令和6年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録 |
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〇30番(岩渕誠君) 希望いわての岩渕誠です。再び県政の一端を担うことができ、こうした機会を与えていただきました全ての皆様に感謝し、質問いたします。
冒頭、能登半島地震で犠牲になられた皆様に哀悼の意を表すとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。 県におかれましては、東日本大震災津波を初め、過去に本県で起きた災害の経験を踏まえ、被災地の復旧、復興を全力でサポートされますよう、お願いいたします。 では、質問に入ります。壇上からの質問では、これからの地方自治のあり方について、知事の認識を含め、お尋ねします。 まず、達増知事におかれましては、圧倒的な県民の支持を受け、県政史上初めてとなる5度目の当選を果たされましたことをお喜び申し上げます。 達増県政を振り返りますと、続発する未曽有の大災害や世界的な感染症への対応、デジタル化の飛躍的進展、人口減少の加速度的進行など、危機的かつ大変革期における地方自治のかじ取りを余儀なくされたものと認識しています。 この間、特に東日本大震災津波から新型コロナウイルス感染症への対応は、統治、ガバナンスのあり方について、過去からの大きな宿題に向き合っていると考えています。 古今東西、感染症や大災害あるいは戦争など、いわゆる国家的な危機下では中央集権化があらゆる面で進みますが、その後の統治について、端的に言えば、平時に戻る中で、中央集権を是としてその依存を続けていくのか、それとも地方分権など権力の分散をして分権的国家を目指すのかということです。この点で言えば、さきの知事選は、候補の発言を仄聞する限りにおいて、まさに二つの統治の方向性が如実にあらわれた選挙であったと思います。 さて、中央集権化が進んだ点で言えば、やはり財政依存であります。ここ最近で言えば、地方が実施した新型コロナウイルス感染症対策や物価高騰対策などは、ほぼほぼ政府の臨時交付金が財源でした。その交付総額は21兆円。岩手県で実施された総額4、000億円に上る諸対策の財源のうち、制度融資に係る元利収入などを除けば、96%は臨時交付金などの国庫支出金が財源です。 財源を国の責任で用意したことは危機下にあっては当然ですが、使い道は事実上、国の指針に縛られ、財源の基金化はごく一部を除いて地方には認めませんでした。他方、国は基金化を進めて巨額の対策財源が塩漬けになるなど、スピードや自由度などの点で地方にとってはもどかしさが残る結果でした。 問題は、こうした危機的な状況下で起きる中央集権の動きを、平時に移行する中でどう評価し、岩手県として何を目指していくかということです。 達増知事の考えをお伺いいたします。 私は、分権型統治を進めるべきだと思っています。しかし、中央集権が全て悪で地方分権が全て善とも思いません。今、変革の時代にあって、一つ目は、政府の役割、地方の役割を再定義する必要があること、二つ目は、その中でナショナルミニマムはどの分野でどの程度の水準を求めるのか、三つ目は、国の仕事の分野を再定義する中で、地方の仕事と税財源をどうするか、差し当たって少なくとも三つの大きな基本的認識の議論を進めるべきではないでしょうか。 地方主権を訴えた民主党政権以降、国と地方のあり方は政治の中でメーンテーマからかなり遠ざかり、少なくともマスコミをにぎわすことはなくなりました。この議論をもう一度政治のテーマとするには、我々地方の努力が必要ですし、知事にはその先陣を切っていただきたいと願うものですが、先ほど指摘した論点への所感を含めお答え願います。 この問題は私も毎年取り上げてきていますが、政府や国民も巻き込んで早急にこの議論を進めないと、地方は人口減少問題などに対して大義名分をなくす、あるいは説得力を持って税財源を投入できない深刻な事態が起こりかねないと危惧しています。 能登半島地震の際、復旧、復興を目指し、それぞれのふるさとで懸命に努力する人々の傍らで、復興のために税金を投入するより移住させたほうが安上がりだ、高齢化の進む地域に金を投入して意味があるのかなどの意見が、SNSなどで散見されるようになっています。これらは、財政効果ではなく基本的人権の文脈で語られるべき問題であり、足らざるを憂うのではなく、等しからざるを憂うということそのものです。 また、国は新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴って各種補助金を即座に削減していますが、コロナ禍で果たすべき役割の重要性が再認識された公的病院は、軒並み最終赤字に転落し、地方の民間医療機関でも経営の悪化がささやかれています。 岩手県でも県立病院の赤字幅は、今年度、過去最大となりました。 〔議長退席、副議長着席〕 危機管理の基本は、初めは大きく構えて、終わりは徐々にというものですが、国の対応は全く逆で、そのしわ寄せを地方、とりわけ医療現場が受けている形です。 やはり国と地方は、現代においてどう役割を果たすか、どう補完するかという議論を省略すると、たちまち、財政的側面から政府にとって都合のよい財源なき分権論を押しつけられる実態の一つとなっています。 今、指摘した財源の話で言えば、地方税財政の改革は急務です。地方財政制度は、昭和25年以来、その根幹は変わることなく制度が維持されています。言うまでもなく、人口が地方交付税制度の基本ですが、人口減少が進む中、地方ほど公共サービスの需要が高まっている実態に制度が対応し切れていません。 地方交付税制度は、御案内のとおり、地方の行う基本的なサービス需要と収入の不足分を国が調整する機能がありますが、このところサービス需要、いわゆる基準財政需要に対する充当率が下がっています。 岩手県で最もそのあおりを食っているのが県立病院会計であり、高校教育費です。高校教育費では需要額の8割、県立病院に至っては5割程度になっており、さらに低減傾向が続いています。 例えば、医療関係でいうと、市町村が運営する診療所などには地方交付税が措置されるのに、県が運営する診療所には措置されない。医師派遣も、県から市町村に応援派遣される場合はよいが、例えば県立中央病院から沿岸部の県立病院に診療応援される場合などには地方交付税の対象にはならないなど、病院の成り立ちや経緯を無視し運営主体のみで判断するなど、実態とかけ離れたままです。 こうしたことから、県では、新年度予算案でも県立病院に対し223億円、高校教育に240億円の一般財源を措置しておりますが、県立病院繰出金の5割、110億円程度、高校教育費の2割、50億円程度は、いわゆる真水をつぎ込むことになります。 こうした問題点は持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会でも指摘し、新たな国の制度構築や改正の必要性にも言及しています。県として、こうした地方交付税の問題など現状をどう認識し、どう取り組んでいくのか、知事に伺います。 登壇しての最後に、これからの地方自治を語る上でも必要不可欠な政治と金、信頼の問題を取り上げます。 この問題については、既に今定例会でも指摘が相次いでおりますので重複を避けますが、やはり政治資金は出と入りをガラス張りにすることが基本であります。この基本に政治家みずから違反し、しかも組織的かつ長期的、大規模に行ってきたことは、これまでの政治改革の議論や努力、何より国民の信頼を裏切る行為です。 やはり、裏金を何に使ったのかは自由民主党の責任において徹底解明すべきであります。県議会においては、政務活動費について幾多の議論を経て、1円から領収書添付、残額は返還ルールが確立されており、国会レベルでできないわけはありません。 裏金はもちろん、政治資金全般、とりわけ現在その使途がブラックボックスとなっている政党の政策活動費や組織対策費について、地方組織も含めて明らかにすべきと思いますが、知事の見解をお聞かせください。 また、パーティー券の購入が企業団体献金の隠れみのになっているという指摘。そもそも政党交付金制度の経緯を踏まえ、企業団体献金は廃止すべきと考えますが、あわせて知事に伺います。 〔30番岩渕誠君質問席に移動〕 〔知事達増拓也君登壇〕 〇知事(達増拓也君) 岩渕誠議員の御質問にお答え申し上げます。 まず、国と地方のあり方についてでありますが、平成5年から始まった地方分権改革は、機関委任事務制度の廃止や国から地方への税源移譲など、国と地方の役割の見直しに寄与してきたものの、近年、国が国庫補助の要件として地方自治体の計画策定を誘導する手法が増加していることや、非常時における国の地方自治体に対する指示権の設定や農地の確保に係る国の権限の強化が検討されていることなど、中央集権的な動きも見られており、議員御指摘のとおり、地方のあり方を考える必要があると考えます。 