令和2年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇47番(工藤勝博君) いわて県民クラブ、工藤勝博です。会派を代表して質問させていただきます。
 達増知事におかれましては、昨年の知事選挙で4選目を勝利し、4期目の県政を担っておられます。翻ってみますと、在位4期目を全うした知事は、昭和38年4月から昭和54年4月の千田正元知事だけです。
 そこには共通点が何点かあります。1点目は、ともに国政の場において、参議院議員、衆議院議員として岩手の代表として御尽力されたこと。2点目は、歴史的に記録されている甚大な自然災害に遭遇していること。3点目は、在任中に国民体育大会、全国植樹祭を実施すること。4点目は、政権与党と対峙する政党の推薦を得て選挙戦を勝ち抜いていることです。5点目は、俗に言う革新知事の誕生と言われるゆえんではないでしょうか。
 そこで、これら共通点をどう認識し県政を運営していくのか伺います。時代背景は大きな違いがありますが、千田正元知事の政策の柱に、後進性の打破、地域格差の是正が150万県民の悲願であることを主要なテーマとして、昭和38年度に岩手県総合開発計画を策定しています。
   〔副議長退席、議長着席〕
 この格差ということは、全国水準との格差を指すこともあり、県内においては県北と県南の格差、辺地と都市部の格差をいう場合もありますが、千田正元知事は、まず、県北を初め辺地の底上げをすることによって全体の水準を高め、対全国格差を縮小することができると考え、道路整備、無電灯部落の解消、無医村の解消、複式学級の解消、畑作振興を掲げ、国にも強力に要望しています。
 時は経てもこの地域格差は大きな課題であることは言うまでもありません。現在でも社会資本―道路、交通網、情報、上下水道―医療、教育、所得格差等の是正なくしては、県民の幸福度の向上にはつながりません。
 千田正元知事は、日本の食料供給基地を目指して農林漁業を大いに発展させるべく、みずからの構想のもとに畜産振興に情熱を傾け、その成果は今日の岩手の畜産の土台となっています。岩手の地域特性を十分に考慮したスケールの大きい発想は、トップリーダーとして欠くべからずの資質と思いますが、知事の所感を伺います。
 先日、いわて幸せ大作戦フォーラムに参加しました。300人の定員に250人の出席であります。陸前高田市出身の俳優、村上弘明さんのスペシャルトークがメーンで、岩手で暮らす幸せ、岩手とつながる幸せと題して5人のクロストーク。
 このフォーラムで感じたことの一つが、村上弘明さんは、陸前高田市から釜石市まで30分、釜石シーウェイブスゼネラルマネジャーの桜庭吉彦さんは、秋田市から釜石市まで今までは5時間かかっていたのが3時間でつながったという、道路整備効果の生の声が聞けたことです。このことからも、岩手で暮らす幸せ、つながる幸せを実感することは、不便を解消する政策が不可欠であります。
 そこで改めて伺います。県内では高速道路、高規格道路は縦軸2本、横軸2本が整備されています。横軸2本はいずれも盛岡以南であり、道路網の格差解消が産業振興の格差解消、暮らしの格差解消につながります。
 いわて県民計画(2019〜2028)北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトの土台となる北岩手・北三陸横断道路の実現に向けた県の見解を伺います。あわせて、4期目の知事の柱となる政策をお聞きします。
 次に、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略について伺います。
 2015年度に開始した第1期岩手県まち・ひと・しごと創生総合戦略が2019年度で終了し、2020年度から第2期岩手県ふるさと振興総合戦略がスタートします。県では、これまでの成果と課題を示しております。3本の柱である、岩手で働く、育てる、暮らす、それぞれのKPIの達成状況はおおむね80%から82%達成とありますが、人口減少の大きな要素であります社会減がより拡大しています。また、2018年の出生数は、記録が残る1961年以降過去最低の7、615人で、3年連続の減少であります。ポイントとなるこの指標がいずれも未達です。どう認識されているのか伺います。
 また、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略の推進目標に、関係人口の拡大戦略が追加されました。関係人口とは一体どういう方を指しているのか、具体的に明示しなければ言葉遊びに聞こえます。お聞かせください。
