令和6年6月定例会 第5回岩手県議会定例会会議録

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〇44番(関根敏伸君) 希望いわての関根敏伸でございます。一般質問の機会を与えていただきましたことに感謝を申し上げます。私なりの課題認識に基づきまして準備をいたしました6項目にわたり、順次質問をさせていただきます。
 最初に、日本経済の現状認識と地方への影響についてお伺いいたします。
 円安の流れがとまっておりません。4月には一時、34年ぶりとなる160円台を記録いたしましたが、直近では、さらにそれを超える水準となっております。
 戦後、輸出を中心に経済を発展させてきた日本は、基本的に円安を歓迎し、そこに基準を当てた政策を実行してまいりました。確かに、現在の円安、株高を背景に、東証一部上場企業の多くが過去最高の営業利益を記録し、日本経済の牽引の象徴でもあるトヨタ自動車株式会社では、営業利益が5兆円を超え、大手自動車7社での円安効果の合計が1兆1、000億円に達したとの報道もあります。トヨタ自動車株式会社では、今後、この利益をEVやハイブリッド車へのさらなる投資に振り向けるとのことでもあり、岩手県としても大きく期待をし、歓迎したいものであります。
 このように、輸出関連産業を中心に円安は大きな追い風となる一方、輸出によって得られた国富が、化石燃料の輸入やデジタル赤字の双子の赤字により3年連続貿易収支が赤字となっているなど、かつては歓迎の方向を示していた経済界からも、行き過ぎた円安に、懸念の声が上がり始めております。
 現在の円安政策を誘導した第2次安倍政権が発足した当時の円は、対ドルで75円程度であります。当時は、日本のGDPが中国に抜かれ第3位に転落し、日本を取り戻すとのキャッチフレーズを掲げ、日本銀行と協調した異次元の金融緩和などの3本の矢によるアベノミクスがスタートを切りましたが、当時の円との比較から、現在の円安が、国の政策的誘導の結果であることは明らかであります。
 また、首都圏や大企業での経済回復の流れが、いずれ地方や中小企業に滴り落ちるというトリクルダウン理論のもと進められたものでもありますが、今日に至るまで、その好循環を体現するには至っておらず、GDPそのものの伸びも微増にとどまっております。
 そもそも今となってみれば、アベノミクスは首都圏と地方の格差を誘引する引き金になってしまったのではないかと思われますし、その後に続く政権でも、基本的な経済金融政策が受け継がれている現状に鑑み、政策の検証をすることが今こそ必要ではないかと考えます。
 円安、円高のどちらが望ましいのか一概には言えないところでありますし、利上げなどの円安是正策による影響が、住宅ローンの金利上昇等に働き、景気の中折れを懸念する声もあります。
 県は、国に対し、物価高騰対策への十分な財政措置や農業分野、公共交通事業者、中小企業等の広範囲に対する要望を国に行っておりますが、その大きな要因となっている円安が、県民の生活、経済活動等に及ぼすプラスとマイナスの影響について、どのように捉えているのかお伺いいたします。
 また、ことしは地方創生から10年を迎え、政府はその検証報告書をこのたび出しておりますが、人口減少や東京圏への一極集中の流れを変えるに至らず、厳しい状況にあるとの概略的な内容に終始し、その明確な要因分析には踏み込んでおりません。
 ここ十数年に及ぶ経済金融政策が、地方経済と生活環境に影響を及ぼし、結果、地方にとって国や首都圏との関係性において相対的にマイナスの影響が大きいのではと推察され、この流れを続けていくことは、東京一極集中是正の流れと逆行することになるとも思われますが、このことに対する知事の御見解をお伺いいたします。
 地方自治法改正をめぐる動きについてお伺いいたします。
 大規模災害や未知の感染症の蔓延時などに、個別法の規定がなくても国から地方自治体に必要な指示ができる地方自治法改正案が可決成立いたしましたが、その中身をめぐっては、与野党を初め、各界でも大きな議論となりました。
 指示権拡大を総理に答申した地方制度調査会の委員らからは、権限行使の要件を限定し、事前に自治体とのコミュニケーションをとることが前提で、個別法が改正されるまでの応急措置であるなどの理由が述べられておりますが、説得力のあるものとは思えません。
 一方、地方自治専門の識者や首長などからは、指示という目線ではなく、支援と協力こそが国に求められる姿勢、国は、組織が縦割りで現場からは遠く危機管理には向かない構造、個別に規定されていない重大事態では、国と自治体が協力して対策を探る切磋琢磨の努力が必要などの意見が出されております。
 憲法第92条によって定められた地方自治法では、地方公共団体の民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、国の役割を3類型に制限的に列挙した上で、地方公共団体の自主及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならないと規定されております。
 また、地方公共団体では、首長と議会の対等な関係による切磋琢磨を前提とした二元代表制による住民自治と団体自治が機能する仕組みとなっており、地方自治は民主主義の学校と言われるゆえんがそこにあります。
 地方分権改革が始まって30年を迎えます。その流れの中で、2000年施行の地方分権一括法―地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律では、国の機関委任事務が廃止され、一部の法定受託事務を除き、地方公共団体が担う事務は全て自治事務とされております。分権を一層推進するためには、さらなる国からの権限移譲と自治体の自主財源の拡充を求める声が地方から継続的に上がっており、地方分権は未完の改革とも称されております。
 今回の法改正は、この分権の流れを逆戻りさせることにつながるのではないかとの懸念が、多くの自治体関係者や岩手県議会を含む地方議会から出されているのも当然と思われます。
 そこで伺いますが、国との連携を図り、また、国からの協力を得ながら、東日本大震災津波や新型コロナウイルス感染症への対応にトップリーダーとして指揮に当たられてきた知事は、今回の法改正の動きをどのように捉えているのでしょうか。こうした国の指示権の拡大は、重大事案の発生時に機能するのでしょうか。逆の作用をもたらすことにはならないでしょうか。国の指示権拡大に対する知事の所感をお伺いいたします。
 また、知事は、大局的に見て、この改正法が成立した後、国と地方公共団体の関係性はどのように変化していくとお考えでしょうか。このことが、今大きな課題となっている東京一極集中是正の方向性に影響をもたらすことにはならないでしょうか、お伺いいたします。
 次に、県内の賃上げの状況についてお伺いいたします。
 先ごろ、日本商工会議所が2024年の春闘の結果を発表いたしました。正社員の平均賃上げ率は3.62%である一方、日本経済団体連合会の調査では5.58%となっており、大企業や労働組合組織を持つ企業と、中小企業や小規模事業者との差が浮き彫りになっております。
 県は、昨年7月に、中小企業等賃上げ環境整備支援事業費補助を整備し、また、同年12月には、1時間当たり50円の賃上げを実施した企業を支援する物価高騰対策賃上げ支援費を制度化いたしました。これは、全国の都道府県でも意欲的な事業であり、県の賃上げ環境整備に向けた強い意志を示したものと評価いたします。
