令和5年12月定例会 第3回岩手県議会定例会会議録

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〇6番(村上秀紀君) 自由民主党の村上秀紀でございます。このたび、初めての一般質問の機会を与えてくださいました先輩、同僚議員の皆様に心より感謝を申し上げます。
 私は、2014年にこの世界に入りました。これまで地域の将来を憂う多くの仲間とともに学び、経験し、訴えてきたことに基づき、通告に従い順次質問いたします。これまでの皆様の御質問と重複する部分もございますが、知事を初め当局の皆様には、前向きな御答弁をお願いいたします。
 初めに、いわて県民計画(2019〜2028)について伺います。
 私は、地域社会の健全な発展を考え、人口減少に伴う影響に焦点を当て、現行のいわて県民計画(2019〜2028)の問題点を指摘し、見直しの必要性について質問いたします。
 まず、現行の県民計画では、人口減少そのものを問題視している傾向が見受けられます。しかし、私の視点では、人口減少が事実である以上、その影響に対処するための具体的手法が必要であり、それが十分に反映されていないと考えています。具体的な問題点を以下に示します。
 1点目は、経済的視点の不足です。現行の計画では人口減少の対策として行われている事業が多い状況ですが、それらの事業が地域経済にどれだけの利益をもたらしているかが不透明です。経済的な側面が不明確なままでは、財政の健全性の確保が難しくなります。
 2点目は、成果指標の不明瞭さです。県民計画においては、成果指標として事業の件数や人数が多く上げられていますが、これらの数値だけでは、事業が地域経済にどれだけのインパクトをもたらしているかが把握しにくいと考えます。
 3点目は、財政面の見落としです。人口減少により税収が減少する可能性が高まる中、現行の計画では、それに対する具体的な対策や財政の厳しさへの対処が不十分です。
 このような問題点から、現行の県民計画は、人口減少そのものを問題視し過ぎ、その影響に対処するための具体的な手法や財政面での戦略が欠けていると考えます。地域社会の発展を維持するためには、経済的な効果を重視し、具体的な財政対策を講じる必要があります。
 こうした点から、地域の発展と住民の福祉を向上させるため、計画の見直しを行い、経済的な側面や財政の健全性を重視した施策を導入することを求めますが、知事の考えを伺います。
 次に、子育て環境の充実について。
 一つ目に、未婚率の改善についてお尋ねします。
 国における1950年代後半から1970年代前半にかけての合計特殊出生率に相当する数値の減少は、およそ9割が初婚行動の変化で説明できるとされています。雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律で男女がともに働く社会への変化、バブル崩壊後―就職氷河期の非正規雇用の積極的導入、社会保険料の増大、そのような中でも子育ては家庭で行わなければならない世の中では、結婚したくてもできない人が増加することも当然と考えます。
 現在、本県では、いわての子 みんなでつくる 大きなゆりかごのキャッチフレーズのもと、結婚や出産は個人の決定に基づくものであることを基本としつつ、地域社会全体で、子育てする方々や子供を温かく見守る環境づくりに取り組む機運を醸成するため、いわてで生み育てる県民運動を推進しておりますが、未婚率の改善に対する取り組みには物足りなさを感じます。
 岩手県の令和4年の合計特殊出生率は1.21と過去最低となっており、いわて県民計画(2019〜2028)実施状況報告書からも、いきいき岩手結婚サポートセンター会員における成婚者数は、令和4年度の目標値440人に対して、実績が163人にとどまるなど、成果が上がっていないことは明らかです。
 今後、未婚率の改善に対しどのように取り組んでいくのか、具体的な方策を伺います。
 二つ目に、大胆な教育の無償化についてお尋ねします。
 地域社会全体で温かく見守られるだけでは、出生率の大幅な改善にどれだけの効果があるのか不安を覚えます。少子化の根本は経済的理由であり、その最も大きなものは教育費です。そもそも親の財産で子供の教育選択に差がつくのは、不公平で不健全ではないでしょうか。
 そこで、大胆な教育の無償化を行うことにより、出生率の向上に大きなインパクトを与える必要があると考えますが、知事の考えを伺います。
 また、子供の教育費は基本的に無償である社会が当たり前の世の中をつくることが、今の日本に必要なことではないでしょうか。あわせて伺います。
 三つ目に、学校給食費の無償化についてお尋ねします。
 教育の無償化の中でも要望が多い学校給食費の無償化ですが、県内では10の市町村が全額、19の市町が何らかの形で一部を補助しており、全体の88%が、給食費の補助については、優先度の高いものとして実施しております。
 これまで県では、学校給食費の無償化は国で行うものと答弁しており、国でも現在、検討が進められておりますが、これほどに重要で優先度の高いものであるならば、国に先駆けて県独自で行うべきと考えますが、知事に見解を伺います。
 次に、多様化する社会環境への対応について。
 結婚や子育て、性的指向など、個々の人生選択を尊重し、柔軟に受け入れる社会を築くことが求められます。このためには、法制度の見直しや雇用、医療、福祉など、生活のあらゆる面で多様性を受け入れられるための施策が必要です。私たちの地域でも、それぞれが自分らしい人生を選びやすい環境を整えることが求められます。
 未来の展望として、多様性を受け入れた社会が、より豊かで活気に満ちあふれたものになり、異なるバックグラウンドやライフスタイルを持つ人々が、ともに協力し、尊重し合う社会が形成されれば、よりよい未来が開かれると考えます。私たちの役割は、そのための土台を築き、誰もが幸福に暮らせる社会をつくり上げることだと考えます。
 そこで、一つ目に、フリースクールについてお尋ねします。
 子供の多様な個性を尊重し、それぞれに寄り添った居場所や学びの場として、県内では各地でフリースクールが設置されていますが、全国では、学校法人が運営し、上級学校への進学も見据え、適切な学習計画や内容に基づき各教科の指導を行っているところもあります。
 本県として、県全体のフリースクールの利用状況やニーズ等を踏まえ、子供たち一人一人に寄り添った取り組みを一層進めるべきと考えますが、県の考えを伺います。
 二つ目に、星北高等学園についてお尋ねします。
 高等専修学校の星北高等学園についてですが、教育の機会均等や教育環境の充実の観点から、県の教育予算の見直しが必要ではないでしょうか。
 星北高等学園が一般の高等学校と同等の卒業資格を得られること、年々生徒数が増加しており、ニーズが拡大していることなどを鑑み、子供たちの学びのセーフティネットを構築するためにも、令和5年に増して予算の増額を行うべきと考えますが、県の考えを伺います。
 次に、農業農村振興とエネルギーについて伺います。
 現代社会において、まちづくりの中心は食料とエネルギーの自給率の向上にあります。カルビー株式会社の社長であった故松尾雅彦氏が提唱し、昨日の知事答弁にも登場した藻谷浩介氏も参画する農村地域での循環型自給経済圏、いわゆるスマート・テロワールの推進は、地域内経済循環率の向上に重要な意味を持つと考えます。