このような中、国民の最低限の生活を保障する、いわゆるナショナルミニマムについては、東日本大震災津波における住宅再建への公費投入や新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための休業補償の対応を見ても、中央において、その議論が十分に行われたとは言えない状況にあり、むしろ地方の側が先行して、住民の立場でさまざまな施策を講じることを通じて、国としての施策の追加につながったものと認識しております。 このように、ナショナルミニマムについては、社会経済状況や国民生活の質の変化を踏まえ、水準の見直しを図るとともに、それに達しない地域社会が残存するような地域間格差は、国の責任において解消させなければならないと考えます。 また、例えば、医療や教育など住民にとって極めて身近で、地方が直接サービスを提供するような分野についても、地方の実情を踏まえた底上げや拡大を図っていく必要があり、それに見合った地方への権限の付与と財源保障が行われるべきであると考えます。 このように、地方が担うべき役割は非常に大きなものであり、また、県民、国民の皆様が、社会に関心を持ち、自分たちが身近な地域や社会をよりよいものにしていこうとすることも同時に重要なことであるため、全国知事会と連携し、分権型社会の実現に向けた国民的議論を喚起してまいります。 次に、地方交付税の問題などに対する認識と県の今後の取り組みについてでありますが、地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域に住んでいても一定の行政サービスが受けられるよう財源を保障するためのものであり、このような財源調整や財源保障の機能は、地方自治の根幹を支える重要なものであります。 地方財政制度創設以来、いわゆる三位一体の改革の議論などに翻弄されながらも制度の根幹が維持されているのは、その役割が不可欠なものであるためと認識しておりますが、一方で、本県のように、広大な県土を有し、多数の過疎地域を抱える地方の実情が十分に反映されていない部分があります。 県ではこれまでも、議員から御紹介のありました県立病院間の医師派遣に要する経費や、就学機会を確保するための小規模高等学校の維持に係るかかり増し経費などの財政需要について、地方交付税の算定に適切に反映させるよう、あらゆる機会を捉えて訴えてきたところです。 今後も、現在の地方交付税の算定方法等の問題点を明らかにしながら、広大な県土を抱える本県の財政需要が適切に反映されるよう、国に対して引き続き要請してまいります。 次に、政治の信頼回復についてでありますが、政治資金規正法の目的である政治活動の公明と公正の確保のためには、政治団体及び政治家に係る政策活動費などの政治資金の収支は公開されるべきものであり、それは地方組織であれ必要と考えます。 政治資金の収支の公開については、政治判断に基づいて、法が定める以上の詳しい内容を公開する政治団体や政治家個人もありますので、今回、自由民主党の派閥の政治資金パーティーや同党の政策活動費や組織対策費が国民の政治不信を招いていることを鑑みれば、自由民主党においては、特に地方組織を含め、詳しい内容の政治資金収支の公開を行う説明責任があると思います。 企業、団体による政治献金は自由な政治活動という面もありますが、財力により政治をゆがませるおそれがあることから、各国においてさまざまな形で制限が課されており、日本においても同様です。 さらに、日本共産党のように、法が定める以上の制限をみずからに課し、企業団体献金は受けないとしている政治団体もありますので、今回、自由民主党の派閥の政治資金パーティーや同党の政策活動費や組織対策費が国民の政治不信を招いていることを鑑みれば、自由民主党や関連する政治団体が、今後、企業団体献金は受けないとすることが、政治不信の解消につながる現在の状況だと思います。 〇30番(岩渕誠君) 今、知事の答弁の中に、第33次地方制度調査会の答申、これは国の補完的な指示の創設、こういうことに触れられておりました。 これは、今、地方と国というのは対等の関係でありますけれども、やはりそれではないのだというところを災害とかコロナ禍にかこつけてやろうという動きがあるのですが、こういう動きは、やはり目立たず静かに、しかし確実に、時に強引にというのが手法であります。 くしくも、きょう2月26日は、88年前に二・二六事件があった日であります。民主主義というのは非常に簡単に骨抜きにされる、破壊される、そして、簡単に権威主義に走ってしまう。こういったもろさを秘めておりますので、これまでの議論の積み重ねを大切にして、本当に今の時代の民主主義、デモクラシーとはどうあるべきか、地方自治はどうあるべきかというのをぜひ先陣を切ってやっていただきたいと思います。 それから、地方交付税の話であります。これは非常に長期にわたって慣例化してきていますけれども、やはり今、原点に戻らないと、本当に地方というのはどういうものなのだと。本来であれば、その交付金が必要不可欠なのですけれども、必要というのは質的な部分、それから不可欠というのは量的な部分ですが、その双方において、今かなり変容してきているので、これを実態に合わせてやっていかないと、全国の地方自治体が大変困ってくることになろうかと思います。 特に、やはり子供、子育ては、今、不交付団体の東京都を中心に積極的にやっていますけれども、県内の市町村でも、やりたいのだけど金がないのだと思います。異次元と言うのだったら地方に任せてくれ、財源をよこしてくれというところがいっぱいあるわけです。だから、そういう意味で、本当に今の時代、地方とは何ができるのか、財源をどうするという話は地方交付税の中で解決していくしかありませんので、お願いをしたいと思います。 最後の政治資金の問題、これは、まさに自由民主党のみならず、我々はガラス張りにしてやってくることで信頼を得てきているわけであります。だからこそ、実態がどうだったのか、それをなくしてどこにメスを入れるべきかというのはわかりませんし、私が一番心配しているのは、この議論が生煮えで、そして、改革も中途半端なものになっていくと、これは国民理解を得られない。 そうなると何が起きるかというと、政治に志を持って、俺は金がないけどこういう地域にしたい、こういう国にしたいという人は政治家になれない。金がある人しか政治家はできない、こういった状況に、間違った方向に進んでしまっては元も子もないと思いますので、ぜひそういった観点も踏まえて、これは、お互い律していかなければならないと思っております。 きょうは、地方制度調査会の答申の部分については指摘にとどめます。 次に、新年度予算案についてお尋ねしてまいりたいと思います。 新年度の予算案は総額で7、322億円、今年度に比べて392億円、率にして5.1%のマイナス。これは復興対策、新型コロナウイルス感染症対策の大幅減少を受けたものであります。ただ、この税収を詳しく見ていますと、個人県民税、法人二税が軒並み落ち込んでいて、減収するなどしている。こういったことを前提にした予算編成です。 この税収の落ち込みの理由、特にも法人二税についてどのように分析されているのか、そして、今後の見通しについてお示しください。 〇総務部長(千葉幸也君) 令和6年度の税収見通しについてでありますが、県税収入は1、265億3、800万円、今年度当初予算と比較して27億4、700万円、率にして2.1%の減少と積算しております。 その主な要因といたしましては、個人県民税の定額減税30億4、800万円の影響によるものでございまして、この減収額につきましては、地方特例交付金により全額国費で補填されるものであります。 また、法人二税につきましては、円安を背景に輸出の増加等により企業の収益は堅調に推移するものの、海外情勢、物価高騰の影響等により収益の伸びが縮小していることで、減収が見込まれているものであります。 税収につきましては、企業業績や景気の動向により変動するものと認識しておりまして、これらにつきまして引き続き注視してまいります。 〇30番(岩渕誠君) 個人県民税は減税があるのですけれども、それはきちんと特例交付金で措置されていますから、それを踏まえて見ても伸びていないのです。それは、やはり物価高騰とか、そういった影響がかなり大きいのだろうと思います。 それから、企業業績についても同じなのですが、さらに言えば、事業者数がどんどん減ってきているというのも岩手県の事業税の減少要因になっていると思います。 そういう観点からいうと、今まで国は、地方への本社機能の促進あるいはリモートワークの普及による労働力の地方分散などに取り組んできたのですけれども、今の答弁をお聞きするように、税収の落ち込みを考えれば、政策の効果はなかなか発現していないと考えるべきだと私は思います。 国が進めてきた一連の脱東京一極集中対策への評価をお聞かせいただきたいと思います。 〇政策企画部長(小野博君) 脱東京一極集中対策への評価についてでありますが、国では、東京圏から地方への人の流れをつくるために、地方への本社機能の移転や地方創生テレワークの促進などに加え、東京23区の大学の定員抑制、政府関係機関の地方移転などの対策を進めてきております。 