令和4年2月定例会 第19回岩手県議会定例会会議録

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〇24番(ハクセル美穂子君) いわて県民クラブのハクセル美穂子でございます。
 初めに、新型コロナウイルス感染症によってこれまでにお亡くなりになられた皆様方に謹んで哀悼の意を表します。また、これまで長い間この感染症に対応され大変な御苦労を重ねられている医療関係者の皆様、介護や保育を初めとする私たちが社会活動を続けるために大切な業務に携わっていらっしゃる皆様方に、心から感謝と敬意を表します。
 たくさんの方々の働きによって、私たちの社会が支えられていることに思いをはせ、皆様の働きに報いられるような時間となりますよう、会派を代表して知事に御質問いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 初めに、子供の医療費助成の拡充について御質問いたします。
 私が初めて県議会議員に当選した6年前、一番下の息子は3歳でした。小学3年生の長男を筆頭に、小学1年生、幼稚園の年長と3歳児と、4人の小さな子供たちを育てている真っ最中でした。子供が生まれてから最初の9年間、夏はプール熱、手足口病、冬が近づくとインフルエンザやヘルパンギーナ、各種胃腸炎に水ぼうそう、おたふく風邪と、事あるごとに病院のお世話になる日々を過ごしていたことを思い出します。
   〔副議長退席、議長着席〕
 子供が小さいうちは本当によく病気になります。小さいうちに免疫力を獲得して後に病気にならなくなるのだから仕方がないと言われればそれまでですが、この時期は、親は、精神的にも、肉体的にも、それから金銭的にも、大変な時期でありました。
 そんな私も当時大変助けられた子供の医療費助成制度は、そもそも我が県から始まった助成制度です。現在の西和賀町─旧沢内村が、1961年、昭和36年に村単独事業として、乳幼児医療費助成制度をスタートしたことが全ての始まりでした。貧しい家庭の子供たちが病院に行くことができず乳児死亡率が高かった沢内村の子供たちを救うために、村の方々が決断した優しさにあふれる助成制度が、この医療費助成制度でした。今では、全国の地方自治体が、この制度をまねて、子供の医療費助成制度の拡充を進めています。これは岩手県から全国に普及していった先進的な制度の代表格と言っても過言ではない、住民目線のすばらしい制度だと私は誇りに思っています。
 そもそもの目的でありました乳幼児死亡率は、昭和55年に9%だったものが、平成に入ってからはずっと二、三%で推移しているので、当初の目的は十分に達成されていると推察されます。
 時は過ぎ、現在、全国の都道府県、市町村においては、この子供の医療費助成制度は、どちらかというと子育て支援政策と捉えられていると私は考えておりますが、知事はこの制度の現在の位置づけ、目的をどのように捉えているのか、知事のお考えをお伺いします。
 壇上での質問は以上としまして、この後の質問は質問席から行います。
   〔24番ハクセル美穂子君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) ハクセル美穂子議員の御質問にお答え申し上げます。
 子供の医療費助成は、子供の医療を受ける機会を確保し、子供の健康保持と福祉の向上を目的として、一定の所得以下の世帯を対象に市町村を通じて助成することにより、乳児死亡率の減少など、子供の心身の健康の保持に寄与してきたものと考えております。
 近年は、人口減少対策としての総合的な子育て支援施策の一環として、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略の岩手で育てるの施策の一つとして位置づけているところであり、市町村等との協議の上、補助対象や現物給付の対象を拡大するなど、医療費助成制度の拡充に取り組んできたところであります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 私も、知事が最後のほうにおっしゃったとおり、人口減少対策などに位置づけて、子育て中の家族の経済的な負担を減らしていくための施策、地域社会全体で子育てをしている家族を応援していくようなものに目的が変わってきているのではないかと考えています。知事の御答弁の中では、一定程度の所得に満たない御家庭に対しての制度だという認識でよろしいでしょうか。
