平成16年9月定例会 第9回岩手県議会定例会 会議録

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〇9番(嵯峨壱朗君) 自由民主クラブの嵯峨壱朗でございます。
 初めに、昨日岩手県を横断した台風21号の大雨災害により、県北地方を中心に、県内各地で道路、住宅、農作物などに多大な被害を受けたところでありますが、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 本定例会の一般質問のラストバッターを務めさせていただくことになりました。先輩、同僚議員の質問と重複する部分もあろうかと思いますが、割愛せずに質問させていただきますので、御容赦をお願いいたします。
 それでは、通告に従い、順次、単刀直入に質問いたしますので、明快な御答弁を期待するものであります。
 初めに、三位一体改革についてお聞きいたします。
 増田知事は、全国知事会のリーダー的存在として三位一体の改革を推進しているわけですが、三位一体の改革をめぐる諸問題について、岩手県の知事である増田知事に、何点か質問させていただきます。
 初めに、マスコミ等を通じて知るところによると、増田知事は、全国の知事の中でも最も強硬な三位一体改革推進論者の一人だと言われております。私もそのとおりに理解しております。
 私は、国、地方の財政状況、行政システムの疲弊状況などから、当然、三位一体改革の必要性については強く認識しているところであります。しかしながら、東京都とか愛知県などといった富裕な自治体ならいざ知らず、全国でも、脆弱な財政力、県民所得、経済基盤など、さまざまな指標で下位に甘んじている岩手県の知事が率先すべきものなのか、かねてから疑問を持っておりました。
 私にはまず、ナショナルスタンダードと思われます一連の三位一体改革の論議についての岩手県の知事としての感想をお聞かせ願いたいと思います。
 先日、ことしの6月9日に行われた県の部課長研修における知事の講話の内容を拝見したところでありますが、岩手県の知事としての増田知事の目指すところには、多くの違和感を禁じ得ませんでした。その中で、どのような自治体を目指すのかという項目がございますが、三位一体の改革とのかかわりで、現在の国民の共通認識として、いいサービスをしてほしい。けれども、過大な、自分たちが使わないようなものまで、いろいろなものをつくってくれということではなくて、必要なものをしっかりつくってほしい、必要なことをやってほしいということがあると言われています。そして、そうした前提に立って、重要性を増す地方自治体の職員の資質向上に向けて、岩手県を住民と向き合った自治体にし、自分たちで必要なものが何かということを判断し、それを提供していく、そして、住民の人たちに負担の少ないような形でそれを実現していく自治体にしていかなければならないと述べております。非常によいことだと私も考えます。
 しかしながら、そうした視点で見た場合、例えば、盛岡駅西口の複合施設整備事業などは、このような発言の内容に沿った事業なのでしょうか。私にはそう思えません。
 また、増田知事は、三位一体の改革は、本来、三位一体の改革によって生じる国の優秀な余剰人員を人材として位置づけ、その人材の活用も含めた四位一体の改革でなければならないと言っておりますが、三位一体の改革が進んだ場合、そのような余裕が地方にあるのでしょうか。増田知事のおっしゃる四位一体の改革の意味とその必要性を改めてお聞かせ願います。
 次に、社会資本の整備に関連してお伺いしますが、本県は、広大な面積や厳しい自然条件ゆえ、将来に向けた県勢発展の基盤となるに必要な社会基盤、生産基盤の整備や安全で安心して暮らすことができる快適な生活を営むための社会資本の整備は、いまだ十分とは言えない状況にあります。このような中にあって、地方6団体が提出した補助金削減案の中には、財源を建設国債によっているため税源移譲が困難な補助事業も含まれていると言われます。この補助金削減案が実施されますと、十分な税源移譲がなされず、本県の社会資本の整備がますますおくれるのではないかと危惧されております。
 そこで、こうした改革案を増田知事は改めてどのように評価し、本県の社会資本整備を進めるか、お尋ねいたします。
 具体的に二つの分野について質問させていただきます。
 補助金削減案の中で、特に義務教育費国庫補助負担金のうち、中学校の教職員の給与分の8、500億円の廃止を提案しておりますが、岩手県はどの程度の影響を受けるのかお知らせください。
 私の知るところでは、本年度5月26日の中教審の担当部会で報告された試算によると、平成15年度の負担金の交付額は408億5、471万円余であり、個人住民税で試算した場合は、全額税源移譲すれば移譲金額212億円余となり、195億7、000万円余の減額となります。また、同じく文部科学省の資料によりますと、平成13年度の県民所得に基づき、フラット税率による全額税源移譲した場合で算定すれば、移譲額は258億2、000万円余となり、150億3、000万円余の減額となり、少なくとも二つの試算があるようであります。減額幅で45億円以上の開きがあるわけですが、県はどちらの試算に基づいて岩手県の影響を想定しているのでしょうか。また、そう判断した理由も教えていただきたいと思います。
 また、9月22日の知事の記者会見の中で、一般財源化で財源確保が困難かと言えば、それは全くそういうことではなくて、きちんと財源措置することなども我々は主張していると述べておられます。ある新聞社の取材では、不足分については県が完全に措置すると明言しているそうであります。正しい情報だと思いますが、そのとおりならば、いずれにしろ150億円以上に上ると想定される不足分の財源をどこから持ってくるつもりなのかお聞かせ願いたいと思います。
 また、知事は、義務教育について、教職員の給与の確保といった問題よりも義務教育制度のあり方の方がさらに重要であるとしばしば述べておられます。また、今議会の一般質問の中でも明確な答えがなかったように感じます。改めて、知事の義務教育制度に対する考えをお聞かせ願いたいと思います。
 次に、改革案の中で、特に岩手県に影響のある分野と思われる公共事業関係の国庫補助負担金の6、000億円が廃止される対象となっているわけでありますが、それに対して、特に、自治体の裁量の大きい分野については8割の税源移譲しか想定されていないと聞いております。農業立県岩手県にとって影響の大きい農林水産省関係の2、334億円が該当すると言われております。その削減案の中には、圃場整備895億円、農道整備481億円などの農業基盤整備事業1、376億円が含まれており、そうでなくてもおくれぎみの岩手県の農業インフラの整備が、ますますおくれるのではないかと懸念するものであります。
 私どもの地方でも、知事も視察済みではありましょうが、小さいながらも何とか食料供給基地の一翼を担おうと、農家が結集して圃場整備の実現を待ちわびておる現状であります。県全体でも、圃場整備などは水田農業の構造改革を進める上でも極めて効果的であり、地元要望も強いと聞いておりますが、一方では、その整備率は全国平均より大幅におくれ、東北でも下位の状況にあると聞いております。日本の食料基地岩手県を標榜する増田知事が、このような案を率先してつくったとは思いませんが、まず率直な感想をお聞かせ願います。
 そして、改革案が実現した場合、この分野で岩手県の影響をどのようにはかり、知事はどのような対策をお考えなのか、お示しください。
 次に、知事のマニフェストについてお尋ねします。
 先日行われた第1回ローカル・マニフェスト検証大会で、増田知事は、参加知事の中で最高得点、最大の評価を受けたとのことであります。評価の基準も方法もよくわからないのですが、私の印象とは大分違うような気がしております。知事自身は正当な評価であると考えているのか、また、県民の評価も同様であると考えているのか、その感想をお聞かせください。
 また、知事は、ガバナンス8月号のインタビューに答えて、任期中に予想を上回るような激変があっても、マニフェストの内容は40の政策に反映させており、それを見直すことはあり得ても、マニフェストそのものを変えることはないと述べております。だとすれば、何のための政策評価なのか。いわゆるマニフェストサイクルの確立は現実にどのような意味を持つのでしょうか。
 また、知事は、マニフェストの提示によって当選したということは、仮に政策が失敗したならば、責任をとると知事が県民に約束しているわけで、そのこと自体に職員が責任をとる必要はないですからとも述べております。さらに、さきに触れた知事講話の中のローカル・マニフェストと政策評価システムの項で知事と職員の役割について述べておりますが、その中で、首長の責任は、マニフェストの中で掲げた政策に対して、最終的な責任をとらなければならないということですから、先ほど申し上げたような公共事業30%カットによって県経済が壊滅的な打撃を受ければ私の責任ですし、と述べておられます。財政状況等によりその方向性については当然の成り行きかもしれませんが、余りにも急激な変革によって、私は、地域経済は既に壊滅的な打撃を受けていると感じております。現場主義を標榜する知事に現場の声が聞こえないはずはありませんが、私は、ぜひ責任をとっていただきたいと考えるところであります。
 そこで、最近増田知事が多用する、知事が責任をとるということはどういうことなのか、改めてお聞かせください。
 また、知事の政策に対して最善のシナリオを用意するというのが、職員の皆さんの責任に変わっていくだろうと述べております。この首長と職員の責任の明確化について、マニフェストとのかかわりの観点から知事のお考えをお示しいただきたいと思います。
 また、私は、知事のマニフェストの中で気になる点が幾つかあります。知事は、マニフェストにおいて第1次産業、特に農業・水産業振興について、消費者の側に立った視点のみで振興策をとらえているような気がしてなりません。私自身も、消費者の視点に立って、食の安心・安全、トレーサビリティーの推進などによって高付加価値化、産地間の競争力を高めるためにも大変重要なことであると考えておりますが、食料供給基地岩手を実現するには、一定のグロスの確保は必要ではないかと考えるところであります。マニフェストに基づく40の施策においても、一方のかなめである生産するための振興策がないように思えますが、いかがでしょうか。
 別の言い方をすれば、後の項で具体的に質問しますが、厳しい財政状況を反映しているとはいえ、流通面、組織面、人材育成などソフト面にのみ視点が行き過ぎ、最低限必要なハードの整備さえなおざりにされているような気がいたします。建設業の農業参入などによる労働移動といった雇用対策とも矛盾するような思いがしております。知事の考えをお聞かせください。
 次に、市町村合併についてお尋ねします。
 平成16年度の現行合併特例法の期限を前にして、にわかに各地で合併論議がかまびすしくなってまいりました。市町村合併の最後の壁は、首長の立場、新市町村の名称、新庁舎の場所、議員特例のかかわりなどで、どの枠組みもそうした課題で一致すると言われております。具体論になった途端に本音が表出し、枠組み変更ならまだしも、混乱から白紙へと急展開する場合が多いようであります。
 岩手もその例外ではありません。知事は、現状の合併の動きの中で、特例法適用期限内に一体どれほどの合併が可能と見ておるのでしょうか。また、私には、最近になって前進が見えますが、岩手県内の合併への動きがこれまでおくれをとってきたこと、それが土壇場での混乱に拍車をかけているように思えます。知事は、任意協議会の話し合いの中で、既に法定協議会で話し合うような内容にまで及んでいるため時間がかかっていると認識しているようですが、私は、岩手の全体としての合併のおくれは、初期の段階で、県の役割として一定の枠組みを毅然として設けるとか、県が指導すべきことをしなかったこと、換言すれば、増田知事のリーダーシップの欠如、各自治体の意思を尊重するといった建前論に終始した責任回避的対応にもその原因があったものと思っております。