これらの対策のうち、地方創生テレワークにつきましては、地方のサテライトオフィスの整備が進んだものの、地方への本社機能移転が令和4年実績で335件にとどまっていること、東京23区の大学への入学者が年々増加していること、政府関係機関の地方移転が消費者庁の一部と文化庁のみとなっていることなどがございます。 また、地方の税収につきましても、企業所得に係る法人二税が、本社機能が多い東京都に集まる傾向となっておりまして、これにより地方税収の一極集中が人口と企業の集中を加速することにもなりますので、引き続き、国においてさらなる脱東京一極集中対策が重要と考えております。 〇30番(岩渕誠君) 今、御答弁があったように、やはり不十分だと思います。むしろ企業のことを考えれば、コロナ禍を経て系列化とか寡占化がかなり進んだという印象を持っています。やはりここをきちんとやらないと人口減少にも大きく影響する話ですから、私は、政治と金の問題は次の総選挙での大きな争点になると思いますけれども、同じぐらい、地方分権改革は各党で競争しなければならない、そういう状況を地方のほうから求めていくべきものではないかと思っております。 次に進みます。予算案の内容を見てみますと、重点の4分野があり、新規事業は60事業あります。それから、制度の拡充に充てた事業は、今年度の倍近い72事業あります。これは財源をやりくりしながら、内容的には積極的かつ政策の継続と充実による効果の発現を狙う意図があると私は見ています。 特にも新規、拡充事業が最も多いのが自然減、社会減の人口減少対策であります。221億円が予算措置されています。子供、子育て対策で見ても、今年度よりも実質的に7億4、000万円の増額であります。かなり積極的だと思います。 この中には結婚支援や妊婦への支援の拡充などが措置されていますけれども、少子化対策強化の三つの柱、社会減対策強化の三つの柱を具体的にどう進めるのか、これらの予算の狙いについて、まずお尋ねします。 〇政策企画部長(小野博君) 重点分野予算についてでありますが、少子化対策につきましては、コロナ禍で急減した婚姻数が出生数に大きく影響していることから、結婚支援のさらなる充実や全国トップレベルの子供、子育て施策の継続、拡充が必要でございます。 また、社会減対策につきましては、コロナ禍で社会減の減少幅が縮小したものの、転入者の減少により再拡大の傾向が見られ、新たな人の流れの創出に向けた事業の充実や東京圏への若年女性の転出対策の強化が必要となっております。 このため、有配偶率の向上として、29歳以下の新婚世帯に対する支援金につきまして、県独自に10万円上乗せするほか、有配偶出生率の向上といたしましては、周産期医療情報ネットワークの整備、市町村が行う放課後児童クラブの運営や一時預かり事業に対する助成、また、女性の社会減対策といたしまして、デジタル分野のスキル取得に向けた支援などの事業を盛り込んでおります。 また、社会源対策の強化に向けましては、いわてとのつながりの維持・強化といたしまして、お試し就業、お試し居住体験の場の提供、多様な雇用の創出、労働環境と所得の向上といたしまして、デジタルリスキリングプログラムの実施、交流人口・関係人口の拡大といたしまして、外国人観光客誘客プロモーションの展開や県北・沿岸地域を含む旅行商品の造成支援など、それぞれの柱に基づく事業を盛り込んだところでございます。 これらの事業などによりまして、自然減対策と社会減対策の相乗効果を発揮させながら、オール岩手で人口減少対策に取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) 今回の人口減少対策ですが、これはベースの部分の対策を強化したと私は受けとめています。というのは、社会減対策で言えば、この何年間かで転入者が一番多かった転入元は三重県なのです。これはキオクシアです。いわゆる産業立地というのがかなり効果的だったということであります。 これは後で産業対策で聞きますけれども、こういった効果が平準化している中では、やはりベースのところはどうするかというようなところにハンドルを切っているのだろうと私は思いますので、これは非常に難しいところですけれども、ぜひ進めていただきたいと思います。 次に、予算の点で懸念をしているところがあります。これは物価高騰対応です。先ほども少し懸念を述べましたけれども、この財源は、先ほど言ったように国の交付金であります。ところが、財政運営上、この対策は経常経費、地方財政計画に入りませんから、常に補正予算で対応することになります。 まだ物価高対策は必要だと思うのですが、国は、今年度積んだ予備費を0.9兆円残したまま、この先、対策を講じる気はありません。このままでは医療機関や福祉施設、土地改良区などへの電気代負担、畜産対策、それからLPガスの負担軽減策などは、今年度いっぱいの可能性が高いのではないかと危惧しています。 そもそも政府の新年度予算では物価高騰対策予備費は1兆円と、昨年度の9.9兆円、今年度の2兆円に比べれば激減しております。政府与党は物価高騰対策をしないつもりと受けとめざるを得ませんが、県として今後の見通しをお示しください。また、国に対して継続的な対策を強く求めるべきと思いますが、今後の取り組みについて伺います。 〇政策企画部長(小野博君) 物価高騰対策についてでありますが、国は、先般閣議決定した令和6年度予算編成の基本方針等によれば、我が国経済はデフレから脱却する千載一遇のチャンスを迎えているが、賃金上昇は物価上昇に追いついておらず、個人消費は依然力強さを欠いていることから、足元の物価高に対応しつつ、持続的で構造的な賃上げやデフレからの完全脱却と民需主導の持続的な成長の実現に向けて、めり張りのきいた予算編成を行うとされております。 また、盛岡市の消費者物価指数によれば、盛岡市は、全国の上昇水準を上回る伸びとなっているなど、末端消費者への価格転嫁が進んでいることに加え、光熱水費の上昇率が高いことから、物価上昇を上回る賃金引き上げや光熱水費の負担軽減策を行わない限り、厳しい状況は続くものと認識しております。 このため、全国知事会等を通じまして、生産性向上への支援や価格転嫁の円滑化による取引適正化等を一層進め、地域の企業の賃上げを可能とする環境整備の推進を図ることに加え、医療機関や福祉施設、土地改良区などの電気代負担や畜産対策関係費、LPガス負担軽減策等について、国に要請しているところでございます。 今後も、国に対して物価高騰対策を強く求めていくとともに、県といたしましても、県民生活や地域経済への影響などを見きわめ、県民一人一人に寄り添った必要な支援策を機動的に講じてまいる考えでございます。 〇30番(岩渕誠君) 今、株が高いとかいろいろなことを言っていますけれども、個人消費、それから企業業績、実体経済で言うと、この物価高が下押し圧力になっている。このまま日本銀行が政策を転換するようなことになれば、ますます地方はしわ寄せを受ける、こういうことでありますので、物価高対策はまだ終わっていない。しかも、賃上げできるところはいいが、なかなかできないところもある。自営業者だってあるわけです。これは、ぜひ続けていただきたいと思います。 さて、労働の担い手として、県内でも外国人労働者の役割が大きくなっています。今年度は前年度より1、000人以上ふえて7、082人と7、000人台を初めて突破しました。特定技能在留外国人、こういう制度がありますが、1、313人と、こちらは去年の倍になっています。飲食料品製造業、それから産業機械、電気電子情報分野などの製造業のほかにも、介護や建設分野でも貴重な戦力となっていまして、出身国別に見ると、ベトナム、フィリピン、インドネシアと東南アジアの国々が上位を占めています。 御承知のとおり円安が進んでいますが、対ドルだけでなくて、実はこうした東南アジア各国についても円安で、ベトナムドン、フィリピンペソ、インドネシアルピアに対して、この5年間ほどで、円は17%から30%近く下落しています。 これは、賃金だけを見ると日本で働く魅力がなくなってきているということになりますから、実体経済を強くして賃金を上げていかないと、日本は選ばれない国になってしまうということがあります。いろいろな意味で日本は今、安い国になっているということです。 他方、日本企業の持つ技術力であったり働きやすさは、ますます重要であります。そこに魅力を感じている方々も多いと思います。そのためには、外国人も含めた賃上げ環境の整備や産業対策がまず必要になっています。 今年度の補正予算第5号とあわせての対策となると承知していますけれども、今後の具体的な取り組みの内容をお示しください。 〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 人口減少が急速に進み全国的に産業人材の確保が課題となり、外国人人材の受け入れを進めていくことが求められる状況にある中、国においては、技能実習制度及び特定技能制度の見直しが進められ、現行の技能実習制度を実態に即して発展的に解消し、育成就労制度を創設する方針が示されております。 