 この考え方に基づけば、自給率向上により、地域内での経済の安定が確保され、住民は安心して生活でき、世界情勢の影響を受けにくく、物価高騰や為替の不安定性から守られる安定した経済基盤を築き、地域社会の発展や雇用の増加、事業の拡大に寄与します。
 また、循環型自給経済圏は、環境への配慮を含み、地域の自然や景観を守るとともに住民にとって魅力的な生活環境となり、定住を促進します。美しい自然と新鮮な農畜産物は、住民のまちへの愛着を深め、地域内の経済循環を促進します。
 また、地域ブランドとして知られる高品質な農畜産物は、観光や交流を引き寄せ、地域外へのよい影響をもたらし、地域内経済循環率の向上と地域全体の発展につながります。総じて、農村の循環型自給経済圏の推進は、地域経済のみならず、住民の生活の安定と地域の魅力の向上にも寄与し、未来の地域社会の基盤を築く鍵になると考えます。
 そこで、初めに、エネルギー自給率の向上についてお尋ねします。
 再生可能エネルギーの電力自給率の向上については、県でも目標を設定し取り組みを進めていますが、現段階では、初期の設備投資が海外に依存しやすい状況にあるとともに、新しいエネルギー技術の導入には高額な資金が必要であり、再生可能エネルギーを推進しても、お金が域内にとどまらず地域外に出ていくことになり、また、自治体の負担にもつながる可能性があります。
 こうした初期投資の海外への依存は、当該地元地域の持続可能性に影響を与える懸念があることから、設備投資の段階で少しでも地域内での循環を図ることが必要と考えますが、このように懸念される点について、どのように克服して再生可能エネルギーの自給率向上を推進していくのか、考えを伺います。
 次に、農業の多面的な機能と可能性に関して伺います。
 一つ目に、農工連携と耕畜連携についてお尋ねします。
 食料自給率、飼料自給率の向上については、農工連携及び耕畜連携の推進が必要です。
   〔議長退席、副議長着席〕
 農工連携においては、農業への最新技術の導入や地域の加工工場等との連携が食料自給率向上に貢献し、効率的な生産で供給拡大、地域経済の活性化も期待できます。一方、教育、研究の強化、地産地消に向けた取り組みが必要となります。
 耕畜連携においては、資源の最適な活用や経済的な効率向上、持続可能性の向上、技術の統合を通じて農畜産業の発展に寄与します。しかし、感染症リスクや環境影響など潜在的な不安も存在します。
 農村地域の循環型自給経済圏推進の観点から、食料自給率及び飼料自給率の向上に向け、農工連携と耕畜連携を進めるための課題をどのように捉え、今後どのように取り組むのか伺います。
 二つ目に、工商連携についてお尋ねします。
 地域外貨獲得のためには、工商連携による海外への輸出の拡大の取り組みが必要です。特に本県の日本酒は、近年、取引額が増加しており今後も大きく期待できる地場産品の一つと考えます。地元の蔵元は、伝統的な日本酒の製造技術を守りながらも、現代の品質管理技術を導入し、高品質で個性的な日本酒を生み出しています。
 今後は、地域連携も重要であり、日本酒を中心とした観光プログラムが展開され、地域外貨の増加に寄与することも期待できます。これにより、地域の日本酒は外貨獲得の新たな源泉になるとともに、地域の伝統や文化を国際的に発信することにもつながります。
 そこで、本県における日本酒の輸出状況、今後の見通しをどのように捉えているか、また、さらなる輸出拡大に向けて今後どのように取り組むのか伺います。
 三つ目に、農福連携についてお尋ねします。
 農業者と連携し、障がい者の農業分野での活躍を通じ社会参画の実現を目指す農福連携に取り組んでいる障がい者就労支援施設は、令和4年度末時点で県内には112カ所あります。農業と福祉の連携は、さまざまな面で効果が期待される重要なテーマと考えます。
 まず、農業と福祉が結びつくことで、新たな雇用が生まれ、福祉事業従事者が農業に携わることで、社会的、経済的なインクルージョンが進むと考えます。また、障がい者にとっても、工賃の向上や生きがい、自信につながり、自立と社会への貢献が期待されます。地域社会も活性化し、農産物と福祉サービスの結びつきが地域経済を促進し、持続可能な発展をもたらします。さらに、自然環境での農業活動は、障がい者の心身の健康向上も期待されます。
 一方で課題もあります。農業関係者においては、障がい者就労への一層の理解や環境整備が必要であり、障がい者就労支援施設においては、農業への一層の意識啓発、専門知識の習得が必要です。また、生産物の付加価値や認知度の向上等、売り上げ拡大に向けた支援が重要となっています。
 先日、県内では初となる上場企業のグループと障がい者就労支援施設が連携した取り組みが報道されておりましたが、収益性の高い作物により売り上げ拡大を図ることができれば、さらなる工賃の向上が期待できます。
 現在の就労継続支援B型事業所の平均工賃は月当たり2万円程度であり、徐々に向上してはいるものの、就労者の自立にはほど遠いのが現実です。
 そこで、今後の売り上げ拡大及び工賃向上に向けた支援の取り組みについて伺います。
 四つ目に、農医連携についてお尋ねします。
 農業と医療の連携、農医連携は、農作業や自然との積極的な関与を通じて、心と体の健康を促進する取り組みです。参加者が自然と触れ合うことでストレス軽減やリラックス効果が生まれ、農作業を通した活動は、社会的結びつきを促進するとされています。また、運動不足の軽減や身体機能の向上が期待され、季節の変化に合わせた活動は、心のリズムを整え、季節感に対応する力を養うとされています。
 総合的に考えると、農医連携は、自然との共生を通じて心身の健康を向上させ、健康なライフスタイルを築く一助となります。最近では、特に、定年退職後の男性たちの居場所づくりや、その男性たちのメンタルヘルス悪化を抑制するという研究結果が報告されており、そのことから、耕作放棄地を農業体験農園として開放し、医師や看護師が農医連携に取り組む事例も見られます。
 そこで、農業の可能性を広げる取り組みとして、県では、県内に点在する耕作放棄地を活用し、この農医連携の取り組みを推進していく考えはあるか伺います。
 次に、農業を取り巻く大きな、そして喫緊の課題であります鳥獣被害対策について、四つお尋ねいたします。
 一つ目に、緊急要望に係る今後の見通しについてお尋ねします。
 先日、知事は、東北6県と北海道、新潟県による北海道東北地方知事会の会長として、環境省に対し、被害が広がっている熊に関して、イノシシやニホンジカと同様の指定管理鳥獣とするよう緊急要望を行ったと承知しています。
 要望を受けた国では、迅速に対応するとの意向を示したとの報道がありましたが、いつごろ指定される見込みなのか、指定までのスケジュール等を含め今後の見通しについて伺います。
 二つ目に、熊の個体数の推計方法についてお尋ねします。
 本県では現在、ヘアトラップ調査法により、およそ3,700頭と推定し、捕獲上限を2024年度には796頭に設定しておりますが、隣の秋田県では、カメラトラップ調査法により、従来の4倍の中間値4,400頭という推計値が得られています。
 本県がカメラトラップ調査法を適用した場合、推計値は現在の4倍の1万4,800頭となり、捕獲上限は個体数の15%に当たる2,220頭で、2024年度の約3倍となります。
 現在、秋田県と比べて推定値が少ないことは、熊による人的被害の件数や県の地形などから本県の実態に合っていないのではないかと考えますが、見解を伺います。
 三つ目に、熊被害対策の強化についてお尋ねします。