 別の角度で見れば、三位一体の改革積極推進、北東北3県の連携とか、また道州制などといった外向きの議論の前に、他の都道府県に比して、岩手県の知事として多くの真に優先すべき内政の課題を後回しにしたツケが、その一端がここにあらわれているのではないかと思っております。知事の所見をお伺いいたします。
 次に、平成16年4月から5カ所の地方振興局に市町村合併支援に係る特命課長を配置しておりますが、合併に向けどのような機能を果たしているのでしょうか。
 また、9月には地域振興部市町村課内に市町村合併担当課長を配置し、合併予定市町村へのバックアップ、市町村建設計画策定の支援指導などをするということですが、かなり遅きに失した感は否めないと感じております。今になって配置した理由を改めて説明願います。
 また、遅きに失したとしても、その役割の重要性には変わりはないと思いますが、今後の合併に向けてどういった役割を担っていくのか御説明願います。
 次に、海外事務所の設置目的とこれまでの成果についてお伺いいたします。
 県は、平成14年11月にソウル事務所を、平成15年9月にはシンガポール事務所を青森県、秋田県、北海道と共同で設置し、さらに、来年度は宮城県と合同で中国大連に事務所の設置を予定しております。ソウル事務所などは、恐らく観光客の誘致が主な目的と考えますが、日経流通新聞のアジアから見た日本の観光地意識調査によりますと、ソウルの市民に最も人気のある観光地は東京で、次は北海道となっております。東北では、仙台が22位となっており、直行便のある秋田、青森でさえ30位以内にも入っていないという状況です。
 既に設置している二つの事務所は、いずれも開設時における経費、運営に要する経費など、すべて4道県で4分の1ずつ負担していると言います。また、現地の事務所、また観光会社等の説明によりますと、東北そのものの認知度が低く、青森、秋田はまだ直行便があるため幾らかの知名度があるそうですが、さらに岩手と言ったら、全く知らないということです。岩手に関連するとすれば、知名度のあるものは、雫石ゴルフ場とか、けんじワールドとか、事務所の活動の成果というよりは、個々の企業の努力と施設の優良さによるところが大きく、秋田県ゴルフツアーという名のもとで、ゴルフは雫石という観光パンフレットもあったほどであります。
 また、4道県で見ると、その9割は北海道への観光客ということで、これが事実とすれば、バランスから見て、北海道のために各県で4分の1ずつ負担をして事務所を開いているのではないかといった感は否めません。また、仮に誘客に成功したとしても、利用料金を低価格に設定しているため、施設利用などのどの段階でも利益を出すのは困難であると聞いております。
 そこで、ソウルを初め、海外事務所を設置した目的と、設置以後どのような成果を上げているのか、知事の所感とあわせてお聞かせ願います。
 次に、大連事務所の設置についてでありますが、なぜ大連に事務所をつくらなければならないのか、年度途中の補正で手当てをしなければならないほどに急がなければならないのか、いつ、どのような経緯で設置が決まったのか御説明願います。
   〔副議長退席、議長着席〕
 中国では、自治体が直接事務所を設置できないということで、社団法人岩手県産業貿易振興協会、通称産貿が運営主体になる予定と伺っておりますが、産貿との調整はついているのでしょうか。
 産貿の総会は既にことし5月に終了しているわけですが、県内市町村を初めとする会員に何の連絡もなく、勝手に設置主体などと公にしていいものなのでしょうか。今月、産貿では臨時の理事会を予定しているようですが、そこでもし否決されたらどうなるのでしょう。
 開設そのものの議論よりも、余りにも拙速に過ぎる点に問題があると思われますが、いかがでしょうか。
 次に、産業振興による雇用創出についてお尋ねします。
 岩手県、特に県北・沿岸地方は、雇用情勢の最も厳しい地域であります。ハローワーク久慈によりますと、ことし7月の有効求人倍率は0.21で、4月以降0.2を挟んで前後しているのが実情であります。また、今年度の新規学卒者等、若者の地元志向が比較的強いのですが、今年度も地元就職希望の新規学卒者97名に対して求人は43名となっており、就職先の開拓が大きな課題となっております。このため、久慈市では、厚生労働省の支援を受けた久慈市雇用開発促進協議会の事業や市の出資と民間の寄附により成る久慈ふるさと創造基金事業の実施などにより、地域の雇用機会を増大するための施策を推進しております。
 私は、こうした自治体の自助努力に対して県も何らかの支援をすべきと考えますが、県の対応と考えをお示し願います。
 また、県では、9月補正で久慈と宮古にジョブカフェのサテライト機能を設けることになっており、雇用情勢が厳しい両地域にとって、雇用のミスマッチの解消など、雇用促進の一定の効果が期待され、地元の期待も大きいと感じております。しかしながら、雇用情勢の根本的な解決にはならないのは言うまでもありません。久慈地域では、この1年間で建設関連の失業者は1、000人を超えるだろうと言われております。家族まで含めますと何千人もの住民が、一家の大黒柱に稼ぎがない状態が続いております。
 増田知事は、このような現状をどう思うでしょうか。また、原因をどう考えるでしょうか。知事のおっしゃる雇用対策による労働移動はうまくいっているとお考えでしょうか。
 雇用適性の把握とかミスマッチの解消とかということは仕事のある世界での話であって、全く仕事がない状況の場合、ジョブカフェはその機能を十分果たせるのでしょうか。
 増田知事は、みずからのマニフェストの高評価を財産とするのでしょうが、高評価の目玉である公共事業を2年間で30%機械的に削減するということが、どういう現実を生み出しているのか、本当の意味での現場の声を聞くことを切に求めるものであります。
 知事自身が過渡的なものと認めるマニフェストの実現を最大の政治活動だと自負する、そうした増田知事は、しばしば、知事は短期決戦であるとおっしゃいます。果たしてそうでしょうか。求めるべき岩手の姿が、そして課題の解決が、たった4年で実現するのでしょうか。言葉と数字合わせにすぎない、現実を全く知らないといった県民の声があるのを増田知事は御存じでしょうか。
 次に、第1次産業の振興についてですが、まず初めに、農業振興についてお尋ねします。
 これまで県は、認定農業者など意欲のある担い手の育成のために、平成13年度から平成17年度までの事業である、いわて農業担い手支援総合対策事業を推進してまいりました。典型的な中山間地域である県北地方には、この事業を通じて、雨よけホウレンソウ、菌床シイタケの生産設備としてのパイプハウスなどを整備してまいりました。特に、やませ常襲地という風土を利用した雨よけホウレンソウは、ここ数年間、販売実績で年間10億円を超えており、県北・沿岸地方の主作目として重要な地位を占めており、若年従事者も意欲的に取り組みつつあると聞いております。
 また、花卉、ホウレンソウの栽培などを通じて、冷涼な県北・沿岸地域の労働力移動という視点からも一定の成果を上げてまいりました。今定例会の一般質問初日の吉田昭彦議員への答弁の中で、県は、いわて農業担い手支援総合対策事業をもって農業振興を図ってきたとの言葉を聞いて、力強く感じたところであります。
 そこでお伺いします。平成18年度以降も事業の継続について強く要望するものでありますが、県の考え方をお示しください。
 次に、水産業の振興についてお尋ねします。
 本県水産業は、新鮮で安全な水産物を供給するといった役割とともに、水産加工・流通にわたるすそ野の広い産業で、地域経済を支える重要な産業であることは言うまでもありません。これまで、アワビ、ウニなどの栽培漁業やワカメ、カキ、ホタテなどの養殖等、いわゆるつくり育てる漁業は、漁場整備などの積極的な推進により、生産額では沿岸漁業の大半を占めるに至っております。ますますその重要性が増しているものであります。
 私は、昨年12月定例会の一般質問におきまして、漁場施設を効率的に整備するために、漁場整備と深い関係のある漁港整備工事と一体的に行うことが得策ではないかと考えるが、県の基本的な考え方をと質問したところであります。つくり育てる漁業を確立させるためにも、漁場施設を効率的かつ計画的に整備することは、まことに大切なことと考えておりますが、改めて県の考えをお聞かせ願いたいと思います。特に、平成14年度から23年度までを計画期間としている特定漁港漁場整備事業の進捗状況と、今後どのように推進していくのかをお尋ねいたします。
 また、アワビの種苗生産等についてでありますが、本県は、平成2年、国の特定海域の指定を受け、補助事業を導入しアワビ栽培漁業の自立化を図るよう取り組んでおり、近年の種苗放流数は900万個前後で推移していると伺っております。しかし、近年、秋サケの不漁等により秋サケの収益が減少したことに伴って、県内の漁協の中には、アワビ種苗の放流を縮小しようとする動きもあるやに聞いております。さらに、平成17年度から、国の補助事業の見直しにより、これまでと同じように事業展開できるかは不安なところもあります。
 私は、今後も引き続きつくり育てる漁業の積極的な推進のためには、アワビの種苗放流等が必要であると考えておりますが、国の動向と今後の県の対応についてお考えをお聞かせ願います。
 次に、いわゆるBSEの全頭検査についてでありますが、これについては、先ほどの田村正彦議員のすばらしい関連質問で、大体同じ内容になりますが、割愛せずに質問いたします。
 平成13年9月、我が国には存在しないはずだったBSEが初めて確認され、連日、マスコミでは、BSEで足腰の立たなくなった牛の映像と同時に、BSEの人への感染のおそれも報道され、牛肉に対する消費者の信頼が一挙に崩れ、多くの国民が不安に陥りました。
 そうした中で、今後、国が食品安全委員会の報告をもとに若齢牛の検査をやめた場合でも、本県は全頭検査を継続し消費者の不安感を払拭すべきと考えますが、知事はどうお考えでしょうか。
 次に、外国人児童生徒の公立小中学校入学者への対応についてお尋ねします。
 県内の小中学校に在籍し、日本語教育の必要な外国人児童生徒の数は年々増加し、平成15年9月の調べでは60名ほどと伺っております。これら児童生徒に対する日本語指導は、恐らく学校に指導教員等を派遣し、個々に行われているものと思われますが、県内の指導の現状をお知らせ願いたいと思います。
 また、児童生徒の母国語によっては、学校に派遣する指導教員が不足しているといった事態もあるのではないでしょうか。そこで、例えば教育事務所管内ごとに指導するといったように効率的に実施することはできないものでしょうか、お伺いいたします。
 最後に、ダンピング防止対策についてお伺いいたします。
 本県の建設産業は、御承知のとおり、社会資本の整備を担い、農林水産業従事者の兼業先として、雇用の場を提供し、地域経済活動に活力をもたらすとともに、災害応急対策活動などの行政の補完的役割をも果たすなど、基幹産業として大きな使命を果たしてまいりました。
 しかしながら、長引く景気の低迷により、公共投資を初めとする建設投資が大幅に縮減され、一方において、許可業者は横ばいであり、このことから、建設市場は需要と供給のバランスが崩れ、競争の結果により低価格受注、いわゆるダンピング受注が増加し、企業の経営環境はさらに悪化していると聞いております。低価格受注は、公共工事の品質や安全の確保に支障を来すとともに、建設業の健全な発達を阻害するおそれがあり、決して好ましいことではないと考えます。
 そこでお伺いいたします。技術と経営にすぐれた建設業者を伸ばし公共工事の品質を確保するためにも、ダンピング防止対策のさらなる強化が必要と考えますが、考えをお示し願いたいと思います。
 以上をもって私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございます。(拍手)
   〔知事増田寛也君登壇〕

