令和2年2月定例会 第4回岩手県議会定例会会議録

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〇知事(達増拓也君) 本日ここに第4回県議会定例会が開会されるに当たり、今後の県政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 冒頭、昨年10月に本県を襲った台風第19号を初め、全国各地を襲った台風、大雨などの災害により、犠牲になられた方々の御冥福をお祈りいたします。そして、被害を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。また、全国からお見舞いや多大な御支援をいただきましたことに、改めて御礼申し上げます。
 県としては、被災者一人一人に丁寧に寄り添いながら、今回被害を受けた地域の一日も早い復旧に取り組みます。さらに、強靱な県土づくりを推進し、予期せぬ災害に対応できる防災体制の整備を進めてまいります。
 平成23年3月11日から、間もなく9年を迎えようとしています。私たち岩手県民は、これまで、東日本大震災津波からの復興に向け、地元の底力と国内外からの多くの御支援を力に、県民一丸となり、県政史上かつてない規模と体制で復旧、復興に取り組んできました。
 三陸沿岸道路などの復興道路は、令和2年度中に全区間開通予定であり、災害公営住宅の整備については、沿岸部において全て完了し、内陸部の1カ所を残すのみとなりました。また、多くの被災事業所が事業を再開し、大型商業施設や共同店舗が開業するなど、復興の歩みは着実に進んでいます。昨年9月には、高田松原津波復興祈念公園内に、日本を代表する震災津波学習拠点東日本大震災津波伝承館―いわてTSUNAMIメモリアルをオープンするなど、教訓伝承や復興発信の体制も整ってきています。
 一方で、新たなコミュニティーの形成支援や、被災者の心のケア、被災事業者に対する販路の開拓、拡大や担い手の確保など、被災者や被災地の実情を踏まえた支援に引き続き取り組んでいく必要があります。
 今後においても、いのちを守り海と大地と共に生きるふるさと岩手・三陸の創造を目指し、東日本大震災津波からの復興を推進してまいります。
 平成28年台風第10号災害からの復旧、復興も着実に進んでいます。昨年までに、全ての公共土木施設と農林水産関係施設の災害復旧工事に着手しました。工事の完成率も8割を超えています。また、岩泉町における災害公営住宅は全て完成し、被災者移転地の整備等も完了しました。引き続き、被災市町村との緊密な連携のもと、持続可能な地域づくりを見据えて、力強く復興を進めてまいります。
 東日本大震災津波や平成28年台風第10号災害からの復興に取り組む中で、昨年は再び大規模な災害に見舞われました。
 令和元年台風第19号による被害額は405億2、582万円に上り、道路、水道、電気などのライフラインを初め、生活基盤や産業経済が甚大な被害を受けました。県においては、被災者の生活再建や商工業、農林水産業の再開支援、道路、河川等の災害復旧に全力で取り組んでいます。また、中小、小規模事業者の支援、観光需要の喚起、地域住民の交通手段の確保なども進めています。一部の区間において運休を余儀なくされている三陸鉄道も、3月20日の全線運行再開に向け、三陸鉄道、県、沿線市町村が一丸となって取り組んでいます。
 引き続き市町村と十分連携し、被災者が一日も早く安心して暮らせるよう、令和2年度当初予算案に必要な事業を盛り込み、切れ目なく対応します。
 昨年、令和元年―2019年は、災害からの復旧、復興に取り組みながら、その姿と感謝の気持ちを国内外に発信する多くの機会があり、岩手の魅力をさらに高めた年となりました。
 6月から8月にかけて開催した三陸防災復興プロジェクト2019では、復興に力強く取り組んでいる地域の姿、東日本大震災津波の記憶と教訓を国内外に発信できました。また、岩手県沿岸、三陸地域が持っている魅力を国内外に伝えることができました。
 9月に開幕したラグビーワールドカップ2019日本大会は、ビル・ボーモントワールドラグビー会長が、史上最高のラグビーワールドカップとして記憶されると述べたとおり、国内外の多くの人々の記憶に残る特別な大会となりました。また、大会期間中の日本代表の躍進は日本中を感動させ、その盛り上がりは社会的な現象となりました。
