平成16年9月定例会 第9回岩手県議会定例会 会議録

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〇36番(伊沢昌弘君) 社会民主党の伊沢昌弘でございます。
 議案第15号、議案第20号及び議案第29号に反対の討論を行います。
 これらの議案は、岩手県立大学を地方独立行政法人とするため、現行の岩手県立大学等条例の廃止と、新たに定款の制定及び県立大学を含む県の試験研究機関等の地方独立行政法人化に向け、評価委員会の設置等を内容とするものでございます。そもそもこの独立行政法人は、1997年12月に、中央省庁の再編、内閣機能の強化などを主な検討課題として設置された国の行政改革会議が、企画立案と実施の分離を標榜する独立行政法人制度の創設を提言したことに端を発しております。しかし、もともと行政サービスは、企画立案と実施は相互に還流し合ってこそその有効性が確保されるものであり、企画立案と実施を分離しては、行政体に限らず、いかなる組織体も運営、経営は成り立たないものと考えます。
 しからば、独立行政法人制度を発足させたねらいは何なのでしょうか。独立行政法人通則法第2条第1項は、この定義を次のように規定しております。独立行政法人とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国がみずから主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの、または一つの主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人としております。実に難解でございます。理解がなかなかできないと思います。
 この難解な定義に準拠する形で地方独立行政法人法が今年4月に施行となりました。今、地方自治体では、民間委託やPFI、第三セクター方式、事務組合、地方公営企業など、さまざまな民間的手法、方式がとられていることに加え、情報公開や行政評価、外部監査制度の導入など、地方独立行政法人がねらいとする事務事業における目標の設定や業務実績の評価、情報公開などは既に行われております。したがって、今行うべきことは、現行の行政手法、方式を検証することであります。この検証なしに独法化に移行するなら、初めに独法化ありきの姿勢と断じなければなりません。全国的にも、独法化への対応において積極的か慎重かの差はこの点にあるものと思われます。残念ながら本県は、全国的にもトップグループで積極対応の姿勢にあります。
 確かに、平成15年10月に策定された県の行財政構造改革プログラムにおいて、県立大学を含む対象事業ごとに地方独立行政法人制度導入を進めると明記しております。しからば、この間、県立大学の学内における検討あるいは法人設置団体である県と大学間の意見調整をどのように図ってきたのでしょうか。法人化に伴う企業会計の導入、法人実績、職員の業績を反映した給与の仕組みとは何なのか。これらが学内においてしっかりと論議され、教授陣を初め、学内全体の理解は深まっているのでしょうか。私は、十分な理解が得られていないと認識しております。教授陣の中にも多くの不安を唱える方々もおりますし、職員も厳しい状況の中で大変な事業を今進めているというところであります。学生にもまた動揺がないとは言えないのではないでしょうか。独法化によって将来学費がどうなるのかも含めた姿が見えないわけであります。
 さらに申し上げるならば、県議会に対してこの件に関する事前の説明がほとんどなかったことであります。独法化によって県立大学が将来どうなるのか、どういう姿を描こうとしているのか私には一切見えない状況にあることはまことに残念でなりません。
 また、権利・義務の承継等に関する規定が地方独立法人法第66条に示されております。県立大学の建設に要した県債の未償還額243億円余は今後も設立者である岩手県が払い続ける一方で、定款に掲げられている土地建物は新たな独立法人に資本として譲渡されるという点についても十分な説明があったとは言えないものであります。
 さらには、試験研究機関等にかかわる独法化の検討についてでありますけれども、国の試験研究機関が独法化された例では、大企業がスポンサーとなり、企業が投資できない基礎研究分野等を担当し、それぞれが機能分担しながら国家規模の産業振興に取り組んできていると聞いております。しかし、本県の場合は、地場中小の事業者を対象に、技術の開発、普及、指導がその主な役割であり、独法化によって従来の水準や規模の縮小を招き、結果として県内中小事業者への支援切り捨てにつながるようでは、本県の産業振興にとって現状よりマイナスになるわけであります。国の機関と違い、スポンサー企業の確保は可能なのか、厳しい財政状況の中で、県からの交付金確保の見通しなど検証すべき課題は多くあるものと考えます。
 こうした観点から、地方独立行政法人化への対応に当たっては、初めに独法化ありきではなく、本県の実情を踏まえた十分な検証のもとに対応するよう強く求めるものであります。
 なお、念のため申し上げれば、地方独立行政法人の設立は地方自治体の自主的判断によるものであり、法律で義務化されているものではないのであります。
 以上のことから、議案第15号地方独立行政法人施行条例は、地方独立行政法人に移行した県の機関に対する評価委員会の設置をその柱にしておりますが、本県における独立行政法人化に向けた基本条例であり、県立大学や試験研究機関の将来像について議会内での議論が不十分なまま独法化への道を開くものであり、時期尚早であることから反対するものであります。
 これに関連する議案第20号岩手県立大学等条例を廃止する条例及び議案第29号公立大学法人岩手県立大学の定款の制定に関し議決を求めることについても反対であります。
 何とぞ議員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げ、私の反対討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)

〇議長(藤原良信君) 次に、斉藤信君。
   〔26番斉藤信君登壇〕


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