 連合岩手―日本労働組合総連合会岩手県連合会が4月に実施した中間報告によれば、組合員1人当たりの賃上げ率は5.77%と2000年以降最も高く、全国平均を上回り、東北地域でも高い水準にあるとされており、また、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2018年から2023年の企業規模10人から99人の小規模企業の賃金増加率では、岩手県は全国で11位となっており、健闘ぶりが報道されております。
 そこで伺いますが、県では、この春の県内企業における賃上げの状況をどのように捉えておりますでしょうか。これには、県が取り組んだ二つの賃上げ施策による一定の後押しがあったものと思われますが、両事業の現在の執行状況と事業に対する県の評価をお伺いいたします。
 加えて、全国では25カ月連続で実質賃金が減少しておりますが、県は、県内の物価上昇の実態を踏まえた上で、県内の実質賃金の状況について、どのように捉えているかお伺いいたします。
 県内100社に対する岩手日報社のアンケート調査によりますと、来春の新卒採用に対し、ことし以上の採用数を計画している回答が90社に上っております。人材確保の方策として、今後は賃上げが現実的にできるかどうかが大きな鍵となることは間違いありません。
 先ごろ公表された民間調査による県内企業の景況感は、物価高と円安や賃上げによるコスト上昇による収益圧迫感から9カ月連続悪化となるなど、中小企業にとっては厳しい経営環境が続く中で、今年度実現した大きな賃上げは、国の指示のもとで行われた官製賃上げであり、次年度以降の継続した賃上げの実現は簡単ではないと予想する専門家もおります。
   〔議長退席、副議長着席〕
 物価上昇を上回る賃上げによって経済の好循環を実現するとの政府方針に異論はありませんが、経営コスト上昇に結びつく円安誘導政策など、その周辺環境を見ると政策がちぐはぐな気がしてなりません。
 そこで伺いますが、今年度と同規模の来年度以降の企業の継続的な賃上げ意欲を後押しするための環境整備に向け、今から対策を講じていく必要があると思いますが、県の取り組みの方向性をお示し願います。
 次に、人材の育成、確保について数点お伺いいたします。
 最初に、県内の生産年齢人口減少への対応についてお伺いいたします。
 国立社会保障・人口問題研究所では、岩手県の人口は、2040年には92万3、684人と2020年比で28万6、000人余減少し、同年比で76.3%になると推計しておりますが、特にも岩手県の場合は、さまざまなサービス提供の主体、社会保障の支え手となる生産年齢人口の減少率がより大きいことが課題であり、2040年の生産年齢人口の県内全人口に占める割合が50%を切るとも推測されております。
 リクルートワークス研究所が2023年に発表した未来予測2040での労働需給シミュレーションによりますと、労働需要はこれからもほぼ横ばいなのに対し、労働供給が今後加速度的に減少し、2040年には1、100万人の労働供給が不足するとされております。
 中でも、国民の生活を担うドライバー、建設、生産工程、商品販売、接客給仕・飲食物調理、介護サービス、保健医療専門職の7分類の、いわゆる生活維持サービス部門における人材の供給不足が深刻であるとしております。
 この報告書の都道府県別シミュレーションでは、岩手県の充足率は2040年には59.1%と見込まれる結果が出ております。これは、必要とされるサービス事業の4割が提供できないということであり、50%台の充足率は、岩手県を含め全国で3府県のみとなっております。
 県は、この調査結果をどのように受けとめているのかお伺いいたします。また、調査結果を踏まえ、労働供給不足の対策をどのように進めていくのでしょうか。その上で、女性やシニア層の社会参加を一層進める必要があると考えますが、県内における現在の女性や高齢者の就業状況等を踏まえた県の対応策と、それによる実現可能性についてお示し願います。
 外国人人材についてお伺いいたします。
 技能実習制度を廃止し、新たな育成就労制度を創設する改正出入国管理及び難民認定法が可決成立いたしました。これにより、人権への配慮などから問題とされてきた転籍制限についても、同じ分野なら1年から2年での転籍が可能となります。
 技能実習から特定技能への段階で、地方で就労する外国人労働者の40%が、実習先の道府県から首都圏に転出しているという実態調査もあり、新たな制度の創設による人材流出が懸念されることから、外国人人材定着への対応も今からしっかり行っていくべきであります。
 他県でも、一定の条件のもと県内で働いた外国人労働者に定着奨励金を支払う例、特定技能1号から2号への取得を応援する企業に支援金を支給する例など、さまざまな取り組みが始まっております。
 県では、令和6年度予算において、外国人受入環境整備事業費、外国人介護人材受入支援事業費、いわて国際戦略ビジョンの見直しなど、部局横断による対応に乗り出しているものと理解しておりますが、現在の外国人人材に係る取り組みの実施状況と今後の取り組み、それによる県の外国人労働者確保、育成の方針をお伺いいたします。
 介護人材についてお伺いいたします。
 高齢化社会の本格到来を控えて介護人材の不足感は深刻であります。人材を確保するには、賃金等の改善、処遇改善とともに、きついと言われている職場環境の改善を図ることも必要です。
 その方向性の一つとして注目されておりますのが、介護現場での週休3日制の導入であり、宮城県、福島県などが、国の介護現場における多様な働き方導入モデル事業を活用し、一定の成果を上げております。
 具体的には、施設に派遣される専門家が、週休3日の実現に向けたシフトの作成などの指導や助言を行い、働きやすい職場環境の整備につなげていくものであり、宮城県では、3年間で20事業所が導入、福島県では、同じく9事業所が支援を受け、福井県でも5事業者が導入したとされております。宮城県と福井県は、介護人材の不足感が全国でも1番目と2番目に低い県との調査結果もあります。
 岩手県としても、他県の意欲的な取り組みなどを参考に、働きやすい環境の整備などによる介護人材の確保に取り組む必要があると考えますが、県の考えをお伺いいたします。
 半導体人材についてお伺いいたします。
 半導体を国の経済安全保障の戦略物資として位置づけ、世界の国々で半導体産業の囲い込みが始まっている中、日本でも経済産業省が中心となって多額の補助金が確保され、国内各地に半導体の工場が建設されております。
 宮城県大衡村には、台湾の大手半導体メーカーのPSMC―力晶績成電子製造が、北海道千歳市には、トヨタ自動車株式会社、株式会社デンソー、キオクシア株式会社など岩手県と関係が深い大手企業が出資してつくられたラピダス株式会社が工場を建設、世界最小の2ナノの半導体開発を目標に、日本の半導体復権の象徴としての大プロジェクトが進行中であります。
 東北地域、北海道がまさに日本の経済安全保障の拠点となりつつある中で、今後は、東北地域、北海道だけで6、000人の人材が必要と試算されており、人材の確保と育成が大きな鍵を握ることになりそうであります。
 岩手県では、北上市に半導体関連人材育成施設を2025年4月の開設を見込んで整備中であり、半導体製造装置を置いた実技室を2室設け、半導体製造企業を初め、協力会社である地場企業や学生にも開放していくこととしております。