 子供の医療費助成制度は、これまで地方単独事業として普及拡大がなされてきたため、国からの支援は全くありません。これは皆様御承知のとおりです。したがいまして、各地方自治体の財政力によって医療費の助成範囲に幅があります。そして、地域ごとに格差が広がってきているというのが現在の状況です。
 岩手県は、現在、通院は6歳まで、入院は12歳まで、子供の医療費として市町村に対して2分の1を助成しています。これは達増知事が今お話ししたとおりです。実際に県民の皆さん一人一人のお手元にこの助成が届くまでに、先ほど私が説明した県の助成範囲に対して、各市町村が上乗せ助成で助成範囲を中学校卒業まで引き上げて、そして現物給付、いわゆる窓口で現金を支払わなくてもよい形で助成が行われています。
 中学校卒業までの現物給付という仕組み自体は、達増知事が音頭をとられて実現して現在に至っていますが、県の補助要件は全く変わっておりません。上乗せになっている分について、実際には市町村が負担しているというのが現状のため、助成範囲がそれぞれの市町村で異なります。県内であっても格差が存在し、その部分についてはいまだに解決されていません。
 子供の医療費助成制度について、今の格差のある内容も踏まえて、現在の取り組みの内容をこれからどのように改善していくべきなのか。また、市町村からは、この制度の改善等の要望があるのかないかのか、その要望を把握されているのかどうかについてお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 県の子供医療費助成の取り組みは、国による一律の助成制度がない中、厳しい財政状況を踏まえながらも、これまでもその内容の拡充に努めてまいりました。
 県内各市町村においては、人口減少対策や子育て支援策としてさまざまな施策が展開されており、医療費助成の対象についても、それぞれの市町村の政策的判断のもとに、単独事業として拡充が進められているものと考えております。
 県内市町村からの要望については、令和3年度は8市町村から、補助対象者の拡大や所得制限の撤廃等の要望をいただいているところであります。
 県としては、子供の医療費助成は、本来、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきものと考えており、国に対し、県の政府予算提言・要望や全国知事会要望などにおいて、全国一律の制度を創設するよう要望してきたところであります。
〇24番(ハクセル美穂子君) ここで、平成27年9月に厚生労働省が公表した子供1人に係る年間医療費平均額の調査結果を御紹介したいと思います。子供の年齢が0歳から4歳までの年間医療費平均額は22万3、000円、5歳から9歳までが12万2、000円、10歳から14歳までが8万7、000円になっています。
 御紹介したとおり、子供の医療費は0歳から4歳までがピークです。子供を授かって一番初めに金銭的な負担が急激に上がるということです。そして、そこからは年々少なくなっていくのですが、9歳ぐらいになると年間医療費の平均は10万円を下回っていきます。これは、子育てしている方は、実際の通院回数等と相関があるので、そうだなと感じる部分ではないかと思います。
 そして、もう一つの調査を御紹介したいと思います。平成16年の内閣府の少子化社会白書の中では、育児の精神的、肉体的な負担感を最も感じている年代は30代の子育て世代という結果が出ています。29歳から30歳が平均的な初婚年齢とすると、結婚して子供を授かってから最初の数年、9年くらいが経済的にも肉体的にも負担感がいかに大きいのか、調査結果からもうかがえるのではないでしょうか。
 このことから、この時期の子育て中の家族の負担軽減を図ることで、子育て世代が感じている負担感を減らすことができると私は考察するわけです。そして、この時期の子育て中の家族に対して所得制限等なく満遍なく支援ができるような公的制度は何か考えていきますと、医療費助成が最も適切であろうと私は考えております。
