令和6年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇28番(吉田敬子君) いわて新政会の吉田敬子です。
 発議案第4号選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書について、提案理由を申し上げます。
 提案に当たり、御賛同、御署名いただきました議員各位に心から感謝を申し上げます。
 現行の民法では、婚姻する際、夫または妻のいずれか一方が必ず姓を改めなければなりません。妻の姓、夫の姓のいずれの姓を選ぶことも可能ではあるものの、実際には95%の夫婦が夫の姓を選び、妻が姓を改めている実態があります。その中には、希望しないのに、さまざまな実情からやむなく改姓を受け入れる人、改姓により仕事などの社会生活に不便を来している人がいます。また、婚姻を望みながら、改姓が制約となり法律上の婚姻を断念する人もいます。
 結婚後も夫婦がともにそれぞれの姓を名乗ることができる選択的夫婦別姓制度は、平成8年には、法制審議会で導入の指針が示されたにもかかわらず、実現されないまま既に四半世紀以上が経過しています。
 最高裁判所は、平成27年12月の判決と令和3年6月の決定において、現在の夫婦同姓制度が、憲法に違反していない、いわゆる合憲と判断しましたが、これらの判断は、夫婦別姓制度の導入を否定したものではなく、夫婦の姓に関する制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないとして、国会での議論を促したものです。
 令和4年3月の内閣府の調査では、現在の夫婦同姓制度を維持したほうがよいが27%、現在の夫婦同姓制度を維持した上で旧姓の通称使用についての法制度を設けたほうがよいが42.2%、選択的夫婦別姓制度を導入したほうがよいが28.9%となっています。
 また、直近では、ことし4月のNHKの調査では、選択的夫婦別姓について、賛成が62%、反対が27%となっていて、時代の変化とともに家族観に対する国民の意識が変化してきていることがうかがえます。
 選択的夫婦別姓制度は、家族のきずなや一体感を損ねるものであるとしてその導入に反対する意見があります。しかし、この制度の導入は、それらを不要とする考えに基づくものでは決してありません。そして、個人の価値観が多様化し家族のあり方も大きく変化している現在、家族のきずなや一体感を強めるものは何かという問いは、まさに個人の思想や生き方に深くかかわるものであり、一律の答えを見出せるものではなく、憲法第14条の法のもとの平等にも反していると、日本弁護士連合会も決議されています。
 また、選択的夫婦別姓制度は、婚姻に際して同姓になりたいと希望する夫婦に、何ら影響を及ぼすものでも一切ありません。そういった夫婦は、それぞれの希望に従って一つの姓を選択すればよいだけなのです。
 世界各国の婚姻制度を見ても、夫婦同姓を法律で義務づけている国は、日本のほかには見当たりません。世界で人権意識がますます高まる中、国連女性差別撤廃委員会は、日本に対し、人権侵害やジェンダー平等といった観点から、平成15年、平成21年及び平成28年の3度にわたり、女性が婚姻前の姓を保持することを可能にする法整備を勧告しています。
 人口の半分を占める女性のエンパワーメントにおいて、日本は世界に大きく立ちおくれており、取り組みの加速化が急務であることは御承知のとおりです。官民の職場では、女性の社会進出の進展を踏まえ、改姓によるキャリアの分断等を避けるため、職場における旧姓の通称としての使用を推進してきましたが、通称は法律上の姓ではないため、旧姓併記を拡大するだけでは解決できない課題も多いのが現状です。
 また、通称使用は日本独自の制度であることから、海外では理解されづらいなど、ビジネスの現場においても、女性活躍が進めば進むほど通称使用による弊害が顕在化するようになり、企業経営の視点からも無視できない重大な課題であるとし、一般社団法人日本経済団体連合会は、ことし6月に、選択的夫婦別姓制度導入等の早期実現を政府に求める提言をまとめました。
 さらには、経営者や研究者らでつくる一般社団法人日本取締役協会は、昨日7月3日、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める声明を発表されました。
 長きにわたり先人たちがこれまで培ってきた伝統や文化を大切に継承することは大切なことです。しかし、それと同時に、世の中の不条理なこと、つらいこと、悲しいことと闘ってきた方々がいること、今現在もいらっしゃることを忘れてはいけません。
 全ての国民は法のもとに平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない、自分の人生は自分で決めてよいと、日本国憲法第14条が保障しています。
 異なる選択をする他者を許容し尊重できる社会であるかどうかが、今問われているのではないでしょうか。さまざまな価値観や多様性を包摂し、誰もが生きやすい社会を実現するために、特にも若い世代、子供たち一人一人が、それぞれの考えのもと生き方を選択できる社会の実現のため、選択的夫婦別姓制度の議論が、社会に開かれた形で国会において議論されるべきであります。
 以上、国においては選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正を行うよう求め、意見書を提出しようとするものであります。議員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げ、提案理由の説明といたします。(拍手)
〇議長(工藤大輔君) これより質疑に入るのでありますが、通告がありませんので、質疑なしと認め、質疑を終結いたします。
 お諮りいたします。ただいま議題となっております発議案第4号は、会議規則第34条第3項の規定により、委員会の付託を省略いたしたいと思います。これに御異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇議長(工藤大輔君) 御異議なしと認めます。よって、発議案第4号は、委員会の付託を省略することに決定いたしました。
 これより討論に入ります。
 討論の通告がありますので、発言を許します。高橋穏至君。
   〔19番高橋穏至君登壇〕

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