 ここが県内の人材育成拠点となると思われますが、県は、この施設を活用してどのような人材を育成しようとしているのでしょうか。また、半導体関連産業の今後のさらなる成長に向けて、本施設が果たす役割について、どのようにお考えかお伺いいたします。
 2点目は、435社、団体が加盟するいわて半導体関連産業集積促進協議会、略称I―SEPと、この4月に発足した東北半導体・エレクトロニクスデザインコンソーシアム、略称T―Seedsの活動による人材育成、確保についてであります。
 両協議会の会長には、キオクシア岩手株式会社の柴山耕一郎代表取締役社長が就任したとのことでありますが、県はこれまで、I―SEPを通じて人材の育成、確保に取り組んでおりましたが、T―Seedsにはどのような立場で参画するのでしょうか。また、T―Seedsとどのように連携していくのか、その方向性についてお聞かせ願います。
 3点目は、県内の大学、工業高等専門学校と連携した人材育成についてであります。
 半導体研究では全国のトップを走る東北大学では、国内大学で最大規模のクリーンルームや製造ラインを完備し、人材育成にさらに力を入れると報道されております。
 半導体産業への県内からの人材の流れを考えたときに、まず頭に浮かぶのは、岩手大学理工学部、県立大学ソフトウェア情報学部、一関工業高等専門学校未来創造工学科の存在であります。この三つの学部等を合わせますと約760名の学生がおりますが、コロナ禍後の県外企業の積極的な採用活動などを背景に、県内就職率の減少傾向は顕著となっております。
 一方、同学部の就職先を分野別に見てみますと、製造及び情報通信分野に毎年、岩手大学で40%から45%、県立大学と一関工業高等専門学校では70%から80%の学生が就職しており、今後の対応いかんでは、県内での人材確保の可能性も十分あると考えます。
 岩手大学では、来春に理工学部の改組を行い、半導体人材育成プログラムを導入するようでありますが、県では、各学校の動向をどのように把握しているのでしょうか。また、今後の半導体の設計や研究開発を担う人材も含めて、各大学等と連携し、どのように人材育成に取り組んでいくのかお伺いいたします。
 続きまして、県内の大学の状況と大学の新設構想についてお伺いいたします。
 岩手県の令和3年度の大学進学率は39.2%となっておりますが、県内の大学に進学する残留率は28.3%であり、約7割の子供たちが、進学を機に岩手県を離れている実態があります。
 岩手県での大学進学による転出超過の要因に大学収容率の低さが上げられております。県内高校から進学する生徒の数と県内大学の入学定員数を比較すると、岩手県は22.9%で全国41位と、北東北3県でも最も低くなっております。特に人口1、000人当たりの学部別の定員数を見ますと、工学系と理学系の収容率が全国平均から大きく水をあけられております。
 このような環境のもと、北上市では数年にわたって大学設置に関するアンケート調査を行い、このたびその結果が示されております。調査によれば、高校生と保護者側が求める学部は工学部系統が一番であること、設置形態としては公立が望ましいこと、また、そのような大学が設置された場合には、進学先の一つとして検討したいこと、また、企業側からは、人材確保の機会の増加として期待したいこと、インターンシップの受け入れや奨学金などの面で支援をしたいことなどの結果が示され、入り口、出口双方から一定の方向性が見えてきております。
 先ほどから触れております東京一極集中の要因の一つに、首都圏の大学の大幅な定員増が挙げられ、地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議でも、一般論として、大学の収容率を上げることと大学進学率には一定の相関関係があると述べた上で、大学の地方への設置は、地域間格差の是正や地方創生に寄与すること、女性の社会進出に貢献することなどから、その流れを応援すべきとの報告結果が出されております。
 少子化の中、私の地元北上市では、財政負担や学生確保を不安視する声もあり、今後は、市と議会を中心とした議論の中でその方向性が決定されていくものと思いますが、県政課題ともさまざまつながるものでもあり、県としてもその動きを注視していくべきと考えます。
 北上市の現構想に対する県の所感と県としてどのようにかかわっていく必要があるとお考えか、県の認識をお伺いいたします。
 最後に、いわて留学についてお伺いいたします。
 現在のいわて留学につながる取り組みが、平成27年に葛巻町で始められてから10年が経過いたしました。この取り組みの全国における先駆けとなったのは、皆様御承知の島根県立隠岐島前高等学校でありますが、先ごろ、この学校を核に町を再生に導いた取り組みが、テレビで放映されておりました。
 県でも、この取り組みにならい、いわて留学を進め、令和6年のことし春には、9校で過去最高の32名の県外生の入学が実現しております。
 知事は、県議会2月定例会の代表質問において、いわて留学の教育的効果にも触れられた上で、取り組みの一層の推進を期待したいと答弁しております。
 また、常任委員会において、教育長は、大事な取り組みであり、これからも推進していきたいと答弁するとともに、制度の不明瞭化や市町村教育委員会との不整合がないか点検しながら、知事部局等とも連携し取り組んでいく旨、述べられております。
 この春のいわて留学生の入学状況について、県はどのように評価しているのでしょうか。その上で、令和7年度のいわて留学の推進に向け、どのように取り組んでいくのか、県のお考えをお聞かせ願います。
 県立葛巻高等学校、県立大迫高等学校、県立西和賀高等学校のいわゆる留学実施校の3校は、生徒の生活環境を保障するため、寮の整備や食事代等の補助などに地元自治体から多額の財政負担を行って留学生の受け入れ体制を維持しており、将来にわたる継続した財政負担に耐えられるのかとの声も上がっております。
 先ごろ行われた県立高等学校教育の在り方に関する地区別懇談会においても、一部の参加者から、県立高校である以上、県が前面に立って取り組んでいくべきとの意見が出されております。
 今後のいわて留学推進のための予算のあり方について、どのようにお考えか、県の見解と今年度の県の取り組みについてお伺いいたします。
 いわて留学制度を推進し、地方創生と地域の活性化、教育的効果の増加を目指していくことを考えた場合、県外留学生の受け入れ拡大と県内生徒の入学機会の確保の両立が必要であり、そのためには学級数の増加による対応が最も合理的と考えられます。
 この春、初めて県外から5名の留学生を受け入れた西和賀高校では、定員40名に対し49名の入学志願者があり、一般入試の志願倍率は1.23倍と県内県立高校の平均倍率0.8倍を大きく上回りました。現在、1学年1学級の西和賀高校では、この春の生徒の受け入れによって、学校の定員120名に対する在籍数の充足率は90%を超える見込みであり、小規模校ならではの学校運営方針や地域の環境に魅力を感じる子供たちが、確実にふえてきている証左でもあります。
 そこで知事に伺いますが、いわて留学による県外生の受け入れ拡大と県内生徒の学びの場の保障、そして、多様な学びの場への需要の高まりなどを受けて、一定の基準のもと、募集生徒数の増加や定員への充足率などを考慮しながら、段階的に1学年1学級からの学級増を図るべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。
