平成19年6月定例会 第2回岩手県議会定例会会議録

前へ 次へ

〇25番(飯澤匡君) 政和・社民クラブの飯澤匡でございます。
 今定例会に代表質問の機会を与えていただいた先輩・同僚議員各位に、心から感謝を申し上げます。
 改選後、我が会派、政和・社民クラブは、9人の議員で構成される会派として再結成されました。この任期は、岩手政和会が提示したマニフェストを軸にしながら、政策立案機能をさらに高め、地方自治が二元代表制であることを十分に認識しつつ、県勢発展のために政策提言を積極的に行い、県議会における第三極の存在意義が発揮できるよう努力してまいる所存でございます。
 新知事におかれましては、45万の県民の信任を得て見事当選されました。支持をした県民から若さや識見等を評価されたものと考えますが、本県の抱える諸問題解決のため、さらに時代を切り開くフロンティア精神で、知事のリーダーシップに期待をいたすものであります。
 我が会派は、あくまでも政策を中心に据え、政策が県民本位であることをチェックし、知事が提案する政策に対しては、是々非々で臨んでまいります。
 最初に、知事の政治姿勢と地方分権改革の考え方についてお伺いいたします。
 知事は、行政の長としての職務については、公正中立のスタンスで臨むことを言明した一方、政治活動には自由にやらせてもらうと5月8日の記者会見で述べております。我が国の地方自治制度では、知事は予算編成権、予算提案権、執行権をあわせ持つ強大な権力を有したストロングガバナーであります。知事は、首長が政党に関与することに対して他国の例を引き合いに出しておりますが、合衆国では、首長と議会の権限の機能分担がされ、また自治体においては、行政職をシティーマネジャーにゆだねるなどの方式も採用されております。議員が首長を兼ねるヨーロッパ諸国で見られる方式も、与党と野党でも、基本的な政策は合致させた上での兼職が許される等、そもそも民主主義が発展する過程が異なり、安易な比較はできないと考えます。
 法律で定められている規制がある以上、知事が申すとおり、権力は抑制的に行使されなくてはなりません。行政職と政治家の発言を使い分けるといっても、知事の口は一つであります。ストロングガバナーであるがゆえに、県民の利益を優先すべきであり、政治的活動、発言に十分に留意すべきと考えますが、いかがでありましょうか。
 また、政党政治に関連して知事は、地方分権は政治の分権であり、地方に政党政治を打ち立てなければ地方分権はあり得ないと明言しております。これは、政党に所属せず、あえて独立を保ち地方議員の活動を行っている者に対して、分権社会には議員としての存在意義はないということでしょうか。現在散見される国の政局論争にまで地方政治が巻き込まれることが地方分権なのでしょうか、その真意をお尋ねいたします。
 北川正恭前三重県知事は、このように申しております。民主政治はポピュリズムに、大衆迎合に陥りやすい。だから、その欠点を補う努力が必要だと。
 分権社会は、自己決定・自己責任の依存しない自立社会の構築がねらいであり、地方政治家は、欠点を補う努力をローカルマニフェストに象徴されるような、すなわち地方の課題に立脚した政策で住民に問い、住民との共通の課題認識のもと、信頼関係を通じ政治活動を行うのが大前提と考えます。政党ありきが分権社会の大前提とのお考えは、知事の言う自立と共生とは矛盾すると考えますがいかがでしょうか、御所見を賜ります。
 知事がマニフェストで掲げた2大戦略についてお伺いいたします。
 新地域主義戦略についてお伺いいたします。
 知事は、地域の自立性と独自性を高めていくために分権を推進し、県内4広域振興圏に、行政の完結性を高めるために、従来から行っていた権限移譲をさらに強化し、県と市町村が協力していくこと、基礎的自治体の市町村を構成している住民自治の基礎となるコミュニティを支援することを高らかに掲げました。
 私は、これからの地域づくりの重要なポイントは、グローバリゼーションとローカリゼーションが同時に進行できる体制をつくり上げること、すなわち広域化と狭域化を念頭に置くことを基本に据え、地域づくりの企画と実行を図るべきであると考えております。その意味において、新知事が、グローバル化の対極にあるコミュニティの再生、活性化に力点を置く政策を柱に据えたこと、また、早速6月補正予算に草の根コミュニティ再生支援事業を導入したことに対して、一定の評価をいたしたいと思います。
 自治の機能は、国、県、基礎的自治体、住民の4階層システムに分類され、おのおのの役割分担があります。住民の身近にある基礎的自治体が行政の担い手の主軸であることは言うまでもありませんが、4階層目の住民の担う機能と権限が大きくならないと、真の地域主権の確立は望めません。特に、市町村合併をした自治体では、今後、一定の自治権を持った組織を置き、自治体内分権という踏み込んだ議論がなければ、広域合併のデメリットばかりが強調される可能性があります。自治システム全体の一体的な機能を連動させるには、県の役割は重要と考えます。
