国際情勢は激動の様相を呈しておりまして、特にイラクの問題、そして北朝鮮の問題など国際秩序を脅かす問題が顕在化してきているわけでございますが、特にも、御案内のとおり、ここ数週間という極めて接近した中で、アメリカのイラク攻撃に対する緊張感も高まっているわけであります。
 こういうときに、私は、21世紀の国際平和というのは、全地球的な立場からの国際協調を基本理念とすることで成り立つものと考えておりまして、今、平和憲法を有する日本に最も求められているものは、過去の貴重な、そして悲惨な経験を生かして、平和に対する国民的コンセンサスを明確にして、外交理念を確立し、全地球、全人類のために積極的に国際協調の担い手の役割を果たしていくことだ、このように認識しているところでございます。
 次に、西尾私案についてでございますが、合併特例法の期限である平成17年の3月いっぱいという期限以降、すなわち平成17年4月以降も、目標とすべき人口規模を法律で明記し一定期間強力に合併を推進することや、期間終了後、合併に至らなかった一定の人口規模未満の市町村について権限を縮小あるいは他団体へ編入することなど、将来の基礎的自治体のあり方について重要な問題提起を含んだ内容と認識しております。特にも、この西尾私案――西尾プランというものは、一定の人口規模未満の市町村を一律に取り扱うということのようでございまして、その後、言い方も少し説明を加えていろいろお話しになっているようでございますが、今言ったような一定の人口規模未満で一律に取り扱うといったことがもしなされるということであれば、これは大変なことでありますし、特に慎重に議論されるべきと考えております。
 現在、第27次の地方制度調査会で議論しておりまして、今申し上げました西尾私案をたたき台として基礎的自治体のあり方についての検討が進められて、もう来月――3月にはその中間報告が出される予定と聞いているんですけれども、これについては、やはり憲法に規定しております92条の地方自治の本旨を十分に踏まえて、それから、我々地方団体の意見も一方で十分に聞いていただいて、こうした場での検討の過程においてはさまざまな角度からの議論が行われるべきものと考えております。
 それから、地方主権確立のための統治機構のあり方、道州制や連邦制なども含め、いわゆる統治機構のあり方についてお尋ねがございましたが、自己決定、自己責任の原則に基づいた地域主権型の社会を確立するためには――これはいわゆる補完性の原理と言っておりますけれども――、住民に最も身近な市町村が行政の中心的役割を担う体制をとる必要があると考えておりまして、県からの大幅な権限移譲、もちろんそれには国からの移譲ということが前提にありますが、地方団体の中でも県からの大幅な権限移譲等によって市町村が主体的に行政を行っていくことが重要だと考えています。その結果、県は役割が変わってまいりまして、市町村を補完、支援する機能や、より広域的な行政課題に対応する機能などに転化していくことになるわけでございますが、これからの都道府県のあり方を考える上で最も重要なことは、こういう地域主権型の社会を確立するという観点から、やはり国と地方の新しい関係を築いて、それにふさわしい枠組みを構築していくことと考えております。国と地方の関係を、今の前提を全くがらっと変えることが必要ということでございます。
 そのためには、単に行政区域の変更や行政区域の拡大にとどまることのないよう、大きく大胆に国と地方の役割分担を見直すなど、徹底した地方分権改革の方向での改革の推進を図るとともに、住民との協働、住民やNPO、それから民間企業などと協働して制度設計について議論していくことなど、地方の自立に向けて、地方が主体的に取り組んでいくことが不可欠と。地方の統治制度については、国が議論して中身を用意するのではなくて、住民やNPO、民間企業などと協働して制度設計も行っていく、地方が主体的に取り組んでいくことが不可欠であると考えております。
 都道府県のあり方ですけれども、我が国の統治機構を変革する大変大きな国家的な課題でありまして、十分な議論を踏まえて検討すべきものと考えておりますが、今の地方制度調査会などでの動きもございますし、制度設計ということになれば、今言ったような地域主権型の社会を確立するという観点に立って、さまざまな選択肢をそうした中では用意しておいていただいて、それぞれの地方にふさわしい制度を地方みずからが選択できる、そういう自由度、柔軟性の高い仕組みとしていただくことが必要だと考えております。
 それから、連邦制についてもお話がございましたが、これも考え方としては大変魅力的な考え方と思っておりますが、連邦制については、立法権や司法権などについても当然それぞれのところに移すことが前提となっているわけでございまして、そこまでの議論になりますので、今の憲法が単一主権国家を前提として成り立っている、そういう現行憲法の改正にまで踏み込む話だろうと。そういう改正も伴う話だろうと思いますので、これについては、改正ということになりますと相当慎重な議論を要する、こういうふうに考えているところでございます。
 その他のお尋ねにつきましては関係部長から答弁させますので、御了承お願いいたします。
   〔総合政策室長佐藤勝君登壇〕

