令和6年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録 |
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〇16番(菅野ひろのり君) 希望いわて所属、立憲民主党の菅野ひろのりでございます。
発議案第3号持続可能な農業・農村の実現と食料安全保障の強化を求める意見書に、反対の立場から討論をいたします。 冒頭、誤解のないように申し上げると、件名のとおり、食料安全保障の強化を求めることは、希望いわても賛成であります。問題は、発議案の内容が矮小化されているのではないかという懸念です。 食料安全保障の強化は国家最大の責務であり、WTOやTPP等、貿易自由化による安価な海外農畜産物の輸入増加、長引くデフレによる価格の低迷、収益性悪化による農業従事者の減少、耕作放棄地の増加など農業生産基盤の弱体化が進んでいる現状、また、農政史の変節を踏まえ、生産者、事業者、消費者等、多角的な視点を捉えた意見書であるべきだと考えています。 しかし、本意見書は、何かから項目を抜き出したように、食料安全保障の強化が適正な価格形成に絞られています。また、国会では、その関連法案の提出や審議もなく、地方議会から唐突に中身が示されない適正価格の法制化を求めることに、大きな違和感を覚えました。 以下4点、具体的に述べます。 1点目、適正な価格形成が強調され、適正な価格形成が食料安全保障の強化だと捉えられる点です。 御存じのとおり、農畜産物の価格形成は、市場原理で決定されるのが基本です。そして、生産者から消費者に農畜産物が届くまでの流通過程では、多くの業者が介在し、生産者の生産コストや生産資材高騰によるコスト上昇分が仮に価格に転嫁されたとしても、農家の手取り収入に直接反映されるのは非現実的ではないでしょうか。 一方で、適正な価格形成については、状況は異なりますが、市場が寡占化され、競争原理が働きづらいフランスのEGalim法という実例があるようですから、早急な法制化ではなく、実態に即した調査、研究にとどめるべきだと考えています。 2点目として、生産者のみではなく、消費者の視点も忘れてはなりません。 消費者、すなわち国民の生活の立場に立てば、全ての国民が、良質で安全・安心な食料を少しでも安い価格で、いつでも入手できる状態にするのが食料安全保障です。現在は、食料品の値上がりが続き国民生活を圧迫している状況であり、一方で、実質賃金は30年近く下落、また、国民の税負担は、昨年、5割5分を超える、生活が大変苦しい日本社会です。 発議案にあるように、生産資材等のコスト上昇分を一概に価格に転嫁すれば、国民の生活はより一層苦しくなるでしょう。飲食業や観光業への影響も懸念されます。ですから、ほかの政策なくして適切な価格形成を強調し過ぎること、法制化を求めることは、現時点では時期尚早だと考えています。 3点目、農業者の所得確保の観点が欠落していることです。 食料の安定供給には、農業者の営農継続が持続的に行えるようにしなければならず、農業人口の減少を見ても、所得が十分に確保されていないことが明らかです。農業では食えないのです。だから、農業者にとって適正な価格形成の本質とは、生産コストに見合った対価が、最終的に所得として反映されるかが重要なのです。 価格政策と所得政策を2軸同時並行で行い、再生産可能な所得を確保するため、所得の保障については農業者に直接的に行うべきです。すなわち、それが直接支払制度です。 4点目は、その直接支払制度についてです。 発議案第3号の1において、次期食料・農業・農村基本計画の策定に当たり、農業者の意見を十分に反映した実効性のある施策を講ずると求めております。 本年5月、先ほどもありましたが、岩手県で開催された参議院農林水産委員会地方公聴会では、公述人に招致されたJA全農岩手県本部高橋本部長を初め、自由民主党が招致した農業法人経営者の方、全ての方が直接支払制度を求めておりました。現在の農業政策では、大規模経営であれ家族経営であれ、所得の確保が困難だからです。県民の声に耳を傾けて意見を十分に反映すべき法整備は、令和版の直接支払制度であります。 最後に、食料生産を担う本県のような農村地域では、農業者は地域の最後のとりででもあります。農業者がこれからも農業生産が継続的に行えるよう、所得政策と価格政策、農業政策と農村政策を一体で行うことが、日本の農業と農村を守り、食料安全保障の強化につながることだと確信しています。 皆様の御賛同を賜りますようお願い申し上げ、反対討論を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手) 〇議長(工藤大輔君) 次に、佐々木宣和君。 〔20番佐々木宣和君登壇〕 |
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