 昨今、熊による被害は深刻化しており、農業被害のみならず、人的被害も珍しくなくなりました。これに対し、県は今年度、県全域にツキノワグマの出没に関する警報を7年ぶりに発令したほか、先ごろ、知事も出席して県外の専門家を招いた緊急対策会議を開催しております。
 著しく増加する熊被害に対しては、農業被害の防止という観点にとどまることなく、市町村とも連携しながら、市街地への出没の抑制、さらに、これまで以上の捕獲などに取り組んでいく必要があるのではないかと考えるところですが、狩猟を担う方々への支援も含め、今まさに緊急的な対応が必要ではないでしょうか。緊急対策会議に参加された知事自身のお考えを伺います。
 四つ目に、いわての森林づくり県民税を活用した対策についてお尋ねします。
 熊が人里に出没する要因の一つに、里山の荒廃による熊と人の生活空間の接近も指摘されています。熊対策を長期的に見た場合、熊との結界となる新たな里山をつくることが有効ではないでしょうか。
 かつて里山には、まきを切り出し燃料にする、草を刈り家畜の餌にするなど、経済的価値があったことからおのずと整備されてきましたが、現在はほかにとってかわったことで、価値を見出すことができず、地域の余力も低下し、里山を守ることが困難となっています。しかし、地域によっては、里山に新たな価値を見出し、いずれは経済的価値に発展することを願いながら活動している例もあります。
 そこで、本県の各地でも里山復活に向けて整備する財源として、いわての森林づくり県民税を活用し、熊被害への対策の取り組みを強く推進していくことで、熊と人との共存も図られると考えますが、見解を伺います。
 次に進みます。地域医療について伺います。
 一つ目に、医師の確保についてお尋ねします。
 医療法等の一部改正による長時間労働の医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置の整備等、いわゆる医師の働き方改革については、新しいシフト制度や休息時間の確保により、医師の負担軽減や高品質な医療の提供が期待されます。さらに、持続可能かつ質の高い医療環境を築き、医師の労働環境の向上も期待できます。しかし、その一方で、人員不足や運用コストの増加が懸念されます。
 懸念される人員不足に関して、医師養成の奨学金制度の充実を図ることが対策の一つとして挙げられますが、現状と今後の方針について伺います。
 二つ目に、岩手県保健医療計画についてお尋ねします。
 令和6年度から令和11年度までの岩手県保健医療計画の素案には、二次保健医療圏の考え方について、病院までの搬送距離及び時間の考え方から、治療開始までの距離及び時間に着目しており、今後の見直し対象に釜石保健医療圏域、気仙保健医療圏域など、見直し期間は本計画期間内と示されています。
 これらを初め、さまざまな環境の変化が訪れる本県の医療体制における、特に今後の二次保健医療圏の方向性について、考えを伺います。
 三つ目に、コミュニティーホスピタルについてお尋ねします。
 地域社会における65歳以上の高齢者人口の増加が進んでおり、これに伴って慢性疾患や認知症高齢者が増加していくと考えられ、それらに対する対応が必要となっています。このため、地域住民の健康ニーズに合わせた総合的かつ専門的な医療を提供し、また、在宅医療や介護サービスとの連携を強化し、地域全体で包括的な支援体制を築くことが求められています。
 一方、現代社会では、ストレスや生活習慣病の増加も課題となっており、予防医学の観点から、健康診断や健康教育を通じて住民の健康づくりの取り組みを進めていかなければならないと考えます。地域の医療インフラとして今本当に必要とされるのは、病気を診る医療ではなく、患者の人生を見て、治し、支える医療への大胆な転換です。
 全国では、総合診療を軸に、超急性期以外の在宅医療を含む全ての医療、リハビリ、食支援、予防医療などのケアをワンストップで提供し、病院を出て地域に入り込むことで地域の健康増進にも積極的にかかわっていく、コミュニティーホスピタルという新しい病院の形が生まれています。
 そこで、今後の本県の医療体制を考える上で、コミュニティーホスピタルのモデルケースとなるような取り組みを県が創出し、全県に広げていくことは、県民の命と暮らしを支える大きな取り組みの一つとなると考えますが、見解を伺います。
 次に、関係人口についてお尋ねいたします。
 将来的な地方への移住、定住の裾野の拡大が期待され、特定の地域に継続的に多様な形でかかわる関係人口については、現在、ファンベースの代表としてふるさと納税の取り組みがありますが、これは資金調達手段として注目を浴びつつも、寄附者と地域の継続的な交流が不足し、お礼の品の受け取りで関与が終わりがちです。
 同様に、一定期間地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発、販売やPRなどを行い、その後の地域への定住、定着を図る地域おこし協力隊は、総務省の調査では、本県の任期終了後の県内定住率は約7割となっていますが、任期終了後の継続的なかかわりが難しい場面も見受けられます。
 これらの課題に対応するには、資金提供や任期中の取り組みだけではなく、継続的な関係の構築が必要です。具体的には、消費力や労働力に結びつけ、地域と寄附者、協力者が、お互いに利益を享受できるシステムを検討すべきです。
 そこで、ふるさと納税及び地域おこし協力隊について、具体的に消費力と労働力の確保という観点から、本県にとって本当に意味のある関係性をつくるための対策が必要と考えますが、県の考えを伺います。
 最後に、岩手県公共施設等総合管理計画についてお尋ねします。
 令和4年7月に改訂された岩手県公共施設等総合管理計画については、公共施設等の維持、更新等に係る安定的な財源を確保するため、令和4年10月に公共施設等適正管理推進基金が創設されたところです。
 これからの人口減少下において、公共施設は、拡充から縮充、また、複合化、多機能化、民間との連携や移行を徹底しなければなりませんが、これらを進めたとしてもなお、同基金の積み立て規模では、今後の財政需要に対し大きく不足している状況です。
 この不足額をしっかりと把握し、計画的に増額していくためには、歳入の見込みを把握する必要があるのではないでしょうか。
 現在は、今後5カ年の中期財政見通しについて公表しておりますが、計画の実効性を高めるためにも、公共施設等の経費の見込みと同等期間の令和32年度までの歳入の見込みを示していくことにより、県民の暮らしの安全・安心に努めていくことが大切だと考えますが、知事の考えを伺います。
 以上で私の一般質問を終わります。答弁によっては再質問いたします。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 村上秀紀議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、いわて県民計画(2019〜2028)についてでありますが、いわて県民計画(2019〜2028)は、地方自治法上、住民の福祉の増進を図ることを基本とする地方公共団体としての政策の方向性を示す総合計画であり、あらゆる主体が岩手県の将来像を共有し、みずから取り組みを進めていくためのビジョンでもあります。
 その策定に当たっては、県行政に関する基本的な計画の議決に関する条例に基づき、中期財政見通し等の資料も示しながら幅広く御議論いただき、平成31年2月定例会において全会一致で承認されたところです。