 昨年、民間調査会社が、47都道府県それぞれ350人のモニターから、自分の住んでいる地域に感じている悩みや課題を尋ねたほか、幸福度などの評価をつけてもらい、ランキングした調査が公表されました。この結果によると、岩手は悩みの多い都道府県全国4位です。悩みの中で最も多かったのは、病院、医療施設の不足、相続、物価上昇、税金、社会保障の負担、また、少子高齢化や経済停滞など、課題の多い都道府県でも全国2位の多さであります。
 地域に対する評価では、幸福度がワースト2位、生活の満足度はワースト4位、住んでいる地域への愛着度は30位、今後も住みたいという定住意欲の強さはワースト8位であります。
 全国の傾向を分析すると、悩みや課題と地域に対する評価には相関関係があると思います。満足度に最も影響する悩みは、電車やバスなどの交通インフラの路線廃止や減便、次に病院や医療施設の不足があります。定住意欲は人口分布と比例する傾向があり、ここでも交通インフラや医療サービスなどが強く反映されています。
 岩手で暮らす中で、暮らしの満足度が低位であることをしっかり捉え、政策推進を図らなければならないと思いますが、見解を伺います。
 12月定例会で組織再編が可決され、政策企画部、地域振興に特化したふるさと振興部でいわて県民計画(2019〜2028)の着実な推進を図ることとあります。いわて県民計画(2019〜2028)と第2期岩手県ふるさと振興総合戦略、この二つの計画推進母体はふるさと振興部と理解しますが、どちらが上位計画なのか、区別がつかない状況にあるのではないでしょうか。新しい指標、関係人口、ソサエティー5.0、SDGs等どのようにして第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に落とし込み、地方創生につなげていくのか問われます。
 職員体制も刷新され、各プロジェクトの推進を担う地域振興室を強化して取り組む方針は評価しているところですが、一つ提案があります。三陸沿岸のプロジェクトには沿岸出身の職員を配置するなど、限られた職員の配置を地元出身の職員、すなわち、ふるさと職員で構成されてはいかがでしょうか。それぞれ地域の実態を把握しているふるさと職員がチームを組むことにより、政策推進効果は格段に上がると思います。
 そこで伺います。ふるさと振興の推進には、市町村との連携を含め地域との連携が一層重要になると考えますが、どのように連携、協働を進めていくのか伺います。
 以後の質問は降壇して質問席で行います。よろしくお願いします。
   〔47番工藤勝博君質問席に移動〕
   〔知事達増拓也君登壇〕
〇知事(達増拓也君) 工藤勝博議員の御質問にお答え申し上げます。
 まず、県政運営についてでありますが、千田正元知事は、高度経済成長を背景にさまざまな事業を展開し、今日の岩手の基礎をつくられたものと認識しております。また、千田正元知事は、4期目最初の知事演述において、本県の進むべき方向として県民全てがお互いに温かい心と心で結ばれ、物心ともに豊かな生活を営むことのできる地域社会の建設を掲げられました。こうした考え方は、いわて県民計画(2019〜2028)の理念と相通じるものであり、今後の県政推進に当たっても、千田正元知事を初め、歴代知事や先人による岩手の将来を見据えたさまざまな施策や、災害からの復旧、復興などの事績を継承、発展させていくことが重要と考えます。
 このような考えのもと、いわて県民計画(2019〜2028)に基づき、東日本大震災津波を初めとした災害からの復旧、復興に最優先で取り組むとともに、県民一人一人の暮らしや仕事に着目した政策を着実に推進し、いわて県民計画(2019〜2028)の基本目標である、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現を図ってまいります。
 次に、千田正元知事の施策についてでありますが、千田正元知事は、昭和38年度に策定した岩手県総合開発計画に基づき、後進性の打破と地域格差の是正を目指し、さまざまな施策を推進したと承知しています。いわて県民計画(2019〜2028)においても、地域が置かれている状況や地域資源の特性を捉え、それぞれの地域の強みを伸ばし、弱みを克服することが重要であるとの認識のもと、地域振興を一層推進するための施策を盛り込んでおります。
 また、いわて県民計画(2019〜2028)では、長期的な展望のもと、第4次産業革命技術の進展や人口減少、少子高齢化などの時代の変化に的確に対応するため、ILCや三つのゾーン等の新しい時代を切り拓くプロジェクトを推進することとしています。
 このように、各地域の特徴を踏まえた地域振興や、戦略的かつ長期的な視点に立った施策を展開し、物質的、経済的な豊かさに加え、心の豊かさを大切にしながら、岩手が、全ての岩手県民と、岩手にかかわる全ての人を幸福にできる県になることを目指してまいります。