 そこでお伺いいたします。質問の第1は、知事は、岩手四分の計にて広域圏の完結性を高め、おのおのの広域圏は将来の自治体とすることをマニフェストでうたっておりますが、これは、今後の市町村合併論にも影響を与えるものと考えます。知事は、どのようなスタンスで市町村合併に臨まれるのかお示し願います。
 質問の第2は、草の根の概念についてであります。知事は、自らの衆議院議員選挙時に、ツールとして草の根という言葉を好んで使ったようでありますが、今回の草の根という言葉の概念が地域の発展にどのようにかかわるのか、知事が考えている草の根の概念の真髄をお知らせいただきたいと思います。
 質問の第3は、自治体内分権に対する県の基本的な考えを示すと同時に、狭域化実現のための住民自治組織はどうあるべきかお示しください。
 また、私は、昭和の大合併前の小学校区単位である旧村単位が、最も住民の帰属意識が強く、住民自治組織を設置するのにも最もふさわしいと考えるものですが、合併した自治体において、草の根コミュニティを支える旧町村単位の住民自治組織の検討を県においても主導的に行う必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 質問の第4は、知事が所信演述で明らかにした岩手分権推進会議についてであります。この会議は、分権社会にふさわしい行政システムの構築に取り組むとされていますが、具体的な検討内容について、特に議論する範囲が県、基礎的自治体、住民の三つの階層をすべて含むのかという点と、スケジュールについて明らかにしていただきたいと思います。
 質問の第5は、隣県交流についてであります。広域振興圏の端に位置し、隣県と接する地域は、広域間交流拠点として特段の振興措置を講ずるとされていますが、県南地区と宮城県との連携は、防災、病院間連携など多方面にわたる連携が不可欠と考えます。宮城県との連携について、振興策、連携策をお示しください。
 次に、岩手ソフトパワー戦略についてお伺いいたします。
 岩手の歴史、文化、岩手の心を尊重し、岩手の文化、岩手の心を積極的に情報発信していくとのお考えであります。私は、外への発信だけでなく、内なる発信、岩手の他県に引けをとらない潜在力、大局観を持って世界の舞台で活躍した先人の政治家の意思を、今の混迷した時代であるからこそ、県民が再認識することは大変有意義なことと思います。岩手の持つ空間や自然の豊かさ、貨幣にかえられない、人間が本来あるべき姿の実感、ロハスという言葉に象徴される価値観は、増田知事が提唱したがんばらない宣言にも、岩手の存在価値と通ずるものがあります。
 一方、知事は、グローバル化に対応できない格差や約2兆円の県民所得の縮小を危機という言葉で強調しておりますが、この危機と岩手の持つ経済ではかれない価値観とは相入れないものがありますが、この整合性をどのようにお考えでしょうかお尋ねいたします。
 知事は、岩手ブランドを発展させ、買うなら岩手の物、雇うなら岩手の人という定評の確立を目指すとしておりますが、具体的な確立の手だてをお知らせ願います。
 次に、県財政と予算編成の基本的な考え方についてお伺いいたします。
 国は、財政制度等審議会において、平成20年度の予算編成の基本的な考え方を示しております。国の見解は、地方はプライマリーバランスと財政収支が均衡し、債務残高は減少し、地方税収は大幅に増加しているという根拠から、地方財政にあっては、地方歳出に関してさまざまな問題が指摘されていることも踏まえつつ、基本方針2006で示された歳出改革路線を堅持し、地方歳出を厳しく抑制していくこと、また地方向け補助金、負担金の整理合理化に一層取り組むべきとしております。本県の実態とはかけ離れた根拠により地方歳出の抑制が言及されておることは、極めて不可解であります。この方針どおりとなれば、本県の財政運営上、現実的にかなりの痛手となるものであります。
 このような状況を知事はどのように感じ、厳しい財政運営を今後とも強いられる県財政運営をどのようにしていくのか、お示し願います。
 また、増田県政において、予算編成は、総合政策室の政策のもと、現行の予算編成システムが構築されましたが、今後の予算の編成システムはどのようにしていくつもりなのかお聞きいたします。
 次に、食料基地岩手の確立についてお伺いいたします。
 我が国の農業政策は、零細な農業構造が存続し、高い生産コストが生じていることを重大視し、農地の規模拡大と面的集積の促進等、補助金のあり方が生産コストの縮減に通じ、さらに合理化する方針であります。
 ことし4月からの品目横断的経営安定対策はその一環とも推察されますが、果たして本県農業の体質強化に結びつくのか疑問な点が多々あります。面積集積が困難な中山間地の農業への対策等、岩手独自の体質強化策が必要と考えます。