 以上をもちまして私の一般質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 関根敏伸議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、地方創生についてでありますが、2014年にまち・ひと・しごと創生法が施行されて以来、国では、東京圏から地方への人の流れをつくるため、地方への本社機能の移転や地方創生テレワークの促進などに加え、東京23区の大学の定員抑制、政府関係機関の地方移転などの対策を進めてきたところですが、コロナ禍後、再び東京一極集中の流れが加速している現状にあります。
 この間、本県を含む地方においては、国の財源なども活用し、結婚、出産、子育て支援や暮らしやすさの向上、働く場の創出などに多大な努力を傾注してきており、地方における生活のしやすさは、地方創生開始前に比べて大幅に向上しております。
 また、本県においては、復興事業や自動車、半導体関連産業集積の進展により、非常に良好な経済状況となっていました。
 しかしながら、ほぼ同時期において、異次元の金融緩和や規制改革などの新自由主義的な成長戦略に代表される国の経済財政政策、さらに、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に象徴される官民投資の東京圏への集中などが行われました。
 このことが、結果として、東京圏の就業条件、労働環境などを大きく改善、伸長させる方向に働いたことで、地方創生の理念とは逆に、東京圏の求心力が強化され、東京一極集中の流れがとまらない原因につながっているものと考えます。
 次に、地方自治法の改正における指示権の拡大についてでありますが、実際に国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生した場合、速やかな国の行動が求められる場合がある一方で、地域の状況に応じて地方自治体が対応すべき場合が想定されます。
 このような中、国の指示権については、指示が現場の実態に合わない場合や地方自治体の権限を強化したほうが効果的な場合も想定されることから、個別の法令ごとに非常事態を想定し、対応できるよう規定を整備するべきと考えております。
 また、個別法に規定のない場合であっても、まずは、現場の状況を正確に把握し、最善と思われる対策を住民や国、市町村、関係機関と共有し、相互理解の上で、協力して対処することが重要であると考えております。
 次に、改正法による国と地方自治体との関係性への影響等についてでありますが、地方分権改革により、国と地方は上下、主従のような関係から、対等、協力の関係に転換してきましたが、今回の補充的指示は、この地方分権の流れに逆行する規定とも言えます。
 加えて、昨今、国が国庫補助の要件として地方自治体の計画策定を誘導する手法が増加していることや、農地の確保に係る国の権限の強化が図られたことなど、中央集権的な動きが散見されております。
 東京一極集中の是正には、国において、地方重視の内需拡大型の構造改革を行うことに加え、地方において、一人一人の希望を自由に選択できる多様な地域社会をつくることが必要です。そのためには、地方への権限の付与と財源保障などの地方分権の推進が欠かせないものであり、これまで進めてきた地方分権改革が後退することはあってはならないと考えております。
 次に、県立高校の学級増についてでありますが、県立西和賀高等学校の生徒数の増加については、これまでの高校の魅力化、特色化の取り組みと教育活動の充実、地域の方々や自治体からの継続的な協力や支援による成果であると承知しております。
 いわて留学の取り組みは、生徒による地域の歴史、文化の理解促進や地域産業等との連携、協働、伝統芸能の活性化や継承が図られるなど、将来的な関係人口の創出や増大が期待されるものであり、本県の人口戦略としても重要と認識しております。
 こうした中、いわて留学などの取り組みにより、定員を一定程度上回る志願者数や入学実績がある場合、生徒の教育機会の確保及び教育の質の保証などの観点を考慮し、県教育委員会において、学級増など適切な学級編制に取り組んでほしいと考えております。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔企画理事兼商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇企画理事兼商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、県内企業の賃上げの状況等についてでありますが、連合岩手では、先般、2回目となる中間報告を公表したところであり、その報告によれば、正規労働者1人当たりの平均賃上げ額は1万5、796円、賃上げ率で5.49%、前年同期比で6、660円、2.14ポイントの増であり、引き続き、全国平均を上回る水準となっております。
 一方で、5月末の事業者影響調査では、経営課題として、原材料価格等の高騰、人材確保、価格転嫁を挙げる事業者が多く、厳しい経営環境の中で、特に人材確保や従業員の生活の維持の側面から、多くの中小企業は、防衛的な賃上げを余儀なくされている状況にあると受けとめております。
 こうした状況から、県として、県内中小企業の賃上げ支援を強化したところであり、中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助については、今年度、44者から約6、600万円の交付申請があり、また、物価高騰対策賃上げ支援金については、6月14日時点で、申請件数が2、142件、申請額が7億8、320万円、対象従業員数が1万5、664人となっております。
 今般の春闘の状況に関し、これらの事業も一定程度の効果をもたらしたものと受けとめておりますが、物価高騰対策賃上げ支援金については、今後の最低賃金改正の動きなども含めて、さらに多くの方々に活用いただきたいと考えております。
 次に、実質賃金についてでありますが、令和6年5月の盛岡市消費者物価指数の総合指数は、令和2年を100として109.8であり、前月比で0.5%の上昇、前年同月比で3.7%の上昇となっております。
 このような状況を背景に、令和6年3月の毎月勤労統計調査地方調査結果によれば、労働者が実際に受け取った給与である名目賃金から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いて算出した本県の実質賃金指数は84.7となり、対前年同月比マイナス1.7ポイントとなっております。
 なお、全国平均は、対前年同月比マイナス2.1ポイントであり、関根敏伸議員御指摘のとおり、25カ月連続で減少していますが、本県は、昨年11月、ことし1月、2月は対前年同月比プラスとなったものの、全体としてはマイナスが続いており、本県においても、物価高騰に賃金上昇が追いつかない状況にあると受けとめております。
 次に、賃上げを後押しする環境整備についてでありますが、今後、中小企業者が持続的な賃上げを行っていくためには、生産性向上等による賃上げ原資の確保と適切な価格転嫁の実現を図っていくことが重要と考えております。
 このような考え方のもと、現在、賃上げ原資の確保に向けては、中小企業者等賃上げ環境整備支援事業費補助金による生産性向上に向けた取り組み支援、それから、物価高騰対策賃上げ支援金による賃上げ原資の補填などの取り組みを行っているところでございます。
