令和4年2月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇38番(中平均君) いわて新政会の中平均です。
 2月定例会において代表質問の機会をいただきました会派の皆様、議員の皆様に感謝を申し上げます。
 それでは、いわて新政会を代表して質問させていただきます。達増知事の明快な答弁を期待いたします。
 初めに、令和4年度一般会計当初予算案についてお伺いします。
 令和4年度一般会計当初予算案は総額7、922億円、震災対応分として477億円、新型コロナウイルス感染症対策分として966億円であり、差し引いた6、479億円は東日本大震災津波前の平成21年度一般会計当初予算と同規模となります。
 令和4年度は、人口減少、デジタル、グリーンを軸とした施策を進めるとのことであり、10億円を超える新規事業、人口減少5億円、デジタル化3億円、グリーン化3億円を確保したほか、岩手県の強みを生かした地方創生に取り組んでいくとしていますが、令和4年度当初予算案の特徴と予算に込めた知事の思いをお伺いします。
 次に、公共事業費についてお伺いします。
 県内では、(仮称)久慈内陸道路を初め、今後の県内経済の活性化、人口減少対策、災害対策に不可欠な機能を有し、本格的な着工を行う必要がある箇所が多く存在します。
 令和4年度の県の公共事業予算額は494億円と、令和3年度予算額526億円から32億円、6%程度減少しており、これは平成28年台風第10号の復旧工事の進捗に伴い関連事業費が27億円減少したことを除けば、ほぼ横ばいの数字になります。
 近年は国が経済対策として補正予算を編成し、翌年度の当初予算と一体的に運用する16カ月予算といった考え方のもと、県でも、2月補正予算に計上した予算と翌年度の当初予算とを合計した金額が実質的な公共事業費となることが常態化しています。この考え方で整理した場合、令和4年度の公共事業費は852億円程度と、令和3年度の928億円に比べて約8%減少することになります。
 国の経済対策における公共事業費が約16%減少していることと比較し、県の公共事業費の減少幅が一概に大きいわけではないのですが、東日本大震災津波からの復興事業規模が最大であった平成27年に2、160億円程度を計上していた事業費は大幅に減少し、令和4年度の水準は震災前の平成22年の890億円に届いていない現状を踏まえ、今後の公共事業費の確保、進め方について知事の考えをお伺いします。
 以上、登壇での質問を終わり、あとは質問席で質問させていただきます。
   〔38番中平均君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 中平均議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、令和4年度一般会計当初予算案についてでありますが、令和4年度一般会計当初予算は、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期し、東日本大震災津波からの復興を進めるとともに、人口減少対策やデジタル化の推進、グリーン社会の実現などにより、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての着実な実現につなげていく予算として編成しました。
 具体的には、人口減少社会への対応では、安心して子どもを生み育てられる環境を充実させるため、子育てを応援する機運醸成に向けた県民運動の展開や産後ケアの実質無償化のほか、若者の地元定着の促進やU・Iターンの支援に取り組みます。
 デジタル化の推進では、AI人材の育成やスポーツ指導、鳥獣被害対策、災害時のドローン利用などさまざまな分野でDXを進めるほか、東日本大震災津波伝承館に整備したローカル5Gの活用やDXの基盤整備に取り組みます。
 グリーン社会の実現では、燃料電池自動車の購入支援や本県初の水素ステーションの設置など水素自動車の普及を進めるほか、本県の優位性を生かした森林資源の循環活用や、温室効果ガス排出量の削減に向けた官民一体の取り組みを進めます。
 また、これらの施策とあわせて、北上川流域の自動車関連産業の集積や、半導体製造メーカーの工場の増設、三陸地域における復興を通じたまちづくりや交通ネットワークの形成、北岩手における北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録や、豊富な再生可能エネルギー資源などの岩手県の強みを生かした地域づくりを進めることとしており、こうした各般の施策により、コロナ禍を乗り越え、復興創生をデジタル、グリーンで実現していく考えであります。
