令和3年9月定例会 第17回岩手県議会定例会会議録

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〇43番(伊藤勢至君) 希望いわての伊藤勢至です。
 本年は、太平洋戦争で連合国のポツダム宣言を受諾し、昭和20年8月15日、天皇陛下が国民に語りかける玉音放送によって無条件降伏を宣言してから76年となりました。
 私は、太平洋戦争で犠牲となった240万人とも言われる全ての方々の国を思う心、家族を思う心を決して冒涜するものではありません。今を生かしていただいている者として、先人のとうとい犠牲のもとにあることを忘れてはいけないと思っております。国際社会の中にあって、日本の進むべき方向を二度と誤ってはいけないとの思いで質問をいたします。
 さて、日本国は、徳川慶喜の大政奉還により明治となり、260年にわたった鎖国を解きます。新政府の幹部たちは欧州やアメリカといった先進国の視察に出ていき、このままの日本ではいずれ外国列強にのみ込まれてしまうという危機感を持ち、富国強兵を国是として全体の力量アップに努めることとなります。
 その後、日清戦争、日露戦争に勝利し、明治維新後わずか70年で、世界で最強の東洋艦隊を旅順港で、北欧で世界ににらみと存在感を示していたバルチック艦隊を日本海で迎え撃ち、いずれもせん滅する大勝利を得ました。このころまでは、陸軍も海軍も軍事指導者の幹部が情報を共有し、戦闘の内容について確認し合っていました。
 その後、大正、昭和初期に、天皇を現人神に祭り上げ、陸軍は、国土の拡張と資源を求めてアジアと東南アジアへの南下作戦を、海軍は、太平洋を守るためにアメリカを仮想敵国と定め準備を進めます。そして、運命の昭和16年12月8日、真珠湾攻撃が始まりました。
 この際の致命的な失敗は宣戦布告のおくれでありました。当時の駐米大使野村吉三郎が、米国のハル国務長官に最後通告を手渡したのは、ワシントン時間の12月7日午後2時30分でした。ハル国務長官は激怒しました。その1時間前には、既に真珠湾攻撃が始まっていたからであります。アメリカ国民は、だまし討ちの日本、リメンバー・パールハーバーを合い言葉に団結しました。資源と工業力豊かな国を本気で怒らせてしまったのであります。
 それ以後の戦いは省略しますが、忘れてはいけないことがあります。昭和18年10月21日に、明治神宮外苑競技場、現在は旧国立競技場跡地で出陣学徒壮行会が行われ、東京帝国大学、早稲田大学など東京都近県の大学、専門学校など77校から出陣学徒2万5、000人が集まり、東京都内の女子高生や後輩が五、六万人集まったスタンドの前を、雨の中、泥水の中を黙々と行進したのであります。このほか、大阪府、京都府、北海道など各地でこの種の壮行会が行われ、総勢で10万人の学生が教室から戦場に赴いたと推計されております。戦後の復興を担うべき若人を10万人も失ったのです。
 昨年12月、戦艦武蔵の最後の乗組員が亡くなりました。91歳でした。ということは、当時15歳で少年兵として乗り組んでいたことになります。戦艦大和が沖縄に特攻出撃する前夜、少年兵と老年兵を全て降艦させ出撃した伊藤整一艦長には敬意を表します。かくして広島と長崎に世界最初の原子爆弾が投下されるに至り、昭和20年8月15日の玉音放送となりました。
 太平洋戦争の反省点は、日露戦争、特に日本海海戦の大勝利をいつまでも引きずり続けたこと、真珠湾攻撃の主役は飛行機でありましたが、それ以後も大艦巨砲主義が飛行機にとってかわることはありませんでした。
 真珠湾攻撃の少し前に、米軍は日本の暗号電報の解読に成功していました。日本軍の意図するところは全て見え見えだったのです。通信はもとよりレーダーの開発もおくれていました。日本の潜水艦は、毎朝自艦の位置を大本営に無線で送っていた結果、米軍のレーダーで感知され、飛行機で爆撃されました。戦艦大和や武蔵、そして零戦をつくりながら、頭の中は明治時代でした。敵を知り己を知れば百戦危うからずの全く逆を行っていたと言ってもいいのです。