 また、適切な価格転嫁の実現に向けては、価格転嫁の円滑化による地域経済の活性化に向けた共同宣言に基づき、参画団体と連携して取り組みを進めるとともに、昨年11月に国が示した労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の一層の浸透を図っているところです。
 こうした取り組みにより、県内中小企業者の賃上げや価格転嫁は一定程度進んでおりますが、先ほど答弁申し上げたとおり、防衛的な賃上げを余儀なくされている中小企業者が多い状況と受けとめております。
 このため、先般の令和7年度政府予算要望に際し、中小企業者が持続的な賃上げを進めるための支援について、その財源確保を含めた要望を行ったところであり、国の動きを注視しながら、今後の支援のあり方について検討を進めてまいります。
 次に、未来予測2040の調査結果についてでありますが、県内企業の経営者の方々から、人材確保に苦慮しているといった話を数多くいただいており、特に、建設関連、輸送、宿泊、飲食といった業種の方々からの声が多いと感じているところでございます。
 御指摘のリクルートワークス研究所の調査結果については、こうした状況をデータとして裏づけるものであり、生活関連サービスの担い手を確保していくことが大きな課題になっているものと受けとめております。
 この調査結果においては、労働供給問題を解決する打開策として、機械化・自動化、ワーキッシュアクト、いわゆる副業的なものの活用、シニアの社会参加、仕事におけるムダ改革の四つの対応策が提言されております。
 こうした取り組みは、現在、県が行っている取り組みと考え方が重なり合う部分が多いと捉えておりまして、さらに強化するべき取り組み等について検討を進めてまいります。
 次に、女性や高齢者の社会参加についてでありますが、令和4年の就業構造基本調査では、岩手県の生産年齢人口における就業率は、男性が82.7%、女性が75.2%となっております。また、65歳以上の就業率は27.4%となっております。
 こうした中、より多くの女性の社会参加を促進するとともに、その活躍を推進するため、いわて女性活躍エグゼクティブアドバイザーによる講演活動を通じた経営者層への働きかけ、デジタルスキル取得、デジタル分野での就業、起業の支援、また、より多くの高齢者の社会参加を促進するため、生きがいづくり、健康づくり活動の普及啓発や、岩手県高齢者社会貢献活動サポートセンターによる高齢者団体への活動支援を行っているほか、国においては、70歳までの就業促進に向けた助成金による支援を行っているところです。
 こうした取り組みに加え、自動化や働き方改革を含めた魅力ある職場環境の構築を進め、より多くの労働力を確保していきたいと考えております。
 次に、外国人人材の受け入れに向けた取り組み状況についてでありますが、令和6年度当初予算において、外国人受入環境整備事業費を新規に盛り込み、外国人労働者の雇用実態の把握などを行い、外国人人材を受け入れていくに当たっての課題を具体化した上で、さらに必要となる対応を進めていくこととしております。
 現在、企業へのアンケート調査のほか、企業、監理団体、学校などへの訪問によるヒアリング調査を行う準備を進めているほか、外国人が働きやすく、安心して生活できる環境の構築に向け、今後、関係機関連絡会議を開催し、解決すべきさまざまな課題の抽出や必要となる対応等の情報共有を図っていくこととしております。
 こうした取り組みを進めるに当たっては、単に不足する労働力を補うといった観点ではなく、地域経済を牽引する高度な人材の受け入れや待遇面にすぐれた労働環境を構築していくことが重要であると考えており、今後、関係する方々から、さまざまな御意見を伺いながら、さらに必要となる対応策についての検討を進めていきたいと考えております。
 次に、半導体関連人材育成施設についてでありますが、これまで、本県における産学官連携組織であるいわて半導体関連産業集積促進協議会、通称I―SEPにおける議論の中で、新卒者の確保とともに、半導体製造装置のメンテナンスや改善などを行うエンジニアを育成していくことの重要性について、共有が図られてきたところでございます。
 このような背景から、I―SEPと連携した人材育成施設を整備することとし、実習に利用する半導体製造装置の選定や具体的な研修内容の策定等をI―SEP関連企業とともに行うことで、即戦力を含む人材の確保、育成に取り組むこととしたところでございます。
 また、大学、工業高等専門学校などの学生を対象に、実習を通じた専門的知識の習得や小中高生を対象としたものづくり教室等を通じて、半導体産業への興味喚起を図ることとしており、こうした取り組みにより、将来の半導体関連産業を支える人材の確保にも寄与していくものと考えております。
 今後、本施設が人材育成の拠点となり、さらなる集積と高度化を進めるとともに、本県のみならず、東北地域、ひいては日本全体における半導体関連産業の振興を支えていきたいと考えております。
 次に、東北半導体・エレクトロニクスデザインコンソーシアム、いわゆるT―Seedsについてでありますが、T―Seedsは、東北地域全体の半導体関連産業の人材育成、確保やサプライチェーンの強靱化を図ることなどを目的に、令和4年6月に、東北経済産業局が主導して設立した東北半導体エレクトロニクスデザイン研究会が、民間主導の団体として発展的に移行したものと承知しております。
 この組織には、キオクシア岩手株式会社、株式会社ジャパンセミコンダクター、株式会社デンソー岩手を初めとした東北各県の主要な半導体関連企業が正会員として、また、東北6県のほか、金融機関、大学や工業高等専門学校といった教育機関、東北経済連合会などの関連団体がサポーター会員として参画しております。
 このような状況から、T―Seedsは、いわばI―SEPが長年取り組んできた活動が、発展的に東北地域全体で展開されるものであると考えております。
 国においては、ことし6月に閣議決定された骨太の方針2024において、国内半導体の拡大に向けた重点投資支援を掲げるなど、国内での集積をより一層推進することとしており、T―SeedsとI―SEPが積極的に連携を図ることで、本県のみならず、東北地域全体の半導体関連産業のさらなる活性化に取り組んでまいります。
 次に、大学や工業高等専門学校と連携した人材育成についてでありますが、これまで、岩手大学や岩手県立大学、一関工業高等専門学校等と連携して、いわて半導体アカデミーを実施し、その中で、半導体の基礎的な学習から東北大学のクリーンルームを活用した試作実習まで、幅広く人材の育成を行ってきたところでございます。
 これらの取り組みを発展させる形で、岩手大学では、令和7年度からの半導体人材育成プログラムの開講に向けて準備を進めているほか、各高等教育機関においても、半導体関連産業の集積に対応したさまざまな取り組みが加速しております。
 I―SEPにおいては、半導体技術者を講師として派遣する出前授業や小型半導体製造装置を用いた製造実習のほか、情報系の学生を対象とした企業見学会の開催など、各教育機関との緊密な連携のもと、企画から実施まで幅広い支援を行っております。
 県におきましては、引き続き、I―SEPを中核に、大学等と連携し、半導体の量産や研究、開発等に向けた企業の人材ニーズに応えた人材育成を行い、県内半導体関連産業の持続的成長を図ってまいります。
   〔企画理事兼保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 介護人材についてでありますが、高齢化の進展により介護サービス需要が増加し、人材不足が深刻な状況が続く中で、職場環境を改善し人材確保につなげる取り組みは、ますます重要となっております。