〇知事(増田寛也君) 嵯峨壱朗議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、三位一体改革の議論につきましての私の所感を求められておりますけれども、この三位一体改革ですが、これは小異を捨てて大同につくという観点に立って、自治体の人口規模ですとか経済基盤、あるいはそれぞれの財政状況等の違いを乗り越えて、すべての団体がそれに賛意を表したと。これは都道府県それから市長会それから町村会も含めて、そうした財政状況等の違いも乗り越えて合意形成が図られたということで、大きな意義があると考えております。
 それから、改革案の前提条件でございますが、当然のことながら、経済基盤の弱い地域においても、必要なサービスを実施していくための必要な財源がしっかり担保されていくべきと、こういう前提に立って皆賛意を表したということでありますので、この前提条件を誠実に政府が実行していくと、これがとにかくこれから一番大事なことではないかと思うわけでございます。
 それから、私しばしば四位一体と、三位一体プラス今議員からお話がございましたとおり、人材を含めて四位一体と申し上げておりますが、これは三位一体の改革、この考え方は既に申し上げておりますが、それを実現していく上で、その補助事業に携わっている、特に国家公務員の皆さん方がその三位一体改革実現の阻害要因の大きな部分を占めていると、このようなことから申し上げているわけでございまして、人材を広く国から仕事とともに移すと、そういう部分について考え方を持っていないと、この三位一体改革の実現もしっかりとできないと、こういうことで申し上げております。全体として国から地方に仕事を移していく中で、国の人材も全体として有効に活用していくということの構想を示していかなければならないと考えております。
 それから社会資本整備、特に公共事業の補助金の関係でございますが、この公共事業関係の国庫補助金については、税源移譲の対象としないということを、盛んに財務省やそれからそれを受けた公共事業官庁が言っております。それに対しては建設国債といえども、その償還には国税を充てているわけでありますので、その理屈は理論的には成り立たないと思うわけでございますが、初年度はそういう公共事業関係の補助金、負担金については、税源移譲の対象とはならなかったという事実がございます。全体として、これについては約4兆8、000億円ほど全体額としてあるかと思いますが、今回もそれを丸ごと対象にするのではなくて、その一部を対象にしているわけですが、その中で公共事業は地方の裁量の余地、工夫が大変大きいローカルスタンダードが最も発揮しやすい分野でありますので、この公共事業も地方に税源移譲して、公共事業の補助金、負担金を廃止して税源をしっかりと地方に移譲して、そして地方が必要な税源を確保した上で、住民ニーズを踏まえた社会資本整備を行っていくことが必要であると、このように考えております。
 それから義務教育についてでございますが、今、この国庫補助負担金の見直しに伴う税源移譲、そしてその財源の額について二通りの数字のお話しございました。一つは中央教育審議会の数字であり、もう一つは文部科学省の数字ということでございますが、県ではこの数字についてこのように見ております。すなわち、中央教育審議会の担当部会で示しております数字は、いわゆる今回の改革案に盛り込まれております所得税から、個人住民税の10%フラット税率化のうちの、その10%のフラット税率化を考慮しておりませんで、大変ラフな数字でございます。とてもこれは参考にするにたえない数字ということが、まず言えようかと思います。
 それから、もう一つの文部科学省の方でも数字をあちこちに配っておりまして、それによりますと、40府県ぐらいで今の国庫補助負担金よりも額が下がるんだということでございますが、こちらはフラット税率で計算をしてございますけれども、課税所得ベースでの試算ではないという大変大きな欠陥もございまして、これも使えないと評価をしております。
 それぞれそのベースが現在の制度を前提にし、しかもその内容について非常にラフにしておきまして、これから税源移譲が非常に行われにくい、あるいは乖離が非常に激しいような数字に出るようにした上で、いろいろと都道府県の一番心配する部分を突くような、そういう形になっておりまして、私どもの改革案はそういった必要な義務的経費でありますので、全額措置をしてくださいということで、それを政府に伝えているわけですが、その中で、そういう数値が出回るというのは大変遺憾なことであると思っております。私は、これについては、政府がどういう対応をしようと、仮に我々の要求どおり義務教育費が一般財源化をするといった場合に、一方で政府がその一般財源の財源をきちっと措置しないということがあっても、これは大事な義務教育に係る予算でございますので、これについては大変重要で優先度の高いものでございますので、昨日も申し上げましたが、必要な所要額はきちっと財政措置を行うという考え方でございます。これは必ず財政措置を行うわけでございますが、そういった多くの自治体がそのために苦労することのないような、そういうしっかりとした対応を政府全体に強く求めたいと考えております。
 それから、義務教育についての考え方がどういうものなのか聞きたいと、こういうお話でございました。義務教育の内容は常に大変重要なことでございますので、議論していかなければならないと思っておりますが、その一方で、学校の先生方の給与が大事なことではないという意味ではなくて、それも大変大事なことですが、それが国が担うか地方が担うか、そこのところはどちらにしても確実に財源が保障される仕組みであればいいのではないかと、こういう意味で申し上げております。
 その義務教育の内容でございますけれども、これは法律上、自治事務と言われていることからもおわかりのとおり、国がその義務教育の内容についてすべてを決めるということではなくて、県や市町村の責任も大きいわけでございまして、このアウトラインの考え方でいいますと、国が教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られるように、それは法律であったり基本指針等で定めているわけですが、そういった必要な水準というものをしっかりと国が定めた上で、現場の地方自治体は、その中に地方独自の工夫や地域住民の声を反映させる、これはそれぞれの地域ごとにさまざま異なると思いますし、岩手は岩手のやり方ということになると思いますが、そうした工夫を反映させて、全体として自治体の裁量と責任において地域に根差した教育が展開できるような仕組みと、このことを再三申し上げているわけでございます。そして、その地域の工夫や住民の声をいい方向で反映させる仕組みということを、教育委員会なり教育の現場の学校長、現場の先生方に大いに努力をしていただきたいと思っております。
 なお、現在、あわせまして、文部科学省で中教審に対して教育委員会のあり方について諮問しております。この教育委員会のあり方も、その教育の内容について大きくかかわってくる話でございまして、年度内にも答申が得られる状況と聞いております。この教育委員会のあり方についてもさまざまな議論が国民の間にございまして、根幹的な制度ですから軽々に扱うわけにはいかないわけですが、そこでどのような方向性を文部科学省が出してくるか、この動向にも十分に注視をしていきたいと考えております。
 それから、農業インフラの整備についてのお尋ねがございますが、その中には今お話がございましたとおり、農業基盤整備事業1、376億円ほどが含まれているわけでございますが、これはもちろんのことでございますけれども、その事業をなくすという改革案ではなくて、そういった事業を実施する際の財源を地方に移して事業自体は実施をすると。地方の財源と工夫で事業を実施すると、こういう考え方でございますので、岩手県内で必要な圃場整備など、そうした農業基盤投資につきましては国の一律の基準によるのではなくて、地域に使いやすい形で、地域の実情に応じた事業推進に一層取り組んでいくと、こういう考え方でおります。
 それから、大きな二つ目でマニフェスト関係のお尋ねでございますが、先般のマニフェスト検証大会というのがございましたけれども、これは主催者側の評価基準というものに基づく評価と考えております。これは主催者側の評価でございますので、評価の責任はそちらにあると考えております。
 それから、県民の評価については、現時点でどこかのNPOが私のマニフェストを評価するといったような動きは見られないわけですが、いずれにしても、県民の皆さんもその中のいろいろな施策についてさまざまな御意見がおありだと思いますから、そこの部分でいろいろ評価をされていると、こう受けとめているわけでございます。
 それから、このマニフェストを後で変えないということでございますが、マニフェストというのは数値や期限が入っていますが、要は選挙公約ということでございますから、それはその選挙のときにどういうことを公約したかというのはずっと残るものでございますので、後でその公約を撤回するとか変えるとかということにはならない。それは4年後でも8年後でも、常にあのときにどういうことを公約したかというのは、そこの時点の中身というのは変えられない、むしろそういうものだと思っております。検証して常にいい方向に政策を持っていかなければならないんですが、それはマニフェストを県の政策として具体化をした本県のこの40の政策、これについてはしっかりと毎年度の政策評価において検証し、それをいい方向に常に見直しをしていく、これが一つのサイクルとして確立をしていくと、そのことが事業の効果をより出していくと、このように考えているものでございます。