 同じ東北6県の山形県では、子供の医療費助成の助成年齢を通院で9歳まで引き上げています。山形県は、子供の医療費助成制度を少子化対策の重要な施策として考えて、わざわざ子育て支援、この名前を制度名に入れて、子育て支援医療給付制度として、子育て家庭の経済的負担の軽減を図るものとして実施されています。先ほどの調査結果からも明らかなとおり、医療費負担が大きい9歳までの子供の医療費を手厚くして、子育て支援として山形県は取り組んでいるわけです。
 会派としては高校卒業までの医療費助成を毎年要望させていただいていますが、岩手県も今すぐにそこまではなかなか難しいというのであれば、例えば山形県並みに通院を9歳まで引き上げるとか、または就学前までの所得制限を外すとか、今できる範囲で拡充を少しずつでも進めていって、子育て世代全体の負担感を軽減していくべきと私は考えていますが、そのことについて知事の考えをお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 先ほども答弁申し上げたとおり、子供の医療費助成は、本来、自治体の財政力の差などによらず、全国どこの地域においても同等な水準で行われるべきであり、全国一律の制限を創設するよう、今後も国に提言してまいります。
 県の医療費助成の対象拡大等については、本県の厳しい財政状況を踏まえ、国の動向を注視しながら、県の医療、福祉政策全体の中で、総合的に検討する必要があるものと考えています。
〇24番(ハクセル美穂子君) いつもと同じ答弁ですね。そうだと思います。
 ちなみに知事は、例えば、所得制限ありで9歳まで引き上げた場合と、就学前まで所得制限を外した場合の必要な財源はどのくらいか御存じでしょうか。
〇知事(達増拓也君) 子供の医療費助成以外にも、妊産婦、重度心身障がい児(者)、ひとり親家庭などへの医療費助成の補助があり、コロナ禍で小児医療費が減少した昨年度でも18億円を超える補助を行っており、県の助成対象を拡大する場合は、さらなる財源を捻出する必要があります。
 さらに、未就学児のみの所得制限を撤廃する場合には1.9億円の負担増となりますが、その場合には、他の助成制度との公平性の観点から、子供医療費だけではなく、他の医療費助成の所得制限の撤廃も検討する必要があり、仮に撤廃する場合には、多額の財源が必要となります。
 本県の中期財政見通しによれば、人口減少に伴う普通交付税の減などにより、この先の本県の財政は一層厳しさを増すことから、県立病院事業会計負担金が多額になっている中、所得制限の撤廃といった所得の高い者への対象拡大は慎重な検討が必要と考えております。
〇24番(ハクセル美穂子君) 最初にお聞きした位置づけを達増知事が言われたような位置づけで考えると、病院会計等々の兼ね合いということで、保健福祉分野の予算がただただ大きくなってくる。だからこそ国にお願いしなくてはいけないというロジックになると思いますが、私は、子育て支援策、人口減少対策、少子化対策として、子供の医療費の拡充をするべきではないかという視点で話をしています。そういう視点だとしたら、知事はどのようにお考えになるのですか、お答えください。
〇知事(達増拓也君) 冒頭にお答え申し上げたように、まず、子供の医療費助成制度は、子供の医療を受ける機会を確保し、子供の健康保持、福祉の向上を目的とし、一定の所得以下の世帯を対象に市町村を通じて助成することで、乳児死亡率の減少など子供の心身の健康の保持に寄与していると考えております。
 そして、近年、人口減少対策としての総合的な子育て支援の施策の一環として、岩手で育てる施策の一つとして位置づけているところでありますが、市町村等と協議の上、補助対象や現物給付の対象を拡大するなど、子供の医療費助成制度の拡充に取り組んできているところであります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 知事も、人口減少対策や少子化対策の一環としてこれを位置づけている部分もあると、今、御答弁でおっしゃったと思います。であればこそしっかりと、所得制限のところを小さいお子さんを持っておられる方々の負担軽減策としても考えていかないと、自然減は減らないと思うのです。