 県では、参入の促進、労働環境・処遇の改善、専門性の向上の三つの視点から総合的に介護人材確保対策に取り組んでおり、今年度は、介護ロボット、ICT導入に係る補助に加え、施設、事業所を対象に、業務改善に向けた研修会や事例発表会、相談支援などを行い、より働きやすい職場環境づくりを支援していくこととしております。
 今後とも、関根敏伸議員御紹介の柔軟な働き方に関する他県の取り組みも参考としつつ、介護職員がやりがいを持ち質の高い介護サービスを提供できるよう、施設等のニーズをお聞きしながら、労働環境や処遇の改善、業務負担の軽減に向けた取り組みの強化に努めてまいります。
   〔政策企画部長小野博君登壇〕
〇政策企画部長(小野博君) 円安が県民の生活や経済活動等に及ぼす影響についてでありますが、2022年ごろに始まった今回の趨勢的な円安傾向は、最近では1ドル150円台後半から160円台という歴史的な水準にまで加速するなど、県民の生活、経済に広範囲な影響を及ぼしているものと認識しております。
 まず、円安のプラスの影響についてですが、本県にも多く立地している輸出関連の製造業や本県が誇る農産物などの輸出増加、潜在力が高い本県の再生可能エネルギーへの注目の高まり、さらには、インバウンドを契機とした岩手県の価値、魅力の海外への広がりなどが、県内への好影響として期待されるところです。
 一方、マイナスの影響についてですが、石油、ガスなどのエネルギー資源価格の上昇に起因する光熱費や日々の消費財、サービスの価格上昇が、全ての県民の生活に大きな影響を及ぼしております。
 また、本県に多い内需依存度の高い産業事業者においては、円安による恩恵はほとんどなく、エネルギーや原材料、資材価格の上昇がそのまま利益の圧迫につながる構造となっている中で、価格転嫁にも苦しんでおり、結果として、賃上げの原資を十分確保できず、人材の確保にも苦心している状況にあるなどの影響が生じているものと認識しております。
   〔ふるさと振興部長村上宏治君登壇〕
〇ふるさと振興部長(村上宏冶君) 北上市における大学の新設構想についてでありますが、報道等によりますと、工学系の学部編制による4年制の市立大学の新設について、今年度、基本構想の策定に着手するところと承知しております。
 県南地域における自動車、半導体産業の集積を初め、県全体で工学系人材のニーズが高まっているところであり、大学の新設が実現した場合、北上川バレーエリアのものづくり産業の一層の集積や、企業の人材確保等に貢献するものと認識しております。
 大学の設置には、学生や教員の確保、教育環境の整備、地域における機運醸成など、さまざまな課題もあるとされておりますことから、県といたしましては、北上市の今後の調査や検討状況を注視していくとともに、市の意向の把握に努め、対応について検討してまいりたいと考えております。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) まず、いわて留学の入学状況についてでありますが、いわて留学は、県外から入学した生徒と県内生徒がともに学ぶことにより、互いに刺激し合い切磋琢磨するなど高い教育的効果が期待され、近年の入学実績は、令和3年度が3校19人、令和4年度が8校31人、令和5年度が9校25人、そして、令和6年度が9校32人と過去最多となるなど、その成果が認められるところです。
 令和7年度のいわて留学につきましては、地域の要望や県外の志望者のニーズなどを踏まえ、実施校の拡大や募集定員の増加を予定しているほか、これまで3月の一般入試と同時に行っていた選抜を1月にすることで、県外の生徒がより応募しやすい制度としたところです。
 今後も、県内生徒の学ぶ機会の確保に配慮しつつ、実施する各学校や地元自治体が、より安定的に県外募集を実施できるよう、これまでの実績の評価や課題を踏まえ、制度の改善を図りながら、いわて留学の一層の充実を図ってまいります。
 次に、留学生受け入れに係る財政負担についてでありますが、県立高校においては、県内の多くの市町村から、生徒の学びの充実を図るため、制服等の購入支援や通学費補助、県外生等に対する寄宿舎整備など、生徒にとってよりよい就学や教育、生活環境となるよう、幅広い御支援をいただいているところです。
 県教育委員会においては、県立高校の魅力ある学校づくりの取り組みに必要な、いわて高校魅力化・ふるさと創生推進事業費に重点的に予算措置しているところであります。
 今年度も、専門的な知見を有する外部人材により、各学校に対し、魅力創出に係る助言や指導を行うとともに、各学校においては、地域や地域産業等と連携しながら、探究的な学習に取り組むなど、高校の魅力化を図っているところです。
 このような岩手県の高校魅力化の取り組みを全国に積極的に情報発信することが、いわて留学の一層の推進に必要と捉えており、昨年度から、ウエブ配信サイトnoteの県教育委員会ポータルサイトからの情報発信などに取り組んでいるところです。
 引き続き、これらの取り組みの課題や成果を検証しながら、いわて留学を含めた高校の特色化、魅力化事業の効果的な推進を図ってまいります。
〇44番(関根敏伸君) 知事初め、皆様には、踏み込んだ御答弁をいただきましてまことにありがとうございます。少々お時間をいただいて、何点か再質問させていただきたいと思います。
 まず、知事には、ここ12年のアベノミクスの経済金融政策について、一定の知事としての評価をなされているものと思っております。国では、日本経済の課題をある意味、危機的に捉えて、課題を分析して、解決策を検討する有識者懇談会が財務省を中心に開かれているようでありますけれども、まだ、どのような方向性を見出してくるのかわからない状況であります。また、先ごろの地方創生の10年に係る検証報告においても、まさに東京一極集中の要因分析がなされていない状況でございます。
 その中で、知事は、踏み込んだ御発言をされたと思っております。ただ、地方の知事がどの程度、国が行ってきた経済金融政策にどのような認識をお持ちなのかまでは、こちらでははかり知れないわけでありますが、私が思うに、やはり国の政権が12年にわたって行ってきたものでありますから、国が検証を行うことはまずないだろうと思っておりますし、東京一極集中の要因分析も、踏み込んだものを行っていくとすれば、恐らく、そこに踏み込まざるを得ないということにもなるだろうと思いまして、そこが曖昧な要因分析に終わっているという認識を私は持っております。
 そういう意味で、私も、課題としては、プラスの面もあるにしろ、この金融経済政策を続けていくことは、ますます地方との地域格差を拡大しかねない方向性だろうと思っております。
 国に対して地方の影響力が最も大きいのは、全国知事会であります。全国知事会が、どういう御認識をお持ちなのかはわかりませんが、恐らく、さまざまな思いを本音の中ではお持ちなのではないかと拝察するわけであります。
 そういった意味で、国の経済金融政策の評価、東京一極集中の要因分析、ここをぜひ、全国知事会などでもんでいただいて、国に対して積極的に意見を言っていくべきではないかと思うわけでありますが、知事の御認識をお伺いさせていただきたいと思います。
 また、地方自治法の改正については、昨日も佐々木順一議員とかなり踏み込んだ議論がありました。結果として、法改正はなされてしまったわけであります。この指示権拡充がプラスに作用する面もあればマイナスに出る面もあるという御認識だろうと思いますし、まさにそうなのだろうと思います。