 それからマニフェスト、これは選挙のときの公約でございますので、そういう意味で私の責任がもうすべて問われると。
 その責任の問い方あるいは問われ方ということですが、端的に言えば、公約が果たされなかったあるいは公約の達成が厳しいということであれば、例えば次の選挙のときに厳しい評価をいただく、それで落選になるということにもなると思いますし、常にそういう選挙のときの最終的な評価ということになるんだろうと思いますが、そうならないためにも、あるいは約束したということであるがゆえに公約の実現に誠実に努力をしていくと、そういう責任が私に生じてくるものと思うわけでございます。
 一方、職員は選挙公約の作成に携わっているわけではありませんので、それを具体化した政策をしっかりと実行していくと。常に数値目標をいい方向に見直しをするなり何なりをして、そして効果を上げていくことに職員としての責務が出てくるものと、このように考えております。
 それから、私のマニフェストあるいはそれを政策に移し変えた40の政策の中で、ともすれば、それには消費者の側に立った視点のみで振興策をとらえているような気がするというお話でございましたが、今まで産業の振興の中で、特に農業などの一次産業の振興策は、ともすればハード中心という視点が強かったということは否めない事実だろうと思います。これからはソフト、ハードの両面、さらには消費者重視という視点もより加えていく必要があると思いますので、そういったことをこの中では強調をしております。これは、両者それぞれが、両者といいますのはソフト、ハードあるいは生産者、消費者、それぞれをにらんでいくということが重要でありますので、特に今後も市場競争力のある農林水産業の振興に向けて、ソフト、ハードの両面から、そして生産者、消費者両方をにらんだ形で必要な支援をしっかりと行っていく考えでございます。
 それから、合併についてでございますが、合併については現行の合併特例法の期限まで残り約6カ月ぐらいでございますが、各地で真摯な論議が活発に行われていると考えております。これについては、最近枠組みをめぐりさまざまな論議がある地域もあるわけでございますが、現在協議会を設置している枠組みで合併が可能となるよう、県として積極的に支援をしていく考えでございます。
 それから、海外事務所の関係ですけれども、まずソウル事務所の方からですが、ソウル事務所は、一昨年の11月に観光分野を中心として、将来的には物産販路開拓それから技術交流、文化交流等の拡大を図ることを目的として、今お話がございましたとおり、4道県で共同設置をしたというものでございまして、これについては観光商談会や国際観光展の出展などの取り組みから始めて、次の活動の展開を今行っているところでございますが、具体的な成果が徐々にあらわれつつあると、このようにとらえております。平成16年の9月段階での韓国からの来訪者がその前の年の3倍ぐらいに今なっているわけでございまして、これから事務所のそうした機能を関係する皆様方にもよく知らしめて、活用をさらにしていただく方向に持っていきたいと思っております。
 それから、シンガポール事務所でございますが、こちらは昨年の9月に、これも4道県で開設をしたわけでございますが、これはシンガポールというよりもそこを含む東アジア、あるいは東南アジアをターゲットとした本県企業の同地域の新たな市場開拓や経済交流を支援するといった、もっと広い目的のためにシンガポールに活動拠点として整備をしたものでございますが、開設してからまだ1年程度しかたってございませんけれども、県内企業においても、そちらの地域におけるビジネス展開の関心が高まってまいりまして、今年度は今月、盛岡でシンガポールバイヤーによる特産品商談会開催の予定にしておりますし、それからシンガポールの方でも、ビジネス商談会を来月開催する予定をしてございます。こちらも、今後具体的な成果が早急に出てくるようにしていきたいと思っております。
 この海外事務所設置の成果を上げていくためには、まず、県内企業が積極的に海外事務所を利用していくということが必要でございまして、知名度もそうした企業の皆様方に上げていかなればならないわけでございますので、こうした事務所が開催する各種商談会の参加を今後強く働きかけていきますとともに、個別企業ベースでも積極的に事務所を活用していただきますような、そういう仕組みをつくってまいりたいと考えております。
 それから、産業振興では特に久慈地域の雇用の状況についていろいろ御懸念の向きのお話もございました。この久慈地域、それからあわせて二戸地域もそうなんですが、やはり県北地域は厳しい雇用情勢にあると。その要因として、建設業の就業者割合が県平均を上回っておりますので、公共依存度が高い中で、その公共事業費削減の影響が出ているのは御指摘のとおりかと思います。ただ、この建設投資額の今後の推移ということを考えますと、平成4年から、特に景気対策ということで非常にかさ上げをしたという事実がございました。本来、岩手県の、県の体力なりそれから県の社会資本整備というのは、それ以前の段階が一応平均的な姿ということでございまして、今回、そこの水準まで戻すようなことをやっております。したがって、そうした中で一時期建設業者の数も大分ふえたわけですが、今後は公共事業のみに大きく依存しないような地域づくりがなお一層重要であると、このように考えております。もちろん、建設業から他分野への労働移動についても、モデル事業を実施して、今そういった成果を検証しているわけでございますが、課題等も浮き彫りになってきておりますので、今後もそうした解決策も含めて、さらには農林水産業のみならず、福祉、環境など、幅広い分野での雇用の受け皿となる仕組みづくりを進めていきたいと考えております。そのために、地方振興局や市町村の関係団体と十分連携して、農業参入企業相談センターなどでの活動や、それから建設業界での経営支援センターへの支援といったことを通じて、こうした活動を推し進めていきたいと考えております。
 それから、ジョブカフェでございますが、このジョブカフェはサテライトのセンターを県北・沿岸地域につくるということで、久慈地域につくるわけでございます。今議会で、補正予算でお願いしているわけですが、これは県北・沿岸地域の厳しい雇用情勢を考慮して設置を決断したわけでございますが、もちろん就職支援ということの機能だけではなくて、そういう場に出会いの場を設けるということだけではなくて、地域産業の創出や起業支援といった、今、何もないところに新たにそうした産業を興していくような機能をあわせ持つことを想定して、したがって、その意味でジョブカフェと称しております。いわゆるハローワーク的な、もう既にある企業との出会いの場を設置するのではなくて、より広い機能をその中に持っているものでございますので、久慈地域で今厳しい雇用情勢がある中で、ジョブカフェのサテライトセンターを設けることは意義あると考えておりますし、今申し上げましたような機能が十分発揮されて、地域の新たな産業や雇用の場の創出につながるように、地元と連携をして取り組んでいきたいと考えております。
 それから、建設業の皆様方からも大変厳しい声も十分お聞きをしているところでございます。ただ、一方で財政状況等のことを考えますと、ここで量をさらに拡大することは、ひいては財政再建団体への転落などのこともちらつくわけでございます。かえってまた御迷惑をおかけするということもございます。したがいまして、公共事業の全体的な量を一方でコントロールする中で、今申し上げましたような雇用対策をしっかりととるという方向で、特にまた地域の地場に根差した、地域特性を生かした、足腰の強い産業を育てていくように努力をしていく考えでございます。
 それから、最後にBSEの関係でございますが、これはもう一度申し上げますと、先月発表されました内閣府の食品安全委員会の報告書によりますと、20カ月齢以下の感染牛を、現在の検出感度の迅速検査法によって発見することは困難でございます。また、検出限界以下の牛をBSE検査の対象から除外しても、現在の全頭を対象とした特定危険部位除去の措置を変更しない限り、牛から人への感染リスクは増加しないものと、このように報告書ではされているわけでございます。しかし、この報告書に基づいて、今後、仮に国が20カ月齢以下の牛を検査対象から除外した場合に、現状では消費者の十分な理解が得られるとは言いがたい状況にあると考えております。本県では、一方で消費者の視点を重視した食の安全・安心というものを推進しておりますし、また、全国有数の肉牛生産県であるということもございますので、こうした消費者の安心感を醸成するために、国が若齢牛の検査を仮に取りやめた場合でありましても、本県では当分の間、現在の検査体制を継続する考えでございます。将来的に消費者の意識の変化、新しい知見、国の別途施策の提示など状況の変化がございますれば、その段階で食の安全安心委員会の意見等も聞きながら対応していきたいと、このように考えております。
 その他のお尋ねは関係部局長より答弁させますので、御了承をお願いいたします。
   〔地域振興部長山口和彦君登壇〕