 9歳まで助成を拡充した場合、所得制限がある場合は9、000万円だと県の担当の方が言われていました。所得制限を就学前まで撤廃すると、知事が言われたとおり1.9億円です。先ほどから何億円の予算額を要望されていますので、それに比べれば少ないほうだと思いますが、岩手県内の各市町村で独自の上乗せ助成がされているので、実際に所得制限を撤廃してどのくらいの方になるのかというのはまた別の話なのですが、実は、県と同様に、いまだにゼロ歳児から所得制限がある自治体が県内には二つあります。そして、3歳児から所得制限がある自治体がさらに二つです。これで四つです。そして、4歳児から所得制限がある自治体がさらに一つ。だから、22万円という一番お金がかかる時期に所得制限で医療費助成を受けていない御家庭がある自治体が、県内に五つあります。
 こういった自治体は、各地域、各圏域における中心的な地域なのです。ですから、雇用面等で利便性がよくて、若い家族が流入しているであろうと考えられる地域なのです。これから家族をつくっていこうとしている若い世代も入っている地域なのに、このように所得制限がある。ということは、こういった自治体に入ってきて、新しく家族をつくって子供をもうけよう、1人目、2人目、3人目ともうけようと、頑張って働けば働くほど、この医療費助成の対象にならない。医療費が最も高い年齢層のお子さんを育てている御家庭であれば、制限なくきちんと給付されるべきだと思っていますが、知事が音頭をとった現物給付も、そういった家庭は受けていないということなのですね。
 では、知事は、希望する理想の子供の数を持たない最大の理由は何であるか御存じでしょうか。
〇知事(達増拓也君) それは、ある特定の統計について尋ねているのか、それとも、大変申しわけないのですけれども、予定されていなかった質問で、趣旨をいまひとつ把握しかねましたので。
 県の調査によるそれに関する資料は県民計画等の関係に示されているところで、そのデータについては基本的には承知しているところです。
〇24番(ハクセル美穂子君) いわてで生み育てる支援本部の本部長は知事でいらっしゃいます。ぜひここは御存じでいてほしいと思います。これは平成16年の少子化社会白書の中にもありますし、令和3年11月29日付で公表されている内閣府のこども政策の推進に係る有識者会議の報告書にもあるのですけれども、理想の子供の数を持たない理由は、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからという調査結果がかなり前から出ています。
 これはマクロというか大きなレベルでの調査結果ですが、私の選挙区の滝沢市で民間の方が調べてくださった滝沢市と盛岡市の現役のママたちを対象とした調査の結果でも同じような理由、理想の子供の数を持たない理由は、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからと、そういう結果が出ています。マクロでもミクロでも、どのレベルにおいても、最大の理由がこれだったのです。
 平成16年の少子化社会白書の中にもあるということは、18年間ずっと同じ理由で子供が減っているという調査の結果が出ているということです。それにもかかわらず私は、いまだに医療費助成の所得制限を拡充してくれと言っているのはどういうことなのかとすごく感じながら、今、質問をしています。
 課題がこれだけ明らかになっているにもかかわらず、知事が本部長となって自然減対策のために設置された、いわてで生み育てる支援本部が来年度行おうとしている政策は、いわてで生み育てる県民運動なのです。このいわてで生み育てる県民運動が、子供の医療費助成制度の拡充よりも子育て支援として適切な政策であって、これで子供を産もうと考える人がふえるであろうと知事は多分お考えになったから予算案が出ていると思いますが、根拠をぜひ教えていただきたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 平成16年少子化社会対策白書、内閣府の文書において、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからというのが、理想の数の子供を持たない理由に挙げられていることは承知しております。そして、子供の医療費助成については、山形県のような突出した状況ではございませんが、全国の県と比較すると、岩手県としての支援は、平均と言いますか、あるいは中間と言いますか、岩手県としての支援はそれ以上のものにしてあるところであります。岩手県は全国最多の県立病院があり、県立病院とともに地域医療を守るというところに大変多くの予算が必要であるにもかかわらず、他の都道府県の中間水準以上の県の助成措置を市町村に行っているところであります。