 東日本大震災津波の被災地で唯一の開催地となった釜石では、フィジー対ウルグアイ戦において、メッセージフラッグやありがとうの手紙の合唱により、復興支援への感謝と復興に向けて力強く歩む姿を国内外に発信しました。ナミビア対カナダ戦は令和元年台風第19号により中止となりましたが、カナダ代表チームによるボランティア活動やナミビア代表チームによる交流会など、被災地を激励する温かい心により新たな絆が生まれ、この様子は世界中に情報発信されて多くの人々を感動させました。
 各開催地は国内外から高い評価を受け、特に岩手県釜石市は、ワールドラグビーアワードで、東日本大震災の甚大な津波被害からの復興を通じ、ラグビーの価値を高めたとしてキャラクター賞を受賞しました。
 11月には、第36回伝統的工芸品月間国民会議全国大会―KOUGEI EXPO IN IWATEが開催され、本県の歴史や風土に育まれた伝統的工芸品等の魅力が国内外に発信されました。
 これらの事業を通じて得られたさまざまな経験やつながりは、令和2年度、さらにその先の本県飛躍の力になるものと考えます。
 昨年は、いわて県民計画(2019〜2028)の初年度、岩手県ふるさと振興総合戦略の最終年度であり、その主な政策の進捗状況について申し上げます。
 保健医療においては、本県の人口10万人当たりの医師数は全国と比較して依然として低い水準にありますが、医師の確保と県内への定着に向けた取り組みにより、全国との格差が縮小に転じています。一方で、医師の地域偏在や特定診療科の医師不足も続いていることから、引き続き、奨学金養成医師の医師不足地域への計画的な配置、派遣調整を行う必要があります。
 家族、子育てにおいては、保育所等の利用定員の拡大など、各種保育サービスの充実が図られています。引き続き、子育て家庭の経済的負担の軽減、子供の貧困対策など、子供が健やかに成長することができる環境づくりに取り組む必要があります。
 ものづくり産業においては、自動車や半導体関連産業を中心とした産業の集積が進んでいます。雇用環境についても、県内の有効求人倍率が1倍を超える水準で推移するなど働く場が拡大していますが、人材の確保等が課題となっています。
 農林水産業においては、地域の核となる経営体の育成や県産農林水産物のブランド化が着実に進展していますが、漁獲量の減少や従事者の減少、高齢化の進行等が課題となっています。
 また、一戸町の御所野遺跡を含む北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録を目指す取り組みは、国からユネスコへ推薦書が提出され、令和3年の登録に向けさらに前進しました。
 三陸ジオパークは、再認定審査において地域が一体となった取り組みが評価され、日本ジオパークとして再認定されました。
 このようなさまざまな事業の成果や政策の進捗状況を踏まえ、今後の県政推進を図っていく上で特に重点的に取り組む事項を申し上げます。
 まず、人口減少対策につながるふるさと振興についてであります。
 本県においては、平成27年に策定した岩手県ふるさと振興総合戦略に基づき、生きにくさを生きやすさに転換し、持続可能な地域社会の構築を目指して人口減少対策を総合的に進め、各分野で一定の成果があらわれてきています。しかしながら、人口の自然増減については、少子高齢化の進行に伴い、日本全体の傾向と同様に、出生数の減少、死亡数の増加により、直近の令和元年ではマイナス1万497人となっています。
 人口の社会増減については、平成30年のマイナス5、215人から、直近の令和元年ではマイナス4、370人に縮小したものの、依然としてその減少数は大きい状況にあります。また、人口の全国的な東京一極集中は是正されず、東京圏への転入超過数は約15万人に拡大するなど、むしろ加速しています。
 東京への一極集中は、首都直下地震等の大規模災害時に、膨大な建物被害や人的被害、救急、救助活動と医療活動の不足、日本全体の経済、物流の停滞などのリスクを高めるおそれがあり、防災面においても大きな課題と指摘されています。