 また、農業を専業とする農家だけでなく、多くの兼業農家が、国土の保全をして景観の維持や環境対策に貢献してきた側面は見逃せません。知事は、この現状をどのようにとらえ食料基地の確立を図ろうとするのか、お知らせ願います。
 次に、医療資源の確保と県立病院経営についてお尋ねいたします。
 県立病院の医師確保対策について、短期的には、昨年9月の医師確保対策室の設置、臨床研修病院の指定を受けての研修医の受け入れ、ドクターバンク制度の導入など行ってきたところであり、少しずつではありますが効果が上がっていることに対して敬意を表したいと思います。中長期的には、奨学資金や岩手医科大学の地域枠の増員による医師養成事業を行っており、今後の成果に期待したいところであります。
 しかしながら、本県のみならず、医師の地域偏在の傾向は、今後とも大きく好転することは考えにくく、今後とも23もの県立病院を有する本県は、医師の確保問題が病院経営の浮沈のかぎを握ることは間違いのないところであります。今議会でも、各地域から県立病院医師の確保に関する要請、請願が相次いでおり、県民の命を守る県立病院の現行存立自体が危ぶまれております。
 これまで県医療局は、大学病院などの応援医師の派遣を要請する一方、県立病院間で医師をやり繰りし、急場をしのいでいるのが現状で、医師を引き抜かれた側の病院は、常勤医が不足し、やがて残された医師は、労働環境が悪化し開業医へと走るという悪循環に陥っています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 さらに、県内9医療圏内でも、都市部と沿岸部間などの医師の地域偏在が顕著になってきております。これは、我が国の地方の共通の社会問題と化しており、ある医師は、国家として国民に対する公平にして標準的で良質・安価な医療の提供ができない裏には、何が深層の誤謬として存在しているのか、さらには、その改革のためにはいかなる抜本的対策が必要なのかが論じられたことがない。日本の地域医療の沈没は、シロアリの虫食い現象としてますます進行していくであろうと警鐘を鳴らしております。いずれにせよ、早急な抜本的な医師の偏在解決が国策として望まれるところであります。
 そこでお伺いいたします。まず、新知事のこれらの状況認識と医師の確保を今後どのように推し進めていくのかお知らせ願いたいと思います。私は、この非常時に対応するには、当面、医療資源の連携をより深く強固にする必要があると考えており、以下、この観点を含めてお伺いいたします。
 第1に、現在、医療制度改革に対応して進めている医療計画など関連する計画策定状況についてお伺いいたします。この計画では、民間を含めた広域の医療連携体制や地域における医療と介護の連携体制の構築がうたわれておりますが、その検討内容と実行スケジュールをお知らせ願います。
 第2に、県立病院改革についてであります。現在進行中であるこの改革は、広域基幹病院をセンター病院と位置づけ、地域病院への安定した医師供給が改革の柱であると認識しております。医療の質は必ず維持するとの約束のもとに診療所化された病院もあることから、医師不足が加速的になっている背景の中で、今後、広域基幹病院の位置づけが医療局として揺るぎがないのか、改めて御認識を伺います。
 第3に、県立病院経営に関して伺います。地方公営企業の全部適用をされている県立病院は、知事が管理者を任命し、事業運営全般に係る権限が付与されておりますが、私は、最適な経営形態について検討を要する時期と考えます。適切な民間への病院移譲等、管理者が中長期的な視点で経営ができる体制構築が必要と考えますが、知事はいかなる所感をお持ちでありましょうか、お尋ねいたします。
 第4に、医療と福祉の連携に関して具体的にお伺いいたします。高齢者にとって、急性期を脱し病状が安定いたしますと、次なる福祉施設へのベッド移動の例がひんぱんにあります。地域のケアマネジャーに相談し解決を見出そうと、患者の家族はこの時点で相当な負担を強いられます。広域基幹病院等に設置されている医療相談室は、これらの相談機能にどのようにこたえているでしょうか。改正医療法においても、医療と保健サービス、または福祉サービスの連携が盛り込まれておることから、相談室をさらに拡充し、すべての県立病院に設置すべきと考えますがいかがでありましょうか、御所見をお伺いいたします。
 次に、岩手県競馬組合の運営についてお伺いいたします。
 改選前の2月定例議会では、競馬組合への融資案件について長時間にわたり議論が交わされ、結果として融資が認められ、競馬事業は条件つきで存続することになりました。存廃基準が示された今期の競馬事業の運営は、まさに正念場を迎えております。今後の競馬組合の運営方針は、赤字を出さない、売り上げの25%内でのコスト調整を図る等、競馬組合運営協議会において調整を主体にした運営が柱となっておりますが、私は、さらに一歩進んだ大胆な手法、例えば資産譲渡も含んだ動きが不可欠と考えるものであります。そこに至るまでには、構成団体間の協議などさまざまな手続を経ることとなりますが、当然のことながら、管理者としての競馬運営に対する知事の基本的な認識や思いが、大きくその意思決定に影響を与えるものと考えます。