 また、計画の理念は、憲法が保障する幸福を追求していくことができる地域社会の実現を目指しており、経済的な側面を含めた物質的な豊かさに加え、心の豊かさ、地域や人のつながりなどにも着目することとしています。
 このような理念を踏まえ、幸福の実感に関連する10の政策分野のもと、各政策分野に、いわて幸福関連指標を定め政策を展開しており、例えば、仕事・収入分野においては、地域経済の活性化を目指した商工業や農林水産業などの産業振興の方向性を示し、県民所得水準や従業者1人当たりの付加価値額、農業総産出額など、経済効果を示す指標を設定しております。
 あわせて、行政経営の基本姿勢には、政策の着実な推進を支える持続可能な財政構造の構築を掲げ、第2期行政経営プランには、四つの財政目標を示しております。これら10の政策分野に掲げる政策は、昨年度策定した第2期政策推進プランにより着実に進めることとしており、喫緊の課題である人口減少対策に最優先で取り組みながら、地域の発展と県民福祉の増進につなげてまいります。
 次に、教育の無償化に関する考え方についてでありますが、子供の未来が生まれ育った環境によって左右されることはあってはならず、教育は、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきものと考えます。
 県といたしましては、経済的な理由により進学等を断念することなく、全ての子供たちが安心して学ぶことのできる教育機会が確保されるよう、国に対しても、経済的支援の充実、強化を強く働きかけてまいります。
 次に、学校給食費の無償化についてでありますが、学校給食については、学校給食法に基づき、義務教育諸学校の設置者である市町村等において、学校給食の意義や児童生徒の実態及び地域の実情等を踏まえ、その実施方式等を総合的に判断しているものであります。
 本県においては、今年度、10市町村が学校給食費の全額無償化、19市町が一部補助を行っており、それらのうち14市町が、国の物価高騰対策に係る臨時交付金を活用しているところです。
 学校給食費の無償化や保護者負担の軽減は、長期的な視点で切れ目なく行うことが必要であり、臨時交付金のような一時的な措置ではなく、国全体として学校給食費の負担のあり方を抜本的に整理した上で、国の責任で財源を含め具体的な施策を示すよう、全国知事会として国に申し入れてきたところです。
 国においては、こども未来戦略方針に従い、現在、学校給食の実態調査を行っているところであり、自治体など学校設置者による実施方法の違いや公平性、負担のあり方などを整理し、検討が進められていくものと承知しております。
 学校給食費の無償化については、本来、自治体ごとの財政力に応じて格差が生じることのないよう同等の水準で行われるべきものであることから、引き続き、国に対し、全国知事会等とも連携し、強く働きかけてまいります。
 熊被害対策の強化についてでありますが、熊の冬眠がおくれる可能性も指摘される中、先月27日に開催したツキノワグマ緊急対策会議では、科学的な知見に基づく個体数管理と被害防止対策について、関係者で改めて情報共有を図るとともに、必要な情報を県民に発信することができたと考えております。
 これまで本県では、熊との適正な共存関係を探る中でも捕獲許可の弾力的な運用を行ってきたところであり、先月20日時点での県内の捕獲頭数は820頭に達しています。
 また、先月13日には、北海道東北地方知事会の会長として、熊の指定管理鳥獣への追加を初めとする緊急要望を行い、環境大臣や農林水産副大臣にも強い危機感を共有していただきました。
 その上で、自然と人間の共存を図り中山間地域の未来をつくっていくためには、熊を人の生活圏に寄せつけないゾーニングの考え方を普及させるとともに、冬眠明けに行われる熊の春季捕獲を県として支援することが必要と考えます。
 そのため、今定例会に追加提案する補正予算案に必要な経費を計上することとしており、市町村や猟友会などと連携しながら、自然と人間が共存できる地域社会を築いてまいります。
 次に、岩手県公共施設等総合管理計画に関してでありますが、昨年7月に改訂した計画では、公共施設の更新や長寿命化等に必要な経費を試算していますが、今後30年間で1,500億円程度の追加の経費が見込まれており、必要となる財源を安定的に確保していくため、公共施設等適正管理推進基金を創設し、120億円を積み立てたところです。
 国では、骨太の方針等で3年程度の地方一般財源総額の見込みを明らかにしているにすぎず、長期的な歳入見込みの精度を確保することが難しい状況にありますが、本県においては、現行の地方財政制度等を踏まえた一定の前提条件のもとで、5年間の中期財政見通しを策定し、公表しているところです。
 今回の中期財政見通しでは、県の実質的な一般財源が縮小傾向にある中、今後、社会保障関係費や大規模施設の更新経費等の増加が見込まれ、財政運営は一層厳しい状況となりますが、県有資産の有効活用や使用料の見直しなどの取り組みも一層強化しながら、県民に必要な行政サービスが提供できるよう、公共施設等の適正管理を推進してまいります。
 その他のお尋ねにつきましては、企画理事及び関係部長から答弁させますので、御了承願います。
   〔企画理事兼保健福祉部長野原勝君登壇〕
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) まず、未婚率の改善についてでありますが、国の調査によると、独身の若者の約8割が、いずれ結婚する意向を持ちながら、必要をまだ感じないや、仕事や学業に打ち込みたいなど、結婚に対し積極的な動機がなく独身でいる割合が多くなっております。
 一方、結婚後の夫婦が理想の数の子供を持たない理由として、高年齢での出産や不妊を挙げる割合がふえてきていることから、若い世代に対して、妊娠や不妊に関する正しい知識を早い段階から啓発し、結婚や出産など将来のライフデザイン構築を支援することも重要であると考えております。
 こうしたことから、今年度は、新たに高校生へのライフデザインの形成支援に取り組んでいるほか、いきいき岩手結婚サポートセンター―i−サポの登録料無料キャンペーンを3カ月間実施し、期間中の新規入会者数が274人と通常の3倍以上となり、会員数が大幅に増加するなどの成果が得られたところであります。
 今後の取り組みにつきましては、岩手県人口問題対策本部会議において、有配偶率向上のため、結婚支援や若者のライフプラン形成支援などの強化を掲げたところであり、特に、結婚支援の強化については、i−サポにおけるマッチング精度の向上、交際から成婚に至るまでのフォローアップの充実など、成婚者の増加につながる方策について、施策の一層の充実に向け検討を進めてまいります。
 次に、農福連携についてでありますが、本県の240カ所の就労継続支援事業所のうち、令和4年度末現在、約半数の112カ所が農福連携に取り組んでおり、全国平均を上回って推移しております。
 県では、障がい者工賃の向上を図るため、いわて障がい者就労支援センターにコーディネーターを3名配置し、うち1名を農福連携担当として、農業者とのマッチングや生産物の販路拡大などを支援しております。
 村上秀紀議員から御紹介がございました製薬企業との連携による薬用作物栽培は、同センターが昨年度開催した農福連携セミナーを契機として実現したものであり、本県における工賃向上に寄与するものと期待されるところであります。
 こうした取り組みの拡大支援に加え、今後のさらなる工賃向上に向けて、岩手県障がい者工賃向上計画に基づき、生産物の高付加価値化、商品開発などによる売り上げ拡大について、コーディネーターの活動を通じて支援してまいります。