 次に、公共事業費についてでありますが、公共事業による社会資本の整備は、安全・安心な地域社会の構築や区域産業の振興などの観点から重要であり、安定的に予算を確保していくことが必要であります。そのため、令和4年度一般会計当初予算案と令和3年度一般会計補正予算案(第11号)においては、国の経済対策に呼応して県内経済の活性化を推進するため、経済対策分についてシーリングを設けず一体的に予算編成するなど、防災、減災、国土強靱化の推進を含め、社会資本の整備に必要となる震災前とおおむね同水準の事業費を確保したところです。
 今後においても、引き続き、さまざまな機会を捉えて国に対し国費の確保を強く働きかけていくとともに、国の経済対策の動向等も勘案しながら、毎年度の予算編成において所要額を確保してまいります。
〇38番(中平均君) 公共事業費の確保の考え方についてですが、沿岸部の震災対応分によるハード事業がほぼ終わってきているという中で、予算をきちんと確保していかないと、このままではソフトランディングではなくて、胴体着陸をせざるを得ないような経済状況になり得ますが、そうなってはいけないと考えております。そういった意味においても、非常に厳しい予算状況というのは重々承知していますが、そういった点を踏まえながら今後さらなる予算確保をお願いしていくとともに、必要な事業をきちんと進めていっていただきたいと思います。
 次に、持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会についてお伺いします。
 具体的な人選、開催要旨等はこれからとお伺いしております。先ほど来の質問でもありましたが、私は、平成16年くらいだと思いますが、増田知事時代の行財政改革でトヨタ式カイゼンを導入したことを思い起こしておりました。
 知事は、岩手県の現在の行財政運営についてどう評価しているのか。不断の改革が必要なのは十分理解しています。その中で、県庁内部での議論や、県議会でさまざま行財政改革についての議論を行っていますが、その議論ではどこが足りないと考えて、今回、研究会を開催していく予定なのかをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 持続可能で希望ある岩手を実現する行財政研究会については、私が知事に就任した平成19年当時、本県は、県債残高の高どまりに加え、財源対策基金の残高も平成以降最低水準となるなど、厳しい財政状況下における行財政運営であったと認識しております。そのため、行財政改革の取り組みとして、議会における議論等を踏まえ、毎年度の予算編成過程において、事務事業評価の活用、未利用県有地の売却等の歳入確保、県単独補助金の見直し等の歳出抑制を実施しつつ、いわて県民計画(2019〜2028)に基づく施策を着実に推進してきました。
 一方で、令和4年度一般会計当初予算案においては、令和2年国勢調査人口の地方交付税等への反映等により、一般財源総規模が91億円減少する見込みであるなど、現在、県が直面する人口減少を背景とした一般財源規模の縮小は、今後の行財政運営にとって中長期的な課題となるものです。
 このような環境の変化に対し、将来にわたって、基本的な行政サービスを提供し、県民の福祉を増進していくためには、これまでの取り組みに加えて抜本的な行財政運営の構造改革の方策を早急に検討する必要があり、そのため、地方行財政にすぐれた識見を有する有識者に県の行財政の構造的、中長期的な課題を分析していただくこととし、本研究会を開催することとしたものであります。
〇38番(中平均君) 抜本的な行財政改革に取り組んでいくということでございます。この研究会が有効に機能していくことはもちろん期待いたしますが、これを盾にして、今までは県庁内でなかなか言えなかったこととか、この研究会から提案があったのでこれを切り捨てていきますとか、そういったことがないように気をつけていただきたいと思いますし、議論を見守っていきたいと思います。
 次に、人口減少対策についてお伺いします。
 現在、人口減少社会に対応していくために各種施策を行ってきていますが、残念ながら人口減少の流れはとまらない状況にあります。出生数が死亡数を下回る自然減への対策と、転入者が転出者を下回る社会減への対策をより効果的に行っていく必要があると考えています。令和2年度の合計特殊出生率は1.33、社会減は新型コロナウイルス感染症による影響から縮小していますが、それでもなお転出超過という現実であります。
 知事は、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に沿って人口減少対策に力を入れると演述しておりましたが、岩手県人口ビジョンの人口の展望に掲げる2040年に人口100万人の確保を実現できるのかをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 岩手県人口ビジョンにおいては、国の第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本目標に呼応し、出生率の向上と社会増減ゼロを掲げ、2040年に100万人程度の人口を確保することを展望しております。
