令和6年9月定例会 第6回岩手県議会定例会会議録

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〇25番(高田一郎君) 日本共産党の高田一郎でございます。県民の切実な要求実現と県政の課題について質問いたします。
 まず第1に、物価高騰から地域経済を守る課題についてであります。
 失われた30年がもたらした経済と暮らしの困難に物価高騰が追い打ちをかけています。県が実施しているエネルギー価格・物価高騰等に伴う事業者への影響調査では、影響が継続しているが86.8%となっており、その理由は、原材料や生産コストの上昇が86.4%、利益率の低下が62.4%などであります。社会保険料も払えない社保倒産や、滞納強要を苦にしてみずから命を絶つ経営者も出ています。県内中小事業者を応援する支援は待ったなしの課題であります。県内中小事業者の深刻な実態をどのように受けとめているでしょうか。そして、どのような支援が今、必要と考えているのでしょうか。
 最低賃金に対し、達増知事は5月に岩手労働局に対して事実上の賃上げを求める要請を行いました。こうした中で、ことしの最低賃金は徳島県に次ぐ59円増の952円となりました。これまでと比べれば大幅な賃上げとなります。引き上げ後の最低賃金以下の労働者は県内でどの程度と試算されているのでしょうか。
 県内事業所の6割は法人事業税の対象とはならず、原資があって賃上げができるという経営状況になく、中小零細事業者への直接支援が必要であります。国の中小企業支援策と一体で本来やるべきでありますが、国の支援はどのようになっているのでしょうか。
 物価高騰対策賃上げ支援金は事業者から大変歓迎され、また、全国から注目されている支援策でもあります。継続実施すべきでありますが、課題も含めて実績を示してください。
 社会福祉施設等では、最低賃金への対応、給食の食材、介護用品などさまざまな価格高騰に伴う負担増などによって、施設の経営も厳しく、4割の施設等で2年連続の赤字決算となりました。介護職員の賃金引き下げで対応する事業者も出ています。県南地域の施設長は、他の産業と比べ賃金格差がさらに広がって、人材が全く集まらないと嘆いておりました。社会福祉施設及び医療施設等物価高騰対策緊急支援金を実施すべきでありますが、どのように検討されているのでしょうか。物価高騰に見合った介護報酬が必要です。抜本的な引き上げが必要と考えますが、全国知事会としてどのように取り組まれているのでしょうか。
 中小企業や地域経済を支援する物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金は、岸田前首相が拡充を明言してから3カ月以上が過ぎました。本来であれば補正予算を準備して、新しい内閣で早く議論すべきでありましたが、提案もなく国会解散という動きであります。帝国データバンクの調査では、上半期の小規模事業者の倒産は前年比22%増となり、過去10年間で最悪となっています。県も経済対策の補正予算を急ぐべきでありますが、国の動向を含めて示してください。
 岸田前総理は、不出馬の記者会見で、30年続いたデフレ経済に終止符を打ったとみずからの経済政策を評価しました。しかし、異次元の金融緩和がもたらした異常円安でかつてない物価高騰による生活苦も引き起こされました。実質賃金の減少、医療、介護などの国民負担がふえて、稲作農家の時給は、昨年産米で10円という状況であります。一方、大企業の内部留保は過去最高の532兆円となり、株主配当がふえ、また、貧困と格差が拡大してきました。5年間で43兆円の軍事費、大軍拡の道を進めています。
 石破首相はこれまでの経済政策を継承する立場を表明していますが、この間進めてきた政府の政策による県民の暮らし、営業、地域経済にどのように影響を与えているのでしょうか。富裕層や大企業への行き過ぎた減税を改めるとともに、消費税減税や賃上げ、年金を引き上げるなど、国民の懐を温める改革こそ必要であります。知事は好循環の経済となるように国に求めていきたいと答弁されていますが、どのように提案されていくのでしょうか。
 第2に、高過ぎる国民健康保険税について質問いたします。
 物価高騰で暮らしが圧迫される中で、これに追い打ちをかける国保税は、これ以上の引き上げは限界だという声が広がっております。盛岡市の国保税は、標準世帯の夫婦39歳以下、就業者1人、子供1人の場合、40万円に対して、協会けんぽ―全国健康保険協会では19万7、000円と、同じ所得でも2倍以上の開きがあります。医療保険によって負担や給付差があることを問題にして、全国知事会でも、1兆円の国費投入を行ってせめて協会けんぽ並みの税となるよう求めてきました。国はこれに応えるどころか、国保運営の都道府県化による統一保険料などで加入者へのさらなる負担を行おうとしております。
 岩手県が3月に策定した第3期岩手県国民健康保険運営方針では、保険税水準の統一を第4期運営方針期間に実施することを目指すとして当面見送ることを明記したことは評価したいと思います。
 そこで、4点伺います。
 全国知事会も国費1兆円の支援を求めていますが、国の対応、動向はどのようになっているでしょうか。
 第2に、財政調整基金にため過ぎている市町村は、引き下げの財源に振り向けることが必要であります。財政調整基金を積み立てている実態を県はどのように把握されているでしょうか。
 第3に、被雇用者の健康保険は、子供などの扶養家族が何人いても保険料は変わりません。ところが、国保の場合は、家族の人数に応じて均等割があるため、子供が多ければ多いほど高くなり、これは子育て支援に逆行するものであります。一関市では、1人当たり1万9、800円、2人の場合は3万9、600円となってしまい、児童手当の月1万円が消えてしまう中身であります。国は子育て世代の経済的負担を軽減するために、未就学児に対して2分1の軽減を行っています。さらなる拡大を求めていくべきでありますが、国の動向はどのようになっているでしょうか。
 高過ぎる国保税を納められない市民に対して、一旦窓口で医療費の全額支払いを求める資格証明書の発行は76件、短期保険証は3、942件、未交付、いわゆるとめ置きは1、184件となっています。納めきれない実態をよくつかんで、支援制度に結びつける取り組みこそ必要であります。滞納者への制裁措置は受診抑制による重症化につながる可能性もあり、盛岡市では、原則発行で対応しており、国保運営上、何の問題もないと議会で述べております。資格証明書などの発行は患者が医療を受ける権利を侵害し、納税者に懲罰を与え、社会保障の原則に反するもので、直ちにやめるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 第3に、不登校対策について質問いたします。
 不登校の子供たちは年々ふえ続け、今、小中学校では約30万人、岩手県でも2、005人と急増しています。欠席が年間30日に満たない子供や保健室登校、遅刻や早退を続ける子供たちを加えれば、その数倍になるとも言われております。学校へ行かない、そして、行けない子供がこのように急増する傾向は、全ての子供たちを人間として、そして主権者として育てていくという公教育の任務が事実上崩されかねないほど深刻な問題と考えますけれども、教育長の認識をまず伺います。
