令和2年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇28番(高橋但馬君) いわて新政会の高橋但馬でございます。
 それでは、会派を代表し、知事演述並びに令和2年度当初予算案について知事に質問いたします。
 令和元年12月、武漢市衛生健康委員会から、武漢市における非定型肺炎の集団発生について発表があり、2月20日現在、中国での感染者数は7万4、000人を、死亡した人も2、000人を超え、全世界各地に拡大しています。
 国では、令和2年2月1日、新型コロナウイルス感染症を、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく指定感染症に指定いたしました。また、出入国管理及び難民認定法に基づく上陸の禁止等の対策をしました。岩手県としても、岩手県ホームページにより、県民に情報提供を行い、適時適切に注意喚起していると思います。また、空の玄関口である花巻空港における検疫について、検疫所と連携し、新型ウイルス感染症疑い患者が発生した際の搬出経路の確認等も行ったと承知しています。しかし、中国国内の感染者と死亡者の激増や、横浜港に停泊中のクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスでは、乗客と乗員およそ3、700人のうち、600人を超える人が新型コロナウイルスに感染、国内でも2月20日までに84人が感染し、日々感染者がふえています。
 きのう、乗客の死亡が確認された状況等を目の当たりにすると、県民の動揺はどんどんと広がっているものと感じられます。首都東京と2時間強でつながっている岩手でも、感染者が発生する可能性は否定できません。その場合に、混乱を来すことなく対応する準備が必要だと考えますが、どのような備えをしているのかお示しください。
 東日本大震災津波から来月で9年が経過します。昨年はラグビーワールドカップ2019日本大会岩手・釜石開催が、釜石鵜住居復興スタジアムで行われました。予定していた2試合のうち、ナミビア対カナダ戦は、台風第19号の影響で残念ながら中止となりました。試合が行われるはずだった10月13日、カナダ代表の選手らはボランティアを申し出て、復旧作業を手伝ってくれました。カナダ代表の誠意と思いやりあふれる行動に心から感謝します。
 また、釜石市など県内各地の津波伝承施設にも多くのラグビーファンが訪れました。この大会を通して、全世界へ東日本大震災津波からの復興の歩みが伝わったと考えます。そして、昨年の9月22日に東日本大震災津波伝承館―いわてTSUNAMIメモリアルが完成し、三陸防災復興プロジェクト2019も開催されました。
 このような状況も踏まえ、来年、震災から10年目の節目の年となります。復興の姿をどのように伝えていくおつもりか、知事の決意を伺います。
 そして、ことしは東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。大会コンセプトは、つなげよう、スポーツの力で未来に、であり、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が復興の後押しとなるよう、関係機関と連携して取り組みを進めながら、スポーツの力で被災地の方々の心の復興にも貢献できるよう、アクションを展開するとされています。
 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、東京以外の地方自治体にとっても地域活性化のチャンスであると考えます。世界から日本が注目される機会を生かし、その材料となる地域の特色ある資源、食、伝統工芸、文化などを世界各国にどのような方法で発信するか、具体的に考えていかなくてはなりません。
 あわせて、県民やNPO、地元企業等の士気を高めていく必要があると思います。現在までの県の取り組みと東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした地域振興に対する知事の思いをお知らせください。