 このような状況を踏まえ、いわて県民計画(2019〜2028)の人口減少対策に関係する分野を推進する戦略として第2期岩手県ふるさと振興総合戦略を策定し、4月から、そのもとで施策を推進します。
 新しい戦略では、岩手で働く、岩手で育てる、岩手で暮らすの現戦略における3本の柱に、新しい柱として、地方移住の裾野拡大に向けた関係人口の創出など、新たな視点を盛り込んだ岩手とつながるを加えます。
 岩手で働くでは、ものづくり産業や農林水産業の振興による産業全体の底上げや移住、定住を推進します。
 岩手で育てるでは、県民の結婚したい、子供を産みたい、育てたいという希望に応える取り組みや子育てと仕事の両立の支援など、子育てに優しい環境をつくります。
 岩手で暮らすでは、医療、福祉や文化、教育など豊かなふるさとを支える基盤の強化を進め、地域の魅力を向上させます。
 岩手とつながるでは、関係人口や交流人口の拡大を図り、岩手と多様な形でつながることのできる社会を構築します。
 このような、岩手の魅力を高め、岩手への新たな人の流れを生み出す施策や、岩手との交流やつながりを拡大する施策を国や市町村と連携して力強く推進し、ふるさと振興を進めます。
 近年の技術革新の流れの中で、政府や経済界においてはソサエティー5.0の実現に取り組んでいます。
 IoTやAI、ビックデータ、5G、ドローンなどの科学技術は、生産性や生活の利便性を飛躍的に高めることが期待されています。本県においても、これらの科学技術を活用した施策を積極的に展開し、イノベーションの力で、人口減少に伴う労働力不足や過疎地域等における買い物弱者などの地域課題に取り組んでまいります。
 今般、日本学術会議から公表された第24期学術の大型施設計画・大型研究計画に関するマスタープランにおいて、ILC―国際リニアコライダー計画は、学術大型研究計画に選定されました。
 昨年3月7日の日本政府による初めての関心表明で示された国内における正式な学術プロセスでの議論が行われ、国外における次期欧州素粒子物理戦略の議論も進捗していることから、ILC計画は次なる段階へ進展していくものと期待しています。県としては、国内外の動向に臨機に対応し、超党派国会議員連盟や研究機関、推進団体などと連携を一層密にし、東日本大震災津波からの創造的復興や地方創生、そして新しい東北の扉をあけることにもなるILCの実現に向け、引き続き全力で取り組んでまいります。
 本県のみならず、日本全国、世界各地で気候変動が一因と考えられる異常気象が連続して発生し、地球温暖化対策の重要性が一層高まっています。県としても、温室効果ガス排出量の2050年実質ゼロを見据え、令和2年度に策定を予定している次期岩手県環境基本計画に基づき、温室効果ガスの排出削減を進めます。また、自然環境や資源、エネルギー、社会基盤などを持続可能なものとして次世代に引き継いでいくため、県民総参加による地球温暖化対策に取り組んでまいります。
 令和3年から令和4年にかけて、本県において実施される大規模な事業の準備を進めます。
 令和3年に、東北6県の広域で、6カ月という長期にわたり、東北デスティネーションキャンペーンが開催されます。多くの観光客が岩手県を訪れ、幸せを感じるよう、観光コンテンツの魅力向上やプロモーション強化、受け入れ環境整備を進めます。
 また、令和4年には、本県において48年ぶり2回目となる第73回全国植樹祭を高田松原津波復興祈念公園で開催します。全国植樹祭は、森林、緑に対する理解を深める国土緑化運動の中心的な行事であり、天皇皇后両陛下御臨席のもと開催される国民的行事です。東日本大震災津波からの復興の姿を、感謝の気持ちを込めて国内外に発信する絶好の機会であり、関係機関、団体を初め、県民と一丸となって着実に準備を進めてまいります。
 以上のような重点的な事項を踏まえつつ、いわて県民計画(2019〜2028)に基づく施策を力強く推進します。
 初めに、東日本大震災津波からの復興です。
 まず、安全の確保として、防潮堤等の津波防災施設や、水門、陸閘の自動閉鎖システム等を整備します。また、防災知識の普及や自主防災組織の組織化、活性化など多重防災型まちづくりを推進します。