 次に、北岩手・北三陸横断道路についてでありますが、災害に強い県土づくりに加え、物流の効率化や人の交流の活性化の面からも、県北地域の道路ネットワークの強化は県として特に重要な課題と認識しており、沿岸部と内陸部を結ぶ幹線道路である国道281号において、現在、令和2年度の供用を目指して、岩手町の大坊の2工区と久慈市の下川井工区の改築事業を進めているところです。また、新たに久慈市の案内―戸呂町口工区の整備に必要な経費を令和2年度当初予算案に盛り込んだところであり、引き続き、路線全体として災害時にも機能する信頼性の高い道路となるよう、切れ目のない整備に取り組んでいくこととしています。
 沿線市町村から自動車専用道路としての整備を要望されている北岩手・北三陸横断道路については、全国の高規格幹線道路の整備状況や国道281号の効果なども含め、県北地域の道路ネットワークのあり方について、関係市町村とともに幅広く検討してまいります。
 次に、県政推進の柱となる施策についてでありますが、いわて県民計画(2019〜2028)に基づき、引き続き東日本大震災津波からの復興に最優先で取り組みながら、健康・余暇、家族・子育て、仕事・収入などの10の政策分野、また、ILCプロジェクトや三つのゾーンプロジェクトを初めとした新しい時代を切り拓くプロジェクトに係る施策を力強く推進してまいります。さらに、県民計画の人口減少対策に関係する分野を推進する戦略として、現在策定を進めている第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に基づき、持続可能な地域社会の構築に取り組みます。
 こうした施策の展開により、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現を図ってまいります。
 次に、人口減に係る指標についてでありますが、人口の社会増減については、現行の総合戦略に基づく施策の展開により、自動車、半導体関連産業の集積による雇用の創出等が図られたことにより、令和元年はマイナス4、370人と3年ぶりに縮小したものの、近年の景気や雇用情勢などにより、特に若年層を中心に東京圏への転入超過数が拡大している状況にあります。
 自然増減については、子育て負担の軽減や仕事と育児の両立支援等に取り組み、合計特殊出生率が平成29年までは目標を上回っていたものの、平成30年に下回ったところであり、推移を注視していく必要があるものと認識しております。このため、国の第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略と歩調を合わせ、現在策定中の第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に基づき、引き続き、社会減ゼロに向けたものづくり産業や農林水産業の振興による産業全体の底上げ等の施策や、出生率の向上に向けた県民の結婚したい、子供を産みたい、育てたいという希望に応える施策を戦略的に推進してまいります。
 次に、関係人口についてでありますが、関係人口とは、国によれば、移住した定住人口でもなく、観光で訪れた交流人口でもない、地域や地域の人々と多様にかかわる人々を指すとしており、国においても、第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略において、新たに関係人口の創出、拡大に関する施策が盛り込まれたところであります。
 県においては、こうした国の第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略を勘案し、東日本大震災津波を契機として育まれた国内外の多様な主体とのつながり等を生かしながら、岩手への人の流れを創出するため、現在策定を進めている第2期岩手県ふるさと振興総合戦略に4本目の柱として岩手とつながるを追加して、関係人口の創出、拡大に向けた取り組みを進めていくこととしております。
 次に、県民満足度についてでありますが、都道府県ごとの生活満足度については各種調査が行われ、さまざまな評価がなされているものと承知しておりますが、本県が毎年実施している県民意識調査では、生活満足度について、満足またはやや満足と回答した方の割合が、平成19年の17.0%からおおむね毎年上昇を続け、平成31年には35.0%となっています。
 第2期岩手県ふるさと振興総合戦略においては、人口の社会増減や合計特殊出生率、国民所得に対する県民所得水準の乖離縮小とともに、生活満足度の向上も施策推進目標に含めており、同戦略に盛り込んだ公共交通など魅力あるふるさとづくり、文化、スポーツの振興、若者や女性の活躍支援、保健、医療、福祉の充実、ふるさとの未来を担う人づくりなどの施策を推進することにより、豊かなふるさとを支える基盤を強化して地域の魅力向上を図ってまいります。