 先月30日、日本学術会議より、2020年以降の大型研究計画の在り方に関する指針―マスタープラン2020が公表されました。焦点となった国際リニアコライダー―ILCは、学術的意義を有する大型研究計画に位置づけ、実現に向けた国内手続の一つ、文部科学省の学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想に申請する権利は確保しましたが、より優先度の高い重点大型研究計画には盛り込まれませんでした。
 ILCについては、昨年3月7日の政府の関心表明において、日本学術会議のマスタープランなど正式な学術プロセスでの議論が必要と示されておりましたが、今回の選定結果について知事の所見を伺います。
 昨年10月28日から11月1日まで、リニアコライダーに関する国際会議―LCWS2019が開催され、世界中のリニアコライダー研究者が仙台に集まりました。そして、ILCの建設及び科学的探究を国際プロジェクトとして推進することを改めて誓うとする仙台宣言が採択されました。また、いわて県民計画(2019〜2028)の推進に向け、2020年7月、ILCによる地域振興ビジョンを策定し、国際研究都市の形成支援、イノベーションの創出、ILCによるエコ社会の実現、海外研究者の受け入れ環境整備、交流人口拡大と地域の科学技術教育水準の向上の5本の柱を掲げ取り組んでいるところと認識しております。
 ILC実現に向け、岩手のトップリーダーとして、今後の取り組みをどのように考えているか伺います。
 岩手ホテルアンドリゾートが、八幡平市の安比高原に、英国の名門私立学校ハロウ・インターナショナルスクールと提携したインターナショナルスクール整備に向けた設置計画が、岩手県私立学校審議会で了承されました。
 なぜ、日本の中で安比が選ばれたのでしょうか。
 設置趣意書を引用すると、もともとのハロウの教育理念は、パストラル・ケアに基づく、世界に通用するリーダーとなる人材育成にある。パストラルとは、もともとラテン語で羊飼いを意味し、迷える子羊に方向を指し示し、救うのがパストラル・ケアである。ハロウの本校がロンドンの中心部ではなく、いまだロンドン郊外の牧歌的な環境にあるのはこの点にある。全人的な教育を行う場合、都市部より牧歌的な環境に非常に大きな利点があるとハロウは考えており、日本国内の数ある候補地の中から安比の自然豊かな環境に注目し、四季を通じてさまざまなスポーツやアクティビティを行える設備も既に整っている安比に白羽の矢を立てたというのが経緯であるとのことでありました。
 このような世界に通用するリーダーとなる人材を育成するインターナショナルスクールができることで、地域への大きな波及効果が期待されるところであります。また、ILCの外国人研究者の子供たちが通う学校としても、一つの選択肢に挙がると考えられます。
 今回、設置計画が了承されましたが、本県に世界的な人材が集積することについて、ILC誘致とも関連すると思いますが、県のトップとして、本県への効果と期待をお知らせください。
 岩手県では、平成31年3月に岩手県ICT利活用推進計画を策定しました。過疎地域や中山間地域などの条件不利地域において、採算面からの通信事業者による携帯電話や超高速ブロードバンドなどの情報通信基盤の整備がおくれていることから、引き続き市町村と連携し、県民の生活や産業経済活動に欠かせない情報通信基盤の整備を促進し、地域間のデジタルデバイドの解消を図る必要があります。また、国内外からの観光客が必要な情報を円滑に入手できるよう、無料公衆無線LAN等の環境整備をする必要があります。これまで、県では、宿泊施設を初めとする観光施設の無線LAN等の整備に対する補助を行ってまいりました。
 海外を見ますと、ニューヨークでは、リンクNYCという無料Wi−Fiステーションのプロジェクトがあります。このプロジェクトでは、ニューヨーク内にある公衆電話を公共Wi−Fi、ほかにも国内通話や緊急電話911、充電ができるUSBポート、周辺のマップなどを無料で利用できるステーションにかえて、2024年までに7、500台の設置を目指しているとのことであります。そして、Wi−Fiの速度は高速ギガビット、つまり、毎秒1ギガビットの通信が可能なLANの規格であります。このリンクNYCが無料で使用できます。無料の理由は、広告収入があるからです。ステーションには電子掲示板があって、そこに広告が流れます。宣伝会社にも、利用者にも、ニューヨーク市にもうれしいシステムになっております。