 先ほどから県の水準が低いという指摘でありましたが、そこに市町村が上乗せすることで、県内のかなりの市町村においては、県の助成以上の水準の子供の医療費助成が行われているということで、国の制度がない中で、県と市町村が話し合いを重ね、調整しながら、今、岩手県ではそのような状況になっているところであります。
 そこから、さらに安心して子どもを生み育てられる岩手ということを押し進めるために、県に推進の本部を設けて、そして県民運動もさらに展開していこうという趣旨で、御指摘のとおりの経済的な要因で子育てが難しいということについては、ほかにも、産業振興でありますとか、家計の経済力を高めるようなさまざまな政策もあわせて、広く地方創生、ふるさと振興の中で取り組んでいき、そこにさらに政策をつけ加えていこうということであります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 私の質問は、県民運動が医療費助成制度よりも子供を産もうと考える人がふえるであろうとお考えになった知事の根拠ということで、それについては御答弁をいただいていない気がするので、もう一回御答弁いただきますけれども、他県に比べて水準が低いとかそういうお話は、私は今までも一切していません。
 県内を見て、所得制限があってこの医療費助成を受けられない市町村に住んでいる方がいる。県民の一人としてその方々を、市町村だけで大変なのであれば、県が救ってあげることを考えるべきではないかということを私はお話ししていますので、先ほどの答弁をお聞きすると、知事の考えていることがちょっと違うと思いました。他県と比べておりませんので、その点についてお話ししたいと思います。
 もし、先ほど御答弁されたように、県は十分やっているというのであれば、先ほど8市町村で要望を出されているとおっしゃいましたが、そちらの要望はどういう内容だったのですか。どのようにしてほしいという要望が県に来ていて、それについては十分だというような答弁をされていると思いますが、同じように医療費助成の拡充という要望が来ているのではないか。それについては、もう十分だから要らないというような回答をされているということでよろしいですか。
〇知事(達増拓也君) 市町村ごとにさまざま医療費助成の不足を感じていらっしゃる住民の方がいるというのを、その市町村がより多くの医療費助成ができるよう県が助成すべきという趣旨でおっしゃっているものと理解しておりましたが、それに対して岩手県は全国的に見ても中間以上の水準の支援は既に市町村にしているところであり、もちろんさらなる支援を求めてくる市町村は8市町村、先ほど紹介したようにありますが、そういった市町村と常に協議、やりとりなどをしながら、今は県の市町村への支援はこの水準、そして市町村が住民の皆さんに行う医療費助成はこの水準という中で取り組んでいるところであります。
 そして、それは子育て支援には一定の効果を出しているわけであって、それにさらにつけ加えて県民運動もしようということでありますから、医療費助成にかえて県民運動を展開しようという趣旨ではありません。さらに政策を重ねていき、県民運動もですし、また、先ほども指摘しましたが、地方創生、ふるさと振興の政策は、狭い出産、子育て支援、固有の政策のみならず、広く経済政策、雇用政策的なものも含めて進めていくものであるということを御指摘したわけです。
〇24番(ハクセル美穂子君) 私は、県民運動が今やっている医療費を削減してやられるものだと認識していませんし、それはそのとおり、今あるものにつけ加えて県民運動をやるような予算であるというのもわかっています。今県でやっている医療費助成には所得制限があって、0歳児から4歳児の一番医療費がかかるところで所得制限がかけられている人たちが県内にいるので、そこを県が支援していく方向でしてほしいということをお話ししています。十分というお話ですけれども、十分だったら8市町村も要望に来ないのではないかと思うのですけれどもいかがですか。
〇知事(達増拓也君) 今の県の支援が十分ということは言っていないわけでありまして、市町村とさまざま協議しながら現状まで県の支援を高めてきているところでありまして、これで十分とは思っていないので、国にも要望しているところであります。