 次に、ふるさと振興の推進についてでありますが、ふるさと振興の着実な推進のため、現在策定を進めている第2期岩手県ふるさと振興総合戦略のもと、県と市町村を含めた地域が連携、協働して取り組むことが重要と認識しています。このため、来年度からふるさと振興部を設置し、いわて県民計画(2019〜2028)に掲げる北上川バレーや三陸、北いわての三つのゾーンプロジェクトに取り組み、市町村や団体、企業等との連携、協働を一層進め、持続的な地域社会を築いていくための地域振興施策を強力に推進します。
 また、全県と比べ人口減少が進行している県北、沿岸圏域の振興については、引き続き重要課題と位置づけて、新設する県北・沿岸振興室が中心となり、すぐれた地域資源や新たな交通ネットワークなどの社会資本を最大限に生かした取り組みを進めます。
 このような施策を通じ、市町村を含めた地域と密接に連携しながら、東日本大震災津波からの復興とふるさと振興を推進してまいります。
〇47番(工藤勝博君) 大変ありがとうございます。ただいまの答弁から1点だけ再質問させていただきますけれども、北岩手・北三陸横断道路、要は県北の振興に大変重要な意味を持つと思います。きょうは多くの皆さんからも県北振興ということでお話がありました。
 一昨年、盛岡以北の市町村長でこの実現に向けて協議会を開催しております。そしてまた県にも、そしてまた国にも要望されているということですので、主体的に県でも国に要望するような方向でぜひとも取り組んでいただきたいと思いますので、再度お聞きしたいと思います。
〇知事(達増拓也君) 北岩手・北三陸横断道路は、八幡平市西根から岩手町、葛巻町を経由して、野田村に至る自動車専用道路ということで、今年度は、県と関係市町村の担当者による意見交換を行って、自動車専用道路の整備に向けた制度的、技術的な課題などを共有したところでございますので、今後は意見交換のレベルを上げながら、県北地域の道路ネットワークのあり方を幅広く検討してまいりたいと考えます。
〇47番(工藤勝博君) ありがとうございます。よろしくお願いしたいと思います。
 次に、農林業の振興について伺います。
 本県の農業産出額は、直近の2018年で2、727億円と4年連続の増加となっており、全国第10位の位置にあります。米価、野菜、果実等、販売価格が堅調に推移したことが要因でありますが、一方、農業就業人口はこの10年で4割減少し、耕地面積も2%減少するなど、農業生産構造の脆弱化が急速に進んでいます。また、人口減少、消費の多様化、新たな国際貿易協定に伴うかつてない市場開放時代を迎え、農業、農村の再建、再生は待ったなしの状況であります。
 地域農業の頼みの綱でありました集落営農組織も行き詰まるところがふえています。法人化計画を前提として立ち上げた集落営農ですが、米政策の不透明、担い手不足と高齢化、また、合意形成の困難など、まさに岐路に立たされている状況にあります。
 岩手県農業研究センターが行った県内の集落営農組織へのアンケート調査結果によると、法人化計画を持つ255組織のうち回答のあった158組織について、法人化の予定時期が決まっていない組織が7割となっており、今後の進め方、支援のあり方が問われています。見解を伺います。
〇知事(達増拓也君) 集落営農組織は、小規模、兼業農家も参加した地域農業の担い手として重要な役割を担っており、農業経営体として持続的、安定的に発展していくためには法人化が重要です。法人化した集落営農組織数は、これまでの取り組みにより、この5年間で105組織から210組織になるなど着実に増加していますが、一方、法人化が進まない要因としては、リーダー人材の確保や法人経営に不安を感じていることなどが挙げられています。このため、県では、それぞれの集落営農組織の運営状況などに応じて、組織リーダーの育成に向けた研修を実施するほか、農業団体と連携して設置したいわて農業経営相談センターにおいて、中小企業診断士等の専門家の派遣などを行っています。
 県といたしましては、今後とも、地域農業の重要な担い手である集落営農組織の法人化を積極的に進めてまいります。
〇47番(工藤勝博君) 集落営農の法人化というのはハードルが高いのです。私の地元の営農組合も、つい先日解散しました。というのは、組合員数の減少と高齢化、そしてまた当然若い世代がいないということもありますけれども、12年目になりますが、この辺で政策転換というのも必要ではないかと考えますけれども、その辺はいかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) この集落営農組織の法人化というのは重要と考えておりますので、県では、集落営農組織リストを作成して支援内容や進捗状況等の情報を共有し、県、市町村、JA等が連携して、法人化に向けた課題に対応した支援を実施しております。