〇総合政策室長(佐藤勝君) 人々に安心を提供できる社会を築くことについてでありますが、国におきましては、いわゆる骨太の方針に基づき、目下、聖域なき構造改革に取り組んでいるところでありますが、我が国の経済活性化を図るための抜本的な改革にはいまだ至らず、依然として日本経済は長期にわたる低迷を続け、厳しい雇用情勢を生み、さらには、社会保障制度の持続可能性への不安や、財政赤字の拡大とそれによる将来への不安などが強く叫ばれております。加えて、低経済成長や人口減少の社会の到来といった経済社会を取り巻く大きな変化を目の当たりにして、今後、果たして安心して暮らしていけるかどうか、今までより難しくなっていくのではないかと国民の多くが懸念している状況にもあります。
 このような事態を回避するためには、何よりも日本経済の活力が回復し、維持されることが重要であろうと考えます。そのためにも、現在、国が進めております金融システム、税制、規制及び歳出の四つの改革を初めとするさまざまな対策を的確に進め、早期に社会経済の活性化が図られ、その上で社会経済的に必要な財、サービスの供給や各種の社会的保障の充実を一層図るなど、多様な行政ニーズに対応し、国民生活の安定に向けたさまざまな政策が的確に行われていくことが大事であると考えております。
 そこで、県といたしましても、こういうことを踏まえまして、今日の、そして今後の経済社会の動向をしっかりと見据え、技術革新などによる生産性の向上や、20世紀の尺度ではともすれば評価されなかった新しい多様な価値観による産業の創造を図っていくなど、生活者や地域の視点に立ったさまざまな施策を着実に進め、県民が真に安心して暮らせる地域主権型の社会形成に努めていくことが重要であると考えております。
   〔商工労働観光部長照井崇君登壇〕

〇商工労働観光部長(照井崇君) まず、常用雇用の創出についてでありますが、県では、国の交付金により造成した基金等を活用して臨時、応急の雇用創出を図るとともに、経営革新に取り組む中小企業への支援やベンチャー企業、コミュニティ・ビジネスの育成、さらには、情報サービス、物流等の雇用吸収力の高い産業分野を中心とした企業誘致などのさまざまな取り組みを通じ、常用雇用の創出、拡大に努めているところであります。
 国の交付金事業は、県や市町村において緊急かつ臨時的な事業を起こし、これを主に民間企業などに委託して実施しておりますことから、事業終了後直ちに民間企業などの常用雇用に結びつけていくことはなかなか難しいものがありますが、この事業により雇用された方々を雇用期間終了後も引き続き雇用していただけるよう、受託企業などに配慮をお願いしているところであります。
 もとより、より多くの方々をその就業経験を生かして安定した雇用につなげていくためには、地域産業の活性化により就業の機会を拡大することが何といっても重要でありますので、県単独で造成した基金を活用した緊急雇用対策施設等整備奨励費などの雇用創出事業や産業支援機関のネットワークによる新事業創出支援などさまざまな産業振興施策を積極的に展開し、一人でも多くの常用雇用につなげてまいりたいと考えております。
 また、国が雇用促進のために設けている事業主向けの各種助成金は、その内容や手続がよくわからないとの声もあることから、昨年11月に岩手労働局や関係機関・団体と県が連携し、共同説明会を県内10カ所で開催したほか、各地方振興局において、地域雇用相談員が企業訪問などを通じて制度の周知に努めるとともに、本年1月に設置した就職支援センターの窓口においても情報提供を行っているところであります。
 今後とも、岩手労働局を初め、関係機関・団体や市町村と密接な連携を図りながら、雇用促進を図るための助成金制度が十分活用されるよう周知に努めてまいります。
   〔総務部長小原富彦君登壇〕