こうした動きに的確に対応していくためには、単に不足する労働力を補うといった観点ではなく、地域経済を牽引する高度人材の受け入れや待遇面にすぐれた労働環境を構築していくとともに、海外の多様な文化を理解し、ともに生活できる地域づくりを進めていくことが重要であると考えております。 このような考え方のもと、令和6年度当初予算案において、外国人労働者の雇用実態の把握や関係機関と連携した日本語教育の支援などを行う取り組みを盛り込んだところであり、こうした取り組みを通じて、外国人人材を受け入れていくに当たっての課題を具体化した上で、さらに必要となる対応を進めていきたいと考えております。 〇30番(岩渕誠君) 働き方の中ではそういうことになると思います。 一方で、この就労環境の整備、とりわけ教育的環境など、外国人子弟に対しての支援の必要性も出てくると思います。 先日、私もベトナムの皆さんの旧正月の伝統行事に参加させていただいたのですけれども、子供たちが一緒に来ていますという人もいるのですね。いろいろ見てみると、やはりこういうところにきちんと手当てをしていかないといけないと思います。 この外国人子弟に対しての支援の必要性、現状認識と、それから当初予算案で措置された事業の狙い、今後の取り組みについて、教育長に伺います。 〇教育長(佐藤一男君) 文部科学省の日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査によりますと、本県の日本語指導の必要な児童生徒数は、平成30年度の30名から令和3年度には49名へと増加しております。 県教育委員会としましては、これまで、外国人児童生徒等に係る教育環境の整備を図るため、在籍校への教員の加配や、大学と連携した日本語指導に関する研修会の実施等に取り組んでまいりました。 今般、さらなる増加が見込まれる外国人児童生徒の就学機会の確保等を図るため、関係機関と連携し、新たに岩手県外国人児童生徒等教育基本方針を策定することとしました。 この方針に基づき、外国人等児童生徒の就学促進、学校の受け入れ体制の整備、日本語指導、教科指導等の充実を図ることとし、その推進に向けて、今後、関係機関との連携会議を立ち上げるとともに、日本語指導担当教員の指導力向上研修のさらなる充実や研究指定校における実践研究等に取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) やはり働く人の立場に立ってみれば、子供とか、そういったところの環境整備というのは底辺を支える部分ですから、これはきっちりと対応していただきたいと思います。 次に、防災対策について伺います。 まず、能登半島地震においては、医療や福祉分野を初め、給水車の派遣、インフラ復旧、警察活動など、岩手県内の官民問わず幅広く支援に当たっています。敬意を表したいと思います。 さて、今回の能登半島地震でもさまざまな課題が指摘されていますが、孤立集落の問題もクローズアップされた一つでありました。東日本大震災津波でも課題の一つでしたが、平成26年の内閣府の調査によれば、県内でも孤立する可能性のある集落は、27市町村の378集落に上るという報告が出されています。 沿岸部のみならず、花巻市、遠野市、盛岡市でも二桁以上存在します。この孤立可能性集落について調査段階で見てみますと、通信手段が確保されていないものが177集落、ヘリの駐機場所がないものが308集落、集落で備蓄がないものが232集落となっていました。 内閣府調査から10年が経過いたしますが、現状でこの孤立集落対策がどの程度進められているのでしょうか。基本的な対策は市町村で実施されるものと思いますが、県として、現状をどのように把握しているのかお示しください。 〇復興防災部長(佐藤隆浩君) 孤立集落対策の現状でありますが、内閣府による中山間地等の集落散在地域における孤立集落発生の可能性に関する状況調査は、平成16年の新潟県中越地震を契機といたしまして、平成17年度に初めて行われた調査で、その後、平成21年度及び平成26年度にフォローアップ調査が行われてきましたが、以降、国による調査は実施されていないところです。 このため、県として現在の集落ごとの状況は把握できていないところでございますが、能登半島地震の発生を踏まえますと、本県として、その状況を把握しておく必要があると認識しておりまして、今後、市町村と協議しながら、内閣府調査のフォローアップを進めていきたいと考えております。 なお、災害時の孤立集落からの救助に備えまして、県総合防災訓練では、ヘリコプターやバイクによる孤立者救助訓練を実施しており、今後とも、防災関係機関や市町村と連携しながら、対策の充実、強化に取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) 広い県土で378集落が今どうなっているかわからないということですけれども、これは早急に調べていただきたいし、特にヘリの駐機場所がない集落が300以上ある。そして、集落での備蓄がない集落が232もある。これは、やはり命にかかわることですので、早急に市町村と力を合わせて対策を立てていただきたいと強く要望します。 やはり災害に私たちの経験は生かされなければならないと思います。県では、今年度から全国で有数の震災記録誌と検証報告書80冊分を分析して、新年度から市町村と協力して災害対策に生かすとしています。さっき言ったこともこの中につけ加えてもらえばいいのですが、この事業で改めて明らかになった教訓や課題、能登半島地震を受けて検討すべきものなどについて、県の認識を伺います。 〇復興防災部長(佐藤隆浩君) 県では、国や他県等が発行している震災記録誌や検証報告書等約80冊を収集し、本県が作成した東日本大震災津波からの復興―岩手からの提言―の内容との比較を行い、今後の災害対応に生かすべき教訓や課題等を分析しているところです。 現時点ではまだ分析途上の段階ではありますが、これまでのところ、平時から復興まちづくりのための準備をする事前復興まちづくりや、被災者の主体的な自立、生活再建のプロセスを支援する災害ケースマネジメントの取り組みが重要な課題と捉えております。 こうした課題に的確に対応するため、令和6年度は、事前復興まちづくりに係る市町村担当者向けの研修会の開催や、災害ケースマネジメントの推進に必要なアウトリーチ人材の育成プログラム作成に向けた調査研究等に、岩手県立大学と連携して取り組むこととし、当初予算案に必要な経費を盛り込んでいるところです。 引き続き、教訓や課題等を整理するとともに、能登半島地震での災害対応上の課題などの把握に努めながら、必要な対策を検討し、総合的な災害対応力の向上を図ってまいります。 〇30番(岩渕誠君) これから我々が立ち向かう災害としては、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震があります。それから、今後30年以内で90%に発生確率が上がった宮城県沖地震への対応など、対策は待ったなしだと思います。 また、この東日本大震災津波の教訓というのは、そういった中で教えてほしいというところが結構多いのです。これは地震や津波だけではなくて、大規模火災などからの復興といったものを岩手県を参考にしたいという声は、国内にとどまらず、海外からも届いています。幸いにして、岩手県では英訳がありましたので提供していただきましたけれども、非常に貴重なものなのだと思います。この教訓の共有に積極的に取り組んでいただきたいと思います。 今回の能登半島地震では、前回の東日本大震災津波の岩手県の対策本部にいた医療の方が、石川県の対策本部にも入って、頑張っていました。その方とやりとりをしたときには、東日本大震災津波と課題は同じだと、その教訓を伝えたいのだけれども、なかなか伝えられていないのだとのことでした。 やはり伝承というのは大事だと思います。議会提案の条例で東日本大震災津波を語り継ぐ日条例もありますし、知事は、伝承の大切さを地元紙にもインタビューで述べています。所感があれば、知事からお願いしたいと思います。 〇知事(達増拓也君) 自然災害が頻発する中、自然災害に強い社会を実現していくためにも、国内外に東日本大震災津波の事実と教訓を伝承し、国内外の防災力向上に貢献していくことが重要と考えております。 県では、いわて県民計画(2019〜2028)に復興の柱の一つとして未来のための伝承・発信を新たに位置づけ、施策を推進しています。伝承、発信の中核を担う東日本大震災津波伝承館には、国内外から約92万人の方々に来館いただいており、日本を代表する震災津波学習拠点として広く認識されているものと考えております。 