 法人化を計画している組織には、組織リーダーを育成するための講座の開催や経営計画の作成指導、いわて農業経営相談センターによる税理士などの専門家派遣を実施しているところでありますし、また、法人化の予定が決まっていない組織に対しても、法人化の計画作成や将来の地域農業のあり方についての話し合いなどを支援しているところであります。
〇47番(工藤勝博君) 次に、地域農業を支えている地方自治体の弱体化も進み、市町村合併や合理化で農業担当者は減少しております。国の制度を活用するための資料作成に忙殺され、現場に対応し切れていない状況にあります。地域の農業事情がよくわかる県の農業普及員が中心となって市町村職員や農協職員と連携し、強い産地の育成やスマート農業、GAPなどの新しい技術への対応を行うなど、地域農業を充実、強化させていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 担い手の高齢化や就農人口の減少が進む中、本県農業の振興を図っていくためには、家族経営を中心とした生産部会等の生産力の向上を図るとともに、産地を牽引する大規模経営体を育成することが重要であります。このため、県では、今年度、各農業改良普及センターに、関係機関、団体等と連携し、生産部会等の主体的な活動を支援する産地育成課、そして大規模経営体への経営支援等を行う経営指導課、市町村と連携した農村地域の課題解決を行う地域指導課を設置するなど、普及指導体制を強化したところであります。また、普及活動の高度化を担う農業革新支援担当が中心となって、試験研究機関と連携しながら、生産力の向上や経営の高度化に向けたスマート農業の推進、GAPなど高度な生産管理手法の導入など、新たなニーズに対応できる農業普及員の育成に取り組んでいます。
 今後とも、農業改良普及センターが中心となって、市町村や農業関係団体等と連携しながら、地域農業の一層の充実、強化に取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君) ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 次に、令和2年度政府予算で農業農村整備(土地改良)事業関連予算が、2020年度当初予算と2019年度補正予算などの合計で6、515億円計上されました。政府では、2019年12月に、農政改革に新たな項目を盛り込んだ農業生産基盤強化プログラムを決定し、中山間地域の基盤整備やスマート農業の現場実装を柱に据えております。
 水田の基盤整備は急務であります。東北で最下位の整備率を向上させることにより、担い手への農地の集積や収益力の高い産地づくりに結びつきます。さらに、水田の大区画化と汎用化の圃場整備の効果ははかり知れません。
 最新のモデルとして、昨年完工した一関市花泉夏川地区の例では、受益面積631ヘクタールの広大な生産基盤が整い、地元の農事組合法人が大規模営農を推進しています。一方、県営では最大規模の圃場整備でありますが、施工から16年の歳月を要して完工しているということにはいささか驚きです。
 県では、2019年から2022年までのいわて農業農村整備の展開方向を示していますが、現在施工中、計画予定地も含め、よりスピードアップを図ることが必要です。
 国の予算、県の予算確保を今後どのように考えておりますか、予算確保について知事の考えをお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 農業農村整備事業の予算についてでありますが、国においては、令和2年度当初予算と令和元年度補正予算に、前年度の6、451億円を上回る6、515億円が措置される見込みであり、県においても、令和2年度当初予算及び令和元年度2月補正予算案に、前年度の181億円を上回る190億円を盛り込んでおります。
 今後におきましても、国に対して十分な予算措置を強く求めるとともに、スマート農業の導入などによる生産性の高い農業の実現に向け、水田の大区画化や汎用化などの基盤整備の効果ができるだけ早期に発現するよう、計画的に推進してまいります。
〇47番(工藤勝博君) 国からの予算がないとなかなか進まないということですので、予算の確保は特段の御配慮をお願いしたいと思います。
 次に、県行造林について伺います。
 本県の県有林事業は、明治41年の県有模範林の創設によって開始されて以来、各時代の社会的、経済的な要請を反映しながら、県有模範林、旧県行造林、水源林県行造林、特殊材備蓄林県行造林及び新県行造林に区分され、各地域の民有林林業経営の振興に大きく寄与しながら今日に至っています。このうち、県行造林は平成12年度をもって新規造成を終了し、現在は造成された森林の保育施業と主伐期を迎えた森林の立木処分を中心に実施しています。