 こういった歴史を教訓として、これからの岩手県の若い人たちが世界に目を向け、新しいことにどんどんチャレンジし、資源のない日本としては頭脳で勝っていくための外交こそが必要と考えますが、かつて外務省で外交官として勤務された経験のある知事のお考えを伺いたいと思います。
 次に、本県の水産業振興について伺います。
 まずは、秋サケについて、先人の研究の取り組みにより、平成5年4万9、328トン、平成6年3万5、867トン、平成7年4万3、574トン、そして平成8年、今となれば過去最高の7万3、526トンの水揚げがあり、関係者、水産業界挙げて喜び合ったものでした。ところが、平成9年以降は長期低落傾向が続いています。
 この間、県及び関係者の方々が手をこまねいていたわけではありません。卵の確保のため各漁協間の融通、稚魚の放流時期の研究、川の温度に適応可能な卵の開発、その他にも、我々素人が知らない調査研究もやられていることでしょう。御苦労さまですと申し上げたいと思います。
 しかし、現在本県で行われているのは、全て人工ふ化であります。平成8年の7万3、526トンの夢よもう一度の気持ちは十分にわかります。しかし、25年も努力して、残念ながら結果を出せていない今、これまでの努力は継続しながら、新たな分野も加味した研究も取り入れたらいかがでしょうか。
 そこで提案をいたします。新潟県村上市といえば、日本海有数のサケのまちとして有名であります。村上市は、平安時代から朝廷にサケを献上していた記録が残っているほど、長らくサケとともに生きてきたまち。伝統漁法を引き継ぎながらも、世界初の自然ふ化増殖を成功させたという記事を見ました。
 現在、本県沿岸の19カ所のふ化場は、いずれも河口から二、三キロメートルのところに位置しています。中津川に上ってくるサケが秋の風物詩となっていますが、中津川に放流された稚魚は北上川に入り、宮城県石巻市まで200キロメートルを流れ下り、母なる川の記憶を脳裏にインプットした上で太平洋に出ていくのです。わずか二、三キロメートルの川の記憶しかない稚魚が、母なる川に戻ってこられるのか。
 まずは村上市の世界初の自然ふ化増殖の成功に学ぶこと、そして、本県の川どめを設置していない水制工の少ない条件のよい河川を何カ所か選び出し、自然ふ化増殖に取り組むべきではないでしょうか。県の見解を伺います。
 次に、磯焼けと鉄理論について伺います。
 本年4月14日、田村勝則委員長のもと、環境問題・地球温暖化対策調査特別委員会が開かれました。テーマは鉄理論とサンライズ花海道による三陸復興というもので、この講演会の内容を含めて考えれば、現在の海で起こっている磯焼けについて、海水の中に含まれている鉄分が不足しているために、例えば昆布の場合、胞子によって増殖していくが、鉄分が不足している海水の中では成熟しづらくなるため昆布が減っていく、それが磯焼けの大きな要因である。したがって、海水に鉄分を補ってやることで昆布が成長でき、繁茂するようになる。ウニの餌である昆布がふえれば、しっかりと身の充実したウニがとれるようになるというものでありました。
 私は、これは今の沿岸の救世主になり得るかもしれないと思い、この説明資料を漁業関係者に配布いたしました。その際、ある漁協の組合長から、今、私たちの一番の心配は、まさに磯焼けの問題であります。アワビやウニを蓄養して放流しても、肝心の餌がないのでは何ともなりませんと言われました。さらに、北海道のある漁協が、東京大学の山本光夫当時准教授の鉄理論に賛同し、連携して昆布をふやす取り組みを進めてきて着実に成果を上げているとも伺いました。
 現在、県の取り組みの一つとして沿岸広域振興局水産部大船渡水産振興センターが、綾里漁協に委託し、漁港内にある蓄養地に発光ダイオードと日光で24時間光を当てる長日処理により、ウニの品質低下につながる放精、放卵を抑制することに成功。天然の生ウニが流通していない9月の需要期に出荷できることを実証したということが新聞に掲載されておりました。県も相当頑張っているなと思い、大いに期待したいと思うところであります。
 しかし、岩手方式、岩手オリジナルに拘泥する余りに、排他的になって沿岸の窮状を救うことがおくれることがあってはなりません。可能性のあるものは何でも試し、取捨選択の大きな心が必要です。