〇総務部長(小原富彦君) まず、県財政における経常収支比率についてでありますが、この指標は、県税、普通交付税などの毎年度経常的に収入される一般財源が、人件費、扶助費や公債費のように経常的に支出される義務的性格の強い経費にどの程度充当されたかをあらわすものでありまして、その比率が高いほど財政が硬直化していることを示すものであります。
 この比率が悪化した主な理由は、計算式の分子に当たる人件費や扶助費、公債費が増加しているのに反して、分母に当たる県税、地方交付税が、長引く不況や国の構造改革の影響などにより大幅に減少してきたことによるものであります。この傾向は全国的なものでありますが、平成13年度決算で見ますと、全国平均が88.9%で、90%を超えるのが18団体ありまして、この18団体のうち、最悪である大阪府103.1%から数えて、本県の90.4%は16番目となっております。
 本県の場合、特に公債費が要因となっておりまして、これは、国の経済対策に呼応した補正予算債あるいは地方財源不足対策としての財源対策債、東北新幹線や県立大学の整備に伴う県債等の発行により償還額が近年急激に増加してきていることによるものであり、今後とも増加が見込まれる厳しい状況にあります。
 このような中にあって、本県が真に自立する地域として発展していくためには、総合計画に掲げる主要な施策や新たな行政課題等に対して機動的に対応できるような財政の柔軟性を確保していくことが求められております。このため、県債発行の縮減を基本としながら、歳出全般の厳しい抑制と歳入の確保に向けた、数値目標を具体的に定める財政健全化プログラムを策定し、総合的、計画的に健全化対策を講じていく必要があると考えております。
 次に、バランスシートの作成の実態と今後の対策についてでありますが、バランスシートは、資産と負債というストックを表示するものでありまして、現金・預金や道路等の社会資本を含め、後世に引き継ぐ県民の財産と、県債や将来支払われるべき退職手当等、後世の県民の負担をあらわす財務資料として有効なものであります。
 本県では、平成12年度決算から、普通会計、公営企業会計及び出資法人等まで連結したバランスシートを試作するなど、より財政の全体像を県民の皆さんの前に明らかにできるよう努めてきたところであります。
 個々の特別会計や出資法人等の財務状況をあらわす上では、それぞれの特別会計や法人会計においてバランスシートを作成して対応することが望ましいわけでありますが、特別会計あるいは出資法人等の会計においては、全面的には発生主義会計に移行していないのが現状であります。財政状況が一段と厳しさを増している現在、特に経済社会情勢の変化を踏まえ、これら出資法人等の存在意義や、あるいは運営方法の見直しが重要な課題となってきており、その意味からも、資産や負債の状況を明確にするとともに、真のコストを把握できる財務諸表の作成が不可欠であります。
 したがいまして、今後、これら出資法人等について、発生主義会計の導入や改善を図る必要があるものと考えており、さらには、県の一般会計においても政策分野別に資産、負債等の財務状況を明らかにする必要があり、そのためには、各部門ごとのバランスシートを作成し、政策別のコスト等を把握、管理していくことが重要になってきているものと考えております。
 今後は、これまでの試作の成果などを踏まえ、県全体の財政状況を分析し、管理する財務資料としてバランスシートの本格的な導入に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、地方分権についてでありますが、平成12年4月に地方分権一括法が施行され、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営が行えるよう、その財政基盤を充実・強化する観点から、地方税や地方債について、許可制から協議制に移行することとされたところであります。
 まず、地方債については、平成18年度から、総務大臣の同意がなくても、その旨を事前に議会に報告すれば縁故資金である県債を発行することが可能となりますことから、県みずからの判断と責任において資金の調達ができる道が開けたものと考えております。
 また、地方税につきましては、平成12年度から、課税自主権の尊重という観点から事前協議制として法定外目的税が新たに創設され、法定外普通税の新設や変更についても協議制に改められたところであります。
 税の創設等に当たっては、その性格上、租税負担の公平性が求められ、国税との調整や国の経済施策との整合性を図ることなどが必要となることから事前協議による国の同意が前提となりますが、許可制に比較して住民の受益と負担の関係が明確になり、また、課税の選択の幅を広げることにつながるものと考えております。
 地方分権一括法の施行後は、これらの協議制に加え、機関委任事務の廃止や総合補助金の拡充など、地方団体の自主性や自立性の向上につながる制度改正がなされてきておりますが、真の地方分権は、地方みずからの発想により、地域の実態に即した独自施策を自己決定、自己責任の原則のもとに実施できるような財政基盤が確立されることによって初めて達成されるものであり、その意味では、ややもすれば国の構造改革が国自体の財政改革に力点を置いているように見受けられ、真に地方の立場に立った取り組みとなっているのか懸念されるところであります。
 現在、国におきましては、国庫補助金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方について三位一体で改革を推進することとし、本年6月までに改革の道筋を明らかにすることとしておりますが、これらの動向を注視しながら、あるべき地方税財政制度が実現できるよう、地方の立場から積極的に発言をしてまいりたいと考えております。
   〔地域振興部長飛澤重嘉君登壇〕