 県行造林は、昭和4年から平成12年度まで造成された分収林で、2、051事業区、5万317ヘクタールあります。その一部に盛岡農業高校の学校林、これは同窓会林ですが伐期を迎えております。契約期限が令和11年3月31日までありますが、保安林であるため1年度以内に皆伐できる面積は1カ所当たり10ヘクタールが上限であり、立木処分に数年間を要します。また、伐採から2年以内に植栽することとなっており、その経費負担に大変苦慮しているところです。
 一例を申し上げましたが、県行造林の施業状況、今後の再造林の進め方をお示しください。
〇知事(達増拓也君) 県行造林―県が行う造林についてでありますが、現在、間伐等の保育施業を実施するほか、伐採適期を迎えた森林の立木処分を行っています。昨年度は672ヘクタールの間伐を実施し、570ヘクタールの立木処分を行っています。
 近年、国産材の需要が高まる中、将来に向けて安定した森林資源を確保していくためには、再造林を着実に進めていくことが重要であります。このため、県では、森林所有者の負担軽減を図るため、国庫補助事業の活用や、伐採から再造林までの作業を連続して行う一貫作業システムの普及など、再造林コストの低減に取り組んできたところです。
 また、昨年度から、林業、木材産業関係団体を構成員とする岩手県森林再生機構が再造林経費の助成を開始したところであり、県としても、森林再生機構を初め森林組合等関係機関、団体と緊密に連携を図りながら、積極的に再造林を推進してまいります。
〇47番(工藤勝博君) また、森林経営管理制度により、森林の経営管理、集約化を進める体制が新たに構築されました。市町村主体での森林整備のための安定財源として森林環境譲与税も創設され、それらの活用により、条件不利地の森林整備や主伐後の再造林推進が図られることは、まさに林業県岩手にとってはまたとない政策と思います。
 県は、市町村が森林経営管理制度を有効に活用できるよう、今後どのように取り組んでいくのかもお伺いいたします。
〇知事(達増拓也君) 市町村では、森林経営管理制度の運用開始により、森林の状況把握や、所有者への経営意向調査等の新しい業務に取り組んでいるところです。
 県では、農林水産部内に設置した市町村を支援する対策チームが中心となり、森林の所有者や境界の確認方法について助言を行っているほか、森林の現況調査を効率的に行うことのできるドローンや航空レーザーの活用方法の普及や、市町村が配置する地域林政アドバイザーを養成する研修の実施などに取り組んでいるところであります。
 今後とも、市町村が森林経営管理制度をしっかりと運用し、森林整備を加速化できるよう、地域の実情に応じてきめ細かに支援してまいります。
〇47番(工藤勝博君) いずれ、岩手県は日本で第2位の森林県でもあります。遅滞なく、切ったら再造林が進むという環境づくりをぜひとも強力に進めていただきたいと思います。
 次に、観光振興について伺います。
 まずは、令和2年度から観光産業の振興に係る推進体制の強化を図ることには、大いに評価いたします。農林水産業、ものづくり産業、そして観光産業が岩手の経済を支える3本の矢です。観光は裾野の広い、まさに総合産業でもあります。豊富な観光資源を有する岩手の魅力を国内外に発信し、大きく飛躍する土台が築かれたものと期待したいものです。
 とかく岩手は、コマーシャルが下手とか工夫がないとか言われてきました。観光課を室に格上げし、観光・プロモーション室に改称し、25人体制でパワーアップすることは、時宜を得た改革であります。ただ、従来の発想の延長では、その成果は甚だ心もとありません。
 昨年、訪日外国人向けの県内周遊券いわてエリアパスは、発売から3カ月が過ぎてからも全く売れなかったということでした。
 私は、その問題点として2点指摘します。多くは、旅行会社のツアーがまだまだ圧倒的に多いことです。台湾からの日程では、花巻空港着で4泊5日がポピュラーであり、岩手から青森、秋田をめぐるコースが人気商品とのことです。ですから、個人旅行者といえども県内だけの周遊券では、いかにも了見が狭過ぎるのではないかと思います。JRや定期バスも含めて二次交通、三次交通をぜひ提案し、旅行者が効率よく移動できるプランを提案すべきであります。もう一点、岩手だけのエリアパスでは魅力を感じられないです。外国人からしてみれば、岩手は日本の点でしかないと思います。
 今まさに、東北6県が官民挙げてインバウンドの取り組みと北海道と連携した観光ルートの構築、観光資源の掘り起こしが必要ではないでしょうか。見解を伺います。