 子どもの権利条約に基づき、日本は国連子どもの権利委員会から、これまで4回の勧告を受けています。日本の教育が点数による競争的な教育制度によってストレスにさらされ、その結果、余暇、運動、休息の欠如による発達障害にさらされている。これを予防する適切な処置をとるべきだと勧告され続けてきました。県教育委員会は、このたび重なる勧告をどのように受けとめているのでしょうか。学力テストはその象徴であります。県版学力テストなども含め、廃止し、その財源で教員をふやすなどの対応を行うべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 子供の立場に立って不登校問題を解決する必要があります。本県における不登校急増の要因をどのように分析されているのか、子供の声を把握されているのでしょうか。子供たちが再登校するとしても、また社会に出るまでに長い時間がかかる場合があります。それだけに親の苦しみ、悩みは察するに余りあります。児童生徒理解・支援シートを整備して、専門家と連携しながらアウトリーチ的な支援を行うべきであります。全ての児童への相談、指導ができる取り組みが必要と考えますが、どれだけ対応されているのでしょうか。
 いじめや不登校問題でも重要な役割を果たしているのがスクールカウンセラーであります。不登校を抱える保護者からは、エネルギーチャージだよと言われて安心したと言われ、親と子を支える重要な役割を果たしていると感じています。
 文部科学省は、全ての学校へ配置する基礎配置とともに、1万校へのいじめ、不登校対策など重点配置が行われています。本県の実態はどのようになっているのでしょうか。相談件数に対する対応実績はどうなっているのか、配置数は十分なのか示してください。
 学校に通う以外の選択肢がない現状を変え、安心していられる居場所をつくるなど、子供に寄り添った支援が必要であります。こうした支援は不登校を悲観し、苦しむ親子を救うことになります。校内教育支援センター、学びの多様化学校、自宅におけるICT等の活用にも取り組むべきですが、どのような対応をされているのでしょうか。
 フリースクールなど学校以外のさまざまな学びの場を認め、公的支援など学校と同等の支援を行っていくべきであります。子供の不登校がきっかけで食費や光熱費、フリースクールへの月謝などが増加して、支援を求める声も出ています。都道府県レベルで公的支援を行っている自治体について、どのように把握されているのでしょうか。
 第4に、人口減少対策、少子化対策について質問いたします。
 就職情報サイトマイナビが5月に実施した20代正社員を対象とした意識調査では、4人に1人が子供を持つことに消極的だという調査結果であります。お金が足りない、増税、物価高の中、自分のことで精いっぱいで育てる責任が持てないなど金銭面での不安が多かったと分析しています。
 今、SNS上では、子持ち様という言葉が飛び交っています。子供を育てるのは恵まれたカップルだという思いや、育児中の男性労働者の仕事を他の人が引き受けざるを得ず苦々しく思う心情を映しています。将来設計が描けない非正規労働者をどんどん拡大し、賃金が30年以上も上がらない、学費の返済や競争的な教育など子供を安心して育てられるような環境にはありません。若年層の経済状況の苦しさや、結婚や子供を持つことへの不安を抱える人が多く、少子化の一因となっています。
 そして、ジェンダー不平等が出生率低下の背景にあると国連人口基金の世界人口白書2023が指摘しています。この白書は、少子化の進む国の特徴として、職場でのジェンダー不平等、家庭でのジェンダー不平等、勤労世帯への構造的な支援の欠如という三重の足かせがあるとしています。特に、若い日本人の女性の多くが、結婚して子供を産むかどうかわからないと答えているのは、キャリアを続けることを望み、無休の家事や育児に縛られたくない、と考えているからであり、出生率低下の背景には、ジェンダー不平等があると日本に対して指摘しています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 若者の貧困対策、ジェンダー平等に視点を当てたこの指摘について、知事の見解を伺います。
 自治体職員の非正規化が進み、雇用されても年収200万円以下のワーキングプアということが指摘され続けてきました。女性の割合も高く、低い賃金と不安定雇用となっています。この間、どのように処遇が改善されてきたのでしょうか。県職員の場合、非正規雇用は男性で43%と他県と比べ高く、一家を支えています。10年、20年と勤務した場合、正規職員との賃金格差はどの程度となるのでしょうか。
 専門性を持ちながら恒常的な公共サービスを担う図書館司書、消費者相談員、スクールカウンセラーなどからは、仕事のやりがいは多いけれども、不安定で不安だという声も出ています。再任用については、本人の希望を前提にして継続的任務を保証すべきであります。
 6月の人事院通知の改正では、更新を原則2回とする制限を撤廃しましたが、県職員も撤廃すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 厚生労働白書における結婚と年収との関係調査では、21歳から25歳だった独身男性は、年収200万円未満の5年後までの結婚は約1割、年収300万円以上は3割が結婚しているなど、賃金増加は結婚を希望する人を押し上げる効果があり、少子化を克服する点からも大変重要だと思います。岩手県は社会減対策の強化点として、労働環境と所得の向上に取り組むとしておりますが、その取り組みの成果をまず示してください。
 子供の教育費の負担軽減は、若者と子育て世代の最も切実な願いであります。とりわけ、奨学金返済額は平均300万円で、卒業後の返済が長期となり、結婚や出産をためらう声が3割となっております。日本学生支援機構が200人に対して行ったアンケート調査の結果であります。
 また、若者の居住費負担率は3割を超えています。若者に対する住居確保給付金の支給対象の拡大とともに、家賃補助や若者向けの住宅など、さらなる支援が必要と考えますが、いかがでしょうか。
 第5に、大規模災害と自治体の備えについて質問いたします。
 東日本大震災津波のときには、避難所にいる被災者は絶望と不安の中にいました。雑魚寝の床から寒さがしんしんとし、心も体も震える日々が続きました。生活環境の悪化などによって、岩手県内では471人が災害関連死として認定されました。能登半島地震でも同じような光景でありました。プライバシーのない避難所、雑魚寝や冷たい食事など、大雨被害で二度の被害を受けた被災者の方は、仮設住宅への食料は震災当時と変わらずパン一つ、全く地震の教訓が生かされていないと語っておりました。何よりも石川県の地域防災計画は27年前に策定されたもので、災害度は低いと被害想定も甘く、専門家からも見直しが求められていました。国と一体となった防災対策と対応に多くの課題を残しています。
 3.11の教訓が生かされず、30年間変わっていないと指摘もされております。今後の岩手県の災害対応に生かすべきだと考えますが、知事の受けとめとともに、全国知事会として取り組むことは何か、あわせて知事に伺います。
 トイレ、段ボールベッド、温かい食事を48時間以内に提供できるかが被災者の命と暮らしにかかわる大きな問題であります。また、特に大雨豪雨災害は、夏場にあるだけに暑さ対策も重要です。台風5号接近に伴い、沿岸部ではエアコンのない避難所もあり、熱中症疑いの避難者もいました。避難所運営マニュアルのない自治体など課題もありました。能登半島地震の教訓を踏まえ、本県の取り組み状況を示してください。