 知事は、5月28日の競馬組合議会で、岩手競馬を守ることは、岩手の未来を守ることだ。さらに、勝海舟の氷川清話を引用して、苦しいときだからこそ調子のいいとき以上に元気よくやらなければならない。知事みずから先頭に立って岩手競馬を全国に、さらに世界に売り込んでいくとの決意を示されており、まことに立派でグローバルな考えであると感服した次第であります。
 この際、知事の岩手競馬再生に向けた基本的なみずからの考え方を明らかにしていただきたいと思います。あわせて、定例記者会見において、最終的に黒字を出すやり方を追求していくという知事の運営方針骨子が示されておりますが、コスト削減以外に知事が想定する黒字化策があるとすれば何なのか、御披瀝を願いたいと存じます。
 また、競馬法の改正を受けての改善策の策定や今後の競馬事業の運営協力をしていくことは必要不可欠であり、監督官庁である農林水産省との折衝や中央競馬会との連携は重要なポイントであると考えますが、今後どのような関係構築をされようとお考えなのか、方針をお示しください。
 我が会派は、岩手政和会マニフェストにおいて、岩手の地域資源である岩手競馬再生のため、建設的な経営改善策を積極的に提言することを挙げております。今後も厳しく競馬組合の運営体制を注視しながら、適時に提言活動を続けてまいります。
 英語教育についてお伺いいたします。
 英語力の向上は、知事が、グローバル化の時代に対応した教育立県を目指す意味において、大きなウエートを占めるものと推察いたします。私は、これまでにALTの多角的活用を提言、また、話す英語に偏重傾向にある英語指導に対して県教委に意見をしてまいりました。私は、世界がグローバル化しているという現実を生かすには、どれだけ大量に速く読んで情報を処理できるか、迅速に書いて発信できるかという、私たちが中学、高校で習ってきた、読み書きの反復練習の末習得した読み書き能力が基本にあって、その上に立った4技能、読む、書く、聞く、話すがバランスよく備わった英語力が問われているのだと思います。
 英語を習得するということは、日本語の特性を再認識することであり、ひいては我が国の文化を知ることにもなります。知事は、みずからの希望で不来方高校にて教壇に立ち、英語の出前授業を行ったそうでありますが、英語の総合力向上に対する所見と、本県を担う人材が国際社会で活躍するために今後どのような施策を展開するのか、お知らせ願います。
 小学校から英語に親しませるための実践的な取り組みを行う拠点校を今年度から設置し、段階的に全県に広げていくとお聞きいたしました。私が理念として共感する同時通訳者の鳥飼久美子氏が、小学校英語は小学校教育全般の見直しの中で検討する。人間としての基礎をつくり上げている小学校は、心を育てることを大きな使命とする全人教育であり、言葉とコミュニケーションの教育をどのように位置づけるかが肝要であるとの指摘は、傾聴に値すると思います。
 私は、決して小学校の英語教育を全否定するものではありませんが、英語だけを切り離してカリキュラム化する風潮に対して危険性を指摘すると同時に、英語の総合力向上には、小・中・高の段階的かつ系統立てた英語教育が必要と考えます。知事はどのようにお考えでしょうか、御所見を賜ります。
 知事が6本の政策の柱の一等最初に掲げた人づくりは、大事な視点です。先人が評価された岩手の誇れる忍耐強さ、寛容さ、思慮深さを涵養しながら人材をはぐくむことは、岩手が21世紀社会に通用するアイデンティティーを放つと考えます。
 私は、岩手らしさの追求をひたむきに続け、政策として実現されることを期待して、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 飯澤匡議員の御質問にお答えいたします。
 質問の冒頭、本県の諸問題解決のための知事のリーダーシップに期待するというお言葉をいただきました。頑張ってまいりたいと思います。
 まず、政治的活動との関係で県民の利益を優先すべきではないかとのお尋ねがありました。
 私は、県民の皆様の信託をいただき知事の重責を担うこととなりましたが、その県民の負託にこたえ、選挙時のマニフェストに掲げた公正、自立そして共生という理念に基づいた二つの戦略を着実に実行し、ふるさと岩手の自立と発展に全力を尽くしていくことが使命であると考えており、行政の執行においても、その他の活動においても、県民本位を貫いてまいりたいと考えております。
 次に、政党政治と地方分権についてでありますが、これまで、分権改革は行政の分権という観点からの議論が多かったと思いますが、真の分権国家の実現とは、国会と内閣で決めてきたことを地方の議会と首長で決めることであり、分権改革とは、政治の分権でなければならないと考えております。