 今後、ソサエティー5.0の進展が期待されます。いわて県民計画(2019〜2028)に掲げるプロジェクトにおいても、ICTの活用が不可欠なものも多くあります。5Gを初めとする情報化は急速に進むものと考えますが、それを活用できる情報通信基盤が整わなければ、都市と地方の格差はさらに拡大していきます。情報通信基盤の整備は民間の動きも活発であり、官民が協力した基盤整備を進めていくことが重要と考えます。
 地方における情報化の必要性をどのように認識しているのか、また、情報通信基盤の整備の方向性をどのようにするのか、知事の考えを伺います。
 最近の観光業界の情勢についてですが、新型コロナウイルス感染症の影響で、大変な状況になっていくことが想定されます。日本と中国を結ぶ国際線では、多くが運航停止となっています。また、さっぽろ雪まつりでは、中国からの観光客が大幅に減少し、来場者が26%減少しています。特に北海道、東北を中心に、スキーリゾートはインバウンドに力を入れており、そのウエートも大きくなってきています。インバウンドは今後も拡大が期待されるところですが、中国頼りのように特定の国に偏ることのリスクもあります。
 世界的な旅行ガイドブック、ロンリープラネットが昨年発表したお勧めの旅行先で、東北が3位に選ばれました。世界の中の3位であり、日本から選ばれたのは東北だけであります。
 このように、東北にはまだまだポテンシャルがあります。ラグビーワールドカップ2019でも世界中から岩手県に来ていただき、その魅力を体感していただきました。今後は、これまでターゲットとしていなかった国にもアプローチをしていくことが重要です。例えば、昨年10月に就航したバンコク―仙台は順調に伸びています。
 昨年11月の東北における外国人宿泊者数を見ると、タイの宿泊者数が、前年同月の2倍以上となる129%増となっています。東南アジアはまだまだこれからも有望な国があります。インドネシアなどは、経済成長や人口規模からも、今後有望だと思われます。一方、全方位でセールスを行っても、ターゲットが明確でなければ成功は難しいものとなります。
 今後、インバウンドの増加に向け、どのようなお考えで取り組みを進めていくのか伺います。
 また、2021年には、東北デスティネーションキャンペーンが展開されます。この東北DCが一過性のものではなく、その後につながるようにするためには、まず、2020年は、動ではなく静の1年にするべきです。東北DCをゴールにするのではなく、東北DC以降のレガシーを考え、まずは県内の受け入れ態勢を整備するべきです。
 観光地域づくりにおいては、DMOの役割が期待されます。DMOと市町村が連携し、県内の市町村の観光行政を、そのまち独自ではなく、一定のエリア単位で考えさせるべきです。
 このように、東北DCへの対応について、ぜひとも、東北DC前の期間、東北DC期間、東北DC後の期間それぞれで必要な対応は異なってくると考えますが、それぞれの時期において、どのような方向性により継続的な観光客の増加につなげていくのか、知事のお考えを伺います。
 一昨日、2月19日に、白血病で療養中の競泳女子池江璃花子さんが報道番組に録画で出演し、一番しんどいときには死んだほうがましだと思った。ここにいることが奇跡、生きていることが奇跡というふうに気持ちが変わった。病気の方たちにも絶対に希望を持って治療に励んでほしい。ここまで元気になれた人間がいるんだから、あなたも元気になれるよということを伝えたいと語っていました。多くの白血病患者に勇気と希望を与えてくれたと考えます。
 私は、昨年6月定例会において、ドナーのための助成制度を創設する考えはないかお尋ねしました。令和2年度当初予算案では関連予算が拡充され、事業所の従業員が有給のドナー休暇制度を利用して骨髄提供した場合は、事業所に対して1日当たり1万円、同制度を利用せずに骨髄を提供した場合は、ドナー本人に1日当たり2万円を市町村が補助する想定で、これに要した経費について、7日を上限にその2分の1を県が補助する支援制度が実現することとなりました。本当にありがとうございます。