 能登半島地震は、土砂災害で被害を受けた建物は85%以上が土砂災害警戒区域でありました。また、2、300カ所で土砂が崩落したほか、孤立集落は33カ所、3、345人に上り、2週間以上も集落が孤立しました。孤立集落への通信手段対応や2週間程度のエネルギー、食料の確保などが必要ですが、どのように本県では対応されているのでしょうか。
 最後に、農業振興策について質問いたします。
 主食の米が不足し、店頭から消え、流通業者や消費者に深刻な混乱と不安を広げました。政府は米の消費量が減るとして、農家に減反と生産調整を求め、1、000万トン以上の生産量を抱えた米の生産量は、今や661万トンとなり、昨年の消費量702万トンよりも少なくなるところまで減少しています。
 稲作農家は、時給換算にすると10円にしかならず、低米価のもとで、この10年間で46万戸が減少し、生産量も157万トン減少しております。米需要に生産が追いつかず、価格を市場任せにしてきた米政策の破綻と言わなければなりません。
 政府は来年6月末在庫をことしよりも少ない152万トンと見込んでいます。今、新米を先食いして供給しており、米不足は一過性ではありません。来年は生産量を減らすのではなくて、農家に十分生産してもらうことが必要ではないでしょうか。
 ゆとりある需給計画をつくり、そして、稲作農家の所得保障、価格保障を抜本的に充実させることが必要です。そして、義務でもないミニマムアクセス米77万トンの輸入こそやめるべきであります。米政策の転換を国に求めていくべきですが、見解を伺います。
 米を初め食料の値上がりにより、県内の食料支援を行っている団体が、米が集まらず、こども食堂の回数を減らしたり、あるいは休止をするこども食堂もありました。これまでも政府備蓄米の支援制度がありましたが、県内では令和6年度はわずか5団体、2、130キログラムの交付を受けています。
 国はこのたび、申請窓口を全都道府県に広げる拡充策を示しています。フードバンク、こども食堂など、食料支援を行っている団体への支援を行うべきであります。そして、その周知を徹底して、食料に困窮する県民を応援するべきと考えますが、どのように対応されるのでしょうか。
 生産資材価格高騰、高どまりの中で農産物が価格転嫁できずに、生産者の経営努力でコストを吸収することは困難で、一層厳しい経営となっています。配合飼料価格安定制度における新たな特例が終了し、畜産農家の負担もふえています。土地改良区や共同利用施設での維持費の増加による農家負担、そして、土地改良区の賦課金増によって土地改良区を離脱し、離農する農家も生まれています。
 昨年実施した配合飼料価格安定緊急対策費補助、土地改良区電気代助成を継続実施すべきです。生産資材価格高騰による県の支援策を示してください。
 NOSAI岩手の家畜人工授精業務の廃止に伴う対応についても質問いたします。
 2025年4月からNOSAI岩手―岩手県農業共済組合が家畜人工授精業務を廃止することにより業務が途絶えないように、畜産農家などがこの間、県などに求めてきました。しかし、十分な説明も乏しく不安が広がっています。来春から心配なく移行できるのでしょうか。
 兼業で継続的な支援が難しいという家畜人工授精師もいます。高齢化による開業獣医師の減少もあり、家畜死亡事故も起きており、一次産業の衰退につながっています。畜産県岩手の生産基盤の維持、強化のためにも、家畜人工授精師の業務の公営化も検討し、獣医師の確保に向けた取り組みを強化すべきでありますが、どう検討されているのでしょうか。
 人間が生きていくために最も大事な食料を生産してきた農民が粗末にされている。地域で支え合ってきた農村に若者がいなくなる、これからとても不安だと、ある農家からこのような訴えがこの間ありました。本県の農業経営体の平均年齢は69歳、65%は後継者がいないという深刻な事態であります。こうした状況になったのはなぜでしょうか。農業に希望を持てるために何が必要と考えているのでしょうか。
 ことしは食料・農業・農村基本法が改正され、来年の通常国会では基本計画が策定されようとしております。食料安全保障の議論がある中で、食料自給率を引き上げる、価格保障、所得補償を農政の柱にし、規模の大小にかかわらず、意欲のある農家を担い手に位置づけた基本計画としなければなりません。基本計画策定に当たって、岩手県として国に何を求めていくのでしょうか。
 以上でこの場での質問を終わります。答弁によっては再質問いたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高田一郎議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、政府の経済政策による地域経済への影響と国への提案についてでありますが、安倍政権から続いてきた異次元の金融緩和や国際紛争等によるエネルギー価格の高どまり等により物価高騰が進行し、賃金、収入が実質的に目減りしてきました。こうした状況下で、県民の生活や事業者の経営が圧迫され、現在でもその影響が続いています。
 地域経済の回復には、消費の拡大と賃金、収入の上昇の好循環を生み出すことが必要です。賃金、収入が上昇することで消費が活性化され、地域の事業者を潤すことによって、賃金、収入のさらなる上昇につながるものと考えます。
 このことから、事業者の生産性向上や物価高騰によるコスト増の緩和、適切かつ円滑な価格転嫁の実現、物価高騰で困窮する低所得世帯や子育て世帯への支援など、地域経済の好循環の起点となる賃金、収入の持続的な上昇を実現する経済政策について、さまざまな機会を通じて国に働きかけていきたいと思います。
 次に、若者の貧困とジェンダー平等に対する認識についてでありますが、少子化対策については、有配偶率の向上、有配偶出生率の向上、女性の社会減対策の三つの柱を基本に、若者、女性の所得向上や、ジェンダーギャップの解消についても、しっかりと取り組んでいく必要があります。
 このような認識のもと、人口減少対策に最優先で取り組んでいるところであり、29歳以下の新婚世帯に対する支援金の県独自の10万円上乗せ支給、第2子以降の3歳未満児に対する保育料無償化や在宅育児支援金の支給、放課後児童クラブの運営や一時預かり事業に対する助成、若者や女性に魅力ある雇用、労働環境の整備、家事、育児の分担を見える化する、家事・育児シェアシートの作成、普及、多様な働き方と所得向上に向けた女性デジタル人材の育成など、若者の貧困やジェンダー平等に関する施策も進めています。
 今後も、全国トップレベルの子供、子育て支援策とともに、未婚化や転出の要因となっている若年層の所得の向上、アンコンシャスバイアスやジェンダーギャップの解消など、特に若者や女性の生きにくさを生きやすさに変えるため、取り組みの充実、強化を図りながら、最重要課題として、オール岩手で取り組んでまいります。
 次に、労働環境と所得の向上についてでありますが、若者や女性の県内定着、U・Iターン、移住定住を促進し、人口の社会減を縮小していくためには、処遇面を含めた魅力ある雇用、労働環境を構築していくことが重要であります。
 このため、自動車、半導体関連産業を中心とした幅広い業種の企業誘致や、いわてで働こう推進協議会を核とした働き方改革、商工指導団体等と連携した中小企業の生産性向上などに取り組んでまいりました。