〇地域振興部長(飛澤重嘉君) 第三セクター等と市町村財政についてでありますが、県内市町村が出資する第三セクターは、昨年1月1日現在で173法人ございます。そのうち平成13年度決算を見ますと、その約6割に当たる106法人が黒字となっておりますが、全法人の累積収支額を見ますと、前年度に比べて赤字額が約13億円増加しております。そういう状況でございますので、第三セクターの経営状況は厳しいと認識いたしております。
 申し上げるまでもなく、第三セクターの経営は、第一義的には法人みずからの判断と責任において行われるべきものと考えておりますけれども、県内市町村において、過去に第三セクターの経営破たんによりまして財政支出を余儀なくさせられたケースがございましたので、県といたしましても、市町村に対して、第三セクターの経営状況の点検評価を定期的に行い、経営状況に関する情報開示を積極的に進めるよう、行財政事務調査などの機会を通じまして従前から助言をしてまいったところでございます。
 今後におきましても、市町村の財政運営に支障を来すような事態が生じないよう、第三セクターの健全な運営の確保に向けた情報提供や助言を適切に行ってまいりたい、そのように考えているところでございます。
   〔農林水産部長佐々木正勝君登壇〕

〇農林水産部長(佐々木正勝君) 遺伝子組換え農産物の表示についてでありますが、いわゆるJAS法に基づく品質表示基準において、我が国で流通している遺伝子組換え農産物については、すべて遺伝子組換えと表示することが義務づけられております。また、これら遺伝子組換え農産物を原材料とする加工食品につきましても、加工後に組みかえられたDNAや、これにより生成したたんぱく質が確認されるものについては義務表示の対象とされております。しかしながら、しょうゆのように原材料のたんぱく質がアミノ酸に分解されていたり、大豆油のように油分のみが利用されているものについては、製品の中に原材料に由来する組みかえられたDNAなどが全く残っていないか、残っていても極めて微量でありますことから、現在の分析技術ではその存在が確認できませんので、表示義務の対象とはなっていないところであります。
 こうした中で、国におきましては、遺伝子組換え食品に対する消費者の関心が非常に高まっておりますことを踏まえまして、表示対象品目について毎年見直しを行っております。例えば、新しい遺伝子組換え農作物について、安全性が確認され流通する場合や分析技術の精度向上によって組みかえられたDNA等の検出が可能となった場合には、これらを対象品目に追加することとしております。
 県といたしましては、消費者の納得が得られる表示制度を確立することが重要であると考えておりますので、科学的な分析手法の早急な確立などを国に提案しているところであり、今後におきましても引き続き要望してまいる考えであります。
 次に、農業分野における遺伝子組換え研究に対する県の認識についてでありますが、遺伝子組換え技術は、従来の品種改良技術に比べ、広い範囲の遺伝資源を活用でき、また、目的とする性質だけを付与できますことなど大きな可能性を持った技術でありますことから、現在、世界各国において取り組みが強化されており、アメリカを初め、ヨーロッパにおいてもフランスやドイツなどで組換え農作物の研究が活発に行われております。