   〔議長退席、副議長着席〕
 そこで伺いますが、この際、鉄理論に基づく実証実験に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、本年3月8日付の地元新聞に、沿岸の漁業関係者や住民にとって大変ショッキングな記事が載りました。アワビ密漁1トン超か。震災直後から犯行、収益は1、000万円を超えるというものです。
 本県のアワビは、近年磯焼けが続き、水揚げ数量は10年前の305トンから昨年度は97トンに低迷しており、県内では、県栽培漁業協会、田老町漁協、重茂漁協、広田湾漁協がアワビ種苗を生産し、各漁協が放流するなど、資源を守る努力をしております。漁業者は、資源保護の観点から殻長9センチメートルを超えるアワビを採捕しているにもかかわらず、今回は9センチメートル以下のアワビも多く密漁されたのであります。アワビは生活費の一部、漁獲量の減少とともに生活費を切り詰めていたので怒り心頭との漁家の切実な声に、同じ沿岸の住民として怒りを禁じ得ません。しかも、逮捕された容疑者が本県の人間ということで、宮沢賢治もさぞ嘆いていることと思います。
 本県では、これらの問題に対応するため、漁業取締船はやちねと岩鷲を配備してきたところです。老朽化が進んでいたはやちねは平成26年、岩鷲は本年、代船新造となりました。性能はほぼ同等で66トン、速力48ノット、時速換算で約90キロメートル、赤外線監視装置、多機能型レーダーを備えた最新鋭の取締船となりました。憎むべき密漁の取り締まり、抑止力発揮に大いに期待するところであります。このほか、県が委嘱した漁業監視員約250人を各漁協に配置しているとのことであります。
 しかし、巧妙化する密漁に対応するためには、取締船監視員による取り締まりや監視だけではなく、県警との密接な連携が必要であります。沿岸漁民の生活を守るため、県警としてどのような対応を考えているのか、警察本部長に伺います。
 また、密漁されたアワビの販路は、沿岸北部の場合は人口23万人の八戸圏、沿岸南部の場合は人口100万人の仙台圏と言われ、人口55万人の盛岡広域圏を考えると宮古市も危ないと思っており、それが反社会勢力の資金源となっているのではないかとの声もあります。これは絶対に阻止しなければなりません。県警察本部としてどのように取り組まれるか、お考えをあわせてお伺いいたします。
 次に、漁業取締船の配置について伺います。現在、はやちね、岩鷲とも釜石港を母港として配備されております。しかし、本県の海岸線は700キロメートルで、釜石から海上最短コースを走行すれば広田湾まで70キロメートル、約1時間で急行できますが、県北の洋野町までは150キロメートル、べたなぎのときでも2時間かかります。これでは、本県沿岸にひとしく抑止力の恩恵が行き渡っているとは言えないと思います。
 そこで、取締船2隻のうち1隻を久慈港に配備することを提案いたします。もちろん母港とするための整備、乗組員の諸般の事情もあることは承知しておりますので、年次計画を立て、それに沿って沿岸漁民をひとしく守るための取締船の配備を考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、第2次さわやか岩手イメージアップ大作戦について提案いたします。
 県では、平成6年度及び平成7年度にさわやか岩手イメージアップ大作戦を展開しました。目的は、主要観光地の公衆トイレの水洗化等の環境整備を推進し、観光地のイメージアップを図り、観光客の誘致拡大に資することでありました。2カ年で主要観光地の公衆トイレ119カ所について水洗化等環境整備を図り、あわせて市町村所有の既設トイレを県事業で水洗化いたしました。事業費は、平成6年度23億2、400万円余、平成7年度22億6、800万円余、合計約46億円、まさに大クリーンヒットの政策であり、しかも県の単独事業としての整備ということを伺い、当時の工藤知事の御英断に心から敬意を表するものであります。