〇地域振興部長(山口和彦君) 市町村合併についてお答えします。
 まず、政策の優先順位についてでございます。
 地方分権を推進していくためには、三位一体の改革も市町村合併も、それぞれ重要な課題と認識しております。市町村合併は、地方分権を実現するための有効な手段でございまして、市町村と住民の自主的な判断によって、地域がみずから行うべきものであると考えております。県としましては、市町村に対し住民に十分情報を提供するとともに、議論を深めて地域のあり方は地域で決めるというように、機会をとらえて地方振興局と連携して助言を行ってきたところでございます。
 また、県の合併支援プランの策定、合併シミュレーションソフトの公表、合併市町村自立支援交付金制度の創設及び合併市町村への県事務の権限移譲方針の公表などによりまして、県内の合併に向けた機運の醸成を図ってきたところでございます。現在、法定協議会を設置し、さまざまな議論がなされておりますけれども、現行の合併特例法での合併を目指す市町村に対しましては、関係市町村からの要請やタイミングを考慮した上で、場合によっては調整に入っていくことも視野に入れて進めていくなど、県としても関係部局との連携を図り、全庁を挙げて支援をしてまいりたいと考えております。
 次に、特命課長の機能についてでございます。
 本年4月から、盛岡、北上、一関、千厩及び久慈の各地方振興局に、市町村合併支援に係る特命課長を配置しております。この特命課長は、地方振興局ごとの重点課題、緊急課題への機動的な対応を図るために配置したものでございまして、従来、企画振興課長がほかの業務とあわせて行ってきた市町村合併に係る業務について集中的に担当するため、管内における連絡調整、市町村及び合併協議会事務局に対する助言、本庁との連絡調整などの活動がよりきめ細かくなっております。
 次に、市町村合併担当課長、これは市町村課に配置しておりますが、配置及びその役割についてでございます。
 合併特例法の期限まで残り6カ月となり、市町村合併に向けた協議が各地で活発に行われていると認識しております。今後は、いまだ法定協に移行していない地域では早急に移行できるよう議論を深めること、また、県との協議が必要な新市町村建設計画の策定を推進することなどが肝要でございます。そのような各地の活動に、より一層支援するため、市町村課に市町村合併担当課長を設置したものでございます。
   〔商工労働観光部長酒井俊巳君登壇〕