 県としては、このビジョンを踏まえ、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略を推進するとともに、令和4年度一般会計当初予算案においては、人口減少社会への対応を重点課題の一つに掲げ、産前産後サポートの拡充など、子どもを生み育てやすい社会の実現を目指す取り組みや、U・Iターンの促進、高校と地域との連携強化など、岩手県への新たな人の流れの創出や、地域の魅力向上につながる取り組みを盛り込みました。
 東京圏の転入超過数は、令和2年に7年ぶりに10万人を下回ったものの、依然としてその規模は全国の中でも突出しており、国の強力な取り組みも不可欠であることから、地方を重視した経済財政政策を確実に実施するよう、国に対して強く求めてまいります。
〇38番(中平均君) 100万人を維持していくとしても、2040年は18年後、現在より約20万人減少していくといった中において、そのときの生産年齢人口は51万人と、今より13万人減るということであります。そこを見据えた社会構造のあり方をどのように考えているのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 岩手県人口ビジョンにおいては、ふるさと振興を進めることで出生率が向上し、社会増減が均衡した場合の生産年齢人口の割合は、将来的には全体の57%まで改善し、人口の若返りが期待できると展望しており、これが実現した場合、人口構造の偏りが改善に向かい、2060年ごろには、あらゆる世代の人口が安定し始める定常状態に向かうことが見込まれます。
 この間、2040年には総人口が減少する中で、2021年に全体の55%程度であった生産年齢人口の割合は50%程度まで低下すると予測され、これに伴う労働力不足や生産量の低下が懸念されます。このため、地域産業の振興を図りながら、中小企業、ものづくり産業、農林水産業、建設業など、あらゆる産業のデジタル化を促進するなど、さらなる生産性向上や高付加価値化に取り組む必要があると考えております。
〇38番(中平均君) 社会構造のあり方をもう少し明確にしていただかないと、人口減少がこのまま進むと大変だとみんなわかっているのですよ。でも、どんなに頑張って今のビジョンのとおり全てうまくいっても、いずれ2040年には100万人規模になってしまう。そういった中において、どうしても生産人口が減っていって、生産人口が減るということは当然消費人口も減っていくことですから、そういった点を踏まえての社会構造のあり方を今後の計画等に明確に示していきながら、2040年、そしてその先の2060年に向けて、今どういった形でこれをやっていくことがそれにつながっていくのだということを示していくべきだと思いますが、その点についてお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 御指摘の点、それぞれそのとおりだと思います。来年度は次のアクションプランの策定時期にもなりますので、参考にしてアクションプラン策定に取り組んでいきたいと思います。
〇38番(中平均君) そこを明確に示していきながら、一つ一つの施策をどう進めていくかということが、人口減少社会ではより一層大切になってくると思いますので、今後の具体的な政策等の検討を示していただきたいと思います。
 次に、県北・沿岸振興についてお伺いします。
 最初に、北いわて産業社会革新推進コンソーシアムについてです。
 昨年8月に設立され、2月17日に開催された設立総会に私もズームで参加させていただきました。東京大学菊池准教授の基調講演、4事例の発表を聞いたところであり、事例発表の中で一番印象に残ったのが、三陸産で全て生産物を一緒にされてしまう今の状況では地域の独自性は出てこない、生産意欲につながらない。独自ブランド化による高付加価値につなげることが必要であるといった事例発表です。岩手県として、このような提言や各地の成功事例をどう生かしていくかが、今後に問われていくのだと思っています。
 新たな付加価値の創出や課題解決を図ることが目的として今回設立したと。その上で事業展開をどうしていくかということだと思うのですが、このコンソーシアムをどのように活用して地域課題の解決につなげていくのかが問われています。組織をつくって議論して終わるというだけのものにならないことを当然のこととして期待していますが、具体的にどう運用していくのかをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 北いわて産業・社会革新推進コンソーシアムは、2050年カーボンニュートラルや御所野遺跡の世界遺産登録といった社会情勢の変化や、東京大学や岩手県立大学と連携した新たなプロジェクトなどの好機を生かし、産学官の連携により、北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトを力強く推進するため設立したものであります。