 しかし、その後25年が経過し、人々の生活様式が変化してまいりました。日本人としての基本である正座の機会が失われつつあり、高齢化の時代、足腰が弱くなり、しゃがむ、立つの動作がきつくなったという声をよく聞くようになりました。現在、若い人たちが建てる住宅のトイレは100%洋式便器であります。25年前のイメージアップからさらにグレードアップが必要です。
 現在は未曾有の困難とも言えるコロナ禍ですが、必ずや収束のときが来ると信じています。そのとき、岩手県を目指す人が必ずふえると思います。洋式便器、温水洗浄便座、オストメイト用設備を有するバリアフリートイレが県内外の方々の要望と思います。観光施設はもとより、全ての県立施設のトイレをフルモデルチェンジすべきと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、ふるさと回帰運動について、提案を含めて質問いたします。
 岩手県の人口は、長年の都市への一極集中のあおりを受けて漸減が続いております。そこに東日本大震災津波により多大の犠牲者を出しました。一旦身内を頼って内陸に避難した方々の中で仕事を見つけた方たちは、沿岸に帰ってこない状況にあり、沿岸部の人口減少に、ひいては岩手県の人口減に手をこまねいてはいられません。
 一方、今回のコロナ禍で世の中が大きく変わろうとしています。インターネットの発達、普及により、会社に出勤しなくてもリモートで仕事をすることが可能となり、これは地球上の文明の大転換期とも言える事象であります。
 このような中、一極集中の脆弱さを身をもって体験した若者がふえて、ライフワークを見直す動きが出てきております。インターネットの活用で日本全国どこでも働いて収入を得ることができるのであれば、大切な家族と安全・安心な場所で暮らしたい、大自然の中に溶け込んで機械的な暮らしから脱却したい、春夏秋冬の日本の四季を楽しみたい、そういう若い人たちが確実にふえています。
 2019年4月17日の県政調査会で認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの高橋理事長から、100万人のふるさと回帰をテーマに講演をいただきました。その講演資料の中の移住地希望ランキングでは、本県の順位は、2009年は14位、2010年4位、2011年5位だったものが、2012年から2018年までは20位以内に入っていません。もちろん努力して頑張っていることと思いますが、移住を希望する若者のニーズが変わってきたのなら、アプローチも変えていかなければなりません。
 そこで提案をいたします。移住希望者に現地に仮住まいをしてもらい、その場として古民家等を若干のリニューアルをして提供しているようでありますが、絶対に気をつけなければならないことは、トイレの問題であります。水洗トイレでなければ子供が100%受け入れません。合併浄化槽を設置し、洋式の温水洗浄便座のトイレが必要です。
 二つ目は凍結の問題です。水回りが凍ることがないような配慮が必要です。
 三つ目は、火の取り扱いについて教えてあげることです。五右衛門風呂は若い人に人気ですが、取り灰の始末をないがしろにすれば、家族を危険にさらすばかりではなく地域の一大事になりかねません。テレビでポツンと一軒家という番組が人気ですが、まずはガス、灯油等が配達可能な集落の一員として温かく迎えてあげることから始めるべきと思います。
 岩手県の人は寡黙でとっつきにくいと言われますが、一旦胸襟を開けば、本当にぬくもりを感じる人々と言われます。都会の喧騒の中で生活してきた若者にとって、こんなにも心の温かい人々がいたのかとカルチャーショックを受けることでしょう。ふるさと振興の観点からこうした環境整備が必要と考えますが、県の取り組みを伺います。
 次に、日本の皇室について、国民の関心が高まっている現在、改めて伺います。
