令和4年6月定例会 第21回岩手県議会定例会会議録

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〇14番(佐々木朋和君) いわて新政会の佐々木朋和でございます。
 発議案第4号県議会議員の定数等に関する条例の一部を改正する条例に対して、反対の立場で討論いたします。
 各交渉団体会派から構成される議員定数等検討会議は、令和2年3月に設置されて以来、議員定数のあるべき姿について検討してまいりました。これまでの選挙区と定数配置の経緯を見ると、平成14年に、総定数を維持したまま、釜石選挙区が1減し、北上選挙区が1増になりました。平成18年には、総定数を3減し、九戸、下閉伊、大船渡選挙区がそれぞれ1減となりました。この20年の間に県北・沿岸地域から4議席が減り、内陸部に1議席増の措置がとられてきました。
 今回の条例案では、新たに盛岡選挙区を1増し、九戸選挙区を廃止するとともに、大船渡選挙区と陸前高田選挙区を合区する内容であります。
 我々は、県全体の現状と地域の将来を考え、現在の県北地域の5議席、沿岸地域の7議席を維持し、県土の均衡ある発展に努めるべきと主張してきました。これは、前回の報告書に記されている申し送り事項、すなわち、東日本大震災津波及び平成28年台風第10号災害からの復旧、復興の状況及びそれに伴う人口動態の状況を考慮すること、全国の事例も参考にしつつ、地域間の格差是正に努め、県全体の振興が図れるような視点に配慮した検討を行うことによるものであります。
 反対する理由の第1は、選挙区と定数の配置であります。
 公職選挙法第15条において、各選挙区において選挙すべき議員の定数の配置は、人口に比例して、条例で定めなければならない。ただし、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができるとあります。
 ぎょうせい社の公職選挙法の逐条解説書によると、従来どおり、各選挙区間の定数配分を機械的に人口に比例して行ったのでは、必ずしも都道府行政の円滑な推進が達せられない場合も予想される。第8項ただし書きは、このような行政の実態を考慮して、特別な事情があるときは、ある程度、人口比例の原則に特例を設け、それぞれの地域の代表をそれぞれの地域の実情に応じて確保し、均衡のとれた配分をすることができる道を開こうとしたものであると記述されております。
 全国の32の都道府県においては、地域間の均衡に考慮して、ただし書きを適用しています。人口減少と地域間格差の拡大が続く社会において、ただし書きの適用は、地域バランスを補う上でスタンダードな判断基準となっています。
 今回、増減の対象となる盛岡選挙区と県北地域の三つの選挙区では、行政機能や経済、医療、教育等において大きな違いがあります。このような地域との定数の増減を行う場合、判例上の1票の格差を超えない範囲内で、地域の振興度をはかりながらバランスをとるべきであります。
 第2に、1人区の取り扱いであります。
 今回、1人区の解消が大きな論点になりました。その理由は、1人区は、無投票の傾向があり、住民の関心が薄れるおそれがあることからとされています。本県における無投票選挙区の動向は、平成27年の県議選において、16選挙区中6選挙区、令和元年の県議選において、16選挙区中8選挙区と増加傾向にあります。2人区のみならず、二つの3人区においても無投票となっており、1人区に限った話ではありません。
 複数区の無投票結果とあわせて理由や課題を精査し、民主主義の根幹の一つである選挙が行われるよう、不断の議会改革とあわせ対策を講じるべきであります。
 また、東日本大震災津波の被害が特にも大きく、いまだ課題を抱える陸前高田選挙区については、1人区のまま定数を配置し、細やかな課題に対応できるよう、復興完遂に向け取り組むべきと考えます。
 第3に、パブリックコメント制度の運用であります。
 県議会議員の定数等の見直し(素案)に対するパブリックコメントの実施結果では、意見提出者は、個人135名、20市町村からの計155と、平成18年2月から3月に行われたパブリックコメントに比して実に4倍近くの意見が提出されました。通常、パブリックコメントは数件程度の意見提出が多く、155の県民からの意見は、大変重いものと言えます。
 意見の内訳は、総件数253件中、素案に賛成19件、反対193件、その他41件と、圧倒的に素案に反対の意見でした。寄せられた意見の多くが、人口比例で定数配分していく方法だと、人口の減少幅が大きい地域ほど議員定数が減少することの心配や、ただし書きを適用し、現在の選挙区を維持すべきという意見が大勢であり、多様な意見が寄せられました。
 選挙区が廃止される九戸選挙区については、選挙区内の自治体や有権者にとって大きな変化が生じることから、過去に釜石選挙区の減員を決めた際に適用した激変緩和措置を求める意見が寄せられています。
 パブリックコメント制度は、2005年6月に改正された行政手続法によって法制化されました。新たなルールの案を公表して、広く意見を募るのが制度の趣旨であり、集まった意見を考慮し、反映させることで、公平性、透明性、理解の増進を高めることが目的であります。
 ルールを決める側は、ルールに沿って、行動する側から寄せられた意見に対する説明と妥協点を見出すことで、その制度はよりよいものへと変わっていきます。既に回を重ね合意して決めた内容だから変更の必要がないとする考え方では、制度の意義が失われ、県民にとって何のためのパブリックコメント制度なのかとの思いが高まり、制度の建設的発展につながらないことを懸念するものであります。
 会派としては、これまでの検討の積み重ねと集約された多数派の意見、パブリックコメントの結果の重要性を踏まえ、全会一致で賛成できる条例案策定に向け、意見が分かれている選挙区の定数の配置を進めることを前提に、実施時期において激変緩和措置を講じるよう提案しましたが、合意に至りませんでした。
 意見を寄せた多くの県民や要望された市町村長、町村議長の思いに応えようとしない条例案には、賛成することはできないと判断いたしました。
 以上のことから本案に反対するものであります。議員各位の御理解と御賛同を願い、反対の立場からの討論とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、臼澤勉君。
   〔21番臼澤勉君登壇〕

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