 また、県内多くの市町村において所得制限なしで医療費助成が行われている中、所得制限のある市町があるわけですが、そこはそれぞれの市町の政策判断の中で今そのような水準の医療費助成をしているということで、無論それをよりふやしたいから、さらに県の支援を高めてくれという議論は要望などの形であるわけで、そこは常に協議、対話を進めているところです。
〇24番(ハクセル美穂子君) 市町村からの要望がありますね。そうなのですよ。だからこそ私は山形県の例を出しましたが、山形県は東北6県で岩手県よりも突出して裕福な県かというと、そういうわけではないのです。けれども、山形県では平成24年に所得制限を撤廃されているのです。子育て支援をする方向の経済的な負担軽減策として、10年前にやっています。入院も、まずは平成21年に入院を小学校卒業までにして、平成24年に所得制限を撤廃されて、平成25年には入院を中学校卒業まで県が上げて、平成26年には通院を9歳まで拡充しています。
 担当者の方にお聞きしました。大変ですよね、大変ですと。これ以上という要望も来ます。けれども、できるところから少しずつ進めていこうということで、やっとここまで来ていますというようなお話をお聞きしました。
 岩手県も、このように少しずつでも進めていくと。私は所得制限の撤廃と対象を高校卒業まで引き上げを今やれと言っているわけでもないですし、その財源がないのもわかっています。だからこそ、一番お金がかかる0歳から4歳までの所得制限を外して、経済的な負担感を減らしたことによって、子供がふえる可能性があるのではないですかという論点で話をしています。
 一生懸命働いている方々、納税している方々にも、子供を持っていただいたらきちんと支援が行く政策なのだという位置づけでやっていただきたいということをお話ししていますので、財政面からは簡単ではないことは理解しますが、ぜひ取り組みをさらに進めてほしいと思っています。
 最後に知事、お願いします。
〇知事(達増拓也君) 資料によりますと、県の所得制限の基準のとおりに行っている市町村が北上市と二戸市で、さらに持ち出しで所得制限を緩くしている市町が六つあり、盛岡市初め25の県内市町村は所得制限なしをその市町村の財政で実現しているという状況でありますので、市町村が所得制限なしにするかどうかは、まず、その市町村の経営判断、政策判断というところもあるわけです。ただ、もちろん県の基準以上に所得制限を緩和できていないところが、県にさらなる支援を求めて、それで所得制限をどんどん緩くしていこうという声があるのは承知しておりますので、そういったところは、先ほどから、総合的に検討していくということを答えているわけであります。
 例えば山形県の場合は、病院事業会計負担が岩手県より少ないという状況があり、まさに総合的な地域医療のあり方の中で、その地域の県、市町村がそれぞれにふさわしい役割を模索しながら果たしていく。子供の医療費助成を国が制度化しない中で、地域医療のあり方に応じて、県と市町村が工夫して何とかしているというところで、今、岩手県も行っているところであります。
〇24番(ハクセル美穂子君) そういうことを、いわてで生み育てる支援本部で、市町村も入れて、市町村長とともにみんなで考えていただきたいと思います。そのように御答弁されるのであれば、8市町村の要望は何だったのか、それはどこの市町村だったのかというのと照らし合わせながら、きちんと考えていただきたいと思います。少なくとも私の選挙区の市町では、何とか県でやってほしいというようなことを市町村要望で出しておりますので、その点をきちんと把握した上で御答弁いただきたいと思いますが、これについては終わります。
 次に、新型コロナウイルス感染症対策についてお伺いします。
 2回目の緊急事態宣言が発出される前に、知事は市町村長から地域の状況等についてお話をお聞きしましたでしょうか。お聞きしたのであれば、どのくらいの市町村長と事前に対話をされ、現場の把握に努められたのでしょうか、お伺いします。
〇知事(達増拓也君) 現在、県の新型コロナウイルス感染症対策本部員会議の同日または翌日には地方支部会議が開かれて、市町村と速やかに情報共有が図られる体制になっています。昨年12月15日の県本部員会議で岩手県新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針を改定し、岩手緊急事態宣言の発出と解除の基準を明記しましたが、その際、地方支部会議が開催されています。
