令和3年9月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇5番(千葉秀幸君) 希望いわての千葉秀幸です。
 受理番号第53号福祉灯油の全市町村での実施を求める請願及び受理番号第54号加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的支援制度創設を求める請願の請願項目1、加齢性難聴者の補聴器購入に対する岩手県独自の支援制度を創設することについて、反対の立場で討論をいたします。
 まず、福祉灯油の全市町村での実施を求める請願についてでありますが、令和3年9月1日現在、東北各県における福祉灯油助成事業を行っている県は山形県のみとなっております。その山形県においては、吉村山形県知事の公約において実現されたものであります。
 県内市町村における福祉灯油事業の実施予定では、実施すると回答した市町村はわずか2市町村であり、実施しないと回答した市町村は29市町村、今後検討予定と回答した市町村は2市町村と、福祉灯油事業の実施を求めている市町村はわずかであります。
 あわせて、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して、灯油購入が可能なクーポン券の活用状況を調査した際も、実際に灯油購入に活用されたかは不透明であるという声も上がっております。
 御承知のとおり、県財政は逼迫しております。仮にこの事業を実施すると、県全体を対象とした場合の事業費は、沿岸12市町村の過去3年の実績をもとに推計すると、9万3、421世帯掛ける5、000円掛ける2分の1で、およそ2億3、300万円余が一般財源からの負担となります。これは市町村にも同額の負担となります。市町村財政も厳しい中で、これまでの市町村要望においても福祉灯油助成の声は上がっておらず、全県での事業実施は現実的ではありません。新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって影響を受けている方々の支援策は、低所得者世帯への現金給付であり、生活困窮者支援が求められています。
 以上の理由から、福祉灯油の全市町村での実施を求める請願に賛同することはできません。
 次に、受理番号第54号加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的支援制度創設を求める請願の請願項目1、加齢性難聴者の補聴器購入に対する岩手県独自の支援体制を創設することについて、今回は、加齢性難聴者と特定された請願でありますが、難聴者は高齢者に限られたものではありません。したがって、若年層から高齢者へと幅広く補聴器が利用されており、全世代への支援策を打ち出すべきと考えます。
 あわせて、老化に関する長期縦断疫学研究により示された推計によると、本県の高齢者難聴者は22万7、000人の中で9割が軽度、中等度難聴に区分されていることから、約20万人程度がおられると見込まれております。したがって、補聴器の基準額を最低の5万600円と試算しても、5億円ほどの予算がかかります。
 国の動向を見てみると、難聴は認知症の危険因子の一つと挙げられている一方、その因果関係やメカニズム、また、補聴器の利用が認知症予防に効果があるかなどについては、現状、十分な調査結果が得られていないとも報告されております。都道府県の状況でも、令和2年度に岐阜県が全国を対象に行った調査において、助成を行う市町村に対する補助を実施していると回答があった都道府県が1カ所ありましたが、その1カ所も令和2年度で事業を終了し、全国でこの助成の支援策を打ち出しているところはありません。
 したがって、補聴器の支援策については、調査、議論を重ねることがより重要であり、加齢性難聴者の補聴器購入に対する岩手県独自の支援制度創設は時期尚早である、そういったことから反対をいたします。
 以上で反対討論を終わります。(拍手)
〇議長(五日市王君) 次に、高田一郎君。
   〔13番高田一郎君登壇〕

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