 昨年10月の骨髄バンク推進月間には、県の広報によるドナー登録協力依頼等の普及啓発を行い、ドナー登録説明員の養成を実施したようですが、その成果をどのように認識しておられるか伺います。
 先日、2月3日の岩手日報には、金ケ崎町在住の会社員で、自身もドナーとなった経験があり、骨髄バンクのドナー登録説明員としても委嘱されている桑島さんのコメントが掲載されていました。
 自分は職場の理解があって休暇を取ることができた。提供する機会を諦めるのは患者にもドナーにも悲しいことであり、提供しやすい環境整備が進んでほしい。
 彼は、私の大学の後輩で、彼からの相談から前回の質問をしました。
 日本骨髄バンクによると、岩手県のドナー登録者数は3、188人。現在、県内のドナー休暇制度を導入している企業、団体について現状をどう把握しているのでしょうか。
 日本骨髄バンクによると、適合通知を受け取ったドナー候補者のうち、仕事や育児により都合がつかないという理由や連絡がとれないことで、適合しているにもかかわらず、約半数が提供に至っていないといいます。企業、団体がドナーに対する理解を深めることで、救える命があるのです。
 県内企業にドナー休暇制度が普及し、県内全ての市町村でドナーや企業に対する補助の導入が進むよう取り組むべきと考えますが、県の取り組みの方向性についてお知らせください。
 令和2年度から、医学部に入学し、将来、産婦人科を選択する意思を持つ医学生を対象に奨学資金の貸し付けを行う産婦人科特別枠医療局医師奨学資金を設けることが先日発表されました。産婦人科または小児科医を専攻した奨学金養成医師の配置については、義務履行の際に、他の診療科を専攻した養成医師が中小規模の医療機関で総合診療等に従事しなければならない期間においても、医師不足が深刻な県立病院の地域周産期母子医療センターで産科医として優先して診療することが平成30年度から特例的に可能となりました。医学生奨学金制度の特別枠により、将来へ向けて少しずつ産婦人科医をふやしていくと同時に、女性医師の養成も重要となると考えます。また、新たに、岩手医科大学の総合周産期母子医療センター勤務の1年間についても、義務履行として認めることになりました。同センターには全県から患者が集まり、ここでの勤務が一番大変なところです。このような事情もあり、岩手医科大学の関係者からの意見も踏まえ実現したものと考えられます。
 日本産科婦人科学会会員の勤務実態調査2014によると、会員の年齢別、男女別、施設別分布を見ると、会員の年齢別、男女別、施設別分布を見ると、50歳以下では女性が50%を占めています。50歳以上の女性はわずかで経年的な解析は行えないが、女性医師の今後の動向で周産期医療供給体制は大きく変わる可能性があるとの見解を示しています。岩手県における産婦人科の女性医師対策に向けた知事の考えをお示しください。
 過去3年間の自然災害を見ると、平成29年台風第18号、平成30年台風第25号、令和元年台風第19号と、毎年台風による災害が起きているのが現状であります。岩手県は、急峻な地形条件に加えて沿川は狭隘な平地に人家や田畑が集中している状況にあり、前線性や台風による豪雨によってたびたび出水による被害が生じています。
 例えば、土砂災害危険箇所のうち急傾斜地崩壊危険箇所については、盛岡広域振興局管内で保全人家5戸以上が176カ所、保全人家1から4戸が422カ所、人家はないが新規立地が見込まれる箇所8カ所で、合計606カ所となっており、県全体では6、959カ所と多く、このほかにも土石流危険渓流、地すべり危険箇所が存在し、昨今の台風などの豪雨によって土砂災害が発生している状況を鑑みると、早期の対応が望まれます。
 我が国では、たび重なる大災害によりさまざまな被害がもたらされてきました。国としても、災害から得られた教訓を踏まえて対策を強化しております。人命の保護が最大限に図られることなどを目的に、国土強靱化を推進しています。
 県では、岩手県国土強靱化地域計画令和2年度関連予算案を2月に公開しました。知事は、さきの所信表明で、強靱な県土づくりを推進し、予期せぬ災害に対応できる防災体制の整備を進めていくと述べられていますが、水害や土砂災害に対する事前防災について、どのように取り組んでいかれるのかお尋ねいたします。