〇商工労働観光部長(酒井俊巳君) まず、大連事務所の設置決定の経緯等についてでございます。
 県では、平成14年度に総合政策室が中心となりまして、庁内に、今後の海外における産業展開というテーマで、部局横断の検討チームを設置したわけでございますが、その中で、中国との経済交流に関する現地事務所の設置について検討してきたという経緯が一つございます。また、中国側、大連市側からの働きかけでございますが、本年3月に、宮城県仙台市で開催されました日中東北首脳ラウンドテーブル、また、本年5月に中国の大連市、北京市に観光ミッション団を派遣したわけでございますが、その中におきまして、遼寧省及び大連市から本県事務所の開設に全面的に協力をすると、積極的な働きかけがあったところでございます。
 また、先般、9月15日でございますが、訪日団体観光旅行ビザの発給地域が中国で拡大してございまして、本県にとって経済交流等を本格化するチャンスであると。また、先般開催しました大連商談会等におきましても、県内の企業等から中国市場に対する高い評価等もあったわけでございますので、こうしたことを踏まえまして、これまでの準備を生かし時期を逸することのないよう、来年17年4月、設置を目指して9月補正予算案に事務所設置経費をお願いしたものでございます。
 あわせて、なぜ大連かということでございますが、一つは、大連市は中国東北部最大の国際貿易都市でございまして、本年度から始まる中国政府の東北振興計画等により、さらなる発展が期待をされるということ、それから、大連市には日本の企業が2、500社余進出してございます。日本語教育も盛んでございます。そういう意味で、本県企業が比較的活動しやすい状況にあると判断したことでございます。また、古くから岩手県では中国と民間レベルで大連・岩手友好協会等設立されてございます。こうした古くからの交流もあるということ。それから、先ほどもございましたが、中国と経済交流を進める上では、政府機関との関係構築が極めて重要だと言われているわけでございますが、遼寧省政府、大連市政府も熱烈歓迎をしているということでございますので、そういうよい関係がつくれるものと考えているところでございます。
 なお、大連事務所を設置いたしますが、活動対象は中国全土を対象として考えているものでございます。
 それから、設置主体の社団法人岩手県産業貿易振興協会についてでございますが、議員御指摘のとおり、中国では自治体が直接事務所を開設できないということでございますが、産業貿易振興協会は、海外との経済交流ということも業務の中に入ってございます。したがいまして、性格上、最もふさわしい団体であるということで、その産貿に対する設置並びに運営をお願いしたいと考えているところでございます。
 いずれ、10月に開催予定の同協会の臨時総会におきまして審議していただくわけでございますが、今議会での補正予算の議決をいただきました後、正式に協会の方にお願いをしたいと思っておりますが、十分に御説明申し上げまして、御理解をいただけるように努力したいと考えてございます。
   〔総合雇用対策局長上村俊一君登壇〕