また、海外の津波博物館と連携しながら、県内の高校生と海外の津波被災地、例えばインドネシアのアチェ州やアメリカのハワイ州の高校生との交流会を実施し、お互いの震災伝承活動を紹介し合い、今後の活動をともに考える機会を設けるなど、次代を担う伝承の担い手の育成と海外に向けた発信にも取り組んでいきたいと思います。 令和6年度は、こうした取り組みを継続するとともに、県内の震災伝承施設等の情報を一元化したウエブページの構築、東日本大震災津波からの復興―岩手からの提言―の英語版作成に取り組むなど、国内外の防災力向上に貢献できるよう、東日本大震災津波の事実と教訓の伝承、発信に積極的に取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) 我々の若いときには、会社の上司に、ちょっと今晩つき合えとか言われて、いろいろな形で昔の武勇伝を聞かされたわけであります。今の時代にそれがいいかどうかは別ですが、ただ、生きた話というのは我々にとって身になっているわけでありまして、やはり直接どう語りかけていくか、どう伝えていくか、これはさらに工夫が必要だと思いますので、ぜひ積極的な取り組みをお願いしたいと思います。 ここからは産業振興全般について、自動車、半導体、農業の順にお聞きいたします。 まず、自動車産業についてお尋ねします。100年に一度の大変革期を迎えている自動車産業でありますが、ICT端末としてつながることができるさまざまなサービス展開ができるコネクテッドのC、自動運転のA、シェアリングアンドサービスのS、電動化のE、これをつなげてCASEにどう対応するかに各メーカーが取り組んでいます。 異業種をも巻き込んでモビリティーサービスの会社への転換というのが自動車業界の大きな流れになってきていますけれども、岩手県の産業界は、この流れにどう対応しているのでしょうか。先般、トヨタ自動車本社で新しい展示商談会、とうほく・北海道新技術・新工法展示商談会も開催されていますが、その成果や手応えについてもあわせてお答えください。 〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 県内企業の自動車関連産業への参入状況については、近年、特にIT、ソフトウエア分野等において自動運転や電動化に関する参入の動きが見られ、今後もこうした動きは加速化していくものと見込んでおります。 こうした中、本年1月に開催した商談会では、8道県中、本県の出展企業が最多を占めており、CASEをテーマにする特別企画を初め、車載電池やAI等で次世代モビリティーの開発に資する新技術が提案されたところです。 これらの提案や新規出展者が多かったことなどに対し、トヨタ自動車の幹部や来場した大手サプライヤーを初めとした多くの方々から高い評価を得たところであり、その後の商談状況も順調なことから、今後の取引拡大に向け大きな手応えを感じております。 引き続き、出展企業をフォローしていくとともに、県内企業の電動車部品製造への参入に向け、国から地域支援拠点として選定された、いわて産業振興センターを核として、産学官の連携のもとで、さらなる取引拡大に向けた支援を展開してまいります。 〇30番(岩渕誠君) このCASEに対応して、県内の企業も数社、もう既に技術的には参入しています。これがふえるようにと思っています。 一方で、次世代自動車のハード的には、蓄電池とモーター関連がキーテクノロジーだと思います。これはなかなか東北地方が弱い分野なのですが、東北地方でこれを産業育成できるかどうか、これは本当に、第3の拠点を揺るぎないものにして、第2、第1の拠点になるかというところの重要な問題だと思っていますけれども、現状と課題、対策をお示しください。 〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 蓄電池とモーターは電動車の開発の鍵を握る技術分野であり、今後の電動化の進展に伴い、その重要性はますます高まるものと認識しております。 国においても、蓄電池とモーターの重要性に鑑み、蓄電池産業戦略の策定や特定重要物資への蓄電池の指定等により、蓄電池産業全体の競争力強化に向けた取り組みを加速させるとともに、モーターの量産、調達体制の構築に向けた支援を行っています。 県内におきましても、蓄電池の素材や小型モーター、歯車等の開発の動きがあるところであり、こうした動きを踏まえ、来年度は、県においてもいわて産業振興センターと連携し、北上市内の自動車部品分解展示場におきまして、県内企業をターゲットに、蓄電池とモーターをテーマとする新規参入セミナーの開催などを行うこととしております。 今後、蓄電池、モーター関連企業の誘致活動とあわせ、県内企業が蓄電池、モーターの関連分野に参入できるようしっかりと支援してまいります。 〇30番(岩渕誠君) 世界のEV市場の中で日本が逆転打を打てるとすれば、これは蓄電池です。ここが肝になってくると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。 次に半導体ですが、一部で回復がおくれていますけれども、全体としては業績が上向いてきています。県内でも既にデバイスと装置など半導体産業全体の産出額は直近のデータで4、650億円余りと、食産業を抜いて自動車関連産業に次いで2位になっています。立地企業数こそ停滞していますけれども、令和に入っても新規取引件数は毎年20件以上で推移するなど堅調であります。 東北地域全体で見ても、宮城県にPSMC―石晶積成電子製造、台湾企業が進出して、半導体関連産業の集積はますます進むものと思いますが、この台湾企業の進出は働き手の流出も危惧されています。半導体産業の県内での集積に向けた課題と対策、人材確保について、県の考えをお示しください。 〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 半導体市場は世界的に拡大傾向が顕著であり、各国間の競争が激化する中、我が国におきましても、半導体関連産業の国内投資を促進する方針が示されております。 半導体産業のさらなる集積を進めるためには、産業用地や道路のほか、工業用水や下水道などのインフラ整備とともに、人材の育成、確保の取り組みを引き続き支援する必要がございます。 こうした中、国が昨年12月にデジタル田園都市国家構想交付金の中に新たに創設したインフラ整備を推進する交付金の対象地域として、本県を初め、北海道、広島県、熊本県の4道県が選定されたところであり、この交付金を活用し浄水場などの整備を推進してまいります。 また、人材育成、確保への支援につきましては、産学官連携のもと、いわゆる拠点整備交付金を活用し、半導体関連人材育成施設の整備を進めることとして、施設整備に必要な予算を先般、2月補正予算として追加提案したところでございます。 こうした国の支援策を最大限活用しつつ、関係機関と緊密に連携し、半導体デバイスメーカー、半導体製造装置メーカー及び地場企業が集積する本県ならではの取り組みを進め、半導体関連産業の持続的な成長を図ってまいります。 〇30番(岩渕誠君) 今後、自動車、それから半導体を見てみますと、GXをその中にどう進めるかというのが世界の潮流になってきていると思います。既に自動車はそうでして、トヨタ自動車東日本岩手工場で生産されている高級車、とても高いのだそうでありますけれども、これは早池峰水力発電所のグリーン電力に転換することで契約を結びましたが、これによって、今、海外6カ国にしか輸出できないものが60カ国にふえる、10倍になるということであります。これは、まさに2050年の温室効果ガス排出実質ゼロに向けての取り組みであって、GXは経済のど真ん中に置かなくてはならないものになっています。 政府も、今月からGX経済移行債を10年間で20兆円程度発行し、官民で150兆円の関連投資をするとしています。 今、半導体というのは微細レベルのサイズの開発に注力しているのですけれども、これは省エネ半導体あるいは、早晩クリーン半導体というものが話題になってくるのではないかと思います。 その際、県として産業集積のツールとしてクリーンエネルギーの調達の容易性が大きな武器になる可能性が強いのではないかと私は思っているのですが、今後の県の具体的取り組みの方向性についてお示しください。 〇環境生活部長(福田直君) 世界的な潮流として、再生可能エネルギーを現地調達できるかどうかが企業立地の新たな決定要因となる中、本県の再エネのポテンシャルの高さは大きな強みであり、御指摘の早池峰水力発電の事例は、その端緒と呼べるものと考えております。 そのため、昨年12月に改訂した岩手県ふるさと振興総合戦略では、再エネの地域内循環、特に、再エネ電力を生かした産業集積という新たな方向性を打ち出したところでございます。 また、県内には自治体が出資する地域新電力が複数あり、地元の公共施設などに電力を供給しておりますが、来年度設立予定の地域新電力で企業誘致まで見据えているところもあり、県の総合戦略に沿ったものと言えます。 今後、このような新たな脱炭素の方向性を県市町村GX推進会議などでさらに浸透させることとしており、地域脱炭素が本県の経済成長のエンジンとなるように努めてまいります。 