 県政の重要課題として位置づけてきた県北・沿岸振興ですが、県北地域では、食やアパレル、漆といった地域の特徴的な産業振興や新たな補助制度と要件緩和策を講じながらの企業誘致等の取り組みを、沿岸地域においては、東日本大震災津波からの創造的な復興を目指し、生活基盤の再建と産業の再生、震災の風化防止や教訓の発信に向けた施策が展開されてきました。
 その成果をうかがい知ることができる一方で、人口減少や高齢化は県平均を上回るスピードで進んでおり、持続的に発展する地域をつくっていくためには、復興需要に支えられてきた産業構造からの転換や核となる産業人材の育成、地域産業の強化が必要であります。
 そのためにも、若者の地元定着やU・Iターン希望者がスキルを生かせるような働き方や魅力ある仕事の創出、先端技術を暮らしや第1次産業を初めとする地域産業に積極的に導入することなど、新たな展開が求められていると考えます。
 県北・沿岸振興を推進する推進本部は、設置から14年目を迎え、これまで本部長は7年にわたり千葉前副知事が担当され、昨年4月から保副知事が新たに担当されております。
 推進本部設置から時間が経過し、また、県庁組織も再編されます。復興を確かなものとするとともに、地域のポテンシャルを最大限に生かしながら、地域が抱える課題に対し総合的に施策を展開していくために、より機動性と実効性を持った推進体制となるよう見直しも必要と考えます。
 いわて県民計画(2019〜2028)に掲げる三陸、北いわての二つのゾーンプロジェクトの実現に向け、来年度はどのような施策を柱に据え取り組むお考えか、推進体制とともに具体策をお示し願います。
 以上で会派を代表しての私の質問を終わります。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 高橋但馬議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、新型コロナウイルス感染症についてでありますが、県ではこれまで、帰国者・接触者外来や相談センターの設置、感染症指定医療機関等による医療連絡会議の開催等により、県内で感染者が発生した場合の対応体制を整えるとともに、県民の安全・安心に密接に関連する各分野の団体による関係機関連絡会議を開催し、相互に連携して取り組んでいくことを確認したところであります。
 この18日には、知事を本部長とする岩手県新型コロナウイルス感染症対策本部を設置したところですが、今後、県内において感染者が発生した場合には、診療体制が整っている医療機関での適切な治療へと確実につないでいく体制を整えておりますので、県民の皆様には、今回国が示した相談、受診の目安に当てはまる場合には、保健所等の帰国者・接触者相談センターに相談していただくよう、県のホームページや報道機関等を通じて周知してまいります。
 次に、東日本大震災津波からの復興についてでありますが、これまでの取り組みによって復興の歩みは着実に進んでいると認識していますが、一方で、依然として1月末で889名の方々が応急仮設住宅等での生活を余儀なくされており、新たなコミュニティーの形成支援や被災者の心のケア、被災事業者の販路の開拓、拡大や担い手の確保など、被災者や被災地の実情を踏まえた支援に引き続き取り組んでいく必要があります。
 これらに加え、年月の経過とともに記憶の風化が懸念されることから、復興への理解や継続的な支援、参画を促進していくことが必要です。
 そのため、発災から10年目を迎える令和2年度においては、復興五輪として開催される東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会において、多くの県民が参画する事業や東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関連しての魅力発信、県内市町村と出場国、地域との交流を通じ、これまでの多くの復興支援に対する感謝と岩手の復興の姿を発信するほか、国内外の防災力向上に貢献すべく、東日本大震災津波伝承館と海外津波博物館との連携や国の10周年事業との連動による復興情報の発信などにより、よりよい復興に取り組む姿、そして防災、減災の最先端地域としての三陸の姿を広く国内外に発信してまいります。