 防災集団移転促進事業により買い取った移転元地の利活用に向け、国への要望や市町に対する情報提供、助言等を行います。
 放射性物質に係る安全対策及び風評被害払拭のため、放射線量の測定や放射性物質濃度の検査等を行うほか、関係市町村等を支援するなど、放射線影響対策を引き続き実施してまいります。
 次に、暮らしの再建です。
 被災者の住まいの再建については、支援が必要な方に対し、被災者相談支援センターやいわて内陸避難者支援センターにおいて、市町村と連携して自立再建に向けた相談支援を行うなど、一人一人に寄り添った支援を最後まで実施します。
 再建先における円滑なコミュニティー形成のための支援員等の配置や、被災者の心の復興を後押しする民間団体の取り組みへの支援を継続します。
 災害公営住宅への転居等に伴う生活環境の変化や経済問題、今後の生活への不安など、被災者の抱える問題が複雑化、多様化していることから、岩手県こころのケアセンターにおける支援を継続します。また、被災児童等の心のケアについても、いわてこどもケアセンターにおいて、専門的な精神的ケアを引き続き実施します。
 郷土を愛し、その復興、発展を支える人材を育成するため、学校、家庭、地域、関係機関、団体等が連携したいわての復興教育を推進します。
 次に、なりわいの再生です。
 サケなどの漁獲量の減少を踏まえ、高水温でも回帰できるサケの種苗生産技術の開発や、近年、資源量が増加しているマイワシの漁場の調査を進めます。また、市場性の高いサクラマスの資源造成に取り組むとともに、サケ、マス類の海面養殖を推進します。さらに、いわて水産アカデミーによる地域漁業をリードする人材の確保、育成や、漁港施設の機能強化などに取り組みます。
 水産加工事業者を支援するため、本県の地域資源を生かした付加価値の高い水産加工品開発を促進します。
 原木シイタケの産地再生を図るため、引き続き、出荷制限の解除に向けた取り組みや生産拡大に向けた動きを支援します。
 被災事業者の仮設店舗から本設店舗への円滑な移行の促進や移行後の経営の安定を図るため、引き続き専門家派遣等による事業計画策定を支援し、商工団体等と連携し、経営、金融の両面から支援します。
 津波防災を学ぶなら三陸として、震災学習を中心とした教育旅行、企業研修旅行の誘致を進めます。
 最後に、未来のための伝承・発信です。
 国内外の防災力向上に貢献すべく、東日本大震災津波伝承館と海外津波博物館との連携による国際会議を開催し、いわて震災津波アーカイブなどを活用して教訓を伝承し、復興の姿を発信します。
 また、復興への理解や継続的な支援、参画を促進するため、復興の状況や復興支援に対する感謝の気持ちを伝える事業を、国の東日本大震災10周年事業と連動して実施します。
 いわて県民計画(2019〜2028)が2年目となる令和2年度は、計画に係る施策を一層推進し、また、少子高齢化や人口の社会減等の課題について、第2期岩手県ふるさと振興総合戦略と一体的、総合的に取り組みます。また、施策の推進に当たっては、いわて幸福関連指標の達成度を踏まえた政策評価に加え、今年度、新たに発行するいわて幸福白書により、本県の幸福に関する状況を県民と共有し、施策の実効性を高め、県民の幸福が守り育てられるよう取り組んでまいります。
 まず、健康・余暇分野では、脳卒中等の生活習慣病による死亡率を緊急に改善するため、市町村、関係団体等と連携した特定健診、がん検診受診率の向上や有病者の重症化予防などに取り組みます。
 令和2年4月1日の改正健康増進法施行に対応し、受動喫煙が生じないよう、防止対策の徹底を図ります。
 現在、策定を進めている医師確保計画に基づき、医師の地域偏在、診療科偏在の改善に取り組みます。
 また、地域医療基本法制定の提言とあわせて、地域医療を担う医師の確保を目指す知事の会において、他県や関係団体等と連携し、国に対し実効性のある施策の実施を強く働きかけてまいります。
 地域包括ケアシステム構築に向けて、在宅医療と介護の連携を担う在宅医療連携拠点について、県内全市町村に広げることを目指し、整備を促進します。