 こうした取り組みにより、令和元年から令和5年までの5年間で178社の企業が新増設を行っているほか、いわて働き方改革推進運動に1、000社を超える企業が参加しており、さらに、経営革新計画を策定して生産性向上に取り組む中小企業数が東北で最多となっております。
 引き続き、経済団体を初めさまざまな主体と連携し、オール岩手で若者や女性の労働環境と所得の向上に取り組んでまいります。
 次に、能登半島地震と本県の災害対応についてでありますが、令和6年能登半島地震では、発災当初、過密な状態で避難所生活を送ることを余儀なくされたほか、自主避難所が多く設置されて被災者の状況把握が困難であったことなどが指摘されており、全国知事会からも避難所運営に対する国の支援を要望しています。
 一方、ドローンによる被災状況の把握、水循環型シャワー設備の活用など、新たな技術の活用も見られたところであり、そのような点も含めて本県の災害対応に生かしていくことが重要と考えています。
 また、被災地には全国知事会などを通じて、本県から延べ600人余りの職員を派遣して応急対策に当たったほか、現在も14人の県職員を中長期で派遣して、被災地の復旧、復興を支援しています。
 能登半島では、先月の記録的な大雨で二重被災ともいえる状況となり、大変痛ましく思っておりますが、本県からの派遣職員は大雨災害の対応にも従事しているほか、先月末には、被災地で不足している物資や水害からの復旧ノウハウに関する記録誌も本県から提供するなどしたところであります。
 今後も被災自治体同士のネットワークにより、お互いの教訓を生かしながら、自然災害への対応力を強化してまいります。
   〔企画理事兼商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇企画理事兼商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、影響調査の受けとめと必要な支援策についてでありますが、8月末の事業者影響調査においては、多くの事業者が経営課題として、原料資材高騰への対応、価格転嫁、賃金の引き上げ、人材確保を挙げております。
 このような状況から、利益率が低下する中で、人材確保などのために防衛的な賃上げを余儀なくされるなど、県内中小企業を取り巻く経営環境は依然として厳しい状況にあると受けとめております。
 このことから、県として、円滑な価格転嫁の促進に向けたパートナーシップ構築宣言の普及拡大などに取り組むとともに、利益率を向上させるため、ITツールなどを積極的に活用した効率的な業務運営や、新たな顧客層の獲得といった小規模事業者の経営革新計画の策定を初めとした生産性向上に向けた取り組み支援を積極的に進めていく必要があると考えております。
 こうした取り組みを進めるに当たっては、商工指導団体の果たす役割が重要であることから、これらの団体との連携のもと、国の経済対策とも連動しながら、中小企業を取り巻く環境に対応した必要な施策を適時適切に展開してまいります。
 次に、賃上げ支援についてでありますが、岩手労働局の令和6年最低賃金労働基礎調査によると、最低賃金の引き上げ前に今般の最低賃金額となる952円未満で働いていた常用労働者、1カ月以上の期間で働いている労働者になりますが、これは5万3、159人、全体の29.4%となっております。
 現在の国の支援策は、一定の賃上げを行う企業に対して法人税等の減免措置を行っているほか、生産性向上に資する設備投資等により賃上げを行った事業所に対する業務改善助成金などによる支援が行われていると承知しております。
 本県が実施している物価高騰対策賃上げ支援金については、令和6年9月19日現在、当初見込んでいた2、000事業所を上回る2、562事業所からの申請があり、価格転嫁が厳しい小規模事業所を中心に、多くの事業所に活用いただいております。
 中小企業を取り巻く経営環境が引き続き厳しい中で、最低賃金が大幅に引き上げられることや、今般の支援金の実施状況などを踏まえ、消費の拡大と賃金の上昇の好循環を生み出す経済対策を国に働きかけながら、商工指導団体を初めとした関係団体との連携のもと、今後の対応を検討してまいります。
   〔企画理事兼保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) まず、社会福祉施設等への支援についてでありますが、県では、物価高騰により厳しい経営環境にある社会福祉施設及び医療施設等を支援するため、令和4年度及び令和5年度に計3回、累計で21億2、000万円余の物価高騰対策支援金を支給したところであります。
 現在、国において物価高騰に対応した新たな経済対策の策定が進められているところであり、県としては、こうした動向を注視しながら、必要な対応について検討したいと考えております。
 また、物価高騰に見合った介護報酬の抜本的な引き上げについては、令和6年度介護報酬改定の影響を適切に検証し、必要に応じて介護報酬の臨時改定等の措置を講ずるよう、本年8月に全国知事会として国に提言を行ったところであり、引き続き、全国知事会と連携し、国に対し必要な働きかけを行ってまいります。
 次に、国民健康保険の財政支援に関する国の対応についてでありますが、国保については、被用者保険にある保険料の労使折半の仕組みがないこと、被保険者の年齢構成や医療費水準が高いことなどの構造的な課題を抱えております。国保の財政基盤を強化するため、これまで、県の政府予算提言・要望や全国知事会として、国に対し新たな財政支援を講ずるよう要望しているところであります。
 国においては、平成30年度から毎年約3、400億円の財政支援を行い、これにより保険税負担の伸びが一定程度抑制されていると考えられますが、いまだ課題解決には至っていないことから、今後も必要な財政措置について、県の政府予算提言・要望や全国知事会として働きかけてまいります。
 次に、市町村の国保財政調整基金についてでありますが、財政調整基金は、保険給付費、事業費納付金及び保健事業の推進に要する経費等に不足が生じた場合に備えて、各市町村の条例に基づき設置されているものであります。
 県では、毎年度、各市町村国保の財政調整基金の保有状況について報告を受けており、基金残高の推移は、医療費の増加などに伴い、令和元年度の約111億円から令和5年度には約100億円と11億円減少しているところであります。
 当該基金については、各市町村が条例の規定に沿って医療費や保険税の将来見通しなどの財政状況を総合的に勘案しながら運用していくものと認識しており、県としては、基金運用の参考としていただくため、各種統計データの提供や他の自治体に関する情報提供を行っているところであります。
 次に、子供の均等割についてでありますが、その軽減措置については、子育て世帯の負担軽減の観点から、令和4年度から未就学児を対象に所得制限等の基準を設けず公費で一律に軽減される仕組みが導入されたところであります。
 当該軽減措置について、現時点では国の見直しの動きはなく、対象となる子供の範囲が未就学児に限定され、その軽減額が5割とされていることから、県としては、さらなる負担軽減が図られるよう、政府予算提言・要望や全国知事会として、子供に係る均等割軽減措置の対象年齢及び軽減額の拡大を国に要望しており、今後も継続していきたいと考えております。