 コンソーシアムでは、ネットワークの構築に加え、カーボンニュートラルによる地域経済の活性化など、地域資源を活用し、新たな付加価値の創出や地域の課題解決につながるプロジェクトに取り組むこととしています。この北岩手において、コンソーシアムを中心に多様な主体や、東京大学、岩手県立大学とも一体となり、地域振興や、人口減少と高齢化、環境問題に対応する社会づくりを一体的に推進し、持続的に発展する先進的な地域づくりに取り組んでまいります。
〇38番(中平均君) その中で、再生可能エネルギーの活用など二つのプロジェクトチームを立ち上げて進めていくということも、総会の場で発表されていました。
 提案ですけれども、現在、この構成メンバーの中に、金融機関やコーディネーターの役割を担う個人、団体にも参画してもらって、コンソーシアムに提案されてくる各種事業の実現化を図っていくべきであると考えます。スピード感を持って成果を上げていくことが、県北・沿岸振興にとって必要なことだと考えますが、知事の考えをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 北いわて産業・社会革新推進コンソーシアムでは、北岩手の特徴的な資源である再生可能エネルギーの活用や、現在実証実験を展開している北いわてMaaSの活用に係るプロジェクトを展開していくこととしています。
 さらに、令和4年度からは、東京大学が中心となって、本県を初め国内外の5地域をフィールドに、岩手県立大学など27の大学、企業等が参画し、地域の豊かさとゼロ・カーボンの両立を目指す新たな取り組みもスタートします。
 これらを含めて、コンソーシアムの活動に地域社会、経済を牽引するキーパーソンの積極的な参加を働きかけ、北岩手における取り組みを加速し、具体的な成果につなげていきたいと考えています。
〇38番(中平均君) ぜひともスピード感を持っていただいて、成果が一つ一つ積み重なっていく、そして県北振興、沿岸振興につながっていくことを期待いたします。
 次に、水産業についてお伺いします。
 初めに、漁業協同組合経営等への支援についてお伺いいたします。
 皆様御承知のとおり、秋サケは令和4年1月末で410トン余りと、昨年同期と比べて24%、震災前3カ年平均では2%に満たない非常に不漁ということで、この現状を受けて、非常に厳しい状況が続き、漁業協同組合経営に深刻な影響、大きな打撃を受けているところであり、知事も先日、新型コロナウイルス感染症の流行、主要魚種の不漁問題が復興に大きな影を落としていると陳述されていました。県として、この災害級とも言える不漁の直撃を受けている現状に対して、財政的支援を含めたどのような施策を考えているのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 秋サケ等の主要魚種の不漁により、定置網等の漁業自営業者が収益の中心となっている漁業協同組合の本年度の決算は、昨年度に引き続き、厳しくなると予想されています。
 県では、漁業協同組合等の資金繰りの改善に活用可能な借りかえ資金に利子補給を行っており、令和4年度一般会計当初予算案では、漁業協同組合の経営状況を踏まえ、資金需要の増加も想定し、利子補給に要する経費を増額しています。
 また、国では、令和4年度予算案に、不漁により経営が悪化した漁業協同組合が経営基盤強化に必要な資金を円滑に調達できるよう、利子や保証料の助成等を行う新たな支援措置を盛り込んでいます。
 県としては、漁業協同組合の経営状況に応じ、これらの支援措置の活用を促していくほか、漁業関係団体と連携した経営改善指導を通じて、漁業協同組合経営の安定化を支援してまいります。
〇38番(中平均君) そういった中で、サケの資源の回復ということで、今年度の種卵確保は5、800万粒と、計画の13%という状況です。ふ化放流事業の継続に向けて今後どのように取り組んでいくのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 海洋環境の変化等により、サケの漁獲量が年々減少し、今後も必要な種卵を確保することが難しい状況が続くと見込まれることから、サケ資源の回復を図るためには、回帰率を向上させていくことが重要であります。
 このため県では、令和4年度一般会計当初予算案に、新規事業として、さけ、ます養殖緊急強化対策事業費を盛り込み、確保した貴重な種卵から、海洋環境の変化にも強く強靱なサケ稚魚を生産するために必要な改良餌や、種卵消毒用資材の導入支援などにより、これまでの研究で得られた成果を生産現場に普及し、ふ化放流事業を継続していくこととしています。
 引き続き、サケ資源の早期回復に向け、漁業関係団体と連携しながら、全力を挙げて取り組んでまいります。
〇38番(中平均君) 不漁に対する多様な方向性ということですが、県としても国に支援を求めていくことも必要だと考えますが、国とどのような認識を共有して進めていくのか、その内容はどういったものなのかを含めてお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 国は、近年の不漁を背景に、有識者からなる不漁問題に関する検討会を設置し、サケ等の不漁要因の分析と不漁に対する施策の方向性について取りまとめた結果を昨年6月に公表しました。