 次に、医師確保についてでありますが、県では、奨学金による医師養成に取り組んでおり、地域枠を開始した平成20年度から運用を順次拡大し、現在の貸付枠は55名となっており、これまでに741名に貸し付けを行ったところです。
 令和5年度の県内への養成医師の配置は151名、そのうち県北沿岸部に61名の配置となっており、平成28年度の配置開始から県内各地域で勤務する医師は着実に増加しております。
 現在策定を進めている次期岩手県医師確保計画においては、引き続き、奨学金による医師養成や即戦力医師の招聘に取り組むとともに、症例数や手術数の確保により、専門教育機能が充実した研修体制の整備を行い、医師の確保や定着につなげることとしております。
 次に、今後の二次保健医療圏の方向性についてでありますが、今般お示ししました次期岩手県保健医療計画の素案において、二次保健医療圏については、治療開始までの時間が重要であるという考えから、交通外傷などの救急医療を迅速かつ円滑に提供するとともに、一般外来や在宅医療、糖尿病のほか、がんにおける検診や緩和ケアなどの地域に密着した身近な医療を提供する範囲として設定の考え方を見直すこととしております。
 見直し後の設定の考え方を踏まえまして、次期岩手県保健医療計画の開始時には、現行の9圏域とした上で、計画期間内において、新型コロナウイルス感染症流行後の最新の受療動向などのデータや圏域間の医療連携体制を踏まえて検討することとしております。
 次に、コミュニティーホスピタルについてでありますが、本県ではこれまで、総合診療を軸とした医療、リハビリ、介護などを切れ目なく提供するため、保健医療計画や地域医療構想などに基づき、医療、福祉の関係団体や市町村などと連携し、在宅医療体制や地域包括ケアシステムの構築など、保健、医療、介護、福祉の総合的な取り組みを推進してきたところでありまして、村上秀紀議員御紹介のコミュニティーホスピタルの理念に通ずるものがあると考えております。
 今般お示ししました次期岩手県保健医療計画の素案におきましては、今後の高齢者人口の増加による医療、介護需要の変化を踏まえ、医療機関や介護事業所などの多職種間の連携を強化するため、地域の関係者間の連携を担う拠点と地域の在宅医療を積極的に担う医療機関を計画に位置づけるとともに、人材確保など、訪問看護サービスの提供体制の強化に向けて重点的に取り組むこととしております。
 今後、村上秀紀議員から御紹介いただきましたコミュニティーホスピタルの取り組みも参考にしながら、多職種間の連携を強化し、切れ目のない保健、医療、介護、福祉の一体的な取り組みを推進してまいります。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) まず、星北高等学園についてでございますが、同校は、不登校の経験を持つ生徒や発達特性のある生徒を積極的に受け入れ、一人一人の子供たちに寄り添いながら、それぞれの状況に応じた学びの機会を提供していると認識しております。
 県では、こうした私立専修学校高等課程における教育の振興を図るため、人件費や教育管理経費などの経常的経費に対し支援を行っており、令和4年度当初予算における生徒1人当たり補助単価は3万5,960円であったところ、令和5年度当初予算においては、県の一般財源を増額して、生徒1人当たりの補助単価を昨年度の倍額となる7万1,920円としたところでございます。
 その一方、県の一般財源だけでは限りがありますことから、大学入学資格が付与される私立専修学校高等課程について、高等学校に対する支援と同様の支援ができるよう、国に対して国庫補助制度の創設と十分な普通交付税の措置について要望してきたところでございます。
 引き続き、国に対し要望を行うとともに、星北高等学園との意見交換を行いながら、丁寧に対応していく考えでございます。
 次に、関係人口についてでございますが、ふるさと納税については、寄附件数、寄附額とも年々規模が拡大する中、多くの方と寄附によるつながりが生まれている現状にあり、県といたしましても、これを契機に、寄附者とのかかわりを深めていく必要があると認識しております。
 このため、旅行、体験型の返礼品を提供しているほか、寄附をいただいた方に対し、個別に御礼と寄附の使途についてお知らせをするなど、寄附者の本県への興味、関心を継続的に喚起する取り組みを進めております。
 また、地域おこし協力隊は、農林水産業や観光、移住、交流促進など、地域の実情に応じたさまざまな活動に従事しており、村上秀紀議員御紹介のとおり、総務省の調査によると、令和3年度までに任期が終了した隊員248名のうち、約7割の170名が県内に定住しております。
 県では、協力隊の任期終了後の県内定住を促進するために、起業、就業に向けたセミナーや地域の受け入れ体制を整えるための市町村職員向け研修会等を開催しています。
 また、協力隊OB、OG等を核とした協力隊ネットワークにおいても、隊員間のつながりや交流の構築などに取り組んでおります。
 ふるさと納税や地域おこし協力隊などの取り組みは、地域力の維持、強化に加え、関係人口や定住人口の拡大に資するものであり、引き続き、これらの取り組みを含めた施策を推進し、つながりの強化を図ってまいります。
   〔環境生活部長福田直君登壇〕
〇環境生活部長(福田直君) まず、エネルギー自給率についてでありますが、脱炭素に向けた取り組みを進めるに当たっては、温室効果ガスの排出削減という環境面に加えて、地域経済の活性化という経済面での効果につなげることが重要と考えております。
 御指摘のとおり、太陽光も風力も発電設備は海外で製造されたものが主流となっておりますが、宮古市の脱炭素先行地域では、そのような課題認識のもとで、国産の風力発電設備を導入することも計画されております。
 また、環境省の試算によると、本県のエネルギー収支は毎年2,600億円余りの赤字となっている一方、再生可能エネルギーの導入ポテンシャルはエネルギー消費量の18倍以上とされており、再エネ自給率を向上させることが、本県の地域経済を活性化させる上での大きなチャンスとなっております。
 再エネ施設の立地に当たっては、地元のメリットが不可欠であり、事業者と地元市町村との間で協定を締結する事例もふえていることから、県として、協定締結の手引のようなものを作成することで、再生可能エネルギーの導入と地域経済の活性化を両立させることができないか、県市町村GX推進会議の中で検討を深めてまいります。
 次に、熊対策の緊急要望についてでありますが、先月13日に、知事が北海道東北地方知事会の会長として、熊の指定管理鳥獣への追加を初めとする緊急要望を行い、政府にも強い危機感を共有してもらったところです。
 鳥獣対策に関する交付金としては、農林水産省の鳥獣被害防止総合対策交付金と環境省の指定管理鳥獣捕獲等事業交付金の二つがあり、農林水産省の交付金は熊も対象となる一方、環境省の交付金は、集中的かつ広域的に管理を図る必要があるものとして、鹿とイノシシに限定されるため、今回の緊急要望が行われたものです。
 知事からの緊急要望に対して、環境大臣からは、なるべく早く検討するように強く指示しているとのコメントがなされたところであり、その後、本県選出国会議員の質問に対して、年度内を目途に判断する旨の大臣答弁もあったようでありますので、今後の議論の行方を注視してまいります。