 次に、保険税滞納者への対応についてでありますが、短期被保険者証及び被保険者資格証明書については、各市町村が国保税を滞納している方との接触の機会をふやし、自主的な納付などを直接働きかけることなどを目的に交付されております。
 県では、毎年度、各市町村に対し、それぞれの交付に関して機械的な運用を行うことなく、滞納者個々の特別な事情の有無を適切に把握するなど、被保険者の生活実態等に即したきめ細やかな対応に努めること、滞納の原因が経済的困窮にある場合は、必要に応じて生活困窮者の自立支援を担当する部署と連携した支援を行うなど、滞納者に寄り添った対応を行うよう要請しているところであります。
   〔総務部長千葉幸也君登壇〕
〇総務部長(千葉幸也君) まず、補正予算の編成についてでありますが、原油価格、物価高騰は県民生活や地域経済に大きな影響を与えており、県では、今年度も賃上げ支援金や価格転嫁に取り組む中小企業に対する設備投資補助、事業継続に向けた相談体制の強化などを実施しているところでございます。
 10月4日に経済対策の総理指示があり、国において検討が進められているものと承知しておりますが、臨時交付金の配分を含む財政措置を国に求め、経済対策の動向を見極めつつ、速やかな補正予算案の編成を含め必要な対応をしてまいります。
 次に、会計年度任用職員の給与についてでありますが、会計年度任用職員制度導入による処遇改善の状況については、パートタイムのモデル年収で見ると、今年度からの勤勉手当の支給により、昨年度から約29万円増額して約253万円となり、制度導入前の臨時職員と比べると約70万円増額しており、東北他県と比較して2番目に高い水準となっております。
 常勤職員との比較については、地方公務員法上、職員の給与はその職務と責任に応ずるものとされており、単純に比較することは難しいところでありますが、同じ勤務時間で事務を行うフルタイムの会計年度任用職員のモデル給与で比較した場合、10年勤続の常勤職員とは約50万円、20年勤続の常勤職員とは約180万円の年収差となっております。
 次に、再度の任用についてでありますが、現在任用している会計年度任用職員について、人事評価の結果を踏まえ、公募によらずに翌年度も任用する、いわゆる再度の任用は、国との均衡や地方公務員法に定める平等取り扱いの原則や成績主義を踏まえ、これまで2回連続を上限としてきたところでございます。
 高田一郎議員御指摘のとおり、今般、国は、できる限り公募を行うという原則は維持した上で、人材確保の観点から再度の任用の上限回数を撤廃したところであり、本県としても、地方公務員法の趣旨を踏まえつつ、他県の動向も勘案しながら、再度の任用の上限回数の撤廃に向けて検討を進めてまいります。
   〔政策企画部長小野博君登壇〕
〇政策企画部長(小野博君) 若者の住宅支援についてでありますが、若者の県内定着や子育て支援の観点から、労働環境や賃金の向上とあわせて、経済的負担の軽減による可処分所得の向上は重要な課題であります。
 このため、県内中小企業向けの賃上げ支援金を措置し、若者を含む県民の所得向上を促進しているほか、若い世代に県営住宅を低廉な家賃で貸し出すことで住宅に係る負担を軽減し、若者の活躍を支援する若者・地域応援住宅支援事業や、市町村と連携して新婚世帯の住居費用を支援する、いわてで家族になろうよ未来応援事業を行っているところであります。また、県営住宅を活用した、いわてお試し居住体験事業により、県外からの移住を促進しております。
 県としましては、引き続き、雇用、労働環境の向上や県営住宅を有効活用した住居への支援等を初め、全庁を挙げて県民の皆様の可処分所得の向上に取り組みながら、国や市町村等と緊密に連携し、若者や子育て世代、県外からの移住希望者の県内定着を図ってまいります。
   〔復興防災部長福田直君登壇〕
〇復興防災部長(福田直君) まず、能登半島地震の教訓を踏まえた対応についてでありますが、県では、市町村避難所運営マニュアル作成モデルに生活環境の確保の視点を盛り込んだ上で、市町村に避難所運営マニュアルの整備を助言してきた結果、ことし4月1日時点で県内31市町村が作成しており、残る2町も今年度中に作成する見込みとなっております。
 最近では、避難所に指定されている公共施設に空調設備を設置する動きが広がりつつあり、再エネ設備や高効率空調設備の導入を支援する国の地域レジリエンス補助金を活用することなども市町村に促してまいります。
 また、能登半島地震では車中泊の避難者への支援が課題となったことを踏まえ、先月18日には避難所以外の被災者の把握に関する実証実験を行ったところであり、そのような教訓を生かすための取り組みを今後も行ってまいります。
 次に、孤立集落対策についてでありますが、能登半島地震で孤立集落対策が課題となったことを踏まえ、県内で孤立する可能性のある集落について、各種物資の備蓄状況、情報通信手段の確保状況などを今年度改めて調査しているところです。
 また、来月10日に予定している県の総合防災訓練では、孤立集落を想定した防災ヘリによる救助訓練も実施することとしております。
 さらに、能登半島地震では、孤立集落への物資輸送にドローンが試験的に活用されたところであり、そのような新たな技術の活用の可能性についても検討してまいります。
   〔農林水産部長佐藤法之君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤法之君) まず、米政策についてでありますが、国では、米の受給及び価格の安定を図るため、全国の需給の見通しを策定するとともに、価格や在庫などの情報を提供しており、各都道府県では、これらを踏まえ、需要に応じた主食用米の生産と水田の有効活用による麦、大豆や園芸作物等の生産拡大を進めています。
 令和5年産米については、高温、渇水の影響による精米歩どまりの低下、米以外の食料品の価格上昇やインバウンド等の人流の増加により民間在庫が減少したところに、ことし8月の地震、台風等による買いだめの動きなどが重なり、全国的に店頭の米が品薄になったものと承知しています。
 県としては、米の需給と価格の安定を通じて生産者の所得確保が図られることが重要と考え、これまで国に対し、米の需給調整の着実な推進を要望してきたところであり、今後とも、国の動向を注視しながら、必要な対策を求めていきます。
 次に、政府備蓄米支援制度の周知等についてでありますが、国では、子供にごはん食の魅力などを伝える食育の取り組みとして、こども食堂や、子育て家庭に食材を届けるこども宅食を実施する団体に対し政府備蓄米の無償交付を行っており、高田一郎議員御紹介のとおり、ことし9月から、交付申請窓口の拡大や受付期間の通年化など、こども食堂等が利用しやすい運用に改善されたところです。
 この無償交付については、これまでも国から全国団体等を通じて周知しているほか、県からも、対象となる団体や関係機関等に周知してきたところであり、今回の運用改善についても情報提供を行っています。
 今後も、県民に食事や食材を提供する団体の活動支援に向け、関係部局と連携しながら周知等に取り組んでいきます。
 次に、物価高騰対策についてでありますが、県ではこれまで、飼料価格の上昇分や、土地改良区が管理する農業水利施設の電気代の上昇分を支援する国事業の活用を進めるとともに、県独自に飼料の購入費や農業水利施設の電気代への支援などを実施してきたところです。