 そういった意味合いにおいて、この改正となった法律がしっかりと間違いなく動いていくためには、やはり国と地方公共団体との意見調整や協議の場、努力義務にはなっているわけでありますが、これをしっかり機能する形に仕上げていくことが、重大事態において、間違いのない方向性で意思決定ができる、対応ができる、こういうことになるのだろうと考えるわけであります。
 知事として、機能する上で、国との意見調整、協議の場をしっかりつくり上げていくことが最低限必要になってくると思いますが、お考えをお伺いさせていただきます。
 もう一点、これも昨日も議論がありましたが、地方分権が進んで、地方分権一括法ができて24年になるわけですが、ここに来て急激に人口減少が顕在化してまいりました。特に、小規模自治体の人口減少は大変厳しいという中で、行政サービスが維持できるのかどうかという局面に来ております。そういった中で、分権をさらに推進することが、なかなかできづらいというか、整理していかなければならない局面に来ているかと思っております。
 人口減少下で、特に小規模自治体などに配慮した中で、国と地方、国と都道府県と市町村、この役割分担をしながら、どう分権改革を逆戻りしないような方向に進めていくのがよいのか、知事のお考えをお聞かせ願えれば幸いかと思います。
 それから、商工労働観光部長にたくさん質問してしまいました。声をからさせてしまって申しわけないですが、再質問を準備していますものですから、もう少しだけ御答弁いただきたいと思います。
 人材供給に関する危機感というものは、県も相当お持ちだろうと思います。特に、生活維持部門サービスのリクルートワークス研究所の研究結果は、相当信憑性があるものだと県も捉えているのだと聞きました。
 その意味で、生活維持部門の7部門は、介護分野については具体的な供給力不足などを数値化しながら対応をとっているわけでありますが、2040年といったらすぐそこですので、その他の分野の労働供給不足の見通しを、もう立てていかないと、戦略的に行っていかないとならないのではないかと認識しております。その戦略の策定の必要性についての御認識をお伺いしたいと思います。
 また、シニア層や女性のさらなる就労参加ももちろんですが、岩手県を初め、東北地域はかなり高い位置に来ていることも承知しております。そういった意味で、御答弁の中でも触れられておりましたが、企業側からの連携によって、労働供給を進めるためのダブルワークですとかマルチワークですとか、やはりしっかりと機能するような形にしていく必要があるのではないかと思います。
 あと、都市部からの副業人材のマッチング、これは意外と結構いい線行っているのかと、いつか質疑させていただいたときに聞いたのですが、これらを進めると。あるいは県内の一部自治体で行われている特定地域づくり協同組合の活動です。これは二、三の小規模自治体で始まっているようですが、予算特別委員会で聞いたところ、組合の人材確保がなかなか難しいというような実態もあると思って、そこから派遣して、人手不足に陥っている業界を適宜助けていくという仕組みなのでしょうが、そもそもの人材確保に苦慮されているという実態もあるようです。
 これらダブルワークやマルチワークや副業人材のマッチング、特定地域づくり協同組合の活用、こういったことについてどのようにお考えかということであります。
 そしてもう一点、恐縮ですが、外国人高度人材のことにも答弁で触れられました。高度専門職には1号、2号があるようでありますけれども、実際に今、県内で高度人材と言われる外国人労働者がどの程度いらっしゃるのか。こういった人材を本当に岩手県に呼び込んでいくという戦略をお持ちなのであれば、まさに日本経済を引っ張る、イノベーションをもたらす人材という位置づけになっているようでありますけれども、県の外国人高度人材に対する取り組み方針をもう少し踏み込んで御答弁いただければと思います。
 それから、いわて留学について、教育長にお伺いさせていただきたいと思います。いろいろと制度改正も行いながら、いわて留学を推進しながら、県内の子供たちの学びの場の保障にも取り組んでいらっしゃるということで、引き続きお願いしたいと思います。
 予算に関してですが、いわて高校魅力化事業・ふるさと創生推進事業費で多額の県予算をつぎ込んでいるのはわかるのですが、高校の魅力化を進めることが、いわて留学の推進にもつながるというお考え、御答弁だとは聞いたのですが、もっと直接的に、いわて留学を推進する予算に、もっとこの魅力化事業の予算を振り分けてもいいのではないかと私は思っております。
 令和5年度でいわて留学に単純に支出した予算は50万円程度と私は承知しておりまして、あとはゼロ予算でやっているという御答弁もいただきました。島根県では4、000万円ぐらいを県がしまね留学に直接的にお金を出して、県外生徒の募集とか県内高校をめぐるための航空券の助成とか、市町村を支援するコーディネーターの派遣といったこともやっているようであります。
 財政的に、さらにいわて留学そのものを前に進めるための予算に対しての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、1学年2学級の学級増に関して、知事からも踏み込んだ御答弁もいただきましたけれども、基本的には、教育委員会で、今後、各学校等の動向等も見ながらこの動きを進めていくことになろうかと思います。知事の御答弁も踏まえた上で、教育長としてお考えをさらに聞かせていただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) アベノミクスの経済金融政策の評価についてでありますが、東京一極集中の要因には、アベノミクスを初めとする新自由主義的な経済財政政策や東京圏への官民の投資の集中などが考えられることから、国においては、そうした政策の方向性を大きく転換し、内需拡大型の経済構造改革や地方重視の経済財政政策を大胆に進めることで、地方からの持続可能な経済成長を目指すことが必要であると考えます。
 こうしたことから、これまで東京一極集中の是正に向け、全国知事会の農林商工常任委員会や地方創生・日本創造本部における議論を経て、地方への活発な投資の実現等に向けた政策提言・要望、日本創生のための将来世代応援知事同盟による人口戦略緊急アピールin宮崎などの要請活動を行ってまいりました。
 今後も、全国知事会や日本創生のための将来世代応援知事同盟等の活動とも連携し、東京一極集中の是正に向けた経済財政政策の実施を国に対して強く働きかけてまいります。
 国と地方自治体との意見調整や協議の場についてでありますが、全国知事会において、繰り返し、事前に十分に必要な調整を行うことや協議、調整を行う運用の明確化を求めております。また、事前調整については、衆参両院の附帯決議においても同様の内容を求めていることから、引き続き、国に対して、全国知事会等とも連携し強く働きかけてまいります。
 次に、分権改革の方向性についてでありますが、今後、人材不足、インフラの老朽化といったさまざまな資源制約の深刻化が予想される一方で、デジタル技術の進展が見られます。
 国と地方自治体の役割分担として、現金給付など全国的に統一して行うべきものは国が、現物給付、サービスなど住民に身近な行政は地方自治体が行うこととされていますが、人口減少社会においては、デジタル技術を活用しながら、この役割分担の再定義、最適化を行い、あわせて、権限と財源を移譲していくことが必要と考えます。