 さらに、岩手緊急事態宣言の案についても事前に市町村に提供し、情報を共有した上で、1月23日に2回目の岩手緊急事態宣言を決定しました。
 県の基本的対処方針に基づいて岩手緊急事態宣言を行った後も、これまで2回の県本部員会議を開催し、随時、市町村と状況を共有しながら、新型コロナウイルス感染症対策に取り組んでおります。
 また、感染症対策の中核的な役割を担う保健所においても、保健所管内の市町村や関係団体と情報共有を図っております。
〇24番(ハクセル美穂子君) 地方支部会議というのは、県の本部会議が終わった後に、各広域振興局と市町村との現場の会議だと私はお聞きしていましたので、知事が直接市町村長とお話をして情報共有をする場ではないという私の認識ですが、そのとおりでよろしいのかというのが1点。
 あと、私は11月に会派の市町村要望調査でいろいろな市町村を訪れていますが、そのときには、市町村の首長たちが、感染者がいない地域または少ない地域にとって、一律に緊急事態宣言を急に出されると、経済活動がストップして大変だったということをおっしゃっていました。こういう市町村の首長の思いが、直接知事になかなか届けられないということもお話しされていました。
 少し質問が飛びますが、県内の市町村の首長の中には、知事にお会いして地域の課題についてざっぐばらんに話し合いたいという方も結構おられると私はお聞きするのですが、知事はそういう機会をつくっておられるのか、どうお考えなのか。今までも質問していますが、首長と知事とどんな関係にあるのが最善の形なのかという点についてお伺いします。
〇知事(達増拓也君) まず、地方支部会議の概要については、それぞれ広域振興局長から報告を受けるようにしております。
 そして、市町村長との話し合いの機会についてでありますが、県と市町村は対等な関係のもとで、それぞれの議会とともに住民に対して責任を負い、自律的な行政を行うものであります。しかし、事務の執行に当たっては、密接な連携が重要であります。
 このため、年間を通じて、市町村との意見交換や情報共有が行えるよう、今年度から、市町村長等との意見交換の場の実施方法を見直しました。
 また、医療、福祉や、農政、土木など、それぞれの分野を所管する各部局や広域振興局においても、情報交換や検討会の開催などを通じて、市町村との連携に努めております。
〇24番(ハクセル美穂子君) 新型コロナウイルス感染症に関しても、知事と市町村長が直接話し合う機会はまずないと、今おっしゃったと思います。広域振興局長がやっていると。
 今、県と市町村のトップミーティングの話もされたと思います。いつも1月に行っているものが令和3年5月12日に変更になって開催されていますが、こちらの会議では、内容を聞きましたら、毎回、県が決めたテーマに基づく意見交換会をされているということで、各自治体の首長が、自分の地域での悩み事や、一緒にしていかなくてはならないことなどを県に対してお話をする機会ではないということでした。私は、やはり市町村要望の中で知事が少しでも対応していただいて、知事と市町村長は対等な関係で、市町村の悩み事をきちんと聞く機会をつくっていくべきだと思っています。
 リーダーに求められるスキルを勉強しておりましたら、最も重要なのはコミュニケーション能力だと書いてありました。リーダーの考えを相手に伝え、伝えられた側の反応にリーダーがどう応えるのかというのは一般的によく言われていますが、それと同時に最も重要な一つが、相手が反応できる場や空気をリーダーがつくってあげることが大切だと書いてありました。
 知事は今、対等な関係だと言っている割には、そういう反応をさせてあげる場をつくっていないのではないかと思っています。市町村要望くらいしかないと思うので、こういったときに各市町村の首長と対話をする機会をきちんとつくっていただきたいと思うのですが、その点についてもう一度お願いします。
〇知事(達増拓也君) 県と市町村との連携は、組織と組織、組織的な相互理解が実現することが望ましいと考えますが、知事と市町村長の直接的な対話の機会も大事だと考えております。