 次に、個体数の調査手法についてでありますが、熊の個体数を推定するための主な調査手法としては、カメラトラップ法とヘアトラップ法があり、いずれもふんなどの痕跡や目撃情報から推定する場合より精度が高いとされますが、環境省のガイドラインでは、両者を比較した場合、ヘアトラップ法のほうが識別精度が高いとされております。
 秋田県の場合、従来のふんなどの痕跡や目撃情報から推定する調査手法をカメラトラップ法に切りかえた結果、精度が向上して推定個体数が大幅に増加したものと承知しております。
 一方、本県では、平成21年度以降、より識別精度にすぐれたヘアトラップ法を採用しており、先日専門家を招いて開催した緊急対策会議でも、主な調査手法を比較した上で、この点を改めて確認しております。
 ツキノワグマの推定個体数は、捕獲上限数を設定する上でも重要な指標となることから、引き続き、専門家の御意見を伺いながら適正な個体数の推定に努めてまいります。
   〔農林水産部長藤代克彦君登壇〕
〇農林水産部長(藤代克彦君) まず、農工連携と耕畜連携についてでありますが、農村地域の活性化に向けては、地域の立地条件を生かした農業の生産振興とともに、地域の特色ある農畜産物の加工、販売による高付加価値化などにより、地域経済の好循環を創出していくことが重要と考えています。
 県内では、農業者と加工業者が連携したバレイショ、タマネギ等の生産拡大や地域で生産されたブドウを活用したワインの製造、販売などの高付加価値化の取り組みが行われています。
 また、肥料や飼料が高騰する中、耕種農家と畜産農家が連携した化学肥料を低減する堆肥の活用や、水田を活用した子実用トウモロコシ等の生産、供給などの取り組みが行われています。
 こうした取り組みに当たっては、農業者と加工業者、耕種農家と畜産農家とのマッチングが課題であることから、県では、加工業者等の実需者が求める作物の産地への作付誘導や農業者と加工業者との商談会の開催、畜産農家が必要とする飼料作物の需要量や耕種農家の作付意向に基づくマッチング支援などに取り組んでいます。
 今後とも、こうした農工連携、耕畜連携など、農業生産の拡大や高付加価値化の取り組み等を推進し、農村地域が活性化するよう取り組んでまいります。
 次に、農業と医療との連携についてでありますが、農業は、農産物の生産による食料の供給はもとより、土や作物との触れ合いを通じて、精神的、肉体的なリハビリテーションや健康増進にも有効とされています。
 また、国では、誰もが農業の持つ多面的機能を享受でき、障がい者、高齢者など、利用者の健康増進や生きがいづくり、社会参画の促進、農地利用の維持などを目的に利用者が交流、参画できる農園をユニバーサル農園と位置づけ、その整備と利用を推進しています。
 県内では、紫波町において、地域の農地を活用した農作業とともに、収穫した新鮮な野菜を利用する食事を通じた介護予防や健康増進につなげる活動のほか、一関市においては、医師が中心となって、農作業を通じた地域住民との交流や健康増進につなげる活動が行われています。
 県としては、農業と医療との連携に関心を示す地域等に対し、県内の取り組み事例や活用可能な国事業の情報を提供するなど、農医連携の取り組みを支援してまいります。
 次に、いわての森林づくり県民税の活用についてでありますが、県では、いわての森林づくり県民税等を活用した森林・山村多面的機能発揮対策事業により、地域住民や団体等が主体的に取り組む里山林などの森林整備活動等を支援しています。
 また、ツキノワグマによる人や農作物等への被害を防止していくためには、人と熊との緩衝帯として里山を整備していくことが重要であることから、この県民税を活用した里山林などの森林整備は、里山の保全とともに、ツキノワグマを集落に寄せつけない環境づくりにも有効と考えています。
 県内では、この県民税による事業を開始した平成25年度から昨年度までに、延べ約9,500ヘクタールの里山林で除間伐や刈り払いなどが行われ、今年度においても約80団体が活動しており、県としては、引き続き、いわての森林づくり県民税を活用し、ツキノワグマの被害防止にもつながる里山林などの森林環境の整備を支援してまいります。
   〔商工労働観光部長岩渕伸也君登壇〕
〇商工労働観光部長(岩渕伸也君) 日本酒の輸出についてでありますが、岩手県産日本酒の輸出額は、2022年が約4億9、000万円となっており、県内蔵元の約8割が輸出に取り組んでおります。
 これを10年前の2012年と比較すると、輸出額は約5倍、輸出に取り組む蔵元数は約4倍にそれぞれ拡大しており、特に中国、香港や北米地域向けの輸出が多い状況となっております。
 また、ことし9月に県産日本酒の地理的表示、いわゆるGI指定や欧米を含めた海外における岩手県の知名度の向上、さらには、円安基調などを背景に輸出を拡大していく絶好のタイミングを迎えていると受けとめております。
 このため、ジェトロや岩手県酒造組合を初めとする関係団体と連携し、海外事務所やこれまで培ってきた在外公館、現地日本酒バイヤーなどとのネットワークを生かしながら、県産日本酒の輸出拡大を進めていきたいと考えております。
   〔教育長佐藤一男君登壇〕
〇教育長(佐藤一男君) フリースクールとの連携についてでありますが、不登校児童生徒の多様な学びの場や居場所の確保、フリースクール等民間団体等との連携を図るため、令和3年度から岩手県不登校児童生徒支援連絡会議を設置し、不登校児童生徒の支援に係る課題等についての意見交換や情報共有を行ってきているところです。
 この連携会議を通じて把握した本県のフリースクール等民間団体は、令和5年8月現在において10団体、利用している不登校児童生徒は合計で198名となっており、その運営形態や規模、活動内容はさまざまです。
 これらのフリースクールは、子供たちの居場所としての役割を担うほか、不登校児童生徒だけではなく、放課後学習支援も行う団体や、児童生徒の学習や取り組み状況について市町村教育委員会との情報共有や学校との連携を図るなど、児童生徒の状況等に合わせた取り組みを行う団体もあると承知しております。
 県教育委員会としましては、児童生徒の学びの場や居場所の確保のため、フリースクール等民間団体等との連携を強化しながら、児童生徒の一層の支援に取り組んでまいります。
〇6番(村上秀紀君) ただいま答弁をいただきましたが、幾つか再質問をしてまいります。
 まず、一つ目のいわて県民計画(2019〜2028)についてのところで知事に一つ伺いたいのですが、先日、決算特別委員会でも、実はほかの方にも質問したところです。端的に質問いたしますけれども、私が考えるのは、人口減少そのものは事実であって問題ではないと。これは、全国で先進的な地域づくりを行う方々は、最初にこれを共有して始まるものであります。自治体の規模にかかわる地域づくりを考える上で根幹をなすものでございます。
 ここで認識を誤れば、その後の方向性に大きな影響を及ぼすものでございますので、改めて知事に伺います。人口減少は事実でしょうか、問題でしょうか。
 次に、藤代農林水産部長に伺いますが、いわての森林づくり県民税を活用した対策と周知については、今御答弁がありました森林・山村多面的機能発揮対策事業というメニューを活用しているということでございます。先ほど、具体的にどのように活用しているかも、件数などは伺いました。ただし、熊対策といいますものは緊急かつ重要なことですから、このいわての森林づくり県民税を活用して、専用の単独メニューとして設けて、予算を確保して、活用する側にもわかりやすく、また、広く周知していくべきと考えますけれども、これについての見解を伺います。