 この取りまとめに当たり、県では、サケの回帰率向上に向けた本県の取り組み状況等を情報提供し、サケの不漁への対応など、国と意見交換を行ったところで、放流稚魚の大型化、放流時期の見直し、ふ化場の有効活用などによる新たな収入源の確保などについて、国と共通認識を図ったところであります。
 本県の取り組みは、国が示した施策の方向性とおおむね合致していると考えており、県としては、漁業関係団体と連携を図りながら、サケ資源の回復に向け、必要な対策を進めてまいります。
〇38番(中平均君) 資源の確保について成果を出すには当然時間がかかるというのは、十分に理解しています。しかし、主要魚種の不漁は、先ほど来、話し合いもしていますけれども、長期にわたっていまして、サケの資源にしても4年経過しないと漁獲に反映されないことを考えると、漁業者や漁業協同組合の経営に与える影響は、当然楽観視できる状況にはないと言えると思います。
 不漁に対する資源回復や生産力を上げる新たな取り組みを、今まで答弁いただいていますが、よりスピード感を持って対応していかなければならないと考えます。知事の見解をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、海洋環境の変化に対応した水産業の実現に向け、主要魚種の資源回復、増加している資源の有効利用、新たな漁業、養殖業の導入の三つを大きな柱として取り組んでまいりました。
 令和4年度一般会計当初予算案には、これらの取り組みをより一層推進するため、大型で遊泳力の高い強靱なサケ稚魚の生産技術の導入支援、いわてオリジナルのサケ、マス類の海面養殖用種苗の開発、そして、ホタテガイに比べて、高水温でも成長し、出荷までの期間が短いアサリ養殖の事業化などの実施に必要な経費を、新たに盛り込みました。
 今後においても、3本の柱に基づく取り組みをさらに加速し、沿岸地域の基幹産業である水産業が将来にわたり持続的に発展していくよう、漁業関係団体等と一丸となって、全力を挙げて取り組んでまいります。
〇38番(中平均君) 漁業関係団体と一丸となってということです。それは当然やっていただきたいですし、ここでより県のリーダーシップであったりといった点がもっと見えてこなければ、スピード感はなかなか出てこないとも考えます。
 名称は何でもよいのですが、例えば、不漁対策本部のような組織を立ち上げて、岩手県として沿岸部の基幹産業である水産業の不漁をどうしていくのかというのを全庁を挙げて取り組んでいく、そして県も頑張ってやっていくという姿勢を見せていくことも必要ではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 実は、漁業者の皆さんと、そして、必死の努力の中で漁獲されてくる海の幸を消費してくださる消費者の皆さんに対して、海洋環境の変化に対応した新しい漁業の取り組みを強くアピールするやり方は今検討しているところで、議員御指摘のような、行政と漁業者、関係団体が一つになって新しい取り組みをアピールできるような体制を年度内に立ち上げたいと思います。
〇38番(中平均君) 年度内ということは、3月中にということだと思いますので、そこをぜひともお願いしたいです。そして、重ねてになりますが、漁業者の皆さんは本当にもうぎりぎりです。知事もいろいろ聞いているでしょうし、復興に暗い影を落としているとツイートされていますから重々承知していると思いますので、ぜひともその点を踏まえながら進めていただきたいと思います。
 次に、久慈市沖の浮体式の洋上風力発電についてお伺いします。
 この事業は、地域の産業振興と結びつけていくために、着実な事業推進が必要であると考えますが、県も同様の認識であるか伺います。
 また、この事業の推進に当たっては、久慈港を基地港湾とすることによって、発電設備の組み立てや設置、維持管理の業務が生ずるなど、地域の産業振興にさらなる効果が期待できるものと認識しています。基地港湾の指定には、国を含めた関係機関との協議に時間を要することや、港湾計画の変更が必要と考えますが、この指定に関し県としてどのように取り組んでいるかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、洋上風力発電は、脱炭素社会の構築や関連産業の創出など、三陸の新たな価値創造に資する重要な取り組みとして、その実用化を目指しています。
 久慈市沖は、昨年9月、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律に基づく、一定の準備段階に進んでいる区域に整理されました。次の段階となる有望な区域においては、漁業協調が要件となっていますので、現在、久慈市とともに漁業関係者との意見交換を重ね、早期の指定を目指しております。