〇知事(達増拓也君) 県では、インバウンドの拡大に向けて広域での連携した取り組みが重要と考え、東北の行政や民間で構成する東北観光推進機構と連携し、トップセールスのほか、旅行博の出展や旅行会社の招請などに取り組んでいます。
 また、北海道や北東北3県との連携のもと、旅行商談会や観光プロモーションを実施するなど、多様な広域連携でのインバウンド誘客にも取り組んでまいりました。
 今後におきましても、こうした広域の連携をさらに強化するとともに、これまで取り組んできた東北、北海道を縦断する歴史、文化や桜といったテーマ別のモデルコースの情報発信に加えて、令和3年に見込まれます北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録を見据えたプロモーションなどに取り組んでまいります。
〇47番(工藤勝博君) 日本政策投資銀行がまとめた2019東北インバウンド意向調査では、アジアや欧米、オーストラリアの旅行者に聞いた東北の認知度は16.6%であります。前年からほぼ横ばいということで、北海道、沖縄と比べて圧倒的に低いのです。その中で、東北の都市別の認知度は、福島が28.5%、仙台19.8%、青森18.8%が上位となっております。青森は、訪問希望者の割合が5.7%で東北で最多です。その要因は、北海道との近さをアピールした観光政策のほか、アジアを結ぶ国際定期便の就航などが意欲を高めているということです。
 東北、北海道連携しながらプロモーションするということですけれども、やはりそこは中心的になる県も必要ではないかと思いますが、知事の考えはどうでしょうか。
〇知事(達増拓也君) まず、来年には東北デスティネーションキャンペーンをやりますし、また、ことしは東京都内で東北ハウスという東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした東北を広く紹介する事業も行うところであります。
 そして、やはり北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録ということを見据えた、これは新しいエリアでの取り組みとなりますので、この点は、岩手県一戸町の御所野遺跡がいわば南の入り口となって、広域の一つのかなめとなるように頑張っていきたいと思います。
〇47番(工藤勝博君) ぜひ先頭を切って、東北、北海道の中心として頑張って取り組んでいただきたいと思います。
 次に、岩手の教育についてお伺いいたします。
 生きる力を育む第一歩は、家庭も学校も教育に尽きます。今、急速に人口減少、少子化の進展で教育現場をめぐる環境が大きく変わってきています。
 生活の利便化や生活様式の変化、学校外の学習活動や室内遊びの時間の増加により、体力低下や肥満傾向児出現率の高い状況が続いているなどの課題に向き合っていかなければなりません。また、隣近所に同世代がおらず、テレビやゲームの時間がふえ、運動の少ないのが実態であります。できる限りスポーツ少年団あるいは部活動に加入し、心身を鍛えるよう指導していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
〇知事(達増拓也君) スポーツ少年団や部活動は、本県のスポーツ振興や児童生徒の健全育成及び人格の形成に大きな役割を果たしています。また、本県児童生徒の肥満傾向の改善や体力の低下等の課題に対しても有効であると考えます。
 近年、児童生徒数の減少等により一部のスポーツ少年団や学校では単独の活動が困難な状況にあることや、学校以外のスポーツ、芸術文化等の活動に取り組む児童生徒が見られる等、活動が多様化している現状にありまして、県におきましては、中学生にとって望ましい部活動等のあり方を研究するなど、スポーツ少年団や部活動を含めた有意義なスポーツ、文化活動が推進されるよう取り組み、児童生徒の健全育成に努めてまいります。
〇47番(工藤勝博君) 次代を担う子供たちの健やかな成長とその環境づくりは、これからの教育現場でも大切だと考えますので、ぜひともお願いしたいと思います。
 次に、新たな県立高等学校再編計画後期計画案(2021〜2025年度)が公表されました。急速に進む生徒減であります。その対応に苦慮した計画案はやむを得ないのかなと思うこともありますが、昨年11月22日、23日の日程により、西和賀高校で小規模校サミットが開かれ、大野高校、住田高校、宮古北高校の各校の生徒代表が集い、魅力ある学校づくり、生徒数確保のあり方等を議論し、生徒も自分のこととして活発な意見交換がなされたと聞いております。
 大人目線だけでなく、当事者の思いもしっかりと酌み取り、今後の参考にすべきではないでしょうか。所見を伺います。