 高齢化の進行に伴い、介護人材が大きく不足している現状を踏まえ、介護の仕事に対する理解促進や担い手の裾野の拡大、介護ロボット導入支援による働きやすい環境の整備など、総合的な介護人材確保対策に取り組みます。
 障がい者の就労機会の拡大による自立と一層の社会参加に向け、第1次産業が盛んな本県の特徴を生かし、農福連携の施策を推進します。
 今議会に提出しておりますひとにやさしいまちづくり推進指針(2020〜2024)に基づき、ユニバーサルデザインの県民への周知やヘルプマークの普及などの意識啓発、公共的施設のユニバーサルデザイン化の促進などのまちづくりに取り組みます。
 余暇の充実を実感できる岩手の実現に向け、文化芸術活動やスポーツ活動、学びの機会の充実が重要です。岩手芸術祭の開催や国内外の一流芸術家による公演等を実施し、すぐれた文化芸術に触れる機会を提供していきます。
 身近な地域でスポーツ活動を推進する総合型地域スポーツクラブの活性化により、若年期から高齢期までのライフステージに応じたスポーツを楽しむ機会の充実を図ります。
 次に、家族・子育て分野では、誰もが子供を健やかに育みやすいと実感できる岩手の実現に向け、新たないわて子どもプランを策定し、事業を進めてまいります。
 具体的には、結婚を希望する県民の願いをかなえるため、“いきいき岩手”結婚サポートセンターにおいて、マッチング機能を拡充し、相談支援機能を強化します。
 また、安心して妊娠、出産できるよう、モバイル型妊婦胎児遠隔モニターによる妊産婦の緊急搬送時の支援や、分娩取扱施設から遠隔地に居住する妊産婦の移動に係る支援を実施します。
 保育所等の待機児童を解消するため、保育の受け皿の拡充に引き続き取り組むほか、潜在保育士のマッチング支援や修学資金貸し付けによる保育士育成を実施します。
 さらに、現物給付による子供の医療費助成の対象を本年8月から中学生まで拡大します。
 子供の貧困対策については、岩手県子どもの生活実態調査の結果を踏まえた子どもの貧困対策推進計画を策定し、取り組みを進めます。
 具体的には、経済的課題を抱えるひとり親世帯の多様なニーズに対応する総合相談支援体制を構築し、子供の居場所づくりを推進します。
 次に、教育分野では、岩手県総合教育会議において、教育委員会と知事との連携を深め、地域の教育の課題やあるべき姿の共有を図ります。
 社会ニーズに対応した学習内容の充実のため、医学部志望者向けの集中プログラムの実施などの進学支援や理数教科等における探究的な学習を推進します。
 中学生のスポーツ活動及び文化活動について、研究会を設置し、関係団体、有識者の意見を伺いながらそのあり方を検討します。
 世界と岩手をつなぐ人材や地域の国際化に貢献する人材の育成に向け、高校生の海外派遣研修や学生の海外留学支援、外国人留学生等の定着支援を引き続き行います。
 次に、居住環境・コミュニティ分野では、市町村と連携し、広域連携を検討するなど、水道事業の経営基盤の強化に関する取り組みを進めます。
 令和2年度中に第3期岩手県耐震改修促進計画を策定し、市町村と連携を図りながら住宅の耐震化を促進します。
 広域バス路線と地域内交通の維持、確保に向け、市町村、交通事業者等と連携し、持続可能な地域公共交通ネットワークの構築を進めます。
 暮らし続けたい、帰りたいと思える地域のつながりを実感できる岩手の実現に向け、県内外の人的、経済的交流が重要です。持続可能な地域コミュニティーづくりに向け、復興支援員や地域おこし協力隊の地域への定着促進に引き続き取り組みます。
 全国で移住に関する取り組みが活発化している中、他地域との差別化を図り、本県への移住を促進するため、不動産情報や子育て支援情報、岩手での暮らしの魅力など、移住希望者のニーズにかなう訴求力の高い情報の発信を強化します。
 現在、策定を進めている岩手県多文化共生推進プラン(2020〜2024)に基づき、市町村や国際交流協会などさまざまな主体と一体となって、外国人県民にとっても暮らしやすい環境をつくります。
 また、いわて外国人県民相談・支援センターにおいて、外国人県民等からのさまざまな相談にワンストップ窓口として関係機関と連携して対応します。
 次に、安全分野では、地域防災力のかなめである消防団員の確保を図る新たな補助制度を創設するなど、消防団と地域防災体制の強化を図ります。