 現代民主主義の政治においては、政党は住民の自由な政治参画の場として組織化され、その政治的意志を統合するメカニズムとして不可欠な役割を担うものであり、地方にこそきちんとした政党政治を打ち立てなければ政治の分権はなく、地方分権はあり得ないと考えるところであります。分権の必要性が地方政治においても広く認められるようになるに従い、政党に所属しながら活動する方々やローカルパーティーで活動する方々、あるいはいずれにも所属しない方々などさまざまな地方政治家の姿が出てきておりますが、それは、それぞれ個々の自由な判断でよろしいのではないかと考えております。
 国の政局論争に地方政治が巻き込まれることへの御懸念につきましては、地方における政党政治が確立すれば、地方の自立はもちろん、地方から国の政治のあり方を決めていくことも可能になると私は考えており、問題は、政党の存在ではなく、党内民主主義の成熟など、政党のあり方にあると認識しております。
 次に、政党と私の言う自立と共生との関係についてでありますが、国政は、政策本位の政党を中心とした選挙で国民が政権を選択するという形になってきており、私は、地方政治においてもこのような姿は望ましいと考えております。最近、政党地方支部が地域に密接な独自の政策を打ち出すケースがふえてきていることはその兆しと言え、逆に、地域の声を反映できない政党は支持を失うわけであり、地方におけるそういう意味での政党政治の確立が、地方の自立と共生を図る上で重要であると考えております。
 次に、市町村合併に臨むスタンスでありますが、将来的に四つの広域振興圏も自立するとともに、草の根の地域を守っていくためには、合併などによる市町村の行財政基盤の強化が不可欠と認識しております。合併新法の期限や広域振興局体制への移行との関係を考えますと、私としては、合併推進構想をたたき台として、将来のまちづくりについて、今まさに各地域において真剣に議論していただきたいと考えております。市町村合併は、最終的に住民の判断によるべきものであり、そのため県は、的確に判断できるよう必要な材料を提供してまいりたいと考えております。
 次に、草の根の地域についてでありますが、これは、町内会、自治会といった冠婚葬祭、福祉などの相互扶助機能、伝統芸能、祭りなどの地域文化の創造・保全、まちづくり、防災、環境保全等の地域課題への対応など多くの役割を担った住民の暮らしの原点、よりどころであります。草の根の地域が、住民の自主的な運営や他地域との交流などにより、これらの多面的な機能を十分に果たしていくことができてこそ、豊かでゆとりある地域社会の創造につながるものと考えております。したがいまして、知事演述で申し上げましたとおり、四つの広域振興圏が自立していくことと同時に、県と市町村が協力して草の根の地域を守っていくことが必要であると考えております。
 次に、自治体内分権と住民自治組織についてでありますが、市町村合併などにより行政の広域化が進む中においては、地域の特性、特色を生かしたそれぞれの地域における自己決定、自己責任に基づく住民の主体的な参画の仕組みが必要であり、そのためには、域内への分権が重要であると認識しております。県といたしましては、庁内に設置している合併市町の支援組織―新市町まちづくりサポートセンターの目標の一つとして域内分権の推進を掲げているところであり、全国的な取り組みなども紹介しながら、今後の住民自治組織のあり方を市町村と一緒になって研究してまいりたいと考えております。
 次に、岩手県分権推進会議についてでありますが、この会議は、市町村合併の進展、経済のグローバル化に伴う地域間競争の激化等の環境の変化を踏まえて、分権型社会にふさわしい行政システムの構築に取り組むために設置するものであります。この会議では、住民の視点を踏まえ、県と市町村の役割分担のあり方やその実現のための具体的な方策などを検討するとともに、国に対し、分権の推進に障害となっている関与等の是正について提言を行っていくこととしております。スケジュールとしては、当面、4年間設置し、私が座長となって継続的に議論を進めることとしておりますが、本年度末までに権限移譲等を推進するための計画を策定してまいりたいと考えております。
 次に、宮城県との連携についてでありますが、私は、知事就任早々に村井知事に会い、両県の連携等について意見交換を行ったところであります。これまで宮城県とは、東北地域への自動車関連産業の集積に向けた取り組みや中国大連事務所の開設、津波防災対策のほか、県際地域では、不法投棄合同パトロール、市町災害時相互応援協定の締結、観光分野では、花めぐり紀行事業などさまざまな分野での連携を進めてきたところであります。今般の補正予算では、地域振興推進費を増額し、県際連携の強化を図ることとしておりますが、今後は、これまでの取り組みに加え、特に観光振興分野での連携の強化を目指し、新たに北上川の観光活用という視点での連携を進めるためのアクションプランの策定や平泉の世界遺産登録による観光客の入り込み増加も見込んだ県際道路の所要の整備を進めるなど、宮城県との一層の連携を図るための取り組みを進めてまいります。