〇総合雇用対策局長(上村俊一君) 地域雇用拡大のための支援策についてでありますけれども、雇用情勢の厳しい県北・沿岸地域においては、これまで、雇用対策関連補助金の要件緩和や国基金事業に係る予算の優先的配分などの対策を講じてきたところであります。
 先ほど久慈市のふるさと創造基金事業についてお話がありましたが、こういった動きは、県内の他の地域にも見られます。このような取り組みについては、基金の造成はもとより、事業構想の提案から評価、事業化まで、市民が主体となって進めていくことが理想的な形であると考えております。
 久慈市の事業につきましては、久慈市に設置予定のジョブカフェサテライトセンターに想定している産業支援機能が、市の事業と連携し、その機能を十分に発揮させていくことで、新たな雇用創出が図られるよう支援してまいりたいと考えております。
   〔農林水産部長今泉敏朗君登壇〕

〇農林水産部長(今泉敏朗君) まず、農業振興についてでありますが、いわて農業担い手支援総合対策事業については、平成17年度までの終期設定がなされているところでございます。現在、国においては、食料・農業・農村基本計画の見直しが行われており、担い手対策や経営安定対策、農地制度のあり方などについて議論されるなど、農業政策が大きな変わり目を迎えようとしております。多分、その始まりが平成18年度あたりになるのではないかと考えております。
 また、農産物や食品のマーケットが多様化、多元化する中にあって、本県の有する気候や立地条件などの多様性が、今後ますます大きな強みになってくるのではないかと想定しているところでございます。したがって、こうした環境の変化を踏まえながら、本県として今後どのような農業施策を展開すべきかということを検討していく中で、これからの支援策について検討していきたいと考えております。
 次に、水産業の振興についてであります。
 まず、漁場整備の考え方についてでありますが、漁業従事者の高齢化が進む中で、安全で作業効率のよい漁場を整備することは、沿岸漁業の振興やつくり育てる漁業を推進する上で極めて重要であることから、今後とも、計画的に、かつ着実に漁場整備に取り組んでまいります。
 次に、特定漁港漁場整備事業の進捗状況と今後の進め方についてでありますが、現在計画されております14地区、この内訳は、漁港・漁場を一体として整備するものが9地区、漁港だけを整備するものが4地区、漁場だけを整備するものが1地区ございますが、漁港につきましては、すべての地区において現在着手してございます。一方、漁場・漁港一体として整備する9地区のうち、漁場の整備に着手しているものが3地区でございます。効果の早期発現という観点から予算の重点化を図っているところであり、漁港整備の進捗を見ながら、順次、未着手の漁場整備にも手をつけてまいりたいと考えております。
 次に、アワビの種苗放流についてであります。
 アワビの栽培漁業の自立を促すため、国庫補助事業を導入し、種苗放流経費等に助成してまいりましたが、当該補助事業は、平成17年度から交付金化する形で概算要求していると聞いております。
 つくり育てる漁業の推進は、漁家所得の安定・向上に貢献し、担い手の確保を進めていく上で極めて有効であり、そのためにも安定的なアワビ種苗の放流体制整備が必要であると認識しており、漁協に対しまして、放流経費の確保策を含め、引き続き種苗放流事業を展開していくことを強く要請してまいりたいと考えております。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕

〇総務部長(時澤忠君) ダンピング防止対策についてでございます。
 適正な施工が見込めないような著しく低価格な受注につきましては、建設業の健全な発達を阻害するとともに、特に、工事の手抜き、下請へのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底等につながりやすいということもございます。このため、これを排除するため、本県では、1億円以上の工事につきましては低入札価格調査制度、1億円未満の工事につきましては最低制限価格制度を採用しております。
 このうち、低入札価格調査制度の運用につきましては、昨年2月とことし1月の2度にわたりまして、数値的失格基準の導入や前払い金支払い割合の引き下げなど、こういった見直しを行いまして、適正価格での競争を確保するための対策を講じてきております。
 これらの対策によりまして、採算を度外視したような低価格の排除、そして、追跡調査によります適正な施工の確保など、一定の効果はあったものと認識しております。
 しかしながら、建設業を取り巻く厳しい社会情勢を背景にいたしまして、一層の受注競争が激化する傾向にございますので、今後、さらに本制度の適正な運用を図るとともに、低入札があった場合、積算が適正かどうか、厳正な調査に努めてまいることといたしております。
   〔教育長佐藤勝君登壇〕

〇教育長(佐藤勝君) 外国人の公立小中学校入学者への対応についてでありますが、まず、外国人子女の在籍状況については、本県における公立小中学校に在籍する外国子女のうち、日本語指導が必要な児童生徒は、平成15年9月の調査によりますと36校に56名在籍しております。その母国語は、中国語、ポルトガル語、タガログ語など10の言語となっております。
 県教育委員会におきましては、このような子供たちが在籍する小学校3校、中学校4校に、日本語指導を行うための教員配置を行っております。また、関係市町村においては、日本語指導のための教材を備えたり、非常勤講師や通訳を主たる業務とする教員相談員等を派遣したりするなど、在籍する児童生徒の実態に応じて、学校ごとに日本語指導を行っている状況にあります。
 このような子供たちは、基本的には、各学校の時間割の中で日本人の子供たちと一緒に授業を受けており、日本語に習熟していないと授業がわかりにくい国語や社会など一部の教科の時間は、別の教室で日本語の個別指導とあわせて授業を受けているなどの状況にあります。
 御提言のありました地域単位の日本語指導につきましては、一部の市町村ではその実態に応じて実施しているところもありますが、各学校の時間割との関係、移動手段及びそれに要する時間などの課題もあります。今後におきましては、より効率的な指導が行われるように、それぞれ置かれている状況をにらみながら、市町村教育委員会と一緒になって工夫してまいりたいと考えております。

〇9番(嵯峨壱朗君) ありがとうございます。
 一つだけ知事にお尋ねします。
 いわば税財源移譲が前提条件だと、一体となって改革が初めて生きてくると。それで、それがうまくいかない場合には案を撤回するということをしばしば、そういう内容のようですけれども、案を撤回するということはどういうことを意味するのかということ。撤回しただけじゃなく、その後、どういう対応をしていくのかということをお聞かせ願いたい。
 そして、もう1点は、私が言うのは何ですけれども、国は本当にやるのかなと、それを非常に不安に思うわけですが、万が一、税源移譲がないことも想定されて、今年度みたいなことがあり得るのかな――あるかもしれない。そういう場合にどういうふうにするのか、想定した場合、知事はどう対応するのかなということをお聞かせ願いたいと思います。

〇知事(増田寛也君) 撤回の関係についてまず申し上げますと、これは、8月24日に6団体の会長がまとまって小泉総理のところにあの改革案を届けに行って、総理から大変ねぎらいの言葉と、これをぜひ尊重したいという話があったんですが、その後、6団体の会長が出てきて、頭撮りだけで、内容のやりとりは公開ではなかったようですが、その後の記者会見で6団体の会長の方から、もしこれが認められなければ撤回もあり得る、こういう話が出ているわけです。ですから、6団体としてそういった強い決意で臨むということだと思いますし、それから、各知事でも、やはり全体の改革案、一部だけつまみ食いされると困るわけで、ほかの県議会でも、それぞれ知事がいろいろ考えを述べていますが、やはりそういった、撤回も辞さずという強い覚悟でやるべきだと、これは当然のことだと思うんですが、そういうことで述べているわけです。私も同じような思いで、撤回も辞さずというつもりで、つまみ食いされないようにやっていただきたい、こういう思いでおります。
 それから、次の点は、なかなかちょっとお答えしにくい部分もあるんですが、ただ、御心配というか、その財源が確保されなかったときにどうなるんだろうかということは、常に考えておかなければいけないということと、それから、今の段階では、やはりそういうことにならないように強い姿勢でそれぞれが臨むということで、嵯峨議員にもお力添えいただいて、会派にもお力添えいただいて、ぜひ小泉総理にこれを実行していただくようにお力添えをいただきたい、こんなふうに思うわけでございます。

〇議長(藤原良信君) 以上をもって一般質問を終結いたします。
日程第2 認定第1号平成15年度岩手県立病院等事業会計決算から日程第35 議案第34号控訴の提起に関し議決を求めることについてまで

〇議長(藤原良信君) この際、日程第2、認定第1号から日程第35、議案第34号までを一括議題といたします。
 議案第33号及び議案第34号について、提出者の説明を求めます。時澤総務部長。
   〔総務部長時澤忠君登壇〕

〇総務部長(時澤忠君) 本日提案いたしました各案件について御説明いたします。
 議案第33号は、平成16年度岩手県一般会計補正予算であります。これは、盛岡地方裁判所の判決に対する控訴の提起に要する経費、及び当該判決による強制執行の停止に要する経費等を補正しようとするものであります。
 議案第34号は、控訴の提起に関し議決を求めようとするものであります。これは、県立施設ふれあいランド岩手用地の代替地に係る土地売買契約に関し、県を被告として提起された損害賠償請求事件について、盛岡地方裁判所が第1審としてなした判決に対して控訴しようとするものであります。
 以上でありますので、よろしく御審議の上、原案に御賛成くださいますようお願いいたします。

〇議長(藤原良信君) これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、発言を許します。斉藤信君。


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