 我が国におきましては、これまでも国や都道府県の試験研究機関、企業等で研究・開発に取り組んできたところでありますが、このような国際的な動向を踏まえ、国におきましては、昨年12月にバイオテクノロジー戦略大綱を策定し、消費者メリットのある遺伝子組換え農作物の開発などに積極的に取り組むこととしたところであります。
 県といたしましては、激化する産地間競争に打ち勝つため、商品性の高い独自品種の開発などにおいて、遺伝子組換え技術を初めとするバイオテクノロジーが有効な技術であるとの考えのもとに、県の科学技術振興指針においても重点研究分野として位置づけているところであります。こうした観点から、生物工学研究センターにおいて、耐冷性やいもち病抵抗性にすぐれた稲、斑点落葉病に抵抗性を持つリンゴ、また、新しい色のリンドウなどの遺伝子組換え品種の開発、各種作物の病害診断技術の確立、遺伝子機能解析技術の開発などに取り組んでいるところであります。
 こうした組換え農作物などの開発に当たりましては、その安全性の確認が何にも増して重要でありますので、国の指針、審査基準に基づき試験を実施する必要がありますが、いずれにいたしましても、実用化、商品化につきましては慎重に判断してまいりたいと考えております。
   

〇副議長(瀬川滋君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時32分 休 憩
   

出席議員(42名)
1番 柳村典秀 君
2番 飯沢匡 君
3番 前田隆雄 君
4番 及川敦 君
5番 樋下正信 君
6番 照井昭二 君
8番 工藤大輔 君
9番 川村農夫 君
10番 佐々木順一 君
11番 佐藤力男 君
12番 阿部静子 君
13番 阿部富雄 君
14番 田村誠 君
15番 岩城明 君
16番 柳村岩見 君
17番 小野寺研一 君
18番 千葉伝 君
19番 及川幸子 君
20番 阿部敏雄 君
22番 小野寺好 君
23番 斉藤信 君
24番 伊沢昌弘 君
25番 田村正彦 君
26番 上澤義主 君
27番 瀬川滋 君
28番 佐々木大和 君
29番 水上信宏 君
30番 谷藤裕明 君
31番 藤原泰次郎 君
32番 菊池勲  君
33番 佐々木一榮 君
34番 伊藤勢至 君
35番 高橋賢輔 君
36番 小原宣良 君
37番 長谷川忠久 君
38番 千葉浩 君
39番 吉田洋治 君
40番 工藤篤 君
41番 菅原温士 君
44番 折居明広 君
45番 村上惠三 君
48番 菊池雄光 君

欠席議員(5名)
7番 吉田昭彦 君
42番 佐藤正春 君
46番 藤原良信 君
47番 及川幸郎 君
49番 佐々木俊夫 君

説明のため出席した者
休憩前に同じ

職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   

午後3時51分 再 開

〇副議長(瀬川滋君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。照井昭二君。
   〔6番照井昭二君登壇〕(拍手)


前へ 次へ