 2019年3月発刊の天皇という世界の奇跡を持つ日本、著者、ケント・ギルバートという本を手にする機会がありました。彼は、米国アイダホ州で生まれ、プリガムヤング大学に1970年入学、1980年、経営学修士号、法務博士号を取得した後、来日し、弁護士業と並行して英会話学校ケント・ギルバート外語学院を経営、タレントとしてもテレビ出演。2015年、公益財団法人アパ日本再興財団による第8回真の近現代史観懸賞論文の最優秀藤誠志賞を受賞しました。日本人の国民性が外交・国防に及ぼす悪影響についてと題した論文では、日本人の誠実さなどを、世界標準を圧倒するレベルと評価する一方、その国民性が軍事を含む外交の分野では障害になるとしたとあります。
 また、日本人では気づかない視点からの論文があります。抜粋すると、日本の建国記念日は2月11日です。これは初代天皇である神武天皇の即位日としてグレゴリオ暦に換算したものです。神武天皇の即位日を建国記念の日とする日本ですから、当然、天皇とは日本の歴史を象徴する存在です。
 事実、平成の御世までの歴代天皇は125代を数え、平成が終わる2019年の日本は、建国から2679年目を迎えています。もちろん神武天皇を含めて10代から25代ぐらいまでの天皇は、実在しなかったという学説もあります。それでも、確実に存在したとされる継体天皇―在位507年から531年まで―から計算すれば、少なくても皇室は1500年以上も継続していることになります。現存する世界の王室の中で、日本の皇室は最も長い歴史を持っています。
 現存する国々の中で、日本より古い国は地球上のどこにもないのです。ほかの国は、何度も体制や王朝が滅んでは、再び興るということを繰り返してきました。5000年の歴史を誇ると自慢する中国にしても、王朝の交代が何度も繰り返されました。その王朝交代は易姓革命と呼ばれております。元や清などの王朝は、中国人の大半を占める漢民族ではなく、モンゴルや女真族といった異民族が主宰した王朝でした。
 また、ヨーロッパの王室、特にイギリスでは、男系継承者が断絶したときに、別の家を立てていた兄弟への継承や女系継承が認められています。そのため、血縁は続いても王室の家名が変わり、王朝名が変わることが繰り返されてきました。例えば、現在のイギリス王朝の血筋は、1066年にイングランド王国を征服したノルマンディー公のギヨーム2世のノルマン朝までさかのぼることができるとされており、1000年近い歴史を持つとされています。これ以降、ドイツのハノーヴァー家から国王を迎えたこともありました。
 一方、日本の皇室は、皇位継承者を男系男子の血筋のみに限定してきたため、その血統としての純粋性も家としての連続性も厳格に守られてきました。この点はイギリス王室とは全く異なります。
 こうした純粋性を保ちながら、記紀に従えば約2700年、ちまたの学説に従っても最低1500年以上も続いてきた皇室は、世界で唯一無二の存在と言っても決して過言ではないのですとありました。加えて、過去には10代8人の女性天皇もおられましたが、いずれも父方に天皇の血筋を引く男系でありました。
 明治天皇は日露戦争に反対でありました。開戦を決定する御前会議で、四方の海皆はらからと思ふ世に なぞ波風のたちさわぐらむと御自身の心境を吐露されたのでありました。
 昭和天皇も太平洋戦争に反対であり、開戦決定の御前会議で、明治天皇が詠まれた和歌を2度も口にされたのです。
 昭和20年8月15日、無条件降伏した日本にGHQが進駐してきました。昭和天皇は9月27日、GHQを訪れ、連合軍最高司令官ダグラス・マッカーサー大将と面会しました。そして、私は、国民が戦争遂行に当たって、政治、軍事両面で行った全ての決定と行動に対する全責任を負う者として、私自身をあなたの代表する諸国の裁決に委ねるためにお訪ねしたと発言されました。お言葉を聞いたマッカーサーは、私は大きい感動に揺さぶられました。死を伴うほどの責任、それも私の知り尽くしている諸事実に照らして、明らかに天皇に帰すべきではない責任を引き受けようとする。この勇気に満ちた態度は、私の骨の髄までも揺り動かした。私自身はその瞬間、私の前にいる天皇が、個人の資格においても日本の最上の紳士であることを感じ取ったのであるというものでありました。
 私は、日本国の象徴たる天皇のもとに生かされている一国民として、天皇家の御安寧を心よりお祈り申し上げております。知事の御感想があれば承りたいと思います。