 続きまして、野原企画理事兼保健福祉部長に伺いますが、先ほどの医師確保の奨学金制度の地域枠の関係です。この制度の適用となった学生の方々の離脱状況と対応について伺いたいのですけれども、令和元年度に厚生労働省が全国の都道府県に対して行った地域枠履行状況等調査によりますと、離脱した方が一定数生じていると。
 その理由が、多い順に、希望する進路と不一致のためとか、留年、国家試験不合格などと続いていくのですが、後段のほうに、結婚、退学、そして最後のほうに5%いる体調不良、死亡。
 若い世代で体調不良、死亡が5%もいるという部分が非常に気がかりであるところですが、まずは、本県の離脱した方々の状況を伺うとともに、やむを得ない状況によって離脱して、各種修学資金あるいは奨学金の返還を抱えた方々には、どのように対応されているかを伺いたいと思います。
 続いて、関係人口の拡大について質問いたしますが、今、国内においても、Web3を含む新たなサービスを醸成しやすい環境整備に取り組む動きが加速しております。デジタル技術を活用した地方創生、地域活性化に対する期待が高まっているところです。
 その中で、関係人口拡大の一環として、Web3の技術を活用して、国内外どこからでも地域づくりに参加できるDAOと呼ばれる分散型自立組織がございます。地域おこし協力隊のように地域に住んでいなくても、国内外どこからでも地域づくりに参加することが可能となり、多様な人材が地域が抱える課題の解決にかかわることができることは、人口減少による地域の労働力不足という問題を解決する一つの方法だと考えています。
 そこで、本県におきましてもデジタル技術を活用した関係人口の拡大に取り組むべきと考えますが、これについての見解を伺います。
 最後にもう一つ、知事に伺いたいのですけれども、最後に質問いたしました岩手県公共施設等総合管理計画についてです。たしか、歳入について見通しを公表できるのは今後5カ年というのは承知しておりますが、例えば、非公表であっても、歳入の部分を独自にしっかりと算出して、毎年どのぐらい足りないから、どのぐらい担保していかなければならないといったところを、20年、30年先もしっかりと毎年の数字を把握していかなければならないのではないかと私は考えるのです。
 この岩手県公共施設等総合管理計画に限らず、今後20年、30年の財源の確保については、私がこの答弁を一番聞かせたいのは、これからの岩手県の将来を担う子供たちです。
 先ほどの答弁、あるいはきょう、初日、2日目にも、こうした県の財源についての質問があったときに、知事に限らず、さまざまな部局からの答弁を相承して、例えば私が小学生にわかりやすく説明するとすると、今の岩手県は、これから公共施設とか生活に必要な道路とか川とか橋、下水道、そういったものを維持していくためには、これまでよりもたくさんのお金がかかっていく。ただ、県の財布の中身は5年先までしか予想がつかない。けれども、これまでもやりくりして何とかなってきているから、20年先、30年先、みんなが立派な大人になるころでもきっと大丈夫だから、私たちに任せておいてください。私は多分、皆様の御答弁を相承して、子供たちにそのように教えると思います。
 子供たちは、これを聞いて不安になるのではないかと私は感じております。それで、不安になれば岩手県から離れていく可能性だってあります。
 ですから、ぜひ知事に、私に対してだけではなくて、私のバックグラウンドにいるこれからの岩手県の将来を担う子供たちに向けて、そしてまた、子供の健やかな成長を願っている子育て世代の皆さんに向けて、いま一度誠意ある御答弁をお願いできますでしょうか。
〇知事(達増拓也君) まず、人口減少が事実か問題かということにつきましては、過去に既に起きたことについては、これはもう事実だと思います。
 そして、問題かどうかということについては、突き詰めれば、過去の子供を産む、産まない、そして、岩手県から出る、出ないということは、その人が、その人の人生として決断したことであり、それを尊重すれば、問題というより事実という受けとめ方になるかもしれません。
 一方、政策論的には、人口減少についても、まず、社会減、転出超過につきましては、最近でも経済情勢によって、毎年2,000人台の年もあれば、5,000人台のときもあり、特に1990年代から2000年代のあたりは、1990年代には1年に329人しか転出超過しなかった1995年があると思えば、2000年代の中ごろには、1年にもう7,000人ぐらい転出超過する年もありますので、やはりそこは、政策によって転出超過を減らすことは可能性がありますので、そこは政策によって減らすことを目指すべきかと考えております。
 また、出生数や出生率も、わかりやすい例でいきますと、ここ数年、新型コロナウイルス感染症の影響があって、婚姻数も出生数もそれまで以上に減っています。つまり、そういう社会的原因、経済的原因によって出生数、婚姻数が変動するということは、逆に、社会的に、経済的にいい条件をつくれば、出生数、婚姻数を上げる、あるいは下げどめることが可能ではないかということで、そういう政策をすべきではないかということがあります。
 政策によって変えることができるという意味では、それを問題として捉え、一般論的には生きにくさを生きやすさにする、そういう意味では、人口減少そのものが問題というよりは、その背景にある生きにくさが問題であって、そこに対して政策を充てていくということかと思っております。
 そういう点から見ても、今後30年は、過去も、およそ10年ごとに、東京一極集中が非常にふえる10年と地方回帰が進んで余り東京都に人が行かない10年とがかわるがわる来ておりまして、それのどちらを基準にして30年後を考えるのか、あるいは、今までのようにそれが10年ごとに変わることを前提とするかというと、2000年代と2010年代に関しては、地方回帰が起きずに、東京一極集中が20年続くという、戦後日本が経験したことがないようなことが起きているというところもあります。
 恐らく、3年を5年、5年を10年、20年、30年と積み重ねていくという発想よりも、矢巾町がやって、世界的にも知られているフューチャーデザインですね。30年後の未来人になったつもりで未来の状況を想定し、そこからさかのぼって、今、何をすべきかということを考えるやり方がいいのかもしれません。
 ここはちょっと個人的な考え方で、県として詰めて議論したり決めているわけではないですけれども、ただフューチャーデザインについては、学者の参加もあって、30年後をどう想定するかによって全然違ってきます。既に、矢巾町が水道料金を考えるに当たって実施している例もあり、そこに若い人たちが積極的に参加して好事例となっているところもありますので、そういうことを考えていけばいいのではないかと思います。
〇農林水産部長(藤代克彦君) いわての森林づくり県民税に熊対策専用の独自メニューを創設してはという御質問でございますけれども、いわての森林づくり県民税につきましては、岩手県の森林づくりに活用するということで、県民の皆様から毎年1、000円いただいているものでございまして、そのいただいた税につきましては、森林づくりという形のさまざまなメニューに活用させていただいているところでございます。
 一方、鳥獣対策としては、農林水産省の鳥獣被害防止総合対策交付金がありまして、これについては、熊の有害捕獲ですとか侵入防止対策あるいは緩衝帯の整備に活用が可能でございまして、昨年度については、6市町村でこういった緩衝帯の整備にも活用されております。