 現在の農業生産資材等の価格は依然として高く、農業経営に大きな影響を与えています。このため、配合飼料については、国に対し、価格高騰が続いた場合でも畜産経営体の再生産が可能となる十分な補填金が交付されるよう、配合飼料価格安定制度の拡充を繰り返し要望するとともに、生産コストのさらなる低減に向け、自給飼料の生産拡大を推進しています。
 農業水利施設については、今年度新たに、国に対し、維持管理費の増加分への支援を要望するとともに、消費電力の少ないポンプへの更新などに取り組む土地改良区を支援しており、今後も農業経営の安定が図られるよう取り組んでいきます。
 次に、家畜人工授精業務についてでありますが、県では広域振興局が主体となり、盛岡地域と遠野地域の市町や農業協同組合、農業共済組合等と地域の家畜人工授精業務が継続できるよう検討を重ねており、8月末現在、対象となる328戸のうち約5割の継承先が決定しています。こうした検討状況や継承先に関する情報は、対象農家等に対して適時説明を行っています。
 また、安定的な家畜人工授精業務の実施に向け、家畜改良増殖法に基づく講習会を開催し、家畜人工授精師の免許取得を支援するとともに、家畜人工授精業務の施設開設を許可しており、今後も、各地域の実情に応じて家畜人工授精業務が継続的に提供されるよう取り組んでいきます。
 産業動物獣医師の確保に向けましては、獣医学生に対する修学資金の貸付などを行っており、今後も獣医師確保に積極的に取り組んでいきます。
 次に、食料・農業・農村基本計画についてでありますが、本県では、地域農業の核となる経営体を中心として、小規模・兼業農家など多くの経営体が生産活動に携わっており、こうした経営体が将来にわたり意欲を持って生産活動に取り組むことのできる環境を整備していくことが重要です。
 県では、国に対し、本年6月に実施した令和7年度政府予算に対する提言・要望において、食料安全保障の強化や国内生産の増大に向けた対策の一層の推進、適正な価格形成、取引を推進するための仕組みの早期の構築や消費者等の理解の醸成などを要望したところです。
 また、現在、国において基本計画の策定に向けた議論が進められていることを踏まえ、6月に実施した提言・要望に加え、食料供給の現場である地方の実情を踏まえた基本計画の策定と各施策の充実強化を要望したところであり、今後もさまざまな機会を捉え、国に働きかけてまいります。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) まず、不登校対策に係る認識についてでありますが、令和4年度の文部科学省の調査によれば、本県の不登校児童生徒数は小中高合わせて2、588人で過去最多となっており、全国と同様に、近年、増加傾向にあります。
 学校教育の意義、役割は、各個人の有する能力を伸ばしつつ、社会において自立的に生きる基礎を養うとともに、社会の形成者として必要とされる基本的な資質を培うことを目的としており、その役割は極めて大きいと言えます。
 また、学校は多くの人たちとのかかわりの中でさまざまな体験や経験を通して、実社会に出て役立つ生きる力を養う場であり、学校教育を受ける機会、周囲の児童生徒と交流や切磋琢磨する機会を得られないことは、当該児童生徒が将来にわたって社会的自立を目指す上でのリスクとなる可能性があります。
 不登校対策は、学校、教育関係者、家庭はもとより、医療、福祉等の関係機関、地域、民間団体等、多くの方々の御協力をいただきながら、児童生徒の社会的な自立を目指して取り組むべき重要な課題であると認識しております。
 次に、学習定着度状況調査についてでありますが、国連子どもの権利委員会は、日本におけるいじめの問題を指摘しつつ、いじめ防止の対策や学校におけるストレスの軽減について勧告しており、日本全体として、いじめ、不登校の問題があり、岩手県も同様であるため、その対策を講じる必要があるものと考えております。
 国は、教育振興基本計画において、日本社会に根ざしたウエルビーイングの向上等を掲げており、岩手県教育振興計画(2024〜2028)においても、国のこの方針等を踏まえ、学校教育の目指す姿を、岩手県の子どもたちが自分らしくいきいきと学び、夢を育み、希望あるいわてを創造する、生きる力を身につけている、としているところです。
 学習定着度状況調査は、児童生徒一人一人の学習の定着状況と分析結果から、つまずきの内容や要因等を把握し、一人一人を伸ばす指導の充実、教員の指導力向上を図るために実施しているものであります。実施に当たっては、序列化や過度な競争が生じることのないようにするなど、教育上の効果や影響等に十分配慮するとともに、令和3年度からは小中学校ともに2教科に精選して実施しているところであり、今後もICTの活用も見据えて適切に取り組んでまいります。
 次に、不登校急増の要因等についてでありますが、令和4年度の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査によりますと、文部科学省では、小中学校における不登校の背景や要因について、長期化するコロナ禍による生活環境の変化により生活リズムが乱れやすい状況が続いたことや、学校生活においてさまざまな制限がある中で交友関係を築くことが難しかったことなど、登校する意欲がわきにくい状況にあったこと等も背景として考えられるとの見解を示しているところであり、本県においても同様の認識をしております。
 本県におきましては、従前から心とからだの健康観察などの諸調査により、県内全ての小中高、特別支援学校の児童生徒を対象に、一人一人の心の健康状態や児童生徒が抱えているストレスの状況を把握するほか、県立学校では、1人1台端末を利用した、こころの相談室などにより、児童生徒の悩みや相談を受ける取り組みを行っているところです。
 また、県教育委員会では、社会福祉士などの資格を有する18名のスクールソーシャルワーカーを本庁及び教育事務所に配置し、県内全ての市町村の小、中学校を対象に、問題を抱える児童生徒に対して、関係機関と連携して、組織的、継続的に相談や支援に当たっております。
 次に、スクールカウンセラーについてでありますが、県教育委員会では、66名のスクールカウンセラーを任用し、県内小中学校、高等学校、特別支援学校に定期、もしくは要請に応じて訪問することにより、県内全ての公立学校での相談に対応できる体制を整えているところです。
 そのうち、より課題を抱える小学校13校、中学校55校に対しては、スクールカウンセラーが重点的に訪問し、いじめ、不登校等の課題を抱える児童生徒の早期発見、早期対応に取り組んでいるところです。
 令和5年度のスクールカウンセラーへの相談件数は3万2、541件であり、主な相談内容は、心身の健康、保健7、526件、友人関係3、874件、不登校3、375件などとなっております。
 スクールカウンセラーは、各校の教育相談担当や関係職員と連携しながら、チーム学校として適切に対応しているものと認識しております。
 次に、不登校児童生徒の多様な学びへの対応についてでありますが、不登校児童生徒への支援は、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童生徒がみずからの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があるとされております。