 今年度開催した県・市町村トップミーティングや、県・市町村連携推進会議で、新型コロナウイルス感染症対策やデジタル社会の構築などの重要な施策について、県と市町村が情報共有するとともに、連携して取り組みを進めていくために意見交換を行いましたし、また市長会、町村会による要望などで直接訪問をいただく機会があるほか、県政懇談会等の県内出張の際に、私が市町村長から地域の実情や課題について話を伺う機会をつくれることもありまして、そういうことを通じて市町村長との対話を行っているところであります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 県のトップミーティングでは、33市町村が集まって2時間くらいなので、一人の首長の持ち時間は3分くらいだとお聞きしました。知事は、いろいろなところに行かれた際に市町村の方とお会いしているということでしたが、33市町村はやはり回れないようで、1年間に24くらいの市町村長としかお会いしていないという資料をいただきました。退任の挨拶とか就任の挨拶のときには知事のところに来てお話をされていると思いますが、そうではないときでも、大きな地域課題があるならば、知事とお話ができるような関係をつくっていただきたいと思いますので、その点についていま一度考えていただきたいと思います。これはお願いして、最後の質問に行きたいと思います。
 最後に、奥地等産業開発道路の利活用と周辺環境の整備についてお伺いしたいと思います。
 私が住む雫石町から岩手山を越えた八幡平市までをつなぐ予定であった一般県道雫石東八幡平線、通称奥産道と言われて皆さんに有名ですが、平成10年に工事の再開断念を表明してから、ことしで23年の月日がたっております。
 今、この奥産道から歩く県道がつくられていますが、ここを登って行き着くことができる三ツ石山という山が最近大変人気です。特に秋の紅葉シーズンは本当に人気で、定点観測で、ことしは1日に2、000人以上の登山客がこの三ツ石山に登っているとありました。このように奥産道周辺の自然環境は岩手県が誇るべきものであり、自然環境との共生と発展の鍵となる地域だと私は考えております。
 知事は、このすばらしい自然環境の中にある奥産道の利活用を今後どのように進めていくべきとお考えでしょうか。また、この地域の周辺環境の整備についても、どのように進めていくべきとお考えかお伺いします。
〇知事(達増拓也君) 先ほどの個別の市町村のテーマについて対話するということについては、質問通告では、市町村要望について詳細な答えをした後で先ほどの答弁をする予定にしておりましたので、市町村要望を組織的に行うことで、それぞれの市町村の事情については詳しく県として組織的に理解するようにしているということを、一種の答弁漏れだと思いますので、つけ加えさせていただきました。
 通称奥産道の利活用についてでありますが、県では、平成10年に網張から松川間の道路工事の再開を断念した後、利用に伴う人為的な影響を極力軽減し、自然環境の保全に努めることを基本的な考えとして、平成14年3月に一般県道雫石東八幡平線(網張〜松川間)活用計画を策定いたしました。
 この計画に基づいて、整備済みの道路を既存の登山道とつなげて、一連の登山ルートとして、平成19年6月から歩行者に開放しております。このルート上にある三ツ石山荘前での紅葉のピーク時における登山者数は、平成19年の約370人から、平成28年に約1、300人、令和3年には約2、200人と過去最高となっており、登山ルートとしての利用が定着してきていると考えております。
 県としては、この地域の高い自然性とすぐれた環境資源の保全に努めながら、引き続き登山道としての利活用を図ってまいります。
〇24番(ハクセル美穂子君) 多くの登山客が登ってくださるところになりましたので、周辺環境の整備も進めながら、例えば登山している方のトイレとかいろいろな課題がありますので、ぜひともそういうところを注視しながら、しっかりとした対策をしていただきたいと思います。
 これで私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   
〇議長(五日市王君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時48分 散 会

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