 以上で質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 伊藤勢至議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、歴史を教訓とした日本の外交についてでありますが、議員御指摘のとおり、国の平和と繁栄のためには、他の国々のことをよく知ることが大事であり、岩手の若い人たちにも、世界に目を向け、新しいことに大いに関心を持ち、国際交流や国境を越えた活動にどんどんチャレンジしてほしいと考えております。
 第二次世界大戦の悲惨な経験と全面核戦争の恐怖があった冷戦の克服から、人類は多くを学びました。今、世界の国々と国以外の主体が共通の目標に向かうSDGs―持続可能な開発目標も浸透し、岩手県内でも盛んに取り組まれています。
 地方からも世界全体の平和と繁栄、そして幸福の構築に参加できる時代になっていますので、県民の皆さんも大いに学んでいただき、そして、奮って行動していただきたいと考えます。
 次に、県立施設におけるトイレ改修についてでありますが、県では、平成19年に制定したひとにやさしいまちづくり条例に定める整備基準に基づき、県立施設のトイレについては、全ての人が安全かつ円滑に利用できるよう整備を行っています。
 具体的には、県立施設について、障がい者団体の意見をお聞きしながら、順次、洋式トイレや多目的トイレへの改修を行ってきており、特に、令和3年度は、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、県営運動公園や県営スケート場等のトイレ改修を進めているところであります。
 今後とも、厳しい財政状況ではありますが、施設の利用形態や老朽化の状況等を踏まえながら、全ての人が安全かつ円滑に利用できる県立施設となるよう改修等を進めてまいります。
 次に、日本の天皇制についてでありますが、戦後、日本国憲法のもとでの象徴天皇制を昭和、平成、令和と代々の天皇陛下が、国民とともに発展させてこられました。
 災害で犠牲になった人たちや被災した人たち、難病や障がいで困難な立場にある人たちに寄り添うこと、戦没者を慰霊し、戦地を訪問され平和を祈られてきたこと、そして、日本全国くまなく訪問されることなどをしてこられました。
 岩手県にも、全国植樹祭や全国豊かな海づくり大会、国民体育大会などで御来県され、県内各地で多くの県民と親しく接していただきました。
 また、東日本大震災津波の発災以降、沿岸被災地のお見舞いや復興状況の御視察の際には、温かいお言葉や励ましのお言葉を賜り、被災された方々のみならず、広く県民が大いに感じ入ることとなりました。
 このような国民とともに歩む象徴天皇制がさらに発展するよう、皇室の弥栄を祈念申し上げるものであります。
 その他のお尋ねにつきましては、関係部長から答弁させますので、御了承をお願いします。
   〔農林水産部長佐藤隆浩君登壇〕
〇農林水産部長(佐藤隆浩君) まず、秋サケについてでありますが、田野畑村の松前川や宮古市重茂の音部川では、毎年サケの自然遡上があり、自然ふ化による再生産が行われていることが、国の研究機関による調査で確認されております。
 自然ふ化は、国の研究結果によると、人工ふ化放流に比べ、卵から稚魚までの生き残りが3割程度にとどまるとされており、河川に遡上するサケが大幅に減少している現下の状況においては、まずは、人工ふ化放流によりサケ資源の早期回復を図ることが重要と考えています。
 このため、近年のサケの不漁の要因と考えられる外洋環境の変化に伴う春先の海水温の上昇の影響を極力回避するため、来春の稚魚の放流時期を早めることとしているほか、生残率が高いとされる大型で遊泳力の高い稚魚を生産することなどにより、サケ資源の早期回復に全力を挙げて取り組んでいきます。
 議員御提案のサケの自然ふ化は、生物の遺伝的多様性の確保に有効と言われており、県としては、現在、県内の河川で行われている国の調査研究の結果などを踏まえ、関係機関とも連携を図りながら、自然ふ化を取り入れた資源造成の有効性や実現の可能性について検討してまいります。