〇30番(岩渕誠君) 今、環境生活部長から答弁ありましたけれども、脱炭素というのが発展のエンジンになる。これは、もしトラリスク―もしもトランプ氏が大統領に再選したらというものがありますけれども、長期的に見ると、多分それはほとんど考慮に入れなくていいと思います。 今、その排出権の取り組みは各企業が、上場企業に対してこれを格付するようになりますし、それから、サプライチェーン全体でこの排出量をどう評価するかというのも動き出しています。そうすると、もう企業はやらざるを得ないということですから、ぜひ岩手県のポテンシャルを生かしていただきたいと思います。 あわせてお伺いいたしますが、県が発行したグリーン/ブルーボンドは非常に高い評価を得ているわけでありますが、これは応用がきくと思っています。例えば、洋上風力発電や周辺の環境整備などに使えると思いますし、新たな財源調達と次世代の産業振興、環境保全に大いに貢献できるのではないかと思います。 研究を進めるべきと考えますが、あわせてお答えください。 〇総務部長(千葉幸也君) 次世代の産業振興を考える上で環境保全への配慮という視点は重要であると認識しており、先ほど議員から御紹介がありましたけれども、県では、令和6年度に早池峰発電所で発電する電力をトヨタ自動車東日本岩手工場に供給する予定としているなど、クリーンエネルギーの安定供給による産業振興の取り組みを進めているところでございます。 議員御指摘の海上風力開発につきましては、令和3年9月に、久慈市沖が、海洋再生可能エネルギー発電施設の整備に係る海域の利用の促進に関する法律―再エネ海域利用法における一定の準備段階に進んでいる区域として整理されたところでございまして、実現に向けて、他のさまざまな課題とあわせて、グリーン/ブルーボンドの活用可能性についても検討を進めてまいります。 〇30番(岩渕誠君) 研究を進めていただきたいと思います。 産業振興の最後に、農業問題についてお尋ねします。 農政の憲法、食料・農業・農村基本法の改正案が今国会に提出されます。世界的な食料需給や人口減少などの変化に対応して25年ぶりの見直しということになりますけれども、これまでに明らかになった改正案と関連法案を見ますと、大きな疑問が現場では湧き上がっております。 食料安全保障、環境、持続的な発展、農村の振興の四つの柱を掲げていますけれども、自国の農業生産について、食料自給率やその向上については後退をして、かわりに農産物や農業資材の安定的な輸入が前面に出て、何と輸入相手国への投資の促進なども盛り込まれています。これは貿易促進法ではないのに、農政の基本法に盛り込まれているわけです。 今年度の政府補正予算では、いざというときは海外から食料調達できるようにサプライチェーンを強化するための予算が措置されたのですが、まさか基本法でも食料調達を海外に依存する姿勢をこれほど明確にして、これで本当に日本の農業や農村が守れるのかという思いを強くしております。 必要なのは、輸入元への投資より国内の生産現場への投資、国内生産をどう支えるかであります。まずは、この改正法について、知事の認識をお伺いいたします。 〇知事(達増拓也君) 世界的な人口増加等による食料需要の高まりや気候変動による生産減少、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、食料安全保障の重要性が高まる中、将来にわたって国民に対し良質な食料の安定供給を確保することは、国の基本的な責務であり、我が国の食料自給率を高めていくよう努めていくことが重要であります。 現基本法では、食料の安定供給について、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、輸入と備蓄を適切に組み合わせるとしていますが、世界的な食料供給の不安定化等により安定的な輸入に懸念が生じていることから、過度な輸入依存から国内生産の増大への転換を強力に進めていくことが重要と考えます。 国では、国民生活の安定と安心の基盤を支える役割を担う食料、農業、農村について、食料供給の現場である地方の実情に応じた施策の充実強化を図り、国と地方の連携による持続可能で強固な食料供給基盤が確立できるよう取り組んでいくべきと考えます。 このため、全国知事会の農林商工常任委員長として、農林水産大臣に対し、食料や生産資材の過度な輸入依存から国内生産への転換等の食料の安定供給の確保などについて提言をいたしました。 食料自給率が100%を超える本県は、我が国の食料供給基地としての役割をしっかり果たしていくことが重要であり、今後とも、本県農業が持続的に発展するよう取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) 知事会の提言内容を私も拝見しておりますが、かなり早い段階からこの改正案については疑問を持っているようであり、私もそのとおりだと思います。 この改正案で問題なのは、農業生産現場にはかなりの疲弊が来てもう限界だというのに、特にも物価高で価格転嫁が十分にできない、それから、経営収支が悪化して担い手がどんどん退場していく中で、この実態を反省することなく、輸出やDXのみで対応しようとしている点です。これでは農業も農地も地域も守れません。 輸出やDXも大事ですが、今の農業現場に最も必要なのは、多様な担い手を確保して、安心して営農を継続できる仕組みであり、所得の補償などで自国の生産体制を支える姿勢だと私は思います。ここは全く盛り込まれず、合理的な価格形成について言及して、お茶を濁したにすぎない内容です。 この点について、見解を求めます。 〇農林水産部長(藤代克彦君) 農業現場に必要な取り組みについてでありますが、県では、現下の課題である生産資材価格の高騰を踏まえ、農業経営の安定が図られるよう県独自の支援策を実施するほか、新規就農者の確保に向けた県内外での就農相談会の開催や、担い手の経営力強化に向けた県農業経営・就農支援センターによる中小企業診断士等の専門家派遣などに取り組んでいます。 また、農業経営のセーフティネットについて、現時点では、自然災害による収穫量の減少や農産物の需要変動による価格低下などの農業収入の減少を補填する収入保険制度等にとどまっており、今般の肥料や飼料等の原材料価格の高騰には対応していないところです。 このため、国に対し、多様な農業者のニーズを踏まえた効果的なセーフティネットの構築などを要望しており、今後とも、農業者の皆さんが意欲を持って生産活動を行うことのできる農業の実現に向け取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) 最後に、この基本法に関連して提出される食料供給困難事態対策法の中身について伺います。これはひどいです。米、麦、大豆などが不足する食料危機の場合、政府が目標を設定して農家に増産計画を指示できる。農家が従わない場合は罰金と言うのです。 これまで水田活用交付金の問題や種子法の廃止、中山間、日本型直接支払も含めて、各種補助金、交付金を削りに削り、農業潰しの政策を進めておいて、いざというときに増産しなさいと言っても、そのときに農家は残っていないです。農地は荒廃しています。農業者の不安と怒りは相当です。 県として、こうした問題点を把握して、しっかりと国に対して意見をしていただきたいと思いますが、お答えいただきたい。 〇農林水産部長(藤代克彦君) 県ではこれまで、国に対し、食料の安定的な供給に向け、食料安全保障の強化や農業の持続的な発展に向けた水田等の有効活用による産地対策の充実強化などを要望してきたほか、全国知事会等と連携しながら、食料や生産資材の過度な輸入依存から国内生産への転換等の食料の安定供給の確保などを要望してきたところです。 議員御紹介の法案では、食料が不足する事態の深刻度に応じ、食料の安定供給の確保のための措置を講じる一方で、措置に従わない場合の罰則などが盛り込まれており、生産現場にどのような影響を及ぼすか、国会での審議動向を注視するとともに、国に対し、農業者が将来にわたり意欲を持って生産活動に取り組むことができる環境が整備されるよう、さまざまな機会を捉え要望していくこととしております。 〇30番(岩渕誠君) 全体に今の農政は、自国生産よりも海外に頼って、いざとなったら、自分で潰しておいて、おまえら何とかしろと農家に強要するというのは、これはどこの国の農業の基本法なのだと言いたくなります。ぜひ現場を歩いて、その声を拾って、しっかりと対応していただきたいと思います。 次に、地域医療についてお尋ねいたします。 先ほども言及しましたように、県立病院の収支は大変厳しい状況に追い込まれていますが、これは県立病院に限ったことではないです。公的病院はもとより、影響は民間にも及んでいます。国の医療経済実態調査によれば、医療法人の運営する一般病院収支は、新型コロナウイルス感染症の補助金を除いた経常収支で見ると既に2年前から赤字に転落しています。