 次に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会についてでありますが、復興五輪を理念とする東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、復興の姿とあわせ、岩手の魅力を世界中に発信し、多くの国々との新たな交流を広げ地域振興につなげていく絶好の機会であります。
 そのため、オリンピック聖火リレー及びパラリンピック聖火フェスティバルの実施に向け、全市町村と連携、協力して対応を進めてきているほか、東京都に次ぐ全国第2位の登録数となっている県内19市町村のホストタウンにおける相手国等との交流事業や企業、団体等と連携した各種イベントの展開などを通じて、機運醸成や情報発信に努めております。
 いよいよ来月には、聖火リレーに先立ち、ギリシャから到着した聖火を復興の火として三陸鉄道やSL銀河等で展示を行います。
 さらに、選手村での県産木材の使用展示や県産リンドウを活用したビクトリーブーケのメダリストへの授与、本県が誇る食材や伝統工芸品の提供、加えて、都内での情報発信拠点東北ハウスで、岩手の自然や伝統文化、観光などの本県ならではの魅力発信等に取り組みます。
 これらを通じ、世界各国との交流を一層深め、本県のすぐれた食、自然、世界遺産や郷土芸能などの資源を生かし、将来の人的、経済的交流の拡大につなげ、本大会が復興の力となり、ふるさと振興の大きな前進となるようオール岩手で取り組んでまいります。
 次に、ILCの推進についてでありますが、今回のマスタープラン2020の議論は政府の関心表明を踏まえたもので、これにより学術的な意義が確認され、ILCに対する国内の科学コミュニティーの理解が深まったものと認識しています。
 重点大型研究計画の選定に当たっては、計画の学術的意義などの評価に加え、計画の準備状況の成熟度等も評価の観点とされたところです。
 ILCについては、現在、文部科学省において国際的議論が進められている段階にあることから、今後、これらの進捗も踏まえながら、外交や地方創生など国としての総合的な観点で判断していくものと考えております。
 次に、今後の取り組みについてでありますが、ILCは、宇宙の成り立ちを探究するアジア初の大型国際研究機関であり、新産業の創出や人材の育成、多文化共生社会の実現など世界に開かれた地方創生のモデルともなるプロジェクトです。
 このようなことから、国においては、海外との調整状況等を踏まえながら、今後、総合的な判断を行うものと考えております。
 県としては、ILCの機運醸成を初め、地域振興ビジョンに基づく地元の受け入れ環境の整備やイノベーションの創出等、ILCの効果が最大限に発揮できるよう取り組みを強化するとともに、超党派の国会議員連盟など関係団体との密接な連携のもと、国内外の動向に臨機に対応しつつ、国に対し、創造的復興や地方創生などの観点も強く訴えながら、その実現に向け取り組んでまいります。
 次に、ハロウ・インターナショナルスクールについてでありますが、ハロウスクールは、伝統と格式を誇るイギリス屈指のパブリックスクールであり、世界に貢献する人材を輩出するとともに、地域との交流による地域貢献活動にも積極的に取り組んでいる学校と伺っております。
 ILC実現に向けた取り組みを進める上で、国際的な教育環境の整備が重要である中、こうしたインターナショナルスクールが本県に設置されることは、大変意義深く、ILCの誘致実現にも資するものと考えます。
 また、同校と地域のさまざまな交流が行われることにより、本県の児童生徒の学力向上やグローバル人材の育成、国内外との交流の促進、地域活性化への寄与が期待されるなど、大きな波及効果があると考えています。
 次に、ICT利活用の推進についてでありますが、広大な県土を有する本県においては、情報通信技術の効果的な活用、実装は、時間や地域の制約を超え、社会や産業の発展につながる可能性を秘めており、県民計画に掲げる新しい時代を切り拓くプロジェクトの強力な推進力となると考えています。