 登下校時の子供の安全確保を図るため、不審者情報、地域の危険箇所等の情報共有が確実に行われる体制を構築します。
 令和4年の成年年齢の18歳への引き上げに対応した消費者教育など、消費者行政の充実に引き続き取り組みます。
 令和3年度に本県で開催する第16回食育推進全国大会に向け、食育の重要性についてさらなる県民理解の促進を図ります。また、大会において、岩手の豊かな自然に恵まれた食を全国にPRできるよう準備を進めます。
 また、新型コロナウイルスや新型インフルエンザ等の感染症発生の予防及び蔓延防止に向け、国や感染症指定医療機関等、関係機関との連携体制の整備や県民に対する情報提供に取り組みます。
 次に、仕事・収入分野では、より多くの若者や女性に、岩手で働き、暮らすことを選択してもらえるよう、本県独自の就業促進情報誌第2弾いわてダ・ヴィンチの活用などにより、岩手の魅力を発信します。また、いわてで働こう推進協議会を核として、県内就業の拡大、U・Iターンの促進を図ります。
 民間の起業家グループや金融機関等の関係機関と連携した起業支援体制を構築し、実践的な起業家教育を実施するなど、若者や女性等の起業を促進します。
 自動車、半導体関連産業に加え、医療機器関連産業の一層の集積を促進し、ものづくりのグローバル拠点化を推進するとともに、次世代ものづくり技術者の育成や県内企業の生産性と付加価値向上を支援します。
 食の商談会や物産展の開催などにより、県内外で、特色ある本県の食や日本酒、伝統的工芸品等の魅力を発信し、県産品の認知度向上を図ります。
 さらなるインバウンドの増加を目指し、国際定期便を活用した台湾、中国からの誘客に加え、新たな路線の誘致やチャーター便の運航拡大に向け、エアポートセールスを展開するほか、クルーズ船の寄港拡大に取り組みます。
 地域の農林水産業を牽引する担い手を確保、育成するとともに、県オリジナル水稲品種金色の風、銀河のしずくのさらなる評価の向上や、大規模園芸産地の形成、県産木材の安定供給体制の構築、サケ資源の回復など、生産性、市場性の高い産地づくりに取り組みます。
 TPP11など国際貿易環境が変化する中、有望な市場と見込まれる国や地域をターゲットにトップセールスを実施するなど、県産農林水産物の輸出拡大に向け戦略的に取り組みます。
 今議会に提出しております岩手県県産木材等利用促進基本計画に基づき、県産木材等の需要創出や森林資源の循環利用など、県産木材等の利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進します。
 次に、歴史・文化分野では、令和2年度に迎える明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録5周年の機会を捉え、本県の世界遺産の後世への継承に向け、県民理解のさらなる増進や県内外への情報発信に取り組みます。
 また、本県は民俗芸能の宝庫であり、その保存、継承に向け、幅広い年代層に民俗芸能の魅力を発信し、民俗芸能に携わる若い世代の誇りや意欲の向上を図ります。
 今議会に提出しております第3期岩手県文化芸術振興指針に基づき、本県の歴史や文化の継承に向けた施策を推進し、県民誰もが文化芸術に親しみ、創造できる環境づくりを進めてまいります。
 次に、自然環境分野では、いわてクリーンセンターの埋め立て終了に備え、後継となる公共関与型の次期産業廃棄物最終処分場の計画的な整備を進めます。
 良好な環境が保たれた海岸を守るため、岩手県海岸漂着物対策推進地域計画に基づき、森から川を経て海に至る流域全体で、県民と一体となった環境保全活動などに取り組みます。
 簗川発電所の建設や稲庭高原風力発電所などの再開発を進め、再生可能エネルギーの維持、拡大を図ります。
 次に、社会基盤分野では、ソサエティー5.0時代の社会基盤の整備に向け、第5世代移動通信システム5Gの整備を促進します。また、市町村と連携して、ドローンを活用した物流システムの構築等、先端技術の実証実験などを通して、科学技術を活用した地域課題の解決に取り組みます。
 県土の強靱化に向け、次期岩手県国土強靱化地域計画を策定します。また、市町村における地域計画策定が進むよう積極的に支援します。