公的病院はかなり前から赤字基調ですが、民間病院でも収支は悪化しています。診療所は黒字ですが、後継者などの問題もあり、岩手県でも廃止、閉院が続いています。 一関市内でも、これまで地域医療を担ってきた二つの民間病院が外来診療を休止し、今後は、全国展開する医療法人の傘下に入って在宅医療やホスピス対応に注力するということです。 県内でもこうしたケースが今後出てくるのではないかという声も強まっていますが、公的医療機関、民間医療機関をあわせた地域医療を支える力が低下することを危惧しています。 県として現状をどう捉えているのか、認識をお伺いいたします。 〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 議員御指摘のとおり、県内医療機関におきましては、人口減少に伴う患者数の減少や少子高齢化に伴う疾病構造の変化、さらには新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響などによりまして、経営状況が厳しさを増しているものと認識しております。 また、医療機関の後継者不足や高齢化に伴い需要が見込まれる在宅医療の担い手不足など、地域医療を支える人材の確保も重要な課題であります。 このように医療を取り巻く環境が変化する中で、今後におきましても地域医療を守っていくため、在宅医療やオンライン診療の充実について令和6年度当初予算案に盛り込んだほか、かかりつけ医機能を担う医療機関と、紹介された患者を重点的に診療する医療機関との役割分担などの取り組みを各地域の医療、介護関係者や市町村などと協議を行いながら推進し、県民が居住する地域で必要なときに適切な医療が受けられる環境整備に取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) 地域医療全体の力がかなり落ちてくるという懸念が強いと思います。岩手県の場合は、やはり県立病院を中心とした公的病院のネットワークの重要性がますます強くなってくると思いますが、そのためには財務体質、それから診療体制をどう整備していくかが大きな課題だと思います。 新年度の取り組みでは在宅医療について新たなものがスタートしますが、これは、ハイボリュームセンターで高度専門医療の提供体制を整備することと一対をなして、地域の細かなニーズや受診弱者への対応として進めるべきものと考えます。 個々の病院の機能をどうするかという議論は別にしても、これは県立病院全体のネットワーク維持と県民の命を守るために必要と認識しておりますが、県の今後の取り組みの方向性をお示しいただきたいと思います。 〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 高齢化の進展に伴いまして、慢性的な疾患を複数抱えながら地域で生活する患者が増加することが見込まれ、今後、在宅医療の重要性が増してくるものと認識しており、現在策定を進めております次期岩手県保健医療計画におきましては、在宅医療に必要な連携を担う拠点と、在宅医療において積極的役割を担う医療機関を各圏域に1カ所以上位置づけ、県内の在宅医療の強化に取り組むこととしております。 このため、令和6年度当初予算案におきましては、計画に位置づけた医療機関及びその医療機関と連携する訪問看護事業所の事業拡充に対する支援として、在宅医療に必要な医療機器や訪問診療等で使用する車両の整備に要する経費を計上したところであります。 加えて、訪問看護事業所の人的体制を強化するため、潜在看護師の就業促進などの訪問看護師の確保や、教育、研修体制を充実するための経費について計上したところであり、県医師会や県看護協会と連携して事業を推進することにより、在宅医療の提供体制の確保、充実を図ってまいります。 〇30番(岩渕誠君) わかりました。ぜひ進めていただきたいと思います。ハイボリュームセンターも在宅医療も、どちらもなくてはならないものですから、うまく組み合わせてやっていただきたいと思います。 財政的には、先ほどの質問で述べたように、人口減少下における地方交付税改革と基準財政需要にきちんと対応した財源確保が必要と思います。 他方、診療体制を見ますと、やはり医師や看護師などの医療資源の確保が第一歩でしょう。奨学金養成医師の配置など一定の成果を出している一方で、現状は、県外の医学部進学者が半数以上となっているため、臨床研修段階から義務履行、そして、その後の定着までどのように進めていくかが鍵であります。 新年度からは県内での臨床研修が実質義務化となりますが、県外進学先との調整、理解は不可欠です。どのように対応し、見通しはどうなのか、お示しください。 〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 県では、奨学金養成医師の計画的な配置に重点的に取り組んでおり、来年度は、現時点で県全体で166名の配置を予定し、今年度と比較し15名の増となっております。 来年度からの県内での臨床研修の原則義務化に当たりましては、奨学生に面接や説明会等で県内での臨床研修を選択するよう説明し、また、指導者等に対しましても岩手県の奨学金制度について理解を求めておりますが、研修先として症例数の多い県外の病院を選択する方が一定数いることも事実でございます。 こうしたことから、次期岩手県医師確保計画におきましては、専門人材や高度医療機器の配置の重点化などによりまして症例数や手術数を確保し、専門教育機能が充実した研修体制を整備することとしております。 県では、引き続き、奨学生や指導者等に対し、本県の奨学金制度を理解してもらえるよう働きかけていくとともに、充実した研修体制の整備に努め、医学奨学生の着実な義務履行と定着の促進に取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) 今、県内の高校生が大学医学部に進学する数は、大体40人から60人ぐらいですけれども、半分以上が県外という年も少なくありません。その人たちが、奨学金をもらっていても、奨学金を返還して義務履行しない人たちもふえていますから、この辺は、当該医局に対しての説明が非常に重要になってきますし、この先の医療資源の確保の肝になると思いますので、よろしくお願いいたします。 公的病院の重要性が増す中で、公的医療に何を求めるのか、公的医療として何ができるのかも今後の課題だと思います。 高度生殖医療、これは私がずっと取り上げていますけれども、保険対象にはなりましたが、ほぼ民間が医療を担っています。それから、需要が高まっている再生医療、これは将来的に数兆円の市場になると言われておりますけれども、これは公的機関ではなかなか対応できておりません。 ただ、がん治療などでは、保険適用の拡大によって公的機関も重粒子線治療などもやっていますし、ニーズも増加していると。公的病院がどこまでやるのかが焦点だと思います。 先進医療も含めて公的医療機関がこうしたものをどこまで担うのか、議論と整備を進める必要があると思いますが、認識をお聞かせください。 〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 先進医療は、将来的な保険導入に向け、有効性、安全性などの技術的妥当性や倫理性、普及性、費用対効果などの社会的妥当性の評価を行いながら実施する医療であり、県内において、令和6年1月現在で4医療機関11件が、国の承認を受けて先進医療を実施しております。 先進医療の保険適用により、多くの患者が少ない費用負担で新たな効果的な治療が受けられるようになることが期待できます。 先進医療や保険適用された先進的な医療のうち、例えば生殖補助医療や再生医療の導入については、設備投資も比較的小さいことから、民間医療機関で実施する例もある一方で、議員御紹介の重粒子線治療などについては、整備に多額の費用がかかることから、大学や研究機関により設置される例が多くなっています。 こうした先進的な医療については、専門人材の確保や費用面、経営面などの課題もございますが、医療関係者の意見なども伺いながら、県内での提供体制について検討を進めていきたいと考えております。 〇30番(岩渕誠君) やはり投資が少なくて済むものは、自由診療が多いのですけれども、これはほとんど黒字です。ただ、人材をどうするかという問題がありますし、まさに公的なところでどこをやるのかという、要求される質が変わってきているわけですから、これについてはきっちりとした議論を進めていただいて、すぐやれという話ではなくて、やはり線引きをきちんとしましょう、整理をしましょうということは、やってしかるべきなんだろうと思います。 最後にILCについてお伺いいたします。 昨年末、ILCを後押しする報告書がアメリカでまとまりました。大変重要な報告書だったと思っております。国家予算の枠内でプロジェクトの優先順位を決めるP5―ピーファイブ、米国の科学諮問委員会の最終報告書であります。2014年以来となる報告書からも大きく前進した内容と私は受けとめています。 