 また、国による基地港湾の指定に係る港湾計画の変更については、国や久慈市と連携し、施設の構造や機能等の情報収集を進めるとともに、久慈港の基地港湾の指定に向けて準備を進めております。
 引き続き、関係機関や地元の方々と連携を図りながら、久慈市沖浮体式洋上風力発電の事業化に向けて取り組みを進めてまいります。
〇38番(中平均君) 時間がかかるのも現実ですので、進めていく方向性をきちんとお願いしたいと思います。
 次に、構想路線(仮称)久慈内陸道路の整備についてお伺いします。
 今月の2月5日、国道281号の下川井工区が完成、開通し、平成18年の下川井道路、平成29年の案内工区に続いての開通です。これによって、災害時、緊急時の安全確保、物流の効率化、生活路線としての利便性向上、観光路線としての活用が見込まれ、いわゆるストック効果の発現による地域振興が見込まれます。関係各位の御尽力に敬意を表します。
 そこで、令和2年から事業化となった国道281号案内─戸呂町口工区の完成により、さらなる事業効果の発現が見込まれることから、早期完成を期待しています。そして、昨年6月に県が策定した岩手県新広域道路交通計画の中で構想路線に位置づけた(仮称)久慈内陸道路の整備に向けた県の考え方をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県北地域の道路ネットワークの強化は、災害に強い県土づくりに加え、物流の効率化や人的交流の活性化の面からも特に重要な課題であります。このため、昨年6月に策定した岩手県新広域道路交通計画では、国道281号を一般広域道路に、さらに、これに重ねる形で、久慈内陸道路を将来的には高規格道路としての役割を期待する構想路線に位置づけたところであります。
 これら二つの道路の位置づけは、国道281号の将来的な高規格道路化を見据え、必要性の高い区間から順次整備を進めていこうとするものであり、今後、久慈─盛岡間の連絡強化に向け、必要な道路構造等の検討を進めてまいります。
〇38番(中平均君) ぜひとも進めていっていただいて、唯一残った横軸である国道281号(仮称)久慈内陸道路を進めていただきたいと思います。
 次に、津波防災地域づくりに関する法律に基づき津波浸水想定設定作業を行っている設定作業は3月末で公表予定と伺っています。東日本大震災津波を超える想定がなされていると見込まれますが、今後の地域の安心・安全をどのように担保していくかが課題となります。
 他方で、久慈市湾口防波堤が昨年12月の国の大規模事業評価において、5年おくれて2033年に完成する見通しが示されました。ハード整備に時間が予定よりかかってしまっている地域もありますが、こうした状況にあって、県では公表後に各自治体の防災計画の見直しを促進するとしていますが、その方針をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 本県においては、東日本大震災津波の経験を踏まえ、最大クラスの津波を想定しつつ、さらに想定を超える可能性や、整備された防波堤や湾口防波堤では防ぎ切れない規模の津波も前提としながら、ハードとソフトを総動員した多重防御の考え方により、住民の避難を軸に減災に結びつけることとしています。
 市町村は、今後公表予定の津波浸水想定を踏まえ、津波ハザードマップを見直し、避難路や避難施設等の整備を検討するものと認識しておりますが、さらに、県が検討を進めている地震・津波被害想定では、定量的な被害想定に加えて、津波避難計画策定指針の改訂や、減災に向けたソフト対策も示すこととしています。
 今後も、市町村と十分に情報を共有しながら、防災計画の見直しを促進してまいります。
〇38番(中平均君) その見直しを受けて、岩手県広域防災拠点配置計画も令和4年度から見直しをすることとなっています。県北地域の広域拠点は、現在は葛巻町ですが、久慈市、葛巻町、盛岡市とつながる国道281号の整備は、災害時における迅速な対応を可能とすると考えます。
 先ほどの質問と重複しますが、(仮称)久慈内陸道路の実現に向けて、釜石自動車道の東和─釜石間や国道106号宮古盛岡横断道路のような直轄事業の導入についても考えてはどうかと思いますが、県の考えをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 御指摘の宮古盛岡横断道路は、国の復興のリーディングプロジェクトとして、区界道路など6区間が事業化され、復興財源を活用した直轄権限代行により整備が進められました。
 一方、通常の直轄権限代行は、全国的な幹線道路網の観点から特に重要なもの、高度な技術を要し都道府県による施工が困難なものが採択要件となっており、ルートや構造等の調査が一定程度進んでいる必要があります。
 (仮称)久慈内陸道路は、国道281号の整備を進めつつ、将来の高規格道路を目指すこととして選定したものであり、国道281号の道路構造や課題、整備のあり方等の検討の熟度を高めながら、国と情報交換をしてまいります。