 近年多発する自然災害に備え、洪水、土砂災害対策施設の整備や農業水利施設等の整備、防災重点ため池のハザードマップ作成支援を行うほか、災害に強い道路ネットワークの構築を推進します。さらに、水位周知河川や洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域等の指定を進め、市町村と連携して防災情報の充実強化を図ります。
 また、簗川ダムについて、令和2年度内の完成に向けて試験湛水を開始します。
 岩手県公共施設等総合管理計画に基づき、道路、河川管理施設などインフラ施設の個別施設計画を令和2年度中に策定し、社会資本が将来にわたって機能を発揮し続けるよう、計画的な維持管理に取り組んでまいります。
 最後に、参画分野では、いわてネクストジェネレーションフォーラムの開催や、いわて若者カフェ、若者交流ポータルサイトでの情報発信を行い、若者の主体的な活動の活性化を図ります。
 いわて女性活躍企業等認定制度やイクボスなど女性活躍関連制度の普及により、女性が働きやすい職場環境をつくります。
 また、市民活動や県民運動への参加、参画に向けた機運醸成や、各種官民連携協議会、産学官連携団体等とのネットワークづくりに取り組み、多様な主体の連携の輪を広げ、民間や地域の力を一層引き出してまいります。
 長期的な視点に立った先導的な取り組みとして、新しい時代を切り拓くプロジェクトを戦略的、積極的に展開します。
 ILCプロジェクトでは、ILCによる地域振興ビジョンに基づき、実験施設建設までの準備期を見据え、インフラ等の活用可能性調査や、地域の外国人等受け入れ環境整備、加速器関連産業の振興などに取り組みます。
 地域特性を生かし、広域的な連携により取り組む三つのゾーンプロジェクトについては、それぞれのゾーンの目指す姿の実現に向けた施策を進めます。
 北上川バレープロジェクトでは、AI人材の育成とAIの社会実証を推進するほか、県内中小企業の生産性向上や人材確保の支援、科学技術等を活用した地域課題の解決等に取り組みます。また、住んでよし、働いてよしの北上川バレーの魅力を情報発信します。
 三陸防災復興ゾーンプロジェクトでは、3月20日に全線運行再開が予定されている三陸鉄道を活用した誘客や、世界ジオパークへの認定を見据えた三陸ジオパーク活動を一層推進します。また、美味ぇがすと三陸構想の展開による三陸の食を基軸とした地域振興に取り組みます。
 北いわて産業・社会革新ゾーンプロジェクトでは、地域資源の付加価値創出に向けた取り組みを重点的に支援するほか、県内外の産学官組織が連携し、先端技術を活用した北いわて型スマート農業技術の導入を促進します。また、北いわての産業を担う人材育成の強化策について検討を進めます。
 加えて、先端技術を活用した小集落における日常生活の利便性向上や、生産現場のイノベーションによる農林水産業の高度化、岩手独自の健康・医療・介護データ利活用システムの構築、主体的、対話的で深い学びの実現に向けた県立学校へのICT環境整備とその活用など、第4次産業革命技術を生かし、新たな価値、サービスの創造に取り組みます。
 さらに、各地域の特色を生かした魅力ある文化芸術、スポーツによるまちづくりや、低炭素で持続可能な社会の実現、本県の地域や人々と多様にかかわる関係人口の拡大を図ってまいります。
 持続的な地域社会を築いていくため、県央、県南、沿岸、県北の4広域圏それぞれにおいて、地域の強みを伸ばし、弱みを克服する取り組みを進めてまいります。このため、ふるさと振興部を設置し、市町村、関係団体を初めとする多様な主体との連携、協働を一層進め、地域振興施策を強力に推進します。
 全県と比べ、人口減少が進行している県北、沿岸圏域の振興については、引き続き重要課題と位置づけ、新設する県北・沿岸振興室が中心となって、すぐれた地域資源や新たな交通ネットワークなどの社会資本を最大限に生かした取り組みを進めます。
 さらに、市町村が持続的、安定的に行政サービスを提供できるよう、職員を駐在させ、地域の実情に応じ、きめ細かく支援します。特に、市町村が単独では解決が困難な課題や、それぞれの地域の特性を踏まえた取り組みについて、市町村との連携、協力を深めて対応していきます。
