平成16年9月定例会 第9回岩手県議会定例会 会議録

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〇8番(高橋雪文君) 自由民主クラブの高橋雪文であります。
 請願陳情第12号教育基本法の早期改正を求める請願を委員会で不採択とした審査結果に対して、反対の立場から討論させていただきます。
 我が国の教育基本法は、敗戦後、GHQの占領政策推進の中の昭和22年に制定され、以来、一度も改正されることがなく半世紀が経過いたしました。制定過程におけるさまざまな問題も指摘されているところではありますが、昭和22年当時と今日の社会状況や国際状況が大きく変化しているにもかかわらず、ただ一度の改正がないままで今日まで至ったことは驚くべきことであります。
 昨今、青少年の凶悪犯罪の増加、学級崩壊やいじめ、ゆとり教育における学力低下、また、家庭や地域社会での教育力の低下、児童虐待やドメスティックバイオレンス、本県でも教職員の不祥事や指導力の不足が指摘されておるところですが、教育のあり方そのものを見直さなければ、日本の存立基盤を立て直せないと感じている国民がふえてまいりました。
 先日の9月26日、岩手日報が報じました全国世論調査によりますと、教育基本法改正に、賛成が59%、反対は23%にとどまり、その理由として、55%が現代の教育を取り巻く問題に対応できていないことを掲げ、特に20歳未満の子供がいる層では実に69%に達しているとの報道がなされました。まさに改正への多くの国民の要望があると言えます。
 また、昨年10月末に全日本教職員連盟が実施した教職員に対するアンケート調査によれば、教育基本法のあり方及びその改正に関心がありますかという質問に対し、あるが59%、少しあるが35%で、全体の94%を占め、さらに教育基本法の改正は学校現場に影響があると思いますかという質問に対し、あるが57%、少しあるが34%で、全体の91%という結果が報告されています。同じく、日本教育新聞社が昨年実施した全国アンケート調査によっても、教育基本法改正が必要だと答えた教育関係者は、全国の区市町村教育長の実に91%、教員でも84%に上っており、教育関係者や学校現場でも教育基本法の改正の要望があると言えます。
 教育基本法改正に積極的に行動なさっていただいている本県の県立大学西澤潤一学長は、本年5月に全国の経済人、教育者、学会など各界の有識者に声をかけ、日本の教育改革有識者懇談会――民間教育臨調――の会長に就任され、6月にはPHPから、「なぜいま教育基本法改正か――子供たちの未来を救うために」という本を出版されました。西澤潤一学長は、平成12年、当時の小渕内閣のもとに設立された教育改革国民会議の活動に対応して、新しい教育基本法を求める会を結成し、同会の会長に就任いたします。翌平成13年9月には国に六つの提言を要望したところから、この教育基本法改正の論議が本格化いたしました。本書の西澤潤一学長の言葉をかりますと、日本の教育の最も本質的な部分が見直されることなく、哲学がないままに個別の改革案ばかりが矢継ぎ早に実施され、一層学校現場が混乱するのではないか、いや、混乱ばかりではなく、さらに悪い結果をもたらすのではないかと、日本の今日の教育の状況に危機感を感じておられます。
 憲法改正や教育基本法などの論議さえ許されなかったほんの数年前を考えれば、国民世論が大きく盛り上がり、ようやく改革の機運が盛り上がってきたと言えます。事、教育論議は政党の利害関係を超えて、真に日本の将来を考え、一切のタブーとすることなく論議をすることが必要であり、県議会においても率先垂範することが求められております。
 私は、今回の請願の一連の過程を経て感じることは、この請願の取り扱いが県民の意思を反映するものではなく、逆に教育の後退を招くものであると憂慮するものであります。さらに、当初の請願紹介者が辞退し、その紹介者までもこの請願を否決することに対し、信念を持って選挙を戦い、県民の負託によって選ばれた議員が翻弄される姿に同情を禁じ得ないのであります。
 願わくば、教育の改革を願う健全な良識を持った議員各位におかれましては、将来の日本のために、また、子供たちの将来のために、本請願に掲げられている背景を御理解いただきまして、本請願に賛同していただきますよう、心からお願い申し上げます。
 以上で私の反対討論を終わらせていただきます。(拍手)

〇議長(藤原良信君) 次に、阿部静子さん。
   〔24番阿部静子君登壇〕(拍手)


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