令和6年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録 |
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〇25番(高田一郎君) 日本共産党の高田一郎でございます。
発議案第3号持続可能な農業・農村の実現と食料安全保障の強化を求める意見書に、反対の立場で討論を行います。 ただいま提案されました意見書案では、さきの国会で成立した食料・農業・農村基本法の改正法に沿った基本計画の具体化を図るとともに、食料供給困難事態対策法について、国民の理解が得られるよう国に万全の対応を求める内容となっております。 今回の食料・農業・農村基本法の改正は、第1に、これまでの基本法の唯一の目標としてきた食料自給率の向上目標を、その他の目標の一つに格下げし、そして、国政の課題としてまともに追求する姿勢を投げ捨ててしまいました。 さらに、これまで、食料の安定供給は国内生産の増大を図ることを基本とし、輸入及び備蓄を適切に組み合わせるとしていたものを、今回の改正では、安定的な輸入の確保に置きかえてしまいました。この間、義務でもないミニマム・アクセス米を毎年、国内生産量の1割、77万トンも輸入し、カレント・アクセスなど乳製品の輸入に対して、農家に生産調整、乳牛の淘汰などを求めてきましたが、さらに輸入への依存あるいは拡充する輸入継続宣言となってしまいました。 食料・農業・農村基本法の見直しに乗り出した背景には、深刻化する気候危機、コロナ禍、そしてウクライナ戦争、新興国の食料の増大など近年の世界の食料事情があります。基本法の改正は、そうした世界の食料情勢が求める方向とも、そして消費者、農家の求める願いにも逆行するものとなりました。 第2に、今日の危機を招いた農政に対する検証と反省がないまま、これまでのその基本路線をさらに進めようとするもので、危機打開どころか、さらに深刻にさせる基本法となっています。 今、日本の農政に求められているのは、再生産可能な農産物価格の実現であります。肥料、飼料、燃料などの資材価格がかつてなく高騰する一方、農畜産物の価格は低迷し、農業経営の破綻が急速に広がっているからであります。 実際、稲作経営でいえば、農家の平均所得は、実に時給10円、酪農は、餌代高騰で搾れば搾るほど赤字、2022年の所得は、全国平均マイナス49万円という悲惨な事態であります。日本から酪農の明かりが消えかねない事態となっています。 1961年施行の農業基本法では、農業は他産業に比べ自然的、社会的、経済的に不利があり、その格差を埋めるのが国の責任と明記しました。それが都市勤労者並みの所得を保障する政府買い入れ米価の根拠にもなっておりました。しかし、現行の基本法はそうした理念を投げ捨てて、農産物を市場原理に委ねて価格下落を放棄してきたのであります。 政府は国会審議の中で、価格保障、所得補償は農業者の生産性向上の意欲をそぐと拒否をし、今回の新たな基本法には、国は、食料の持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるよう、関係者の理解の増進、合理的な費用の明確化が盛り込まれました。結局、消費者、食品加工業、流通業者などの考慮、理解に委ねるだけであります。 農業の担い手政策についても、これまでの大規模化路線を一段と加速しようとしております。これまで、小規模農家は非効率だといって淘汰してきましたけれども、新しい基本法では、効率的、安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を望ましい農業構造として位置づけています。しかし、この望ましい農業構造は破綻し、農業基幹従事者は2000年の240万人から2023年には116万人と半減し、農村が維持できない危機的な事態であります。 株式会社三菱総合研究所が昨年7月、我が国の中長期的な穀物の見通しを示しました。農業経営体の激減で2050年には主食用米が最大156万トン不足し、米と麦などを200万トン追加輸入する事態になると警告しております。三菱総合研究所の描くシナリオは絵空事と言って無視することはできません。そして、この期に及んで、従来の路線に固執し自給率向上を投げ捨てるところに、新しい基本法の行き詰まりがあります。 加えて、意見書では、食料供給困難事態対策法の周知やこれに対する財政措置を求めています。新しい基本法では、不測の事態における措置を新設し、この具体化を図るものが食料供給困難事態対策法で、いわゆる戦時食糧法とも言える法律となっています。 不測の事態に備えるのであれば、政府がやるべきことは、平時から国内増産に取り組み、食料自給率を向上させることであります。本来自由に行うことができる作付の増産や転換を強要し罰則まで科すことは、自己の従事する職業を決定する自由の保障を含む憲法第22条を侵害しかねません。岸田政権の戦争する国づくりを目指す安全保障関連3文書と軌を一にしたものであります。十分な制度周知や財政措置ではなく、廃止こそ求めていくべきものであります。 新しい食料・農業・農村基本法では、国民の食の安定的確保ができません。食料の安全保障というのであれば、歯どめなき輸入自由化、そして、市場任せの農政を転換して、価格保障、所得補償で農業の持続的な発展や農村の振興を図り、自給率を高めていくべきであります。 以上が反対する理由であります。御清聴ありがとうございました。(拍手) 〇議長(工藤大輔君) 以上で通告による討論は終わりました。 これをもって討論を終結いたします。 これより、発議案第3号持続可能な農業・農村の実現と食料安全保障の強化を求める意見書を採決いたします。 本案は、原案のとおり決することに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 〇議長(工藤大輔君) 起立多数であります。よって、発議案第3号は、原案のとおり可決されました。 日程第20 発議案第4号選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書 〇議長(工藤大輔君) 次に、日程第20、発議案第4号選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書を議題といたします。 提出者の説明を求めます。吉田敬子さん。 〔28番吉田敬子君登壇〕 |
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