 いわて県民計画(2019〜2028)を着実に進めていくため、政策企画部を設置し、政策立案、調整機能の充実強化を図り、国内外の環境変化を踏まえた機動的な政策形成や分野横断の取り組みを一層推進してまいります。
 また、県民の信頼に応える、より質の高い行政経営を進めていくため、PDCAサイクルの徹底や内部統制によるリスクマネジメントの強化により、行政の適正性と透明性を確保していきます。
 本県の財政運営については、昨年10月に公表した中期財政見通しのとおり、今後も厳しい状況が続くことが見込まれます。引き続き、限られた財源の重点的かつ効果的な活用に努め、政策の着実な推進を支えるため、持続可能な財政運営を行ってまいります。
 ことし、56年ぶりとなる東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。1964年の東京大会は、日本の戦災復興と国際社会復帰を世界に示すものでありました。今回の東京大会は、復興五輪の理念のもと、東日本大震災津波の被災地が復興に取り組む姿を世界に発信することが目的の一つです。
 本県においても、大会参加国等との相互交流を図るホストタウンに19市町村が登録され、6市町が事前キャンプ地に決定しています。
 また、県内では、ギリシャから運ばれた聖火が、聖火リレーに先立ち、復興の火として三陸鉄道やSL銀河、大船渡市で展示されます。
 オリンピック聖火リレーでは、平昌オリンピックに出場した小林陵侑さんや岩渕麗楽さん、アテネ、北京、ロンドン、リオと4大会連続でパラリンピックに出場した大井利江さんの参加が決定しています。さらに、そのほかの本県ゆかりのオリンピアン、パラリンピアンを含む250人を超える聖火ランナーが、県内を駆け抜けます。また、全市町村でパラリンピック聖火の採火を行うパラリンピック聖火フェスティバルも催されます。これらを県内市町村と連携して実施し、国内外からいただいた復興支援に対する感謝と岩手の復興の姿を世界中に発信します。
 オリンピック競技には、カヌー男子カヤックフォア500メートルの日本代表に、矢巾町出身の水本圭治選手が内定しています。そして、今まさにオリンピック、パラリンピック出場を目指している本県ゆかりの選手もいます。県民皆で出場選手の活躍を期待し、応援したいと思います。
 選手村ビレッジプラザでは県産木材製品が利用され、メダリストに授与されるビクトリーブーケには本県産のリンドウが採用されます。農畜産物、水産物などの食材についても、本大会への提供などにより、岩手の食の魅力を国内外に発信する機会があります。
 さらに、高田松原津波復興祈念公園で実施される、復興をテーマとした公式文化プログラム―しあわせはこぶ旅モッコが復興を歩む東北からTOKYOへ―や、大会会期中に東京に設置される東北、新潟の情報発信拠点東北ハウスを通じて、岩手の伝統文化や観光物産などの魅力を発信します。
 このような多くの県民が参画する事業や、本大会に関連しての魅力発信、県内市町村と出場国、地域とのつながりを、将来の人的、経済的交流の拡大につなげ、本大会が復興の力となり、ふるさと振興の大きな前進となるよう、オール岩手で取り組んでまいりましょう。
 オリンピック・パラリンピックイヤーである令和2年度、県では、いわて県民計画(2019〜2028)や第2期岩手県ふるさと振興総合戦略の推進に向け、令和2年度当初予算案に基づく施策を、県内市町村、関係団体、県民の皆様とオール岩手で展開します。これにより、東日本大震災津波の経験に基づき、引き続き復興に取り組みながら、お互いに幸福を守り育てる希望郷いわての実現につながるものと考えます。
 ここにおられる議員の皆様並びに県民の皆様の深い御理解とさらなる御協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
   
日程第5 教育委員会教育長の演述
〇議長(関根敏伸君) 次に、日程第5、教育委員会教育長の演述であります。佐藤教育長。
   〔教育長佐藤博君登壇〕

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