素粒子物理学の研究は国際的なパートナーと一緒に実現することにし、欧州のFCC―ee―次世代円形衝突型加速器とILCの計画は、我々が考えている素粒子物理学の目標を達成できるので、ぜひ参加すべきだとしていますし、これらに実現可能性があるとして、内容が具体化した場合、アメリカは約10億から30億ドル、日本円にして1、450億円から4、350億円の範囲で支援すると明言しました。 まず、この最終報告書を受けて、県の所感を伺いますと同時に、今後の取り組みについてお示しください。 〇知事(達増拓也君) P5―ピーファイブ、米国の科学諮問委員会の最終報告書は、米国の今後10年間の素粒子物理学の方向性を示すもので、県としても、その前段のプロセスであるスノーマスにおける議論の段階から動向を注視してまいりました。 最終報告書では、ヒッグスファクトリーの建設が最優先事項の一つとされ、米国が貢献するプロジェクトの選択肢として、ILCと欧州のFCC―eeが、多額の予算規模とともに示されたところです。 改めて、ILCが世界的に実現性の高いプロジェクトであると評価され、実現に向けた動きが進展することを期待されているものと受けとめております。 現在、その実現に向けては、研究者によって、ILCテクノロジーネットワークの枠組みによる国際協働の研究開発や政府間協議に向けた環境醸成の取り組みが着実に進められています。 これに加え、昨年、研究者から示された2030年ごろを建設開始とするタイムラインやFCC―eeの実現可能性調査などの動きを踏まえると、日本政府による早期の誘致判断が必要であり、それを後押しする国民的な機運醸成の重要性が高まっています。 県としては、こうした国際的な情勢や研究者の取り組み状況などを県内外の推進団体等と共有し、ILCの有する多様な意義や価値を広く発信するなど、関係者が一体となって、国民的な機運の盛り上げを図りながら、国に対して一日も早い誘致の判断をしていただけるよう取り組んでまいります。 〇30番(岩渕誠君) そのとおりだと思います。 アメリカのP5が踏み込んだ内容の報告書を作成したことは、建設実現に非常に大きな意味を持つわけですが、このP5の取りまとめに当たったのは村山斉先生であります。この村山先生は、アメリカではILC計画がどうなるかわからないと思われている。研究者がよく言うのは、ILCにはホストがない。つまり主体がないプロジェクトなので信用できないということ。ILCを日本に誘致するには、プロジェクトの枠組みをどうするか今後のビジョンを早く明確にすることが求められていると、地元紙のインタビューに答えております。 私は、もう政治決断の時期にとうに入っていると思います。欧州の研究者は、ILCの稼働開始のリミットは2039年だと言っています。逆算すると、やはり2025年には結論は出さなければならないと思っているのですが、肝心の国は、地方がもう少し機運醸成してとか言っていますけれども、そういう時代はもう過ぎた、もう国が決断をしなければならない時期になっているのだと私は思っています。 過日、当県議会の国際リニアコライダー建設実現議員連盟で国に対して要請行動を行いました。私は同席いたしませんでしたけれども、参加した議員連盟の役員の皆さんにお話を聞きますと、文部科学大臣はやる気があるのか、今までよりもひどかったという話であります。 今の文部科学大臣は、何かどうもILCではなくて、気もそぞろなんだと思いますけれども、それでは困るわけであります。国会議員によるリニアコライダー国際研究所建設推進議員連盟の会長も政治倫理審査会に出るというのが話題になって、ILCにどう注力するかというのはなかなか聞こえてこない。政治が決断をしてもらわなければならないときに、大変心もとないという状況で、私は大変心配しております。 こうしたことも踏まえて、国の動きについて県はどのように捉えているのか、お示しいただきたいと思います。 〇ILC推進局長(箱石知義君) 国の動きについてでありますけれども、文部科学省は、一昨年の有識者会議の報告書に沿って、立地問題を切り離し、将来加速器技術の研究開発を推進するとの立場であります。 令和5年度以降のILC関係予算は、先端的な加速器技術開発に係る予算として大幅に増額されました。政府予算の増額により、ILC関連の研究開発は着実に進展するものと期待されますけれども、ILCの実現には、さらに立地問題や費用分担等の国際的議論を進展させることが必要と考えております。 県では、こうした状況を踏まえ、政府予算要望など、あらゆる機会を捉えて、国家プロジェクトとして誘致を推進することや、日本政府が主導し国際的議論を推進することなどを国に要望しているところでございます。 議員御指摘のとおり、研究者が示すタイムラインなどを踏まえると、政府には、ILCの実現に向け、早期に誘致に前向きな態度表明を行い、国際的な議論をリードしていただきたいと考えております。 〇30番(岩渕誠君) そのとおりです。地元も経済界も一生懸命やっていると思います。あとは決断するだけです。幸いにして、財務大臣は岩手県人でありますので、財務大臣がいる間に、ぜひ政府には決断をしていただきたいと思います。 さて、最後に、こうした何か心もとない国の動きを尻目に、この4月から、加速器関連の新たな施設、東北大学の次世代放射光施設ナノテラスが運用をスタートさせます。 こうした国内の加速器関連施設への県内企業の技術参入や研究など、成果も見えてきております。ILC建設を見据えた県内企業の動向を捉え、今後、県としての支援をどのように拡充させていくのか、お考えをお聞かせください。 〇ILC推進局長(箱石知義君) ILC建設を見据えた県内企業の動向等についてでございます。 これまで、いわて加速器関連産業研究会などの県外企業の参入に向けた取り組みにより、ナノテラスなど加速器関連施設の整備にも対応し得る企業や、ILCにも関係する陽電子源装置の共同開発を行う企業があらわれております。 こうした流れを加速していくためには、県内企業のさらなる技術力の向上と取引支援が重要であると認識しており、今年度、岩手ILC連携室・オープンラボに整備した試作品性能評価機器を活用し、研究者による技術指導等を強化するとともに、専門知識を有するコーディネーターによる積極的な企業訪問やマッチング活動に取り組んでいるところでございます。 現在、J―PARC―大強度陽子加速器施設など国内の加速器施設の改良、整備が予定されており、ILCの建設を見据え、そうしたプロジェクトへの参画も可能となるよう、引き続き産学官が共同し、技術力向上に向けた支援などの取り組みを推進してまいります。 〇30番(岩渕誠君) 終わります。ありがとうございました。(拍手) 〇副議長(飯澤匡君) 以上をもって岩渕誠君の一般質問を終わります。 〇副議長(飯澤匡君) この際、暫時休憩いたします。 午後4時18分休憩 出席議員(48名) 1 番 田 中 辰 也 君 2 番 畠 山 茂 君 3 番 大久保 隆 規 君 4 番 千 葉 秀 幸 君 5 番 菅 原 亮 太 君 6 番 村 上 秀 紀 君 7 番 松 本 雄 士 君 8 番 鈴 木 あきこ 君 9 番 はぎの 幸 弘 君 10 番 高橋 こうすけ 君 11 番 村 上 貢 一 君 12 番 工 藤 剛 君 13 番 小 林 正 信 君 14 番 千 葉 盛 君 15 番 上 原 康 樹 君 16 番 菅野 ひろのり 君 17 番 柳 村 一 君 18 番 佐 藤 ケイ子 君 19 番 高 橋 穏 至 君 20 番 佐々木 宣 和 君 21 番 臼 澤 勉 君 22 番 福 井 せいじ 君 23 番 川 村 伸 浩 君 24 番 ハクセル美穂子 君 25 番 高 田 一 郎 君 26 番 木 村 幸 弘 君 27 番 佐々木 朋 和 君 28 番 吉 田 敬 子 君 29 番 高 橋 但 馬 君 30 番 岩 渕 誠 君 31 番 名須川 晋 君 32 番 軽 石 義 則 君 33 番 神 崎 浩 之 君 34 番 城 内 愛 彦 君 35 番 佐々木 茂 光 君 36 番 佐々木 努 君 37 番 斉 藤 信 君 38 番 中 平 均 君 39 番 工 藤 大 輔 君 40 番 郷右近 浩 君 41 番 小 西 和 子 君 42 番 高 橋 はじめ 君 43 番 五日市 王 君 44 番 関 根 敏 伸 君 45 番 佐々木 順 一 君 46 番 岩 崎 友 一 君 47 番 千 葉 伝 君 48 番 飯 澤 匡 君 欠席議員(なし) 説明のため出席した者 休憩前に同じ 職務のため議場に出席した事務局職員 休憩前に同じ 午後4時37分再開 〇副議長(飯澤匡君) 休憩前に引き続き会議を開きます。 〇副議長(飯澤匡君) 本日の会議時間は、議事の都合によりあらかじめ延長いたします。 〇副議長(飯澤匡君) 日程第1、一般質問を継続いたします。高橋こうすけ君。 〔10番高橋こうすけ君登壇〕(拍手) |
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