 次に、磯焼け対策についてでありますが、県では、地元漁協と連携し、昨年12月から、磯焼けの原因と考えられる過剰なウニを間引き、そのウニの有効活用を図る実証試験に取り組んでいるほか、本年3月に策定した岩手県藻場保全・創造方針に基づき、本年度から新たに、昆布等の海藻類が繁茂しやすい環境を整備するためのブロック投入などを試験的に行うこととしています。
 また、これらの取り組みに加えて、北海道等で行われている鉄分の供給による藻場の回復事例を参考とし、宮古市重茂地区など8カ所において、本県海域における海水中の鉄分濃度を把握する調査を開始したところであります。
 今後、この調査結果を踏まえ、海水中に鉄分を供給する実証試験の実施について検討を進めるほか、昆布の養殖技術を応用した海中林の設置や昆布の胞子の放流など、さまざまな方法も取り入れながら、より効果的に藻場の再生が図られるよう、市町村や漁業関係団体と一丸となって取り組んでいきます。
 次に、漁業取締船の配置についてでありますが、本県では、東日本大震災津波後、立て続けに漁業者の復興への思いを踏みにじるようなアワビの大量密漁事件が発生しており、監視、取り締まり体制の維持、強化が重要と考えているところであります。
 このため県では、漁業取締船2隻を運航するに当たり、県警察本部から漁業取締事務所へ現職警察官の派遣を受け、県警察本部との連携を強化するとともに、隣県や国の取り締まり機関、行政機関のほか、監視船を有する県内漁協との連絡会議を通じた緊密な情報交換に努めるなど、県警察本部の警備船2隻や海上保安部の巡視船4隻、漁協の監視船18隻と連携し、緊密かつ広域的な監視、取り締まり体制を構築しているところです。
 県北地域では、平成17年度以降、ウニ、アワビの漁期に合わせ久慈臨時事務所を開設し、漁業取締船による監視等を実施してきたところでありますが、漁業取締船1隻を常時久慈港に配備することについては、専用岸壁や専用の給電、給水施設の確保、職員体制の見直し等、中長期的な観点から検討が必要な課題があることから、今回の御提案も含め、すきのない最適な監視、取り締まり体制を常に考え、巧妙化する密漁に対応できる体制の構築に努めてまいります。
   〔ふるさと振興部長熊谷泰樹君登壇〕
〇ふるさと振興部長(熊谷泰樹君) ふるさと回帰運動についてでありますが、本県へのUターンや移住の一層の促進に当たっては、議員御指摘のとおり、安心して生活できる環境の整備、受け入れに当たっての地域での支援とそれらの情報発信が重要と認識しております。
 県では、安心して生活できる環境の整備として、今年度からライフステージに応じた若者への住宅支援に取り組んでおり、例えば、空き家バンクに登録された空き家の取得費の一部を市町村とともに支援する、県産材を使用した住宅購入やリフォームの支援、若者を対象とする自治会や町内会活動への参加などを条件としたWi−Fi環境がある県営住宅の提供などを行っておりますほか、市町村が行う移住者を対象とした水回りを含めた空き家の改修工事に対する補助事業への支援を行っているところであります。
 また、他の都道府県からの移住、定住を促進するため、各市町村に移住コーディネーターを配置し、地域のサポート体制を充実するとともに、東京のふるさと回帰支援センター内に設置している県の移住相談窓口等と連携した取り組みを実施しております。
 今後も、こうした取り組みの充実とともに、移住定住ポータルサイトやSNS、移住相談会等を通じた情報発信により、新型コロナウイルス感染症を契機とした地域への関心を取り込み、岩手に関心を寄せる方々をふやし、本県へのUターンや移住促進につなげていきたいと考えております。
   〔警察本部長大濱健志君登壇〕
〇警察本部長(大濱健志君) まず、密漁の取り締まりについてでありますが、議員御指摘のアワビ密漁事件につきましては、県漁業取締事務所からの情報提供を受け捜査したものでございまして、本年3月に県内居住の男性2名を逮捕しております。
 なお、昨年12月に密漁対策のための厳罰化などを盛り込んだ改正漁業法が施行されましたが、この事件につきましては、この改正漁業法を適用しての全国警察初の逮捕となります。
