平成16年9月定例会 第9回岩手県議会定例会 会議録

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〇24番(阿部静子君) 社民党の阿部静子でございます。
 私は、受理番号第12号教育基本法の早期改正を求める請願に対する常任委員会における委員長報告不採択という、その結果に賛成の討論を行います。
 請願の要旨によれば、教育基本法の早期改正を求める理由として、昭和22年制定以来改正がない。この間、増加する青少年凶悪犯罪、学力低下、いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊など、教育全般についてさまざまな問題が生じているなどのことをその原因に挙げておりますが、果たして教育の荒廃の原因は教育基本法のせいでありましょうか。
 御承知のとおり、教育基本法は憲法の理念をもとに教育の基本理念を定めたものであって、これを改正したとしても、掲げられている教育問題が解決するものではありません。むしろ教育基本法に定める崇高な理念が確かに実現され、生かされるように学校を含む社会環境を整え、学校の教育諸条件を改善するための総合的な具体策を策定していくことこそが、今、必要とされているのです。
 教育基本法第1条の教育の目的は、教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならないとうたっております。この目的のどこがどう悪いと言うのでしょうか。教育基本法は憲法の精神を受け継いで、民主主義、平和主義、平等主義を基盤に、子供たちの最善の発達を保障する教育を実現しようとする理念を持っております。安易にこれを改正することは憲法の理念を否定することにもつながりかねません。
 先日報道されました教育基本法改正についての全国世論調査結果では、改正賛成が過半数との報道がなされております。しかし、詳しく見てまいりますと、積極的な賛成より、どちらかといえば賛成が多く、また、その理由については、賛成の半分以上の人が現代の教育を取り巻く問題に対応がなかなかできないことを挙げております。今、多くの教育課題が存在することは事実です。しかし、その克服のために必要なのは、教育基本法を犯人にすることではなく、それらの問題の一つ一つの背景や原因を分析し、それに対する具体的な施策を考え合うことであり、必要であれば学校教育法を初めとする個別に定められた法の改正をこそ進めることだと考えます。世論調査でも、教育基本法を改正しても教育問題に対応できるとは限らないとの多くの声があり、また、平和主義など現行法の理念は大切、現行法に問題はないなどの声も多くあります。
 日本の教育基本法には、時代が変わっても色あせることのない高邁な理念があります。この法律は日本国憲法と同様に、日本が世界に誇っていいすばらしい法律であると言えます。真の教育改革とは、教育基本法の理念を生活に生かす教育にあると私は考えるものでございます。もちろん、これからの教育をどう考えていくかの国民的、県民的議論は必要であります。子供たちは皆それぞれに個性を持ち、友達とともに楽しく学べる学校を望んでいます。そんな子供たちの気持ちを真摯に受けとめ、子供たちが生き生きと学び、遊び、成長していける学校づくりをこそみんなで考えていかなければなりません。
 私の27年10カ月の教員生活を振り返ってみましても、どれほど子供たちの心を傷つけたのか、それを思うと反省の思いばかりでございます。子供は社会の鏡であり、社会のゆがみはそのまま子供たちの言動にあらわれます。社会全体が子供たちに温かいまなざしを注ぎ、寛容や公平、激励を伝えられる大人の社会でありたいと思います。教育基本法の理念を大切に、こうした社会の実現にお互いに努力し合いたいと思います。
 どうか皆様方の良識ある御判断をお願い申し上げ、私の賛成討論を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

〇議長(藤原良信君) 次に、伊沢昌弘君。
   〔36番伊沢昌弘君登壇〕(拍手)


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