 次に、格差等の危機と経済ではかれない価値観との整合性についてでありますが、議員御指摘のとおり、本県の豊かな自然や実直な人間性、また、それを培ってきた歴史や文化は、貨幣にかえることのできない普遍的価値であり、今後とも大切にしていくべきものと考えております。また一方で、多くの県民の皆様が、所得や雇用面での格差の問題に加え、教育や医療・福祉の面においても悩みや不安を抱えていることも事実であり、そのために経済的な基盤を確立していくことも重要な課題であると認識しております。
 こうしたことから、本県の持つ普遍的価値を源泉としたさまざまな魅力を岩手ブランドとして積極的に発信し、国内外から高い評価や信頼を得ることによって、最終的には、本県に経済的価値をもたらすことはもとより、地域に対する誇りや心豊かに暮らすことのできる満足感といった非経済的価値をより一層高めることを目的として、岩手ソフトパワー戦略を展開してまいりたいと考えております。
 次に、岩手ブランドによる定評の確立についてでありますが、私は、日本の食を守る食料供給基地としての誇りや、県民のまじめさ、勤勉さなど、本県の基底的な価値をブランドとして定着させ発信していくことにより、国内外において高い評価を得ていくことが極めて重要であると考えております。
 このため、例えば農林水産物については、本県のソフトパワーの源泉となる安全・安心を基本的価値に据えた生産や純情産地としてのブランド化を進めることにより、市場において、買うなら岩手のものといった定評を確立してまいります。また、人づくり分野においては、既に一定の評価を得ている県民が持つ勤勉さや根気強さをベースとして、キャリア教育やものづくり人材の育成等の取り組みにより、勤労観や職業観を醸成し、雇用される力を高め、雇うなら岩手の人といった評価を獲得してまいります。
 次に、国の予算編成と今後の県の財政運営についてでありますが、国よりも地方の方が財政状況がよいため、地方へのしわ寄せによって国の財政再建を図るべきという考え方はあってはならないものと私も考えております。しかし、近年の国の動きは、国の財政再建に軸足が置かれ、地方分権の成果も十分ではなく、むしろ地域間の財政力格差の拡大を招いているという状況にあります。
 こうした中、県財政は極めて厳しい運営を余儀なくされておりますが、本県経済の活性化や県民生活の向上を地域経営の観点に立って進めていくため、県政全般にわたる事務事業の見直し等を通じて、行政の簡素・効率化を進めながら緊急性・必要性の高い事業を重点的に推進していきたいと考えております。このため、これから4年間の基本政策や行財政改革の推進方策をまとめた地域経営に関する計画を今年度中に策定し、それに基づいて財政の健全化と地域の活性化を積極的に進めてまいります。
 また、予算編成システムの見直しについてでございますが、この計画策定の作業とあわせて検討していくべき課題と考えておりますが、いずれにしても、県財政は引き続き非常に厳しい状況が続くと見込まれることから、今まで以上に、政策の選択と集中による行財政資源の最適配分が可能となるように検討を進めてまいりたいと考えております。
 次に、食料供給基地岩手の確立についてでありますが、本県農業は、結いの精神に支えられた地域ぐるみ農業として築かれてきており、その生産基盤である農地や水路は、兼業農家を含めた生産活動を通じて維持されてきたところであります。こうした中で、将来にわたって本県の農業・農村を活力あるものとしていくためには、岩手らしい特色を生かしながら、基幹となる担い手と小規模・兼業農家が共存する仕組みを構築していくことが極めて重要であると認識しております。
 このようなことから、品目横断的経営安定対策等の国の対策に加え、県と岩手大学との連携による農業者ビジネススクールの開設などにより、地域農業の核となる担い手の経営能力の向上を集中的に支援するとともに、全国に先駆けて本県独自に策定した集落ビジョンの見直し・点検を通じて、主業型農家と小規模・兼業農家等が適切な役割分担のもとに共存し、発展できる集落営農を推進してまいります。また、中山間地域等直接支払交付金等を活用した新規作物の導入や地域のベテラン農家が小規模な園芸農家等を指導する本県独自の仕組みづくりなどを通じて、総合産地力の向上を図るとともに、県産農産物の魅力を消費者や市場に強くアピールし、日本の食を守る食料供給基地岩手の確立に努めてまいりたいと考えております。
 次に、医師不足と地域遍在についてでありますが、これは、国による医師養成数の抑制策が進められる一方で、医療の高度化、専門分化、医療安全に対する意識の高まりなどにより、求められる診療内容の質と量が飛躍的に増大し、医師の需要と供給の均衡が図られていない状況にあることが大きな要因であるほか、医師が診療能力を高めるために大規模病院を志向することや都市部での生活を望む割合が高いことなどの要因が絡み合う中で生じており、特に本県においては極めて厳しい状況にあるものと認識しております。県民が安心して地域で生活するためには、良質な医療サービスが受けられる体制を確保することが重要であり、医師確保の取り組みが最優先の課題であると考えております。