 特に、第5世代移動通信システム―5Gは、幅広い産業が展開し、人々の暮らしや仕事の現場に広がりのある本県においては、産学官の連携による活用や実装の可能性が大きいと考えています。
 こうしたことから、戦略的な観点に立ち、来年度においては、NTTドコモや岩手大学と連携し、5Gに係る総合実証を実施するとともに、事業者や大学と連携し、ローカル5G等を活用した中山間地域における地域課題解決モデルの構築に向けて取り組んでまいります。これらの新しい産学官の枠組みによる施策を着実に推進することで、本県における情報通信技術の活用や実装の場を広げ、5Gを初めとする情報通信基盤の整備を促進してまいります。
 次に、インバウンドの増加に向けた取り組みについてでありますが、県では、平成29年3月に策定したいわて国際戦略ビジョンに基づき、台湾を最重点市場、中国、香港、韓国を重点市場、そして東南アジア、豪州を開拓市場として、本県の知名度や市場の特性を踏まえたプロモーション活動などを東北各県等とも連携して取り組んできました。この結果、平成30年の本県外国人宿泊者数は過去最高となり、令和元年もこれを更新する見込みとなっています。
 今後においても、外国人観光客の旅行形態の変化や各市場のニーズを的確に把握し、それらに対応したプロモーションやセールス活動等により誘客を図ってまいります。
 次に、東北デスティネーションキャンペーンについてでありますが、東日本大震災津波から10年の節目となる令和3年度に展開される本キャンペーンは、東北、そして岩手の魅力に触れていただく絶好の機会であると捉えています。
 本県では、震災以降、沿岸地域を中心に多くの体験コンテンツが開発されるなど、地域が主体となった観光地域づくりが進められてきました。
 令和2年度においては、市町村やDMOなどとの連携のもと、こうした観光資源をさらに磨き上げるとともに、全国宣伝販売促進会議などを通じた旅行商品の造成や県独自のプレキャンペーンの実施など、プロモーションを強化していきます。
 東北DC期間中には、東北各地の観光地を楽しむ多くの方々に、岩手の質の高いおもてなしや豊かな観光資源を体験いただき、岩手ファンをふやすことでリピーター化を図ります。
 東北DC期間後は、東北DCにより培われた東北のブランド力やオール東北のつながりを生かし、国内外への発信力を強め、岩手の観光力の一層のレベルアップにつながるよう取り組んでまいります。
 次に、骨髄バンクのドナー登録についてでありますが、ドナー登録者数の拡大は骨髄移植の可能性を高め、白血病などの治療が困難な血液疾患の患者を救うことにつながる重要な取り組みであると認識しています。このため県では、ドナー登録推進月間を中心とした普及啓発を行っているほか、保健所における毎月の登録受け付けや献血会場でのドナー登録会などにより、登録を推進する取り組みを行ってまいりました。
 さらに登録者数を増加させるためには、日本骨髄バンクの委嘱を受け、骨髄提供の必要性や手続について説明を行うドナー登録説明員の果たす役割が重要であることから、今年度、県主催により養成研修を実施したところです。この研修で、従来の3名に加え、新たに2名が委嘱を受けたところであり、これによりドナー登録会への説明員の参加機会が増加しており、本県のドナー登録者の拡大につながるものと考えます。
 今後とも、引き続き普及啓発やドナー登録説明員の養成等の取り組みを実施し、日本骨髄バンクや岩手県赤十字血液センターなど関連団体とも連携しながら、ドナー登録者の確保に向けた取り組みを推進してまいります。
 次に、ドナー休暇制度についてでありますが、ドナー登録者から骨髄を必要としている患者への移植の可能性を高めるためには、登録者の拡大とともに、登録者が骨髄の提供に協力しやすい環境づくりが重要であります。
 いわてで働こう推進協議会が平成30年に実施した調査によると、ドナー休暇などの有給のボランティア休暇を導入している県内事業所の割合は8.4%であり、必ずしも提供に協力しやすい環境とは言えない状況にあります。
 県では、議員から御紹介のあった骨髄ドナー等への助成に関する経費を令和2年度当初予算案に盛り込んだところでありますが、事業所に対する助成は、ドナー休暇の活用を要件とすることで、休暇制度導入のインセンティブとしての効果を期待しているところです。