 県警察本部といたしましては、大船渡港、宮古港に配備されております県警察本部保有の2隻の警備船及び沿岸を管轄する警察署による取り締まりや、目立つパトロール活動を積極的に実施しているところであり、県漁業取締事務所とも連携を図りつつ、今後も取り締まりを徹底してまいります。
 また、日夜活動なさっている漁業監視員の皆様との連携につきましても、密漁事件取り締まりには欠かせないものと認識しておりますので、各種活動時における警察との情報交換のほか、漁港周辺などにおいて不審者や不審車両、不審船舶を目撃した際には、警察に対しまして情報提供いただくなど、より緊密な連携を図りながら徹底した密漁対策を講じてまいります。
 次に、密漁アワビの販路についてでありますが、アワビ漁業を営まれている漁業者及び漁業関係者の皆様が、多くのお金や労力を出し合いながら手塩にかけて育て上げたアワビを、根こそぎ密漁する密漁者及びその密漁品を売買する業者について、決して許されるべきものではありません。
 これまでも、アワビ密漁事件を捜査した際には、あらゆる刑罰法令を適用し、密漁品の販売先まで捜査をし、買い受け業者を検挙した事例もございます。昨年12月施行された改正漁業法により、密漁品と知り譲り受けや運搬などした者に対しても、密漁者と同様の罰則が科されることとなりました。
 今後とも、この改正法の適用も視野に入れつつ、買い受け業者への捜査を徹底し、あわせて暴力団などの資金源も封圧してまいります。
 県警察本部といたしましては、密漁事件の被害から漁業者及び漁業関係者の生活を守るために、今後もあらゆる刑罰法令を適用し、密漁事件の徹底した取り締まりを推進してまいります。
   
〇副議長(小野共君) この際、暫時休憩いたします。
   午後3時45分 休 憩
   
出席議員(47名)
1  番 千 田 美津子 君
3  番 小 林 正 信 君
4  番 千 葉   盛 君
5  番 千 葉 秀 幸 君
6  番 岩 城   元 君
7  番 高橋 こうすけ 君
8  番 米 内 紘 正 君
9  番 武 田   哲 君
10  番 高 橋 穏 至 君
11  番 山 下 正 勝 君
12  番 千 葉 絢 子 君
13  番 高 田 一 郎 君
14  番 田 村 勝 則 君
15  番 佐々木 朋 和 君
16  番 菅野 ひろのり 君
17  番 柳 村   一 君
18  番 佐 藤 ケイ子 君
19  番 岩 渕   誠 君
20  番 名須川   晋 君
21  番 佐々木 宣 和 君
22  番 臼 澤   勉 君
23  番 川 村 伸 浩 君
24  番 ハクセル美穂子 君
25  番 木 村 幸 弘 君
26  番 吉 田 敬 子 君
27  番 高 橋 但 馬 君
28  番 小 野   共 君
29  番 軽 石 義 則 君
30  番 郷右近   浩 君
31  番 小 西 和 子 君
32  番 高 橋 はじめ 君
33  番 神 崎 浩 之 君
34  番 城内 よしひこ 君
35  番 佐々木 茂 光 君
36  番 佐々木   努 君
37  番 斉 藤   信 君
38  番 中 平   均 君
39  番 工 藤 大 輔 君
40  番 五日市   王 君
41  番 関 根 敏 伸 君
42  番 佐々木 順 一 君
43  番 伊 藤 勢 至 君
44  番 岩 崎 友 一 君
45  番 工 藤 勝 子 君
46  番 千 葉   伝 君
47  番 工 藤 勝 博 君
48  番 飯 澤   匡 君
欠席議員(1名)
2  番 上 原 康 樹 君
   
説明のため出席した者
休憩前に同じ
   
職務のため議場に出席した事務局職員
休憩前に同じ
午後4時8分再開
〇副議長(小野共君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
 日程第3、一般質問を継続いたします。臼澤勉君。
   〔22番臼澤勉君登壇〕(拍手)

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