 県としては、医師確保対策アクションプランに基づく取り組みや医師確保対策室による即戦力医師の確保などにより、医師の絶対数の確保に努めていくほか、国の医師確保総合対策による岩手医科大学医学部の定員増の実現に向けた取り組みを推進するとともに、医師のキャリア形成にこたえる医療環境の整備や病院勤務医の負担軽減に向けた開業医との連携の推進にも取り組む必要があるものと考えております。こうした医師確保策は、県の取り組みだけでは限界があることから、国に対して、医師養成数抑制策の見直しや地域偏在解消策など、地域の実情を踏まえた抜本的対策を講ずるよう引き続き求めてまいります。
 次に、医療連携体制の検討内容等についてでありますが、医療制度改革に伴い、医療連携の構築の中心となる医療計画、医療と介護に係る地域ケア体制整備構想のほか、がん対策推進計画、健康増進計画、医療費適正化計画の計五つの計画を相互に整合を図りながら、平成19年度末までに策定することとしております。
 これらの計画の策定においては、1、事前対応を重視した切れ目のない保健・医療・介護の提供体制を構築すること、2、広い県土において、がん、脳卒中、周産期医療などについて、一般医療から高度医療まで、機能分担と連携による医療提供体制を構築すること、3、こうした体制を支える医師等の医療人材を確保すること、4、在宅療養支援診療所を活用するなどによる医療と介護の連携体制の構築などが主要なテーマとなっており、その具体的な内容や実行スケジュールについては、現在検討しているところであります。
 これまで、県内の医療機関を対象とした医療機能調査等の実施、医療関係者等の専門家による検討会における協議などを行うとともに、県医療審議会において、これら調査や検討結果などをもとに、計画策定に向けた協議を進めていただいているところであります。今後、各計画において具体的な指標と数値目標の設定などを行うこととしており、計画策定後は進捗状況のフォローアップを行い、県医療審議会などの場において、各分野の専門家の御意見を伺いながら、より実効性のあるものとしてまいります。
 次に、県立病院改革についてでありますが、現在取り組んでいる県立病院改革は、二次保健医療圏を単位として、圏域の核となる広域基幹病院に医師を初めとするマンパワーや医療器械を重点配置するとともに、検体検査、事務などの業務を集約することにより、県立病院群を一体的・効率的に運営し、圏域における医療の完結性を高めることを目指しております。しかしながら、地域や診療科による医師不足が顕著になってきていることから、今後、医療計画などの策定を通じ、地域の医療資源総体の中での県立病院のあり方についてさまざまな議論をしていかなければならないものと考えております。
 次に、県立病院経営についてでありますが、県立病院は、知事が政策上の必要から開設しているものであり、例えば、地方独立行政法人化や民間への移譲といった経営形態の変更や、病院の開設・廃止など経営の根幹に関する事項については、開設者である知事が最終的に判断した上で議会にお諮りするものと理解しております。
 事業の運営に当たっては、地方公営企業として効率的な運営を図るために管理者を置いているところでありますが、管理者は、中長期的な視点に立って、県の医療政策との整合性を図りながら、より効率的な事業運営を行っていくべきものと考えております。
 次に、医療と福祉の連携についてでありますが、広域基幹病院等に設置されている医療相談室は、患者の経済的・心理的な諸問題等の医療福祉相談や後方医療機関及び社会福祉施設等との連携など、広範囲な相談にこたえているところであり、平成18年度の相談件数は延べ6万1、454件で、このうち、退院後の医療・福祉サービスを円滑に受けるための相談件数は延べ2万3、603件と年々増加し、これらの需要にこたえてきているものと認識しております。
 また、すべての県立病院への相談室の設置についてでありますが、医療制度改革の推進や医療を取り巻く環境の変化等に伴い、医療と福祉の連携が従来にも増して重要となってきていることから、各病院における医療相談の機能を、医療福祉相談とともに病院と地域をつなぐ連携窓口としての機能に広めて強化してきているところであります。これまで、病院の規模や機能に応じて、広域基幹病院には専任の相談組織を設置し、また、その他の病院についてはスタッフの配置を行ってきているところであり、さらには、医療機関相互の連携の強化を目指した地域医療支援主査の整備を行っているところであります。今後とも、必要に応じてこれらの体制を充実してまいります。