 県としては、来月にも、また農林水産省の交付金の活用について、研修会を開催して市町村に周知することとしております。いわての森林づくり県民税につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、ツキノワグマの被害防止にもつながる里山林などの整備といった形で活用していきたいと考えているところでございます。
〇企画理事兼保健福祉部長(野原勝君) 本県における医師確保の奨学金制度の地域枠等の状況についてでございます。これまで奨学金を貸与した741名のうち、令和4年度末時点で返還などを行った者は78名となっております。このうち医師免許取得後は42名で、その理由は、県外医療機関でのキャリアアップ等が27名、結婚による県外移住や家庭事情によるものが13名、体調不良による返還が2名となっております。
 また、在学中に返還した者は36名で、その理由は、医師としての方向性の変更による奨学金の返還が29名、進路変更等による退学が3名、死亡及び心身の故障による退学が4名となっております。
 貸し付けた奨学金については、条例等に基づきまして、医師免許を取得した方については勤務年数に応じて、また、在学中辞退者と進路変更の方については、貸付額を返還していただいているところです。
 なお、死亡及び心身の故障による退学者4名については、返還免除となっております。
 県といたしましては、奨学金養成医師の円滑な義務履行や履行後の県内定着につなげていくためには、在学中から継続的な働きかけが重要と考えておりまして、在学中におきましては、奨学生が制度への理解や奨学生同士の交流を深める場として医学奨学生セミナーを開催しているほか、医師免許取得後には、県立病院長経験者であります医師支援調整監によります個別の面談を実施しておりまして、義務履行とキャリアアップの両立をきめ細かく支援しているところであります。
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) デジタル技術を活用した関係人口の拡大についてでございますが、直接岩手県にお越しいただくことが難しくとも、いつでも、どこでも岩手県とかかわりたい、支援したい方の思いに応えることができる仕組みの構築は重要であり、デジタル技術の活用は、その有効な手段の一つであると認識しております。
 県内におきましても、例えば紫波町ではWeb3タウンとして、最先端のデジタル技術を積極的にまちづくりに活用していく方針を表明し、登録により町からの情報提供や特典が付与されるデジタル町民制度や、NFTによるふるさと納税返礼品の提供などを行っていると承知しております。
 引き続き、村上秀紀議員から御紹介いただきましたDAOも含め、さまざまな事例を収集いたしまして、本県とのかかわりを続けたい方々や、県内各地で関係人口拡大の取り組みを進める地域にとって何が効果的かという視点に立ちまして、本県での活用のあり方を検討いたしますとともに、市町村との情報共有を進めてまいります。
〇総務部長(千葉幸也君) 本県の中期財政見通しでございますけれども、現行の地方財政制度等を踏まえ、一定の前提条件のもとで機械的に試算した歳出改革を折り込まない自然体の姿でシミュレーションしたものでございます。
 一方で、長期的な歳入の見込みにつきまして、本県では、県税などの自主財源に乏しく、地方交付税や国庫支出金など国の財源への依存度が高い財政構造となっておりまして、地方一般財源総額や社会保障など国の動向が不透明な期間が長くなっております。
 特に、国マクロの地方一般財源総額でありますが、これは、令和6年度まで令和3年度と同水準が実質的に確保される見込みであるということで、令和6年度までしか実はわかっていないという状況でございます。
 本県におきましては、人口減少等を背景とした県税、普通交付税の減少に伴い、実質的な一般財源総額は減少するだろうと見込んでいるものであります。
 こうした不透明な期間が長くなりますほど、長期的で確実性の高い見通しを立てることは難しいと考えているものでございます。
〇6番(村上秀紀君) 先ほど最後に岩手県公共施設等総合管理計画の関係で、千葉総務部長から御答弁いただきましたが、いま一度、誠意ある御答弁をと知事にお願いしたと思ったのですが、それについては。
〇副議長(飯澤匡君) 後段でやりました。知事が答えました。フューチャーデザインについて言及しています。
〇6番(村上秀紀君) あれが答弁だったのですね。そうか。であれば。
〇副議長(飯澤匡君) 不安なら、もう一回質問してください。私の受け取りと質問者は違うかもしれません。
〇6番(村上秀紀君) はい、承知しました。では、以上で結構です。(拍手)
〇副議長(飯澤匡君) 以上をもって村上秀紀君の一般質問を終わります。
   
〇副議長(飯澤匡君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時41分 休 憩
   
出席議員(48名)
1  番 田 中 辰 也 君
2  番 畠 山   茂 君
3  番 大久保 隆 規 君
4  番 千 葉 秀 幸 君
5  番 菅 原 亮 太 君
6  番 村 上 秀 紀 君
7  番 松 本 雄 士 君
8  番 鈴 木 あきこ 君
9  番 はぎの 幸 弘 君
10  番 高橋 こうすけ 君
11  番 村 上 貢 一 君
12  番 工 藤   剛 君
13  番 小 林 正 信 君
14  番 千 葉   盛 君
15  番 上 原 康 樹 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 高 橋 穏 至 君
20  番 佐々木 宣 和 君
21  番 臼 澤   勉 君
22  番 福 井 せいじ 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 高 田 一 郎 君
26  番 木 村 幸 弘 君
27  番 佐々木 朋 和 君
28  番 吉 田 敬 子 君
29  番 高 橋 但 馬 君
30  番 岩 渕   誠 君
31  番 名須川   晋 君
32  番 軽 石 義 則 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城 内 愛 彦 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 郷右近   浩 君
41  番 小 西 和 子 君
42  番 高 橋 はじめ 君
43  番 五日市   王 君
44  番 関 根 敏 伸 君
45  番 佐々木 順 一 君
46  番 岩 崎 友 一 君
47  番 千 葉   伝 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(なし)
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
   
午後4時3分 再開
〇副議長(飯澤匡君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第1、一般質問を継続いたします。高田一郎君。
   〔25番高田一郎君登壇〕(拍手)

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