 また、都道府県と市町村との関係については、相互に対等であることを前提として、市町村の自主性、自立性を尊重しつつ、事務の共同処理など市町村間の広域連携への支援や専門人材の確保を初めとする都道府県による補完等、広域の地方公共団体としての役割を果たしていく必要があると考えております。
〇企画理事兼商工労働観光部長(岩渕伸也君) まず、分野別の戦略の策定についてでございますが、県におきましては、各担当部局において、さまざまな分野等別の計画を策定しており、その中で人材確保に向けた取り組みを示しているものと承知しております。
 一方で、例えば飲食業のように具体的な計画がない業種もありますことから、なかなかそういった業種で不足数とか必要数を算出するのは難しい面もありますけれども、そうした面をどうしていくかということにつきまして、関係団体と連携して、戦略の必要性を含めて、さまざまな場面で意見交換を行いながら、今後検討していきたいと考えております。
 次に、副業等についてでございますけれども、御指摘ありましたダブルワークにつきましては、現在、いわて働き方改革アワードの中で、こうしたダブルワークを行っている企業等も実際に出てきておりまして、表彰しております。表彰した上で、実際の取り組みの事例発表会やセミナーのようなものをやって、普及拡大するといったようなことをやっております。
 また、県外からの副業も含めた人材マッチングについては、岩手県プロフェッショナル人材戦略拠点を設置しておりまして、令和5年度は、前年度を上回る79件の成約があったところでございます。
 それから、御指摘のございました特定地域づくり事業協同組合制度につきましては、本県では、葛巻町、大槌町、岩泉町の3町で認定されており、国の財政支援を受けることができるメリットなど、さまざまな機会を捉え、さらにふえてくるよう制度周知に努めているところでございます。
 いずれ、人材確保につきましては、副業など新しい働き方、あと、テレワークのようなものも一つの手段でございますし、それに、外国人の受け入れを含めて総合的にやっていかないと、これはどうしても対応し切れないと思いますので、それらのあらゆることを総合的に展開しながら人材確保に努めていきたいということでございます。
 そして、外国人高度人材の受け入れですが、2023年6月現在の在留外国人統計によりますと、岩手県での在留資格が、高度専門職1号及び2号に類型される方は合計で12人となっております。
 県におきましては、留学生などグローバル人材の県内定着に向けて、キャリアフェアの開催、県内企業とのワークショップ、企業訪問、インターンシップに取り組んでおります。
 また、東北経済産業局などが事務局となって、企業と高度外国人材の双方に向けた具体的な支援や業者のマッチングに係る事業に取り組む高度外国人材活躍地域コンソーシアム事業にも参加しているところでございます。
 県内におきましても、報道された北上工業クラブの例ですとか、さまざまな事例が出てきております。外国人材の受け入れについてこうやっていくのだというのは、今始まったばかりなので具体的にお示しすることは難しいのですが、そういう県内の取り組み事例などを一緒に進めながら、具体の踏み込み方をこれからきちんと研究して、対応してまいりたいと思っております。
〇教育長(佐藤一男君) いわて留学に係る予算の点でございますが、確かに広報関係で昨年度50万円ということでございますが、魅力化事業で申し上げますと、令和5年度は3、400万円、今年度は3、200万円という予算を措置いただいております。
 その中身を見ますと、例えば魅力化フォーラムをやっているのですが、このフォーラムには、今年度もそうですけれども、おととしも、隠岐島前高校を支援した方、ことしもそういう方をお招きして、みんなで学びましょうと予定しています。確かに、直接的ないわて留学にかけるお金は、今はウエブで発信していますので、そういう経費もことしはゼロだということであります。それから、地域魅力化プロデューサーということで、全国で活躍している方、他県の例なども知っている方に、この方は県立大槌高等学校に常駐していただいているのですが、その方が全県を見てくださっている。それから、小規模校には、3人の地域連携コーディネーターを配置するなど、そういった経費もあります。
 最終的には、そういったものが魅力化につながって、それを他県に情報発信できる仕組みになっております。我々としては、こういうことで岩手県の高等学校の魅力化、特色化をより推進していきたいと考えております。
 それから、2点目でございます、知事から答弁がありましたが、1学級校が、このようないわて留学という方法を通じて1.2倍を超える志願者を集めたことは過去にないということで、これをどうするかということを我々も真剣に検討しました。やはり、他校でもそういったことはあり得るということで、これを制度化しましょうということで検討いたしまして、今年度どうするか、令和7年度に向かってどうするか、それが複数年続くようであれば、やはり学級増ということは考えていく必要があるだろうということで、内部では検討を進めているところでございます。
〇副議長(飯澤匡君) 以上をもって関根敏伸君の一般質問を終わります。
   
〇副議長(飯澤匡君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時57分 休 憩
    
出席議員(48名)
1  番 田 中 辰 也 君
2  番 畠 山   茂 君
3  番 大久保 隆 規 君
4  番 千 葉 秀 幸 君
5  番 菅 原 亮 太 君
6  番 村 上 秀 紀 君
7  番 松 本 雄 士 君
8  番 鈴 木 あきこ 君
9  番 はぎの 幸 弘 君
10  番 高橋 こうすけ 君
11  番 村 上 貢 一 君
12  番 工 藤   剛 君
13  番 小 林 正 信 君
14  番 千 葉   盛 君
15  番 上 原 康 樹 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 高 橋 穏 至 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 高 田 一 郎 君
26  番 木 村 幸 弘 君
27  番 佐々木 朋 和 君
28  番 吉 田 敬 子 君
29  番 高 橋 但 馬 君
30  番 岩 渕   誠 君
31  番 名須川   晋 君
32  番 軽 石 義 則 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城 内 愛 彦 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 郷右近   浩 君
41  番 小 西 和 子 君
42  番 高 橋 はじめ 君
43  番 五日市   王 君
44  番 関 根 敏 伸 君
45  番 佐々木 順 一 君
46  番 岩 崎 友 一 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時16分 再開
〇副議長(飯澤匡君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。神崎浩之君。
   〔33番神崎浩之君登壇〕(拍手)

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