 次に、岩手県競馬組合の運営についてでありますが、まず、岩手競馬再生に向けた基本的な考え方と黒字化対策について、私は、岩手競馬の再生のためには、設備投資による売り上げ拡大で経営改善を図るというこれまでの考え方を改め、まずは現実的な売り上げ見通しに対応したコスト管理を徹底することで収支均衡を確保した上で、さらに売り上げを拡大させる方策を積極的に展開していくことが必要であると考えております。このため、発売成績に応じて売り上げ見通しを下方修正し、所要のコスト調整を年度途中でも適切に行っていく一方で、6月9日に盛岡市中心部に街中場外発売所を設置するとともに、存続決定が3月末になり、開幕準備の不足などで低下している岩手競馬のイメージの改善を図るため、地方競馬全国協会とも連携を図りながら、1、1着馬等による選抜戦の実施などによるレースの魅力の向上、2、イベントの開催など、競馬ファンのみならず、県民の皆様にも親しんでいただける競馬場づくり、3、報道機関への積極的な話題提供などを内容とする岩手競馬ルネッサンスプランを6月の盛岡開幕から実施しているところであります。
 私は、岩手競馬の最高責任者として、先頭に立ち、あらゆる手だてを尽くしていく考えであり、正しい道筋で取り組んでいけば、必ずや危機を希望に変え、明るい未来を開くことができるとの信念を持って岩手競馬の再生に取り組んでいく考えであります。
 次に、農林水産省や中央競馬会との関係構築についてでありますが、農林水産省からは、日常的な競馬開催業務はもとより、街中場外発売所開設の際にも円滑に御協議をいただき、また、今般の競馬法改正内容につきましても直接説明を受けるなど、さまざまな協力や助言を受けてきたところであります。また、中央競馬会―JRAとの連携につきましても、東京競馬場や福島競馬場での岩手競馬の場外発売所の設置、交流重賞レースの賞金への助成、さらには、6月16日からテレトラック種市でもJRAレースの発売が実現するなど、連携を強化しながら事業運営に当たってきたところであります。今後におきましても、引き続き農林水産省とは、他主催者との連携事業の実施など、競馬法改正を踏まえた岩手競馬の経営改善に資する新たな事業の実施について相談していくとともに、中央競馬会とは、交流競走の拡大など、さらなる連携強化に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、英語の総合力に対する所見についてでありますが、英語は外国語である以上、英語の音声や語彙、文法等を学ぶ必要があり、聞くこと、話すことだけがコミュニケーションではなく、読むこと、書くことを含めてコミュニケーションであることから、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことの4領域をバランスよく育成する英語教育を行う必要があると考えております。
 また、英語力を向上させるということは、英語そのものを身につけることにとどまらず、外国の文化に目を向け、視野を広げ、ひいては日本語のよさや日本の文化、歴史等を再考すると同時に、物事の背景を深く考えたり、別の視点からとらえたりすることができるような真の意味での国際感覚を身につけることにつながると考えております。その意味で英語力向上について考えたとき、言語の持つ歴史、文化等を踏まえて総合的に向上させるという大きなとらえ方がまず大事であると考えております。
 次に、小・中・高の英語教育についてですが、小・中・高の英語教育は、段階的かつ系統的に行うことが必要であると考えておりますが、まず小学校では、英語の音声になれ親しませることなど、この段階にふさわしい活動を通して、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を養うことが重要であると考えております。中学校では、英語への興味・関心とともに、知的好奇心を持続させながら、異文化との出会いを大切にした授業を展開し、聞く、話すことから指導を始め、読むこと、書くことも含めた4領域をバランスよく育成することが必要であると考えております。高等学校では、中学校の指導を踏まえ、英語の知識を身につけることに加えて、言葉の背景にある考え方、歴史観、人生観等を理解し、国際感覚を備えたコミュニケーション能力を育成することを視野に入れ、さらには、英語は人生を豊かにし、生涯にわたって学ぶものであるとの認識から、英語が必要なときにみずから学ぶことができる基盤を養うことが重要であると考えております。
 このような発達段階に応じた英語教育の目標を達成するには、何よりも教員の力量に負うところが大きいことから、教員がこのような目標を共有し、児童生徒が英語でコミュニケーションを図りたいという意欲を喚起するような魅力ある授業づくりに向けた英語教員の育成を強化していく必要があると考えております。
〇議長(渡辺幸貫君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時20分 散会

前へ 次へ