〇38番(中平均君) それでは、三陸沿岸道路の活用についてお伺いいたします。
 知事がよく言うビルド・バック・ベターを進めていくために、三陸沿岸道路の全線開通の効果を交流人口の拡大や産業の振興につなげる必要があると考えます。知事の所感をお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 全線開通した三陸沿岸道路と復興支援道路により、三陸沿岸が一つにつながり、内陸とも強く結びつき、本県が日本各地や世界とつながることができ、物流、観光、医療、防災などさまざまな面で効果を発揮し、復興を力強く後押ししていくものと考えています。
 三陸沿岸道路の整備は、移動時間の大幅短縮、輸送コスト軽減などにより、企業の新設、増設の増加、コンテア取り扱い貨物量の拡大など、多くの効果があらわれています。
 来年度は、防災を学習する場とする仕組みづくりや、三陸沿岸道路と三陸鉄道を活用した企画列車の造成、ひろたハマラインパークを活用した合宿誘致など、誘客拡大を図るとともに、企業誘致や農水産物等の物流システム構築などの産業振興に取り組んでまいります。
 引き続き、三陸沿岸道路の利活用を進め、住む人と訪れる人の幸福を増すことができるよう取り組んでまいります。
〇38番(中平均君) 続きまして、新型コロナウイルス感染症についてお伺いします。
 感染対策ということで、過日、岩手医科大学の記者会見で、学級閉鎖に伴い医療従事者が自宅待機となり通常医療に支障が出ている状態が示され、学級閉鎖に係る柔軟な制度運用が求められていました。一方で、県内には、現在、岩手緊急事態宣言が出ています。
 医療体制を守るために行っている対策が医療体制を逼迫させているという状況にもあると言えますが、この現状の把握、また解決に向けた対応についてお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 本年1月下旬から2月上旬にかけてオミクロン株による急激な感染拡大が生じ、濃厚接触者の特定等の保健所業務が一時的に滞ったことにより、感染者が確認された学校の休校等が長期化し、その保護者である医療従事者等が勤務できない状況が多く生じたところであります。
 そのため、県では、一時的に業務が滞った保健所に応援職員を派遣し疫学調査等を支援したほか、県及び関係市町村教育委員会と連携し、県教育委員会の職員が保健所にリエゾンとして参画する仕組みを構築するなど、学校現場と保健所の連携強化に努めてまいりました。
 あわせて、盛岡市を含む県全域において、保健所と学校が連携して、速やかな濃厚接触者の特定、行政検査の実施及び健康観察等を効率的に行う体制を2月10日付で整備したことにより、休校等の規模も縮小し、その期間も短縮されたものと承知しております。
 今後とも、学校と保健所の連携を密にして、迅速な濃厚接触者の把握と、学校の的確な臨時休業等の感染対策措置が講じられるよう対応してまいります。
〇38番(中平均君) 続いて、経済対策です。先ほどの岩崎友一議員の質問にもございましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大と長期化は各種産業に影響を及ぼしています。原材料や原油高の影響を受けている事業者は、価格への転嫁ができず、売り上げの減少はないものの、利幅が小さく苦しい経営状況となっています。こうした事業者、業種に対して、県はどのような経済対策の支援を行っていくのかをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に加え、原油高や資材不足に伴う原材料価格の高騰などにより、幅広い業種の事業者がさらに厳しい状況にあります。また、ガソリンスタンドや工務店などにおいて、売上高は大きく減少していないため事業復活支援金を初めとした既存の支援制度の対象となりませんが、仕入れ価格の上昇分の価格転嫁ができずに利幅が大きく縮小し、経営に影響が生じている事業者があるといった状況を、商工指導団体や金融機関を通じて共有しております。
 こうした状況を踏まえ、全国知事会を通じて、国に対して、事業者の実情に十分に配慮した幅広く手厚い大胆な経済支援を講じることを働きかけているところであり、県としても、関係団体等と連携して、効果的な支援の方法等の検討を進めてまいります。
〇38番(中平均君) 次に、高病原性鳥インフルエンザ対策についてお伺いします。
 最初に、今回の高病原性鳥インフルエンザは、県内各地から延べ782人の県職員、地元自治体の職員に作業へ従事していただきました。また、現在でも、消毒ポイントで、県職員の皆さん、また自治体職員の皆さんが対応しています。関係各位に心から感謝を申し上げます。
 それで、今回の防疫対応を知事はどのように総括しているのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 本県の養鶏は地域経済を支える重要な産業であり、高病原性鳥インフルエンザの発生は養鶏産業に及ぼす影響が極めて大きいことから、迅速な防疫体制が重要であります。