 そういった中で、全国的に、教育支援センター、フリースクール等の民間団体、学びの多様化学校、オンライン活用など、児童生徒一人一人に応じた多様な学びの方策が広がってきているものと承知しております。
 県教育委員会では、いわて県民計画(2019〜2028)第2期アクションプランにおいて、令和8年度までに県内全ての市町村に教育支援センターが設置されることを目標とし、その整備を支援しており、現在、27市町村において整備されております。
 フリースクールへの公的支援については、他県の調査によりますと、運営費補助等の財政支援を行っている自治体が11都府県あるものと承知しております。
〇25番(高田一郎君) それでは、再質問いたします。
 まず、賃上げ支援について質問いたします。
 今回の最低賃金59円の引き上げというのは、年収にしてみれば、大体12万円から13万円程度になるかと思います。しかも、事業者にとっては社会保険料の負担も伴うものでありますので、事業主としては大変厳しい環境の中で賃上げしなければならないという状況になっています。
 今、小規模事業所の中には、従業員の労働時間を減らして、自分はさらにその分、労働時間を長くして、給与まで減らして、雇用と会社を守るために必死になって頑張っている状況があります。岩渕企画理事兼商工労働観光部長からは生産性の向上が大事だという指摘もあり、これも大事だと思うのですけれども、現局面において思うのは、このままでは賃上げ倒産になるような状況になっているのではないかと思います。直接支援というのがどうしても必要だと思いますけれども、まず、この必要性についてお伺いしたいと思います。
 あとは、東北地方の中小企業は、コストの上昇分41%しか価格転嫁できていないという調査結果も報道されております。利益率が低下して防衛的な賃上げにならざるを得ないという状況になっています。消費者の節約志向もあって、なかなか利益が出なくて厳しい状況が恐らくずっと続くのだろうと思います。
 そういう中にあって、一昨年前に行った中小企業等事業継続緊急支援金は、今、どうしても必要なのではないかと思います。あのときに中小事業者の皆さんは、これがあったから継続して頑張ろうという気持ちになっていたということを今、思い出しました。賃上げ支援金とセットでこうした緊急支援をやるべきだと思うのですけれども、ぜひ検討していただきたい。もし検討状況を紹介できるのであれば、紹介していただきたいと思います。
 次に、不登校問題について、改めて教育長にお聞きしたいと思います。
 今、子供が少子化の中でどんどん減っている中で、教育現場になじめない子供がどんどんふえている。小中学校だけで、5年前に1、200人程度だったものが今は2、000人を超えている。物すごい急速な勢いで不登校がふえているということは本当に深刻な問題だと思います。
 不登校の原因について、全国調査では、子供と学校との評価が乖離しているという調査結果もありまして、文部科学省自身もこれを認めているのです。不登校になっている子供や、あるいはそれを経験した子供、保護者などにアンケートなどを行って、実態調査を行って、子供の立場に立って不登校問題に取り組む必要があるのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
 最近、私は学童クラブの指導員、先生とお話をする機会がありました。最近、疲れた顔で学童クラブに来る子供が前と比べてふえているのではないか。また、ただいまと元気な声をかけて学童クラブに来る子供も、つまり、本当に解放されたという感じで来る子供も前と比べてふえてきており、子供たちが緊張とストレスの中にあるのではないかというお話もされました。
 そこにあるのは、国連子ども権利委員会が指摘している勧告だと思っております。教育長はコロナ禍や交流関係の変化だと原因について説明をしていましたけれども、そこは、私は一つの要因だと思いますけれども、根本にあるのは国連の子ども権利委員会の指摘だと思っています。
 2019年の勧告では、余りにも競争的なシステムとなっている学校環境から子供を解放する措置を評価するという表現で政府に勧告しています。私は、学力テストや点数で評価する、授業時間をふやして先生はふやさないという教育のあり方というものを根本から変えていかなければならないと思います。
 そこで、教育長にお伺いしたいのですけれども、今、毎日、授業時間が6時間になっているということに対して、子供たちに大変負担がかかっているのではないかという専門家の指摘もあります。年内にこれから学習指導要領の審議が始まりますけれども、この点について、教育長はどのようなお考えを持っているのでしょうか。
 また、授業時間の問題については、現在、標準時間数があります。これをはるかに超えて授業をやっている学校もあります。この実態はどうなっているのでしょうか。改善が必要ないのでしょうか。この点についてお伺いします。
 また、学力テストの問題についても冒頭、質問いたしました。私たちは県版学力テストは中止すべきだということを求めてきましたけれども、ことしから青森県が学力テストをやめるということを決めました。教育長はその理由をどのように把握されているのか、まず、この点についてお聞きします。
〇企画理事兼商工労働観光部長(岩渕伸也君) 賃上げ支援金についてでございますけれども、中小企業が賃上げを行うためには、利益を出して、利益率を高めて、賃上げ原資を確保しなければいけないという大前提のもとに、私は円滑な価格転嫁を進めること、そして生産性向上を進めることと答弁させていただきました。
 一方で、今回の最低賃金の引き上げというのは、国は全国一律目安額50円という物すごく大きな金額を示して、それに対して都道府県別にさらに上乗せしていて、岩手県も全国で2番目の引き上げ率になっています。これは、いい面と大変な面が両方あろうかと思います。
 今の県内の中小企業者が防衛的な賃上げを余儀なくされているという状況も答弁いたしておりますけれども、そういう状況も十分に承知しておりますので、そういうことを踏まえながら、今後対策を検討していきたいと思います。
 それから、令和5年度まで実施しておりました中小企業者等事業継続緊急支援金についてでございますけれども、当時の急激な物価高騰によって経営に影響が生じた中小企業者等の事業継続のため、直接的な支援として緊急的に実施したものだと考えております。
 今も中小企業者は引き続き厳しい経営環境にありますけれども、ここで大事になってくるのは、消費の拡大と賃金の上昇の好循環、物価高騰に負けない賃上げであり、これを実現するための大胆な経済対策をやっていかないと、いつまでも根本的な問題が解決しないということになりますので、大胆な経済対策を国に働きかけながら、県でもどこまでの支援ができるのかしっかりと検討してまいりたいと考えております。
〇教育長(佐藤一男君) 何点かお尋ねを頂戴いたしました。
 子供の不登校の実態調査、子供の意見を聞くべきではないかということでございますが、先ほど答弁申し上げましたとおり、本県は唯一だと思いますが、震災後、心とからだの健康観察をずっと続けておりますし、1人1台端末を利用して、こころの相談室ということで状況を確認しています。
 また、不登校生徒支援連絡会議という会議がございます。この場でさまざまな不登校の経験者、あるいは保護者の体験談をお話しいただくという取り組みや、これは来月実施いたしますが、フリースクールの代表者、あるいはスクールソーシャルワーカーなどによるパネルディスカッションといったものを通じながら、不登校児童生徒、あるいは保護者の思いや実態をしっかり把握していきたいと考えております。