 また、この助成制度については、現在、約半数の市町村が導入に積極的な意向を示しており、今後、円滑な導入や実施市町村の拡大に向け、説明会の開催などの取り組みを予定しております。
 今後も、県内事業所に向けたドナー休暇制度の理解促進の取り組みや市町村のドナー助成促進の取り組みを通じて、骨髄の提供に協力しやすい環境の整備を推進してまいります。
 次に、医師確保対策についてでありますが、県の奨学金養成医師全体に占める女性医師の割合は増加傾向にあり、特に産婦人科を選択した養成医師については、3分の2が女性医師となっています。
 また、県立病院で見ると、女性医師の割合は、全診療科の平均が約15%であるのに対し、産婦人科においては30%を上回っており、今後も増加が見込まれる状況となっています。
 産婦人科の女性医師については、同性の医師に診察してもらえることによる安心感を患者にもたらすことなどが期待される一方で、出産や育児による勤務への影響もあることから、女性医師が働きやすい勤務環境の整備を進めていくことが重要です。
 県立病院においては、女性医師の仕事と家庭の両立を支援するため、院内保育所による24時間保育の導入や育児短時間勤務制度の拡充などに取り組んできたところであり、令和2年度から新たに、現場の女性医師からのニーズが高い病児保育の実施に向け、岩手県立中央病院で先行して検討することとしています。
 県としては、このような女性医師支援の取り組みを現在策定中の岩手県医師確保計画に位置づけ、医師が働きやすい職場環境づくりを進めながら、産婦人科医の確保に取り組み、周産期医療体制の充実を図ってまいります。
 次に、自然災害への対応についてでありますが、自然災害から県民の安全・安心な暮らしを守ることは、行政の根幹的な責務の一つです。
 このため、いわて県民計画(2019〜2028)において、河川改修や津波防災施設、砂防堰堤、急傾斜地崩壊対策施設の整備などのハード対策と災害関連情報の充実強化などのソフト施策を効果的に組み合わせた防災、減災対策を推進することとしています。
 また、県では、平成30年7月豪雨を契機として、昨年度全国で実施された重要インフラの緊急点検などにより災害対策が必要な箇所の把握を行っており、その結果に基づき、計画的な河道掘削や砂防堰堤の整備などの水害対策や土砂災害対策について、国の防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策の予算も活用しながら取り組みを進めています。
 これらの災害対策については、緊急対策期間終了後も継続していく必要があることから、今後策定する次期岩手県国土強靱化地域計画に位置づけるとともに、国に対し必要な予算の確保を強く働きかけながら、近年多発する自然災害に備えた取り組みを計画的に進めてまいります。
 次に、県北、沿岸振興についてでありますが、県北、沿岸圏域の振興については、引き続き重要課題と位置づけ、新設する県北・沿岸振興室が中心となって、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げる北いわて及び三陸のゾーンプロジェクトにより力強く推進することとしています。
 具体的には、県北地域では、あらゆる世代が活躍する地域産業の展開に向け、食産業やアパレル産業などの業容の拡大や先端技術を活用した北いわて型スマート農業技術の導入、産業を担う人材育成の強化などを図ります。
 沿岸地域では、震災の教訓の伝承と復興の姿の発信に取り組むとともに、復興の象徴である三陸鉄道を活用した誘客促進や三陸ジオパーク活動の一層の推進、三陸の豊かな食を生かした施策など、多様な魅力を発信することにより交流人口の拡大を図ってまいります。
 こうした施策を市町村や団体、企業など多様な主体と連携して進めることにより、持続的に発展する地域の創造を目指してまいります。
〇副議長(中平均君) 次に、工藤勝博君。
   〔47番工藤勝博君登壇〕(拍手)

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