令和2年9月定例会 第10回岩手県議会定例会会議録

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〇35番(佐々木茂光君) 自由民主党の佐々木茂光でございます。ただいま御提案ありました発議案第1号核兵器禁止条約の批准を求める意見書について、反対の立場で討論をいたします。
 この問題は、現実の問題としていかに捉えていくかが大変重要な項目であります。この中で、そもそも我々自由民主党が、決して核兵器廃絶、核兵器のない平和な世界に対し反対をするものでないことを申し添えたいと思います。
 ただ現実的に、核兵器をこの世界からなくすためにはどのような方法をとるべきかということを考えたときに、現時点において、核兵器禁止条約への批准という行為は、核兵器の廃絶には一切寄与しない行為であると考えるわけであります。
 現時点において、核兵器禁止条約には、全ての核保有国が反対しており、韓国やドイツなどNATO―北大西洋条約機構諸国といった核兵器の脅威にさらされている非核兵器国からも支持を得られておりません。
 一方で、現在、批准している国のほとんどは、中南米やアフリカなどの核兵器の脅威に直接さらされていない国であります。核廃絶、核軍縮をめぐっては、このように核兵器国と非核兵器国との間で、意見が対立している状況であります。
 そして、日本国がこの核兵器禁止条約に安易に批准するということは、核兵器国と非核兵器国の隔たりを一層深めることとなり、核被爆国として求められる核兵器国と非核兵器国の橋渡しとしての役割を失うことになります。それは、核廃絶に向けた現実的な取り組みとはかけ離れております。
 2017年に、隣国である北朝鮮は、日本列島4島を核爆弾で海に沈めなければならないとの声明を発表いたしました。戦後、これまでの日本の安全を脅かす言動をとったのは、北朝鮮が唯一かつ初めてであります。日本は、現実問題として、核兵器による危機にさらされているのであります。
 北朝鮮のような実際に核兵器の使用をほのめかす相手に対し、非核三原則を掲げる日本は、核抑止力を持たず、国民の生命と財産を守るすべがありません。その中で、国民の生命と財産を守るには、日米同盟のもとで、核兵器を保有するアメリカの核抑止力に頼る以外はないのが現実であります。それすらも破棄し、核兵器禁止条約によって、直ちに核兵器を違法化することは、日本国民の生命と財産を守る責任を放棄する余りにも無責任な行為であります。
 国民の生命と財産を守る責任を持つ政府は、現実的な安全保障上の脅威に対処し、自国の国民を守りながら、唯一の被爆国として地道に現実的に核軍縮を進めていかなければなりません。
 当意見書には、日本は、米国の核の傘や抑止力に依存するのではなく、核兵器廃絶に向けた強いイニシアチブを発揮すると記載されていますが、現時点において、アメリカの核抑止力を拒絶した場合、どのように近隣諸国の核攻撃から自国民を守るのかという、具体的な方法論が全く記載されておりません。これは、日本国民の生命と財産を守る責任を、全くもって放棄した内容の意見書であります。
 アメリカ、ロシア、中国などが保有する約1万6、000発の核兵器を実際に削減していくこと、そして、再び生産されないように、国際的に監視し、検証する枠組みをつくるために、その橋渡し役となることができるのが、唯一の被爆国である我が国の役割であります。その現実的な道筋を歩むためには、核兵器国と非核兵器国の間の信頼関係が必要不可欠であり、その信頼関係を再構築しなければなりません。
 2019年に日本が提出した核廃棄決議案は、賛成148、反対4、棄権26カ国で採択され、日本が提出する核廃絶決議案が採択されるのは26年連続ですが、これには核兵器禁止条約と異なり、イギリスが共同提案に加わり、フランスも賛成するなど、核保有国からの賛同を得られております。これこそが日本ができる核兵器国と非核兵器国の信頼関係の回復と言えるものであります。
 当意見書には、日本政府の姿勢が、核兵器の廃絶を求める国際的世論に逆行するだけでなく、被爆者の悲願に背を向けたものであると記載されておりますが、全くの事実無根であり、核兵器国が一切批准していない核兵器禁止条約に、安易に批准するのではなく、より現実的かつ実践的な核廃絶に向けた取り組みを地道に行っているのが現日本政府であります。
 北朝鮮情勢を初めとする安全保障環境の悪化、核軍縮の進め方をめぐる核兵器国及び非核兵器国間、さらには、非核兵器国間での意見対立が顕在化する中、平成29年に開催された核兵器不拡散条約運用検討会議第1回準備委員会において、核軍縮の実質的な進展のための賢人会議の立ち上げを表明いたしました。
 賢人会議は、さまざまなアプローチを有する国々の信頼関係を再構築し、核軍縮の実質的な進展に資する提言を得ることを目的としており、日本人有識者7名に加えて、核兵器国、中道国、核禁推進国の外国人有識者10名の合計17名で構成されております。軍縮不拡散や安全保障などに造詣のある有識者に加えて、被爆地である広島、長崎からも有識者が参加しております。
 立場の異なる国々の橋渡しを行い、核兵器のない世界の実現に向けて国際社会が一致団結して取り組むための共通の基盤を提供したいという観点から、一国でも多くの核兵器国に賛同してもらうことによって、核兵器国の核軍縮不拡散のコミットメントを再認識することが、日本国の核廃絶に向けたアプローチであります。
 核兵器禁止条約を掲げる崇高な目的は理解できますが、その目的は日本にとっても同じことであり、世界平和を願うことは当たり前のことであります。今、日本が目指しているのは、より高い次元で国民の安全を守りながら、現実的かつ実践的に核兵器を削減することであります。
 以上述べたことから、核兵器国との対話に目を背け、日本国民の生命と財産を守る責任をも放棄すると言える意見書には、反対をいたします。
 議員各位の御賛同を賜りますようお願いを申し上げ、反対討論といたします。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 次に、高田一郎君。
   〔13番高田一郎君登壇〕

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