 それから、2点目に、標準時間についてということでお話を頂戴いたしました。昨年度、文部科学省から、全国的に標準時間をオーバーしている学校があるのではないかということで調査しています。本県も基本的に毎年度調査しておりますが、かつてのように著しく標準時間を超える学校は極めてレアだと思っていますが、標準時数をかなり超えているような学校については、しっかりと是正を指導しているところでございます。
 それから、学力テストについては、青森県の例があるということでございましたが、青森県の具体の廃止理由は直接的には伺っておりませんが、全国的には令和5年度ですと32県が県版の学力テストを実施しており、実施していない県が15という状況でありまして、それぞれ各県の必要性の判断に基づいて実施されていると理解しております。
〇25番(高田一郎君) 中小企業対策については、岩渕企画理事兼商工労働観光部長がおっしゃるように、支援金をずっと続けても大変なので、好循環の経済にしていかないといけないというのはそのとおりだと思います。今後の対策を検討していくという内容でありましたので、今後、展開を期待したいと思います。
 不登校に関連して幾つか質問したのですけれども、青森県が廃止した理由は四つあって、教員がみずからの授業を磨くための時間を確保することが必要だということが大きな理由です。国の学力テストで十分だということです。県の学力テストを中止して、その分、先生たちの授業時間の準備などに充てるべきだと、これが、青森県が廃止した結論なのです。独自にやっている自治体が多いといいますけれども、なくしていく自治体のほうがどんどんふえているのではないかという思いをしていますので、青森県の対応を把握して、検討していただきたいと思います。
 不登校の問題でお聞きしたいのは、不登校児童に一人残らず相談や支援が届くようにする必要があると、文部科学省のCOCOROプランでも強調されております。今、岩手県には高校を含めて2、558人の不登校児童生徒がいるのですが、岩手県の場合、国が求めている一人一人に寄り添って、一人一人に相談や支援が本当に届いているのだろうかと思うのですけれども、この辺いかがでしょうか。
 そして、そのための支援の一つとして、教育支援センターが先ほども議論にありました。現場のお話、あるいは保護者の皆さんのお話を聞きますと、例えば、回数をふやしてほしいとか、しかし、集団が大きくなり過ぎると子供が来なくなってしまう。そして、アウトリーチ支援もしたいのだけれども、体制的にできないという声もありました。校内教室についても、一関市などは別室教室を設けてオンライン教育をやって、非常に成果を上げているというお話も直接、先生などから聞きました。しかし、学校現場は大変忙しい。体制も不十分だということもあって、岩手県の場合、校内教室の設置率は半分に満たない46%になっているという状況です。
 地域地域によってさまざまな課題があります。そういった地域の不登校対策でとられている問題について、よく課題を把握して必要な支援に結びつけていくべきではないかと思いますが、この点についてお聞きしたいと思います。
〇教育長(佐藤一男君) 今、高田一郎議員からさまざま課題等を御指摘いただきましたが、本県でも教育支援センターの設置、校内支援センターの設置、フリースクールとの連携、ソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの配置等々、先ほど御答弁申し上げたとおり、取り組みをしておりますが、課題として挙げられるのは、それが届いていない、いわば家庭にひきこもりの状態のお子様と言ったらいいのでしょうか、3割弱の児童生徒がいらっしゃるということですので、そういったところにどういうふうにアプローチしていくかというのは課題だと考えております。
 学校の担任の先生や養護教諭もさまざま御苦労しながら、何とか接触したい、あるいは、ソーシャルワーカーとも連携して取り組みを進めておりますが、必ずしも皆さん接触できている状況ではないというお子さんもいらっしゃるということであります。
 ここは引き続き課題であります。そういったものについて、多くの知恵をおかりしながら取り組んでいく必要はあろうかと思っています。大きな社会的課題ということでもありますので、学校、教育関係者のみならず、先ほど申し上げたとおり、多くの関係者の御協力、御支援をいただきながら対応してまいりたいと思っております。
〇25番(高田一郎君) 最後にいたしますけれども、先ほどフリースクールのことも教育長が触れられました。これからフリースクールの方々と連携して、さまざまな問題に取り組んでいきたいという話がありました。不登校問題でフリースクールの果たしている役割は大変大きいと私は思っています。しかし、実際は、月謝が全国平均3万3、000円と言われていますけれども、県内でもそういう状況です。中には一関市にあるフリースクールなどは、月額5、000円というところもあります。しかし、よく聞いてみますと、寄附とほとんどボランティアによるスタッフに頼っているという状況で、非常に安定していない状況になっているわけです。
 遠くから通う子供たちもいます。一関市の場合は、北上市や奥州市などから通っている子供たちもいます。親にしてみれば大きな負担になると思いますし、学びの保障や、居場所を子供たちに保障していくという点で、フリースクールに対する支援は欠かせないと思います。
 先ほど教育長が答弁したように、全国で11の都道府県レベルで支援が行われております。これは施設経営に対する支援だけではなく、月謝についても2分の1助成、三重県は月額1万5、000円、東京都は2万円など、こういう財政支援を具体的に行っています。こういった自治体も参考にしながら、そういった方々にしっかりと財政支援ができるように、県としても検討していただきたいと思いますけれども、この点を教育長にお伺いして、終わりたいと思います。
〇教育長(佐藤一男君) フリースクールへの支援というお話を頂戴いたしました。全国的にさまざまな方法でフリースクールとの連携、支援が行われているものと承知しておりますし、そういった情報収集は続けていきたいと思いますが、本県としましては、先ほど申し上げましたとおり、まずは、教育支援センターの全市町村への配置、それから、スペシャルサポートルーム、校内支援センター、これは国の補助制度がありますので、こういったものをどんどん市町村に使っていただく。それから、不登校児童生徒支援連絡会議を通じてのフリースクールとの連携を通じて取り組んでまいりたいと考えております。
〇議長(工藤大輔君) 以上をもって高田一郎君の一般質問を終わります。
 これをもって一般質問を終結いたします。
   
   日程第2 認定第1号令和5年度岩手県一般会計歳入歳出決算から日程第45 議案第32号令和6年度岩手県一般会計補正予算(第5号)まで
〇議長(工藤大輔君) この際、日程第2、認定第1号から日程第45、議案第32号までを一括議題といたします。
 これより質疑に入ります。
 質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。

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