 今般、県内の養鶏農場で初めて、高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜が確認されたことから、知事を本部長とする高病原性鳥インフルエンザ対策本部を直ちに設置し、殺処分の実施や消毒ポイントの設置、養鶏農場に対する飼養衛生管理の徹底の呼びかけ、風評被害防止に向けた情報発信などに取り組んだところであります。
 このような取り組みが円滑に実施できたことにより、発生から約2日間で農場の防疫措置が完了し、迅速に対応できたと考えていますが、全ての防疫措置が完了した際には今回の取り組みを改めて検証し、今後の防疫対策に生かしていくこととしております。
〇38番(中平均君) 次に、農家への支援についてお伺いします。
 制限区域外の経営支援は非常に限定的なものであり、地域全体の集積ぐあい、また処理工場の位置によっては損害が発生することも十分に想定されることから、制限区域外の経営支援についての支援スキームもつくっていくべきではないかと考えますが、県としてどのように考えているのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 農家への支援についてでありますが、国では、制限区域内の農場に対し、家畜伝染病予防法に基づき、殺処分された鶏の評価額全額の手当金交付や、鶏の移動等の制限による売り上げ減少に対する全額助成などの支援対策を講じており、こうした国の対策を活用した発生農場等への経営支援について、農林水産副大臣に直接要望したところであります。
 なお、制限区域外の養鶏農場への影響は、移動制限区域内にある食鳥処理場へ出荷できない場合等が想定されますが、県内の食鳥処理業者は、緊急時に相互に受け入れを調整する協定を締結しているほか、売り上げ減少等の影響を受けた場合には、利子補給のある資金制度も活用可能となっており、養鶏農場の状況等に応じて丁寧に対応してまいります。
〇38番(中平均君) 次に、風評被害対策ということで、風評被害が出る前に先手を打って販売促進を行う必要性があると考えますが、知事の考えをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、高病原性鳥インフルエンザ対策本部会議において、鳥インフルエンザに感染した鶏肉や鶏卵が市場に出回らないことや、食べても人が感染する可能性がないと考えられることを私から直接県民に呼びかけたほか、県公式ホームページやSNSも活用しながら、県内外に向けて情報を発信し、県産の鶏肉、鶏卵の利用促進と風評被害の防止に努めているところです。
 また、今般の発生を受けて、県内養鶏事業者や大手量販店等に聞き取り調査を行いましたが、県産の鶏肉等の買い控えなどは発生していないことを確認しており、引き続き、安全性に関する正確な情報を発信し、安全・安心で高品質な県産農畜産物の消費拡大に取り組んでまいります。
〇38番(中平均君) 次に、医師確保について進みます。
 医師確保、診療科偏在の解消、そして県立病院の医師の充実について、どう取り組んでいくのかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県では、即戦力医師の招聘や奨学金による医師養成などの取り組みを進めていますが、奨学金養成医師は年々増加しており、令和3年度以降に義務履行を開始する養成医師については沿岸、県北地域での勤務を必須化していますので、今後、県内の医師不足や地域偏在は解消に向かうものと考えています。
 また、本県は全ての診療科で医師が不足していますが、特に不足が深刻な産科及び小児科については、産科等を選択した養成医師の義務履行とキャリア形成の両立を可能とする特例配置を行っているほか、令和2年度からは医療局奨学資金に産婦人科特別枠を設け、引き続き、これらの診療科の偏在解消に向けた取り組みも進めてまいります。
 県立病院においては、奨学金養成医師を各圏域の病院に配置するとともに、セカンドキャリアに着目したシニアドクター制度による医師招聘、また、岩手JOYサポートプロジェクトを立ち上げ、医師の育児短時間勤務取得年齢を9歳から12歳に引き上げるなど、ワーク・ライフ・バランスに応じた支援制度の拡充を図っており、引き続き、こうした取り組みを通じて、医師の確保、定着に努めてまいります。
〇38番(中平均君) それでは、これで代表質問を終わらせていただきます。ぜひスピード感を持って施策に取り組んでいただきたいということを申し添えます。ありがとうございます。(拍手)
〇副議長(小野共君) 演壇の消毒のため、しばらくお待ち願います。
次に、ハクセル美穂子さん。
   〔24番ハクセル美穂子君登壇〕(拍手)

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