〇知事(達増拓也君) 議員御紹介の小規模校サミットにおいては、今後の岩手を担う高校生たちが、自分の学校の魅力について再認識し、生徒数の減少に対して問題意識を持ちながら、課題解決に向け主体的に考え、発言しており、そのような姿に頼もしさと将来への期待を感じたところであります。
 県立高等学校再編計画後期計画案については、生徒の希望する進路の実現と地域や地域産業を担う人づくりの二つを基本的な考え方とし検討を進めたものと承知しておりますが、県立高等学校再編計画後期計画案では、1学級等の小規模校を含め、地域の学校を可能な限り維持することとし、令和2年度当初予算案には、ICT機器の整備による教育環境の充実や小規模校が行う地域と連携した魅力ある学校づくりに向けた取り組みへの予算が盛り込まれています。
 教育委員会においては、県立高等学校再編計画後期計画の成案に向け、さらに広く意見を伺いながら、丁寧に検討を進めてほしいと考えます。
〇47番(工藤勝博君) やはり当事者の声というのが、これからも重要なポイントとなると思うのです。また、地域の皆さんも含めて幅広く検討を加えながら、いずれ生徒数が減っているというのは誰しもが理解していると思いますので、それらも含めてこれからの検討に取り組んでいただければと思います。
 次に、中高生の海外派遣事業については、各市町村の支援により交流事業が活発に進められています。これは、言うまでもなく国際感覚を養う最良の取り組みの一つでもあります。学校の魅力を高める大きな柱にもなります。
 ことしに入ってからも、軽米町と一戸町合同で中高生を米国に派遣しています。また、私の地元平館高校でも、旧西根町時代から交流のあるタイ、バンコクのタマサート大学や地元の高校との交流事業を計画しております。特に、ホストファミリーとの交流は、後の人生の糧になります。
 このような取り組みを強化することによって、それぞれの県立高校の魅力が高まっていくと考えますが、見解をお聞きします。
〇知事(達増拓也君) 高校生段階での国際交流は、生徒の国際感覚やグローバル意識を涵養するとともに、今後の進路選択の幅を広げるためにも有意義であり、各高校の魅力向上につながるものと認識しております。
 県においては、北米及び雲南省への高校生の海外派遣事業を政策地域部と教育委員会との連携のもと実施し、いわて高校生留学促進事業により海外留学への支援等を行ってきており、令和2年度当初予算案にも関係経費を盛り込みました。
 各高校において、市町村等が実施する海外派遣事業に生徒が参加したり、学校独自で海外派遣を実施するなど、多様な形態で積極的な国際交流を推進し、学校の魅力化にもつなげており、引き続き、各校における国際交流の取り組みが推進されるよう努めてまいります。
〇47番(工藤勝博君) それぞれの学校でも計画しておるわけですけれども、このたびの中国発の新型コロナウイルスによって、計画を中止したり、延期したり、検討したりという学校がふえています。これらが早く解決するよう、そしてまた、それぞれの学校でも計画どおり進めることをこれから希望したいと思います。
 最後に、先ほど高橋但馬議員からもお話がありましたハロウ・インターナショナルスクールについてお伺いしたいと思います。
 岩手の安比高原に、英国の名門私立学校ハロウスクールと提携したインターナショナルスクールが開校する予定であります。2022年8月の開校に向けて準備が進んでおりますが、アジアにはバンコク、そして香港、上海、北京の3校に合わせて、今度、岩手に学校ができれば5校目になります。大都会ではない岩手を選定したことは青天のへきれきですが、知事はどのようにお考えでしょうか。
〇知事(達増拓也君) ハロウ・インターナショナルスクールでは、世界に貢献する人材を養成するカリキュラムの中に、地域の学校との交流やボランティア活動なども組み込む予定と聞いています。
 本県の児童生徒にとっても、海外の子供たちと身近に交流する機会を得ることは、学力の向上、文化の多様性の理解、グローバルな感覚を身につけるよい機会となると考えます。
 また、こうした経験やつながりは、児童生徒の将来にわたる大きな財産になるものと考えておりまして、同校の開校は、岩手の教育環境の向上や地域振興にもつながるものと期待します。
〇47番(工藤勝博君) ありがとうございます。終わります。(拍手)
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって工藤勝博君の一般質問を終わります。
   
〇議長(関根敏伸君) 以上をもって本日の日程は全部終了いたしました。
 本日はこれをもって散会いたします。
   午後4時37分 散 会

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